説明

携帯機

【課題】携帯機において、利便性を向上させることにある。
【解決手段】携帯電話10において、近距離無線通信確立時における画面がスイッチ表示画面より優先順位が高いときその画面が維持されて、サイドスイッチ16の操作を通じた車両ドアの施解錠が可能とされる。従って、優先順位が高い画面が、スイッチ表示画面に切り替えられることがない。よって、優先順位の高い画面がスイッチ表示画面に切り替えられることで優先順位が高い画面へのタッチ操作が不可となることを回避できる。例えば、優先順位が高い画面が通話中である旨の画面である場合には、その画面上の通話終了ボタン17cへのタッチ操作が不可となることを回避しつつ、サイドスイッチ16の操作を通じた車両ドアの施解錠が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、無線通信を通じて制御対象の制御を実行する携帯機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子キーシステムにおいては、ユーザが携帯する電子キー及び車両又は住宅間でのIDコードを含む各種信号の送受信を通じて、ドアの施解錠等の制御が実行される。
近年、更なる利便性の向上を図るべく、例えば、特許文献1に示されるように、携帯電話に電子キー機能を付加する試みが検討されている。この場合、携帯電話に搭載される近距離無線通信機能が利用される。すなわち、ユーザに携帯される携帯電話が車両に接近すると、携帯電話及び車両間で近距離無線通信が確立する。近距離無線通信が確立した状態において、携帯電話に設けられるスイッチが操作されることで携帯電話から制御要求信号が送信される。車両は、受信した制御要求信号に応じて車両ドアの施解錠状態を切り替える。
【0003】
一方、携帯電話においては、従来の機械的なスイッチの数を必要最小限として、必要に応じてそのディスプレイ上に表示されるボタンをタッチ操作することで機能が実行されるグラフィカル・ユーザ・インターフェイス(GUI)を採用した構成が普及しつつある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−181119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記GUIを採用した携帯電話に電子キー機能を付加した構成においては、携帯電話と車両との間で近距離無線通信が確立したとき、機械的なスイッチ数を減らす観点からディスプレイ上にロックボタン及びアンロックボタンを表示させることが考えられる。このディスプレイ上のロックボタン又はアンロックボタンをタッチ操作することで、車両ドアの施解錠状態の切り替えが可能となる。しかし、上記通信確立時に、携帯電話において他の機能が実行されている場合がある。例えば、ディスプレイに通話中又はメール送信中である旨の表示がされている場合に上記通信が確立したとき、ディスプレイ上にロックボタン等を表示すると、ユーザは通話やメールの送信が中止されたと誤認するおそれがある。また、例えば通話中である旨の画面には、通話終了ボタン等の各種ボタンが表示されている。よって、上記通信が確立した場合に、通話中である旨の画面からロックボタン等が表示される画面に切り替えられると、通話終了ボタン等のタッチ操作ができなくなるおそれがある。
【0006】
一方、上記通信が確立した場合に、通話中等である旨の表示が維持される構成を採用したときには上記問題を回避できるものの、タッチ操作を通じて車両ドアの施解錠を実行することができなくなる。以上のように、GUIを採用した携帯電話において電子キー機能を付加すると、ユーザの利便性を損なうことが懸念されている。
【0007】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、利便性を向上させた携帯機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について説明する。
請求項1に記載の発明は、ディスプレイと、それに対するタッチ操作を検出するタッチセンサと、前記ディスプレイとは別に構成されるとともに、操作により特定の機能が実行されるスイッチと、を備え、前記ディスプレイは、その画面上にタッチボタンが表示されるスイッチ表示画面に切り替え可能に構成され、前記スイッチ表示画面が表示されているときに前記タッチセンサを通じて前記タッチボタンがタッチ操作された旨判断したとき、制御対象との間での無線通信を通じて、そのタッチ操作に応じて前記制御対象を遠隔制御する携帯機において、前記制御対象との無線通信が可能となった通信確立時に表示されている画面が、前記スイッチ表示画面より優先順位が低い旨判断したとき、前記スイッチ表示画面に表示を切り替えるとともに前記タッチボタンへのタッチ操作を通じた前記制御対象の遠隔制御を可能とし、前記通信確立時に表示されている画面が、前記スイッチ表示画面より優先順位が高い旨判断したとき、その表示されている画面を維持するとともに前記スイッチの操作を通じた前記特定の機能の実行に代えて前記制御対象の遠隔制御を可能とすることをその要旨としている。
