説明

携帯型電子生物生存装置

【課題】 電子生物同士が互いに自発的に交信・交流を行うことができる携帯型電子生物生存装置を提供する。
【解決手段】 ユーザーが携帯する電子生物生存装置であって、近傍の他の電子生物生存装置に対して、所定の挨拶信号を無線で送信するための挨拶信号送信手段と、近傍の他の電子生物生存装置からの無線による所定の挨拶信号を受信するための挨拶信号受信手段と、前記挨拶信号受信手段により所定の挨拶信号が受信されたとき、そのことをユーザーに知らせる報知手段とを含むものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザーが携帯して楽しむ携帯型電子生物生存装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ある携帯機器から所定の信号を無線(赤外線など)により出力し、それと同種の携帯機器を持っている人が近傍に居たとき、その携帯機器が光の点滅等により「近傍に同種の携帯機器を持つ人が居ること」を持ち主に知らせるものが、知られている。これは、「ラブゲッティ」という商品名で「エアフォルク」という会社(兵庫県芦屋市)から1998年2月に発売された携帯グッズで、多くの人と知り合いになる切っ掛けとして使えるツールとして販売されている(ある雑誌の紹介欄の記事を次に引用しておく。「「ラブゲッティ」は、男性用と女性用があり、男女が半径5m以内に接近するとランプが点滅する。「おはなし」「カラオケ」「ともだち」の3択で、相手とデートモードに入れるという携帯グッズだ。」)。
【0003】
また、1998年6月26日付け日経産業新聞の中の「偶然の出会い、端末ビビビッ アステル関西 新型のPHS 同じ電波圏内で反応」というタイトルの記事には、次のような内容が報道されている。「アステル関西は友人だけでなく、付近にいる他人とも偶然の情報交換ができるPHS端末「クーフィー」を7月31日に発売する。PHSのトランシーバー機能を利用し、複数の端末が同じ電波圏内に入ると互いに反応する。クーフィーはトランシーバーの電波を送受信する「Angel Waveモード」を搭載した。同モードに設定した二台の端末が半径100〜150メートルのトランシーバー圏内に入ると、音や本体の振動で互いに反応する。端末の電話帳に登録している相手であれば、名前とPHS番号が表示される。反応した相手が友達であることを確かめてから通話できる。トランシーバー機能を利用しているため、アステル関西のエリア外でも通話が可能。」
【0004】
さらに、従来より、携帯型の電子ペット機器として、(株)バンダイ提供の「たまごっち」が有名である。この「たまごっち」は、キーホルダー型の楕円形の小型液晶表示装置の中にキャラクターを表示させてユーザーがそのキャラクターに食事などの世話を行って育成するという携帯型ゲーム機器である。この種の電子生物育成・飼育装置は、例えば、特開平7−160459号公報(シャープ)、特開平7−160853号公報、特開平8−309032号公報、特開平9−237328号公報、特開平9−237329号公報、特開平10−69212号公報、特開平10−69213号公報、特開平10−69214号公報(以上いずれもカシオ計算機)などにおいて様々な技術的な提案が行われている(なお、前記の計8件の公開公報は、いずれも、本願の関連技術として本明細書に取り入れる)。
【0005】
また、同じく(株)バンダイから販売されている「デジタルモンスター」(略称:デジモン)も有名である。この「デジモン」は、基本的には「たまごっち」と同様だが、恐竜に似たキャラクタを育成して、同じデジモンを育成しているユーザー(プレーヤ)が集まって、お互いのデジモンの機器をドッキング(電気的に接続・結合)させて、お互いのデジモンを「戦わせて勝敗を競う」ことができるようになっている。さらに、(株)任天堂が提供している携帯型ゲーム機「ゲームボーイ」用のゲーム・ソフトウェアである「ポケットモンスター」(略称:ポケモン)も有名である。このポケモンは、各ユーザー(プレーヤ)がゲームの中で多数のポケモン(様々なキャラクターがある)を捕獲していくゲームだが、ユーザー(プレーヤ)が希望するときは、他のプレーヤとの間で、ゲーム機同士をケーブルで電気的に接続して、捕獲したポケモン同士を戦わせて勝敗を競うこともできる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
まず、上記の「ラブゲッティ」やアステル関西の「新型PHS」は、道路通行中などに偶然近くに居る他の端末に所定の信号を送信して、知り合いになったり話したりする「きっかけ」を与えるものであるが、いずれも、「電子生物を介在させること」は全く予想されていない。
【0007】
他方、上記の「たまごっち」は電子ペットなどの電子生物を育成する装置であるが、他のユーザーとの交流は、あくまでユーザー同士の交流で、「たまごっち」の装置同士が、「ユーザーのイニシアチブ(ユーザーの特別な操作など)なしに自発的・自動的に交流・交信すること」は、全く予定されていない。さらに、上記の「デジモン」「ポケモン」などは、2人以上のプレーヤが集まって、それぞれの装置をケーブル(導線)で電気的に接続して「デジモン」のキャラクタ又は「ポケモン」のキャラクタを戦わせて勝敗を競うことが行われるが、それは、あくまでユーザー(プレーヤ)同士の合意に基づいて行うだけで、「デジモン」の育成機器同士や「ポケモン」のゲーム機器同士が「(ユーザーに関係なく)勝手に自発的に交信・交流すること」は、全く予定されていない。
【0008】
また、前記の電子生物育成・飼育装置の出願公開公報の中には、携帯機器同士の間で、電子ペット・キャラクタのデータを無線でやり取りすることが開示されている。例えば、特開平8−309032号公報には、「他の電子手帳の赤外線通信回路15から送信された犬キャラクタデータの種類データとその誕生日データとが、この電子手帳における赤外線通信回路15を介して受信される」(同公報の明細書の段落番号0035)ことや、この他の電子手帳から送信されたキャラクタとの「お見合い処理」などのアイデアが、開示されている。しかしながら、この公開公報における他の電子手帳からの犬キャラクタの送信は、ユーザー同士が予め話し合った上で行うことを前提としており、「2人以上のユーザーがたまたま偶然に近くに居合わせたとき、それらのユーザーが飼育などしている電子生物同士が、(ユーザーの特別な操作を必要とせずに勝手に)自発的に交信して挨拶を交わしたり、情報交換すること」は、全く想定されていない。
