説明

携帯型音楽再生装置及びそれを用いた生体情報管理方法並びにプログラム

【課題】 センサなどの特別の付加機能部を使用することなく、利用者自身の生体情報を含む健康管理のための健康情報の異常が、どの程度かを容易に判別することが可能な携帯型音楽再生装置を得る。
【解決手段】 利用者の生体情報をイヤホンにより計測して生成する手段と、前記生体情報の異常時に警報を発生すると共に、予め登録された通報先へその旨を通報する手段と、前記生体情報の値に応じて予め登録された音楽を選択して演奏する演奏手段とを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は携帯型音楽再生装置及びそれを用いた生体情報管理方法並びにプログラムに関し、特に利用者の体温、脈拍数などの生体情報の管理をなす携帯型音楽再生装置及びそれを用いた生体情報管理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生体情報の習慣的な計測は、利用者の健康状態の変化を簡潔に明示し、健康状態の把握に役立つ。しかし、かかる生体情報の持続的な計測には、特許文献1に示されているように、特別の計測器具(センサを含む付加機能部)を別に装着する必要があり、よって極めて煩雑であること、また持続的に生体情報を計測するためのモチベーションを維持するのが困難であること、等の問題があった。
【0003】
そこで、特許文献2を参照すると、常時利用者が身に付けている腕時計に、生体情報を計測するセンサを設けておき、このセンサによる生体情報の計測結果の異常を検出して、予め設定された通報先へ緊急通報すると共に、警報音を発生するようにした技術が開示されている。これにより、特別の計測器具を装着することが必要なくなり、また持続的に生体情報を計測するためのモチベーションを維持する必要もないという利点がある。
【0004】
【特許文献1】特開2002−009683号公報
【特許文献2】特開2006−081838号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献2の技術では、腕時計にセンサを設けて生体情報を計測して、異常時に、警報を発生すると共に、通報先へ緊急連絡をなすものであるが、警報のみでは、利用者は生体情報の異常がどの程度かを判別することができないという問題がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、センサなどの特別の付加機能部を使用することなく、利用者自身の生体情報の異常がどの程度かを容易に判別することが可能な携帯型音楽再生装置及びそれを用いた生体情報管理方法並びにプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による携帯型音楽再生装置は、利用者の生体情報をイヤホンにより計測して生成する手段と、前記生体情報の異常時に警報を発生すると共に、予め登録された通報先へその旨を通報する手段と、前記生体情報の値に応じて予め登録された音楽を選択して演奏する演奏手段とを含むことを特徴とする。
【0008】
本発明による健康情報管理方法は、携帯型音楽再生装置による生体情報管理方法であって、利用者の生体情報をイヤホンにより計測して生成するステップと、前記生体情報の異常時に警報を発生すると共に、予め登録された通報先へその旨を通報するステップと、前記生体情報の値に応じて予め登録された音楽を選択して演奏する演奏ステップとを含むことを特徴とする。
【0009】
本発明によるプログラムは、携帯型音楽再生装置による生体情報管理方法の動作をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、利用者の生体情報をイヤホンにより計測して生成する処理と、前記生体情報の異常時に警報を発生すると共に、予め登録された通報先へその旨を通報する処理と、前記生体情報の値に応じて予め登録された音楽を選択して演奏する処理とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、広く普及している携帯型の音楽再生装置、すなわちポータブル音楽プレーヤーに付属のイヤホンに脈拍及び体温などの生体情報の計測機能を付加し、生体情報の計測器具の装着の煩雑性を低減することにより、継続的な生体情報の計測を行うことが容易になる。また、生体情報の計測値に応じて演奏音楽を変化させる機能を追加することにより、利用者の自己の計測値の正常及び異常、更にはその異常の程度がどのようなものかを判断することが容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。図1は本発明の実施の形態によるシステム概略構成図である。本発明の実施の形態は、利用者5が常時携帯する表示画面付の携帯型音楽再生装置1と、利用者5への聴覚に訴えるイヤホン2と、利用者5が自宅に有するPC(パーソナルコンピュータ)装置3と、緊急通報先4とを含んで構成されている。
