説明

携帯型電子機器を保持する電子機器

【課題】2箇所に配置した振動センサにより、所定位置から発せられる特定振動パターンの検出精度を高める。
【解決手段】携帯型電子機器を保持する保持部と、第1、第2振動センサ部と、携帯型電子機器が保持された状態で特定振動パターンを発したときに、第1振動センサ部で測定される第1基準波形と、第2振動センサ部で測定される第2基準波形と、基準波形の到達時間差とを格納し、ある振動について、第1測定波形と第1基準波形との相関係数の最大値が閾値以上の場合に第1測定波形から特定振動パターンを検出し、第2測定波形と第2基準波形との相関係数の最大値が閾値以上の場合に第2測定波形から特定振動パターンを検出し、両相関係数の最大値とも閾値以上であり、特定振動パターンの時間差と到達時間差との差が閾値以下の場合に、保持部に保持された携帯型電子機器が特定振動パターンを発したと判定する波形判定部とを備えた電子機器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の位置に載置された携帯型電子機器からの特定の振動パターンを検出して、反応動作を行なう電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話や携帯型音楽再生装置等の携帯型電子機器を載置し、携帯型電子機器の充電を行なったり、携帯型電子機器との間でデータ転送を行なう電子機器が実用化されており、クレイドル、ドックシステム等として知られている。このような電子機器では、電子機器自身も再生機能や通信機能を備えるものも多く、ドック等の所定位置(以下「携帯型電子機器保持部」あるいは単に「保持部」と称する)に載置された携帯型電子機器と協同して音楽再生、動画再生、通信等の処理を行なうことが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−23790号公報
【特許文献2】特開2004−85455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
携帯電話の着信振動に代表されるように携帯型電子機器では小型モータを内蔵し、所定のパターンで振動する機能を備えているものがある。近年、保持部に載置された携帯型電子機器が発する特定の振動パターンを認識して、電子機器に反応動作を行なわせることが提案されている。反応動作は、例えば、スタンバイ状態の解除、音楽再生開始、アラーム報知等である。
【0005】
この場合、保持部に載置されている携帯型電子機器が発する特定の振動パターンのみを検出して反応することが望ましいため、他の場所に置かれている携帯型電子機器が発する振動パターンを誤検出して反応してしまうことを避ける必要がある。特許文献2には、音声センサを3箇所に配置することで震動源位置を特定し、誤検出を防ぐことが記載されている。振動も音声と同様に波形として観測されるため、特許文献2に記載された技術を適用して振動センサを3箇所に配置することで震動源位置を特定することが可能となるが、振動センサを3箇所に配置することはコスト的に不利である。
【0006】
そこで、本発明は、2箇所に配置した振動センサにより、所定位置から発せられる特定の振動パターンの検出精度を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様である電子機器は、特定振動パターンを発する携帯型電子機器を保持する保持部と、第1振動センサ部と、第2振動センサ部と、前記携帯型電子機器が前記保持部に保持された状態で特定振動パターンを発したときに、前記第1振動センサ部から測定される第1基準波形と、前記第2振動センサ部から測定される第2基準波形と、前記第1基準波形と前記第2基準波形との到達時間差とを格納した基準波形記憶部と、ある振動について、前記第1振動センサ部から測定された第1測定波形と前記第1基準波形との相関係数の最大値が第1閾値以上の場合に前記第1測定波形から特定振動パターンを検出し、前記第2振動センサ部から測定された第2測定波形と前記第2基準波形との相関係数の最大値が第1閾値以上の場合に前記第2測定波形から特定振動パターンを検出し、両相関係数の最大値とも第1閾値以上であり、かつ検出された2つの特定振動パターンの時間差と前記到達時間差との差が第2閾値以下の場合に、前記保持部に保持された携帯型電子機器が特定振動パターンを発したと判定する波形判定部と、を備えたことを特徴とする。
