説明

携帯無線機

【課題】操作性を維持したまま防水性を確保しつつ部品点数を削減し、組立て性の向上及びコストの低減を図る携帯無線機を提供する。
【解決手段】フロントカバー31とシャーシ30とでケース34が組立てられる携帯無線機33であって、前記シャーシにスイッチ53が実装された配線基板51が設けられ、前記フロントカバーの外側側面に前記ケース内部に延出する押下部39を有する弾性体のボタン35が水密に取付けられ、前記押下部が前記スイッチに当接又は略当接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押しボタン構造を有する装置、特に押しボタン構造を有する携帯無線機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
先ず、図4〜図6に於いて、従来の携帯無線機の構造について説明する。尚、図5は図4(B)のC−C矢視図、図6は図4(B)のD−D矢視図を示している。
【0003】
フロントカバー1とシャーシ11とで携帯無線機3のケース4が組立てられ、該ケース4に電池パック2を取付けることで前記携帯無線機3が組立てられる。
【0004】
前記フロントカバー1の正面にはLCD(Liquid Crystal Display)等の表示部(図示せず)や、テンキー等の入力部(図示せず)が設けられ、又側面には送信時に使用されるPTT(Push to Talk)ボタン5や、機器の設定等で使用されるガイドボタン6が設けられており、前記PTTボタン5や前記ガイドボタン6はポリアミド等の硬性樹脂やシリコンゴム等のエラストマにより成形される。
【0005】
前記PTTボタン5及び前記ガイドボタン6は、それぞれボタンカバー7に設けられている。該ボタンカバー7は予め形成された溶着用突起が超音波により溶融されることで前記フロントカバー1の外側側面に溶着される。前記PTTボタン5及び前記ガイドボタン6は前記ボタンカバー7を介して前記フロントカバー1に取付けられる。前記PTTボタン5及び前記ガイドボタン6は、それぞれ前記フロントカバー1の内部迄延出する押下部8,9を有している。
【0006】
又、前記ケース4の内部では、ダイカストにより製作されたシャーシ11が前記フロントカバー1にネジ等で固着され、該フロントカバー1、前記シャーシ11間には防水パッキン12が圧縮された状態で介在している。
【0007】
前記シャーシ11の側面の所定箇所には所定数の孔13が形成され、該孔13を覆う様前記シャーシ11にスイッチパッキン14が取付けられている。前記シャーシ11には前記孔13の周縁に側方への突出部15が環状に形成され、該突出部15の周囲に同心で環状の凹溝10が形成され、前記スイッチパッキン14の周囲には環状のシール部16が形成されると共に、該シール部16の中心には押下部17が一体形成されている。前記シール部16が前記凹溝10に圧入され、前記孔13に前記押下部17が挿入されることで、前記シャーシ11に前記スイッチパッキン14が取付けられると共に、前記シール部16が前記凹溝10に圧入されることで防水性が確保されている。又この時、前記スイッチパッキン14の外部への露出面、即ち前記押下部17と対峙する部位には、前記押下部8,9の先端が当接している。
【0008】
又、前記ケース4内には、LCD基板18とRF(Radio Frequency)基板19との間に基板間シールドケース21が設けられている。該基板間シールドケース21には、フレキシブルプリント基板(FPC)22が両面テープにて固着され、該FPC22にスイッチ24が実装されており、該スイッチ24は前記押下部17の先端と接している。
【0009】
又、前記FPC22は前記LCD基板18上に実装された図示しないコネクタに接続され、前記LCD基板18と前記RF基板19とがコネクタを介して接続されており、前記LCD基板18、前記RF基板19、前記基板間シールドケース21はそれぞれネジ等で前記シャーシ11に固定されている。
【0010】
前記携帯無線機3に於いて、例えば前記PTTボタン5を押下した際には、前記押下部8が前記スイッチパッキン14を押圧し、該スイッチパッキン14を介して前記スイッチ24が押下され、該スイッチ24が動作する。
【0011】
前記PTTボタン5が開放されると、前記スイッチ24の反発力及び前記スイッチパッキン14の反発力により前記押下部8が押返され、前記PTTボタン5の位置が元に戻り、前記スイッチ24の動作が解除される。前記ガイドボタン6の場合も前記PTTボタン5と同様である。又、該PTTボタン5及び前記ガイドボタン6と前記フロントカバー1との間に、クッション等の弾性部材を介在させ、前記PTTボタン5及び前記ガイドボタン6に対する反発力を高める場合もある。
【0012】
