説明

携帯無線機

【課題】簡単且つ確実に収納および多段階の伸長が可能なアンテナを有する携帯無線機を提供する。
【解決手段】携帯無線機10は、不使用時にはアンテナ収納部14に収納可能であると共に使用時には電波強度に応じて複数段階に伸長可能な第1アンテナ21および第2アンテナ22を有する。第1アンテナ21にコイルばね23が装着され、収納状態から操作ボタン15のスライド操作により1段階目の伸長状態へ移行され、更に第1アンテナ21の基部近傍に形成された穴21cに係合する弾性係合片22cを有するコイルばね24が装着された第2、1段階目の伸長状態で、穴21cから弾性係合片22cの係合を解除して2段階目の伸長状態とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は携帯無線機に関し、特に無線基地局と無線により送受信する際の電波状態に応じて2段階に伸長可能な携帯電話機等の携帯無線機用アンテナの実装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯無線機は、比較的狭いサービスエリアを有する多数の無線基地局を設け、これら無線基地局のサービスエリア内にある携帯無線機と通信することにより、無線基地局を介して携帯無線機相互間又は携帯無線機と固定電話機との間で通信を行うように構成されている。携帯無線機の使用者(ユーザ)が1つの無線基地局のサービスエリアから他の無線基地局のサービスエリア内に移動すると、携帯無線機の最寄の無線基地局へ切り替えられて、携帯無線機の使用者の介在なく、使用者は通信を継続することが可能である。
【0003】
携帯無線機の通信には、約1GHzのマイクロ波を使用している。従って、1つの無線基地局のサービスエリア内であっても、無線基地局から(携帯無線機までの)距離、地形、建物や樹木等の固定障害物の有無、車両その他の移動障害物の有無、屋内又は屋外等の種々の要因により送受信電波強度は変化する。携帯無線機および無線基地局間において最小エラー率で安定的に通信するには、十分な電波強度を有することが必要である。
【0004】
携帯無線機には、無線基地局との間で送受信するためのアンテナが備えられている。このアンテナは、携帯無線機の不使用状態では、その携帯性を考慮して、携帯無線機の本体内に収容するのが一般的である。また、無線基地局からの電波強度が十分である場合には、携帯無線機のアンテナを本体のアンテナ収納部に収納した状態でも十分安定的に通信可能である。しかし、上述した障害物の存在又は無線基地局からの距離が遠い場合等には、電波強度が不十分であるので、携帯無線機のアンテナを本体から引き出し又は伸長して電波送受信強度を高めて通信するのが一般的である。また、電波の受信状態を良好にするために、電波強度又は通信状態に応じてアンテナを2段階以上に伸長する携帯無線機が提案され実用化されている。
【0005】
アンテナを伸長又は引き出し可能な従来の携帯無線機は、種々の文献に開示されている。ばね体を内蔵し、ハウジングを持っている片手のみでアンテナの引き上げ操作を可能にする携帯電話機が開示されている(例えば、特許文献1参照)。同様に、スプリングのばね反力によりアンテナを使用位置まで伸長し保持する移動電話用アンテナが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】登録実用新案公報第3050274号(第6−7頁、第1図)
【特許文献2】登録実用新案公報第3054862号(第4−5頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の携帯無線機では、簡単な操作、特に片手でアンテナを2段階以上に伸長させるものは提案されていない。即ち、携帯無線機を一方の手で保持すると共に、他方の手でアンテナの先端を掴み伸張させる必要があった。斯かる操作は、使用者(ユーザ)の両手がフリー状態であれば特に問題はないが、ユーザが片手で何らかの作業中、例えば鞄その他を片手で持っている場合又は車両のハンドルを操作中等の場合には、両手を使用することができないので、アンテナを十分高感度状態へ操作することが困難であるという課題があった。
【0007】
本発明は、従来技術の上述した課題に鑑みなされたものであり、本発明の主要目的は、アンテナを片手で簡単に2段階以上に伸長させることが可能な携帯無線機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述の課題を解決するため、本発明による携帯無線機は、次のような特徴的な構成を採用している。
【0009】
(1)本体のアンテナ収納部内に収納および伸長自在且つ相互に同軸状に配置された第1アンテナおよび第2アンテナを備え、前記第1アンテナおよび前記第2アンテナを2段階に伸長可能に構成された携帯無線機において、
