説明

携帯機器、その制御方法及びその制御プログラム

【課題】歩行者が事故に遭遇した場合に音声データ又は画像データの少なくともいずれかの記録を可能にする携帯機器、その制御方法及びその制御プログラムを提供すること
【解決手段】本発明にかかる携帯機器10は、音声録音又は画像撮影を実行することにより、音声データ又は画像データの少なくともいずれかのデータを取得するデータ取得部11と、取得したデータを保存するデータ保存部12と、自己の位置が事故の可能性があるとして予め設定された特定領域内にあるか否かを検出する位置検出部13と、事故の発生を検出する事故発生検出部14と、自己の位置が特定領域内にある場合、データ取得部11にデータ取得を開始させる制御部15を備える。制御部15は、データ取得中に事故発生が検出された場合、取得したデータをデータ保存部12に保存させ、事故発生が検出されずに自己の位置が特定領域の内側から外側に移行した場合、取得したデータを削除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯機器、その制御方法及びその制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車を運転中に交通事故に遭遇した場合、事故の原因を究明したり、自身の運転の正当性を証明したりする必要が生じることがある。このため、近年、自動車の車両に、運転時の動画撮影データ又は車両の運転データを記録するドライブレコーダが搭載されるようになった。
【0003】
例えば、引用文献1は、車両に搭載される自動録画撮影記録装置を開示している。この装置は、振動センサにより車両の運行を検知し、撮影を開始する。撮影された動画映像情報は、メモリ内に一時記憶される。そして、装置の音響センサが衝突音を感知すると、装置は衝突直前及び直後にメモリ内に一時記憶された動画映像情報を別途記録保存する。このようにして、装置は衝突の際の動画映像情報を記録保存することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−75033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
引用文献1にかかる装置は、車両に事故が発生した場合の動画映像情報を自動的に記録するものである。しかしながら、歩行者と車両との間で交通事故が発生し、車両にそのようなドライブレコーダシステムの装置が搭載されていない場合、実際には歩行者自身に過失責任がなくとも、歩行者にも過失責任が問われてしまうことが考えられる。この理由は、歩行者側で事故に遭遇した際の画像データ又は音声データについて記録することが難しいため、過失責任の有無を証明する事故発生時の記録が乏しいからである。
【0006】
さらに、歩行者が治安の悪い地域を歩いている際に、トラブルに巻き込まれるような事態も考えられる。そのような場合でも、その歩行者がトラブルに巻き込まれた際の画像データ又は音声データを記録するのは難しいため、事件の立証等ができない可能性がある。このため、歩行者が不当な損害を被る可能性が考えられる。
【0007】
なお、以降で歩行者の事故と記載する場合、歩行者が交通事故に遭遇することの他に、歩行者が他者から暴力行為を受けることも意味として含む。
【0008】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、歩行者が事故に遭遇した場合に音声データ又は画像データの少なくともいずれかの記録を可能にする携帯機器、その制御方法及びその制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかる携帯機器は、音声録音又は画像撮影の少なくともいずれかの処理を実行することにより、音声データ又は画像データの少なくともいずれかのデータを取得するデータ取得部と、前記データ取得部が取得したデータを保存するデータ保存部と、自己の位置が、事故の可能性があるとして予め設定された特定領域にあるか否かを検出する位置検出部と、事故の発生を検出する事故発生検出部と、前記位置検出部が前記自己の位置が前記特定領域内にあることを検出した場合、前記データ取得部に前記データの取得を開始させ、前記データ取得部が前記データを取得中に前記事故発生検出部が事故の発生を検出した場合、前記データ取得部が取得した前記データを前記データ保存部に保存させ、前記事故発生検出部が事故の発生を検出せずに、前記位置検出部が前記自己の位置が前記特定領域内から前記特定領域外にある状態に移行したことを検出した場合、前記データ取得部が取得した前記データを削除する制御部と、を備える。
【0010】
