説明

携帯機器及び携帯機器において実行されるトレーニング制御方法

【課題】 健康管理に応用可能な、携帯機器及び携帯機器において実行されるトレーニング制御方法を提供することを目的としている。
【解決手段】 処理部20は、方位演算部18より求められる現在方位とトレーニングプログラムにより設定される設定方位とを比較し、現在方位と設定方位とが所定範囲内で一致しているかを判断する第1の処理をおこない、現在方位と設定方位とが一致するまでに要した時間を算出し、判定または評価する第2の処理をおこない、第1の処理と第2の処理とに基づく処理結果を表示部22に表示する、ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地磁気を検出する磁気センサを備えた携帯機器及び携帯機器において実行されるトレーニング制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯機器の普及に伴い、携帯機器の操作者がウォーキング等の運動をおこなう際に、携帯機器の所定のプログラムを起動し、歩数や距離を表示して健康維持や健康増強を促す健康管理への応用が実用化されてきている。
【0003】
このような健康管理への応用では、同じ運動を長期間にわたって繰り返し実施したり、一度の運動時間が充分に長くなければ、健康維持や健康増強に寄与しないと考えられ、その結果、短時間で楽しめるようには考慮されていなかった。たとえば、特許文献1には、GPS(Global Positioning System)を用いて、携帯機器の位置を検知して、ゲームを進行させる携帯情報端末が開示されている。このようなGPSを使用するゲームは、GPSを受信できない室内やビル周辺などで楽しめないばかりか、移動距離がゲームの進行に不可欠であり、移動時間を含めたゲーム時間が長くなり、短時間では実行できない問題を内在していた。
【0004】
一方、脳を活性化するトレーニングへの応用として、たとえば記憶力や計算問題などのゲームがおこなわれるようになってきている。これらは老化を予防する効果があるものと考えられ、また、長時間の運動が困難な人や怪我や病気のリハビリテーションにも向いているといえる。身体を動かすゲーム機器として、たとえば特許文献2では、ゲーム操作者の運動状態を検知して、リハビリテーション等にも応用できる携帯ゲーム保持具が開示されている。しかし、専用器具が必要なゲーム機器はトレーニング機器としては普及しにくいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−310082号公報
【特許文献2】特開2006−136694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そのため、通常の携帯電話や携帯ゲーム機などの携帯機器に最小限の構成で実現でき、操作者の健康管理を促すとともに、短時間でも楽しめるトレーニング制御方法が望まれていた。
【0007】
本発明はこのような課題を解決するために、短時間であってもゲーム感覚で楽しめ、しかも健康管理に応用可能な、携帯機器及び携帯機器において実行されるトレーニング制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の携帯機器は、地磁気を検出する磁気センサと、前記磁気センサの出力を記憶する第1の記憶部と、前記信号処理プログラムを実行して前記磁気センサの出力を取得する信号処理部と、トレーニングプログラムを記憶する第2の記憶部と、前記トレーニングプログラムを実行する処理部及び表示部と、を備える携帯機器において、前記処理部は、前記信号処理部で取得された前記出力を用いて方位を算出する方位演算部を有し、前記方位演算部より求められる現在方位と前記トレーニングプログラムにより設定される設定方位とを比較し、前記現在方位と前記設定方位とが所定範囲内で一致しているかを判断する第1の処理をおこない、前記現在方位と前記設定方位とが一致するまでに要した時間を算出し、判定または評価する第2の処理をおこない、前記第1の処理と前記第2の処理とに基づく処理結果を前記表示部に表示する、ことを特徴とする。
【0009】
こうすれば、地磁気を検出する磁気センサの出力を利用し、GPSが機能しない室内でも楽しめる体感アプリケーションや短時間で可能な軽い運動を促す体感アプリケーションが実行できる。
【0010】
このような携帯機器は、地磁気を検出する磁気センサを備えていれば、携帯電話や携帯ゲーム機などの通常の携帯機器でよい。したがって、短時間であってもゲーム感覚で楽しめ、しかも健康管理に応用可能な携帯機器とすることができる。
