説明

携帯無線機

【課題】折りたたみ構造の携帯無線機の上筐体と下筐体を回動自在に連結するヒンジの径を大きくすることなく、上筐体内の回路基板と下筐体内の回路基板を接続する接続線を通すことができる携帯無線機を提供する。
【解決手段】下筐体10と上筐体20とを接続する第1ヒンジ31を、樹脂部材310と導体部材311の2つの部材から構成し、導体部材311を、切欠き部311aを有する円筒の形状とするとともに、下筐体10内に配置された第1無線部101と第1給電部103を介して電気的に接続させ、さらに、導体部材311を上筐体20内のインサート板金202と電磁結合させる。樹脂部材310には、導体部材311の切欠き部311aと係合する突起部310aを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折りたたみ構造の携帯無線機に関する。
【背景技術】
【0002】
折りたたみ構造の携帯無線機には、下筐体に対して上筐体を回動自在に連結させて開閉のみの行える構造のもの、下筐体に対して上筐体を回動自在に連結させるとともに、上筐体を水平方向(上下筐体の開閉方向を垂直方向とする)に180度の回動可能とした構造(スイベル構造と呼ばれる)のもの、縦方向及び横方向のそれぞれの方向に対して折りたたむことができる構造(ダブルオープン構造と呼ばれる)ものがある。
【0003】
折りたたみ構造の携帯無線機の上下それぞれの筐体内には回路基板が配置されており、これらの回路基板はフレキシブルケーブルや細線同軸ケーブル等の接続線で電気的に接続される。この接続線は、上筐体と下筐体を連結するヒンジ内を容易に通すことができるように、ヒンジ構造に工夫がなされている。例えば、特許文献1で開示された携帯電子機器では、コネクタ付きのケーブルやフレキシブルケーブルを通せるように、ヒンジの両側開口部に拡幅部を設けるとともに、傾斜部を設けている。
なお、特許文献2で開示された端末装置では、接続線を使用せず、ヒンジ機構そのものを両筐体間の導通手段としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−111735号公報
【特許文献2】特開2007−305448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1で開示された携帯電子機器においては、コネクタ付きのケーブルやフレキシブルケーブルを通せるだけの径がヒンジに必要となるため、ヒンジ自体が大型になり、それに伴って機器本体が大型になるという課題があった。
【0006】
本発明は、係る事情に鑑みてなされたものであり、折りたたみ構造の携帯無線機の上筐体と下筐体を回動自在に連結するヒンジの径を大きくすることなく、上筐体内に配置された回路基板と下筐体内に配置された回路基板を電気的に接続する接続線を通すことができる携帯無線機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の携帯無線機は、第1筐体と、前記第1筐体と回動可能に接続された第2筐体と、前記第1筐体と前記第2筐体とを接続する第1ヒンジと、前記第1筐体と前記第2筐体とを接続する第2ヒンジと、前記第1筐体内に設けられた第1回路基板と、前記第2筐体内に設けられた第2回路基板と、前記第1ヒンジ内を通り、前記第1回路基板と前記第2回路基板を接続する接続線と、を備えた携帯無線機であって、前記第1ヒンジは樹脂部材と導体部材の2つの部材から構成され、前記導体部材は切欠き部を有する円筒の形状であり、前記第1筐体もしくは前記第2筐体内に配置された第1無線部と第1給電部を介して電気的に接続されており、前記導体部材は前記第1筐体もしくは前記第2筐体内の金属板と電磁結合し、前記樹脂部材は前記導体部材の切欠き部と係合することを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、第1ヒンジを樹脂部材と導体部材の2つの部材から構成し、導体部材には切欠き部を設けたので、第1ヒンジに接続線を容易に通すことができる。勿論、接続線にコネクタが接続された状態であっても容易に通すことができる。また、導体部材は、第1筐体もしくは第2筐体内の金属板と電磁結合するので、アンテナとして用いることもできる。また、第1ヒンジの樹脂部材は、導体部材と接続した際に、導体部材の切欠き部と係合してそれを塞ぐため、接続線が導体部材内で切欠き部に引っかかるのを防止でき、接続線を断線させることがない。
【0009】