然し乍ら、従来の前記携帯無線機3の場合、前記PTTボタン5或は前記ガイドボタン6から前記スイッチ24に至る迄の構成部品が多い為、組立てのばらつきにより前記押下部17の中心位置と前記スイッチ24の中心位置がずれ、操作感の悪化等が発生する場合がある。又、前記押下部17と前記スイッチ24の中心位置が一致する様部品の精度を上げると、部品の歩留りが悪化し、部品コストの増加を招くという問題があった。
【0013】
更に、従来の携帯無線機3は、前記ボタンカバー7を超音波溶接にて前記フロントカバー1に溶着させる為、該フロントカバー1に曲面が多い場合には均一に圧力を掛けることが難しくなり、溶着強度のばらつきが出る可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2002−271047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は斯かる実情に鑑み、防水性を確保しつつ部品点数を削減し、組立て性の向上及びコストの低減を図る携帯無線機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、フロントカバーとシャーシとでケースが組立てられる携帯無線機であって、前記シャーシにスイッチが実装された配線基板が設けられ、前記フロントカバーの外側側面に前記ケース内部に延出する押下部を有する弾性体のボタンが水密に取付けられ、前記押下部が前記スイッチに当接又は略当接する携帯無線機に係るものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、フロントカバーとシャーシとでケースが組立てられる携帯無線機であって、前記シャーシにスイッチが実装された配線基板が設けられ、前記フロントカバーの外側側面に前記ケース内部に延出する押下部を有する弾性体のボタンが水密に取付けられ、前記押下部が前記スイッチに当接又は略当接するので、防水性を確保しつつ部品点数を削減し、コストの低減を図ると共に、前記ボタンが前記スイッチと直接接触する構造としたことで、前記ボタンと前記スイッチとの位置が近くなり、前記ボタンが前記スイッチに対し均一な圧力を加えることができる為、部品点数の増加に伴う動作不良や操作感の悪化を防止することができるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る携帯無線機であり、(A)は該携帯無線機の左側面図、(B)は該携帯無線機の正面図を示している。
【図2】図1(B)のA−A矢視図である。
【図3】図1(B)のB−B矢視図である。
【図4】従来の携帯無線機であり、(A)は該携帯無線機の左側面図、(B)は該携帯無線機の正面図を示している。
【図5】図4(B)のC−C矢視図である。
【図6】図4(B)のD−D矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
【0020】
図1〜図3に於いて、本発明の実施例に係る携帯無線機の構造について説明する。尚、図2は図1(B)のA−A矢視図、図3は図1(B)のB−B矢視図を示している。
【0021】
図1に示される様に、携帯無線機33はケース34に電池パック32を取付けることで組立てられる。又、前記ケース34は一面が開放された箱形状のフロントカバー31と、一面が開放された箱形状のシャーシ30(後述)とで組立てられる。前記フロントカバー31の正面には表示部(図示せず)及び入力部(図示せず)が設けられ、又側面にシリコンゴム等のエラストマにて成形されたPTTボタン35及びガイドボタン部36が設けられている。
【0022】
図2に於いて、前記PTTボタン35及びその周囲の構造について説明する。該PTTボタン35は、略長方形の外形を有し、外面に操作部が形成されると共に、内面に肉厚部37が形成される様外縁に沿って凹溝38が形成され、更に前記肉厚部37より突出する押下部39が形成されており、該押下部39の先端は後述するPTTスイッチ53に対峙している。
【0023】
前記フロントカバー31の側面には、前記PTTボタン35を嵌合可能なPTTボタン取付け凹部43が凹設され、該PTTボタン取付け凹部43には貫通孔44が形成されている。前記PTTボタン35を前記PTTボタン取付け凹部43に嵌合させた際には、前記押下部39が前記貫通孔44を挿通して前記フロントカバー31内部に突出する様になっており、前記PTTボタン35内面の外縁部と前記PTTボタン取付け凹部43の外縁部とを両面テープにて固着することで、前記PTTボタン35が前記フロントカバー31に固着される。
【0024】
又、一面が開放された箱形状の前記シャーシ30の上面、下面、両側面の全周に亘って矩形の溝48が刻設されており、該溝48に防水パッキン49が嵌設され、該防水パッキン49の一部が前記溝48より突出している。