【0012】
イヤホン2は、利用者5が携帯型音楽再生装置1からの再生音楽を視聴するための機能を有しており、ヘッドホンなどが考えられる。このイヤホン2は、この視聴機能の他に、利用者5の生体情報を計測して携帯型音楽再生装置1へ送出する機能をも有している。例えば、体温や脈拍数などを計測するセンサを有しており、この生体情報を計測情報#1とする。なお、この計測情報#1の計測は、携帯型音楽再生装置1からの、すなわち利用者による計測開始/停止指示により、制御されるものとする。
【0013】
携帯型音楽再生装置1は、音楽の再生をなす機能の他に、利用者の歩数及び歩速、更には、これら歩数や歩速から消費カロリーの総和を算出して生成する機能をも有しているものとする。これら歩数及び歩速、更には消費カロリーの総和などは、利用者の健康を管理するための健康管理情報であり、この情報を計測情報#2とする。
【0014】
また、これら計測情報#1及び#2の処理を行い、目標値103との比較や異常の判定などを行い、異常の場合には、予め設定登録された通報先4への通報100を行うと共に、警報を発する機能をも有するものとする。
【0015】
PC装置3は、計測情報の保存管理をなす機能(102)を有し、また携帯型音楽再生装置1に対する設定情報101の生成をなす機能を有している。この設定情報101としては、通報先4の連絡のための情報である電話番号やEメールアドレス、演奏すべき音楽データやその演奏テンポなどである。通報先4は、計測情報が異常の場合に、その旨が通報されるべき人や関係機関であり、家族や、医師を含む医療機関などである。
【0016】
図2は、この携帯型音楽再生装置1の機能ブロックを示す図である。図2を参照すると、携帯型音楽再生装置1は、通信部11と、音楽演奏部12と、計測情報処理部13と、表示部14と、制御部15と、メモリ16と、歩数計17とを有している。
【0017】
通信部11は、PC装置3や通報先4との通信をなす機能を有し、音楽演奏部12は、メモリ16に記憶されている音楽データを、制御部15の指示により再生してイヤホン2へ送出する機能を有する。計測情報処理部13は、イヤホン2からの計測情報#1と歩数計17からの計測情報#2とのデータ処理を行うものであり、目標値との比較や異常の判定などの機能を有する。
【0018】
歩数計17は、利用者の歩数や歩速、更には消費カロリーの総和などの計測情報#2の生成を行って、計測情報情報処理部13へ送出するものであり、周知の技術を用いることができる。表示部14は、計測情報#1及び#2及び現在の時刻(日時)141を表示するものである。制御部15は、上記各部の制御を、メモリ16に予め格納されているプログラムの手順に従ってなすものであり、CPU(コンピュータ)である。メモリ16は、上記のプログラムを格納すると共に、PC装置3による設定情報を記憶し、また制御部15の作業用メモリとしての機能をも有するものとする。
【0019】
なお、携帯型音楽再生装置1は、特に図示しないが、全地球測位システムGPS(Global Positioning System )機能、無線IP電話機能及び計時機能を有するものとする。また、PC装置4は、携帯型音楽再生装置1に保存している計測情報#1及び#2を管理格納して、経時データ、経日データを、表やグラフ化して表示する機能を有し、また、計測情報#2である健康情報の値に応じて、演奏すべき音楽の変更設定、または当該音楽の演奏テンポの変更設定を行う。これにより、利用者は携帯型音楽再生装置1の表示画面141を確認しなくても、聴覚的に自分の生体情報や健康管理情報を把握することができることになる。
【0020】
以下に、図3を参照して本発明の実施の形態の動作を説明する。まず、図3に示す<生体情報の計測開始、表示及び保存>の動作について説明する。利用者はイヤホン2を装着し、携帯型音楽再生装置1を操作して計測情報#1及び計測情報#2の計測を開始する(ステップS1)。イヤホン2は、携帯型音楽再生装置1から計測開始指示を受け、イヤホンに内蔵されたセンサを用いて、計測情報#1の計測を行い(ステップS3)、計測情報#1を携帯型音楽再生装置1へ送信する(ステップS5)。
【0021】
