説明

携帯物の落下防止用安全ロープ

【目的】
落下防止用安全ロープの本体たる伸縮螺旋ロープの引き延ばされた螺旋状部が初期位置に復帰するとき、該螺旋状部の螺旋ロープ間に生じた空間に外部の薄状部材などが入り込んでいても、該薄状部材を螺旋ロープ間に挟み込んで(食い付いて)しまうことをゼロに等しくできる携帯物の落下防止用安全ロープを提供できるようにする。
【解決手段】
落下防止用安全ロープの本体たる伸縮螺旋ロープ1の螺旋状部2における螺旋内空2aに伸縮螺旋ロープ1の動きに追従可能な弾性ロープ3を設け、且つ、前記螺旋状部2が少なくとも初期位置の縮んでいる状態のとき、前記弾性ロープ3の外周面が螺旋内空2a側の伸縮螺旋ロープ1面に略接触して位置させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯する物品の地上落下を阻止するための柔軟な伸縮螺旋ロープからなる落下防止用安全ロープに関し、特に、使用中などに螺旋状部の外部部材への食い付きをゼロに等しくできる携帯物の落下防止用安全ロープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯物の落下防止用安全ロープは、工具や携帯電話機などの被携帯物と同被携帯物の携帯者とを接続して、これら携帯物を不注意などで落としてしまった場合でも落下を途中で止め、該携帯物が少なくとも地上まで到達しないようにしている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
また、落下防止用安全ロープは、被携帯物を使用しない時にロープが邪魔にならないよう本体に柔軟な伸縮螺旋ロープを用いて構成することが多いが、しかしながら、この伸縮螺旋ロープは、該伸縮螺旋ロープの螺旋状部が初期位置の縮んだ状態になっているときには邪魔にならないといった大なる長所がある反面、引き延ばされた螺旋状部が初期位置の縮んだ状態に復帰するとき、該螺旋状部の螺旋ロープ間に生じた空間に外部の薄状部材などが入り込んでいると、螺旋状部の縮退と共に該螺旋ロープ間に薄状部材を挟み込んで(食い付いて)しまうことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−111857号公報
【特許文献2】登録実用新案第3076054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的とするところは、落下防止用安全ロープの本体たる伸縮螺旋ロープの引き延ばされた螺旋状部が初期位置に復帰するとき、該螺旋状部の螺旋ロープ間に生じた空間に外部の薄状部材などが入り込んでいても、該薄状部材を螺旋ロープ間に挟み込んで(食い付いて)しまうことをゼロに等しくできる携帯物の落下防止用安全ロープを提供できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明に係る携帯物の落下防止用安全ロープの要旨とするところは、伸縮螺旋ロープからなる本体両端部に、携帯者および被携帯物にそれぞれ連結する連結手段を備える携帯物の落下防止用ロープであって、前記伸縮螺旋ロープの少なくとも螺旋状部の螺旋内空に、該伸縮螺旋ロープの動きに追従可能な弾性ロープが設けられ、且つ、螺旋状部が少なくとも初期位置の縮んだ状態のとき、該弾性ロープの外周面が前記螺旋内空側のロープ面に略接触してなることを特徴とするものである。
【0007】
本発明を更に詳しく説明すると、落下防止用安全ロープの本体となる伸縮螺旋ロープは、同安全ロープの使用形態や被携帯物に合わせて螺旋状部の各螺旋が所定の曲率(大径や小径)で形成され、また該螺旋状部の両端部からそれぞれ延設する相当な長さの直線部の両端部に、携帯者および被携帯物にそれぞれ連結するための例えばリングやフックなどの連結手段を設けている。
【0008】
前記伸縮螺旋ロープは、該ロープ面を形状や素材の性質(材質や物性)また表面処理などによって滑らかにする場合があり、具体的には、伸縮螺旋ロープが樹脂素材などの成型により形成される場合は、少なくとも伸縮螺旋ロープの螺旋状部における少なくとも外方側を、該外方に突出する略半球状や略横V字状に形成し、あるいは、伸縮螺旋ロープ自体を断面略円形状に形成する。