上記構成において、前記第1筐体と前記第2筐体とが閉じた状態の際には、前記導体部材の切欠き部は、前記第2筐体内の金属板と近接し、前記第1筐体と前記第2筐体とが開いた状態の際には、前記導体部材の切欠き部は、前記第2筐体内の金属板から離れることを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、第1筐体と第2筐体を開いた状態にすることで、第1ヒンジの導体部材の切欠き部が第2筐体内の金属板から離れる反面、導体部の切欠き部を除く部分が第2筐体内の金属板に近接するので、金属板との間の電磁結合が大きくなり、導体部材をアンテナとして動作させることができる。なお、第1筐体と第2筐体を開いた状態で使用するアプリケーションとして、例えばワンセグ受信がある。第1ヒンジをワンセグ受信用のアンテナとして使用する際、第1筐体と第2筐体を開いた状態にすることで、良好な感度でワンセグ放送を受信することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、折りたたみ構造の携帯無線機の上筐体と下筐体を回動自在に連結するヒンジの径を大きくすることなく、上筐体内に配置された回路基板と下筐体内に配置された回路基板を電気的に接続する接続線を通すことができる。そして、ヒンジの径を大きくすることがないため、携帯無線機が大型化することがない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施の形態に係る携帯無線機の概観を示す斜視図
【図2】図1の携帯無線機のヒンジを含むその周囲の構造を示す斜視図
【図3】図1の携帯無線機の細線同軸ケーブル及び第1ヒンジを上方から見た概観構成を示す斜視図
【図4】図1の携帯無線機の細線同軸ケーブル及び第1ヒンジを下方から見た概観構成を示す斜視図
【図5】図1の携帯無線機の第1ヒンジとその周囲部分を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施の形態に係る携帯無線機の概観を示す斜視図である。同図において、本実施の形態の携帯無線機1は、下筐体(第1筐体)10に対して上筐体(第2筐体)20を回動自在に連結させて開閉のみの行える折りたたみ構造の携帯無線機である。図1の(a)は上下筐体を開いたときの状態であり、図1の(b)は上下筐体を閉じたときの状態である。下筐体10と上筐体20はヒンジ30によって回動自在に接続されている。上筐体20の内面側にはメイン液晶部40が配置されており、上筐体20の外面側にはサブ液晶部41が配置されている。
【0015】
図2は、携帯無線機1のヒンジ30を含むその周囲の構造を示す斜視図である。特に、この図は携帯無線機1の背面側から見た図である。同図において、下筐体10内には、第1無線部101、第1給電部103を実装した第1回路基板104と、第2無線部107、第2給電部106を実装した第2回路基板108と、第2回路基板108の凹状部分108aに配置されたカメラ109とが配置されている。第1回路基板104は略L字状に形成され、第2回路基板108は略凹状に形成されている。第1回路基板104は、第2回路基板108上に積層配置されている。
【0016】
上筐体20内には、メイン液晶部40とサブ液晶部41を電気的に接続する第3回路基板201と、メイン液晶部40を補強するためのインサート板金(金属板)202とが配置されている。インサート板金202は、ヒンジ30を含む上筐体20内の略全域に亘る大きさに形成されている。下筐体10内に配置された第2回路基板108と上筐体20内に配置された第3回路基板201は細線同軸ケーブル(接続線)50で電気的に接続されている。ヒンジ30は、第1ヒンジ31と第2ヒンジ32の2つの部材から構成されており、第1ヒンジ31は図2に向かって左側に、第2ヒンジ32は図2に向かって右側にと筐体幅方向に対して離隔するように配置されている。第1ヒンジ31は、例えばワンセグ用のダイポールアンテナの励振器として用いられ、第1給電板金102及び第1給電部103を介して第1無線部101に接続される。第2ヒンジ32は、例えばセルラ用のモノポールアンテナとして用いられ、第2給電板金105及び第2給電部106を介して第2無線部107に接続される。第2ヒンジ32は、導体部材から構成される。このように第1ヒンジ31と第2ヒンジ32が筐体幅方向に対して離隔するように配置されることにより、第1ヒンジ31を用いたダイポールアンテナと、第2ヒンジ32を用いたモノポールアンテナのアイソレーションが確保でき、アンテナ間の電磁結合によるアンテナ利得劣化を低減することができる。
【0017】
