説明

携帯無線機、該携帯無線機に用いられる整合回路選択回路及び整合回路選択方法

【課題】
アンテナがユーザの体に近接しても、通話品質が劣化しない携帯無線機を提供する。
【解決手段】周波数混合回路22により、アンテナ19に入射された送信波dの反射波fと第1の発振信号aとが混合されて第2の発振信号bと同一の周波数F4(=F2+F1−F1=F2)の反射信号gが生成され、コンパレータ26、基準電圧源25及び切替器15,18により、同反射信号gを検波した検波出力電圧hのレベルに基づいて、各整合回路16,17のうちから同反射波fのレベルが最小となる整合回路が選択される。このため、常に最大の送信出力が得られ、安定した通話品質が得られる。また、基準電圧源25の基準電圧jの設定が単一でよいため、整合回路選択部20の構成が比較的簡単になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、携帯無線機、該携帯無線機に用いられる整合回路選択回路及び整合回路選択方法に係り、たとえば携帯電話機などのように、アンテナがユーザの体に近接して通話品質が劣化した状態となる場合に用いて好適な携帯無線機、該携帯無線機に用いられる整合回路選択回路及び整合回路選択方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機などの携帯無線機では、本体の小型化が急速に進み、これに伴い、アンテナも小型化される傾向にある。この傾向において、ユーザが携帯電話機を携行していると、アンテナが自然にユーザの体に近接する状態や、ユーザが通話時にアンテナの位置を特に意識せずに同アンテナを手で覆うなどの状態になることがあり、通話品質が劣化することがある。このため、このような通話品質の劣化に対して対策が行われた携帯電話機が提案されている。
【0003】
この種の携帯電話機は、従来では、たとえば図2に示すように、発振器1と、発振器2と、周波数変換回路3と、送信回路4と、切替器5と、整合回路6,7と、切替器8と、アンテナ9とから構成されている。発振器1は、複数種類の周波数に変化することが可能な第1の発振信号a(たとえば、周波数F1)を生成する。発振器2は、周波数F2の第2の発振信号bを常時生成する。周波数変換回路3は、第1の発振信号a及び第2の発振信号bを周波数変換して、たとえば周波数F3(=F2+F1)の搬送信号cを生成する。送信回路4は、搬送信号cを規定電力まで増幅して送信波dを生成する。切替器5は、切替え信号eに基づいて、整合回路6又は整合回路7の入力側と送信回路4の出力側とを接続する。
【0004】
整合回路6は、受動素子などで構成され、送信回路4からの送信波dを切替器8を経てアンテナ9へ伝送すると共に、同アンテナ9が自由空間で送信出力が最大となるように特性インピーダンスが調整されている。整合回路7は、受動素子などで構成され、送信波dを切替器8を経てアンテナ9へ伝送すると共に、同アンテナ9が人体に近接した場合に送信出力が最大となるように特性インピーダンスが調整されている。切替器8は、切替え信号eに基づいて、整合回路6又は整合回路7の出力側とアンテナ9とを接続する。アンテナ9は、送信回路4から、切替器5、整合回路6又は整合回路7、及び切替器8を経て伝送された送信波dを放射する。
【0005】
この携帯電話機では、アンテナ9が人体に近接していないと想定される待受け状態では、図示しない制御部からの切替え信号eに基づいて整合回路6が選択され、同アンテナ9が人体に近接していると想定される通話状態では、同切替え信号eに基づいて整合回路7が選択されることにより、それぞれの状態における最大の送信出力が得られると想定されている。
【0006】
上記の携帯電話機の他、従来、この種の技術としては、たとえば、次のような文献に記載されるものがあった。
特許文献1に記載された送信回路では、入力信号が変調回路で変調され、同変調回路から出力される変調信号が電力増幅回路で増幅され、同電力増幅回路の出力がアンテナから送信される。また、変調信号は復調回路で復調され、復調信号に含まれる入力信号の帯域外成分が帯域外成分検出回路で検出される。この帯域外成分検出信号に応じて制御回路から制御信号が出力され、同制御信号がインピーダンス変換回路に入力されて、電力増幅回路とアンテナとのインピーダンス整合がとられる。このため、電力増幅回路の入力インピーダンスが変化して、アンテナにおいて反射波が発生しても、同電力増幅回路と同アンテナとのインピーダンス整合がとられ、同電力増幅回路の利得を常に一定に保ったままで、同アンテナにおける反射波の発生が抑制される。