上記課題を解決するため、本発明の第2の態様である電子機器は、特定振動パターンを発する携帯型電子機器を保持する保持部と、第1振動センサ部と、第2振動センサ部と、前記携帯型電子機器が前記保持部に保持された状態で特定振動パターンを発したときに、前記第1振動センサ部から測定される第1基準波形と、前記第1基準波形と同じ開始時間で前記第2振動センサ部から測定される第2基準波形とを格納した基準波形記憶部と、ある振動について、前記第1振動センサ部から測定された第1測定波形と前記第1基準波形との相関係数の最大値が第1閾値以上の場合に前記第1測定波形から特定振動パターンを検出し、前記第2振動センサ部から測定された第2測定波形と前記第2基準波形との相関係数の最大値が第1閾値以上の場合に前記第2測定波形から特定振動パターンを検出し、両相関係数の最大値とも第1閾値以上であり、かつ検出された2つの特定振動パターンの時間差が第2閾値以下の場合に、前記保持部に保持された携帯型電子機器が特定振動パターンを発したと判定する波形判定部と、を備えたことを特徴とする。
上記課題を解決するため、本発明の第3の態様である電子機器は、特定振動パターンを発する携帯型電子機器を保持する保持部と、第1振動センサ部と、第2振動センサ部と、前記携帯型電子機器が前記保持部に保持された状態で特定振動パターンを発したときに、前記第1振動センサ部から測定される第1基準波形と、前記第1基準波形と同じ開始時間で前記第2振動センサ部から測定される第2基準波形とを格納した基準波形記憶部と、ある振動について、前記第1振動センサ部から測定された第1測定波形と前記第1基準波形との正規化相関係数の最大値が第1閾値以上の場合に前記第1測定波形から特定振動パターンを検出し、前記第2振動センサ部から測定された第2測定波形と前記第2基準波形との正規化相関係数の最大値が第1閾値以上の場合に前記第2測定波形から特定振動パターンを検出し、両正規化相関係数の最大値とも第1閾値以上であり、かつ前記第1基準波形のパワー値と前記第2基準波形のパワー値との比と、前記第1測定波形から検出された特定振動パターンの波形のパワー値と前記第2測定波形から検出された特定振動パターンの波形のパワー値との比との差が第3閾値以下であり、かつ検出された2つの特定振動パターンの時間差が第2閾値以下の場合に、前記保持部に保持された携帯型電子機器が特定振動パターンを発したと判定する波形判定部と、を備えたことを特徴とする。
いずれの態様においても、前記波形判定部が、前記保持部に保持された携帯型電子機器が特定振動パターンを発したと判定した場合に、所定の反応動作を行なわせる反応動作制御部をさらに備えることができる。
また、第3の態様において、左右方向にスピーカを備え、前記第1振動センサ部と、前記第2振動センサ部とが前後方向に並んで配置されるようにしてもよい。
いずれの態様においても、前記第2振動センサ部と前記保持部との間の部品点数の方が、前記第1振動センサ部と前記保持部との間の部品点数よりも多くすることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、2箇所に配置した振動センサにより、所定位置から発せられる特定の振動パターンの検出精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態に係る電子機器の構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態に係る電子機器の外観例を示す斜視図である。
【図3】携帯型電子機器が、携帯型電子機器保持部に保持される様子を模式的に示す図である。
【図4】第1実施例において基準波形記憶部に記録されるデータを説明する図である。
【図5】電子機器の第1実施例における動作を説明するフローチャートである。
【図6】第2実施例において基準波形記憶部に記録されるデータを説明する図である。
【図7】第1振動センサ部の測定波形と第2振動センサ部の測定波形との相互相関係数の関係を説明する図である。
【図8】電子機器の第2実施例における動作を説明するフローチャートである。
【図9】第3実施例において基準波形記憶部に記録されるデータを説明する図である。
【図10】電子機器の第3実施例における動作を説明するフローチャートである。
【図11】第3実施例に適した振動センサ部の位置関係について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る電子機器100の構成を示すブロック図である。また、図2は、電子機器100の外観例を示す斜視図である。
【0011】
電子機器100は、携帯型電子機器を保持する機能を有しており、図1に示すように、電子機器機能部110、携帯型電子機器保持部112、第1振動センサ部120a、第2振動センサ部120b、波形検出測定部130、振動波形判定部140、反応動作制御部150、基準波形記憶部160、測定波形一時記憶部170を備えている。
【0012】
電子機器機能部110は、電子機器100が単独で備える機能を実現するための機能部であり、例えば、電子機器100を音楽再生装置に適用した場合には、音楽再生機能を実現し、電子機器100を映像再生装置に適用した場合には、映像再生機能を実現し、電子機器100を通信装置に適用した場合には、通信機能を実現するための機能部である。