【0009】
本発明者は、携帯型電子生物生存装置の中に生存する電子生物を単なる「ゲームのツール」としてではなく、人間同士の実際の「コミュニケーションのためのツール」とするのが妥当だと考える。すなわち、本発明者は、「電子ペットなどの電子生物(携帯機器の画面上の仮想的な生物)」を、単に、「ユーザーの親しみなどの感情移入の対象としたりユーザーの寂しさを和らげるもの」としてだけ用いるのではなく、電子生物同士が互いに自発的に交信・交流を行い、ひいては、それが「きっかけ」「仲立ち」となって、携帯型電子生物生存装置のユーザー同士の交流に結びつくようなものに発展させて行くための技術が求められていると考えた。
【0010】
本発明はこのような従来技術の課題に着目してなされたものであって、電子生物同士が(ユーザーの特別な操作を解することなく)互いに自発的に交信・交流を行うことができる携帯型電子生物生存装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(用語の定義)
まず、本発明において使用する用語の定義をしておく。本発明の「携帯型電子生物生存装置」の外観形状は、従来の「たまごっち」のようなキーホルダー型、イヤリング型やブローチ型などのような身体装着型でもよいし、指輪・ベルト・ペンダント・イヤリングなどの形状と機能を合わせ有するものとして構成してもよいし、携帯電話、PHS(簡易型携帯電話)、携帯情報端末(PDA)、腕時計、又は携帯型ノートパソコン(コンピュータ)などに内蔵するタイプのものとして構成してもよいし、鞄や靴などに内蔵したり鞄や靴の表面に取り付けるタイプのものでもよいし、人形や縫いぐるみの形状などのようなそれ自体が「可愛らしい感じの形状」を有するものの中に組み込むようにしてもよい。
また、本発明の「電子生物」は、電子ペット(犬や猫や鳥などを擬した、ディスプレイ画面上の仮想的な電子的ペットや架空の動物ペット)、電子的な植物(現実の花や樹木を擬したものや架空の植物で、画面上の仮想的な存在)、電子的な子供キャラクタ、電子的な怪獣キャラクタなどの、様々なタイプのものを含む。また、本発明の「電子生物生存装置」の「生存」には、育成、飼育、生活など様々な生存の態様・タイプを含む。
また、本発明において、「挨拶信号」は、例えば、電子生物の鳴き声を示す音声信号でもよいし、「こんにちは」「ハロー」「もしもし」などの意味を象徴する単純な信号(音声信号又は画像信号などの信号)でもよいし、「私の名前は・・・です。友達になりませんか」というメッセージ・文章を示すものでもよい。また、この「挨拶信号」の内容は、後述の「電子生物に関するデータ(電子生物データ)そのもの(これも、一種の「挨拶としての自己紹介の文章」になりうる)」でもよいし、後述の「電子生物を生存させているユーザーに関するデータ(ユーザー・データ)そのもの」でもよい。なお、本明細書では、返信する「挨拶信号」を「返答信号」と呼ぶこともある。また本発明において、電子生物同士が「自発的に交信する」とは、「ユーザーの特別な操作を必要することなく(勝手に・自動的に)交信する」、という意味である。
また、本発明において、「挨拶信号」の送信は、例えば、(1)ユーザーが予め設定した所定時間毎に(例えば、3秒ごと、30秒ごと、3分間ごと)周辺のエリアに向けて無線送信するものでもよいし、(2)戸外では常時無線送信するようにしてもよいし、(3)ユーザーが希望するときだけそのユーザーの操作により無線送信する、ようにしてもよい。
また本発明において、「挨拶信号が受信されたとき、そのことをユーザーに知らせる報知手段」は、光、音(音響・音声)、振動などにより、ユーザーに対して注意を喚起するか又は所定の情報を知らせるものである。また本発明において、「電子生物の存在又はその居場所を周囲の人に知らせるための告知手段」は、光や音などにより、周囲の人に対して注意を喚起するか又は所定の情報を知らせるものである。
また本発明において、後述の「挨拶信号送信手段」は、挨拶信号を、赤外線、電波などの電磁波や超音波などの様々な媒体を使用して、送信するものである(以下の「挨拶返信手段」「電子生物データ送信手段」などの「送信手段」も、ほぼ同様である)。
また本発明において、後述の「告知手段」は、例えば、光、音響(電子生物の鳴き声など)、音声(電子生物の「こんちには」などの音声)、又は振動などにより、電子生物の存在又はその居場所を、その周囲の人に、その五感により知らせるものであり、発光体やスピーカやバイブレーション(振動体)などで構成される。これにより、電子生物は、前記挨拶信号の送信により、周囲の人が持っている他の携帯型電子生物生存装置に自己の存在を示す信号又は情報を送る(このとき、前述のように、この挨拶信号を送信された携帯型電子生物生存装置の側では、光や音や振動でそのことを、そのユーザーに知らせることができる)が、これと共に、自己の携帯型装置においても、光や音などを発して、自己の存在やその居場所を周囲の人に自己の存在又はその居場所を知らせることができる。つまり、これにより、周囲の人に、自己の存在をより確実に知らせることができるようになる。
【0012】
(本発明の内容)
本発明の内容は、特許請求の範囲に記載のとおりのものである。
【0013】
「特許請求の範囲に記載された発明」とは別に、本明細書において提案されている幾つかの発明の中には次のようなものも含まれている。
1.ユーザーが携帯する電子生物生存装置であって、近傍のエリアにある他の電子生物生存装置に受信されるように、「電子生物による所定の挨拶信号」を、無線で送信するための挨拶信号送信手段と、近傍のエリアにある他の電子生物生存装置から無線で送信された「その電子生物による所定の挨拶信号」を受信するための挨拶信号受信手段と、を含むことを特徴とする携帯型電子生物生存装置。
2.上記1において、前記挨拶信号送信手段は、予め定められた所定時間毎に、挨拶信号を送信するものである、ことを特徴とする携帯型電子生物生存装置。
