説明

携帯機器

【課題】
携帯性を損なうこと無く,より広い表示面積を確保できる携帯機器を実現する。
【解決手段】
ベース筐体(20,30,40)は、同じ方向の面に表示パネル(22,32,42)を具備する。ベース筐体(30)はベース筐体(20)に対し、表示パネル(32)を隠蔽する隠蔽位置と表示パネル(32)を露出する露出位置との間でスライド可能である。表示パネル(32)の露出位置でベース筐体(20、30)は信号接続し、表示パネル(32)の隠蔽位置で信号接続が遮断される。ベース筐体(40)は筐体(30)に対し、表示パネル(42)を隠蔽する隠蔽位置と、表示パネル(42)を露出する露出位置との間でスライド可能である。表示パネル(42)の露出位置でベース筐体(30、40)は信号接続し、表示パネル(42)の隠蔽位置で信号接続が遮断される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯機器に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話に代表される携帯型電子機器には、一般に、表示装置を有しており、表示エリアは、広いほど好ましい。本体と表示装置をヒンジで接続することで、広い表示エリアを確保する折り畳み型のもの、また、キーボードを有する本体に対し、表示装置を横スライド可能に取り付けたスライド型などがある。
【0003】
何れのタイプも、携帯型電子機器の本体と表示装置は、フレキシブルプリント基板等の固定的な配線で接続されており、その配線を機械的に変形可能とすることで、折り畳み型又はスライド型を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−44672号公報
【特許文献2】特開2007−243737号公報
【特許文献3】特開2003−244301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のように、携帯型電子機器本体と表示装置の信号接続に固定的な配線を試用する構成では、両者間の可動範囲が配線の長さ範囲又は変形可能範囲に限定されてしまい、電子機器のデザイン上で大きな制限要因となる。
【0006】
表示エリアを広くしようとすると、本体を収容する筐体と、表示装置を収容する筐体の両方又は後者を大きくするしかなく、携帯性を損なってしまう。
【0007】
本発明は、このような不都合に鑑み、携帯性を損なうこと無く,より広い表示面積を確保できる携帯機器を提示することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る携帯機器は、第1の表示パネルを片面に装備する第1の筐体と、第2の表示パネルを片面に装備し、当該第1及び第2の表示パネルが同方向に向いた状態で当該第1の筐体に積層される第2の筐体であって、当該第1の筐体を、当該第2の表示パネルを隠蔽する隠蔽位置と、当該第2の表示パネルを露出する露出位置との間でスライド自在に支持する第2の筐体とを具備する携帯機器であって、当該第2の表示パネルの露出位置において当該第1及び第2の筐体を互いに信号接続し、当該第2の表示パネルの隠蔽位置で当該第1及び第2の筐体間の信号接続を遮断する信号接続手段を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、第1及び第2の筐体間の信号接続にフレキシブルプリント基板のような常時、物理的に接続する手段を用いないので、第1の筐体と第2の筐体を物理的に分離することも可能になり、使い勝手が大幅に向上する。表示パネルが画像メモリ性を有する場合は、所望の内容を表示させた状態で表示パネルを取り外すことも可能であり、例えば地図を表示させた後に表示パネルだけを取り外してナビゲーションに利用するような使い方が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施例である携帯機器の全体斜視図を示す。
【図2】図1のA−A線から見た中央断面図を示す。
【図3】本実施例の分解斜視図を示す。
【図4】本実施例を全表示装置を使用可能にした引出し時の状態の平面図を示す。
【図5】引出し位置におけるベース筐体間の係止機構の断面図を示す。
【図6】ベース筐体を他のベース筐体の下面に収容した位置(又は引出し位置でない位置)にあるときの係止機構の断面図を示す。
【図7】ベース筐体(の内部回路)との間の信号接続部の構成を示す。
【図8】ベース筐体間を電気接続する場合の一方の電気端子の平面図を示す。
【図9】ベース筐体間を電気接続する場合の他方の電気端子の平面図を示す。
【図10】対向する電気端子が離れている状態の斜視図である。
【図11】対向する電気端子が接続している状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施例を詳細に説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は、本発明の一実施例である携帯機器10の全体斜視図を示す。図2は、図1のA−A線から見た中央断面図を示し、図3は、分解斜視図を示す。図4は、全表示装置を使用可能にした引出し時の状態の平面図を示す。
【0013】
本実施例の携帯機器10は、3つの板状のベース筐体20,30,40からなり、各ベース筐体20,30,40の同じ片面に表示パネル22,32,42を装備してある。図1〜図4に示すように、ベース筐体20の対向する2端部から下方向に、ベース筐体30をスライド式に収容可能な壁24,26を起立させてある。同様に、ベース筐体30の対向する2端部から下方向に、ベース筐体40をスライド式に収容可能な壁34,36を起立させてある。