【0025】
前記シャーシ30には配線基板であるLCD基板51及びRF基板52がネジ等により取付けられ、前記LCD基板51にはPTTスイッチ53が前記押下部39と対向する位置に実装されている。
【0026】
前記ケース34は、前記フロントカバー31の開口部より前記シャーシ30を開口部側から嵌込んだ後にネジ等により固定することで組立てられ、前記ケース34を組立てた際には、前記押下部39の先端面と前記PTTスイッチ53とが当接又は略当接した状態で対峙する様になっている。
【0027】
この時、前記防水パッキン49が前記溝48の底部と前記フロントカバー31の内周面とで圧縮されることで、該フロントカバー31と前記シャーシ30間の防水性が確保されると共に、前記PTTボタン35内面の外縁部と前記PTTボタン取付け凹部43の外縁部とが両面テープにより接着されることで、前記PTTボタン35と前記貫通孔44間の防水性が確保され、前記ケース34内への水の浸入が防止される。
【0028】
図3に於いて、前記ガイドボタン部36及びその周囲の構造について説明する。前記ガイドボタン部36は、前記フロントカバー31より外面に突出する操作部である円板状のガイドボタン36a,36b,36c(図1参照)を有している。又、前記ガイドボタン部36は、前記ガイドボタン36a〜36cの内面にそれぞれ円板状の肉厚部41a〜41c(肉厚部41a,41cは図示せず)が独立して形成されると共に、該肉厚部41a〜41cの中心より内部に向って突出する押下部42a〜42c(押下部42a,42cは図示せず)が形成されている。
【0029】
又、該フロントカバー31の側面には、前記ガイドボタン部36を嵌合可能なガイドボタン部取付け凹部45が凹設されている。該ガイドボタン部取付け凹部45には更に前記肉厚部41a〜41cと対向する位置に、該肉厚部41a〜41cよりも大径な円板状の肉厚部収納凹部46a〜46c(肉厚部収納凹部46a,46cは図示せず)が独立して凹設され、該肉厚部収納凹部46a〜46cの中心には貫通孔47a〜47c(貫通孔47a,47cは図示せず)が形成されている。前記ガイドボタン部36を前記ガイドボタン部取付け凹部45に嵌合させた際には、前記押下部42a〜42cがそれぞれ前記貫通孔47a〜47cを挿通して前記フロントカバー31内部に突出する様になっている。前記ガイドボタン部36内面の外縁部と前記ガイドボタン部取付け凹部45の外縁部とを両面テープにて固着することで、前記ガイドボタン部36が前記フロントカバー31に固着される。
【0030】
尚、前記肉厚部収納凹部46a〜46cの深さは、前記肉厚部41a〜41cの突出長さよりも深くなっており、前記肉厚部収納凹部46a〜46cの底面と前記肉厚部41a〜41cの先端との間に隙間が形成される様になっている。
【0031】
又、前記LCD基板51にガイドスイッチ54a〜54c(ガイドスイッチ54a,54cは図示せず)が、それぞれ前記押下部42a〜42cと対向する位置に実装されており、前記ケース34が組立てられた際には、前記押下部42a〜42cの先端面と前記ガイドスイッチ54a〜54cとがそれぞれ当接又は略当接した状態で対峙する様になっている。
【0032】
この時、前記防水パッキン49により前記フロントカバー31と前記シャーシ30間の防水性が確保されると共に、又前記ガイドボタン部36内面の外縁部と前記ガイドボタン部取付け凹部45の外縁部とが両面テープにより接着されることで、前記ガイドボタン部36と前記貫通孔47a〜47c間の防水性が確保され、前記ケース34内への水の浸入が防止される様になっている。
【0033】
前記携帯無線機33に於いて、例えば前記PTTボタン35を押下すると、該PTTボタン35内面と前記肉厚部37の高さの差分だけ、前記PTTボタン35の前記肉厚部37の周辺部が弾性変形しながら前記フロントカバー31側に押下され、それに伴い前記押下部39により前記PTTスイッチ53が押下され、該PTTスイッチ53が動作する。
【0034】
前記PTTボタン35を開放すると、該PTTボタン35が反発力により元の位置へと戻り、前記PTTスイッチ53も又反発力により元の位置へと戻り、該PTTスイッチ53の動作が解除される。
【0035】
前記ガイドスイッチ54a〜54cも前記PTTスイッチ53と同様に、押下すると前記肉厚部41a〜41cと前記肉厚部収納凹部46a〜46c間の隙間分だけ、前記肉厚部41a〜41cの周辺部が弾性変形しながら前記フロントカバー31側に押下され、前記押下部42a〜42cが前記ガイドスイッチ54a〜54cを押下する。
【0036】
尚、前記肉厚部41a〜41cと前記肉厚部収納凹部46a〜46cとは、それぞれ独立して形成されているので、例えば前記ガイドボタン36bを押下した際に、前記ガイドボタン36a,36cの周辺部が連動して弾性変形し、前記ガイドスイッチ54a,54cが押下されるのを防止している。