【0009】
同構成によれば、通信確立時における画面がスイッチ表示画面より優先順位が高いときその画面が維持されて、スイッチの操作を通じた制御対象の遠隔制御が可能とされる。すなわち、このときスイッチには通常時とは異なる制御対象の遠隔制御に係る機能が割り当てられる。従って、優先順位が高い画面をスイッチ表示画面に切り替えることなく、制御対象の遠隔制御が可能となる。これにより、優先順位が高い画面へのタッチ操作が不可となることが回避されて、利便性を向上させることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の携帯機において、光、振動及び音の少なくとも何れか一を発する通知手段を備え、前記スイッチの操作を通じた前記制御対象の遠隔制御を可能としたとき、前記通知手段を通じてユーザにその旨を通知することをその要旨としている。
【0011】
同構成によれば、スイッチの操作を通じた制御対象の遠隔制御が可能となったとき、ディスプレイ上の画面は維持されたまま、通知手段を通じてその旨がユーザに通知される。よって、ユーザは、スイッチの操作を通じて制御対象の遠隔制御が可能となったことを認識できる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の携帯機において、前記優先順位が高い画面とは、前記制御対象の遠隔制御以外の他の機能を実行しているときに表示されるものであって、前記優先順位が低い画面とは、前記携帯機においてユーザの操作を通じた前記他の機能の実行が待たれるときに表示されるものであることをその要旨としている。
【0013】
同構成によれば、通信確立時にスイッチ表示画面より優先順位が高い画面が表示されている場合には、その画面が維持される。よって、ディスプレイがスイッチ表示画面に切り替えられることで、実行中の他の機能が中止されたとユーザにより誤認されることを抑制できる。また、通信確立時にスイッチ表示画面より優先順位が低い画面が表示されているときには、スイッチ表示画面に表示が切り替えられる。この場合には、他の機能の実行中でないため上記誤認が生じない。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載の携帯機において、前記スイッチの操作を通じた前記制御対象の遠隔制御が可能とされた状態において、前記スイッチ表示画面より優先順位が高い画面から、前記スイッチ表示画面より優先順位が低い画面に切り替えられたとき、前記ディスプレイの表示を前記スイッチ表示画面に切り替えてタッチ操作を通じた前記制御対象の遠隔制御を可能とすることをその要旨としている。
【0015】
同構成によれば、スイッチの操作を通じた遠隔制御が可能とされた状態において、スイッチ表示画面より優先順位が高い画面から優先順位が低い画面に切り替えられたとき、スイッチ表示画面に切り替えられる。よって、通信確立時に優先順位が高い画面であっても、タッチ操作を通じた制御対象の遠隔制御が可能となる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れか一項に記載の携帯機において、前記画面の優先順位は任意に設定可能であることをその要旨としている。
同構成によれば、画面の優先順位を任意に設定することができる。これにより、ユーザの好みに適した画面のみを、スイッチ表示画面より優先的に表示させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、携帯機において利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】携帯電話を利用したキーシステムの構成図。
【図2】図上側は車両の上面図、図2(a)はスイッチ表示画面における携帯電話の正面図、図2(b)は通話中である旨の画面における携帯電話の正面図。
【図3】携帯制御部の処理手順を示したフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明にかかる携帯機を携帯電話に具体化し、この携帯電話を利用したキーシステムの一実施形態について図1〜図3を参照して説明する。