【0011】
さらに、前記処理部は、前記信号処理部で取得された前記出力を用いて角速度を算出する角速度演算部を有し、前記第2の処理で、前記第1の処理と前記角速度演算部より求められる角速度とを用い、前記現在方位と前記設定方位とが一致するまでに要した時間及び最大角速度を算出して判定または評価し、前記第1の処理と前記第2の処理とに基づく処理結果を前記表示部に表示する、ことが好ましい。こうすれば、判定または評価の精度を高めることができるので、体感アプリケーションを実行するのに適した携帯機器とすることができる。
【0012】
また、前記携帯機器における前記トレーニングプログラムは前記携帯機器を操作者が両手に持って実行されるトレーニングプログラムであることが好適である。携帯機器を身体全体で動かすような操作を前提としたトレーニング内容とすることで、健康管理やリハビリテーションに効果的である。
【0013】
さらに、前記携帯機器における前記トレーニングプログラムは操作者が回転可能な椅子に座って実行されるトレーニングプログラムであることが好ましい。こうすれば、特別な場所をとらないだけでなく、足腰が弱っている老人や、怪我や病気でリハビリテーションをおこなっている人でも、安全に、適度な運動強度で、楽しむことが可能である。
【0014】
本発明のトレーニング制御方法は、携帯機器において実行されるトレーニング制御方法であって、地磁気を検出する磁気センサの出力から方位を算出する方位演算ステップと、前記方位演算ステップで算出された方位データを処理する第1の判定処理ステップと、前記第1の判定処理ステップで判定された処理結果を表示する結果表示ステップと、を有することを特徴とする。
【0015】
こうすれば、地磁気を検出する磁気センサの出力だけで、室内や椅子に座っておこなう体感アプリケーションによる各種トレーニングが可能になる。
【0016】
これにより、地磁気を検出する磁気センサを備えた携帯電話や、地磁気を検出する磁気センサを備えたゲーム機(本体またはメモリーカード)で可能な各種トレーニングを提供できる。したがって、短時間であってもゲーム感覚で楽しめ、しかも健康管理に応用可能な、携帯機器において実行されるトレーニング制御方法を実現できる。
【0017】
さらに、地磁気を検出する磁気センサの出力から方位を算出する方位演算ステップと、前記磁気センサの出力から角速度を算出する角速度演算ステップと、前記方位演算ステップで算出された方位データを処理する第1の判定処理ステップと、前記角速度演算ステップで算出された角速度データを処理する第2の判定処理ステップと、前記第1の判定処理ステップ及び前記第2の判定処理ステップで判定された処理結果を表示する結果表示ステップと、を有することを好ましい。こうすれば、地磁気を検出する磁気センサの出力だけで、体感アプリケーションによる各種トレーニングをより楽しいものにできる。したがって、短時間であってもゲーム感覚で楽しめるトレーニング制御方法を実現できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、地磁気を検出する磁気センサの出力を利用し、GPSが機能しない室内でも楽しめる体感アプリケーションや短時間で可能な軽い運動を促す体感アプリケーションが実行できる。したがって、短時間であってもゲーム感覚で楽しめ、しかも健康管理に応用可能な携帯機器とすることができる。
【0019】
また、本発明によれば、地磁気を検出する磁気センサの出力だけで、室内や椅子に座っておこなう体感アプリケーションによる各種トレーニングが可能になる。したがって、短時間であってもゲーム感覚で楽しめ、しかも健康管理に応用可能な、携帯機器において実行されるトレーニング制御方法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1の実施形態における携帯機器の構成を示すブロック図である。
【図2】第1の実施形態における携帯機器の斜視図である。
【図3】第1の実施形態において実行されるトレーニング制御方法を示すフローチャート図である。
【図4】第1の実施形態における携帯機器を操作する操作者のイメージを示す模式図である。
【図5】第1の実施形態における携帯機器の表示部の画面表示であり、トレーニングプログラムからの指示内容を表示している模式図である。
【図6】第1の実施形態における携帯機器の表示部の画面表示であり、処理結果を表示している模式図である。
【図7】第1の実施形態の第1の変形例における携帯機器を操作する操作者のイメージを上から見た模式図である。
【図8】第1の実施形態の第2の変形例における携帯機器を操作する操作者のイメージを示す模式図である。