また、第1給電板金102と第1無線部101を接続する第1給電部103が、第1回路基板104、第2給電板金105と第2無線部107を接続する第2給電部106が、第2回路基板108というように異なる回路基板に給電部を備えることにより、第1ヒンジ31を用いたダイポールアンテナの放射に寄与するアンテナ電流は第1回路基板104に、第2ヒンジ32を用いたモノポールアンテナの放射に寄与するアンテナ電流が第2回路基板108にと、異なる基板に主に流れる。それにより各アンテナ間のアイソレーションが向上するので、アンテナ間での電磁結合によるアンテナ利得の劣化量がさらに低減する。
【0018】
図3は、細線同軸ケーブル50及び第1ヒンジ31を上方から見た概観構成を示す斜視図である。図4は、細線同軸ケーブル50及び第1ヒンジ31を下方から見た概観構成を示す斜視図である。図3及び図4において、第1ヒンジ31は、樹脂を用いて形成された樹脂部材310と、金属を用いて形成された導体部材311の2つの部材から構成される。導体部材311は、切欠き部311aを有する円筒形状に形成されており、下筐体10内に配置された第1無線部101と第1給電板金102及び第1給電部103を介して電気的に接続される。導体部材311の径は、細線同軸ケーブル50を通すことができる大きさになっている。樹脂部材310は、導体部材311を収容できる大きさ及び形状に形成されており、また導体部材311の切欠き部311aと係合する突起部310aを有している。樹脂部材310と導体部材311は、樹脂部材310内に導体部材311の一部を挿入することで一体化する。
【0019】
細線同軸ケーブル50の一端には上筐体20内の第3回路基板201に接続するためのコネクタ60が接続されており、他端には下筐体10内の第2回路基板108に接続するためのコネクタ61が接続されている。第1ヒンジ31の導体部材311に切欠き部311aを形成したことで、細線同軸ケーブル50の他端にコネクタ61を接続した状態で細線同軸ケーブル50を第1ヒンジ31に通すことができる。このように、第1ヒンジ31の導体部材311に切欠き部311aを形成することで、第1ヒンジ31の径を大きくすることなく、細線同軸ケーブル50にコネクタ61を接続した状態で、細線同軸ケーブル50を第1ヒンジ31に容易に通すことができる。
【0020】
第1ヒンジ31の樹脂部材310に導体部材311の切欠き部311aに係合する突起部310aを形成したことで、第1ヒンジ31内で細線同軸ケーブル50が導体部材311の切欠き部311aに引っかかることがない。これにより、第1ヒンジ31内で細線同軸ケーブル50を断線させることがない。
【0021】
第1ヒンジ31の導体部材311は、上筐体20内のインサート板金202寄りに位置するので、インサート板金202と電磁結合してダイポール動作する。第1ヒンジ31の導体部材311とインサート板金202との電磁結合が、下筐体10と上筐体20を開いた状態のときに大きくなるように、導体部材311の切欠き部311aの向きを規定している。
【0022】
図5は、第1ヒンジ31とその周囲部分を示す断面図であり、(a)は下筐体10と上筐体20が閉じた状態、(b)は下筐体10と上筐体20が開いた状態である。なお、図5において、上筐体20の第1ヒンジ31部分には、ヒンジカバー70が両面テープ71にて固定されている。図5の(a)に示すように、下筐体10と上筐体20が閉じた状態のときは、第1ヒンジ31の導体部材311の切欠き部311aがインサート板金202と略対向するので、切欠き部311aが有る分だけ、導体部材311とインサート板金202が重なる面積が小さくなる。このときの導体部材311とインサート板金202の電磁結合量は、切欠き部311aがインサート板金202と対向しないときと比べて小さくなる。一方、図5の(b)に示すように、下筐体10と上筐体20が開いた状態のときは、第1ヒンジ31の導体部材311の切欠き部311aがインサート板金202と対向しないので、導体部材311とインサート板金202が重なる面積が大きくなり、導体部材311とインサート板金202の電磁結合量は、前記の場合より大きくなる。このように、導体部材311の切欠き部311aの向きを規定することで、下筐体10と上筐体20が開いた状態のときに導体部材311をアンテナとして十分に作用させることができる。前述したように第1ヒンジ31をワンセグ用のダイポールアンテナの励振器として用いるので、ワンセグ放送を見るときは下筐体10と上筐体20が開いた状態にすることから、導体部材311の切欠き部311aの向きを上述のように規定するのが望ましい。
【0023】
