説明

携帯型電子機器

【課題】カバーを機器本体に組み付ける作業の作業性を向上しながら、カバーが機器本体から離脱することを防ぐことのできる電子機器を提供することにある。
【解決手段】保持部12はカバー20がキャビネット11に対して軸部21の半径方向において脱着できるように、軸部21の半径方向での軸部21の相対移動を許容する形状を有している。係合部材50は軸部21と保持部12の相対移動を規制するようにキャビネット11に引っ掛かるロック位置と、キャビネット11との引っ掛かりを解消するアンロック位置とに移動可能であり、ストッパ13はロック位置からアンロック位置への係合部材50の移動を制限する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は可搬型記録媒体の収容室を覆うカバーを備える携帯型電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、可搬型記録媒体の収容室が機器本体に設けられた携帯型電子機器が利用されている。下記特許文献1に開示された電子機器は、その背面に開閉可能なカバーを有し、機器本体に形成された収容室をカバーによって覆っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開2007/0202956号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような電子機器では、カバー又は機器本体の一方にカバーを開閉可能に支持する軸部が形成され、他方に軸部を保持する円筒状の保持部が形成される場合がある。しかしながら、そのような構造では、電子機器の製造工程で軸部が形成された部材を僅かに湾曲させながら、軸部を保持部に嵌める作業が必要となり、作業性が良くなかった。
【0005】
本発明の目的は、カバーを機器本体に組み付ける作業の作業性を向上しながら、カバーが機器本体から離脱することを防ぐことのできる電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る携帯型電子機器は、機器本体と前記機器本体に対して開閉可能なカバーと、前記機器本体に形成され、前記カバーによって覆われる、記録媒体を収容するための収容室と、前記機器本体又は前記カバーに設けられ、前記カバーを開閉可能に支持する軸部と、前記カバー又は前記機器本体のうち前記軸部が設けられた部材とは反対の部材に設けられ、前記軸部を保持する保持部とを備える。前記保持部は前記カバーが前記機器本体に対して前記軸部の半径方向において脱着できるように、前記半径方向での前記軸部の相対移動を許容する形状を有している。また、前記電子機器は、前記機器本体と前記カバーのうち一方に取り付けられ、前記軸部を中心に動くことができる係合部材を備えている。前記係合部材は前記軸部と前記保持部との前記相対移動を規制するように前記機器本体と前記カバーのうち他方に引っ掛かるロック位置と、前記他方との引っ掛かりを解消するアンロック位置とに移動可能である。前記電子機器は前記ロック位置から前記アンロック位置への前記係合部材の移動を制限するストッパを備える。
【0007】
本発明によれば、係合部材をアンロック位置に配置した状態で、カバーを機器本体に対して軸部の半径方向において脱着できるので、カバーを機器本体に取り付ける作業の作業性を向上できる。また、カバーを機器本体に取り付けた後は、係合部材をロック位置に移動することによって、カバーが機器本体から離脱することを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態に係る携帯型電子機器の正面を斜めから臨む斜視図である。
【図2】上記電子機器の背面に設けられたカバー20が開かれた状態を示す斜視図である。
【図3】上記電子機器の背面図である。
【図4】上記カバーが機器本体から取り外された状態を示す斜視図である。
【図5】上記カバーと係合部材の動きを説明するための断面図である。図5は閉位置に配置されたカバーとロック位置に配置された係合部材を示している。
【図6】上記カバーと係合部材の動きを説明するための断面図である。図6は開位置に配置されたカバーと、中間傾斜位置に配置された係合部材を示している。
【図7】上記カバーと係合部材の動きを説明するための断面図である。図7は開位置に配置されたカバーと、アンロック位置に配置された係合部材を示している。
【図8】図3に示すVIII−VIII線での概略断面図である。図8(a)はカバーが閉位置に配置されているときの取付部とストッパとの位置関係を示し、(b)はカバーが開位置に配置されているときの取付部とストッパとの位置関係を示している。
