説明

携帯機器用ストラップ

【課題】携帯機器を静電気からより確実に保護することができる携帯機器用ストラップをより簡易に実現することを目的とする。
【解決手段】携帯機器用ストラップ1は、ストラップ本体2と、ストラップ本体2と携帯機器40とを連結する連結紐4と、ストラップ本体2と電気的に接続されているワイヤ10と、ワイヤ10を巻き取り及び送り出し可能なリール20と、ワイヤ10の一端側に取り付けられている錘12とから構成されている。そして、リール20からワイヤ10が送り出されて錘12が接触対象面Fに接触したときに、ストラップ本体2から接触対象面Fまでの間にワイヤ10及び錘12を介して導電路が構成されるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯機器用ストラップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯型の光学的情報読取装置や携帯電話などの携帯機器は、使用者が手に持った状態で使用されるため、使用者に帯電した静電気が放電された際に携帯機器側へ流入し、携帯機器内部の電子部品等へ悪影響を与える虞がある。特に近年では、電子部品の低電圧化に伴いこの問題が深刻化している。このため、携帯機器への静電気の影響を抑制するために、沿面距離を長くしたり、筐体にシールド塗装を施すなどの対策が講じられているが、携帯機器の大型化やコストの増大を招くといった問題があり、簡易な構成で携帯機器を静電気から保護する技術が望まれている。そこで、例えば下記特許文献1に示す技術が提案されている。
【0003】
特許文献1には、導電性ステープルファイバーを表裏に露出するように編織した細幅ベルト地からなるバンド部(1)を備えたバンド製品(ストラップ等)が開示されている。このバンド製品では、バンド部(1)の端部と、導電性ステープルファイバーからなる糸条によって編組され所望長に切断された導電性組紐(3)の一端部(3a)とが導通するように端末金具によって挟持されており、導電性細紐(3)の他端部(3b)を切断状態のまま端末金具から外方に遊離させて人体に滞留する静電気を空気中に放電させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3032688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の構成では、バンド製品の使用時に導電性細紐(3)の他端部(3b)が接地されていないため、放電率が悪く、静電気対策として効果が低いという問題がある。このような構成では、使用者に帯電した静電気を十分に放電することができず、携帯機器への静電気の影響を確実に抑えることが難しいため、より一層効果的な静電気対策が望まれる。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、携帯機器を静電気からより確実に保護することができる携帯機器用ストラップをより簡易に実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、携帯機器に取り付けられる携帯機器用ストラップであって、導電性を有するストラップ本体と、前記ストラップ本体と前記携帯機器とを連結し、その連結経路が非導通状態とされる連結部材と、前記ストラップ本体と電気的に接続されるワイヤと、前記ストラップ本体に連結されると共に、前記ワイヤを巻き取り可能に構成され、且つ前記ワイヤが一端側から引かれたときに当該ワイヤを送り出し可能なリールと、前記ワイヤの前記一端側に取り付けられた導電性を有する錘と、を備え、前記リールから前記ワイヤが送り出されて前記錘が接触対象面に接触したときに、前記ストラップ本体から前記接触対象面までの間に前記ワイヤ及び前記錘を介して導電路が構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明では、導電性を有するストラップ本体の一端側に、導電性を有する錘が取り付けられたワイヤが電気的に接続されると共に、ワイヤを巻き取り可能且つ送り出し可能なリールが連結されている。そして、リールからワイヤが送り出されて錘が接触対象面(床や机の上など)に接触したときに、ストラップ本体から接触対象面までの間にワイヤ及び錘を介して導電路が構成されるようになっている。
この構成では、使用者に帯電した静電気を、使用者が手首等に通したストラップから、導電路を介して錘の接触対象面に放電させる(接地放電させる)ようにしているので、静電気を空気中に放電させる(空中放電させる)場合よりも、放電率を高めることができる。特に、携帯機器の落下防止等のために当該携帯機器に取り付けられるストラップに対し、上述のリール構成を付加するといった簡易な対応により、携帯機器を静電気からより確実に保護することができるため、コスト面や静電気除去効果の面で特に有利となる。
さらに、ストラップ本体と携帯機器とは、連結部材によって電気的に絶縁状態(非導通状態)とされているので、使用者側から携帯機器側へ静電気が流入することをより確実に抑えることができる。一方、必要に応じ、リールによってワイヤを巻き取ることができるので、携帯機器の使用時に接地放電のためのワイヤが使用者の邪魔となるといった問題も解消することができる。
【0009】
請求項2の発明では、リールにおいてワイヤを巻き取る巻き取り駆動部が設けられている。そして、錘が落下したときには、錘の自重により、巻き取り駆動部の巻き取り力に抗してワイヤが一端側から送り出されるように構成されている。
この構成によれば、錘を落下させるだけで、自動的にワイヤが送り出され、錘を接触対象面に接地させることができるので、使用者が必要分のワイヤを引き出した上で錘を接触対象面に置くといった作業を省略することができ、簡易な作業で静電気を放電させることができる。
【0010】
請求項3の発明では、リール又はリールに連結される位置に、錘を保持する保持部が設けられている。そして、錘が保持部から外されて落下したときに、錘の自重により、巻き取り駆動部の巻き取り力に抗してワイヤが一端側から送り出されるようになっている。また、ワイヤが送り出された状態から錘が保持部へと移動されたときには、巻き取り駆動部によってワイヤが自動的に巻き取られるように構成されている。
この構成では、放電時(ワイヤ送り出し時)の作業負荷を低減し得ることは勿論のこと、ワイヤ巻き取り時においても、錘を保持部へ移動させるだけで、ワイヤが自動的に巻き取られるようになり、手動での巻取作業負荷を抑えて使用者の利便性を一層高めることができる。また、使用時には、錘を保持部に安定的に保持することができるため、錘が端末操作の邪魔になりにくくなる。
【0011】
請求項4の発明では、巻き取り駆動部は、リール内においてワイヤに接続されており、第1状態と第2状態とに変形可能に構成され、且つ第2状態から第1状態に復元しようとする復元力が生じるように構成された弾性部材を備えている。そして、錘の自重によってワイヤの一端側が引かれたときに弾性部材が第2状態に変形し、ワイヤが送り出された状態から錘が保持部へと移動されたときに弾性部材が第1状態へ復元するようになっている。そして、この復元力によってワイヤが自動的に巻き取られるように構成されている。
この構成によれば、第1状態と第2状態とに変形可能な弾性部材を設けるといった簡易な対応により、ワイヤの自動的な巻き取りを実現することができる。特に、複雑な機構等(例えば、モータなどの電気的アクチュエータ等)を用いることがないため、ワイヤを自動的に巻き取るための構成を小型且つ軽量な構造で実現できる。従って、高機能化を図りつつも、使用者の使用負担(特に、重さやサイズ的な面での負担)を低減し易くなる。
【0012】
請求項5の発明では、錘の重さは、当該錘に生じる重力が、巻き取り駆動部によってワイヤを引っ張る力の1.1倍〜1.2倍となるように設定されている。このように、錘の重力がワイヤを引っ張る力よりも若干大きくなる程度に、錘の重さを設定することで、錘が勢いよく落下するのを抑制でき、接触対象面に強い衝撃が加わらないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、第1実施形態に係る携帯機器用ストラップにおける放電動作を説明する図であり、図1(A)は、使用者がストラップ本体に手首を通した状態を示す説明図であり、図1(B)は、錘を落下させた直後の状態を示す説明図である。
【図2】図2は、第1実施形態に係る携帯機器用ストラップにおける放電動作を説明する図であり、図2(A)は、錘を接触対象面に接地させた状態を示す説明図であり、図2(B)は、ワイヤが巻き取られた直後の状態を示す説明図である。
【図3】図3は、リールの構成を概略的に例示する説明図であって、渦巻ばねが弛緩状態にあるときの状態を示している。
【図4】図4は、リールの構成を概略的に例示する説明図であって、渦巻ばねが捲縮状態にあるときの状態を示している。
【図5】図5は、リールに錘収容部が形成された構成を概略的に例示する説明図である。
【図6】図6は、携帯機器の放電動作の具体例を説明する図であり、携帯機器が机上面に置かれている状態を示している。
【図7】図7は、携帯機器の放電動作の具体例を説明する図であり、携帯機器が置き台に置かれている状態を示している。
【図8】図8は、携帯機器の放電動作の具体例を説明する図であり、携帯機器が壁に保持されている状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1実施形態]
以下、本発明の携帯機器用ストラップを具現化した第1実施形態について、図面を参照して説明する。
(携帯機器用ストラップの構成)
まず、第1実施形態に係る携帯機器用ストラップ1の構成について、図1〜図5を用いて説明する。図1は、第1実施形態に係る携帯機器用ストラップにおける放電動作を説明する図であり、図1(A)は、使用者がストラップ本体に手首を通した状態を示す説明図であり、図1(B)は、錘を落下させた直後の状態を示す説明図である。図2は、第1実施形態に係る携帯機器用ストラップにおける放電動作を説明する図であり、図2(A)は、錘を接触対象面に接地させた状態を示す説明図であり、図2(B)は、ワイヤが巻き取られた直後の状態を示す説明図である。図3は、リールの構成を概略的に例示する説明図であって、渦巻ばねが弛緩状態にあるときの状態を示している。図4は、リールの構成を概略的に例示する説明図であって、渦巻ばねが捲縮状態にあるときの状態を示している。図5は、リールに錘収容部が形成された構成を概略的に例示する説明図である。
【0015】
図1〜4に示すように、携帯機器用ストラップ(以下、単に「ストラップ」ともいう)1は、ストラップ本体2と、ストラップ本体2と携帯機器40とを連結する連結紐4と、ストラップ本体2と電気的に接続されているワイヤ10と、ワイヤ10を巻き取り及び送り出し可能なリール20と、ワイヤ10の一端側に取り付けられている錘12とから構成されている。
【0016】
ストラップ本体2は、紐状部材2aの一端側と他端側を接合部材6により接合されてなり、環状に構成されている。このストラップ本体2の輪の大きさ(紐状部材の長さ)は、使用者が携帯機器40を手に持った状態で手首に通すことができるぐらいに設定されている。また、ストラップ本体2は、導電性を有してなり、例えば、ステンレス系繊維やカーボン系繊維などから構成されている。なお、ストラップ本体2は、導電性を有していればよく、例えば、伸縮可能な材質(例えば、導電性ゴムなど)から構成されていてもよい。
【0017】
連結紐4は、樹脂材料などからなる接合部材6によってストラップ本体2と接合されている。また、連結紐4は、環状に構成されており、携帯機器40のストラップ取付部41に取り付けられているとともに、ストラップ本体2と携帯機器40とを連結している。この連結紐4は、絶縁性を有しており、ストラップ本体2と携帯機器40とを、電気的に絶縁(即ち、連結経路が非導通状態となっている)している。連結紐4の材質としては、例えば、ポリエステルやビニール等を例示することができるが、特にこれに限定されない。なお、ストラップ1は、後述する放電機能と共に、携帯機器40に連結されることで、携帯機器40の落下を防止する機能も有している。また、連結紐4は、「連結部材」の一例に相当する。
【0018】
ワイヤ10は、ストラップ本体2と電気的に接続されている。また、ワイヤ10の長さは、使用者が携帯機器40を手に持った状態で、ワイヤ10の一端側が床に接触できるぐらい(例えば、1.0〜1.5m程度)に設定されている。このワイヤ10は、導電性材料を主体として構成されており、例えば、軟銅、錫メッキ軟銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等から構成されている。なお、ワイヤ10の線径は、特に限定されず、後述するリール20の大きさ等との兼ね合いから適宜変更することができる。