【図9】第2の実施形態における携帯機器の構成を示すブロック図である。
【図10】第2の実施形態において実行されるトレーニング制御方法を示すフローチャート図である。
【図11】本発明の実施例の設定方位と算出された現在方位をグラフにしたものである。
【図12】本発明の実施例の算出された角速度をグラフにしたものである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1の実施形態>
図1は本発明の第1の実施形態における携帯機器10の概略構成を示すブロック図である。図2は第1の実施形態における携帯機器10(携帯電話30)を示す斜視図である。また、図3は第1の実施形態において実行されるトレーニング制御方法を示すフローチャート図である。なお、図1では詳細な説明に必要な構成を示すが、携帯機器10として必須の構成であっても本明細書において説明しないものについては省略している。
【0022】
図1に示すように、磁気センサ11にはX軸センサ12、Y軸センサ13及びZ軸センサ14が搭載されている。なお、磁気センサ11は、互いに直交する基準X方向と基準Y方向及び基準Z方向があらかじめ決められて、携帯機器10に取り付けられている。
【0023】
信号処理部16は、A/D変換部と増幅回路及びコントロール回路などから構成されている。信号処理部16は、第1の記憶部17に記録されているプログラムに基づいたコントロール回路からの計測指令に応じて、磁気センサ11のX軸センサ12、Y軸センサ13及びZ軸センサ14の各センサ出力を短いサイクルで間欠的に前記増幅回路内に読み込み、信号処理部16内の前記A/D変換部によってディジタル値に変換して送信する、などのセンサ信号処理動作をおこなう。
【0024】
なお、図1及び図2に示すように、磁気センサ11、信号処理部16、第1の記憶部17が一体に収納された地磁気センサモジュール25として、携帯機器10に搭載されている。信号処理部16は、携帯機器10の処理部20と、所定のディジタル信号規格に基づいて送受信される。処理部20は方位演算部18を有している。処理部20は第2の記憶部21にあらかじめ記憶されたプログラムされたソフトウエアに基づき、信号処理部16から送信されたディジタル値を用いて、方位演算部18で方位を算出する演算処理をおこなう。
【0025】
これに加え、処理部20は第2の記憶部21にあらかじめ記憶されたトレーニングプログラムを読み出し、トレーニングの進行に応じたトレーニング内容を設定する。また、処理部20は、上述の演算処理データを受信して前記トレーニング内容に基づく判定処理をおこない、トレーニングの進行と判定結果を表示部22に表示する処理をおこなう。
【0026】
図2は、第1の実施形態における携帯機器10の斜視図であり、通常の携帯電話30の場合である。図2に示すように、携帯機器10は、上述の地磁気センサモジュール25を内蔵し、表示部22は通常の携帯電話30本体に備えられたもので構成されている。また、処理部20及び第2の記憶部21は携帯機器10本体内部に備えられているCPU(Central Processing Unit)及びメモリ回路である。なお、地磁気センサモジュール25、処理部20及び第2の記憶部21がそれぞれメモリーカードやその他の着脱可能な状態で装着されたものであってもよい。
【0027】
次に、第1の実施形態において実行されるトレーニング制御方法について、図3に示すフローチャートを用いて説明する。
【0028】
携帯機器10を操作者が所定の操作をおこなうことにより、トレーニングプログラムが読み出され、開始される。S11のステップで、地磁気を検出する磁気センサ11の出力から初期方位が算出される。S12のステップで、設定方位が読み出され、設定されたトレーニング内容が表示部22に表示される。続いて、S13のステップでは、地磁気を検出する磁気センサ11の出力から現在方位が算出される。このとき、S15のステップで第1の判定処理がおこなわれ、S12のステップの設定方位と、S13のステップの現在方位とを比較して合致条件にあるかどうかが判定される。第1の判定処理において合致条件にないときは、S13のステップから繰り返される。第1の判定処理において合致した場合には、S16のステップで第2の判定処理がおこなわれ、合致までの時間が算出される。引き続くS17のステップにおいて、次のトレーニング進行条件や前記第1の判定処理及び前記第2の判定処理の処理結果が表示部22に表示され、新たな設定方位によるトレーニングの進行等が繰り返される。
【0029】