【図9】キャビネットにおいて保持部が設けられた部分の拡大斜視図である。
【図10】軸部とカバーの保持部に対する動きを説明するための図である。図10(a)は閉位置に配置されたカバーを示し、図10(b)は開位置に配置されたカバーを示している。
【図11】図11は図1の拡大図であり、カバーが開位置に配置されたカバーと、中間傾斜位置に配置された係合部材とが示されている。
【図12】収容室の側壁に形成された凸部とカバーに形成されたフランジ部との位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は本発明の一実施形態に係る携帯型電子機器1の正面を斜めから臨む斜視図である。図2は電子機器1の背面に設けられた後述するカバー20が開かれた状態を示す斜視図である。図3は電子機器1の背面図である。図4はカバー20が機器本体10から取り外された状態を示す斜視図である。図5乃至図7はカバー20と、後述する係合部材50の動きを説明するための断面図である。これらの図は図3のV−V線で示す面をその切断面としている。図5は閉位置に配置されたカバー20とロック位置に配置された係合部材50を示している。図6は開位置に配置されたカバー20と、後述する中間傾斜位置に配置された係合部材50を示している。図7は開位置に配置されたカバー20と、アンロック位置に配置された係合部材50を示している。
【0010】
以下の説明では、図1に示すX1,X2をそれぞれ右方向,左方向とする。また、Y1,Y2の示す方向をそれぞれ前方,後方とし、Z1,Z2の示す方向をそれぞれ上方,下方とする。また、以下では、カバー20が閉位置から開位置に向かう時のカバー20の回転方向を開方向(図5においてR1)と称する。また、カバー20が開位置から閉位置に向かう時のカバー20の回転方向を閉方向(図7においてR2)と称する。
【0011】
図1に示すように、電子機器1はその前面に表示画面2を有している。この例の電子機器1はゲーム装置や、動画像再生装置、通信装置として機能し得る装置であり、表示画面2の右側と左側とに、ユーザが操作可能な複数の操作部材を有している。具体的には、表示画面2の右側には複数のボタン3が配置されている。表示画面2の左側には十字キー4と操作スティック5が配置されている。
【0012】
図3に示すように、電子機器1は機器本体10と、機器本体10に対して開閉可能なカバー20とを有している。この例では、カバー20は機器本体10の背面側に配置されている。機器本体10は、図2に示すように、回路基板(不図示)や、表示画面2を構成する表示装置(不図示)など、電子機器1を構成する種々の部品が取り付けられるキャビネット11を有している。キャビネット11には、ゲームプログラムや動画像データ等が格納された可搬型記録媒体90を収容するための収容室Sが形成されている(図3及び図5参照)。収容室Sはキャビネット11の背面側に形成されており、カバー20によって覆われる。なお、キャビネット11には記録媒体90の読み取り装置も取り付けられている。
【0013】
電子機器1は、図4に示すように、軸部21と、軸部21を相対回転可能に支持する保持部12とを有している。軸部21はカバー20を開閉可能に支持しており、カバー20は軸部21を中心にして動くことができる。具体的には、カバー20は開位置(図5に示すカバー20の位置)と、閉位置(図6及び図7に示すカバー20の位置)とに移動できる。この例では軸部21はカバー20に形成され、保持部12はキャビネット11に形成されている。そのため、カバー20の開閉にともなって軸部21は保持部12に対して相対回転する。
【0014】
この例のカバー20は、その下縁に、取付部22A,22Bを有している。取付部22A,22Bはカバー20が閉位置に配置された状態でキャビネット11に向かって突出する。軸部21は取付部22A,22Bの側面から左右方向に突出している。この例のカバー20は左右方向に離れた2つの取付部22A,22Bを有し、軸部21は各取付部22A,22Bに形成されている。
【0015】
なお、キャビネット11はカバー20の開位置を越える移動を規制するストッパ16を有している(図3参照)。図8は図3に示すVIII−VIII線での概略断面図である。図8(a)はカバー20が閉位置に配置されているときの取付部22Bとストッパ16との位置関係を示し、(b)はカバー20が開位置に配置されているときの取付部22Bとストッパ16との位置関係を示している。これらの図に示すように、ストッパ16はキャビネット11の底部から突出している。取付部22Bは、カバー20が開位置に配置されたときに、開方向R1で、ストッパ16に当る。これにより、カバー20の開位置を越える移動が規制される。
【0016】