図1に示すように、キーシステムは、ユーザにより所持される携帯電話10と、車両2に設けられる車載機20とを備える。携帯電話10は、車載機20との近距離無線通信を通じて車両ドアの施解錠を実行する。以下、携帯電話10及び車両2の構成について説明する。
【0020】
<携帯電話>
図1に示すように、携帯電話10は、携帯制御部11と、近距離通信部14と、サイドスイッチ16と、ホームスイッチ9と、ディスプレイ15と、タッチセンサ17と、振動子18と、遠距離通信部19とを備える。
【0021】
近距離通信部14は、車載機20との間で既存の通信規格を通じて近距離無線通信を行うものである。この近距離通信部14は、携帯電話10が各種の電子機器と近距離無線通信を行うために一般的な携帯電話に予め搭載されている。
【0022】
携帯制御部11はコンピュータユニットによって構成される。また、携帯制御部11は不揮発性のメモリ11aと、時間を計測するタイマ11bとを備える。このメモリ11aには、通話、メール及びキーシステムに係るアプリケーションと、暗号鍵とが記憶されている。
【0023】
図2(a)に示すように、携帯電話10は直方体状の筐体で覆われてなる。ディスプレイ15は、携帯電話10の筐体の表面に設けられる。タッチセンサ17は、ディスプレイ15に対するユーザのタッチ操作の有無及びそのタッチ位置を検出し、その検出結果を携帯制御部11に出力する。サイドスイッチ16は、携帯電話10の側面に押し操作可能に設けられている。サイドスイッチ16は、例えばマナーモードへの切り替えや音量調整の操作に利用される。また、ホームスイッチ9は、携帯電話10の表面であってディスプレイ15の下側に押し操作可能に設けられている。ホームスイッチ9は、例えば待ち受け画面に戻る操作に利用される。サイドスイッチ16及びホームスイッチ9は押し操作がされると、その旨の操作信号が携帯制御部11に出力される。
【0024】
携帯制御部11は、振動子18を通じて携帯電話10を振動させる。
また、携帯制御部11は、ユーザのタッチ操作、ホームスイッチ9及びサイドスイッチ16の操作に応じてディスプレイ15に各種情報やタッチ操作可能なボタンを表示する。携帯制御部11は、上記タッチ操作等に応じて、メモリ11aに記憶される各種アプリケーションを実行する。例えば、携帯制御部11は、通話やメールに係るアプリケーションの実行中に、遠距離通信部19を通じて、無線通信ネットワークを介して通話やメールの通信を行う。
【0025】
ここで、携帯電話10及び車載機20間では予めペアリングが行われている。ペアリングとは、携帯電話10及び車載機20間での無線通信を通じて双方に同一の暗号鍵を記憶させる行為である。
【0026】
図2に示すように、車両2の周辺には通信要求信号が間欠的に無線送信されている。携帯受信部12は、受信アンテナ12aを介して受信した通信要求信号を復調して、その復調した信号を携帯制御部11に出力する。携帯制御部11は、通信要求信号を認識すると、メモリ11aに記憶される暗号鍵を利用して暗号化した接続要求信号を生成し、それを携帯送信部13に出力する。携帯送信部13は、接続要求信号を変調し、その変調した信号を、送信アンテナ13aを介して無線送信する。この接続要求信号に対して車載機20から暗号鍵を利用して暗号化された接続応答信号が無線送信される。携帯受信部12は、受信アンテナ12aを介して受信した接続応答信号を復調して、その復調した信号を携帯制御部11に出力する。携帯制御部11は、受信した信号を、自身の暗号鍵を利用して復号化することで正規の接続応答信号であると認識すると、近距離無線通信が確立した旨判断する。
【0027】
携帯制御部11は、近距離無線通信が確立した旨判断すると、車載機20からの車両状態信号を受信し、その信号に基づき車両の施解錠状態を認識する。そして、携帯制御部11は、予め設定される優先順位に基づき、ディスプレイ15をスイッチ表示画面に切り替えることができる状態であるか否かを判断する。
【0028】
ここで、スイッチ表示画面とは、図2(a)に示されるように、ディスプレイ15にロックボタン17a及びアンロックボタン17bが表示されている画面である。すなわち、本例では、ロックボタン17a及びアンロックボタン17bがタッチボタンに相当する。
【0029】