図4は、第1の実施形態における携帯機器を操作する操作者のイメージを示す模式図である。図5及び図6は、第1の実施形態における携帯機器10の表示部22の画面表示であり、それぞれ、図5はトレーニングプログラムからの指示内容を表示している模式図、図6は処理結果を表示している模式図である。図4では、操作者が携帯機器10を両手に持って、画面を見ている状態でトレーニングをおこなう。持ち上げている高さは、胸の高さ、あるいは目の高さ、などがトレーニング内容によって画面に指示され、携帯機器10を正面に持ったままで操作者の身体が向いている方位を変えるようにトレーニングが進行する。すなわち、図5に示すように、トレーニングプログラムが設定した特定の方位(例えば現在方位の90度左の方位)を向くように操作者を促す画面表示が現れ、それを視認した操作者は身体の向きを変えて上記設定方位と身体(携帯機器10)の現在方位とを合わせるようにする。磁気センサ11(図示しない)の出力から現在方位が算出され、設定方位と現在方位との一致が判定され、図6に示すように、一致するまでの時間が評価される。
【0030】
図7は、第1の実施形態の第1の変形例における携帯機器を操作する操作者のイメージを上から見た模式図である。操作者は図4と同様に両手で携帯機器10を持っているが、図7では両腕を前方にまっすぐ伸ばした状態である。この状態から画面の指示に応じて、上体だけを左右に振るトレーニグをおこなう。上体だけで可動できる限界まで、徐々に設定方位が初期方位から大きな角度に変わっていくように画面指示がなされ、身体の固さを反映した結果の採点評価がなされる。
【0031】
図8は、第1の実施形態の第2の変形例における携帯機器を操作する操作者のイメージを示す模式図である。図8では、携帯機器10を両手に持った操作者が椅子を回転させて、トレーニング内容が指示する設定方位に現在方位を合わせるように座っている身体の向きを変える。
【0032】
以上のように、第1の実施形態においては、トレーニングの進行に応じて、操作者が方位を合わせる正確さや所要時間を評価した年齢診断をおこなったり、操作者の年齢をあらかじめ入力して実年齢に応じた設定基準によってトレーニング結果を採点したりすることが可能である。
【0033】
こうすれば、楽しみながら身体を動かす体感アプリケーションとして、健康維持や健康増強への寄与が期待できる。このような携帯機器10は、第1の実施形態に示す磁気センサ11を備えていれば、通常の携帯電話や携帯ゲーム機などでよい。
【0034】
また、上述の体感アプリケーションでの評価採点等により、操作者がウォーキングやジョギング、その他の運動をおこなうように、たとえば表示部22でアドバイスすることが可能であり、操作者の健康管理を促すことに応用できる。
【0035】
なお、GPS(Global Positioning System)を用いたゲームとは異なり、第1の実施形態においては以下の効果を奏する。GPSが機能しない室内でも楽しめ、また、歩行等での移動を必須としていないので、トレーニングをおこなう場所を選ばず、基本的にどこででもトレーニングを実行可能である。さらに移動時間をかける必要がないので、短時間で楽しめる体感アプリケーションが可能になり、夜間や休憩時間等でも実施できる。したがって、短時間であってもゲーム感覚で楽しめ、しかも健康管理に応用可能な携帯機器とすることができる。
【0036】
第1の実施形態において、地磁気を検出する磁気センサ11は、GMR(Giant Magneto−Resistive)素子、AMR(Anisotropic Magneto−Resistive)素子、TMR(Tunnel Magneto−Resistive)素子、GIG(Granular In Gap)素子などの磁気抵抗効果素子、あるいはホール素子、MI(Magneto−Impedance)素子その他の磁気検出素子を用いることができる。また、X軸センサ12、Y軸センサ13及びZ軸センサ14は、それぞれが1軸センサ素子単体であってもよいし、一体型の2軸センサ素子を含む複数素子、または一体型の3軸センサ素子であってもよい。なお、磁気センサ11は、3軸以上のセンサであってもよく、また2軸センサでも適用可能である。しかしながら、携帯機器10を自在な向きで使用できるセンサ構成としては、X軸センサ12、Y軸センサ13及びZ軸センサ14の3軸センサが小型化に適したものである。
【0037】