保持部12は、軸部21の半径方向での軸部21と保持部12との相対移動を許容する形状を有している。そのため、カバー20は、キャビネット11に対して軸部21の半径方向に脱着できる。図9はキャビネット11において保持部12が設けられた部分の拡大斜視図である。図10は軸部21とカバー20の保持部12に対する動きを説明するための図である。図10(a)は閉位置に配置されたカバー20を示し、図10(b)は開位置に配置されたカバー20を示している。図9及び図10に示すように、この例の保持部12には、軸部21の半径方向(この例では、Y2の示す後方)に開いた凹部12aが形成されている。この例では、凹部12aはキャビネット11の後側に向かって開いている。軸部21は凹部12aに嵌められ、凹部12aの内側で回転できる。凹部12aが後方に開いているので、軸部21は保持部12に対して後方に動くことができる。すなわち、電子機器1の製造工程において、カバー20を撓ませることなく、軸部21を保持部12に対してキャビネット11の後側から嵌めたり、軸部21を保持部12からキャビネット11の後側に取り外したりできる。上述したように、カバー20には2つの軸部21が設けられており、キャビネット11にも左右方向に離れた2つの保持部12が設けられている(図3参照)。
【0017】
図9及び図10に示すように、この例の凹部12aの底部は環状の内周面を有している。凹部12aの開口部(軸部21の出入り口)は底部の内径よりも小さい幅を有する溝となっており、平らな側面12cを有している。一方、軸部21は円柱の外周面の一部が切り欠かれた形状を有し、外周面の一部に平らな面21aを有している。図10(a)に示すように、カバー20が開位置よりも閉位置に近い位置に配置されているときには、凹部12aの側面12cの位置と、軸部21の平らな面21aの位置とがずれいているため、軸部21の凹部12aからの抜けが抑えられる。図10(b)に示すように、カバー20が開位置に配置された時に、凹部12aの開口部に形成された側面12cの位置と、軸部21の平らな面21aの位置とが一致する。すなわち、カバー20のキャビネット11に対する角度が開位置での角度に一致した時に、軸部21は凹部12aに対してその半径方向に動くことができ、カバー20をキャビネット11に対して脱着できる。
【0018】
図4に示すように、電子機器1は係合部材50を有している。係合部材50はカバー20とキャビネット11との分離を防止する機能を有する部材である。また、この例の係合部材50は、後において詳説するように、記録媒体90の収容室Sへの出し入れを容易にするための部材としても機能する。
【0019】
この例では、係合部材50はカバー20に取り付けられる。具体的には、係合部材50はカバー20の内側に配置され、カバー20の軸部21に取り付けられている。詳細には、係合部材50は、図4及び図5に示すように、軸部21からその半径方向に伸びる左右のアーム部51A,51Bと、アーム部51A,51Bに掛け渡されるクロスバー部52と、を有している。アーム部51A,51Bの基端部に形成された穴に2つの軸部21がそれぞれ嵌められている。係合部材50は例えば板金から形成される。
【0020】
係合部材50はこのように軸部21に取り付けられているため、軸部21を中心にして動くことができる。具体的には、係合部材50は、キャビネット11に引っ掛かるロック位置(図5に示す係合部材50の位置)と、キャビネット11との引っ掛かりが解消されるアンロック位置(図7に示す係合部材50の位置)との間で移動可能となっている。なお、この例では、ロック位置とアンロック位置との間に中間傾斜位置(図6に示す係合部材50の位置)が規定されている。中間傾斜位置は、係合部材50が、キャビネット11に形成された後述するストッパ13(図2参照)に当っている時の位置である。係合部材50は、ロック位置から中間傾斜位置までの範囲では、キャビネット11に引っ掛かっている。係合部材50がキャビネット11に引っ掛かる構造については後において詳説する。
【0021】
カバー20と係合部材50は共通の軸部21を中心に動くことができる。また、カバー20と係合部材50は、それらの移動方向(開方向、閉方向)が合致するように配置されている。すなわち、カバー20が閉方向に動くとき、係合部材50はロック位置に向けて閉方向に動く。カバー20が閉位置に配置されると、係合部材50はロック位置に配置される(図5参照)。カバー20が開方向に動くとき、係合部材50はアンロック位置に向けて開方向に動く。
【0022】
