説明

携帯型電子機器

【課題】把持部を手で把持した状態で機器動作が実行された場合でも制御回路から手に伝達される熱量が少ない携帯型電子機器を提供する。
【解決手段】本発明に係る携帯型電子機器の一実施形態は、手で把持するための把持部を有する筐体の内部に、機器動作を制御するASIC60を配備してなるビデオカメラであって、ASIC60が、筐体の内部領域の内、把持部の内部領域とは異なる領域に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラや携帯電話機等の携帯型電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、手で把持するための把持部を有する筐体の内部に、機器動作を制御する制御回路を配備してなる携帯型電子機器が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
例えば、ビデオカメラには、撮像機構が配備された筐体と、液晶ディスプレイが配備された第2の筐体とが、2軸ヒンジ機構によって互いに開閉可能に連結されたものが存在している。この様な構成のビデオカメラにおいては、把持部は、撮像機構が配備された筐体の内、該筐体に対して第2の筐体が閉じられた閉じ状態で該第2の筐体と対向する領域に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−212646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の携帯型電子機器においては、筐体の内部の様々な領域に制御回路が設置されていた。特に把持部を有する携帯型電子機器においては、把持部の内部領域に制御回路の少なくとも一部が設置されていた。従って、機器動作が実行されて制御回路から大量の熱が発生した場合、把持部を把持している手には熱が伝達され易く、その結果、手に熱さを感じて携帯型電子機器の操作を中断せざるを得ない状況になる虞があった。
【0006】
そこで本発明の目的は、把持部を手で把持した状態で機器動作が実行された場合でも制御回路から手に伝達される熱量が少ない携帯型電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る携帯型電子機器は、手で把持するための把持部を有する筐体の内部に、機器動作を制御する制御回路を配備してなる携帯型電子機器であって、前記制御回路が、筐体の内部領域の内、前記把持部の内部領域とは異なる領域に配置されている。
【0008】
上記携帯型電子機器においては、所定の機器動作が実行されると、制御回路が駆動して該制御回路は発熱することになる。ここで、制御回路は、筐体の内部領域の内、把持部の内部領域とは異なる領域に配置されている。従って、筐体の把持部を手で把持した状態で、機器動作が実行されて制御回路から大量の熱が発生した場合でも、把持部を把持している手に伝達される熱量は少ない。よって、機器動作の実行時に、把持部を把持している手に熱さを感じて携帯型電子機器の操作を中断せざるを得ない状況になり難い。
【0009】
上記携帯型電子機器の具体的構成において、前記筐体には、第2の筐体がヒンジ機構を介して連結されており、前記制御回路が配備されている前記筐体には、該筐体に対して第2の筐体が閉じられた閉じ状態で該第2の筐体と対向する領域に前記把持部が形成されている。
【0010】
上記携帯型電子機器の他の具体的構成において、前記制御回路が配備されている前記筐体の内部には、該筐体の熱伝導性より高い熱伝導性を有する材料から形成されたシャーシが配備されており、該シャーシには、前記制御回路が近接して配置されている。
【0011】
制御回路から生じた熱が該制御回路近傍の領域に滞留すると、過熱により制御回路が破損する虞がある。上記具体的構成においては、制御回路から生じた熱が、シャーシへ移動して該シャーシ全体に拡散することになる。従って、過熱による制御回路の破損が防止されることになる。
【0012】
上記携帯型電子機器のより具体的な構成において、前記シャーシの表面には、樹脂製のシートが貼着されている。ここで、樹脂製のシートは高い輻射率を有している。従って、該具体的構成によれば、制御回路から生じた熱は、シャーシを通じて樹脂製のシートに伝達され、樹脂製のシートから輻射によって筐体の外部に放出されることになる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る携帯型電子機器によれば、把持部を手で把持した状態で機器動作が実行された場合でも、制御回路から手に伝達される熱量が少ない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の一実施態様であるビデオカメラを第2開き状態で正面側から見た斜視図である。
【図2】図2は、該ビデオカメラを第2開き状態で背面側から見た斜視図である。
【図3】図3は、該ビデオカメラの第2開き状態の側面図である。
【図4】図4は、該ビデオカメラの第1開き状態の正面図である。
【図5】図5は、該ビデオカメラの閉じ状態の背面図である。
【図6】図6は、該ビデオカメラが具える第1筐体の分解斜視図である。