また、第1の記憶部17は信号処理部16のコントロール回路に組み込まれたメモリであってもよい。さらに、第1の記憶部17がコントロール回路の組み込みメモリと外部メモリとに分かれていてもよい。なお、図1及び図2で示したように、磁気センサ11、信号処理部16、第1の記憶部17が一体に収納された地磁気センサモジュール25であることが好ましい。地磁気センサモジュール25はパッケージ品または基板実装品のいずれであってもよい。とくに、パッケージ品は小型化に適している。あるいは、方位演算部18は、信号処理部16が兼ねていてもよい。この場合は、磁気センサ11、信号処理部16、第1の記憶部17、方位演算部18が一体に収納された地磁気センサモジュール25であってもよい。
【0038】
方位演算部18は方位を算出するものであるが、使用位置の近傍にある物体や建物内の構造物によって地磁気が曲げられている場合があり、そのような場合に正しい方位を算出できないことがある。しかしながら、第1の実施形態においてはトレーニング時の身体の向きを方位としてデータ化するものであり、使用位置がほとんど変化しないトレーニング方法であれば地磁気の曲がりがあってもトレーニングの進行には影響しない。
【0039】
また、地磁気を検出する磁気センサ11が備わっていれば、携帯電話や携帯ゲーム機以外に、音楽プレーヤ、デジタルスチルカメラ、マルチリモコンなどにも適用可能である。もちろん、地磁気を検出する磁気センサ11自体は、第1の実施形態で説明したトレーニング以外の応用が可能であり、各種の応用と兼用することができる。
【0040】
第1の実施形態で詳述したように、携帯機器10を操作者が両手に持って実行されるトレーニングプログラムであることが好適である。携帯機器10を身体全体で動かすような操作を前提としたトレーニング内容とすることで、操作者の健康管理に効果的である。
【0041】
さらに、操作者が回転可能な椅子に座って実行されるトレーニングプログラムとしてもよい。こうすれば、椅子以外の特別な場所をとらないだけでなく、足腰が弱っている老人や、怪我や病気でリハビリテーションをおこなっている人でも、安全に、適度な運動強度で、楽しむことが可能である。
【0042】
また、たとえば携帯機器10を膝の上に載せた状態で椅子に座り、椅子を回転させるトレーニング内容としてもよい。こうすれば、両手で持っていることが困難な人でも楽しめる体感アプリケーションを提供できる。
【0043】
このように、携帯機器10を用いて身体を動かすトレーニング内容とすることによって、フィットネス効果をともなう運動をおこなったり、反応の素早さを競うリハビリテーション応用や脳の活性化ゲームをおこなうことが可能である。さらに、データを蓄積して習熟の度合いをグラフ化したり、操作者の癖や性格または身体能力に応じたアドバイスを表示したりすることも可能である。
【0044】
さらに、身体のトレーニングではなく、反応の速さを競うゲームや脳の活性化トレーニングとしてもよい。たとえば、携帯機器10を身体といっしょに動かすのではなく、携帯機器10だけを回転するように手で方位を変えてもよい。こうすれば、たとえばベッドの上で、怪我や病気により動きが制限されている人であっても楽しむことができ、適度なトレーニング効果を得ることができる。
【0045】
また、体感アプリケーションの内容はゲームであってもよい。たとえば、モグラたたきのように、所定の時間内で方位を合わせると加点されるゲームとすることが可能である。
【0046】
以上のように、地磁気を検出する磁気センサ11の出力を利用したトレーニングプログラムが実行可能な携帯機器10を用いて、GPSが機能しない室内でも楽しめる体感アプリケーションや短時間で可能な軽い運動を促す体感アプリケーションが実行できる。これにより、地磁気を検出する磁気センサを内蔵した携帯電話や、地磁気を検出する磁気センサを内蔵したゲーム機(本体またはメモリーカード)で各種トレーニングを提供できる。
【0047】
<第2の実施形態>
図9は本発明の第2の実施形態における携帯機器10の概略構成を示すブロック図であり、図10は第2の実施形態において実行されるトレーニング制御方法を示すフローチャート図である。地磁気センサモジュール25は第1の実施形態と同じである。
【0048】
図9に示すように、第2の実施形態では、処理部20は方位演算部18及び角速度演算部19とを有している。処理部20は、第2の記憶部21にあらかじめ記憶されたプログラムされたソフトウエアに基づき、信号処理部16から送信されたディジタル値を用いて、方位演算部18で方位を算出する演算処理をおこない、角速度演算部19で角速度を算出する演算処理をおこなう。
【0049】
これに加え、第2の実施形態においても、処理部20は第2の記憶部21にあらかじめ記憶されたトレーニングプログラムを読み出し、トレーニングの進行に応じたトレーニング内容を設定する。また、処理部20は、上述の演算処理データを受信して前記トレーニング内容に基づく判定処理をおこない、トレーニングの進行と判定結果を表示部22に表示する処理をおこなう。