また、上記優先順位とは、このスイッチ表示画面に対する優先順位である。例えば、スイッチ表示画面の優先順位は、アプリケーションの実行中ではない待ち受け画面、及びメニュー画面より高く、アプリケーションの実行中である通話中やメール送信中である旨を表示する画面より低いとする。通話中である旨の画面は、図2(b)に示すように、通話中である旨のみならず、通話終了ボタン17cが表示される。携帯制御部11は、通話中において通話終了ボタン17cがタッチ操作された旨判断すると遠距離通信部19を通じた通話を終了させる。優先順位は、現在の画面が切り替えられることによるユーザへの影響を加味して決められる。具体的には、通話中やメール送信中である旨の画面が切り替えられると、ユーザは通話やメールの送信が中止されたと誤認するおそれがある。特に通話中において、スイッチ表示画面に切り替えられると通話終了ボタン17cのタッチ操作ができなくなる、ひいては通話の終了ができなくなるため、ユーザに与える影響が大きい。一方で、待ち受け画面やメニュー画面ではそのような問題が生じない。すなわち、待ち受け画面等がスイッチ表示画面に切り替えられることによるユーザへの影響は小さい。
【0030】
携帯制御部11は、車載機20との間の近距離無線通信が確立したときの画面の優先順位がスイッチ表示画面より低い場合、ディスプレイ15をスイッチ表示画面に切り替える。ユーザは、ディスプレイ15がスイッチ表示画面に切り替わったことを通じて、携帯電話10及び車載機20間で近距離無線通信が確立したことを認識できる。これと同時に、携帯制御部11は、ロックボタン17a及びアンロックボタン17bへのタッチ操作の有無の監視を開始する。この監視は、一定時間T1に亘って行われ、一定時間T1が経過したときにはスイッチ表示画面から、もとの待ち受け画面等に戻される。
【0031】
携帯制御部11は、ロックボタン17aがタッチ操作された旨判断したとき、車両ドアの施錠を要求する旨の施錠要求信号を生成し、その生成した信号を携帯送信部13に出力する。携帯送信部13は、携帯制御部11から入力された施錠要求信号を変調し、その変調された信号を送信アンテナ13aを介して無線送信する。携帯制御部11は、アンロックボタン17bがタッチ操作された旨判断したときも同様に、ドアの解錠を要求する旨の解錠要求信号を、携帯送信部13を介して無線送信する。
【0032】
一方、携帯制御部11は、近距離無線通信が確立したときの画面の優先順位がスイッチ表示画面より高い場合、ディスプレイ15をスイッチ表示画面に切り替えず、振動子18を通じて、携帯電話10を振動させる。これにより、ユーザは、たとえスイッチ表示画面に切り替えられなくても、携帯電話10及び車載機20間で無線通信が確立されたことを認識できる。
【0033】
そして、携帯制御部11は、サイドスイッチ16の押し操作の有無を一定時間T2に亘って監視する。携帯制御部11は、サイドスイッチ16の押し操作があった旨判断したとき、施錠要求信号又は解錠要求信号を、上記タッチ操作時と同様に無線送信する。すなわち、車載機20との間で近距離無線通信が確立したときにのみ、サイドスイッチ16には通常時と異なる機能、すなわちロックボタン又はアンロックボタンとしての機能が割り当てられる。ここで、上記受信した車両状態信号に基づき、車両ドアが施錠状態にあると認識されたときは解錠要求信号が送信され、車両ドアが解錠状態にあると認識されたときは施錠要求信号が送信される。一定時間T2内に、複数回に亘ってサイドスイッチ16が操作されたときには、施錠要求信号及び解錠要求信号が交互に送信される。これにより、通話中等である旨の画面をスイッチ表示画面に切り替えることなく、車両ドアの施解錠の実行が可能となる。
【0034】
<車載機>
図1に示すように、車載機20は、車載制御部21と、車外送信部22と、車載受信部24と、を備える。また、車載制御部21にはドアロック装置35が電気的に接続されている。
【0035】
車載制御部21はコンピュータユニットにて構成されるとともに、不揮発性のメモリ21aを備える。このメモリ21aには暗号鍵が記憶されている。
車載制御部21は、エンジン停止状態において、一定周期毎に通信要求信号を生成し、その生成した信号を車外送信部22に出力する。車外送信部22は、車載制御部21から入力された通信要求信号を変調し、その変調した信号を送信アンテナ22aを介して無線送信する。
【0036】
車載受信部24は、自身の受信アンテナ24aを通じて受信した接続要求信号を復調して、その復調した信号を車載制御部21に出力する。車載制御部21は、認識した接続要求信号を自身のメモリ21aに記憶された暗号鍵を利用して復号化する。車載制御部21は、その復号化した接続要求信号が正当なものであると判断したとき、暗号鍵を利用して暗号化した接続応答信号を生成し、それを車外送信部22に出力する。車外送信部22は、車載制御部21から入力された接続応答信号を変調し、それを送信アンテナ22aを介して無線送信する。車載制御部21は、復号化した接続要求信号が正当なものであると判断したとき、携帯電話10との間で無線通信が確立した旨判断する。
【0037】