【0014】
壁24,26の先端は内側に突出する凸部24a,26aを有し、この凸部24a,26aに対応して、壁34,36の外面には凹み34b,36bを形成してある。これにより、ベース筐体30は、ベース筐体20と壁24,26で形成される、ベース筐体20の下側の空間に横方向からスライドして収容されうる。同様に、壁34,36の先端は内側に突出する凸部34a,36aを有し、この凸部34a,36aに対応して、ベース筐体40の端面に凹み44b,46bを形成してある。これにより、ベース筐体40は、ベース筐体30と壁34,36で形成される、ベース筐体30の下側の空間に横方向からスライドして収容されうる。
【0015】
すなわち、本実施例では、起立壁24,26,34,36、凸部24a,26a,34a,34b、及び凹み34b,36b,44b,46bからなる構成が、ベース筐体20に対してベース筐体30を横方向にスライド可能に収容し、ベース筐体30に対してベース筐体40を横方向にスライド可能に収容する構成を実現する。図4では、ベース筐体30,40の両方を横方向にスライドして引き出しているが、スライド板30と同40の一方のみを引き出すことも可能であること明らかである。
【0016】
ベース筐体30,40をベース筐体20から脱落させない構造を説明する。図3に示すようにベース筐体30,40をベース筐体20の下部に挿入する際の、出口側に、ストッパ板12をベース筐体20の端面にネジ止めする。これにより、ベース筐体30,40のストッパ板12の方向への脱落を防止する。勿論、ストッパ板12を無くして、ベース筐体30,40をその両方向でそれぞれベース筐体20,30からスライドさせて取り外せるようにしてもよい。
【0017】
本実施例では、以下に説明する係止機構50により、ベース筐体30,40をそれぞれベース筐体20,30に対して所定の位置まで引き出した状態でベース筐体20,30に対して係止可能にしてある。図5は、引出し位置におけるベース筐体20,30間の係止機構50の断面図を示し、図6は、ベース筐体30をベース筐体20の下面に収容した位置(又は引出し位置でない位置)にあるときの係止機構50の断面図を示す。ベース筐体30,40間の係止機構50も同じ構造からなる。
【0018】
ベース筐体30の上面(すなわち、ベース筐体20の底面に対面する面であり、表示パネル32を装備する面)上の、ストッパ板12寄りに、穴52を開け、その穴52内に、バネ54でベース筐体20の底面方向に付勢されたボール56を埋め込む。バネ54の付勢力により、自由状態では、ボール56はベース筐体30の上面より突出する。
【0019】
他方、ベース筐体30をベース筐体20から引き出した所定位置で、ボール56と対面するベース筐体20の下面に、ボール56を受容する凹み58を設ける。ボール56が凹み58に入り込むことで、ベース筐体30はベース筐体20に対し、図4に示すようにベース筐体20から引き出した所定位置で係止される。バネ54、ボール56及び凹み58からなる係止機構50を、スライド壁24側と、スライド壁26側に設けることで、安定的にベース筐体30をベース筐体20に係止できる。
【0020】
穴52、バネ54及びボール56に相当する構成をベース筐体20の下面に設置し、凹み58に相当する構成をベース筐体30の上面に設けてもよいことは明らかである。
【0021】
ベース筐体30をベース筐体20の下側に収容した状態では、図6に示すように、ボール56はベース筐体20の底面に押されて穴52に入り込んでいる。
【0022】
図4に示す引出し位置では、ベース筐体20(の内部回路)はベース筐体30(の内部回路)と信号接続し、ベース筐体30(の内部回路)はベース筐体40(の内部回路)と信号接続する。図7は、ベース筐体20(の内部回路)とベース筐体30(の内部回路)との間の信号接続部の構成を示す。ベース筐体30(の内部回路)とベース筐体40(の内部回路)との間の信号接続部の構成も、基本的に同じである。
【0023】
ベース筐体20の底面には、光信号を透過する透過窓60を設け、ベース筐体30の上面には、ベース筐体30の引出し位置で透過窓60に対面する位置に透過窓80を設けてある。ベース筐体20内には発光素子62及び受光素子64を設け、ベース筐体30内には、受光素子64と対面する発光素子82、及び、発光素子64と対面する受光素子84を設けてある。ベース筐体20、30間で2対のフォトカプラで通信路を形成する。すなわち、ベース筐体30を所定の引出し位置に引き出した状態で、発光素子62と受光素子84、発光素子82と受光素子64は、互いに対向して光信号を送受信できるように互いに対面して配置されている。
【0024】
送受信回路66が主回路68からの送信すべき信号を変調して発光素子62を駆動し、発光素子62は出力信号光を受光素子84に向け出射する。受光素子64は、発光素子82からの信号光を受光して電気信号に変換し、送受信回路66は、受光素子64からの電気信号を復調して、主回路68に供給する。主回路68は必要な情報を表示装置22に表示させる。電源電池70が、送受信回路66、主回路68及び表示装置22の動作に必要な電力をこれらに供給する。
【0025】
ベース筐体30内の構成及び動作も、基本的にベース筐体20のそれと同様である。送受信回路86が主回路88からの送信すべき信号を変調して発光素子82を駆動し、発光素子82は出力信号光を受光素子64に向け出射する。受光素子84は、発光素子62からの信号光を受光して電気信号に変換し、送受信回路86は、受光素子84からの電気信号を復調して、主回路88に供給する。主回路88は必要な情報を表示装置32に表示させる。電源電池90が、送受信回路86、主回路88及び表示装置32の動作に必要な電力をこれらに供給する。