本発明にかかる携帯機器の制御方法は、自己の位置が、事故の可能性があるとして予め設定された特定領域内にあるか否かを検出するステップと、前記自己の位置が前記特定領域にあることを検出した場合、音声録音又は画像撮影の少なくともいずれかの処理を実行することにより、音声データ又は画像データの少なくともいずれかのデータを取得する処理を開始するステップと、前記データの取得中に事故の発生を検出した場合、取得した前記データを保存するステップと、事故の発生を検出せずに、前記自己の位置が前記特定領域内から前記特定領域外にある状態に移行したことを検出した場合、取得した前記データを削除するステップと、を備える。
【0011】
本発明にかかる携帯機器の制御プログラムは、自己の位置が、事故の可能性があるとして予め設定された特定領域内にあるか否かを検出するステップと、前記自己の位置が前記特定領域にあることを検出した場合、音声録音又は画像撮影の少なくともいずれかの処理を実行することにより、音声データ又は画像データの少なくともいずれかのデータを取得する処理を開始するステップと、前記データの取得中に事故の発生を検出した場合、取得した前記データを保存するステップと、事故の発生を検出せずに、前記自己の位置が前記特定領域内から前記特定領域外にある状態に移行したことを検出した場合、取得した前記データを削除するステップと、を携帯機器に実行させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、歩行者が事故に遭遇した場合に音声データ又は画像データの少なくともいずれかの記録を可能にする携帯機器、その制御方法及びその制御プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施の形態1にかかる携帯端末のブロック図である。
【図2】実施の形態1にかかる携帯端末における処理を示すフローチャートである。
【図3】実施の形態2にかかる携帯端末のブロック図である。
【図4】実施の形態2にかかる携帯端末の例を示す図である。
【図5】実施の形態2にかかる携帯端末における処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態1
実施の形態1にかかる携帯機器は、歩行者の位置(携帯機器の位置)が事故発生の可能性がある特定領域内にある場合には、音声データ又は画像データの少なくともいずれかのデータを取得する。そして、携帯機器が事故を検出した場合には、取得した音声データ又は画像データを記録する。これにより、歩行者が事故に遭遇した場合には、携帯機器は音声データ又は画像データの少なくともいずれかのデータを、事故にかかるデータとして記録することができる。
【0015】
さらに、携帯機器が事故を検出しないまま歩行者が特定領域を出た場合には、携帯機器はそれまでに取得したデータを削除する。換言すれば、歩行者が事故発生の可能性がある特定の領域を無事に過ぎた場合には、携帯機器はそれまでに取得したデータを削除する。これにより、携帯機器は、不要なデータを溜めこまずに済む。
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は、実施の形態1にかかる携帯機器のブロック図である。実施の形態1にかかる携帯機器10は、データ取得部11、データ保存部12、位置検出部13、事故発生検出部14及び制御部15を備える。携帯機器10は、その他に、各部に電源を供給するバッテリ等を備える。携帯機器10は、例えば携帯通信端末、携帯情報端末であり、さらに具体的には、携帯電話機、PHS、スマートフォン等である。
【0017】
データ取得部11は、音声録音又は画像撮影の少なくともいずれかの処理を実行することができる。それにより、データ取得部11は、音声データ又は画像データの少なくともいずれかのデータを取得する。データ取得部11は、例えば音声を録音するマイク、画像を撮影するカメラ、又は、マイク及びカメラの両方から構成される。データ取得部11が取得した音声データ又は画像データの少なくともいずれかのデータは、図示しないメモリに一時的に保管される。ここで、画像データには、静止画像データ、動画画像データが含まれる。
【0018】
データ保存部12は、データ取得部11が取得し、メモリに一時保管したデータを長期的に保存する。データ保存部12は、例えば、電源を供給しなくともデータ記憶を保持する不揮発性メモリである。このようなデータ保存部12にデータを保存することにより、携帯機器10の電源が切れても、データ取得部11が取得したデータは消去されず、データを残すことができる。
【0019】
位置検出部13は、携帯機器10の位置が、事故の可能性があると設定された特定領域にあるか否かを検出する。例えば、位置検出部13はGPS(Global Positioning System)受信機を備え、受信したGPS情報及び携帯機器10に記憶された地図データに基づいて、携帯機器10の現在位置を検出する。携帯機器10に記憶された地図データには、事故の可能性があると設定された特定領域のデータが関連付けられて記憶されている。この特定領域のデータによって、位置検出部13は、携帯機器10の現在位置が特定領域にあるか否かを検出する。なお、「特定領域のデータ」とは、特定領域の範囲を示す緯度及び経度、特定領域を決定する地図データ上の目印等、特定領域にかかる範囲の特定が可能なデータである。