【0019】
リール20は、ワイヤ10を巻き取り及び送り出し可能に構成されており、リール本体部20aと、ケース21と、巻き取り駆動部22とを備えている。また、ワイヤ10、リール本体部20a及び巻き取り駆動部22は、ケース21内に収容されている。さらに、リール20は、上述した接合部材6によって、連結紐4と共に、ストラップ本体2に連結されている。
【0020】
リール本体部20aには、ワイヤ10の他端側が固定されている。また、巻き取り駆動部22に備えられる渦巻ばね23(後述)と接続されており、当該リール本体部20aの回転を渦巻ばね23に伝達するとともに、渦巻ばね23の復元力がリール本体部20aに伝達されるようになっている。そして、巻き取り駆動部22が駆動されると、このリール本体部20aにワイヤ10が巻き取られるように構成されている。
【0021】
ケース21は、樹脂材料などから構成されており、渦巻ばね23の形状に合わせて、略円形状(略円筒形状)を有している。そして、ケース21は、内部に巻き取り駆動部22と共にワイヤ10を収容可能に構成されている。また、ケース21には、図3及び図4に示すように、ワイヤ10の巻き取りや送り出しのための出入口21aが設けられている。さらに、ケース21の外壁には、後述する錘12のフック14を係合可能な被係合部25を備えている。そして、錘12のフック14が被係合部25に係合されることで、錘12がケース21に保持されるようになっている。錘12を保持する構成は、これに限らず、例えば、図5に示すように、ケース21の外壁に、このケース21と一体的に錘収容部27を設け、この錘収容部27に錘12を収容するようにしてもよい。なお、図5の例では、錘収容部27に溝部27aが設けられており、この溝部27aに、錘12と接続されているワイヤ10を通すようにしているが、この溝部27aを設けない構成としてもよい。また、錘12を磁性材料で構成すると共にケース21の外壁に磁石を設け、この磁石の吸引力により錘12を保持するように構成することもできる。なお、被係合部25及び錘収容部27は、「保持部」の一例に相当する。
【0022】
巻き取り駆動部22は、ワイヤ10が出入口21aから送り出された状態から錘12が保持部へと移動されると、ワイヤ10を自動的に巻き取るように構成されている。より具体的に、この巻き取り駆動部22は、図3及び図4に示すように、渦巻ばね23を備えている。この渦巻ばね23は、弛緩状態(図3)と捲縮状態(図4)とに変形可能に構成されている。さらに、渦巻ばね23は、捲縮状態から弛緩状態に復元しようとする復元力が生じるように構成されている。この渦巻ばね23の中心部23aは、ケース21に固定されている。また、渦巻ばね23の端部23bは、リール本体部20aと接続されていると共に、このリール本体部20aを介してワイヤ10とも接続されている。そして、ワイヤ10の一端側が引かれて出入口21aから送り出されると、リール本体部20aが回転すると共に、このリール本体部20aの回転が渦巻ばね23に作用し、渦巻ばね23が巻き締められ捲縮状態となるように構成されている。また、ワイヤ10が出入口21aから送り出された状態から錘12が保持部へと移動されると、渦巻ばね23の復元力によって、リール本体部20aがワイヤ10の送り出し時とは反対方向に回転されて、ワイヤ10がリール本体部20aに巻き取られるようになっている。この巻き取り駆動部22によってワイヤ10を引っ張る力は、80g程度に設定されている。なお、渦巻ばね23は、「弾性部材」の一例に相当する。また、弛緩状態は「第1状態」の一例に相当し、捲縮状態は「第2状態」の一例に相当する。
【0023】
錘12は、導電性を有してなり、ワイヤ10の一端側と電気的に接続されている。この錘12の材質としては、例えば、ステンレスや鉄、銅、ニッケルなどの金属を例示することができるが、特にこれに限定されない。また、図1〜図5では、錘12を略球状に構成した例を示したが、錘12の形状は特にこれに限定されない。錘12は、ワイヤ10と一体的に構成されていてもよく、別体で構成することもできる。錘12をワイヤ10と別体で構成する場合は、例えば、錘12に貫通孔を設け、この貫通孔からワイヤ10を挿通して取り付けることができる。そして、この錘12の重さは、当該錘12に生じる重力が、巻き取り駆動部22によってワイヤ10を引っ張る力の1.1倍〜1.2倍となるように設定されている。なお、錘12の重さは、携帯機器40の操作性や携帯性等の面から10g程度に設定することが好ましい。