この例では、カバー20と係合部材50は軸部21を中心に相対的に動くことができ、係合部材50のカバー20に対する角度は変化し得る。つまり、カバー20と係合部材50が閉位置とロック位置からそれぞれ開方向に動くとき、係合部材50は、図6に示すように、アンロック位置に達することなく、後述するストッパ13にあたって中間傾斜位置に留まる。一方、カバー20は、中間傾斜位置の係合部材50の角度よりもさらに大きく開く(図7参照)。その結果、カバー20は開位置まで移動しストッパ16に当る(図8(b)参照)。係合部材50がアンロック位置に配置された時、例えば、係合部材50が軸部21の軸線に沿った方向に曲げられストッパ13を乗り越えた時、開位置に配置されているカバー20と係合部材50は軸部21の半径方向(Y1−Y2方向)においてキャビネット11に対して動くことができる。
【0023】
上述したように、係合部材50のアーム部51A,51Bの基端部はそれぞれ軸部21に取り付けられている。図3に示すように、軸部21がキャビネット11の保持部12に保持された状態では、アーム部51A,51Bの基端部はカバー20の取付部22A,22Bと保持部12とによって挟まれる。これにより、係合部材50が軸部21に取り付けられた状態が確実に維持され得る。この例では、軸部21は2つの取付部22A,22Bから左右方向の外方に突出し、アーム部51A,51Bの基端部に嵌められている。そして、アーム部51A,51Bの基端部のさらに外方に保持部12が位置している。
【0024】
係合部材50は、図5に示すロック位置から図6に示す中間傾斜位置の範囲(以下、ロック範囲)では、キャビネット11に引っ掛かっており、軸部21の半径方向での軸部21と保持部12との相対移動を規制する。これにより、係合部材50がロック範囲に位置している状態では、カバー20がキャビネット11から外れることを抑えることができる。一方、係合部材50は、図7に示すアンロック位置では、キャビネット11との引っ掛かりを解消している。
【0025】
係合部材50がキャビネット11に引っ掛かる構造について説明する。この例では、図9に示すように、保持部12に係合凸部14が形成されている。係合凸部14は、軸部21の軸線に沿った方向において、係合部材50のアーム部51A,51Bに向かって、すなわち左右方向の中心に向かって保持部12から突出している。上述したように、軸部21は保持部12の凹部12aから後方に抜け出ることができる(ここでは、軸部21が抜ける方向を軸抜け方向(Y2の示す方向)とする)。図5及び図6に示すように、アーム部51A,51Bの基端部にはフック部51gが形成されている。フック部51gは、係合部材50がロック範囲に配置されているとき、係合凸部14に対して軸抜け方向とは反対方向に位置している。そのため、軸部21が軸抜け方向に移動すること、すなわちカバー20のキャビネット11からの離脱を防ぐことができる。
【0026】
また、図5及び図6で示されるように、係合部材50がロック範囲に配置されているとき、フック部51gは、ロック位置からアンロック位置に向かう係合部材50の回転方向(すなわち開方向)に、係合凸部14に対して位置している。そのため、図7に示すように、係合部材50がアンロック位置に配置されているときには、フック部51gは係合凸部14から周方向に離れて位置する。換言すると、係合凸部14はフック部51gから抜け出ており、フック部51gと係合凸部14との引っ掛かりが解消されている。このようなフック部51gと係合凸部14との位置関係によれば、フック部51gは、係合部材50がアンロック位置からロック位置に向かって回転することで、係合凸部14に引っ掛かる。係合部材50がアンロック位置の角度に配置されているとき、係合部材50は係合凸部14に対して、上述した軸抜け方向に移動したり、軸抜け方向とは反対方向に移動できる。その結果、係合部材50をアンロック位置の角度に配置することにより、カバー20をキャビネット11から取り外したり、カバー20をキャビネット11に取り付けたりできる。
【0027】
図11は図1の拡大図であり、開位置に配置されたカバー20と、中間傾斜位置に配置された係合部材50とが示されている。同図に示すように、キャビネット11には、係合部材50のロック位置(ロック範囲)からアンロック位置への移動を制限するストッパ13が形成されている。この例では、ストッパ13は記録媒体90の収容室Sの側壁18,19のそれぞれに形成されている(図4参照)。より具体的には、ストッパ13は側壁18,19の上縁から収容室Sの内側に向かって突出し、係合部材50のアーム部51A,51Bの軌道上に位置している。そのため、図6及び図10に示すように、ストッパ13はロック位置からアンロック位置に向かって移動しようとする係合部材50のアーム部51A,51Bにあたる。これにより、係合部材50は中間傾斜位置に配置され、係合部材50の中間傾斜位置を越える開方向R1への移動はストッパ13によって規制される。