【0050】
次に、第2の実施形態において実行されるトレーニング制御方法について、図10に示すフローチャートを用いて説明する。
【0051】
携帯機器10を操作者が所定の操作をおこなうことにより、トレーニングプログラムが読み出され、開始される。S11のステップで、地磁気を検出する磁気センサ11の出力から初期方位が算出される。S12のステップで、設定方位が読み出され、設定されたトレーニング内容が表示部22に表示される。続いて、S13のステップでは、地磁気を検出する磁気センサ11の出力から現在方位が算出され、同様にS14のステップで、磁気センサ11の出力から角速度が算出される。このとき、S15のステップで第1の判定処理がおこなわれ、S12のステップの設定方位と、S13のステップの現在方位とを比較して合致条件にあるかどうかが判定される。第1の判定処理において合致条件にないときは、S13のステップから繰り返される。第1の判定処理において合致した場合には、S16のステップで第2の判定処理がおこなわれ、合致までの時間が算出されるとともに、S14のステップで得られた角速度のデータから最大角速度が算出される。引き続くS17のステップにおいて、次のトレーニング進行条件や前記第1の判定処理及び前記第2の判定処理の処理結果が表示部22に表示され、新たな設定方位によるトレーニングの進行等が繰り返される。
【0052】
磁気センサ11の出力から、現在方位と、携帯機器10に印加された角速度とが算出され、設定方位と現在方位との一致が判定され、一致するまでの時間と身体を動かす動作の最大角速度が評価される。
【0053】
角速度演算部19は、角速度が閾値以上の値である場合に角速度データとして出力することが好ましい。前記閾値はノイズ等の影響を受けないような所定の値に設定する。
【0054】
なお、方位演算部18及び角速度演算部19は、信号処理部16が兼ねていてもよい。この場合は、磁気センサ11、信号処理部16、第1の記憶部17、方位演算部18及び角速度演算部19が一体に収納された地磁気センサモジュール25であってもよい。
【0055】
第2の実施形態においても、第1の実施形態で記載したトレーニングや体感アプリケーションは、そのまま適用可能である。
【0056】
さらに、第2の実施形態においては、角速度演算部19を有しているので、そのデータを用いて瞬発力に対応した身体能力が評価できる。これにより、操作者の年齢と関連付けて瞬発力を採点することが可能である。こうすれば、判定または評価の精度を高めることができる。また、地磁気を検出する磁気センサ11だけを用い、他のセンサを使用せずに、角速度を算出できるので、トレーニング以外の応用が可能であり、各種の角速度データを用いたアプリケーションにも応用できる。
【実施例】
【0057】
次に、本発明のトレーニング制御方法を、原理確認用のトレーニングプログラムで実験確認した実施例について説明する。
【0058】
図11は本実施例の設定方位と算出された現在方位をグラフにしたものである。本発明の実施形態に詳述した携帯機器10のトレーニングプログラム開始(S11のステップ)からの経過時間と磁気センサ11の出力から算出された(S13のステップ)現在方位の関係を示している。S12のステップで設定されたトレーニング内容は実線で示した設定方位に身体(携帯機器10)の現在方位を合わせるものである。磁気センサ11の出力から算出された現在方位は、0.1秒ごとにプロットした。操作者は設定方位に合わせるように現在方位を変えるが、操作者の動きには遅れ時間が発生し、設定方位と現在方位との差が生じていた。
【0059】
図12は本実施例の算出された角速度をグラフにしたものである。図12では、磁気センサ11の出力から算出された角速度(S14のステップ)を示している。ここで、ノイズの影響を低減するようにサンプリングされ、操作者の反応の素早さを示すデータとして使用される。
【0060】
本実施例における第1の判定処理(S15のステップ)は、所定の時間間隔でサンプリングされた設定方位に対して、現在方位が遅れ時間を伴いながら一致したことを判定内容とした。図11に示すように、左右に方位を90度振る設定方位の動作であり、遅れ時間を考慮して設定方位と現在方位の一致を判断するように判定処理された。このとき、現在方位はプラスマイナス5度の範囲内であれば一致と判断するものとした。また、第2の判定処理(S16のステップ)は、0.1秒間隔でサンプリングされた現在角度と設定角度の差、及び、遅れ時間を集計する処理と、最大角速度の算出処理をおこなった。この実施例では、2.4秒の時点で最大角速度として、300度/秒を算出した。