3.上記1において、さらに、近傍のエリアに他人又は他の電子生物生存装置が居ることを検知する検知手段を含み、前記挨拶信号送信手段は、この検知手段からの出力に基づいて、挨拶信号を送信するものである、ことを特徴とする携帯型電子生物生存装置。
4.上記1,2又は3において、さらに、前記挨拶信号受信手段により所定の挨拶信号が受信されたとき、そのことをユーザーに知らせる報知手段、を含むことを特徴とする携帯型電子生物生存装置。
5.上記1から4までのいずれかにおいて、さらに、前記挨拶信号受信手段により所定の挨拶信号が受信されたとき、その挨拶信号を送信した他の携帯型電子生物生存装置に対して、自発的に(ユーザーの特別な操作を必要としないで)、所定の挨拶信号を無線で返信する挨拶信号返信手段、を含むことを特徴とする携帯型電子生物生存装置。
6.上記1から5までのいずれかにおいて、さらに、電子生物に関するデータを記録する電子生物データ記録手段と、この電子生物データ記録手段に記録された電子生物データを、前記挨拶信号と共に又は前記挨拶信号とは別に、送信する電子生物データ送信手段と、他の電子生物生存装置から無線で送信された電子生物データを受信する電子生物データ受信手段と、この電子生物データ受信手段により受信された電子生物データを出力する出力手段と、を備えたことを特徴とする携帯型電子生物生存装置。
7.上記1から6までのいずれかにおいて、さらに、電子生物のユーザーに関するデータを記録するユーザー・データ記録手段と、このユーザー・データ記録手段に記録されたユーザー・データを、前記挨拶信号と共に又は前記挨拶信号とは別に(例えば、前記挨拶信号に続けて)、送信するユーザー・データ送信手段と、他の電子生物生存装置から無線で送信されたユーザー・データを受信するユーザー・データ受信手段と、このユーザー・データ受信手段により受信されたユーザー・データを出力する出力手段と、を備えたことを特徴とする携帯型電子生物生存装置。
8.上記1から7までのいずれかにおいて、さらに、前記挨拶信号を送信するとき、送信する側の電子生物の存在又はその居場所を周囲の人に知らせるための挨拶送信告知手段、を備えたことを特徴とする携帯型電子生物生存装置。
9.上記1から8までのいずれかにおいて、さらに、前記挨拶信号を受信したとき、受信した側の電子生物の存在又はその居場所を周囲の人に知らせるための挨拶受信告知手段、を備えたことを特徴とする携帯型電子生物生存装置。
10.上記5から9までのいずれかにおいて、さらに、前記挨拶信号を返信するとき、返信する側の電子生物の存在又はその居場所を周囲の人に知らせるための挨拶返信告知手段、を備えたことを特徴とする携帯型電子生物生存装置。
11.上記1から10までのいずれかにおいて、さらに、他の携帯型電子生物生存装置から送信された電子生物データ又はユーザー・データと、自己の電子生物データ又はユーザー・データと、を比較して、双方の電子生物又はユーザーの間の類似度又は相性度を判定する類似度又は相性度判定手段と、この類似度又は相性度判定手段による判定結果を出力する判定結果出力手段と、を含むことを特徴とする携帯型電子生物生存装置。
12.上記1から10までのいずれかにおいて、さらに、他の携帯型電子生物生存装置から送信された電子生物データ又はユーザー・データと、自己の電子生物データ又はユーザー・データと、を比較して、双方の電子生物又はユーザーの間の類似度又は相性度を判定する類似度又は相性度判定手段と、この類似度又は相性度判定手段により類似度又は相性度が比較的高いと判定されたときは、ユーザーにそのことを知らせるために所定の告知をする判定告知手段と、を含むことを特徴とする携帯型電子生物生存装置。
13.上記1から12までのいずれかにおいて、さらに、互いに近傍のエリア内にある2つの携帯型電子生物生存装置の間で、電子生物同士が無線で交信して、相互間の鳴き声のやり取り、会話のやり取り、ゲームのやり取り、戦闘のやり取り、お見合いのやり取りなどの「情報のやり取り」をユーザーの特別な操作によらずに自発的に行うための自発的交信手段、を備えたことを特徴とする携帯型電子生物生存装置。
【発明の効果】
【0014】
(1)以上のように、本発明によれば、電子生物のユーザー同士が、電子生物を「仲立ち・きっかけ」として、会話をしたり知り合いになることができるようになる。つまり、我々の日常生活では、ペットや子供を「きっかけ」「仲立ち」として初対面の者同士が会話をしたり知り合いになることが多い。前記ではペットについて述べたが、ペットを介して知り合いになるのと同様に、子供同士を通じて知り合いになることも多い(幼児を公園に連れていって遊ばせている母親が、その公園にいた同じ年頃の幼児をもつ母親と知り合いになることは多い)。
(2)本発明によれば、このようなペットや子供によるコミュニケーションの「仲立ち」「きっかけ」の機能を、携帯型電子生物生存装置の電子生物が担うことができる。よって、本発明によれば、電子生物又は電子生物生存装置の新しい機能・役割(ユーザー同士のコミュニケーションの仲立ちをするという機能・役割)を付与した「コミュニケーションのためのツール」として、その付加価値をより高め、「現実のペットなどの生物」(現実のペットなどの生物は、そのペットなどの所有者同士が、ペットなどを「きっかけ」に知り合いになったり会話をしたりして、ペットなどがユーザー同士の生身のコミュニケーションに寄与することが多い)により近づけることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明を実施するための最良の形態は、次の実施例1に述べるようなものである。
【実施例1】
【0016】
図1は本発明の実施例による携帯型の電子ペット育成装置21を示すブロック図である。図1において、1はユーザーが機器を操作するための入力部で、キーボード、タッチパネル、マイク(音声入力用)、カメラ又はスキャナ(画像入力用)などで構成される。また、2はユーザーが電子ペットを表示させたり他の電子ペット育成装置から送信された電子ペットデータやユーザー・データを表示するためや所定のアラーム発生のためなどに使用する出力部で、液晶ディスプレイ、スピーカなどで構成される。また、この出力部2には、ユーザーに所定の注意を喚起したり所定の事実を光の点滅、振動、音で報知するための発光ダイオード、バイブレータ、ブザーなども備えられている。つまり、前記出力部2は、電子ペットの画像を表示させたり電子ペットの鳴き声や音声を出力させるだけでなく、外部の他の電子ペット育成装置からの挨拶信号を受信したときに、そのことを光の点滅や音響(ブザー音)や振動(バイブレーション)などによりユーザー(飼い主)に報知するための報知手段としての機能をも有している。また、3は制御部で、所定のプログラムにしたがってデータを処理するマイクロコンピュータなどで構成される。