【0028】
この例のアーム部51A,51Bは、図3及び図4に示すように、記録媒体90の幅に対応した間隔を有するアーム上部51a,51bをそれぞれ有している。また、アーム部51A,51Bは、アーム上部51a,51bよりも大きな間隔を有するように、アーム上部51a,51bに対して左右方向の外方にそれぞれ位置するアーム下部51c,51dを有している。アーム下部51c,51dはキャビネット11の側壁18,19に近接して配置されている。ストッパ13はアーム下部51c,51dの軌道上に位置している。
【0029】
なお、上述したように、係合部材50は板金によって形成されている。この例のアーム部51A,51Bは軸部21の軸線に沿った方向に概ね直交する板状の部位である。そのため、アーム部51A,51Bは僅かに変形させることができる。すなわち、アーム部51A,51Bはそれらの間隔が狭くなるように軸線に沿った方向に僅かに弾性的に曲げることができる。アーム部51A,51Bをそのように曲げることによって、アーム部51A,51Bはストッパ13を越えて、アンロック位置の角度に達することができる。
【0030】
また、ストッパ13と係合部材50は、係合部材50のアンロック位置からロック位置への移動を許容するように形成されている。この例では、図11に示すように、ストッパ13は、その端部に、斜面13aを有している。斜面13aは、係合部材50がアンロック位置からロック位置に向かって移動する時に、アーム下部51c,51dに対して斜めに当るように傾斜している。すなわち、斜面13aはアーム部51A,51Bの軌道を含む平面に対して傾斜している。そのため、係合部材50がアンロック位置からロック位置に向かって移動する時に、アーム下部51c,51dはストッパ13を乗り越えることができる。また、アーム下部51c,51dは、係合部材50がアンロック位置からロック位置に向かって移動するときにストッパ13に当る縁(キャビネット11側の縁)に、曲げ部51eを有している。曲げ部51eは収容室Sの内側に曲げられており、これにより、アーム下部51c,51dはさらに容易にストッパ13を乗り越えることができる。
【0031】
図7に示すように、係合部材50のアーム部51A,51Bは、その基端部が軸部21に取り付けられた状態で、カバー20の内面に近接できるように形成されている。また、カバー20を開位置の角度に配置し、アーム部51A,51Bをカバー20の内面に沿って配置した状態では、係合部材50はアンロック位置の角度に配置される。そのため、カバー20と係合部材50とをキャビネット11に取り付ける際、作業者は係合部材50をカバー20の内面に当てた状態でこれらを保持し、キャビネット11にこれらを取り付けることが可能となる。
【0032】
図5及び図6で示される係合部材50のロック範囲は、図7で示されるアンロック位置に対して、カバー20が開位置から閉位置に向かう方向である閉方向R2に位置している。また、上述したように、係合部材50は、アンロック位置では、開位置にあるカバー20に沿って配置可能となっている。そのため、開位置から閉位置に移動するカバー20によって係合部材50を押すことで、係合部材50をアンロック位置からロック位置に移動させることができる。上述したように、係合部材50はカバー20に取り付けられている。そのため、カバー20を開位置の角度で係合部材50とともにキャビネット11に取り付け、その後、カバー20を閉位置に移動させることで、係合部材50をアンロック位置からロック位置に移動させることができる。なお、図5に示すように、係合部材50のアーム部51A,51Bの幅(高さ)は、カバー20が閉位置にあるときに、アーム部51A,51Bがカバー20の内面に近接するように設定されている。そのため、カバー20を閉位置に移動させることで、確実に係合部材50をロック位置に移動させることができる。
【0033】
上述したように、係合部材50は左右のアーム部51A,51Bに掛け渡されるクロスバー部52を有している。クロスバー部52は、カバー20とクロスバー部52との間に記録媒体90が配置可能となるように形成されている。すなわち、図5に示すように、クロスバー部52とカバー20の内面との間には、記録媒体90を収容可能な間隔が設けられている。係合部材50がロック位置に配置されているとき、クロスバー部52上の記録媒体90が収容室S内における適切な位置、すなわち電子機器1による読み取りが可能な位置に位置するように、クロスバー部52の高さが規定されている。カバー20は、図4及び図11に示すように、カバー20の開方向R1で係合部材50に係合可能なリフト部24を有している。カバー20が閉位置から開位置に移動するときに、このリフト部24は係合部材50をロック位置から中間傾斜位置に移動させる。これにより、クロスバー部52とカバー20との間に配置された記録媒体90を、クロスバー部52によって持ち上げることができ、記録媒体90の出し入れの容易化を図ることができる。