【特許文献1】特開平8−288864号公報(要約書、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の携帯電話機では、次のような問題点があった。
すなわち、図2の携帯電話機は、待受け状態では整合回路6が選択され、通話状態では整合回路7が選択されるようになっているが、待受け状態においてもアンテナ9が人体や金属に近接することがあるため、最大送信出力が得られず、たとえば着呼できないなど、通話品質が劣化するという問題点があった。
【0008】
また、特許文献1に記載された送信回路では、復調信号に含まれる入力信号の帯域外成分が帯域外成分検出回路で検出され、帯域外成分検出信号に応じた制御信号に基づいて、電力増幅回路とアンテナとのインピーダンス整合がとられる。このため、この発明とは構成が異なる。
【0009】
この発明は、上述の事情に鑑みてなされたもので、比較的簡単な構成でアンテナの負荷状態を自動的に検出して整合回路を切り替えることにより、第1の発振信号の周波数が変化する場合でも、常に最大の送信出力が得られ、安定した通話品質が得られる携帯無線機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、複数種類の周波数の第1の発振信号を生成することが可能な第1の発振器と、固定周波数の第2の発振信号を常時生成する第2の発振器と、前記第1及び第2の発振信号を周波数変換して搬送信号を生成する周波数変換回路と、前記搬送信号を増幅して送信波を生成する送信回路と、前記送信波を放射するための1つのアンテナと、前記送信回路からの前記送信波を前記アンテナへ伝送すると共に、該アンテナのインピーダンスの変化に対応して特性インピーダンスが予め整合されている複数の整合回路とを備えてなる携帯無線機に係り、前記アンテナに入射された前記送信波の反射波と前記第1の発振信号とを混合して前記第2の発振信号と同一の周波数の反射信号を生成し、該反射信号のレベルに基づいて、前記各整合回路のうちから前記反射波のレベルが最小となる整合回路を選択する整合回路選択手段が設けられていることを特徴としている。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の携帯無線機に係り、前記周波数変換回路は、周波数F1の前記第1の発振信号及び周波数F2の前記第2の発振信号を周波数変換して周波数F3(=F2+F1、又はF2−F1)の前記搬送信号を生成する構成とされ、前記整合回路選択手段は、前記第2の発振信号と同一の周波数F4(=F2+F1−F1=F2、又はF2−F1+F1=F2)の前記反射信号を生成する構成とされていることを特徴としている。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の携帯無線機に係り、前記各整合回路は、前記送信回路からの前記送信波を前記アンテナへ伝送すると共に、該アンテナが自由空間で送信出力が最大となるように該アンテナのインピーダンスに対応して特性インピーダンスが整合された第1の整合回路と、前記送信波を前記アンテナへ伝送すると共に、該アンテナが人体に近接した場合に送信出力が最大となるように該アンテナのインピーダンスに対応して特性インピーダンスが整合された第2の整合回路とからなり、前記整合回路選択手段は、前記アンテナからの前記反射波を検出する方向性結合器と、該方向性結合器で検出された前記反射波と前記第1の発振信号とを混合して前記反射信号を出力する周波数混合回路と、前記反射信号を検波して直流の検波出力電圧を出力する検波部と、前記検波出力電圧を予め設定された基準電圧と比較し、該検波出力電圧が該基準電圧よりも大きいとき、前記第1及び第2の整合回路のうちの選択されている整合回路に代えて、他の整合回路を選択するための選択信号を生成する比較部と、前記第1の整合回路又は前記第2の整合回路を、前記選択信号により選択する選択器とから構成されていることを特徴としている。
【0013】