【0017】
また、4は例えばフラッシュメモリなどの「データの書き換えが可能な記録装置」である。この記録装置4には、図1の電子ペット育成部5、挨拶・返答信号記録部6、電子ペットデータ記録部7、飼い主(ユーザー)データ記録部8、他の電子ペットデータ記録部9、及び、他の飼い主データ記録部10の記録領域が、設定されている。前記電子ペット育成部5は、「たまごっち」などの電子ペットを育成するためのデータ及びコンピュータプログラムが記録されている(なお、プログラムについては、マイクロコンピュータに内蔵されたROM(リードオンリーメモリ)に記録してもよい)。また、挨拶・返答信号記録部6には、近傍の他の電子ペット育成装置に対して送信する所定の挨拶信号又は返答信号(この「返答信号」も「挨拶信号」の一種である)を記録している。また、電子ペットデータ記録部7は、電子ペット(自己の)に関するデータ、例えば、自己の電子ペットの名前、画像、鳴き声(音データ)、プロフィール(電子ペットの種類、年齢、好きな食べ物、好きな遊びなど)、他の電子ペットへのメッセージ(文字又は音声メッセージで、例えば、「一緒に遊ぼう」「戦おう」「力だめししよう」「ジャンケンしよう」など)を、記録している。また、飼い主(ユーザー)データ記録部8は、自己の飼い主(ユーザー)に関するデータ、例えば、自己の飼い主の名前、画像(顔写真、似顔絵のイラスト、アニメーション)、プロフィール(年齢、趣味など)、他の飼い主へのメッセージ(文字又は音声メッセージ)を、記録している。また、他の電子ペットデータ記録部9は、他の携帯型電子ペット育成装置から送信されて来た他の電子ペットに関するデータを記録している。また、他の飼い主データ記録部10は、他の電子ペット育成装置から送信されて来た他の電子ペットの飼い主に関するデータが記録されている。
【0018】
また、11は、前記の記録装置4に記録されている挨拶信号、返答信号、電子ペットデータ、又は飼い主データを外部に無線で送信すると共に、外部から無線で送信された挨拶信号、返答信号、電子ペットデータ、又は飼い主データを受信するための信号・データ送受信部である。この送受信部11は、例えば、赤外線や微弱電波などの電磁波を利用して、挨拶信号や電子ペットデータを、数mから数十mの範囲内まで届くように、無線で送受信する。なお、挨拶信号などの簡単な信号は超音波や光などで送信してもよい。また、前記送受信部11は、制御部3に制御されて、常時又は所定時間毎に(数秒毎に、数十秒毎に、又は数分間毎に)自動的に、挨拶信号を外部に無線送信している。
【0019】
次に本実施例の動作を説明する。図1において、22は他の電子ペット育成装置を示し、その内部構造は前記の電子ペット育成装置21と同様である。また、図2は、これらの2つの電子ペット育成装置21,22の間でやり取りされる信号及びデータの通信手順(プロトコル)を説明するための図である。
【0020】
これらの2つの電子ペット育成装置21,22からは、前述のように、所定時間毎に、信号・データ送受信部11から挨拶信号が自動的に外部に送信されている。よって、それらの2つの装置21,22が、たまたま偶然に、例えば数mから数十mの範囲内(前記送受信部11からの挨拶信号が前記電磁波などにより届く範囲内)の「近傍のエリア」に近づいたときは(つまり、各ユーザーが普段から携帯しているので、2人以上のユーザーがたまたま偶然に近づいたときは)、例えば、後述の人体検知部31からの出力に基づいて(又は、ユーザーが、外出時には所定時間毎に自動的に挨拶信号を送信するように制御部3を設定しておいてもよい)、いずれか一方から(この例では電子ペット育成装置21から)の挨拶信号(電子ペットの存在を示す信号であり、例えば「こんちには」という挨拶を示す信号)が発せられてそれを他方(この例では電子ペット育成装置22)が受信する(図2のステップ1)。
なお、本実施例では、前記「挨拶信号」の送信は、例えば、(1)ユーザーが予め設定した所定時間毎に(例えば、3秒ごと、30秒ごと、3分間ごと)周辺のエリアに向けて無線送信するものでもよいし、(2)戸外では常時無線送信するようにしてもよいし、(3)ユーザーが希望するときだけそのユーザーの操作により無線送信する、ようにしてもよい。
【0021】
なお、この場合、前記装置21では、挨拶信号を送信するとき、制御部3が出力部2を制御して、自らの電子ペットの存在を周囲の他人に知らせるために、所定の光、光の点滅、音響、音声などを出力する。また、前記装置22でも、挨拶信号を受信したとき、装置22内の制御部3が出力部2を制御して、自らの電子ペットの存在を周囲の他人(例えば、前記の受信した挨拶信号を送信した他の電子ペットのユーザー)に知らせるために、所定の光、光の点滅、音響、音声などによる所定の告知を出力する。また、前記装置22内の制御部3では、この告知の出力と共に、自己(電子ペット生存装置22)のユーザーに「他の電子ペット育成装置の電子ペットからの挨拶信号を受信したこと」を知らせるために、所定の光、光の点滅、音響、音声、又は振動などによる所定の報知を行う。
【0022】
挨拶信号を受信した電子ペット育成装置22では、信号・データ送受信部11が「挨拶信号を受信したこと」を示す信号を制御部3に送り、制御部3では、この信号を受けて、自動的に、返答信号(こちらにも電子ペットが存在しており、そちらからの挨拶信号を受け取ったということを示す信号で3あって、例えば「こんにちは」という意味を持つ信号)を送信し、装置21の側がこれを受信する(ステップ2)。すなわち、前記電子ペット育成装置22においても、装置21と同様の構成になっているので、制御部が、他の装置21からの挨拶信号を受信したとき、制御部は、自動的に、返答信号(挨拶信号)を返信するようにしている。なお、この返答信号を送信する場合、前記装置21では、制御部3が出力部2を制御して、自らの電子ペットの存在を周囲の人に知らせるために、所定の光、光の点滅、音響、音声などを出力する。以上により、たまたま道で通りすがるなどの偶然に近づいた電子ペット同士の通常の「挨拶」が、各ユーザーの特別の操作無しに、自発的に、行われる。