【0034】
この例のリフト部24は、図11に示すように、カバー20の内面からキャビネット11に向かって突出している。そして、リフト部24は、その端部に、軸部21の軸線に沿った方向、すなわち左右方向の外方に張り出すフランジ部24aを有している。図5に示すように、フランジ部24aに対して開方向R1にアーム部51A,51Bの基部51fが位置している。そのため、フランジ部24aは、カバー20が閉位置から開位置に向かう過程でアーム部51A,51Bの基部51fに当る(図6参照)。
【0035】
図5に示すように、係合部材50がロック位置に配置され、カバー20が閉位置に配置された状態では、フランジ部24aはアーム部51A,51Bの基部51fから閉方向R2に離れて位置している。そのため、図6に示すように、カバー20が開位置に移動し、係合部材50が中間傾斜位置に移動した状態では、それらが閉位置、ロック位置に配置されていた状態に比べて、カバー20とクロスバー部52との距離、換言すると、カバー20と係合部材50との間の角度が拡大する。その結果、さらに記録媒体90の出し入れが容易となる。なお、図5に示すように、ストッパ13があたるアーム部51Aのアーム下部51cには開方向R1に向かって開いた凹部51hが形成されている。係合部材50が図5に示すロック位置に配置されている状態では、この凹部51hの底部はストッパ13から離れて位置している。この凹部51hの存在により、係合部材50はロック位置に対して開方向R1に設定された中間傾斜位置に配置できる。
【0036】
図9及び図11に示すように、側壁18にはフランジ部24aの軌道上に位置する凸部17が形成されている。カバー20が開位置に配置されたときに、フランジ部24aの端部は閉方向R2において凸部17に当る。この凸部17とフランジ部24aとによって、カバー20を開位置に維持することができる。
【0037】
図12は凸部17とフランジ部24aとの位置関係を示す図である。同図において二点差線は開位置にあるカバー20を示し、実線は閉位置にあるカバー20を示している。また、同図(b)は(a)に示すb−b線での概略断面図である。図12(a)に示すように、凸部17は細長い凸部であり、その延伸方向はカバー20が開位置に配置されているときのフランジ部24aの傾斜角度と概ね同様の角度に傾斜している。また、図12(b)に示すように、凸部17は略三角形の断面(その延伸方向に対して垂直な面を切断面とする断面)を有している。上述したように、凸部17はフランジ部24aの軌道上に位置しており、カバー20は、フランジ部24aが凸部17を乗り越えることによって、閉位置から開位置に移動できる。カバー20が開位置に配置されるとき、凸部17はフランジ部24aに対して閉方向R2に位置している。そのため、カバー20は開位置に維持される。
【0038】
図12(b)に示すように、フランジ部24aは、その端部に、斜面24b,24cを有している。斜面24bは、フランジ部24aが開方向R1に移動するときに、凸部17に当る面であり、斜面24cはフランジ部24aが閉方向R2に移動するときに、凸部17に当る面である。斜面24cの角度は、斜面24bの角度よりも大きい。そのため、2つの斜面24b,24cの角度が同じ場合に比べて、カバー20が開位置に維持され易くなっている。
【0039】
また、図12(a)に示すように、カバー20が開位置に配置された状態では、凸部17の延伸方向(同図においてD1の示す方向)に対してフランジ部24aは傾斜している。すなわち、水平面に対する凸部17の延伸方向の角度は、カバー20が開位置に配置された状態でのフランジ部24aの角度よりも小さく設定されている。そのため、凸部17とフランジ部24aとの接触位置が、カバー20やキャビネット11の公差によりばらつくことを抑えることができる。なお、ここでは、側壁18に形成された凸部17を例にして説明したが、同様の凸部は側壁19にも形成されている。
【0040】
電子機器1の組み立て方法、及びその後の電子機器1の動作について説明する。電子機器1を組み立てる際には、係合部材50のアーム部51A,アーム部51Bをカバー20の軸部21に取り付ける。次に、キャビネット11に対してカバー20を開位置の角度に設定するとともに、係合部材50をカバー20の内面に沿って配置してアンロック位置の角度に配置する。そして、軸部21をキャビネット11の保持部12の凹部12aに後側から嵌め入れる。そして、カバー20を閉方向R2に動かす。その際、係合部材50のアーム部51A,51Bはキャビネット11に形成されたストッパ13を乗り越え、ロック位置まで移動する。その結果、係合部材50のフック部51gは係合凸部14に周方向に引っ掛かる。