【0061】
表1に、第2の判定処理(S16のステップ)での現在角度と設定角度の差(角度のずれ)及び遅れ時間の処理データの一部を参考として示した。サンプリングされた測定データから、設定角度の差(角度のずれ)の合計であるΣ(角度のずれ)及び遅れ時間の合計であるΣ(遅れ時間)が計算された。ひきつづき、これらの計算値から、点数=Σ(角度のずれ)×Σ(遅れ時間)を求めた。表1の実施例においては、点数は32665点であったが、この場合は点数が少ない方が良い採点方式の判定処理である。
【0062】
【表1】

【0063】
この点数32665点と最大角速度の300度/秒とから、あらかじめ設定された判定評価基準にしたがって、「判定結果(OK/NG)」などの判定、または「評価年齢XX才」などの評価をおこない、処理結果として表示部22に表示した。なお、処理結果とともに、再度実施するか終了するか等の選択肢を表示し、同じトレーニングを繰り返したり、別のトレーニングに切り替えたり、トレーニングを終了したりすればよい。
【0064】
なお、これらのトレーニング内容及び判定処理内容は適宜提供されるものであり、上述の実施形態や実施例の内容に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0065】
10 携帯機器
11 磁気センサ
12 X軸センサ
13 Y軸センサ
14 Z軸センサ
16 信号処理部
17 第1の記憶部
18 方位演算部
19 角速度演算部
20 処理部
21 第2の記憶部
22 表示部
25 地磁気センサモジュール
30 携帯電話


【特許請求の範囲】
【請求項1】
地磁気を検出する磁気センサと、
前記磁気センサの信号処理プログラムを記憶する第1の記憶部と、
前記信号処理プログラムを実行して前記磁気センサの出力を取得する信号処理部と、
トレーニングプログラムを記憶する第2の記憶部と、
前記トレーニングプログラムを実行する処理部及び表示部と、を備える携帯機器において、
前記処理部は、
前記信号処理部で取得された前記出力を用いて方位を算出する方位演算部を有し、
前記方位演算部より求められる現在方位と前記トレーニングプログラムにより設定される設定方位とを比較し、前記現在方位と前記設定方位とが所定範囲内で一致しているかを判断する第1の処理をおこない、
前記現在方位と前記設定方位とが一致するまでに要した時間を算出し、判定または評価する第2の処理をおこない、
前記第1の処理と前記第2の処理とに基づく処理結果を前記表示部に表示する、
ことを特徴とする携帯機器。
【請求項2】
前記処理部は、
前記信号処理部で取得された前記出力を用いて角速度を算出する角速度演算部を有し、
前記第2の処理で、前記第1の処理と前記角速度演算部より求められる角速度とを用い、前記現在方位と前記設定方位とが一致するまでに要した時間及び最大角速度を算出して判定または評価し、
前記第1の処理と前記第2の処理とに基づく処理結果を前記表示部に表示する、
ことを特徴とする請求項1に記載の携帯機器。
【請求項3】
前記トレーニングプログラムは前記携帯機器を操作者が両手に持って実行されるトレーニングプログラムであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の携帯機器。
【請求項4】
前記トレーニングプログラムは操作者が回転可能な椅子に座って実行されるトレーニングプログラムであることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の携帯機器。
【請求項5】
地磁気を検出する磁気センサの出力から方位を算出する方位演算ステップと、
前記方位演算ステップで算出された方位データを処理する第1の判定処理ステップと、
前記第1の判定処理ステップで判定された処理結果を表示する結果表示ステップと、
を有することを特徴とする、携帯機器において実行されるトレーニング制御方法。
【請求項6】
地磁気を検出する磁気センサの出力から方位を算出する方位演算ステップと、
前記磁気センサの出力から角速度を算出する角速度演算ステップと、
前記方位演算ステップで算出された方位データを処理する第1の判定処理ステップと、
前記角速度演算ステップで算出された角速度データを処理する第2の判定処理ステップと、
前記第1の判定処理ステップ及び前記第2の判定処理ステップで判定された処理結果を表示する結果表示ステップと、
を有することを特徴とする、携帯機器において実行されるトレーニング制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate