携帯用作業機
【課題】作業者の身体的負荷の軽減及び作業環境の改善を図ったフロントハンドル構造を有する携帯用作業機を提供する。
【解決手段】
携帯用作業機は、フロントハンドルを伸縮可能な構造とし、作業者の体格に対して適切なハンドル全長および切削位置からの間隔を確保することができるよう構成されている。また、エンジン工具本体にホイールを設置し、伸張状態のフロントハンドルをキャリングハンドルとして機能させることにより、運搬時の身体負荷を軽減させる。
【解決手段】
携帯用作業機は、フロントハンドルを伸縮可能な構造とし、作業者の体格に対して適切なハンドル全長および切削位置からの間隔を確保することができるよう構成されている。また、エンジン工具本体にホイールを設置し、伸張状態のフロントハンドルをキャリングハンドルとして機能させることにより、運搬時の身体負荷を軽減させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯用作業機に関し、特に本体の前後にハンドルを備えた携帯用作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術における携帯用作業機のフロントハンドル構造の例を図1、2を用いて説明する。携帯用作業機を使用する際、作業者はスロットルレバー2を有するリアハンドル3を片手で保持、もう一方の手でフロントハンドル4を保持し作業を行う。この時の作業者が保持している位置を示したものが後方保持位置3aおよび前方保持位置4aである。このような例は特許文献1によっても示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭63−190311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フロントハンドル4はパイプを曲げ加工して作成され、底部固定具5および側部固定具6によりエンジン工具本体1に固定されている。フロントハンドル4は一部品により構成され、エンジン工具本体1と前方保持位置4aの位置関係を調整することは出来ない。
【0005】
アスファルトの切削等低位置での作業が要求される大型エンジン工具の場合、その工具フロントハンドルの長さによっては作業者に無理な作業姿勢が要求され、作業者の腰・脚部などに過剰な負荷が掛かっている。また、大型エンジン工具はその切削能力に比例して重量も大きく、長距離の運搬は作業者の疲労をもたらす。さらに、切削作業時には大量の粉塵が作業者近辺にまで飛散し、呼吸する空気の汚染や衣服への付着等の問題を抱えている。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、作業者の身体負荷の軽減・作業環境の改善を図った携帯用作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明にかかる携帯用作業機は、ハウジングと、前記ハウジングに支持された駆動源と、前記駆動源により駆動され、前記ハウジングの一方側に設けられる作業刃と、前記ハウジングの他方側に設けられるリヤハンドルと、前記ハウジングを囲むように設けられたフロントハンドルと、を備え、前記フロントハンドルは、前記ハウジングとの間に間隔を有するとともに、前記間隔が調節可能とされていることを特徴とする。
【0008】
また、前記フロントハンドルは、前記ハウジングを挟んだ両側面でそれぞれ複数位置で固定可能に設けられていてもよい。
【0009】
また、前記ハウジングは、前記作業刃と前記リヤハンドルを結ぶ軸線と略垂直な方向に延びる固定パイプを備え、前記フロントハンドルは、前記固定パイプに摺動可能に設けられていてもよい。
【0010】
また、前記ハウジングは、前記把持部と反対側に突出可能な第1の車輪を備えていてもよい。 また、前記第1の車輪は、前後方向において前記ハウジングの前記作業刃側に設けられ、前記ハウジングは、前記ハウジングの前記リヤハンドル側に第2の車輪を更に備えていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、作業者の身体負荷を軽減・作業環境の改善を図った携帯用作業機を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】従来技術における携帯用作業機の上面図
【図2】従来技術における携帯用作業機の正面図
【図3】本発明の実施形態を示す正面図
【図4】本発明の実施形態を示す上面図
【図5】本発明におけるフロントハンドルの最伸張状態
【図6】本発明におけるフロントハンドルの最短縮状態
【図7】図5のA‐A断面図
【図8】図7のB‐B断面図
【図9】図7のC‐C断面図
【図10】図7からロックピンを押し込んだ状態を示す断面図
【図11】図7からフロントハンドルを一段短縮した状態を示す断面図
【図12】本発明における工具運搬形態
【図13】図10のD‐D断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を添付図面に沿って説明する。図3に示すように、携帯用作業機(以下、エンジンカッタ)20は、2サイクルエンジン(駆動源)21を支持する本体ハウジング1(ハウジング)を備える。本体ハウジング1は、エンジン21の出力を調整するスロットルトリガ2が配置されたリアハンドル3と、フロントハンドル4を備える。また、本体ハウジング1は、リアハンドル3の延出方向である後方側(図の左方向)と逆方向の前方側(図の右方向)に延び、本体ハウジング1と離れた側の端部に円板状のカッター8が回転可能に取付けられたアーム9を備える。