【0020】
地図データ又は特定領域のデータの少なくともいずれか一方は、携帯機器10内部に記憶されず、携帯機器10の外部に記憶されていてもよい。例えば、携帯機器10がアクセス可能なネットワーク上のサーバに、特定領域のデータが記憶されていてもよい。携帯機器10は、そのサーバにアクセスすることによって、特定領域のデータを取得する。
【0021】
事故の可能性があると設定された特定領域は、例えば、過去に交通事故が多発しているため、地図上の他の領域よりも交通事故の可能性が高いと設定された領域が該当する。当該特定領域は、例えば交差点、歩道のない道路等である。さらに、過去に犯罪が多発しているため、地図上の他の領域よりも治安が悪く、歩行者が暴力行為を受ける可能性が高いと設定された領域等も該当する。
【0022】
位置検出部13は、GPS以外の方法で、携帯機器10の位置を検出してもよい。例えば、携帯機器10が携帯端末である場合には、位置検出部13は、携帯端末基地局から送信される位置情報を用いて、携帯機器10の現在位置の検出及び現在位置が特定領域にあるか否かの検出を実行してもよい。
【0023】
事故発生検出部14は、携帯機器10を持ち歩く歩行者に事故が発生したか否かを検出する。例えば、事故発生検出部14は、携帯機器10の運動又は振動を検出することが可能な検出センサである。この検出センサは、携帯機器10が数秒以内の短い時間で位置が大きく変位したことが検出可能である。例えば、事故発生検出部14は、携帯機器10に所定量以上の加速度又は速度の増加があったことを検出するような検出センサであってもよい。これにより、事故発生検出部14は、歩行者が交通事故又は暴力行為を受けた際に、歩行者が衝撃を受けたことを検出できる。歩行者が衝撃を受けたことにより、携帯機器10が飛ばされたり、落下したりといったことが想定される。それにより、携帯機器10の位置に、短時間で大きな変位が生ずると考えられるからである。携帯機器10の加速度又は速度を検出する事故発生検出部14の例として、振動センサ、速度センサ、加速度センサ等が挙げられる。
【0024】
制御部15は、携帯機器10の各部を制御する働きを有し、例えばCPU(Central Processing Unit)等を備える。制御部15は、以下に示す通り、位置検出部13及び事故発生検出部14の検出結果に応じて、データ取得部11にデータを取得させ、データ保存部12にデータを保存させるように制御する。
【0025】
図2は、歩行者が保持する携帯機器10における処理の詳細を示すフローチャートである。まず、制御部15は、位置検出部13に、現在携帯機器10が事故の可能性があると設定された特定領域内にあるか否かを検出させる(ステップS1)。
【0026】
位置検出部13が、携帯機器10が特定領域内にないことを検出した場合には(ステップS1のNo)、制御部15は、適当な時間間隔をおいて、位置検出部13に、携帯機器10の現在位置が特定領域内にあるか否かを再度検出させる(ステップS1)。この時間間隔は、例えば、歩行者の速度に基づいて決定される。
【0027】
位置検出部13が、携帯機器10が特定領域内にあることを検出した場合には(ステップS1のYes)、制御部15は、データ取得部11に、音声データ又は画像データの取得を開始させる。このようにして携帯機器10は、特定領域内にある場合には、自動でデータ取得を開始する(ステップS2)。取得されたデータは、前述の通り、メモリに一時的に記憶される。
【0028】
データ取得部11がデータ取得中に、制御部15は、事故発生検出部14が事故発生を検出したか否かを判定する(ステップS3)。事故発生検出部14が事故発生を検出する手段の具体例は前述の通りである。
【0029】
事故発生検出部14が事故発生を検出した場合には(ステップS3のYes)、制御部15は、データ取得部11がデータ取得開始後から今までに取得した、メモリに保管されたデータを、データ保存部12に保存させる(ステップS4)。このようにして、携帯機器10は、歩行者に事故が発生した場合には、データを保存することができる。
【0030】
事故発生検出部14が事故発生を検出しなかった場合には(ステップS3のNo)、制御部15は、位置検出部13に、携帯機器10が特定領域外にあるか否かを検出させる(ステップS5)。
【0031】
位置検出部13が、携帯機器10が特定領域内にある状態(特定領域外にない状態)を検出した場合には(ステップS5のNo)、制御部15は、ステップS3の処理に戻って携帯機器10を制御する。
【0032】