携帯型音楽再生装置1は、自装置に内蔵されたセンサすなわち歩数計を用いて、歩数及び歩行速度の計測を行い(ステップS2)、その情報から消費カロリーを算出する(ステップS4)。そして、携帯型音楽再生装置1は、表示部に計測情報#1及び#2の数値をデジタル表示すると共に保存する(ステップS6)。
【0022】
次に、図3に示す<異常値計測時の処理>の動作について説明する。携帯型音楽再生装置1において、計測情報#1が計測値判定機能によって「異常」と判定された場合で、かつ計測開始から1度も「異常」と判定されていない場合には、自動又は利用者の操作によって、図示せぬ周知の緊急通報機能が起動し、「異常」である旨を事前に登録した電話、あるいは医療機関などに緊急通報する(ステップS7,S9,S10)。また、電話がつながらなかった場合、一定回数以上コールしても応答がなかった場合、または留守番電話に接続された場合には、電子メールに自動で切替えて緊急通報を行う(ステップS12)。
【0023】
このときに通報される内容は、直近に計測された計測情報#1、現在位置及び「異常」と判定した時刻である。また、これと同時に、携帯型音楽再生装置1が異常警報音を発して周囲の人間に通報する(ステップS11)。
【0024】
次に、図3に示す<生体情報の計測終了>の動作について説明する。利用者は、携帯型音楽再生装置1を操作して、計測情報#1及び#2の計測を終了する(ステップS8,S13)。
【0025】
次に、図4を参照して、計測情報に応じた演奏音楽の変更の動作について説明する。携帯型音楽再生装置1において、計測情報#1または#2の計測値に応じて演奏する音楽を変更する機能のON/OFFを設定する。ONを設定した場合、計測情報#1または#2の計測値に応じて、自宅のPC装置3により予め設定しておいた(処理101で示す)音楽を演奏する。利用者5は、イヤホン2によりこの音楽を視聴することになる。
【0026】
次に、図5を参照して、PC装置3での操作について説明する。利用者は、携帯型音楽再生装置1をPC装置3に接続し、PC装置3にインストールされている管理用ソフトウェアの操作によって、携帯型音楽再生装置1に保存されている計測情報#1及び#2のデータをPC装置3に保存する(ステップS20)。管理用ソフトウェアの操作によって、計測値判定機能において「異常」と判定された場合に通報する通報先を設定する(ステップS21)。
【0027】
保存したデータは、日付がふられて時間(分)刻みでソートされており、管理用ソフトウェアの操作によって、日時を指定して表及びグラフを作成し、PC装置3の画面に表示する(ステップS22)。また、管理用ソフトウェアによって、計測情報に応じて演奏する音楽を設定する(ステップS23)。
【0028】
図6は、本発明の他の実施の形態を説明するための図であり、図4と同等部分は同一符号により示している。本実施の形態の構成は、先の実施の形態の図1及び図2と同等であり、その説明は省略する。先の実施の形態との相違点は、計測情報の計測値に応じて、演奏する音楽のテンポを変更することである。すなわち、図6の処理101に示すように、歩速が4Km/Hに近い場合には、予め設定されている音楽aを正常のテンポで演奏し、歩速が4Km/Hを上回った場合には、音楽aを正常のテンポより速いテンポで演奏する。また、逆に、歩速が4Km/Hを下回った場合には、音楽aを正常のテンポより遅いテンポで演奏する。
【0029】
このように、計測情報に応じて演奏する音楽のテンポを変化させることにより、利用者は自分の歩速が、目標値に対してどのような状態かを容易に把握することができることになるのである。
【0030】
なお、消費カロリーの総和や歩数などの健康情報の目標値は、日毎や週毎に、医療機関などから送信され、また計測結果を医療機関などへ送信するようにすることにより、利用者は目標値に対して自分の消費カロリーや歩数がどのような値であるかを容易に判定可能であり、また医療機関などにおいても、的確な運動負荷の提示や病態の正確な把握が可能となる。
【0031】
なお、計測情報の値に応じて演奏音楽を変更することと、その音楽の演奏テンポを変更することとを、適宜を組み合わせることができることは明白である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態の全体の概略構成図である。
【図2】本発明の実施の形態による携帯型音楽再生装置の構成図である。
【図3】本発明の実施の形態の動作を示すフロー図である。
【図4】本発明の実施の形態における計測情報に応じた演奏音楽の変更の動作について説明する図である。