【0041】
記録媒体90を収容室Sに入れる際には、カバー20を開位置に移動する。その際、係合部材50はロック位置から中間傾斜位置まで移動し、ストッパ13によって中間傾斜位置を越える開方向への移動が規制される。その結果、係合部材50のクロスバー部52とカバー20との間に記録媒体90の出し入れに要する十分な距離が確保され得る。
【0042】
以上説明したように、電子機器1では、キャビネット11の保持部12はカバー20が機器本体10(具体的にはキャビネット11)に対して、カバー20の軸部21の半径方向において脱着できるように、軸部21の半径方向での軸部21の相対移動を許容する形状を有している。係合部材50は軸部21と保持部12の相対移動を規制するようにキャビネット11に引っ掛かるロック位置と、キャビネット11との引っ掛かりを解消するアンロック位置とに移動可能であり、ストッパ13はロック位置からアンロック位置への係合部材50の移動を制限する。このような電子機器1によれば、係合部材50をアンロック位置に配置した状態で、カバー20をキャビネット11に対して軸部21の半径方向において脱着できるので、カバー20をキャビネット11に取り付ける作業の作業性を向上できる。また、カバー20をキャビネット11に取り付けた後は、係合部材50をロック位置に移動することによって、カバー20がキャビネット11から離脱することを防ぐことができる。
【0043】
また、電子機器1では係合部材50は軸部21に取り付けられている。そのため、係合部材50をカバー20に取り付けた後に、これらをキャビネット11に取り付けることができるため、さらに作業性を向上できる。
【0044】
また、電子機器1では、係合部材50はカバー20とキャビネット11との間に配置され、係合部材50のロック位置は、アンロック位置に対して、カバー20が開位置から閉位置に向かう方向である閉方向R2に設定されている。そのため、係合部材50とカバー20とをキャビネット11に取り付けた後に、カバー20を閉方向に移動させることにより、係合部材50をもロック位置に移動させることができる。
【0045】
また、ストッパ13は保持部12が形成されたキャビネット11に形成されている。そのため、電子機器1の構造を簡素化できる。
【0046】
また、係合部材50はカバー20に取り付けられている。係合部材50をカバー20に取り付けた後に、これらをキャビネット11に取り付けることができるため、さらに作業性を向上できる。
【0047】
また、係合部材50は軸部21を中心にしてカバー20に対して相対的に動くことができる。そのため、カバー20と係合部材50とをキャビネット11に取り付けた後に、係合部材50を動かす作業、例えば、電子機器1の修理等が容易となる。
【0048】
また、キャビネット11は軸部21の軸線に沿った方向において、係合部材50に向かって突出する係合凸部14を有し、係合部材50には、軸部21の周方向において係合凸部14に引っ掛かるフック部51gが形成され、係合凸部14は係合部材50がアンロック位置にあるときにフック部51gから周方向に抜ける。これによれば、係合部材50とキャビネット11とを比較的簡単な構造で係合させることができる。
【0049】
また、係合部材50は軸部21の半径方向に伸びる2つのアーム部51A,51Bと、2つのアーム部51A,51Bに掛け渡されるクロスバー部52とを含んでいる。クロスバー部52はクロスバー部52とカバー20との間に記録媒体90が配置可能となるように形成されている。カバー20は、カバー20が閉位置から開位置に向かう方向である開方向R1で係合部材50に係合可能なリフト部24を有している。この構造によれば、記録媒体90の出し入れが容易となる。
【0050】
なお、本発明は以上説明した実施形態に限られず、種々の変更が可能である。
【0051】
例えば、軸部21はキャビネット11に形成され、保持部12はカバー20に形成されてもよい。
【0052】
また、係合部材50はキャビネット11に取り付けられ、ロック位置に配置されているときには、カバー20に引っ掛かってもよい。
【0053】
また、以上の説明では、係合部材50はカバー20に対して相対的に回転可能となっていたが、係合部材50はカバー20に固定されてもよい。
【0054】