位置検出部13が、携帯機器10が特定領域外にある状態(特定領域内にない状態)を検出した場合には(ステップS5のYes)、制御部15は、データ取得部11がデータ取得開始後から今までに取得した、メモリに保管されたデータを削除する(ステップS6)。換言すれば、制御部15は、事故発生検出部14が事故の発生を検出しないまま、歩行者の位置が特定領域内から特定領域外にある状態に移行したことを検出した場合には、この処理フローにおけるステップS2以降からデータ取得部11が取得したデータを削除する。
【0033】
さらに、制御部15は、携帯機器10が特定領域外にあるため、データ取得部11に対し、データ取得を停止させる。
【0034】
以上より、携帯機器10は、歩行者が事故に遭遇したとき、その事故にかかる音声データ又は画像データの少なくともいずれかのデータを保存することができる。これにより、そのデータを用いることによって、事故原因の分析等をすることができる。携帯機器10は、いわば、「歩行者用のドライブレコーダシステム」として、処理を実行する。
【0035】
例えば、歩行者が交差点において車両との交通事故に遭った場合、その事故が歩行者自身に過失責任のない事故であることを証明するために、その事故発生までに保存したデータを用いることができる。具体的には、データ取得部が音声データを取得した場合には、記録されたタイヤ音、エンジン音等のデータから、事故直前の車両の走行状態を解析することができる。データ取得部が画像データを取得した場合には、その画像データから、歩行者が事故直前に横断歩道の上を歩いていた様子などを確認することができる。
【0036】
携帯機器10は、歩行者が事故に遭遇せずに特定領域の外に出た状態を検出した場合には、データ取得部がデータ取得開始から取得したデータを消去する。つまり、携帯機器10は、歩行者が安全な状態に移行したとみなされた場合には、取得したデータを消去する。歩行者が事故に遭遇しない場合には、特定領域内で取得したデータは用途がない不要なデータと見なすことができるからである。このようにして、携帯機器10は、不要なデータを内部のデータ保存部12に溜めこまないようにすることができる。
【0037】
さらに、携帯機器10は、特定領域内のみにおいて、音声データ又は画像データの少なくともいずれかを取得する。このため、携帯機器10が当該データを常時取得する場合と比較して、携帯機器中のバッテリの消耗を抑制することができる。つまり、携帯機器10の使用電力を削減できる。
【0038】
実施の形態2
実施の形態2にかかる携帯電話端末は、実施の形態1に示した携帯機器のより具体的な例である。携帯電話端末は、歩行者に対してGPSナビゲーションによる経路案内を実行している最中、現在の位置情報に基づいて歩行者が交差点に差し掛かったことを検出すると、動画撮影を開始する。そして、歩行者に事故が発生したことを検出した場合には、撮影した動画データを保存する。歩行者が無事に交差点を過ぎたことを検出した場合には、撮影したその動画データを削除する。
【0039】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態2について説明する。図3は、実施の形態2に係る携帯電話端末において、その主要部を示したブロック図である。携帯電話端末20は、CPU(中央処理装置)21、バス22、ROM23、RAM24、GPS制御部25、GPSナビゲーション制御部26、加速度センサ27、カメラ装置28、マイク部29、表示部30及び記憶装置31を備える。携帯機器10は、その他に、各部に電源を供給するバッテリ、使用者からの入力を受け付ける入力部を備える。この入力部は、例えばボタンにより構成される。又は、入力部はタッチパネルのように、表示部30と一体化されて携帯電話端末20に設けられてもよい。
【0040】
CPU21は、バス22を介して携帯電話端末20内の各部と接続され、図示しない入力部からの入力に基づいて、各部を制御する。CPU21は、実施の形態1における制御部15に対応する。バス22は、携帯電話端末20内の各部を接続する。
【0041】
ROM23は、CPU21が実行するための各種の制御用プログラム、携帯電話端末20内で使用する固定的なデータ等を格納したリード・オンリ・メモリである。
【0042】
RAM24は、CPU21がプログラムを実行する上で一時的に必要とされるデータを格納するランダム・アクセス・メモリである。
【0043】
GPS制御部25は、GPS測位を実行する、集積回路等により構成される制御部である。このGPS制御部25の測位により、携帯電話端末20は、自らの現在位置を検出する。
【0044】
GPSナビゲーション制御部26は、GPS測位によって取得した現在位置情報及び地図データの情報に基づいて、歩行者に現在地から目的地までの経路案内を実行する処理部である。GPSナビゲーション制御部26は、集積回路等により構成される。なお、GPS制御部25及びGPSナビゲーション制御部26は、実施の形態1における位置検出部13に対応する。
【0045】