【0023】
次に、装置21は、「こちらから電子ペットデータを送ってもよいかどうかの問い合わせ信号」を送信し、装置22がこれを受信する(図2のステップ3)。装置22では、「送っても良いとの返事信号」を送信し、装置21がこの返事信号を受信する(ステップ4)。すると、装置21が自分の電子ペットデータ(名前、画像、鳴き声、プロフィールなど)を送信し、装置22がこのデータを受信する(ステップ5)。次に、装置22が「こちらからも電子ペットデータを送ってよいですか、という問い合わせのための問い合わせ信号」を送信し、装置21が受信する(ステップ6)。装置21から「送っても良いとの返事信号」を送信し、装置22がこの返事信号を受信する(ステップ7)。すると、装置22から、自分の電子ペットデータを送信し、装置21がこのデータを受信する(ステップ8)。これらの各電子ペット間での交信は、各ユーザーの特別な操作なしに、各電子ペットにより自発的に、行われる。さらに、ユーザーが希望する場合(例えば、ユーザーが、予め、後述のステップS9以下のような手順で交信することを設定しておいた場合)は、装置21から「こちらから飼い主データを送っても良いかどうかを問い合わせるための問い合わせ信号」を送信し、装置22が受信する(ステップ9)。すると、装置22から「送っても良いよ、との返事信号」が送信され、装置21に受信される(ステップ10)。これを受けて、装置21から「飼い主データ」が送信され、装置22に受信される(ステップ11)。その後、装置22から「こちらからも飼い主データを送っても良いですか、という問い合わせ信号」を送信し、装置21で受信される(ステップ12)。装置21から「送っても良いよ、との信号」が送信され、装置22がこれを受信する(ステップ13)。すると、装置22から「飼い主データ」が送信され、装置21に受信される(ステップ14)。
【0024】
なお、本実施例では、図2のステップ1の挨拶信号の送信時に、電子ペット育成装置21(自己)から所定の音や光などにより電子ペット(自己)の存在及び居場所を示す情報又は信号を出力するようにしてもよい。この情報又は信号は、例えば、電子ペットの「鳴き声」を示す音響や「こんにちは」という意味の音声や信号などである。これにより、前記電子ペット育成装置21の周囲の人は、電子ペット(自己)の存在及びその居場所を知ることができる(実際のペットの犬などを連れて散歩しているときは、ペット犬の鳴き声などにより、その存在やその居場所が周囲の人に分かるが、それと同じことが、本実施例により、電子ペットについても実現できる訳である)。また、図2のステップS1において、前記の電子ペット育成装置21からの挨拶信号を他の電子ペット育成装置22が受信する時に、この電子ペット育成装置22からも、前述のような「自分の存在を示す鳴き声などの情報又は信号」を出力するようにしてもよい。この場合も、そこに電子ペット(電子ペット育成装置22)が居ることを、周囲の人(電子ペット育成装置21のユーザーを含む)に知らせることができる。また、図2のステップ2において、電子ペット育成装置22が返答信号を返信したきも、同様に、この電子ペット育成装置22から、前述のような鳴き声などの情報又は信号を出力するようにしてもよい。この場合は、こちらの電子ペットが返答信号を相手に返信したことを、周囲の人に、特に、前記の挨拶信号を送信してくれた相手である電子ペット育成装置21のユーザーに、知らせることができる。
【0025】
以上のようにして外部から受信された(2つの電子ペット育成装置の間でやり取りされた)「電子ペットデータ」や「飼い主データ」は、装置21,22の送受信部11から制御部3を経て記録装置4の中の「他の電子ペットデータ記録部9」や「他の飼い主データ記録部10」に記録される。また、ユーザーは、このようにして記録された「他の電子ペットデータ」や「他の飼い主データ」を制御部3により出力部2に出力することにより、電子ペットや飼い主の画像やプロフィールをディスプレイに表示して視認したり、他の電子ペットの鳴き声や他の飼い主のメッセージをスピーカから音声で聞くことができる。
【0026】
なお、図2のステップ1で装置21からの挨拶信号を受信した装置22のユーザーは、その装置22の出力部に備えられた発光ダイオード、スピーカ、又はバイブレータが作動することにより(制御部は、前記挨拶信号を受信したときは、前記発光ダイオード、スピーカ、バイブレータなどを作動させてユーザーに報知させるように、予めプログラムされている)、外部の他の電子ペットからの挨拶信号が来たことを、知らさせる(報知される)。また、図2のステップ2で装置22からの返答信号を受信した装置21のユーザーは、前記制御部3の制御により(制御部3は、外部からの返答信号を受信したときは、出力部2の発光ダイオード、スピーカ、バイブレータなどを作動させてユーザーに報知するように、プログラムされている)、そのことを、知らされる(報知される)。
【0027】
以上のように、本実施例では、それぞれが電子ペット育成装置21,22を携帯している2人のユーザーが互いに近づくことにより、各電子ペット育成装置21,22が互いに接近したときは、お互いの電子ペットが自発的・自動的に(つまり、ユーザーの特別な操作を待つことなく)「挨拶」を交わし合い(無線で交信し合い)、さらに、お互いの電子ペットに関するデータやお互いの飼い主(ユーザー)に関するデータを無線で交信し合うので、各ユーザーは、電子ペットを介して、つまり電子ペットを「仲立ち」「きっかけ」として、立ち止まって挨拶や会話をして知り合い・友人・知人となることができる。一般に、犬などの「現実のペット」を散歩させているとき、ペット同士が「吠え合ったり」「じゃれたり、けんかをしたり」することが「きっかけ」となって会話をしたり、ペットを散歩させている人同士がペットを「仲立ち」として知り合いになるという我々が日常でしはしば経験することであるが、本実施例によれば、これと同じことを、「電子ペット」についても生じさせることが可能になる。よって、本実施例によれば、電子ペット又は電子ペット育成装置の新しい機能・役割(ユーザー同士のコミュニケーションの仲立ちをするという機能・役割)を付与して、その付加価値をより高めることができる。