【0013】
携帯型電子機器保持部112は、携帯型電子機器を保持するための機構であり、本実施形態では、図2に示すように、電子機器100の上面に形成されている。携帯型電子機器保持部112は、携帯型電子機器を差し込んで固定できるように窪んだ形状となっており、底部には携帯型電子機器と電気的に接続するためのコネクタが備えられている。図3は、携帯型電子機器200が、携帯型電子機器保持部112に保持される様子を模式的に示している。
【0014】
第1振動センサ部120a、第2振動センサ部120bは、振動を検知する機能部であり、ピエゾ素子等を用いて構成することができる。本実施形態では、図2に示すように、第1振動センサ部120aは携帯型電子機器保持部112の近傍に配置され、第2振動センサ部120bは電子機器100の底面に配置されている。ただし、第1振動センサ部120a、第2振動センサ部120bの配置箇所はこれらに限られない。第2振動センサ部120bの方が、第1振動センサ部120aよりも、携帯型電子機器保持部112によって保持された携帯型電子機器から発せられる振動を検知しづらい位置に設置されていればよい。例えば、遠い距離であったり、振動を伝えにくい部材を介在したり、第2振動センサ部120bと携帯型電子機器保持部112との間の部品点数の方が、第1振動センサ部120aと携帯型電子機器保持部112との間の部品点数よりも、多いようにすればよい。
【0015】
波形検出測定部130は、第1振動センサ部120a、第2振動センサ部120bから、所定レベル以上の振動が検知された場合、測定を開始する。そして、得られたそれぞれの振動波形を、デジタル変換して測定波形一時記憶部170に記録するとともに、振動を検知した旨を振動波形判定部140に通知する。波形検出測定部130は、第1振動センサ部120aから得られた測定波形を測定波形a171aとして記録し、第2振動センサ部120bから得られた測定波形を測定波形b171bとして記録する。
【0016】
振動波形判定部140は、波形検出測定部130から振動を検知した旨の通知を受け取ると、測定波形一時記憶部170および基準波形記憶部160に記録されているデータを参照して、検知された振動が携帯型電子機器保持部112に載置されている電子機器からの特定振動パターンであるかどうかの判定を行なう。そして、検知された振動が携帯型電子機器保持部112に載置されている電子機器からの特定振動パターンであると判定した場合には、検出信号を反応動作制御部150に出力する。
【0017】
反応動作制御部150は、振動波形判定部140から検出信号を入力すると、電子機器機能部110に反応動作を行なわせる。反応動作はあらかじめ定められているものとし、例えば、スタンバイ状態の解除、音楽再生、アラーム報知等とすることができる。ユーザから反応動作の選択を受け付けられるようにしてもよい。また、複数の種類の振動パターンを検出可能とした場合には、検出された振動パターンに応じて反応動作を変化させるようにしてもよい。例えば、第1の振動パターンを検出した場合は、スタンバイ状態を解除し、第2の振動パターンを検出した場合は、音楽を再生するという具合である。
【0018】
基準波形記憶部160は、携帯型電子機器200が携帯型電子機器保持部112に保持された状態で検出対象のパターンで振動したときに第1振動センサ部120aで測定された波形と第2振動センサ部120bで測定された波形とを基準波形として記録しておく記憶領域である。第1振動センサ部120aで測定された波形は基準波形A161aとしてあらかじめ記録しておき、第2振動センサ部120bで測定された波形は基準波形B161bとしてあらかじめ記録しておく。また、基準波形記憶部160は、振動波形判定部140が判定を行なう際に用いる付随情報161cも記録する。
【0019】
測定波形一時記憶部170は、上述のように第1振動センサ部が検知した振動の測定波形である測定波形a171aと、第2振動センサ部が検知した振動の測定波形である測定波形b171bとを記録する記憶領域である。測定波形a171aおよび測定波形b171bは一時的に記憶されれば足り、振動波形判定部140の判定処理が終了した後消去してもよい。
<第1実施例>
【0020】
上記構成の電子機器100の動作の第1実施例について説明する。図4は、第1実施例において、基準波形記憶部160に記録されるデータ例を示している。すなわち、基準波形A161aとして、図4(a)に例示するようなf(n)が記録され、基準波形B161bとして、図4(b)に例示するようなf(n)が記録され、付随情報161cとして、図4(c)に示すような相関係数閾値Cs(Csa、Csb)、到達時間差ΔT、時間差閾値Tsが記録されている。
【0021】