加速度センサ27は、上下動方向の加速度を検出する加速度センサで、携帯電話端末20本体が受ける衝撃を感知する処理部である。加速度センサ27は、例えば、歩行者が事故に遭遇して携帯電話端末20が地面に衝突する場合には、加速度の急激な変化を検出する。なお、加速度センサ27は、実施の形態1における事故発生検出部14に対応する。加速度センサ27は、端末本体が受ける衝撃を感知可能なセンサならば、振動センサなど他の種類のセンサでもよい。
【0046】
カメラ装置28は、CPU21の制御に基づいて、静止画、動画等の撮影を実行する。カメラ装置28は、例えばCCD、CMOS等の撮像素子(イメージセンサ)を備え、カメラ装置28は、入射した撮影範囲の映像光を光学レンズにより撮像素子に集光する。撮像素子は、集光した映像光を画像データに変換して、図示しないメモリに一時的に保管する。なお、カメラ装置28は、携帯電話端末20の筐体において、一般に表示部30とは反対側の面に設けられている。
【0047】
マイク部29は、カメラ装置28が動画を撮影する場合には、音声を音声データとして取得する。取得した音声データは、カメラ装置28が取得した画像データとともに、動画データとして図示しないメモリに一時的に保管される。
【0048】
カメラ装置28及びマイク部29は、実施の形態1におけるデータ取得部11に対応する。
【0049】
表示部30は、操作メニュー、GPSナビゲーションの経路案内など、使用者に通知する情報を表示する。表示部30は、具体的には液晶ディスプレイ等の表示デバイスである。
【0050】
記憶装置31は、ナビゲーションで使用する地図データの情報、撮影された動画のデータ等を格納しておくことができる。ここで、格納された地図データには、事故の可能性があると設定された特定領域のデータが関連付けられて記憶されている。この特定領域の説明については、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。なお、記憶装置31は、実施の形態1におけるデータ保存部12に対応する。
【0051】
図4は、携帯電話端末20の一例である。ここでは、携帯端末として、大きな表示画面を持ついわゆるスマートフォンを例示している。図4(a)は、携帯電話端末20において表示部30が設けられた面を図示したものである。図4(b)は、携帯電話端末20において、図4(a)で図示された面とは反対側の面を図示したものである。
【0052】
図4(a)において、筐体40の中央には、タッチパネルで構成された表示部30が設けられている。図4(b)において、筐体40の上部にはカメラ装置28が、下部にはマイク部29が設けられている。筐体40の内部には、CPU21、バス22、ROM23、RAM24、GPS制御部25、GPSナビゲーション制御部26、加速度センサ27及び記憶装置31が設けられている。
【0053】
次に、図5を参照して、携帯電話端末20における処理について詳細に説明する。まず、歩行者は、携帯電話端末20がGPSナビゲーション機能を実行するように入力部を操作する。その操作に基づき、CPU21は、GPS制御部25及びGPSナビゲーション制御部26を起動させる。GPS制御部25は、携帯電話端末20の現在位置を検出する。そして、GPSナビゲーション制御部26は、GPS制御部25が取得した現在位置情報及び地図データの情報に基づいて、GPSナビゲーション機能を実行し、歩行者に現在地から目的地までの経路案内を実行する(ステップS11)。具体的には、GPSナビゲーション制御部26は、表示部30を制御して、地図データ及び現在地から目的地までの経路を表示させる。以上の携帯電話端末20の処理により、歩行者は、GPSナビゲーション機能の経路案内に従い、現在地から目的地まで移動する。
【0054】
このとき、現在地から目的地までの経路上に、過去に歩行者事故が多発している交差点がある。記憶装置31には、その交差点及び交差点から一定距離離れた周辺部が、特定領域として記憶されている。CPU21は、GPSナビゲーション制御部26に、現在携帯電話端末20が交差点又はその周辺部(特定領域内)にあるか否かを検出させる。つまり、CPU21は、携帯電話端末20が、交差点に一定距離未満の位置に近づいたか否かを判定する(ステップS12)。
【0055】
なお、交差点以外にも、過去の歩行者の事故遭遇率の高い場所は、特定領域として記憶装置31に記憶された地図データに関連付けて携帯電話端末20に記憶されてもよい。これにより交差点以外でも、動画を撮影し、記録するポイントを設定することができる。
【0056】
GPSナビゲーション制御部26が、携帯電話端末20が交差点から一定距離以上離れていることを検出した場合には(ステップS12のNo)、携帯電話端末20は、動画データの取得を実行しない。CPU21は、GPSナビゲーション制御部26に、適当な時間間隔をおいて、携帯電話端末20が交差点に一定距離未満の位置まで近づいたか否かを再度検出させる(ステップS12)。
【0057】