【0024】
(放電動作)
次に、このように構成される携帯機器用ストラップ1における放電動作について、図1及び図2を用いて説明する。
まず、図1(A)に示すように、携帯機器40が机上面などの接触対象面Fに置かれた状態で、使用者は携帯機器40に触れないようにしてストラップ本体2に手首を通す。そして、使用者は携帯機器40に触れる前に、錘12のフック14を被係合部25から外し、錘12を落下させる(図1(B))。錘12の落下が開始すると、この錘12の自重によってワイヤ10の一端側が引っ張られ、巻き取り駆動部22の巻き取り力に抗してワイヤ10がリール20の出入口21aから送り出される(図1(B))。
【0025】
そして、錘12の落下が更に進み、図1(B)の状態から、ワイヤ10がさらに送り出されると、図2(A)に示すように、錘12が接触対象面Fに接触することになる。このように錘12の落下に伴ってワイヤ10が引き出されたときには、ワイヤ10によってリール本体部20aが回転されると共に、渦巻ばね23が巻き締められて、捲縮状態(図4参照)に変位する。なお、渦巻ばね23は、この捲縮状態(第2状態)のときには、弛緩状態(第1状態)に戻ろうとする復帰力が常に生じている。
【0026】
そして、図2(A)のように錘12が接地対称面Fに接触すると、ストラップ本体2から接触対象面Fまでの間にワイヤ10及び前記錘12を介して導電路が構成される。このとき使用者に静電気が帯電していた場合には、この静電気に基づく放電電流が当該導電路を介して接触対象面F側に流れることとなり、接触対象面F側へ静電気を逃がすことができる。なお、錘12に生じる重力が、巻き取り駆動部22によってワイヤ10を引っ張る力よりも大きくなるように設定されているため、錘12が落下されてから接地対称面Fに接地される過程でワイヤ10が巻き取られてしまうことが防がれ、錘12を接触対象面Fに確実に接地することができる。
【0027】
そして、静電気が放電された後、図2(B)に示すように、錘12のフック14を被係合部25に係合させ、錘12をリール20と一緒にまとめることができる。このとき、錘12がワイヤ10を引っ張らなくなるため、渦巻ばね23は復元力によって捲縮状態(第2状態)から弛緩状態(第1状態)に戻り、これによりワイヤ10がリール本体部20aに巻き取られることとなる。
【0028】
なお、図6〜8は、携帯機器40の放電動作の具体例を示すものであり、携帯機器40の不使用時に、放電動作を行う例を示したものである。例えば、図6に示すように、携帯機器40の不使用時に(携帯機器40の使用後に)、携帯機器40を机70の上に置いた状態で錘12を床74に接地させておき、携帯機器40の使用時に(携帯機器40を再び使用する時に)、錘12をリール20に保持させるようにしてもよい。このような方法を用いた場合、携帯端末40の不使用時にストラップ本体2から接触対象面(床74)までの導通が常時維持されることになるため、使用者がストラップ本体2に接触した瞬間に放電させることができ、使用者に帯電した静電気を即座に除去することができる。そして、このように静電気除去が完了した後に、錘をリール20に保持させ、携帯端末40を把持するようにすれば、携帯端末40に静電気が影響することもなく、錘及びワイヤをコンパクトにまとめた状態で端末の使用を開始することができる。他方、端末の使用が終わった後には、再び図6のように戻しておけば、次回の使用時にも同様の効果を得ることができる。
【0029】
また、図7に示すように、携帯機器40の不使用時には、携帯機器40を充電装置などから構成される置き台60に置いた状態で、錘12を床74に接地させておくこともできる。さらに、図8に示すように、携帯機器40の不使用時には、携帯機器40を、保持台62を介して壁72に保持させた状態で、錘12を床74に接地させておくこともできる。この場合も、図6の場合と同様に静電気を除去することができ、同様の効果を得ることができる。
【0030】