請求項4記載の発明は、整合回路選択回路に係り、複数種類の周波数F1の第1の発振信号を生成することが可能な第1の発振器と、固定周波数F2の第2の発振信号を常時生成する第2の発振器と、前記第1及び第2の発振信号を周波数変換して周波数F3(=F2+F1、又はF2−F1)の搬送信号を生成する周波数変換回路と、前記搬送信号を増幅して送信波を生成する送信回路と、前記送信波を放射するための1つのアンテナと、前記送信回路からの前記送信波を前記アンテナへ伝送すると共に、該アンテナのインピーダンスの変化に対応して特性インピーダンスが予め整合されている複数の整合回路とを備えてなる携帯無線機に用いられ、前記アンテナに入射された前記送信波の反射波と前記第1の発振信号とを混合して前記第2の発振信号と同一の周波数F4(=F2+F1−F1=F2、又はF2−F1+F1=F2)の反射信号を生成し、該反射信号のレベルに基づいて、前記各整合回路のうちから前記反射波のレベルが最小となる整合回路を選択する構成とされていることを特徴としている。
【0014】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の整合回路選択回路に係り、前記各整合回路は、前記送信回路からの前記送信波を前記アンテナへ伝送すると共に、該アンテナが自由空間で送信出力が最大となるように該アンテナのインピーダンスに対応して特性インピーダンスが整合された第1の整合回路と、前記送信波を前記アンテナへ伝送すると共に、該アンテナが人体に近接した場合に送信出力が最大となるように該アンテナのインピーダンスに対応して特性インピーダンスが整合された第2の整合回路とからなり、前記アンテナからの前記反射波を検出する方向性結合器と、該方向性結合器で検出された前記反射波と前記第1の発振信号とを混合して前記反射信号を出力する周波数混合回路と、前記反射信号を検波して直流の検波出力電圧を出力する検波部と、前記検波出力電圧を予め設定された基準電圧と比較し、該検波出力電圧が該基準電圧よりも大きいとき、前記第1及び第2の整合回路のうちの選択されている整合回路に代えて、他の整合回路を選択するための選択信号を生成する比較部と、前記第1の整合回路又は前記第2の整合回路を、前記選択信号により選択する選択器とから構成されていることを特徴としている。
【0015】
請求項6記載の発明は、整合回路選択方法に係り、複数種類の周波数F1の第1の発振信号を生成することが可能な第1の発振器と、固定周波数F2の第2の発振信号を常時生成する第2の発振器と、前記第1及び第2の発振信号を周波数変換して周波数F3(=F2+F1、又はF2−F1)の搬送信号を生成する周波数変換回路と、前記搬送信号を増幅して送信波を生成する送信回路と、前記送信波を放射するための1つのアンテナと、前記送信回路からの前記送信波を前記アンテナへ伝送すると共に、該アンテナのインピーダンスの変化に対応して特性インピーダンスが予め整合されている複数の整合回路とを備えてなる携帯無線機に用いられ、前記アンテナに入射された前記送信波の反射波と前記第1の発振信号とを混合して前記ローカル信号と同一の周波数F4(=F2+F1−F1=F2、又はF2−F1+F1=F2)の反射信号を生成し、該反射信号のレベルに基づいて、前記各整合回路のうちから前記反射波のレベルが最小となる整合回路を選択することを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
この発明の構成によれば、整合回路選択手段により、アンテナに入射された送信波の反射波と第1の発振信号とを混合して第2の発振信号と同一の周波数の反射信号が生成され、同反射信号のレベルに基づいて、各整合回路のうちから同反射波のレベルが最小となる整合回路が選択されるので、第1の発振信号の周波数が複数種類となっても、常に最大の送信出力が得られ、安定した通話品質を得ることができる。また、第2の発振信号と同一の周波数の反射信号のレベルに基づいて整合回路が選択されるので、整合回路選択手段の構成を比較的簡単にできる。また、整合回路選択手段では、周波数混合回路により、アンテナに入射された送信波の反射波と第1の発振信号とが混合されて第2の発振信号と同一の周波数の反射信号が生成され、比較部及び選択器により、同反射信号を検波した検波出力電圧のレベルに基づいて、各整合回路のうちから同反射波のレベルが最小となる整合回路が選択される。このため、常に最大の送信出力が得られ、安定した通話品質が得られる。また、反射信号が第2の発振信号と同一の周波数となるため、比較部の構成が簡単になり、整合回路選択手段の構成を比較的簡単にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