GPSナビゲーション制御部26が、携帯電話端末20が交差点に一定距離未満の位置まで近づいたことを検出した場合には(ステップS12のYes)、CPU21は、カメラ装置28及びマイク部29に、画像撮影及び音声録音を実行させる。これにより、携帯機器10は、動画撮影を自動で開始し、画像データ及び音声データを含む動画データを取得する(ステップS13)。このようにして携帯電話端末20は、交差点及びその周辺部において、自動で動画を撮影する。撮影された動画データは、前述の通りメモリに一時的に記憶される。
【0058】
なお、動画の撮影中(携帯電話端末20が特定領域内にいる状態)においても、CPU21は、GPSナビゲーション制御部26にGPSナビ機能を実行し続けるように制御する。さらにCPU21は、表示部30に地図データ及び現在地から目的地までの経路を表示させたままであり、カメラ装置28が撮影する画像データは表示部30に表示しない。撮影中の画像データは、その時点での歩行者にとっては必要のない情報だからである。これにより、動画撮影中も歩行者は、GPSナビゲーション機能の経路案内に従い、現在地から目的地まで移動することができる。
【0059】
なお、携帯電話端末20は、GPSナビゲーション機能を実行せずに、GPS情報を用いた他の処理を実行してもよい。例えば、表示部30において、GPS情報を用いることによって取得した現在位置の情報を使用者に表示し、撮影中の画像データは表示部30に表示しないようにしてもよい。これにより歩行者は、特定領域中でも、現在位置の情報を、表示部30を見ることによって確認することができる。
【0060】
カメラ装置28及びマイク部29が動画データを取得中に、制御部15は、加速度センサ27が一定以上の加速度を検出したか否かを判定する(ステップS14)。
【0061】
加速度センサ27が一定以上の加速度を検出した場合には(ステップS14のYes)、CPU21は、歩行者が事故に遭遇して大きな衝撃を受けたものと判定する。CPU21は、カメラ装置28及びマイク部29に対して画像撮影及び音声録音を停止させることにより、携帯電話端末20の動画撮影を停止する。そして、カメラ装置28及びマイク部29が動画データの取得を開始してから今までに取得したデータを、一時保管したメモリから記憶装置31に保存させる(ステップS15)。
【0062】
加速度センサ27が検出する「一定以上の加速度」は、例えば、携帯電話端末20が地面に衝突した瞬間の加速度がその一例である。この加速度を検出したことにより、歩行者が事故に遭遇したことを判定することができる。このようにして、携帯電話端末20は、歩行者に事故が発生した場合には、動画データを保存する。
【0063】
事故発生検出部14が事故の発生を検出しなかった場合には(ステップS14のNo)、CPU21は、GPSナビゲーション制御部26に、携帯電話端末20が交差点から一定距離以上離れたか否かを検出させる(ステップS16)。
【0064】
GPSナビゲーション制御部26が、携帯機器10が交差点から一定距離未満の位置にいる状態(特定領域内にある状態)を検出した場合には(ステップS16のNo)、CPU21は、ステップS14の処理に戻って携帯電話端末20を制御する。
【0065】
GPSナビゲーション制御部26が、携帯機器10が交差点から一定距離以上離れた位置にいる状態(特定領域外にある状態)を検出した場合には(ステップS16のYes)、CPU21は、歩行者が事故に遭遇せずに安全な場所に移動したと判定する。CPU21は、まず、カメラ装置28の画像撮影及びマイク部29の音声録音を停止する。これにより、携帯機器10は、動画撮影を自動的に終了する。そして、CPU21は、カメラ装置28及びマイク部29が取得して一時的に記憶した動画データを削除する(ステップS17)。実施の形態1で記載した通り、この動画データは不要なデータであるからである。
【0066】
以上の処理の後、CPU21は、引き続き、GPSナビゲーション制御部26に、GPSナビ機能による経路案内を実行させる(ステップS18)。
【0067】
このように、携帯電話端末20は、歩行者が事故に遭ったとき、その事故にかかる動画データを保存することができる。これにより、そのデータを用いることによって、事故原因の分析等をすることができる。
【0068】
携帯電話端末20は、不要なデータを自動的に削除するため、余分なデータを内部の記憶領域に溜めこまないようにすることができる。さらに、携帯電話端末20は、交差点などの事故発生率の高い場所のみ動画撮影を実行するため、携帯電話端末20のバッテリの使用が抑制される。
【0069】
以上に記載した通り、歩行者は広く普及している携帯電話端末によって、事故発生の動画撮影を実行することができる。さらに、携帯電話端末20は、取得した現在位置の情報に基づいてGPSナビ機能及び動画撮影を実行することにより、効率的に、GPSナビ機能及び動画撮影を実行する。