以上説明したように、本第1実施形態に係る携帯機器用ストラップ1では、導電性を有するストラップ本体2の一端側に、導電性を有する錘12が取り付けられたワイヤ10が電気的に接続されると共に、ワイヤ10を巻き取り可能且つ送り出し可能なリール20が連結されている。そして、リール20からワイヤ10が送り出されて錘12が接触対象面F(床や机の上など)に接触したときに、ストラップ本体2から接触対象面Fまでの間にワイヤ10及び錘12を介して導電路が構成されるようになっている。
この構成では、使用者に帯電した静電気を、使用者が手首等に通したストラップ1から、導電路を介して錘12の接触対象面Fに放電させる(接地放電させる)ようにしているので、静電気を空気中に放電させる(空中放電させる)場合よりも、放電率を高めることができる。特に、携帯機器40の落下防止等のために当該携帯機器40に取り付けられるストラップ1に対し、上述のリール20構成を付加するといった簡易な対応により、携帯機器40を静電気からより確実に保護することができるため、コスト面や静電気除去効果の面で特に有利となる。
さらに、ストラップ本体2と携帯機器40とは、連結紐4によって電気的に絶縁状態(非導通状態)とされているので、使用者側から携帯機器40側へ静電気が流入することをより確実に抑えることができる。一方、必要に応じ、リール20によってワイヤ10を巻き取ることができるので、携帯機器40の使用時に接地放電のためのワイヤ10が使用者の邪魔となるといった問題も解消することができる。
【0031】
また、リール20においてワイヤ10を巻き取る巻き取り駆動部22が設けられている。そして、錘12が落下したときには、錘12の自重により、巻き取り駆動部22の巻き取り力に抗してワイヤ10が一端側から送り出されるように構成されている。
この構成によれば、錘12を落下させるだけで、自動的にワイヤ10が送り出され、錘12を接触対象面Fに接地させることができるので、使用者が必要分のワイヤ10を引き出した上で錘12を接触対象面Fに置くといった作業を省略することができ、簡易な作業で静電気を放電させることができる。
【0032】
また、リール20又はリール20に連結される位置に、錘12を保持する保持部が設けられている。そして、錘12が保持部から外されて落下したときに、錘12の自重により、巻き取り駆動部22の巻き取り力に抗してワイヤ10が一端側から送り出されるようになっている。また、ワイヤ10が送り出された状態から錘12が保持部へと移動されたときには、巻き取り駆動部22によってワイヤ10が自動的に巻き取られるように構成されている。
この構成では、放電時(ワイヤ10送り出し時)の作業負荷を低減し得ることは勿論のこと、ワイヤ10巻き取り時においても、錘12を保持部へ移動させるだけで、ワイヤ10が自動的に巻き取られるようになり、手動での巻取作業負荷を抑えて使用者の利便性を一層高めることができる。また、使用時には、錘12を保持部に安定的に保持することができるため、錘12が端末操作の邪魔になりにくくなる。
【0033】
また、巻き取り駆動部22は、リール20内においてワイヤ10に接続されており、弛緩状態(第1状態)と捲縮状態(第2状態)とに変形可能に構成され、且つ捲縮状態から弛緩状態に復元しようとする復元力が生じるように構成された渦巻ばね23を備えている。そして、錘12の自重によってワイヤ10の一端側が引かれたときに渦巻ばね23が捲縮状態に変形し、ワイヤ10が送り出された状態から錘12が保持部へと移動されたときに渦巻ばね23が弛緩状態へ復元するようになっている。そして、この復元力によってワイヤ10が自動的に巻き取られるように構成されている。
この構成によれば、弛緩状態と捲縮状態とに変形可能な渦巻ばね23を設けるといった簡易な対応により、ワイヤ10の自動的な巻き取りを実現することができる。特に、複雑な機構等(例えば、モータなどの電気的アクチュエータ等)を用いることがないため、ワイヤ10を自動的に巻き取るための構成を小型且つ軽量な構造で実現できる。従って、高機能化を図りつつも、使用者の使用負担(特に、重さやサイズ的な面での負担)を低減し易くなる。
【0034】
また、錘12の重さは、当該錘12に生じる重力が、巻き取り駆動部22によってワイヤ10を引っ張る力の1.1倍〜1.2倍となるように設定されている。このように、錘12の重力がワイヤ10を引っ張る力よりも若干大きくなる程度に、錘12の重さを設定することで、錘12が勢いよく落下するのを抑制でき、接触対象面Fに強い衝撃が加わらないようにすることができる。