アンテナのインピーダンスの変化に対応して特性インピーダンスが予め整合されている複数の整合回路が設けられ、同アンテナからの反射波を検出して同反射波のレベルが最小となる整合回路を選択し、選択された整合回路を経て送信波を同アンテナへ伝送する携帯無線機を提供する。
【実施例】
【0018】
図1は、この発明の実施例である携帯電話機の要部の電気的構成を示すブロック図である。
この例の携帯電話機は、同図に示すように、発振器11と、局部発振器12と、周波数変換回路13と、送信回路14と、切替器15と、整合回路16,17と、切替器18と、アンテナ19と、整合回路選択部20とから構成されている。発振器11は、複数種類の周波数に変化することが可能な第1の発振信号a(たとえば、周波数F1)を生成する。発振器12は、周波数F2の第2の発振信号bを常時生成する。周波数変換回路13は、第1の発振信号a及び第2の発振信号bを周波数変換して、たとえば周波数F3(=F2+F1)の搬送信号cを生成する。送信回路14は、搬送信号cを規定電力まで増幅して送信波dを生成する。切替器15は、整合回路選択部20からの切替え信号eに基づいて、整合回路16又は整合回路17の入力側と、整合回路選択部20を介して送信回路14の出力側とを接続する。
【0019】
整合回路16は、受動素子などで構成され、送信回路14からの送信波dを切替器18を経てアンテナ19へ伝送すると共に、同アンテナ19が自由空間で送信出力が最大となるように同アンテナ19のインピーダンスに対応して特性インピーダンスが整合されている。整合回路17は、受動素子などで構成され、送信波dを切替器18を経てアンテナ19へ伝送すると共に、同アンテナ19が人体に近接した場合に送信出力が最大となるように同アンテナ19のインピーダンスに対応して特性インピーダンスが整合されている。切替器18は、整合回路選択部20からの切替え信号eに基づいて、整合回路16又は整合回路17の出力側とアンテナ19とを接続する。アンテナ19は、送信回路14から、切替器15、整合回路16又は整合回路17、及び切替器18を経て伝送された送信波dを放射する。整合回路選択部20は、アンテナ19に入射された送信波dの反射波と第1の発振信号aとを混合して第2の発振信号bと同一の周波数F4(=F2+F1−F1=F2)の反射信号を生成し、同反射信号のレベルに基づいて、上記各整合回路16,17のうちから同反射波のレベルが最小となる整合回路を選択する。
【0020】
すなわち、整合回路選択部20は、方向性結合器21と、周波数混合回路22と、抵抗23と、検波ダイオード24と、基準電圧源25と、コンパレータ26とから構成されている。方向性結合器21は、送信回路14からの送信波dを切替器15へ伝送する一方、アンテナ19からの反射波fを検出する。周波数混合回路22は、方向性結合器21で検出された反射波fと第1の発振信号aとを混合して第2の発振信号bと同一の周波数F4(=F2+F1−F1=F2)の反射信号gを出力する。抵抗23は、方向性結合器21の一方を終端することにより、整合回路16,17に対してインピーダンス整合をとる。検波ダイオード24は、反射信号gを検波して直流の検波出力電圧hを出力する。基準電圧源25は、整合回路16,17を切り替えるための閾値として基準電圧jが設定されている。コンパレータ26は、検波出力電圧hを基準電圧源25の基準電圧jと比較し、同検波出力電圧hが同基準電圧jよりも大きいとき、整合回路16,17のうちの選択されている整合回路に代えて、他の整合回路を選択するための選択信号eを生成する。
【0021】
次に、この例の携帯無線機に用いられる整合回路選択方法の処理内容について説明する。
この携帯無線機では、整合回路選択部20で、アンテナ19に入射された送信波dの反射波fと第1の発振信号とが混合されて第2の発振信号bと同一の周波数F4(=F2+F1−F1=F2)の反射信号gが生成され、同反射信号gのレベルに基づいて、各整合回路16,17のうちから同反射波fのレベルが最小となる整合回路が選択される。