【0009】
また伸縮螺旋ロープは、細径の線材を複数束ねてこの周囲を絶縁素材などで被覆して形成する場合もあって、この場合も、該被複を形状や素材の性質(材質や物性)また表面処理などによって滑らかにする場合があり、具体的には、少なくとも螺旋状部における被覆の螺旋外方側を、該外方に突出する略半球状や略横V字状に形成し、あるいは、被覆外面を断面略円形状に形成する。
【0010】
そして、前述する細径の線材は、本落下防止用安全ロープの応用形態に合わせて用いればよく、例えば、工具などの重い携帯物用にする場合は、金属やアラミド繊維などから形成された強靭な線材を選定し、携帯電話機などの軽い携帯物用にする場合は、ナイロンなどの合成繊維から形成された線材を選定すればよい。
【0011】
また、前述する細径の線材を複数束ねての束ねてとは、少なくとも複数の線材を並列状にまとめた状態や適当に撚り合わせた状態を意味するものである。
【0012】
そして、前記弾性ロープは、落下防止用安全ロープの本体となる伸縮螺旋ロープの螺旋状部の螺旋内空を通過して設けていて、且つ、該弾性ロープが前記伸縮螺旋ロープの動きに追従できるよう、前記螺旋状部の螺旋内空外方に位置する該弾性ロープの両遊端部寄りにそれぞれ固定した接続部材を、該螺旋状部の前後に設けた伸縮螺旋ロープの直線部にそれぞれ接続している。
【0013】
この弾性ロープは、外力によって伸びまた外力を除くともとに戻る性質を有する物質から形成されているロープであり、天然ゴムや合成ゴム(エラストマー/シリコーンなど)素材からなる単伸縮線から形成するのが望ましいが、この単伸縮線を複数束ねた撚り伸縮線や、少なくとも柔軟性を有した伸縮チューブなどから形成する場合もある。また、前記素材は弾性を有しているのが普通である。
【0014】
また、落下防止用安全ロープの本体となる伸縮螺旋ロープにおける螺旋状部が少なくとも初期位置の縮んでいる状態のときは、該螺旋状部の螺旋内空を通過する前記弾性ロープも初期位置の縮んでいる状態に近い状態にするのが望ましい。
【0015】
さらに、落下防止用安全ロープの本体となる伸縮螺旋ロープの螺旋状部が少なくとも初期位置の縮んでいる状態のときは、該螺旋状部の螺旋内空を通過する前記弾性ロープの外周面が前記螺旋内空側のロープ面に略接触するように、該弾性ロープの径もこれに合わせて選定する。
【0016】
また、弾性ロープの両遊端部寄りにそれぞれ固定される接続部材は、該接続部材に備える少なくとも1つの押圧体を前記弾性ロープの周面に喰い込ませることにより該弾性ロープに固定されるもので、例えば、接続部材の本体を2つ割りのケースから構成すると共に該ケースの一方に押圧体を形成して、ケースの組み合わせにより該押圧体が前記弾性ロープの周面に喰い込むように構成すればよい。
前記ケースには、弾性ロープのケース内セット位置を決める位置決め手段を設けるのが望ましい。
【0017】
また押圧体を複数設けて、弾性ロープの周面に2方向以上から喰い込ませるようにしたり、軸方向の周面に複数喰い込ませるようにしてもよく、さらに、この喰い込ませる位置を同一周回線上や、弾性ロープの軸方向に段違いに、また螺旋状に配設してもよい。
【0018】
前記押圧体の押圧部は、弾性ロープを傷付けることがないように、例えば、頭部を半球状などの滑らかな形状にしておくのが望ましい。
また、押圧体の喰い込み深度は、弾性ロープの柔軟度により好適な深度に調整すればよい。
【0019】
また、弾性ロープの押圧体が喰い込む部位よりも接続部材に進入する側の該弾性ロープの周面や端面を、加熱や溶解また接着剤などで硬化させてもよい。
【0020】
そして、前述する接続部材は伸縮螺旋ロープの直線部に接続されるが、該接続は、該接続部材が移動不可に前記直線部に固定的に接続してもよいが、接続部材を螺旋状部内に進入不可の形状や大きさなどにしている場合は、前記直線部上を自由移動可能に接続してもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の携帯物の落下防止用安全ロープによれば、落下防止用安全ロープの本体となる伸縮螺旋ロープの引き延ばされた螺旋状部の螺旋ロープ間に生じた空間に外部の薄状部材などが入り込んでいる状態でこの螺旋状部が初期位置の縮んだ状態に復帰する場合でも、該薄状部材を該螺旋ロープ間に挟み込んで(食い付いて)しまうことがゼロに等しくなる。