(n)、f(n)は、サンプリングされた離散信号とする。相関係数閾値Csは、測定波形に対して、基準波形をテンプレートとしてマッチングして得られた相互相関係数の最大値に関する閾値であり、得られた相互相関係数の最大値が相関係数閾値Cs以上であれば、相互相関係数の最大値となる時間(サンプリングポイント)において、検出対象である特定の振動パターンが所定の大きさで検出されたと判定される。なお、Csaは、基準波形Aに関する相関係数閾値であり、Csbは、基準波形Bに関する相関係数閾値である。
【0022】
到達時間差ΔTは、携帯型電子機器200が携帯型電子機器保持部112に保持された状態で検出対象のパターンで振動したときに、第1振動センサ部120aで測定される時間と、第2振動センサ部120bで測定される時間との時間差を示す値である。すなわち、携帯型電子機器保持部112から第1振動センサ部120aまでの距離と、携帯型電子機器保持部112から第2振動センサ部120bまでの距離差あるいは材質の相違等に応じて特定振動パターンの到達時間に差が生じる。到達時間差ΔTは、この時間差を表わしている。なお、以下では、振動伝達経路の材質の振動速度差を考慮した距離を振動距離と称する(例えば、振動伝達速度が遅い材質であれば等距離であっても振動距離は大きくなる)。携帯型電子機器保持部112から第1振動センサ部120aまでの振動距離と、携帯型電子機器保持部112から第2振動センサ部120bまでの振動距離とが等しく、到達時間差ΔTが0であってもかまわない。
【0023】
時間差閾値Tsは、測定波形aから検出された特定振動パターンの開始時間と、測定波形bから検出された特定振動パターンの開始時間との時間差と到達時間差ΔTとの差に関する閾値であり、検出された特定振動パターンの時間差と到達時間差ΔTとの差が時間差閾値Ts以内であれば、震動源が携帯型電子機器保持部112であると最終的に判定される。
【0024】
図5は、電子機器100の動作の第1実施例を説明するフローチャートである。ある場所で振動が発生すると(S101)、第1振動センサ部120aを介して検知され、波形検出測定部130が波形測定を行ない、測定波形a171aとして測定波形一時記憶部170に記録する(S102)。
【0025】
発生した振動は、第2振動センサ部120bを介しても検知され、波形検出測定部130が波形測定を行ない、測定波形b171bとして測定波形一時記憶部170に記録する(S106)。
【0026】
振動波形判定部140は、測定波形aに基準波形Aをテンプレートとしてマッチングを行ない、相互相関係数が最も大きくなるポイントを探索する(S103)。なお、基準波形Aをf(n)、測定波形aをf(n)とすると、サンプリングポイントをn'ずらしたときの相互相関係数CAa(n')は、[数1]に示す式から求めることができ、振動波形判定部140は、CAa(n')が最も大きくなるn'を抽出する。
【数1】

【0027】
そして、得られた相互相関係数CAa(n')の最大値が相関係数閾値Csa以上であるかどうかを判定する(S104)。得られた相互相関係数CAa(n')の最大値が相関係数閾値Csa以上でない場合(S104:No)は、波形パターンが異なるため測定された振動が検出対象の特定振動パターンではない、あるいは測定された振動の大きさから震動源が携帯型電子機器保持部112ではないものと判定し、本処理を終了する。なお、本実施例では、サンプリングしたデジタルデータを用いて相関係数を算出するが、アナログデータを用いて相関係数を算出するようにしてもよい。
【0028】
得られた相関係数CAa(n')の最大値が相関係数閾値Csa以上の場合(S104:Yes)は、そのときのn'に基づいて波形の開始時間を特定し、特定振動パターンが検知された時刻を特定する(S105)。
【0029】
また、振動波形判定部140は、測定波形bに基準波形Bをテンプレートとしてマッチングを行ない、相互相関係数が最も大きくなるポイントを探索する(S107)。得られた相互相関係数CBb(n')の最大値が相関係数閾値Csb以上であるかどうかを判定する(S108)。得られた相互相関係数CBb(n')の最大値が相関係数閾値Csb以上でない場合(S108:No)は、波形パターンが異なるため測定された振動が検出対象の特定振動パターンではない、あるいは測定された振動の大きさから震動源が携帯型電子機器保持部112ではないものと判定し、本処理を終了する。
【0030】
得られた相関係数CBb(n')の最大値が相関係数閾値Csb以上の場合(S108:Yes)は、そのときのn'に基づいて波形の開始時間を特定し、特定振動パターンが検知された時刻を特定する(S109)。
【0031】
測定波形a、測定波形bとも相関係数が相関係数閾値Cs(Csa、Csb)以上であれば(S110:Yes)、第1振動センサ部120a、第2振動センサ部120bで測定された波形は、検出対象の特定振動パターンであり、携帯型電子機器保持部112で発せられた場合と同程度の大きさで測定されたものと判定することができる。すなわち、震動源から第1振動センサ部120aまでの振動距離が、携帯型電子機器保持部112から第1振動センサ部120aまでの振動距離と等しく、震動源から第2振動センサ部120bまでの振動距離が、携帯型電子機器保持部112から第2振動センサ部120bまでの振動距離と等しいと推定される。