【0022】
すなわち、発振器11から周波数F1の第1の発振信号aが発生し、発振器12から周波数F2の第2の発振信号bが発生する。周波数変換回路13で、第1の発振信号a及び第2の発振信号bの周波数変換が行われ、周波数F3(=F2+F1)の搬送信号cが生成される。搬送信号cは、送信回路14によりアンテナ19から送出される規定電力に見合うレベルまで増幅され、同送信回路14から送信波dが出力される。送信波dは、方向性結合器21を通過後、切替器15、整合回路16及び切替器18を経てアンテナ19から放射される。
【0023】
整合回路16は、アンテナ19に人体に近接しないときに最大送信出力が得られるように、特性インピーダンスが同アンテナ19のインピーダンス及び方向性結合器21のインピーダンスと整合されている。このとき、アンテナ19が人体に近接していなければ、整合状態が良いため、同アンテナ19からの送信波dの反射波fは極めて小さい。反射波fは、方向性結合器21にて結合され、周波数混合回路22に入力される。周波数混合回路22では、方向性結合器21から入力された反射波f(周波数F3)及び発振器11からの第1の発振信号a(周波数F1)が周波数変換され、周波数F4の反射信号gが出力される。
【0024】
この反射信号gは、たとえば、周波数F4(=F3−F1=F2+F1−F1=F2)の中間周波信号である。反射信号gは、検波ダイオード24により直流の検波出力電圧hに変換され、コンパレータ26の+側入力端子に入力される。コンパレータ26の−側入力端子に入力されている基準電圧jは、反射波fの大きさにより整合回路16,17を切り替るための電圧が設定され、コンパレータ26から出力される選択信号eは、同反射波fが小さいとき、低レベル(以下、“L”という)となり、同反射波fが大きいとき、高レベル(以下、“H”という)となる。よって、整合回路16が選択され、アンテナ19が人体などに近接していなければ、反射波fが小さいため、コンパレータ26の選択信号eが“L”となる。
【0025】
また、アンテナ19に人体が近接された場合、同アンテナ19のインピーダンスが大きく変化することにより整合回路16との間にインピーダンスの不整合が発生して反射波fが大きくなり、コンパレータ26の選択信号eが“H”となり、切替器15,18により整合回路17が選択され、整合状態が良好となり、最大送信出力が送信される。よって、反射波fは小さくなり、コンパレータ26の選択信号eが“L”となる。また整合回路11は、アンテナ19に人体が近接したときに最大送信出力が得られるように、特性インピーダンスが同アンテナ19のインピーダンス及び方向性結合器21のインピーダンスと整合されている。
【0026】
さらに、人体の近接状態から非近接状態となった場合には、反射波fが大きくなるため、コンパレータ26の選択信号eは“H”となり、整合回路16が切替器15,18により選択されて整合状態が良好となり、アンテナ19から最大送信出力が送信される。また、発振器11からの第1の発振信号aの周波数F1は、同発振器11により制御されているが、周波数混合回路22で周波数変換されているため、同周波数混合回路22から出力される反射信号gの周波数は常に一定となり、第1の発振信号aの周波数F1によらず、整合回路16,17の切り替えが行われる。
【0027】
以上のように、この実施例では、周波数混合回路22により、アンテナ19に入射された送信波dの反射波fと第1の発振信号aとが混合されて第2の発振信号bと同一の周波数F4(=F2+F1−F1=F2)の反射信号gが生成され、コンパレータ26、基準電圧源25及び切替器15,18により、同反射信号gを検波した検波出力電圧hのレベルに基づいて、各整合回路16,17のうちから同反射波fのレベルが最小となる整合回路が選択される。このため、常に最大の送信出力が得られ、安定した通話品質が得られる。また、基準電圧源25の基準電圧jの設定が単一でよいため、整合回路選択部20の構成が比較的簡単になる。
【0028】
以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、具体的な構成は同実施例に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更などがあっても、この発明に含まれる。