【0022】
また、落下防止用安全ロープの本体となる伸縮螺旋ロープを長にする場合などは、前記螺旋状部に捩れが生じている状態で初期位置の縮んだ状態に復帰するときでも、捩れた一方の螺旋ロープが他方の螺旋ロープ間に進入することをゼロに等しくできて、後に螺旋状部が伸ばされるとき該螺旋状部がスムースに伸びる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る携帯物の落下防止用安全ロープの初期位置の状態を示す図。
【図2】伸縮螺旋ロープの拡大断面図。
【図3】図1中に示す符合A−Aの拡大断面図。
【図4】引き延ばされた伸縮螺旋ロープの状態を示す図。
【図5】接続部材の構成を示す斜視図。
【図6】伸縮螺旋ロープの初期位置復帰時の動作を示す図。
【図7】図6(c)の一部拡大図。
【図8】弾性ロープと接続部材との接続状を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る携帯物の落下防止用安全ロープを、添付図面に示す具体例に基づいて詳細に説明する。
【0025】
本落下防止用安全ロープは、図1に示すように、該落下防止用安全ロープの本体たる伸縮螺旋ロープ1における螺旋状部2の螺旋内空2a(図4を参照)に、弾性ロープ3を設け、且つ、該伸縮螺旋ロープ1の両端部に、携帯者および被携帯物にそれぞれ連結するためのフック4、4を設けている。
【0026】
なお、弾性ロープ3は、同両端に固定される接続部材5、5がそれぞれ伸縮螺旋ロープ1の両端にそれぞれ延伸する直線部6、6に接続されて、伸縮螺旋ロープ1の動きに追動できるようにしている(図4を参照)。
【0027】
また伸縮螺旋ロープ1は、図2に示すように、所定径のワイヤロープ1aの周囲を樹脂被覆7する断面略円形状にしていて、且つ、樹脂被覆7は表面が滑らかであると共に、該伸縮螺旋ロープ1の柔軟動作を阻害しないように柔軟性を有している。
【0028】
また、弾性ロープ3は、図3に示すように、柔軟性を有する断面略円形の単伸縮線にしていて、また、伸縮螺旋ロープ1の螺旋状部2が初期位置の縮んでいる図1の状態にあるときに、該弾性ロープ3の外周面が螺旋内空2a側の伸縮螺旋ロープ1面に接触できる断面径にしている(図4を参照)。
【0029】
図5は接続部材5を示していて、同図5中の上図で、該接続部材5は、半ケース8、8aからなっていて、半ケース8に、弾性ロープ3に喰い込ませる押圧体9と、弾性ロープ3の位置決め部10を備え、また半ケース8aに、押圧体9に押圧される弾性ロープ3の受け部11と、弾性ロープ3の位置決め部10aを備えている。
【0030】
また、符合12(図5中の下図を参照)は、半ケース8、8aを固定するための固定ねじ、符合13は、ねじ通孔14に通した固定ねじ12の雄ねじ部12aと螺合する雌ねじ孔、符合15、15aは、接続部材5を伸縮螺旋ロープ1の両端にそれぞれ延伸される直線部6に取り付ける係着溝部である。
【0031】
以下、上述のように構成した本発明に係る落下防止用安全ロープの作用を、図6にて説明する。
【0032】
図6中(a)は、引き延ばした伸縮螺旋ロープ1における螺旋状部2(図4を参照)の螺旋ロープ間に生じた空間から外部の薄状部材16が螺旋内空2aに入り込んでいる状態を示している。
【0033】
そして、図6中の(b)に示すように、外部の薄状部材16が螺旋内空2aに入り込んでいる状態のまま螺旋状部2(図4を参照)が初期位置の縮んだ状態に復帰(図中の矢印)して行くと、この螺旋状部2の縮退とともに螺旋状部2の緊張が解除され、且つ、螺旋内空2aに設けた弾性ロープ3の緊張も解除されて、該弾性ロープ3が同弾性力により螺旋ロープ間の空間に入り込んでいる外部の薄状部材16を押圧(図中の符合B)する。
【0034】