【0032】
さらに、震動源が携帯型電子機器保持部112であるかどうかの判定精度を高めるため、特定振動パターンが第1振動センサ部120aで検知された時間と、特定振動パターンが第2振動センサ部120bで検知された時間との差を算出して(S111)、特定振動パターンが検知された時間差と、あらかじめ取得した到達時間差ΔTとの差(の絶対値)が時間差閾値Ts以下であるかどうかを判定する(S112)。
【0033】
この結果、特定振動パターンが検知された時間差と到達時間差ΔTとの差が時間差閾値Ts以下であれば(S112:Yes)、震動源が携帯型電子機器保持部112である、すなわち、検知された振動が携帯型電子機器保持部112に保持された携帯型電子機器200からの特定振動パターンであると判定して、反応動作を行なう(S113)。
【0034】
一方、特定振動パターンが検知された時間差と到達時間差ΔTとの差が時間差閾値Ts以下でなければ(S112:No)、震動源が携帯型電子機器保持部112でないと判定して、反応動作を行なうことなく処理を終了する。
<第2実施例>
【0035】
上記構成の電子機器100の動作の第2実施例について説明する。図6は、第2実施例において、基準波形記憶部160に記録されるデータ例を示している。すなわち、基準波形A161aとして、図6(a)に例示するようなf(n)が記録され、基準波形B161bとして、図6(b)に例示するようなf(n)が記録され、付随情報161cとして、図6(c)に示すような相関係数閾値Cs(Csa、Csb)、最大相関係数位置差閾値Dsが記録されている。
【0036】
(n)、f(n)は、サンプリングされた離散信号とする。第1実施例ではf(n)、f(n)がそれぞれ独立していたのに対し、第2実施例では、f(n)、f(n)のうち、先に検知される方(本例では、携帯型電子機器保持部112が震動源になった場合、まず、第1振動センサ部120aで基準波形Aが検知され、Δt後に第2振動センサ部120bで基準波形Bが検知されるものとする)を基準とした相対時間関係を有するデータとしている。
【0037】
相関係数閾値Csは、測定波形に対して、基準波形をテンプレートとしてマッチングして得られた相互相関係数の最大値に関する閾値であり、得られた相互相関係数の最大値が相関係数閾値Cs以上であれば、相互相関係数の最大値となる時間(サンプリングポイント)において、検出対象である特定振動パターンが所定の大きさで検出されたと判定される。なお、Csaは、基準波形Aに関する相関係数閾値であり、Csbは、基準波形Bに関する相関係数閾値である。
【0038】
最大相関値位置差Dsは、測定波形aと基準波形Aとの相関係数が最大となるサンプリング位置n'と測定波形bと基準波形Bとの相関係数が最大となるサンプリング位置n'との差に関する閾値である。第2実施例では、基準波形が到達時間の差Δtを含んでいるため、震動源が携帯型電子機器保持部112であれば、図7に示すように、相互相関関数が最大となる両サンプリング位置n'は、ほぼ同じ値になるはずである。
【0039】
図8は、電子機器100の動作の第2実施例を説明するフローチャートである。ある場所で振動が発生すると(S201)、第1振動センサ部120aを介して検知する(S202)。ただし、携帯型電子機器保持部112が震動源のときに、第2振動センサ部120bに先に振動が到達する場合には、第2振動センサ部120bを介して検知するようにする。
【0040】
第1振動センサ部120aを介して振動の発生を検知すると、第1振動センサ部120aで検知される振動と、第2振動センサ部120bで検知される振動とを同時に測定開始する(S203)。すなわち、サンプリングタイミングを共通にする。そして、第1振動センサ部120aを介して測定された波形を測定波形a171aとして測定波形一時記憶部170に記録し、第2振動センサ部120bを介して測定された波形を測定波形b171bとして測定波形一時記憶部170に記録する。
【0041】
振動波形判定部140は、測定波形に基準波形Aをテンプレートとしてマッチングを行ない、相互相関係数が最も大きくなるポイントを探索する(S204)。また、測定波形bに基準波形Bをテンプレートとしてマッチングを行ない、相互相関係数が最も大きくなるポイントを探索する(S205)。
【0042】
そして、得られた相互相関係数の最大値がいずれも相関係数閾値Cs(Csa、Csb)以上であるかどうかを判定する(S206)。得られた相互相関係数の両方が相関係数閾値Cs(Csa、Csb)以上でない場合は(S206:No)、測定された振動が検出対象の特定振動パターンではない、あるいは震動源が携帯型電子機器保持部112ではないものと判定し、本処理を終了する。