【図5】本発明の実施の形態におけるPC装置3での操作について説明するずである。
【図6】本発明の他の実施の形態を説明するための図である。
【符号の説明】
【0033】
1 携帯型音楽再生装置
2 イヤホン
3 PC装置
4 通報先
5 利用者
11 通信部
12 音楽演奏部
13 計測情報処理部
14 表示部
15 制御部(CPU)
16 メモリ
17 歩数計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の生体情報をイヤホンにより計測して生成する手段と、
前記生体情報の異常時に警報を発生すると共に、予め登録された通報先へその旨を通報する手段と、
前記生体情報の値に応じて予め登録された音楽を選択して演奏する演奏手段とを含むことを特徴とする携帯型音楽再生装置。
【請求項2】
利用者の健康を管理するための歩数、歩速、消費カロリーなどの健康管理情報を計測して生成する手段を、更に含み、
前記演奏手段は、前記健康管理情報の値に応じて、予め設定された音楽の演奏テンポを変更して演奏することを特徴とする請求項1記載の携帯型音楽再生装置。
【請求項3】
前記演奏手段は、前記健康管理情報の値が予め設定された目標値に近い時に、前記音楽を正常な演奏テンポにより演奏し、前記健康管理情報の値が前記目標値から離れるに従って、正常な演奏テンポから離れるようにしたことを特徴とする請求項2記載の携帯型音楽再生装置。
【請求項4】
前記生体情報の値及び前記健康管理情報の値を、医師を含む医療機関へ送信する手段を、更に含むことを特徴とする請求項2または3記載の携帯型音楽再生装置。
【請求項5】
前記健康管理情報の目標値は、前記医療機関から送信されることを特徴とする請求項2〜4いずれか記載の携帯型音楽再生装置。
【請求項6】
前記生体情報及び健康管理情報の測定結果を表示する表示手段を、更に含むことを特徴とする請求項2〜5いずれか記載の携帯型音楽再生装置。
【請求項7】
携帯型音楽再生装置による生体情報管理方法であって、
利用者の生体情報をイヤホンにより計測して生成するステップと、
前記生体情報の異常時に警報を発生すると共に、予め登録された通報先へその旨を通報するステップと、
前記生体情報の値に応じて予め登録された音楽を選択して演奏する演奏ステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
利用者の健康を管理するための歩数、歩速、消費カロリーなどの健康管理情報を計測して生成するステップを、更に含み、
前記演奏ステップは、前記健康管理情報の値に応じて、予め設定された音楽の演奏テンポを変更して演奏することを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記演奏ステップは、前記健康管理情報の値が予め設定された目標値に近い時に、前記音楽を正常な演奏テンポにより演奏し、前記健康管理情報の値が前記目標値から離れるに従って、正常な演奏テンポから離れるようにしたことを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記生体情報の値及び前記健康管理情報の値を、医師を含む医療機関へ送信するステップを、更に含むことを特徴とする請求項8または9記載の方法。
【請求項11】
前記健康管理情報の目標値は、前記医療機関から送信されることを特徴とする請求項8〜10いずれか記載の方法。
【請求項12】
前記生体情報及び健康管理情報の測定結果を表示する表示手段を、更に含むことを特徴とする請求項8〜11いずれか記載の方法。
【請求項13】
携帯型音楽再生装置による生体情報管理方法の動作をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
利用者の生体情報をイヤホンにより計測して生成する処理と、
前記生体情報の異常時に警報を発生すると共に、予め登録された通報先へその旨を通報する処理と、
前記生体情報の値に応じて予め登録された音楽を選択して演奏する処理とを含むことを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−284996(P2009−284996A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−138818(P2008−138818)
【出願日】平成20年5月28日(2008.5.28)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】