たとえば、整合回路16,17は、これらの2つに限らず、アンテナ19のインピーダンスの変化に対応して特性インピーダンスが整合されている整合回路を3つ以上設けても良い。この場合、切替器15,18に代えて、3つ以上の整合回路のうちの1つを選択する切替器を設け、また、コンパレータ26に代えて、2ビット以上のA/D変換器、及び同A/D変換器の出力信号をデコードして整合回路を選択するデコーダを設ける必要がある。また、上記実施例では、搬送信号cが周波数F3(=F2+F1)、反射信号gが周波数F4(=F2+F1−F1=F2)となっているが、搬送信号cを周波数F3(=F2−F1)とし、反射信号gを周波数F4(=F2−F1+F1=F2)としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0029】
この発明は、携帯電話機の他、たとえばPDA(Personal Digital Assistants )などのように、アンテナが人体に近接しやすく、また、送信波の周波数が複数種類に可変される携帯無線機全般に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明の実施例である携帯電話機の要部の電気的構成を示すブロック図である。
【図2】従来の携帯電話機の要部の電気的構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0031】
11 発振器(第1の発振器、携帯無線機の一部)
12 発振器(第2の発振器、携帯無線機の一部)
13 周波数変換回路
14 送信回路
15,18 切替器(整合回路選択手段の一部、選択器)
16,17 整合回路
19 アンテナ
20 整合回路選択部(整合回路選択手段)
21 方向性結合器(整合回路選択手段の一部)
22 周波数混合回路(整合回路選択手段の一部)
23 抵抗(整合回路選択手段の一部)
24 検波ダイオード(整合回路選択手段の一部、検波部)
25 基準電圧源(整合回路選択手段の一部、比較部の一部)
26 コンパレータ(整合回路選択手段の一部、比較部の一部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の周波数の第1の発振信号を生成することが可能な第1の発振器と、
固定周波数の第2の発振信号を常時生成する第2の発振器と、
前記第1及び第2の発振信号を周波数変換して搬送信号を生成する周波数変換回路と、
前記搬送信号を増幅して送信波を生成する送信回路と、
前記送信波を放射するための1つのアンテナと、
前記送信回路からの前記送信波を前記アンテナへ伝送すると共に、該アンテナのインピーダンスの変化に対応して特性インピーダンスが予め整合されている複数の整合回路とを備えてなる携帯無線機であって、
前記アンテナに入射された前記送信波の反射波と前記第1の発振信号とを混合して前記第2の発振信号と同一の周波数の反射信号を生成し、該反射信号のレベルに基づいて、前記各整合回路のうちから前記反射波のレベルが最小となる整合回路を選択する整合回路選択手段が設けられていることを特徴とする携帯無線機。
【請求項2】
前記周波数変換回路は、
周波数F1の前記第1の発振信号及び周波数F2の前記第2の発振信号を周波数変換して周波数F3(=F2+F1、又はF2−F1)の前記搬送信号を生成する構成とされ、
前記整合回路選択手段は、
前記第2の発振信号と同一の周波数F4(=F2+F1−F1=F2、又はF2−F1+F1=F2)の前記反射信号を生成する構成とされていることを特徴とする請求項1記載の携帯無線機。
【請求項3】
前記各整合回路は、
前記送信回路からの前記送信波を前記アンテナへ伝送すると共に、該アンテナが自由空間で送信出力が最大となるように該アンテナのインピーダンスに対応して特性インピーダンスが整合された第1の整合回路と、
前記送信波を前記アンテナへ伝送すると共に、該アンテナが人体に近接した場合に送信出力が最大となるように該アンテナのインピーダンスに対応して特性インピーダンスが整合された第2の整合回路とからなり、
前記整合回路選択手段は、
前記アンテナからの前記反射波を検出する方向性結合器と、
該方向性結合器で検出された前記反射波と前記第1の発振信号とを混合して前記反射信号を出力する周波数混合回路と、