【0028】
なお、以上の実施例では、電子ペット育成装置について説明したが、本発明は、電子的子供キャラクタ育成装置、電子的子供キャラクタ教育・養育装置(子供キャラクタを教育・養育させていくゲーム装置)、電子的人間キャラクタ生活装置、電子的怪獣キャラクタ飼育装置、電子植物栽培装置、などの様々な電子生物についても同様に適用できることはもちろんである。
【0029】
次に、本実施例の上記で説明したもの以外の他の構成及び動作を図1に基づいて説明する。
【0030】
本実施例では、携帯型の電子ペット育成装置21の中に、赤外線センサーや熱センサーなどで構成される人体検出部31が備えられている。この人体検出部31は、近傍のエリアに他人が居るとき、その存在を検知するものである。本実施例では、前述のように、所定時間毎に挨拶信号を送信するようにしてもよいが、そうではなく、この人体検知部31が近傍のエリアに他人の存在を検知したときだけ、この人体検知部31からの出力を受けた制御部3の制御により、挨拶信号を送信するようにしてもよい。このようにすれば、周りに他人が全く居ないのに所定時間毎に挨拶信号を送信するという無駄が防止できる。
【0031】
また、本実施例では、電子ペット育成装置21の中に、他の電子ペット育成装置22との間で、双方の電子ペットの類似度及び相性度を判定すると共に、双方のユーザーの類似度及び相性度を判定するための「類似度及び相性度判定部」32が備えられている。この判定部32は、例えば、前記装置21と前記装置22との間で、双方の電子ペットデータを交換し合い、双方の電子ペットデータの中の誕生日・誕生日の星座・血液型・好きな食べ物・好きな遊びなどのデータを相互に比較し合って(一種の「お見合い」である)、双方の電子ペット同士の「類似度及び相性度」を判定する。この判定結果の内容は、制御部3を介して出力部2に送ることにより、文字又は図形などで表示させたり、音声や音響で出力させることができる。また、本実施例では、この判定の結果、双方の電子ペット同士の「類似度又は相性度」があるレベルより高いと判定されたときは、前記制御部3が、前記出力部2を制御して、そのことを、所定の音響・音声・光・振動などにより、ユーザー又はその周囲の人に知らせる。
【0032】
また、同様に、本実施例では、前記装置21と前記装置22との間で、双方のユーザー・データを交換し合い、双方のユーザーの誕生日・年齢・性別・生まれた日の星座・血液型・趣味・好きな食べ物・好きな遊びなどのデータを相互に比較し合って(一種の「お見合い」である)、双方のユーザー同士の「類似度及び相性度」を判定する。この判定結果の内容(例えば、「相性は良い」「相性は悪い」など)は、制御部3を介して出力部2に送り、文字又は図形などで表示させたり、音声や音響で出力させることができる。また、本実施例では、この判定の結果、双方のユーザー同士の「類似度又は相性度」が所定レベルよりも高いときは、前記制御部3が、前記出力部2を制御して、そのことを、所定の音響・音声・光・振動などにより、ユーザー又はその周囲の人に知らせる。
【0033】
また、本実施例では、電子ペット育成装置21の中に、他の電子ペット育成装置22との間で、電子ペット同士が、ユーザーの操作を介すること無く自発的に、情報を交換して(情報を交信・やり取りして)、所定の会話、ゲーム、バトル(戦闘)、お見合いなどを行うための「自発的交信部」33(図1参照)が備えられている。この「自発的交信部」33には、例えば複数の会話のやり取りのパターンや複数のゲームのやり取りのパターンや複数の戦闘のやり取りのパターンのデータを記録した記録領域と、これらの各パターンを実行するためのプログラム、及び、これらの複数のパータンの中から適当なものを選択するためのプログラムを記録した領域とが、存在している。
【0034】
前記の自発的交信部33は、近傍のエリア内にある2つの電子ペット育成装置21,22同士で相互に挨拶信号を交換し合った後に、例えば、一方が「会話しよう」というデータを送信して他方がそれに応じる返答信号を返信すると、予め決められた複数の「会話パターン」の中の一つを選択して、その選択されたパターンの「プロトコル」にしたがって、電子ペット同士が、自己の名前、誕生日、好きな食べ物などを話したりする会話をやり取りするものである。なお、この会話でやり取りされた情報(電子ペットに関するデータを含む)に基づいて、前記「類似度及び相性度判定部」32により、双方の電子ペットの類似度や相性度を判定するようにしてもよい(以上の一連の会話のやり取りと相性度などの判定動作は、一種の「お見合い」モードと言える)。
【0035】
なお、前記の「例えば、一方が「会話しよう」というデータを送信して他方がそれに応じる返答信号を返信すると、予め決められた複数の「会話パターン」の中の一つを選択して、その選択されたパターンの「プロトコル」にしたがって、電子ペット同士が、自己の名前、誕生日、好きな食べ物などを話したりする会話をやり取りするものである」という動作の中の、「複数の会話パターンの中の一つを選択する」ときの動作を次に説明する。本実施例による電子ペット育成装置21の中には、その日の曜日や季節を判定するためのデータとなるカレンダー(暦)データを記録したカレンダー部34、その時点の時刻を計時するための計時部35、及び、そのときの場所を測定するための現在位置特定部(GPS=グローバルポジショニングシステム、又は、基地局の電波の到達圏が狭いPHS=簡易型携帯電話などを使用したもの)36が備えられている。これらのカレンダー部34、計時部35、現在位置特定部36からのデータは、制御部3を介して、自発的交信部33に送られる。自発的交信部33では、その中に含まれているプログラムにより、複数の会話のやり取りのパターンの中から、前記カレンダー、時刻、現在位置などから決められる「今のその場のシチュエーション(場面・状況)」に最も適したパターンを選択する。そして、自発的交信部33は、この選択した会話パターンにしたがって、会話のやり取りを無線送信で行う。
【0036】
以上は「電子ペット同士が、ユーザーの操作を必要としないで、自発的に(勝手に)行う会話のやり取り」を例に説明したが、本実施例では、会話のやり取りに限られるものではなく、例えば、ゲームのやり取り、バトル(戦闘)のやり取り、お見合いのやり取り、なども、電子ペット同士が相互に予め決められたプロトコルにしたがって、自発的に(ユーザーの操作によらずに)行うことができる。また、現在の人工知能技術を採用することにより、前記の予め決められたプロトコルにしたがうことなく融通性の高い会話やゲームなどのやり取りを電子ペット同士が行うことも可能である。
【0037】
すなわち、本実施例では、前記図2のプロトコルのやり取りだけでなく、電子生物同士が、自動的・自発的に(ユーザーの操作を前提としないで)「会話」や「おしゃべり」を続けるように制御部をプログラムしておくことが可能である。電子生物同士に日常の定型的な会話を行わせることは、現在の技術でも可能である(例えば、「人口知能」や「エージェント」の技術を利用)。例えば、2つの電子生物が出会ったとき、一方から他方へ「ジャンケンの勝負しよう」という信号を発信し、他方が「良いよ」と応じたとき、次に双方から他方に向けて、グー、チョキ、パーのいずれかを示す信号を送信することにより、ジャンケンの勝負を行い、その勝敗結果を双方が共有する(すなわち、双方の電子ペット育成装置21,22の出力部2にその勝敗結果を表示したりすること)ことは、現在の技術でも可能である。
【0038】
また、本実施例では、例えば次のような「ゲームのやり取り」を2つの電子ペット育成装置の間で行うことも可能である。以下の例では、例えば、「A,B,Cという3つの記号の中の任意に選択した一つを双方が出して勝敗を決め、それを3回繰り返して、1回目から3回目までのトータル(総計)で勝敗を決める」という、ABC3回戦ゲーム(仮称)を例に説明する。このABC3回戦ゲームでは、「AはBよりも強い。BはCよりも強い。CはAよりも強い」というルールが予め決められているものとする。以下では、図3のフローチャートを参照して説明する。
【0039】
まず、一方の電子ペット育成装置21に内蔵された人体検知部31が近傍のエリア内に他人の存在を検出したとき(ステップS21がYESのとき)は、自分の方から、挨拶信号を送信する(ステップS22)。その後、所定時間以内例えば3秒以内に他の電子ペット育成装置22からの返答信号(挨拶信号)を受信したかどうかを判定する(ステップS23)。この判定がNOのときは、終了する。この判定がYESのときは、装置21から、「ABC3回戦ゲームしない?」という信号を送信する(ステップS24)。その後、3秒以内に他の装置22から「ABC3回戦ゲームやってもいいよ」という信号が返信されて来た(その返信信号を受信した)かどうかを判定する(ステップS25)。この判定がNOならば、終了する。この判定がイエスなら、双方でこのゲームを開始する。装置21の側の動作としては、まず、A,B,Cの複数の組み合わせの中から一つのパターンを選択する(ステップS26)。この選択は、例えば、ユーザーが予め複数のパターンとその各パターンの順番を決めておいて、その順番に従って選択するようにすればよい(又は、前記計時部35や現在位置特定部36から送信される、そのときの時点及び場所の特性データにより、予め記録したコンピュータプログラムで、いずれかのパターンを選択するようにしても良い)。この例では、装置21の電子ペットは、「1回目はA、2回目はC、3回目はB」というパターンを選択したとする。他方、他の装置22の側の電子ペットは「1回目はB、2回目はC、3回目はAというパターン」を選択したとする。
【0040】
ゲーム開始後、双方から、1回目のもの(前記の選択したパータンの中の1回目のもの)を送信する。前記装置21からは「1回目のA」を送信する(ステップS27)。次に、装置21は、他の装置22から1回目のもの(この例では「1回目のB」)を受信したかどうかを判定する(ステップS28)。この判定がNOなら終了する。この判定がYESなら、装置21の電子ペットと装置22の電子ペットとの間でのこのゲームの1回目の勝敗を判定する(ステップS29)。この場合は、装置21側が「A」を出して、装置22側が「B」を出しているので、「AはBより強い」という前記ルールから、装置21側の電子ペットが勝つ(装置22側が負ける)ことになる。以下、同様にして、2回目と3回目の勝負を行いその勝敗を判定する(ステップS30からステップS35まで)。そして、3回目まで行ったら、1回目から3回目までの各勝敗のトータルを集計し、トータルの勝敗を判定し(ステップS36)、その判定結果を装置21及び装置22の出力部に表示する(ステップS37)。
【0041】
なお、本実施例では、電子生物生存装置として、「たまごっち」などのユーザーが趣味で電子ペットを育成するための携帯型電子ペット育成装置を示しているが、本発明はこれに限られるものではなく、例えば、電子生物生存装置の中に生存する「電子生物」は、ユーザーがビジネス用途で使用する「電子秘書」キャラクタなどでもよい。とにかく、ユーザーとの間で「何らかのやり取り」ができるようなキャラクタであれば、本発明における「電子生物」に含まれる。例えば、この「電子秘書」キャラクタが、ユーザーと道路ですれ違う人が携帯する装置に対して、ユーザーに代わって、「友達になりましょう」「友達募集中です」などのメッセージを、他の電子生物とのやり取りを介して、送信するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施例による携帯型電子ペット育成装置を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例の2つの携帯型電子ペット育成装置の電子ペットが相互に挨拶などを交わすときの通信手順(プロトコル)を示す図である。
【図3】本発明の実施例の2つの携帯型電子ペット育成装置の電子ペットが相互に自発的にゲームのやり取りを交信するときの動作の一例を示すフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザーが携帯する電子生物生存装置であって、