前記第1アンテナは、基部に第1ばねを装着して前記アンテナ収納部内に配置され、前記第2アンテナは、基部に第2ばねを装着して前記第1アンテナ内に保持され、前記アンテナ収納部の外面には、前記第1ばねに抗して前記第1アンテナを収納位置に保持する操作ボタンを備える携帯無線機。
【0010】
(2)前記第1アンテナの前記基部の近傍に係合部が設けられ、該係合部は、前記操作ボタンと係合するとともに、該係合を解除すると前記アンテナ収納部の入口近傍に形成された突起と係合する上記(1)に記載の携帯無線機。
【0011】
(3)前記第1アンテナの前記基部近傍に、前記第1アンテナの長手方向に対して直交する穴が形成され、前記第2アンテナを縮み位置に保持する上記(1)又は(2)に記載の携帯無線機。
【0012】
(4)前記第2アンテナの前記基部の近傍には、前記第1アンテナの前記穴と係合する弾性係止片を有する上記(3)に記載の携帯無線機。
【0013】
(5)前記第2アンテナの前記弾性係止片は、略V字状である上記(4)に記載の携帯無線機。
【0014】
(6)前記アンテナの1段階目の伸長状態では、前記第1アンテナの前記穴が前記アンテナ収納部の入口より僅かに外に位置する上記(1)乃至(5)の何れかに記載の携帯無線機。
【0015】
(7)前記アンテナの1段階目の伸長状態で、前記第1アンテナの前記穴の外部から前記第2アンテナの弾性係合片の係合を解除することにより2段階目の伸長状態にする上記(1)乃至(6)の何れかに記載の携帯無線機。
【発明の効果】
【0016】
本発明の携帯無線機によると次の如き実用上の顕著な効果を有する。即ち、第1アンテナおよび第2アンテナは、それぞれ基部にばねが装着されているので、簡単な操作で、アンテナを複数の伸長状態に切替選択可能である。1段階目の伸長状態には、操作ボタンのスライド操作により、また2段階目の伸長状態には指等により第1アンテナの穴を押すことにより切替可能であるので、携帯無線機を保持する片手により簡単且つ迅速に操作することが可能である。
【実施例1】
【0017】
以下、本発明による携帯無線機の好適実施例の構成および動作を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明による携帯無線機の好適実施例の外観を示す斜視図である。この携帯無線機10は、携帯性を良好にするために折り畳み式に構成され、それぞれ折り畳まれた内側にテンキー等の操作キー(図示せず)を有する第1部分11および液晶表示装置(LCD)等の表示パネル(図示せず)を有する第2部分12が、相互にヒンジ部13により回転可能に連結されている。この特定の携帯無線機10にあっては、第2部分12の外面に、アンテナ20、アンテナ収納部14、CCD(電荷結合素子)等を使用するカメラ30および操作ボタン15等を有する。
【0019】
図1において、(A)は、アンテナ20が第2部分12の内部に押し込まれた状態(例えば、不使用状態)を示す。(B)は、アンテナ20を1段階目へ伸長させた状態を示す。また、(C)は、アンテナ20を上述した1段階目より長い2段階目へ伸張させた状態を示す。このように、アンテナ20は、携帯無線機10の使用/不使用状態又は電波送受信感度に応じて伸縮する。
【0020】
詳細は後述するが、この実施例の携帯無線機10のアンテナ20は、第1アンテナ21および第2アンテナ22を有する。図1(A)の状態では、アンテナ20の第1アンテナ21および第2アンテナ22が共に携帯無線機10の第2部分12のアンテナ収納部14の内部に実質的に完全に収納される。次に、図1(B)の1段階目の伸長状態では、第1アンテナ21は、アンテナ収納部14から完全に伸張されるが、第2アンテナ部22は、一部分のみが現れ、残りの部分は、第1アンテナ部21内に収納されている。一方、図1(C)の2段階目の伸長状態では、第1アンテナ部21および第2アンテナ部22の両方が、アンテナ収納部14から完全に伸長されている。
【0021】
次に、図2を参照して本発明の携帯無線機10の詳細構成を説明する。図2(A)は、携帯無線機10のアンテナ収納部14の部分断面図およびアンテナ20の分解正面図である。また、図2(B)は、図2(A)の円aで示す部分の拡大図である。
【0022】
先ず、図2(A)の左端に示す如く、携帯無線機10のアンテナ収納部14は、携帯無線機10の本体の上端部を入口とする細長い開口14aを有する。図2(B)に示す如く、その入口近傍の内側に突起(又は突条)14bが形成されている。
【0023】