【0043】
得られた相互相関係数の最大値がいずれも相関係数閾値Cs(Csa、Csb)以上であれば(S206:Yes)、第1振動センサ部120a、第2振動センサ部120bで測定された波形は、検出対象の特定振動パターンであり、携帯型電子機器保持部112で発せられた場合と同程度の大きさで測定されたものと判定することができる。
【0044】
そして、測定波形aと基準波形Aとの相関係数が最大となるサンプリング位置n'と測定波形bと基準波形Bとの相関係数が最大となるサンプリング位置n'との差(の絶対値)が最大相関値位置差Ds以下であるかどうかを判定する(S207)。
【0045】
この結果、相関係数が最大となるサンプリング位置n'の差が最大相関値位置差Ds以下であれば(S207:Yes)、震動源が携帯型電子機器保持部112である、すなわち、検知された振動が携帯型電子機器保持部112に保持された携帯型電子機器200からの特定振動パターンであると判定し、反応動作を行なう(S208)。
【0046】
一方、相関係数が最大となるサンプリング位置n'の差が最大相関値位置差Ds以下でなければ(S207:No)、震動源が携帯型電子機器保持部112でないと判定して、反応動作を行なうことなく処理を終了する。
<第3実施例>
【0047】
上記構成の電子機器100の動作の第3実施例について説明する。第1実施例、第2実施例では、携帯型電子機器200の発する特定振動パターンの大きさが、基準波形を測定したときの大きさと同一であることを前提としたが、振動パターンの大きさは、ユーザの設定によって変更される場合もある。そこで、第3実施例では、第2実施例の変形として、携帯型電子機器200の発する特定振動パターンの大きさが、基準波形を測定したときの大きさから変化した場合にも高い精度で検出可能とする動作例について説明する。
【0048】
図9は、第3実施例において、基準波形記憶部160に記録されるデータ例を示している。すなわち、基準波形A161aとして、図9(a)に例示するようなf(n)が記録され、基準波形B161bとして、図9(b)に例示するようなf(n)が記録され、付随情報161cとして、図9(c)に示すような基準波形Aパワー値P、基準波形Bパワー値P、相関係数閾値Cs、最大相関係数位置差閾値Ds、パワー比差閾値Rsが記録されている。第3実施例では、振動の大きさを比較するためにパワー値を導入し、パワー値の比を算出することで、第1振動センサ部120aと第2振動センサ部120bとにおける相対的な振動の大きさ関係を評価する。
【0049】
(n)、f(n)、Cs、Dsは、第2実施例と同じである。なお、第3実施例では正規化相互相関係数を算出するため、相関係数閾値は、基準波形A、基準波形Bとも共通のCsを用いることができる。基準波形Aパワー値Pは、基準波形Aのパワーであり、波形f(n)のパワー値Pは、[数2]に示す式により算出することができる。基準波形Bパワー値Pも波形f(n)を用いて同様に算出することができる。
【数2】

【0050】
パワー比差閾値Rsは、基準波形Aのパワー値Pと基準波形Bのパワー値Pとの比RABと、測定波形aのパワー値Pと測定波形bのパワー値Pとの比Rabとの差に関する閾値である。基準波形のパワーの比RABと測定波形のパワーの比Rabとが近ければ、両測定波形は、それぞれの基準波形と同じ相似比で相似の関係を有していることになる。したがって、特定振動パターンが、携帯型電子機器保持部112で発せられた場合と同程度の相対差の大きさで第1振動センサ部120aおよび第2振動センサ部120bで測定されたものと判定することができる。
【0051】
図10は、電子機器100の動作の第3実施例を説明するフローチャートである。第2実施例と同様の処理については説明を簡略化する。ある場所で振動が発生すると(S301)、第1振動センサ部120aを介して検知する(S302)。第1振動センサ部120aを介して振動の発生を検知すると、第1振動センサ部120aで検知される振動と、第2振動センサ部120bで検知される振動とを同時に測定開始する(S303)。すなわち、サンプリングタイミングを共通にする。そして、第1振動センサ部120aを介して測定された波形を測定波形a171aとして測定波形一時記憶部170に記録し、第2振動センサ部120bを介して測定された波形を測定波形b171bとして測定波形一時記憶部170に記録する。
【0052】
そして、後で振動の大きさの差を評価するため、測定波形aおよび測定波形bのパワー値を算出する(S304)。波形f(n)のパワー値Pは、[数3]に示す式により算出することができる。
【数3】

【0053】
次に、振動波形判定部140は、測定波形aに基準波形Aをテンプレートとして正規化マッチングを行ない、正規化相互相関係数が最も大きくなるポイントを探索する(S305)。ここで、正規化相互相関係数CNAa(n')は、[数4]に示す式により算出することができる。