そして、上記弾性ロープ3が薄状部材16を押圧すると、この図6中の(b)に示している押圧による反動(図中の矢印)で弾性ロープ3が押圧の反対方向に移動して、且つ、この移動によって接触した螺旋ロープも共に移動させながら、螺旋状部2および弾性ロープ3が初期位置の縮んだ状態に復帰して行く。
【0035】
次いで、螺旋状部2および弾性ロープ3が初期位置の縮んだ状態に復帰して行くと、それぞれが初期位置の縮んだ状態に復帰した時点の図6中(c)の状態になり、その後、螺旋状部2における薄状部材16を挟んでいる部位における螺旋ロープの復帰(図中の矢印)によってこの薄状部材16を挟んでいる部位の螺旋ロープ(伸縮螺旋ロープ1)が薄状部材16から外れ、図6中(d)のように、薄状部材16を挟み込んでいない状態で伸縮螺旋ロープ1の螺旋状部2(図4を参照)と共に弾性ロープ3が初期位置の縮んだ状態に復帰する。
【0036】
また、前述する図6中(c)の状態、すなわち螺旋状部2および弾性ロープ3が初期位置の縮んだ状態に復帰した時点から薄状部材16を挟んでいる螺旋ロープが容易に復帰できるようにするため、螺旋ロープたる伸縮螺旋ロープ1を被覆する樹脂被覆7の外面を曲面状(曲面7a)にすることで同外面を滑らかにして、初期位置に近い螺旋ロープの小なる復帰力でも十分に薄状部材16から離脱できるようにしている(図7を参照)。
【0037】
図8は、弾性ロープ3と半ケース8、8aからなる接続部材5との接続状態を示していて、該接続は、半ケース8と半ケース8aの固定により、該半ケース8、8aにセットした弾性ロープ3の表面から内方に向かって半ケース8に設けた押圧体9が喰い込むので、該押圧体9による押圧力すなわち弾性ロープ3を保持しようする力が押圧部に集中して、該弾性ロープ3をしっかりと保持することができる。
そして、図8に示している弾性ロープ3は、遊端寄りの周面と端面を硬化(硬化部17)させているものである。
【符号の説明】
【0038】
1 伸縮螺旋ロープ
1a ワイヤロープ
2 螺旋状部
2a 螺旋内空
3 弾性ロープ
4 フック
5 接続部材
6 直線部
7 樹脂被覆
7a 曲面7a
8 半ケース
8a 半ケース
9 押圧体
10 位置決め部
10a 位置決め部
11 受け部
12 固定ねじ
12a 雄ねじ部
13 雌ねじ孔
14 ねじ通孔
15 係着溝部
15a 係着溝部
16 薄状部材
17 硬化部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮螺旋ロープからなる本体両端部に、携帯者および被携帯物にそれぞれ連結する連結手段を備える携帯物の落下防止用ロープであって、前記伸縮螺旋ロープの少なくとも螺旋状部の螺旋内空に、該伸縮螺旋ロープの動きに追従可能な弾性ロープが設けられ、且つ、螺旋状部が少なくとも初期位置の縮んだ状態のとき、該弾性ロープの外周面が前記螺旋内空側のロープ面に略接触してなることを特徴とする携帯物の落下防止用安全ロープ。
【請求項2】
前記弾性ロープは、前記螺旋状部の螺旋内空外方に位置する該弾性ロープの両遊端部寄りにそれぞれ固定した接続部材を、該螺旋状部の前後にそれぞれ有する伸縮螺旋ロープの直線部にそれぞれ接続することにより、該伸縮螺旋ロープの動きに追従可能にしてなることを特徴とする請求項1の携帯物の落下防止用安全ロープ。
【請求項3】
前記接続部材は、該接続部材に備える少なくとも1つの押圧体を前記弾性ロープの周面に喰い込ませることで該弾性ロープに固定してなることを特徴とする請求項2の携帯物の落下防止用安全ロープ。
【請求項4】
前記弾性ロープにおける前記押圧体が喰い込む部位よりも接続部材に進入する先頭側部分の一部を硬化させてなることを特徴とする請求項3の携帯物の落下防止用安全ロープ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−22678(P2013−22678A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159342(P2011−159342)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000165882)原度器株式会社 (43)
【Fターム(参考)】