車載制御部21は近距離無線通信が確立した旨判断すると、ドアロック装置35を通じて車両ドアの施解錠状態を認識する。そして、車載制御部21は、その認識した車両ドアの施解錠状態に関する情報を含む車両状態信号を生成し、それを車外送信部22に出力する。車外送信部22は、車載制御部21から入力された車両状態信号を変調し、その変調した信号を送信アンテナ22aを介して無線送信する。
【0038】
車載受信部24は、自身の受信アンテナ24aを通じて受信した解錠要求信号又は施錠要求信号を復調して、その復調した信号を車載制御部21に出力する。車載制御部21は、車載受信部24からの解錠要求信号又は施錠要求信号を認識すると車両ドアを解錠又は施錠する。
【0039】
次に、携帯制御部11によって実行されるキーシステムに係るアプリケーションについて説明する。このアプリケーションは、図3のフローチャートに従って処理が実行される。当該フローチャートは、車載機20との間で近距離無線通信が確立したとき開始される。
【0040】
まず、受信された車両状態信号に基づき車両の施解錠状態が認識される(S101)。そして、予め設定される優先順位に基づき、現在の画面をスイッチ表示画面に切り替えることができる状態であるか否かが判断される(S102)。
【0041】
現在の画面が待ち受け画面等であってスイッチ表示画面に切り替えることができる状態である旨判断されたとき(S102でYES)、実際にディスプレイ15がスイッチ表示画面に切り替えられる(S103)。そして、タイマ11bを通じて時間tの計測が開始される(S104)。つぎに、スイッチ表示画面におけるロックボタン17a及びアンロックボタン17bへのタッチ操作の有無が判断される(S105)。
【0042】
ロックボタン17a又はアンロックボタン17bへのタッチ操作がある旨判断されたとき(S105でYES)、施錠要求信号又は解錠要求信号が送信される(S106)。そして、時間tが一定時間T1を経過するか否かが判断される(S107)。
【0043】
ロックボタン17a又はアンロックボタン17bへのタッチ操作がない旨判断されたときにも(S105でNO)、時間tが一定時間T1を経過するか否かが判断される(S107)。時間tが一定時間T1を経過していない旨判断されたとき(S107でNO)、再びステップS105の処理に移行されて、ロックボタン17a等へのタッチ操作の有無が判断される。時間tが一定時間T1を経過した旨判断されたとき(S107でYES)、スイッチ表示画面からもとの待ち受け画面等に切り替えられた後(S108)、タイマ11bがリセットされたうえで処理が終了される。すなわち、近距離無線通信確立時に、スイッチ表示画面より優先順位の低い画面(例えば待ち受け画面)が表示されていれば、一定時間T1に亘ってスイッチ表示画面に切り替えられることにより、タッチ操作を通じた車両ドアの施解錠が可能となる。
【0044】
一方、現在の画面が通話中である旨の画面等であって優先順位に基づきその画面をスイッチ表示画面に切り替えることができない状態である旨判断されたとき(S102でNO)、タイマ11bを通じて時間tの計測が開始されるとともに(S109)、振動子18を通じて携帯電話10を振動させる(S110)。
【0045】
そして、サイドスイッチ16からの操作信号に基づきその押し操作の有無が判断される(S111)。サイドスイッチ16への操作があった旨判断されたとき(S111でYES)、上記ステップS101において認識された車両ドアの施解錠状態が施錠状態であるときには解錠要求信号が送信され、解錠状態であるときには施錠要求信号が送信される(S112)。そして、時間tが一定時間T2を経過するか否かが判断される(S113)。
【0046】
サイドスイッチ16への操作がない旨判断されたときにも(S111でNO)、時間tが一定時間T2を経過するか否かが判断される(S113)。時間tが一定時間T2を経過していない旨判断されたとき(S113でNO)、再びステップS111の処理に移行し、サイドスイッチ16への操作の有無が判断される。時間tが一定時間T2を経過した旨判断されたとき(S113でYES)、タイマ11bがリセットされたうえで処理が終了される。すなわち、近距離無線通信確立時に、スイッチ表示画面より優先順位の高い画面(例えば通話中である旨の画面)が表示されていれば、一定時間T2に亘ってサイドスイッチ16を通じた車両ドアの施解錠が可能となる。
【0047】