【数4】

【0054】
また、測定波形bに基準波形Bをテンプレートとして正規化マッチングを行ない、正規化相互相関係数が最も大きくなるポイントを探索する(S306)。正規化相互相関係数CNBb(n')は、正規化相互相関係数CNAa(n')と同様に算出することができる。
【0055】
次に、算出された正規化相互相関係数の最大値がいずれも相関係数閾値Cs以上であるかどうかを判定する(S307)。得られた相互相関係数の両方が相関係数閾値Cs以上でない場合は(S307:No)、測定された振動が検出対象の特定振動パターンではないものと判定し、本処理を終了する。なお、第3実施例では、正規化しているため相関係数閾値Csは1に近い値とする。
【0056】
得られた相互相関係数の最大値がいずれも相関係数閾値Cs以上であれば(S307:Yes)、第1振動センサ部120a、第2振動センサ部120bで測定された波形は、検出対象の特定振動パターンであると判定することができる。
【0057】
そして、振動の大きさの差を評価するため、基準波形Aのパワー値Pと基準波形Bのパワー値Pとの比RABと、測定波形aのパワー値Pと測定波形bのパワー値Pとの比Rabとの差(の絶対値)がパワー比差閾値Rs以下であるかどうかを判定する(S308)。RABとRabとの差がパワー比差閾値Rs以下でなければ(S308:No)、第1振動センサ部120aで測定された振動大きさと第2振動センサ部120bで測定された振動大きさとの相対差が、震動源が携帯型電子機器保持部112である場合と異なるものとして処理を終了する。
【0058】
ABとRabとの差がパワー比差閾値Rs以下であれば(S308:Yes)、携帯型電子機器保持部112で発せられた場合と同程度の相対大きさ差で測定されたものであるため、さらに、測定波形aと基準波形Aとの相関係数が最大となるサンプリング位置n'と測定波形bと基準波形Bとの相関係数が最大となるサンプリング位置n'との差が最大相関値位置差Ds以下であるかどうかを判定する(S309)。
【0059】
この結果、相関係数が最大となるサンプリング位置n'の差が最大相関値位置差Ds以下であれば(S309:Yes)、震動源が携帯型電子機器保持部112である、すなわち、検知された振動が携帯型電子機器保持部112に保持された携帯型電子機器200からの特定振動パターンであると判定し、反応動作を行なう(S310)。
【0060】
一方、相関係数が最大となるサンプリング位置n'の差が最大相関値位置差Ds以下でなければ(S309:No)、震動源が携帯型電子機器保持部112でないと判定して、反応動作を行なうことなく処理を終了する。
【0061】
なお、第3実施例では、携帯型電子機器200の発する特定振動パターンの大きさを不定としているため、第1振動センサ部120a、第2振動センサ部120bで測定される相対大きさ差に基づいて震動源位置を推定している。このため、図11(a)に示すように、第1振動センサ部120a、第2振動センサ部120bからの振動距離差が等しい矢印上における位置特定精度が第1実施例、第2実施例と比較して低下する。
【0062】
そこで、携帯型電子機器保持部112に載置されていない他の携帯型電子機器が、第1振動センサ部120aと第2振動センサ部120bとを結ぶ直線に直交する方向に置かれにくくなるように第1振動センサ部120aと第2振動センサ部120bとを配置することが望ましい。
【0063】
例えば、電子機器100が音楽再生装置であり、図11(b)に示すように両サイドにスピーカ(Lch−SP、Rch−SP)が置かれる場合には、横方向に他の携帯型電子機器が置かれる可能性が低くなるものと想定される。このため、本図に示すように第1振動センサ部120aと第2振動センサ部120bとを電子機器100の前後方向に並んだ位置関係で配置するとよい。このように第1振動センサ部120aと第2振動センサ部120bとを配置することで、震動源の前後方向の検出精度が高まるため、携帯型電子機器保持部112に載置されていない他の携帯型電子機器の振動による誤検出を高い精度で防止することができる。
【符号の説明】
【0064】
100…電子機器
110…電子機器機能部
112…携帯型電子機器保持部
120a…第1振動センサ部
120b…第2振動センサ部
130…波形検出測定部
140…波形判定部
150…反応動作制御部
160…基準波形記憶部
170…測定波形一時記憶部
200…携帯型電子機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定振動パターンを発する携帯型電子機器を保持する保持部と、
第1振動センサ部と、
前記第1振動センサ部よりも、保持された前記携帯型電子機器から発せられる振動を検知しづらい位置に設置された第2振動センサ部と、