アンテナ20を構成する第1アンテナ21は、図2(A)の中央部に示す如く、全体が比較的大径の導電性金属により構成され、比較的細長い基部(又は下端部)21aにはコイルばね(第1ばね)23が装着されている。基部21aから上方へ中空部又は筒状部が延びる。基部21a近傍の中空部の外面には係合部21bが突出形成され、更にその上方には、中空部の長手方向に直交する穴21cが形成されている。そして、中空部の上端には、先端が絞られたキャップ21dが形成されている。係合部21bは、後述する如く、操作ボタン15の弾性係合部と係合し、携帯無線機10の不使用時等に、コイルばね23の弾性に抗して第1アンテナ21を携帯無線機10のアンテナ収納部14内に収納可能にする。
【0024】
一方、アンテナ20を構成する第2アンテナ22は、図2(A)の右端に示す如き構成である。即ち、全体として比較的細長い導電性金属製の軸状部22bであり、上端にはヘッド22dが形成されている。基部22aにはコイルばね(第2ばね)24が装着され、軸状基部22a近傍には略V字状の弾性係合片22cが形成されている。この第2アンテナ22の軸状部22bは、コイルばね24と共に上述した第1アンテナ21の中空部内に同軸状に挿入される。
【0025】
次に、図3を参照して、本発明による携帯無線機10の動作、特にアンテナ20の収納および伸長動作を説明する。図3において、(A)はアンテナ20の収納状態を示す正面図である。(B)乃至(D)は、図3(A)のアンテナ収納部14に沿う線A−Aの断面図であり、(B)はアンテナ20の収納状態、(C)は1段階目の伸長状態および(D)は2段階目の伸長状態を示す。また、(E)は図3(B)の円b部分、即ちアンテナ収納部14の下端部分の拡大断面図である。(F)は、図(C)の円c部分、即ち第1アンテナ21と第2アンテナ22の係合部近傍の拡大断面図である。
【0026】
先ず、図3(A)および(B)に示すアンテナ20の収納状態では、第1アンテナ21は、その21aが操作部15の弾性係合部15aと嵌合して、コイルばね23の弾性に抗して第1アンテナ21をアンテナ収納部14内に収納する。また、第2アンテナ22は、その片22cが第1アンテナ21の穴21cと係合し、コイルばね24の弾性に抗して第1アンテナ21の中空部内に収納される。従って、携帯無線機10の外部には、第2アンテナ22のヘッド22dが露出するのみであり、携帯無線機10をコンパクトにして携帯性を高めている。
【0027】
次に、図3(C)および(F)を参照して、アンテナ20の1段階目の伸長状態について説明する。この状態では、第1アンテナ21および第2アンテナ22の関係は図3(B)に示す収納状態と実質的に同様であるが、使用者(ユーザ)が操作ボタン15を、図3(B)に矢印で示す如く下方にスライドすることにより、第1アンテナ21の係合部bと操作部15の弾性係合部15aの係合が解除される。その結果、コイルばね23の弾性により第1アンテナ21およびこれに保持された第2アンテナ22が上方へ飛び出す。そして、第1アンテナ21の係合部21bがアンテナ収納部14の空洞14aの入口に形成された突起14bと係合し、この位置に停止する。
【0028】
次に、図3(D)を参照して、アンテナ20の2段階目の伸長状態について説明する。図3(C)に示す1段階目のアンテナ伸長状態において、使用者が指等により穴21cを押して、第2アンテナ22の弾性係合片22cの自由端部を内方へ撓める。これにより、コイルばね24の復帰力で第2アンテナ22が第1アンテナ21内から飛び出して、2段階目の伸長状態となる。尚、アンテナ20をアンテナ収納部14へ収納状態にするには、例えば第2アンテナ22のヘッドを指等で押し、第2アンテナ22および第1アンテナ21をアンテナ収納部14内に押し込めばよい。
【0029】
以上、本発明による携帯無線機の好適実施例の構成および動作を詳述した。しかし、斯かる実施例は、本発明の単なる例示に過ぎず、何ら本発明を限定するものではないことに留意されたい。本発明の要旨を逸脱することなく、特定用途に応じて種々の変形変更が可能であること、当業者には容易に理解できよう。例えば、携帯無線機は、必ずしもヒンジによる折り畳み型である必要はない。また、アンテナは、必要に応じて3段階以上に伸長可能にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1(A)】本発明による携帯無線機の外観を示す斜視図であり、アンテナの収納状態を示す。
【図1(B)】本発明による携帯無線機の外観を示す斜視図であり、アンテナの1段階目の伸長状態を示す。
【図1(C)】本発明による携帯無線機の外観を示す斜視図であり、2段階目の伸長状態を示す。
【図2(A)】本発明の携帯無線機の好適実施例の詳細構成を示し、アンテナの分解正面図を示す。
【図2(B)】本発明による携帯無線機の外観を示す斜視図であり、アンテナ収納部の拡大部分断面図である。
【図3(A)】本発明の携帯無線機の好適実施例の動作説明図であり、不使用状態の外観を示す正面図を示す。
【図3(B)】本発明の携帯無線機の好適実施例の動作説明図であり、アンテナの収納状態を示す。