以上、説明した実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)携帯電話10において、近距離無線通信確立時における画面がスイッチ表示画面より優先順位が高いときその画面が維持されて、サイドスイッチ16の操作を通じた車両ドアの施解錠が可能とされる。従って、優先順位が高い画面が、スイッチ表示画面に切り替えられることがない。よって、優先順位の高い画面がスイッチ表示画面に切り替えられることで優先順位が高い画面へのタッチ操作が不可となることを回避できる。例えば、優先順位が高い画面が通話中である旨の画面である場合には、その画面上の通話終了ボタン17cへのタッチ操作が不可となることを回避しつつ、サイドスイッチ16の操作を通じた車両ドアの施解錠が可能となる。これにより、利便性を向上させることができる。
【0048】
(2)サイドスイッチ16の操作を通じた車両ドアの施解錠が可能となったとき、ディスプレイ15上の画面は維持されたまま、携帯電話10の振動を通じてその旨がユーザに通知される。よって、ユーザは、サイドスイッチ16の操作を通じて車両ドアの施解錠が可能となったことを認識できる。
【0049】
このように、携帯電話10の振動を通じてユーザに通知することで、たとえ通話中、すなわち携帯電話を耳にかざした状態であっても、ユーザは車載機20との間で近距離無線通信が確立したことを認識できる。
【0050】
(3)近距離無線通信確立時にスイッチ表示画面より優先順位が高い画面が表示されている場合には、その画面が維持される。よって、優先順位が高い画面がスイッチ表示画面に切り替えられることで、実行中のアプリケーションが中止されたとユーザにより誤認されることを抑制できる。また、近距離無線通信確立時にスイッチ表示画面より優先順位が低い画面が表示されているときには、スイッチ表示画面に表示が切り替えられる。この場合には、アプリケーションの実行中でないため上記誤認が生じない。
【0051】
(4)近距離通信部14は、携帯電話10が各種電子機器と通信を行うために、携帯電話10に予め設けられているものが利用される。よって、携帯電話10に新たな構成を追加することなく、車両ドアの施解錠を可能とする電子キー機能を追加することができる。
【0052】
(5)近距離無線通信確立時に、例えば通話中である旨の画面である場合には、携帯電話10の側面に設けられるサイドスイッチ16を通じた車両ドアの施解錠が可能な状態となる。ここで、サイドスイッチ16は、ホームスイッチ9に比べて操作頻度が低いことが予想される。このため、サイドスイッチ16をキーシステムに割り当てても、ユーザの利便性が大きく損なわれることはない。また、通話中である旨の画面においてホームスイッチ9の操作が確保される。
【0053】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
・既存の通信規格においては、車載機20は近距離無線通信確立後に一定時間に亘って携帯電話10との間で信号の授受が行われない場合、通常モードからSniffモードに移行する構成がある。通常モードにおいては、車載制御部21は、常に車載受信部24を携帯電話10からの信号を受信可能なアクティブ状態とする。一方、Sniffモードにおいては、車載制御部21は、通常は車載受信部24を携帯電話10からの信号を受信不能な非アクティブ状態とするとともに、携帯電話10からの信号の送信タイミングに合わせて車載受信部24をアクティブ状態とする。非アクティブ状態においては車載受信部24の待機電力を省くことができる。結果的に、Sniffモードにおける消費電力は通常モードに比べて低減される。
【0054】
上記のような既存の通信規格において、車載制御部21は、所定のタイミングにおいて、Sniffモードから通常モードに移行する。この所定のタイミングとは、例えば、通話中である旨の画面からスイッチ表示画面に切り替えられたときである。この場合、携帯制御部11は、通話中である旨の画面からスイッチ表示画面に切り替えたとき、その旨の通知信号を携帯送信部13を通じて無線送信する。この通知信号は、車載受信部24がSniffモードにおいてアクティブ状態となっているタイミングに送信される。車載制御部21は、Sniffモードにおいて通知信号を受信すると、Sniffモードから通常モードに移行する。通常モードにおいては、車載制御部21は、車載受信部24を常時アクティブ状態とするため、施錠要求信号等を確実に受けることができる。
【0055】
・上記実施形態においては、車載機20及び携帯電話10間での近距離無線通信は、既存の通信規格が利用されていた。しかし、既存の通信規格を利用しなくてもよい。この場合、例えば、車載機20は、一定周期毎に車両状態信号を送信する。携帯電話10は、車両状態信号を受信したとき、図3のフローチャートを開始する。
【0056】