また、以上の説明では、係合部材50にフック部51g形成され、キャビネット11にフック部51gが引っ掛かる係合凸部14が形成されていた。しかしながら、係合部材50に係合凸部が形成され、キャビネット11の保持部12にフックとして機能する凹部が形成されてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 携帯型電子機器、S 収容室、10 機器本体、11 キャビネット、12 保持部、12a 凹部、13 ストッパ、14 係合凸部、16 ストッパ、17 凸部、18 側壁、19 側壁、20 カバー、21 軸部、24 リフト部、50 係合部材、90 可搬型記録媒体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器本体と
前記機器本体に対して開閉可能なカバーと、
前記機器本体に形成され、前記カバーによって覆われる、記録媒体を収容するための収容室と、
前記機器本体又は前記カバーに設けられ、前記カバーを開閉可能に支持する軸部と、
前記カバー又は前記機器本体のうち前記軸部が設けられた部材とは反対の部材に設けられ、前記軸部を保持する保持部と、
前記軸部を中心に動くことができるように、前記機器本体と前記カバーのうち一方に取り付けられる係合部材と、
ストッパと、を備え、
前記保持部は前記カバーが前記機器本体に対して前記軸部の半径方向において脱着できるように、前記半径方向での前記軸部の相対移動を許容する形状を有し、
前記係合部材は前記軸部と前記保持部の前記相対移動を規制するように前記機器本体と前記カバーのうち他方に引っ掛かるロック位置と、前記他方との引っ掛かりを解消するアンロック位置とに移動可能であり、
前記ストッパは前記ロック位置から前記アンロック位置への前記係合部材の移動を制限する、
ことを特徴とする携帯型電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の携帯型電子機器において、
前記係合部材は前記軸部に取り付けられている、
ことを特徴とする携帯型電子機器。
【請求項3】
請求項2に記載の携帯型電子機器において、
前記係合部材は前記カバーと前記機器本体との間に配置され、
前記係合部材の前記ロック位置は、前記アンロック位置に対して、前記カバーが開位置から閉位置に向かう方向である閉方向に設定されている、
ことを特徴とする携帯型電子機器。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の携帯型電子機器において、
前記ストッパは、前記カバーと前記機器本体のうち前記保持部が設けられた前記部材に形成されている、
ことを特徴とする携帯型電子機器。
【請求項5】
請求項1に記載の携帯型電子機器において、
前記係合部材は前記カバーに取り付けられている、
ことを特徴とする携帯型電子機器。
【請求項6】
請求項5に記載の携帯型電子機器において、
前記軸部は前記カバーに形成されている、
ことを特徴とする携帯型電子機器。
【請求項7】
請求項6に記載の携帯型電子機器において、
前記係合部材は前記軸部を中心にして前記カバーに対して相対的に動くことができる、
ことを特徴とする携帯型電子機器。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の携帯型電子機器において、
前記機器本体は、前記軸部の軸線に沿った方向において、前記係合部材に向かって突出する係合凸部を有し、
前記係合部材には、前記軸部の周方向において前記係合凸部に引っ掛かるフックが形成され、
前記係合凸部は前記係合部材が前記アンロック位置にあるときに前記フックから周方向に抜ける、
ことを特徴とする携帯型電子機器。
【請求項9】
請求項6乃至8のいずれかに記載の携帯型電子機器において、
前記係合部材は前記軸部の半径方向に伸びる2つのアーム部と、前記2つのアーム部に掛け渡されるクロス部とを含み、
前記クロス部は、当該クロス部と前記カバーとの間に前記記録媒体が配置可能となるように形成され、
前記カバーは前記カバーが閉位置から開位置に向かう方向である開方向で前記係合部材に係合可能なリフト部を有している、
ことを特徴とする携帯型電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−12278(P2013−12278A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144945(P2011−144945)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(310021766)株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメント (417)
【Fターム(参考)】