【図7】図7は、該第1筐体の内部を第3キャビネット部品側から見た平面図である。
【図8】図8は、図7に示されるA−A線に沿う断面図である。
【図9】図9は、上記第1筐体の内部に配備されている回路基板、シャーシ本体、及び樹脂製のシートを示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を静止画及び動画の撮影が可能なビデオカメラに実施した形態につき、図面に沿って具体的に説明する。
図1及び図2に示す様に、本発明の一実施態様であるビデオカメラは、第1筐体(1)と第2筐体(2)を具えている。両筐体(1)(2)は、図3に示す様に2軸ヒンジ機構(3)によって互いに開閉可能に連結されおり、ビデオカメラには、図5に示す様に第2筐体(2)が第1筐体(1)に対して閉じられた閉じ状態と、図4に示す様に第2筐体(2)が第1筐体(1)に対して開かれた第1開き状態と、図1〜図3に示す様に該第1開き状態から第2筐体(2)を回動させた第2開き状態とを設定することが可能である。
【0016】
図5に示す様に、第1筐体(1)には、ビデオカメラが閉じ状態に設定されたときに第2筐体(2)と対向する領域に把持部(4)が形成されている。ビデオカメラは、図1〜図3に示す様に第2開き状態に設定されて、把持部(4)を手で把持することにより使用される。
【0017】
又、図4に示す様に、第1筐体(1)の底部には、三脚(図示せず)を取り付けるための取付け座(10)が設けられている。ここで、取付け座(10)には、三脚に形成された雄ネジが捻じ込まれる雌ネジが形成され、該雌ネジは第1筐体(1)の底面に露出している。取付け座(10)を利用してビデオカメラを三脚に取り付けることにより、該ビデオカメラを床や地面に設置して使用することが可能となる。
尚、取付け座(10)は、図9に示す様に、後述するシャーシ本体(50)の下端位置に取り付けられる別の部材(52)に形成されている。
【0018】
第1筐体(1)の前部には、図1に示す様に、撮影レンズ(11)及び照明用のLED(Light Emitting Diode)(12)が配備される一方、第1筐体(1)の後部には、図2に示す様に、静止画撮影を指示するシャッター釦(13)、ズーム釦(14)、動画撮影を指示する録画釦(15)、及びアクセスランプ(16)が配備されている。
又、第1筐体(1)の把持部(4)の表面には、図3及び図4に示す様に、ビデオカメラが閉じ状態に設定されたときに第2筐体(2)によって覆われる領域に、電源釦(17)、カード蓋(18)及び電池蓋(19)が配備されている。
【0019】
第2筐体(2)の外面には、図1に示す様に、一対のマイクロホン(22)(22)が配備される一方、第2筐体(2)の内面には、図2に示す様に、液晶ディスプレイ(21)が配備されると共に、該液晶ディスプレイ(21)の配置領域とは別の領域に、録画/再生キー(23)、メニューキー(24)、十字キー(25)及びセットキー(26)が配備されている。尚、第2筐体(2)の外面にはメッキ処理が施されている。
【0020】
図6に示す様に、第1筐体(1)は、シャーシ(5)に対して、第1筐体(1)の湾曲した上面壁を構成する第1キャビネット部品(101)と、図6の紙面において第1筐体(1)の右側面壁を構成する第2キャビネット部品(102)と、図6の紙面において第1筐体(1)の上部の左側面壁を構成する第3キャビネット部品(103)とを取り付けて構成されている。ここで、第1キャビネット部品(101)及び第3キャビネット部品(103)は合成樹脂製であるのに対し、第2キャビネット部品(102)はアルミニウム製である。
【0021】
シャーシ(5)は、図7に示す如くシャーシ本体(50)を有しており、該シャーシ本体(50)に対して、第1キャビネット部品(101)、第2キャビネット部品(102)、及び第3キャビネット部品(103)が取り付けられている。ここで、シャーシ本体(50)はマグネシウム製である。マグネシウムはアルミニウムや合成樹脂より熱伝導率が高いので、シャーシ本体(50)は、第1筐体(1)より高い熱伝導性を有している。
【0022】
又、図8に示すように、シャーシ本体(50)の上部(501)は、第3キャビネット部品(103)側へクランク状に屈曲した形状を有している。
【0023】
シャーシ本体(50)の第2キャビネット部品(102)側の表面には、回路基板(6)が設置され、シャーシ本体(50)の上部(501)と回路基板(6)との間には、隙間(502)が形成されている。ここで、該隙間(502)は、第1筐体(1)の内部領域の内、把持部(4)の内部領域とは異なる領域、具体的には第1筐体(1)の上部の内部領域に配置されている。
【0024】
図8に示す様に(図9も参照)、回路基板(6)のシャーシ本体(50)側の表面には、シャーシ本体(50)の上部(501)との間に隙間(502)が形成されている領域に、ビデオカメラの機器動作を制御するASIC(Application Specific Integrated Circuit)(60)が搭載されている。従って、ASIC(60)は、隙間(502)内に収容されて、第1筐体(1)の内部領域の内、把持部(4)の内部領域とは異なる領域に配置されている。