・上記実施形態においては、車載機20から通信要求信号が送信されていたが、携帯電話10から通信要求信号が送信されてもよい。この場合、車載機20から接続要求信号が送信され、携帯電話10から接続応答信号が送信される。
【0057】
・上記実施形態においてスイッチ表示画面に切り替える際(S103)に、携帯電話10を振動させてもよい。これにより、より確実に携帯電話10及び車載機20間で近距離無線通信が確立したことをユーザに認識させることができる。
【0058】
・上記実施形態において、ステップS105又はS111において、スイッチ表示画面上のボタン17a,17bの操作又はサイドスイッチ16の操作がある旨判断されたとき、タイマ11bの時間がリセットされてゼロから計測が開始されてもよい。この場合、ボタン17a,17b又はサイドスイッチ16の操作後に、少なくとも一定時間T1,T2内の再操作が可能となる。
【0059】
・上記実施形態において、近距離無線通信確立時に通話中である旨の画面であるとき、その画面が維持されるが、通話が終了したときには、ディスプレイ15をスイッチ表示画面に切り替えてもよい。この場合、ユーザは、通話終了後にはスイッチ表示画面におけるボタン17a,17bのタッチ操作を通じた車両ドアの施解錠が可能となる。
【0060】
・上記実施形態において、スイッチ表示画面に切り替えることができる状態である旨判断された場合(S102でYES)、実際にスイッチ表示画面に切り替えてもよいか否かを選択する画面が表示されてもよい。この場合、この選択画面において、タッチ操作を通じてスイッチ表示画面に切り替えてもよい旨の操作が行われたときにのみ、実際にスイッチ表示画面に切り替えられる(S103)。
【0061】
・上記実施形態において、ステップS103におけるスイッチ表示画面において、その背面に近距離無線通信確立時における例えば待ち受け画面を継続して表示してもよい。
・上記実施形態におけるサイドスイッチ16は、プッシュスイッチに限らず、スライドスイッチやロータリースイッチであってもよい。また、ディスプレイ15と別に設けられていれば、タッチ操作式のスイッチであってもよい。
【0062】
・また、サイドスイッチ16に代えてホームスイッチ9の押し操作により車両ドアの施解錠が可能となってもよい。
・上記実施形態において車両状態信号を省略してもよい。この場合、図3のステップS112において、車両ドアの施解錠状態の切替を要求する切替要求信号が送信される。車載機20は、切替要求信号を受信すると、車両ドアの施解錠状態を切り替える。
【0063】
・上記実施形態においてはサイドスイッチ16は1つであったが、サイドスイッチ16が2つ以上ある場合に一方が操作されると施錠要求信号が送信され、他方が操作されると解錠要求信号が送信される構成としてもよい。
【0064】
・上記実施形態においては、スイッチ表示画面より優先順位が高い画面として、通話中やメール送信中である旨を表示する画面が例示されていた。しかし、この優先順位が高い画面は、アプリケーションの実行中に表示される画面であればこれらに限らず、例えばメール作成画面や、ウェブ上の画面であってもよい。また、アプリケーションの実行中に表示される画面であっても、例えばゲームや音楽等に係るアプリケーション実行中の画面であれば、スイッチ表示画面より優先順位が低い画面としてもよい。すなわち、優先順位は任意に設定できる。この優先順位は予め設定してあってもよいし、ユーザによって設定可能であってもよい。
【0065】
・上記実施形態における施錠要求信号及び解錠要求信号にIDコードを含ませてもよい。この場合、両メモリ11a,21aには予め同一のIDコードが記憶されている。携帯制御部11は、メモリ11aに記憶されるIDコードを含む施錠要求信号等を送信する。車載制御部21は、受信した施錠要求信号等に含まれるIDコードと、メモリ21aに記憶されるIDコードとの照合が成立したとき、車両ドアの施錠等を実行する。
【0066】
・上記実施形態において、時間tが一定時間T2を経過した旨判断されたとき(S113でYES)、その旨をユーザに携帯電話10の振動を通じて通知してもよい。これにより、ユーザは、サイドスイッチ16を通じた車両ドアの施解錠が不可となったことを、例えば通話中であっても認識できる。
【0067】
・上記実施形態においては、携帯制御部11は、近距離無線通信が確立したときの画面の優先順位がスイッチ表示画面より高い場合、振動子18を通じて携帯電話10を振動させることにより、ユーザにサイドスイッチ16の操作を通じた車両ドアの施解錠が可能となった旨を通知していた。しかし、通知方法は、これに限らず、携帯電話に備えられるLED(発光ダイオード)の点灯を通じて通知したり、アラームを通じて通知したりしてもよい。また、上記各通知方法を組み合わせてもよい。なお、これらの通知を省略してもよい。