近傍のエリアに居る他の電子生物生存装置に受信されるように、「電子生物による所定の挨拶信号」を、無線で送信するための挨拶信号送信手段と、
近傍のエリアにある他の電子生物生存装置から無線で送信された「電子生物による所定の挨拶信号」を受信するための挨拶信号受信手段と、
を含むことを特徴とする携帯型電子生物生存装置。
【請求項2】
請求項1において、前記挨拶信号送信手段は、予め定められた所定時間毎に、挨拶信号を送信するものである、ことを特徴とする携帯型電子生物生存装置。
【請求項3】
請求項1において、さらに、
近傍のエリアに他人又は他の電子生物生存装置が居ることを検知する検知手段を含み、
前記挨拶信号送信手段は、この検知手段からの出力に基づいて、挨拶信号を送信するものである、ことを特徴とする携帯型電子生物生存装置。
【請求項4】
請求項1,2又は3において、さらに、
前記挨拶信号受信手段により所定の挨拶信号が受信されたとき、そのことをユーザーに知らせる報知手段、
を含むことを特徴とする携帯型電子生物生存装置。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれかにおいて、さらに、
前記挨拶信号受信手段により他の電子生物生存装置からの所定の挨拶信号が受信されたとき、その挨拶信号を送信した他の携帯型電子生物生存装置に対して、自発的に、所定の挨拶信号を無線で返信する挨拶信号返信手段、
を含むことを特徴とする携帯型電子生物生存装置。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれかにおいて、さらに、
電子生物に関するデータを記録する電子生物データ記録手段と、
この電子生物データ記録手段に記録された電子生物データを、前記挨拶信号と共に又は前記挨拶信号とは別に、送信する電子生物データ送信手段と、
他の電子生物生存装置から無線で送信された他の電子生物生存装置の電子生物データを受信する電子生物データ受信手段と、
この電子生物データ受信手段により受信された他の電子生物生存装置の電子生物データを出力する出力手段と、
を備えたことを特徴とする携帯型電子生物生存装置。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれかにおいて、さらに、
電子生物のユーザーに関するデータを記録するユーザー・データ記録手段と、
このユーザー・データ記録手段に記録されたユーザー・データを、前記挨拶信号と共に又は前記挨拶信号とは別に、送信するユーザー・データ送信手段と、
他の電子生物生存装置から無線で送信された他の電子生物生存装置のユーザー・データを受信するユーザー・データ受信手段と、
このユーザー・データ受信手段により受信された他の電子生物生存装置のユーザー・データを出力する出力手段と、
を備えたことを特徴とする携帯型電子生物生存装置。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれかにおいて、さらに、
前記挨拶信号を送信するとき、送信する側の電子生物の存在又はその居場所を周囲の人に知らせるための挨拶送信告知手段、
を備えたことを特徴とする携帯型電子生物生存装置。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれかにおいて、さらに、
前記挨拶信号を受信したとき、受信した側の電子生物の存在又はその居場所を周囲の人に知らせるための挨拶受信告知手段、
を備えたことを特徴とする携帯型電子生物生存装置。
【請求項10】
請求項5から9までのいずれかにおいて、さらに、
前記挨拶信号を返信するとき、返信する側の電子生物の存在又はその居場所を周囲の人に知らせるための挨拶返信告知手段、
を備えたことを特徴とする携帯型電子生物生存装置。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれかにおいて、さらに、
他の携帯型電子生物生存装置から送信された他の携帯型電子生物生存装置の電子生物データ又はユーザー・データと、自己の電子生物データ又はユーザー・データと、を比較して、双方の電子生物又はユーザーの間の類似度又は相性度を判定する類似度又は相性度判定手段と、
この類似度又は相性度判定手段による判定結果を出力する判定結果出力手段と、
を含むことを特徴とする携帯型電子生物生存装置。
【請求項12】
請求項1から10までのいずれかにおいて、さらに、
他の携帯型電子生物生存装置から送信された他の携帯型電子生物生存装置の電子生物データ又はユーザー・データと、自己の電子生物データ又はユーザー・データと、を比較して、双方の電子生物又はユーザーの間の類似度又は相性度を判定する類似度又は相性度判定手段と、
この類似度又は相性度判定手段により類似度又は相性度が比較的高いと判定されたときは、ユーザーにそのことを知らせるために所定の告知をする判定告知手段と、
を含むことを特徴とする携帯型電子生物生存装置。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれかにおいて、さらに、
互いに近傍のエリア内にある2つの携帯型電子生物生存装置の間で、電子生物同士が無線で交信して、相互間の鳴き声のやり取り、会話のやり取り、ゲームのやり取り、戦闘のやり取り、お見合いのやり取りなどの情報のやり取りを、ユーザーの特別な操作によらずに自発的に行うための自発的交信手段、
を備えたことを特徴とする携帯型電子生物生存装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−236082(P2012−236082A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2012−196285(P2012−196285)
【出願日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【分割の表示】特願2009−290789(P2009−290789)の分割
【原出願日】平成11年6月29日(1999.6.29)
【出願人】(595100934)
【Fターム(参考)】