【0025】
図8に示す様に、シャーシ本体(50)の上部(501)には、回路基板(6)側の表面に隆起部(51)が形成されており、ASIC(60)の表面には該隆起部(51)の先端面が近接している。
【0026】
図8に示す様に(図9も参照)、シャーシ本体(50)には、第3キャビネット部品(103)側の表面の内、中央の領域に、樹脂製のシート(7)が貼着されている。ここで、該中央の領域は、第1筐体(1)の把持部(4)を右手で把持したときに、該右手によって覆われにくい表面領域である。又、シート(7)を構成する材料には、ポリカーボネート樹脂が用いられている。
【0027】
上記ビデオカメラにおいては、所定の機器動作が実行されると、ASIC(60)が駆動して該ASIC(60)は発熱することになる。ここで、ASIC(60)は、第1筐体(1)の内部領域の内、把持部(4)の内部領域とは異なる領域、具体的には第1筐体(1)の上部の内部領域に配置されている。従って、第1筐体(1)の把持部(4)を手で把持した状態で、機器動作が実行されてASIC(60)から大量の熱が発生した場合でも、把持部(4)を把持している手に伝達される熱量は少ない。よって、機器動作の実行時に、把持部(4)を把持している手に熱さを感じてビデオカメラの操作を中断せざるを得ない状況になり難い。
【0028】
ASIC(60)から生じた熱が該AISC(60)近傍の領域に滞留すると、過熱によりASIC(60)が破損する虞がある。上記ビデオカメラにおいては、ASIC(60)から生じた熱は、該ASIC(60)の表面に近接したシャーシ本体(50)の隆起部(51)を通じてシャーシ本体(50)へ移動し、これによりシャーシ本体(50)全体に熱が拡散することになる。従って、過熱によるASIC(60)の破損が防止されることになる。
【0029】
更に、上記ビデオカメラにおいては、シャーシ本体(50)の表面に樹脂製のシート(7)が貼着されている。ここで、樹脂製のシート(7)は高い輻射率を有している。従って、ASIC(60)から生じた熱は、シャーシ本体(50)を通じて樹脂製のシート(7)に伝達され、樹脂製のシート(7)から輻射によって第1筐体(1)の外部に放出されることになる。
【0030】
上述した様に、樹脂製のシート(7)は、第3キャビネット部品(103)側の表面の内、把持部(4)を把持した右手によって覆われにくい表面領域に配置されている。従って、樹脂製のシート(7)からの輻射熱は、把持部(4)を把持した右手に伝達され難い。
【0031】
尚、本発明の各部構成は上記実施の形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。例えば、上記ビデオカメラは、シャーシ本体(50)の隆起部(51)とASIC(60)との間に熱伝導材料が介在した構成を有していてもよい。この構成によれば、ASIC(60)から生じた熱が、より効率良くシャーシ本体(50)に伝達されることになる。
【0032】
樹脂製のシート(7)を構成する材料には、ポリカーボネート樹脂に限らず、輻射率の高い種々の樹脂を用いることが出来る。又、シャーシ本体(50)を構成する材料には、マグネシウムに限らず、熱伝導率の高い種々の金属を用いることが出来る。
【0033】
上記ビデオカメラに採用した各種構成は、筐体の内部にASIC等の制御回路を配備してなる種々の携帯型電子機器に適用することが出来る。
【符号の説明】
【0034】
(1) 第1筐体
(2) 第2筐体
(3) 2軸ヒンジ機構
(4) 把持部
(5) シャーシ
(50) シャーシ本体
(6) 回路基板
(60) ASIC(制御回路)
(7) 樹脂製のシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手で把持するための把持部を有する筐体の内部に、機器動作を制御する制御回路を配備してなる携帯型電子機器において、前記制御回路が、筐体の内部領域の内、前記把持部の内部領域とは異なる領域に配置されていることを特徴とする携帯型電子機器。
【請求項2】
前記筐体には、第2の筐体がヒンジ機構を介して連結されており、前記制御回路が配備されている前記筐体には、該筐体に対して第2の筐体が閉じられた閉じ状態で該第2の筐体と対向する領域に前記把持部が形成されている請求項1に記載の携帯型電子機器。
【請求項3】
前記制御回路が配備されている前記筐体の内部には、該筐体の熱伝導性より高い熱伝導性を有する材料から形成されたシャーシが配備されており、該シャーシには、前記制御回路が近接して配置されている請求項1又は請求項2に記載の携帯型電子機器。
【請求項4】
前記シャーシの表面には、樹脂製のシートが貼着されている請求項3に記載の携帯型電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−137985(P2011−137985A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297717(P2009−297717)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】