【0068】
・上記実施形態においては、スイッチ表示画面においてロックボタン17a及びアンロックボタン17bが表示されていた。しかし、スイッチ表示画面は、2つのボタンではなく、施解錠状態を切り替える1つのボタンが表示されていてもよい。この場合には、当該1つのボタンのタッチ操作毎に、施錠要求信号及び解錠要求信号が交互に送信される。
【0069】
・上記実施形態における携帯電話10を通じた遠隔制御の内容は車両ドアの施解錠であったが、例えばスライドドアやトランクの開閉であってもよい。本構成においては、スイッチ表示画面においてスライドドア等の開閉に関するボタンが表示される。また、1つの携帯電話10を通じて上記ドアロック装置35、スライドドア装置及びトランク等の制御が可能であってもよい。また、制御対象は車両用に限らず住宅用のドアロック装置であってもよい。
【0070】
・上記実施形態においては、車両ドアの施解錠状態を切り替える携帯機として携帯電話10が採用されていた。しかし、車両との間で近距離無線通信可能に構成されるとともに、タッチパネルを備えた携帯機であれば携帯電話10に限らず、例えば電子キー機能を有する多機能携帯端末であってもよい。
【符号の説明】
【0071】
9…ホームスイッチ、10…携帯電話(携帯機)、11…携帯制御部、12…携帯受信部、13…携帯送信部、15…ディスプレイ、16…サイドスイッチ(スイッチ)、17…タッチセンサ、18…振動子(通知手段)、19…遠距離通信部、20…車載機、21…車載制御部、22…車外送信部、24…車載受信部、35…ドアロック装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイと、それに対するタッチ操作を検出するタッチセンサと、前記ディスプレイとは別に構成されるとともに、操作により特定の機能が実行されるスイッチと、を備え、
前記ディスプレイは、その画面上にタッチボタンが表示されるスイッチ表示画面に切り替え可能に構成され、前記スイッチ表示画面が表示されているときに前記タッチセンサを通じて前記タッチボタンがタッチ操作された旨判断したとき、制御対象との間での無線通信を通じて、そのタッチ操作に応じて前記制御対象を遠隔制御する携帯機において、
前記制御対象との無線通信が可能となった通信確立時に表示されている画面が、前記スイッチ表示画面より優先順位が低い旨判断したとき、前記スイッチ表示画面に表示を切り替えるとともに前記タッチボタンへのタッチ操作を通じた前記制御対象の遠隔制御を可能とし、
前記通信確立時に表示されている画面が、前記スイッチ表示画面より優先順位が高い旨判断したとき、その表示されている画面を維持するとともに前記スイッチの操作を通じた前記特定の機能の実行に代えて前記制御対象の遠隔制御を可能とする携帯機。
【請求項2】
請求項1に記載の携帯機において、
光、振動及び音の少なくとも何れか一を発する通知手段を備え、
前記スイッチの操作を通じた前記制御対象の遠隔制御を可能としたとき、前記通知手段を通じてユーザにその旨を通知する携帯機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の携帯機において、
前記優先順位が高い画面とは、前記制御対象の遠隔制御以外の他の機能を実行しているときに表示されるものであって、
前記優先順位が低い画面とは、前記携帯機においてユーザの操作を通じた前記他の機能の実行が待たれるときに表示されるものである携帯機。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載の携帯機において、
前記スイッチの操作を通じた前記制御対象の遠隔制御が可能とされた状態において、前記スイッチ表示画面より優先順位が高い画面から、前記スイッチ表示画面より優先順位が低い画面に切り替えられたとき、前記ディスプレイの表示を前記スイッチ表示画面に切り替えてタッチ操作を通じた前記制御対象の遠隔制御を可能とする携帯機。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の携帯機において、
前記画面の優先順位は任意に設定可能である携帯機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−106271(P2013−106271A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249989(P2011−249989)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】