前記携帯型電子機器が前記保持部に保持された状態で特定振動パターンを発したときに、前記第1振動センサ部から測定される第1基準波形と、前記第2振動センサ部から測定される第2基準波形と、前記第1基準波形と前記第2基準波形との到達時間差とを格納した基準波形記憶部と、
ある振動について、前記第1振動センサ部から測定された第1測定波形と前記第1基準波形との相関係数の最大値が第1閾値以上の場合に前記第1測定波形から特定振動パターンを検出し、前記第2振動センサ部から測定された第2測定波形と前記第2基準波形との相関係数の最大値が第1閾値以上の場合に前記第2測定波形から特定振動パターンを検出し、両相関係数の最大値とも第1閾値以上であり、かつ検出された2つの特定振動パターンの時間差と前記到達時間差との差が第2閾値以下の場合に、前記保持部に保持された携帯型電子機器が特定振動パターンを発したと判定する波形判定部と、
を備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
特定振動パターンを発する携帯型電子機器を保持する保持部と、
第1振動センサ部と、
前記第1振動センサ部よりも、保持された前記携帯型電子機器から発せられる振動を検知しづらい位置に設置された第2振動センサ部と、
前記携帯型電子機器が前記保持部に保持された状態で特定振動パターンを発したときに、前記第1振動センサ部から測定される第1基準波形と、前記第1基準波形と同じ開始時間で前記第2振動センサ部から測定される第2基準波形とを格納した基準波形記憶部と、
ある振動について、前記第1振動センサ部から測定された第1測定波形と前記第1基準波形との相関係数の最大値が第1閾値以上の場合に前記第1測定波形から特定振動パターンを検出し、前記第2振動センサ部から測定された第2測定波形と前記第2基準波形との相関係数の最大値が第1閾値以上の場合に前記第2測定波形から特定振動パターンを検出し、両相関係数の最大値とも第1閾値以上であり、かつ検出された2つの特定振動パターンの時間差が第2閾値以下の場合に、前記保持部に保持された携帯型電子機器が特定振動パターンを発したと判定する波形判定部と、
を備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項3】
特定振動パターンを発する携帯型電子機器を保持する保持部と、
第1振動センサ部と、
前記第1振動センサ部よりも、保持された前記携帯型電子機器から発せられる振動を検知しづらい位置に設置された第2振動センサ部と、
前記携帯型電子機器が前記保持部に保持された状態で特定振動パターンを発したときに、前記第1振動センサ部から測定される第1基準波形と、前記第1基準波形と同じ開始時間で前記第2振動センサ部から測定される第2基準波形とを格納した基準波形記憶部と、
ある振動について、前記第1振動センサ部から測定された第1測定波形と前記第1基準波形との正規化相関係数の最大値が第1閾値以上の場合に前記第1測定波形から特定振動パターンを検出し、前記第2振動センサ部から測定された第2測定波形と前記第2基準波形との正規化相関係数の最大値が第1閾値以上の場合に前記第2測定波形から特定振動パターンを検出し、両正規化相関係数の最大値とも第1閾値以上であり、かつ前記第1基準波形のパワー値と前記第2基準波形のパワー値との比と、前記第1測定波形から検出された特定振動パターンの波形のパワー値と前記第2測定波形から検出された特定振動パターンの波形のパワー値との比との差が第3閾値以下であり、かつ検出された2つの特定振動パターンの時間差が第2閾値以下の場合に、前記保持部に保持された携帯型電子機器が特定振動パターンを発したと判定する波形判定部と、
を備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項4】
前記波形判定部が、前記保持部に保持された携帯型電子機器が特定振動パターンを発したと判定した場合に、所定の反応動作を行なわせる反応動作制御部をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項5】
左右方向にスピーカを備え、
前記第1振動センサ部と、前記第2振動センサ部とが前後方向に並んで配置されていることを特徴とする請求項3に記載の電子機器。
【請求項6】
前記第2振動センサ部と前記保持部との間の部品点数の方が、前記第1振動センサ部と前記保持部との間の部品点数よりも多いことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−70137(P2013−70137A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205743(P2011−205743)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】