【0037】
又、上記では、前記フロントカバー31に予め前記PTTボタン35と前記ガイドボタン部36とを取付けた状態で、前記シャーシ30と前記フロントカバー31とを組立てているが、先ず前記シャーシ30と前記フロントカバー31とを組立て、前記PTTスイッチ53と前記貫通孔44の位置を一致させ、前記ガイドスイッチ54a〜54cと前記貫通孔47a〜47cの位置を一致させた後に、前記PTTボタン35と前記ガイドボタン部36とを前記フロントカバー31に取付けてもよいのは言う迄もない。
【0038】
上述の様に、本実施例では、内面に前記押下部39が形成された前記PTTボタン35を前記フロントカバー31の外面より取付け、又内面に前記押下部42a〜42cが形成された前記ガイドボタン部36を前記フロントカバー31の外面より取付ける構造とし、前記PTTボタン35又は前記ガイドボタン部36が、直接前記PTTスイッチ53又は前記ガイドスイッチ54a〜54cを押下する様にしたので、ボタンとスイッチ間にスイッチパッキン等の別部材を介在させる必要がなく、又ボタンカバーを必要とせず、部品点数の削減によりコストの低減を図ることができる。
【0039】
又、部品点数を削減したことで、ボタンとスイッチの中心位置を合わせるのが容易になり、更にボタンをフロントカバーに取付ける際に超音波溶接を必要とせず、携帯無線機の組立て性を改善することができる。
【0040】
又、前記PTTボタン35及び前記ガイドボタン部36をエラストマ製としたことで、前記PTTボタン35及び前記ガイドボタン部36自体に弾性を持たせることができ、ボタンとスイッチとの間にクッション等の弾性部材を別途設ける必要がない。
【0041】
更に、本実施例では、前記PTTスイッチ53及び前記ガイドスイッチ54a〜54cが直接前記LCD基板51に実装されているので、従来の携帯無線機に於けるFPCや該FPCとLCD基板とを接続するコネクタ類を必要とせず、更に部品点数を削減でき、コストの低減を図ることができる。
【0042】
尚、本実施例では、前記PTTボタン35及び前記ガイドボタン部36とをエラストマ単体にて成形しているが、エラストマとポリアミド等の硬度の高い硬性樹脂との2色成形としてもよい。例えば前記ガイドボタン部36の前記ガイドボタン36a〜36cを硬性樹脂製とし、他の部分をエラストマ製とし、作業者が指で触れる箇所のみが硬性樹脂製となる様にすることで、従来と同様の操作感を得つつ本実施例と同様の効果を発揮することができる。
【0043】
(付記)
又、本発明は以下の実施の態様を含む。
【0044】
(付記1)フロントカバーとシャーシとでケースが組立てられる携帯無線機であって、前記シャーシにスイッチが実装された配線基板が設けられ、前記フロントカバーの外側側面に前記ケース内部に延出する押下部を有する弾性体のボタンが水密に取付けられ、前記押下部が前記スイッチに当接又は略当接することを特徴とする携帯無線機。
【0045】
(付記2)前記ボタンは、操作部を硬性樹脂製とし、それ以外の箇所がエラストマ製となる様2色成形により成形された付記1の携帯無線機。
【0046】
(付記3)前記ボタンは両面テープにより前記フロントカバーの側面に取付けられた付記1の携帯無線機。
【0047】
(付記4)前記シャーシの全周に亘って防水パッキンを設け、前記フロントカバーと前記シャーシとの間に前記防水パッキンを介在させた付記1の携帯無線機。
【符号の説明】
【0048】
30 シャーシ
31 フロントカバー
32 電池パック
33 携帯無線機
34 ケース
35 PTTボタン
36 ガイドボタン部
39 押下部
42 押下部
44 貫通孔
47 貫通孔
51 LCD基板
52 RF基板
53 PTTスイッチ
54 ガイドスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントカバーとシャーシとでケースが組立てられる携帯無線機であって、前記シャーシにスイッチが実装された配線基板が設けられ、前記フロントカバーの外側側面に前記ケース内部に延出する押下部を有する弾性体のボタンが水密に取付けられ、前記押下部が前記スイッチに当接又は略当接することを特徴とする携帯無線機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−199867(P2012−199867A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63904(P2011−63904)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】