このように本実施の形態の携帯無線機1によれば、下筐体10と上筐体20とを接続する第1ヒンジ31を樹脂部材310と導体部材311の2つの部材から構成し、導体部材311には切欠き部311aを設けたので、第1回路基板104と第3回路基板201を接続する細線同軸ケーブル50を、コネクタ61を接続した状態でも第1ヒンジ31に容易に通すことができる。また、導体部材311を、上筐体20内のインサート板金202と電磁結合させるので、第1ヒンジ31をアンテナとして用いることができる。また、第1ヒンジ31の樹脂部材310に、導体部材311の切欠き部311aと係合する突起部310aを設けたので、導体部材311と接続した際に、突起部310aが導体部材311の切欠き部311aを塞ぐことから、細線同軸ケーブル50が導体部材311内で切欠き部311aに引っかかるのを防止でき、細線同軸ケーブル50を断線させることがない。
【0024】
また、本実施の形態の携帯無線機1によれば、下筐体10と上筐体20を開いた状態にすることで、第1ヒンジ31の導体部材311の切欠き部311aが上筐体20内のインサート板金202から離れ、切欠き部311aを除く部分が上筐体20内のインサート板金202に近接するので、導体部材311とインサート板金202の電磁結合量を大きくとることができ、導体部材311をワンセグ受信用のアンテナとして動作させることができる。これにより、下筐体10と上筐体20を開いた状態で、良好な感度でワンセグ放送を受信することが可能となる。
【0025】
なお、本実施の形態の携帯無線機1では、第1回路基板104及び第2回路基板108を下筐体10内に配置し、第3回路基板201を上筐体20内に配置したが、逆であっても構わない。すなわち、第1回路基板104及び第2回路基板108を上筐体20内に配置し、第3回路基板201を下筐体10内に配置してもよい。
【0026】
また、本実施の形態の携帯無線機1は、下筐体10に対して上筐体20を回動自在に連結させて開閉のみの行える構造のものであったが、下筐体に対して上筐体を回動自在に連結させるとともに、上筐体を水平方向に180度の回動可能としたスイベル構造のものや、縦方向及び横方向のそれぞれの方向に対して折りたたむことができるダブルオープン構造のものにも勿論適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、折りたたみ構造の携帯無線機の上筐体と下筐体を回動自在に連結するヒンジの径を大きくすることなく、上筐体内に配置された回路基板と下筐体内に配置された回路基板を電気的に接続する接続線を通すことができるといった効果を有し、折りたたみ構造の携帯電話機等の携帯無線機への適用が可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 携帯無線機
10 下筐体
20 上筐体
30 ヒンジ
31 第1ヒンジ
32 第2ヒンジ
40 メイン液晶部
41 サブ液晶部
50 細線同軸ケーブル
60,61 コネクタ
101 第1無線部
102 第1給電板金
102a 第1給電板金の延設部
103 第1回給電部
104 第1回路基板
105 第2給電板金
106 第2給電部
107 第2無線部
108 第2回路基板
109 カメラ
201 第3回路基板
202 インサート板金
310 樹脂部材
310a 突起部
311 導体部材
311a 切欠き部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1筐体と、前記第1筐体と回動可能に接続された第2筐体と、前記第1筐体と前記第2筐体とを接続する第1ヒンジと、前記第1筐体と前記第2筐体とを接続する第2ヒンジと、前記第1筐体内に設けられた第1回路基板と、前記第2筐体内に設けられた第2回路基板と、前記第1ヒンジ内を通り、前記第1回路基板と前記第2回路基板を接続する接続線と、を備えた携帯無線機であって、
前記第1ヒンジは樹脂部材と導体部材の2つの部材から構成され、
前記導体部材は切欠き部を有する円筒の形状であり、前記第1筐体もしくは前記第2筐体内に配置された第1無線部と第1給電部を介して電気的に接続されており、
前記導体部材は前記第1筐体もしくは前記第2筐体内の金属板と電磁結合し、
前記樹脂部材は前記導体部材の切欠き部と係合することを特徴とする携帯無線機。
【請求項2】
請求項1に記載の携帯無線機であって、
前記第1筐体と前記第2筐体とが閉じた状態の際には、前記導体部材の切欠き部は、前記第2筐体内の金属板と近接し、前記第1筐体と前記第2筐体とが開いた状態の際には、前記導体部材の切欠き部は、前記第2筐体内の金属板から離れることを特徴とする携帯無線機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−21611(P2013−21611A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155087(P2011−155087)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】