【0070】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、実施の形態1にかかる携帯機器10においては、事故記録ボタンが設けられてもよい。携帯機器10が音声データ又は画像データを取得中にこの事故記録ボタンが押下された場合には、制御部15はその押下をトリガとして、データ取得部11が取得したデータをデータ保存部12に保存させる。つまり、歩行者が特定領域内にいる場合には、歩行者は、携帯機器10がそれまでにした音声データ又は画像データの少なくともいずれかのデータを記録することができる。例えば、携帯機器10を有する歩行者が自分又は他者の事故に遭遇した場合、又は事故に遭遇しかけた等の場合には、歩行者は咄嗟に事故記録ボタンを押下することにより、取得したデータを記録することができる。
【0071】
なお、使用者が操作することによりデータの記録が開始される入力部は、ボタンだけではなく、タッチパネル等の入力可能な表示手段に設けられてもよい。ただし、緊急用のボタンとして筐体に設けられることにより、使用者は、緊急時において即時に事故を記録することができる。
【0072】
実施の形態1にかかる携帯機器10には、事故記録ボタンではなく、圧力センサを備えた把持部が設けられていてもよい。この圧力センサが所定以上の圧力を検出すると、制御部15はそれをトリガとして、データ取得部11が取得したデータをデータ保存部12に保存させる。これにより、歩行者は事故に遭遇したような場合には、咄嗟に把持部を把持することによって、取得したデータをデータ保存部12に保存させることができる。なお、「所定の圧力」とは、人間が機器を把持するときの握力(例えば10kgw、15kgw等)が、把持部にかかった場合に、圧力センサが検出する圧力のことをいう。
【0073】
以上に示した事故記録ボタン又は把持部は、実施の形態2にかかる携帯電話端末20において設けてもよい。
【0074】
さらに、実施の形態1にかかる携帯機器10は、使用者からの入力を受け付ける入力部を備えてもよい。この入力部は、ボタン、タッチパネル等である。ここで、制御部15は、位置検出部13が携帯機器10の位置が特定領域にあることを検出し、かつ、入力部に入力がなされたことを検知した場合に、はじめてデータ取得部11にデータの取得を開始させる。
【0075】
携帯機器10が、音声データ又は画像データの少なくともいずれかを、事故の原因分析等ができるように記録するためには、データ取得部11が覆われずに外部に露出した状態にあることが望ましい。例えば、使用者が携帯機器10を手に持ち、使用しているような状態である。このような状態において、データ取得部11は、よりクリアな音声データ、歩行者周辺の景色が撮影されている画像データ、又はその両方を取得できる。つまり、データ取得部11は、より適切に事故の分析ができるデータを取得できる。
【0076】
そのため、制御部15は、携帯機器10の位置が特定領域内にある場合には、入力部から入力がなされたか否かを判定することによって、使用者が携帯機器10を露出した状態で使用しているか否かを判定する。入力部から入力が1回でもなされた場合には、制御部15は、使用者が携帯機器10を露出した状態で使用していると判定することにより、データ取得部11が露出した状態にあると判定する。それにより、制御部15は、データ取得部11にデータ取得を開始させる。
【0077】
逆に、携帯機器10の位置が特定領域にある間、入力部から使用者の入力が1回もなされない場合には、制御部15は、データ取得部11にデータを取得させない。これにより、携帯機器10は、事故の分析ができないようなデータを取得することがない。そのため、携帯機器10の使用電力を抑制することができる。
【0078】
実施の形態1にかかる携帯機器10には、上述の入力部に代えて、又は上述の入力部に追加して、人体が携帯機器10に近接した状態を検知する検知センサを備えてもよい。この検知センサは、非接触センサでもよく、接触センサでもよい。非接触センサとしては、静電容量の変化を検出してもよく、赤外線の受光を検出してもよい。接触センサとしては、圧力を検知する抵抗膜方式、静電容量方式でもよい。検知センサは、アナログセンサでも、デジタルセンサでもよい。
【0079】
制御部15は、位置検出部13が携帯機器10の位置が特定領域内にあることを検出し、かつ、検知センサにより人体が携帯機器10に近接した状態を検知した場合には、はじめてデータ取得部11にデータの取得を開始させる。人体が携帯機器10に近接している場合には、使用者は携帯機器10を使用中か、手に持っている状態であると考えられるため、携帯機器10は露出した状態にあると考えられる。そのため、制御部15は、データ取得部11が露出した状態にあり、事故の分析に有効なデータを取得可能な状態にあると判定して、データ取得部11にデータ取得を開始させる。以上の携帯機器10の構成は、実施の形態2にかかる携帯電話端末20においても、応用することができる。
【0080】