【図3(C)】本発明の携帯無線機の好適実施例の動作説明図であり、1段階目の伸長状態を示す。
【図3(D)】本発明の携帯無線機の好適実施例の動作説明図であり、2段階目の伸長状態の断面図を示す。
【図3(E)】本発明の携帯無線機の好適実施例の動作説明図であり、図(B)中の円b内の拡大図を示す。
【図3(F)】本発明の携帯無線機の好適実施例の動作説明図であり、図(C)中の円c内の拡大図である。
【符号の説明】
【0031】
10 携帯無線機
14 アンテナ収納部
14b 突起
15 操作ボタン
20 アンテナ
21 第1アンテナ
22 第2アンテナ
21a、22a 基部
21b 係合部
21c 穴
22c 係合片
23、24 コイルばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体のアンテナ収納部内に収納および伸長自在且つ相互に同軸状に配置された第1アンテナおよび第2アンテナを備え、前記第1アンテナおよび前記第2アンテナを2段階に伸長可能に構成された携帯無線機において、
前記第1アンテナは、基部に第1ばねを装着して前記アンテナ収納部内に配置され、前記第2アンテナは、基部に第2ばねを装着して前記第1アンテナ内に保持され、前記アンテナ収納部の外面には、前記第1ばねに抗して前記第1アンテナを収納位置に保持する操作ボタンを備えることを特徴とする携帯無線機。
【請求項2】
前記第1アンテナの前記基部の近傍に係合部が設けられ、該係合部は、前記操作ボタンと係合するとともに、該係合を解除すると前記アンテナ収納部の入口近傍に形成された突起と係合することを特徴とする請求項1に記載の携帯無線機。
【請求項3】
前記第1アンテナの前記基部近傍に、前記第1アンテナの長手方向に対して直交する穴が形成され、前記第2アンテナを縮み位置に保持することを特徴とする請求項1又は2に記載の携帯無線機。
【請求項4】
前記第2アンテナの前記基部の近傍には、前記第1アンテナの前記穴と係合する弾性係止片を有することを特徴とする請求項3に記載の携帯無線機。
【請求項5】
前記第2アンテナの前記弾性係止片は、略V字状であることを特徴とする請求項4に記載の携帯無線機。
【請求項6】
前記アンテナの1段階目の伸長状態では、前記第1アンテナの前記穴が前記アンテナ収納部の入口より僅かに外に位置することを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の携帯無線機。
【請求項7】
前記アンテナの1段階目の伸長状態で、前記第1アンテナの前記穴の外部から前記第2アンテナの弾性係合片の係合を解除することにより2段階目の伸長状態にすることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の携帯無線機。

【図1(A)】
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【図1(B)】
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【図1(C)】
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【図2(A)】
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【図2(B)】
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【図3(A)】
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【図3(B)】
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【図3(C)】
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【図3(D)】
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【図3(E)】
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【図3(F)】
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【公開番号】特開2005−159733(P2005−159733A)
【公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−395605(P2003−395605)
【出願日】平成15年11月26日(2003.11.26)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】