【0026】
複数のモニタを利用できる状況では、表示すべき内容を複数のモニタに分散して表示する。これにより、一度に、より多くの内容を表示できる。
【0027】
本実施例では、筐体20、30、40間にフレキシブルプリント基板のような常時、物理的に接続する手段を用いないので、これらを物理的に分離することも可能になり、使い勝手が大幅に向上する。例えば、所望の内容を表示させた状態で表示パネルを取り外すことも可能になる。地図等を表示させた後に表示パネルだけを取り外してナビゲーションに利用するような使い方が可能となる。
【実施例2】
【0028】
ベース筐体20、30、40間の接続に電気接点による接続を利用しても良い。図8は、そのような電気端子対の一方の電気端子の平面図を示し、図9は、他方の電気端子の平面図を示す。
【0029】
図8に示す電気端子92aは、アース端子94aと、電気端子92bとの電気接続を検知するための検知端子96aと、複数の信号端子98aを具備する。他方、図9に示す電気端子92bは、アース端子94aと対向するアース端子94bと、検知端子96aと対向する検知端子96bと、それぞれ信号端子98aと対向する複数の信号端子98bとを具備する。アース端子94aと検知端子96a間に抵抗100を接続してある。他方、アース端子94bと検知端子96bの間には、電圧源102と電流計104をシリアルに接続してある。
【0030】
図10及び図11は、電気端子92aを構成する端子、例えば端子94aと、この端子94aに対向する電気端子92bの端子94bの斜視図を示す。図10は、端子94a,94bが離れている状態を示し、図11は、端子94a,94bが接触している状態を示す。対となる端子94a,94bの一方(図10及び図11に示す例では、端子94bが、板バネ106により、常時、他方の端子(端子94a)に向けて付勢されている。図4に示すような位置にベース筐体20,30,40を配置した状態では、端子94bは、図11に示すように、端子94aにより押し下げられるが、板バネ106の反発力により、端子94aに強く押し付けられる。これにより、電気端子92a,92b間の電気接続が確保される。
【0031】
特定の説明用の実施例を参照して本発明を説明したが、特許請求の範囲に規定される本発明の技術的範囲を逸脱しないで、上述の実施例に種々の変更・修整を施しうることは、本発明の属する分野の技術者にとって自明であり、このような変更・修整も本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0032】
10:携帯機器
12:ストッパ板
20,30,40:ベース筐体
22,32,42:表示パネル
24,26:壁
34,36:壁
24a,26a,34a,36a:凸部
34b,36b,44b,46b:凹み
50:係止機構
52:穴
54:バネ
56:ボール
58:凹み
60,80:透過窓
62,82:発光素子
64,84:受光素子
66,86:送受信回路
68,88:主回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の表示パネル(22)を片面に装備する第1の筐体(20)と、
第2の表示パネル(32)を片面に装備し、当該第1及び第2の表示パネル(22、32)が同方向に向いた状態で当該第1の筐体(20)に積層される第2の筐体(30)であって、当該第1の筐体(20)を、当該第2の表示パネル(32)を隠蔽する隠蔽位置と、当該第2の表示パネル(32)を露出する露出位置との間でスライド自在に支持する第2の筐体(30)
とを具備する携帯機器であって、
当該第2の表示パネル(32)の露出位置において当該第1及び第2の筐体(20、30)を互いに信号接続し、当該第2の表示パネル(32)の隠蔽位置で当該第1及び第2の筐体(20,30)間の信号接続を遮断する信号接続手段(62〜66、82〜86)を具備する
ことを特徴とする携帯機器。
【請求項2】
当該信号接続手段が、光学信号接続手段であることを特徴とする請求項1に記載の携帯機器。
【請求項3】
更に、
第3の表示パネル(42)を片面に装備し、当該第3の表示パネル(42)が当該第2の表示パネル(32)と同方向に向いた状態で、当該第2の筐体(30)の、当該第1の筐体(20)とは反対面に積層される第3の筐体(40)であって、当該第2の筐体(30)を、当該第3の表示パネル(42)を隠蔽する隠蔽位置と、当該第3の表示パネル(42)を露出する露出位置との間でスライド自在に支持する第3の筐体(40)と、
当該第3の表示パネル(42)の露出位置において当該第2及び第3の筐体(30、40)を互いに信号接続し、当該第3の表示パネル(42)の隠蔽位置において当該第2及び第3の筐体(30、40)間の信号接続を遮断する第2の信号接続手段(62〜66、82〜86)
とを具備することを特徴とする請求項1又は2に記載の携帯機器。
【請求項4】
当該第2の信号接続手段が、光学信号接続手段であることを特徴とする請求項3に記載の携帯機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−224326(P2010−224326A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−72997(P2009−72997)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】