前記反射信号を検波して直流の検波出力電圧を出力する検波部と、
前記検波出力電圧を予め設定された基準電圧と比較し、該検波出力電圧が該基準電圧よりも大きいとき、前記第1及び第2の整合回路のうちの選択されている整合回路に代えて、他の整合回路を選択するための選択信号を生成する比較部と、
前記第1の整合回路又は前記第2の整合回路を、前記選択信号により選択する選択器とから構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の携帯無線機。
【請求項4】
複数種類の周波数F1の第1の発振信号を生成することが可能な第1の発振器と、
固定周波数F2の第2の発振信号を常時生成する第2の発振器と、
前記第1及び第2の発振信号を周波数変換して周波数F3(=F2+F1、又はF2−F1)の搬送信号を生成する周波数変換回路と、
前記搬送信号を増幅して送信波を生成する送信回路と、
前記送信波を放射するための1つのアンテナと、
前記送信回路からの前記送信波を前記アンテナへ伝送すると共に、該アンテナのインピーダンスの変化に対応して特性インピーダンスが予め整合されている複数の整合回路とを備えてなる携帯無線機に用いられ、
前記アンテナに入射された前記送信波の反射波と前記第1の発振信号とを混合して前記第2の発振信号と同一の周波数F4(=F2+F1−F1=F2、又はF2−F1+F1=F2)の反射信号を生成し、該反射信号のレベルに基づいて、前記各整合回路のうちから前記反射波のレベルが最小となる整合回路を選択する構成とされていることを特徴とする整合回路選択回路。
【請求項5】
前記各整合回路は、
前記送信回路からの前記送信波を前記アンテナへ伝送すると共に、該アンテナが自由空間で送信出力が最大となるように該アンテナのインピーダンスに対応して特性インピーダンスが整合された第1の整合回路と、
前記送信波を前記アンテナへ伝送すると共に、該アンテナが人体に近接した場合に送信出力が最大となるように該アンテナのインピーダンスに対応して特性インピーダンスが整合された第2の整合回路とからなり、
前記アンテナからの前記反射波を検出する方向性結合器と、
該方向性結合器で検出された前記反射波と前記第1の発振信号とを混合して前記反射信号を出力する周波数混合回路と、
前記反射信号を検波して直流の検波出力電圧を出力する検波部と、
前記検波出力電圧を予め設定された基準電圧と比較し、該検波出力電圧が該基準電圧よりも大きいとき、前記第1及び第2の整合回路のうちの選択されている整合回路に代えて、他の整合回路を選択するための選択信号を生成する比較部と、
前記第1の整合回路又は前記第2の整合回路を、前記選択信号により選択する選択器とから構成されていることを特徴とする請求項4記載の整合回路選択回路。
【請求項6】
複数種類の周波数F1の第1の発振信号を生成することが可能な第1の発振器と、
固定周波数F2の第2の発振信号を常時生成する第2の発振器と、
前記第1及び第2の発振信号を周波数変換して周波数F3(=F2+F1、又はF2−F1)の搬送信号を生成する周波数変換回路と、
前記搬送信号を増幅して送信波を生成する送信回路と、
前記送信波を放射するための1つのアンテナと、
前記送信回路からの前記送信波を前記アンテナへ伝送すると共に、該アンテナのインピーダンスの変化に対応して特性インピーダンスが予め整合されている複数の整合回路とを備えてなる携帯無線機に用いられ、
前記アンテナに入射された前記送信波の反射波と前記第1の発振信号とを混合して前記ローカル信号と同一の周波数F4(=F2+F1−F1=F2、又はF2−F1+F1=F2)の反射信号を生成し、該反射信号のレベルに基づいて、前記各整合回路のうちから前記反射波のレベルが最小となる整合回路を選択することを特徴とする整合回路選択方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−245755(P2006−245755A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−55742(P2005−55742)
【出願日】平成17年3月1日(2005.3.1)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】