実施の形態1、2において保存されるデータは、日付情報、時刻情報が関連付けられて保存されてもよい。さらに、実施の形態2においては、取得したGPS情報に基づいて、動画データの各時刻における携帯電話端末20の位置を関連付けて保存してもよい。これにより、保存したデータに基づいて、事故原因をより的確に分析することができる。
【0081】
実施の形態1、2に示した携帯機器又は携帯電話端末の制御フローは、制御方法の1つとして、携帯機器又は携帯電話端末に実行させることができる。例えば、制御プログラムとして携帯機器に実行させてもよい。また、当該制御プログラムは、携帯機器又は携帯電話端末によって読み取り可能なように、プログラム記録媒体に記録されてもよい。
【符号の説明】
【0082】
10 携帯機器
11 データ取得部
12 データ保存部
13 位置検出部
14 事故発生検出部
15 制御部
20 携帯電話端末
21 CPU
22 バス
23 ROM
24 RAM
25 GPS制御部
26 GPSナビゲーション制御部
27 加速度センサ
28 カメラ装置
29 マイク部
30 表示部
31 記憶装置
40 筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声録音又は画像撮影の少なくともいずれかの処理を実行することにより、音声データ又は画像データの少なくともいずれかのデータを取得するデータ取得部と、
前記データ取得部が取得したデータを保存するデータ保存部と、
自己の位置が、事故の可能性があるとして予め設定された特定領域にあるか否かを検出する位置検出部と、
事故の発生を検出する事故発生検出部と、
前記位置検出部が前記自己の位置が前記特定領域内にあることを検出した場合、前記データ取得部に前記データの取得を開始させ、
前記データ取得部が前記データを取得中に前記事故発生検出部が事故の発生を検出した場合、前記データ取得部が取得した前記データを前記データ保存部に保存させ、
前記事故発生検出部が事故の発生を検出せずに、前記位置検出部が前記自己の位置が前記特定領域内から前記特定領域外にある状態に移行したことを検出した場合、前記データ取得部が取得した前記データを削除する制御部と、
を備える携帯機器。
【請求項2】
前記事故発生検出部は、前記携帯機器の運動を検出する検出センサである、
請求項1に記載の携帯機器。
【請求項3】
前記検出センサは、前記携帯機器の速度又は加速度を検出し、
前記制御部は、前記データ取得部が前記データを取得中に前記検出センサが速度又は加速度の所定量以上の変化を検出した場合、前記データ取得部が取得した前記データを前記データ保存部に保存させる、
請求項2に記載の携帯機器。
【請求項4】
前記携帯機器は、使用者への情報を表示する表示部をさらに備え、
前記位置検出部は、自己の位置を検出し、
前記制御部は、前記データ取得部が前記データを取得中に、前記位置検出部が検出した自己の位置にかかる情報を前記表示部に表示させる、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の携帯機器。
【請求項5】
自己の位置が、事故の可能性があるとして予め設定された特定領域内にあるか否かを検出するステップと、
前記自己の位置が前記特定領域内にあることを検出した場合、音声録音又は画像撮影の少なくともいずれかの処理を実行することにより、音声データ又は画像データの少なくともいずれかのデータを取得する処理を開始するステップと、
前記データの取得中に事故の発生を検出した場合、取得した前記データを保存するステップと、
事故の発生を検出せずに、前記自己の位置が前記特定領域内から前記特定領域外にある状態に移行したことを検出した場合、取得した前記データを削除するステップと、
を備える携帯機器の制御方法。
【請求項6】
自己の位置が、事故の可能性があるとして予め設定された特定領域内にあるか否かを検出するステップと、
前記自己の位置が前記特定領域内にあることを検出した場合、音声録音又は画像撮影の少なくともいずれかの処理を実行することにより、音声データ又は画像データの少なくともいずれかのデータを取得する処理を開始するステップと、
前記データの取得中に事故の発生を検出した場合、取得した前記データを保存するステップと、
事故の発生を検出せずに、前記自己の位置が前記特定領域内から前記特定領域外にある状態に移行したことを検出した場合、取得した前記データを削除するステップと、
を携帯機器に実行させる、携帯機器の制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−70146(P2013−70146A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205891(P2011−205891)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(310006855)NECカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】