【0035】
[他の実施形態]
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0036】
上記実施形態では、巻き取り駆動部22に渦巻ばね23を用いる構成としたが、これに限定されず、モータ等を用いる構成とすることもできる。
【0037】
上記実施形態では、ワイヤ10を自動で巻き取る構成としたが、これに限定されず、手動で巻き取る構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0038】
1…携帯機器用ストラップ
2…ストラップ本体
2a…紐状部材
4…連結紐(連結部材)
6…接合部材
10…ワイヤ
12…錘
14…フック
20…リール
20a…リール本体部
21…ケース
21a…出入口
22…巻き取り駆動部
23…渦巻ばね(弾性部材)
25…被係合部(保持部)
27…錘収容部(保持部)
27a…溝部
40…携帯機器
41…ストラップ取付部
60…置き台
62…保持台
70…机
72…壁
74…床
F…接触対象面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯機器に取り付けられる携帯機器用ストラップであって、
導電性を有するストラップ本体と、
前記ストラップ本体と前記携帯機器とを連結し、その連結経路が非導通状態とされる連結部材と、
前記ストラップ本体と電気的に接続されるワイヤと、
前記ストラップ本体に連結されると共に、前記ワイヤを巻き取り可能に構成され、且つ前記ワイヤが一端側から引かれたときに当該ワイヤを送り出し可能なリールと、
前記ワイヤの前記一端側に取り付けられた導電性を有する錘と、
を備え、
前記リールから前記ワイヤが送り出されて前記錘が接触対象面に接触したときに、前記ストラップ本体から前記接触対象面までの間に前記ワイヤ及び前記錘を介して導電路が構成されることを特徴とする携帯機器用ストラップ。
【請求項2】
前記リールは、
前記ワイヤを巻き取る巻き取り駆動部を備え、
前記錘が落下したときに、前記錘の自重により、前記巻き取り駆動部の巻き取り力に抗して前記ワイヤが前記一端側から送り出されることを特徴とする請求項1に記載の携帯機器用ストラップ。
【請求項3】
前記リール又は前記リールに連結される位置に、前記錘を保持する保持部が設けられており、
前記リールは、
前記錘が前記保持部から外されて落下したときに、前記錘の自重により、前記巻き取り駆動部の巻き取り力に抗して前記ワイヤが前記一端側から送り出され、
前記ワイヤが送り出された状態から前記錘が前記保持部へと移動されたときに、前記巻き取り駆動部によって前記ワイヤが自動的に巻き取られることを特徴とする請求項2に記載の携帯機器用ストラップ。
【請求項4】
前記巻き取り駆動部は、
前記リール内において前記ワイヤに接続されると共に、第1状態と第2状態とに変形可能に構成され、且つ前記第2状態から前記第1状態に復元しようとする復元力が生じるように構成された弾性部材を備え、
前記錘の自重によって前記ワイヤの前記一端側が引かれたときに前記弾性部材が前記第2状態に変形し、
前記ワイヤが送り出された状態から前記錘が前記保持部へと移動されたときに前記弾性部材が前記第1状態へ復元し、その復元力によって前記ワイヤが自動的に巻き取られることを特徴とする請求項3に記載の携帯機器用ストラップ。
【請求項5】
前記錘の重さは、当該錘に生じる重力が、前記巻き取り駆動部によって前記ワイヤを引っ張る力の1.1倍〜1.2倍となるように設定されていることを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の携帯機器用ストラップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−190592(P2012−190592A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51388(P2011−51388)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】