【0014】
図4に示すように、アーム9の両端部には、カッター8の回転軸に取付けられたカッター側プーリ(従動プーリ)24と、エンジン21の出力軸に図示しない遠心クラッチを介して接続されるエンジン側プーリ(駆動プーリ)22とがそれぞれ回転可能に支持される。カッター側プーリ24とエンジン側プーリ22とにはベルト23が巻き掛けられ、エンジン21の出力はエンジン側プーリ22からベルト23、カッター側プーリ24を経由してカッター8に伝達される。尚、本明細書では作業者がチェンソー1を保持した際を基準に、図中に示す方向を前後、上下左右方向と定義して説明する。
【0015】
フロントハンドル4は、ハウジング1の周囲を覆うように設けられ、上方にハウジング1と間隔dを有する把持部4aが設けられている。図5に示すように、フロントハンドル4は、作業者が把持するための把持部4aを有する可動部10と、エンジン工具本体に固定され、本体ハウジング1を挟んで略平行に延びる固定部(固定パイプ)11とから構成されている。可動部10と固定部11は互いに入れ子構造とし、可動部10を固定部11上で、固定部11の軸線方向に沿って摺動可能に構成されている。図6は、可動部10を固定部11に沿って移動させ、フロントハンドル4を短くした状態を示す図である。以下、フロントハンドル4とハウジング1との間隔dを調整するための位置調整機構について詳細に説明する。
【0016】
図7は、図5におけるA−A断面図である。可動部10は、中空のパイプ材によってU字状に形成され、両端部にハウジング1からみて外方に向かって開口する開口部17を備えている。また、可動部10の開口部17には、後述するロックピン15が設けられている。また、図8及び図9については、それぞれ図7におけるB−B断面図及びC−C断面図である。
【0017】
固定部11は、可動部10より小径パイプ材を曲げ加工して形成されており、固定部11の軸線に沿って、直線状の溝18及び直線状の溝と重なる位置で等間隔に形成された溝18より幅の大きな円形の孔部19が形成されている。固定部11は、可動部10に挿入されると共に、可動部10に設けられたロックピン15が溝18もしくは孔部19に位置するよう構成されている。
【0018】
ロックピン15は、可動部10から開口部17を介して一部が突出した状態で設けられており、固定部11に対して摺動可能なスプリング16によって、パイプ外方に向かって付勢されている。ロックピン15はフロントハンドル4と垂直な軸線において円筒状に形成され、可動部10の開口部17及び固定部11の溝部18より幅の小さな小径部15aと、可動部10の開口部17及び固定部11の溝部18より幅が大きく、固定部11の孔部19より幅が小さい大径部15bを備えて構成されている。図7の状態では、ロックピン15bが孔部19に収まることで、可動部10が固定部11に対して固定されている。
【0019】
次に、フロントハンドル4を伸縮する際の方法、即ち先述の図5の状態から図6の状態とする方法について説明する。図7の状態において、作業者は、可動部10の開口部17から突出して露出したロックピン15を外方から押し込むことで、図10の状態とすることができる。図10の状態においては、溝部18と軸線方向で重なるのが小径部15aとなることで、固定が解除された状態となる。作業者は、ロックピン15を押圧した状態を保ったまま(図10の状態のまま)、可動部10を固定部11に沿って下方に移動させ、固定部11に形成された他の孔部19と、開口部17が重なる位置で押圧を開放することにより、ロックピン15が孔部19に嵌り込み、可動部10と固定部11が固定される(図11)。尚、作業者は、孔部19と孔部19の間の溝部18の位置で押圧を開放してもよく、この状態で作業者が可動部10を移動させると、次に孔部19と大径部15bとが重なった位置で自動的に固定状態へ移行する所謂セルフラッチとして作用する。
【0020】
孔部19は、溝部18に沿って等間隔に複数設けられていることから、段階的にフロントハンドル4の全長を伸縮することが出来る。尚、同様の位置調整機構はエンジン工具本体の左右両側に計二箇所配置されるため、作業者はエンジンカッタ20のハウジング1を挟んで両側において、ロックピン15を同時に押し込みながら可動部10を調節する。
【0021】
本発明の実施形態に記載のエンジンカッタ20は、図12に示すように、リアハンドル3の底部に後方車輪12を配置し、これはロック機能を制御するロックレバー13を有し、さらにハウジング1の底部には引出し式の前方車輪14が設けられている。前方車輪14は、クランク軸25の両端に回転可能に設けられ、クランク軸25は、ハウジング1より大きな幅を有する中央部26が突曲して形成されるとともに、中央部26をハウジング1の底部に回転固定可能に配設されることにより、車輪14を収納可能となっている。後方車輪12はロック機能を制御するロックレバー13を有すると共に、前方車輪14が引き出し式となっていることから、使用時以外には車輪の回転が起きない構成となっている。
【0022】
本構成によれば、フロントハンドルを伸縮可能な構造とし、作業者の体格に対して適切なハンドル全長および切削位置からの間隔を確保することにより作業者の体格・姿勢に最適なハンドル全長・保持位置に調整が可能である。
【0023】
また、備え付けのロックピンを押し込むだけの構造でフロントハンドル長さの固定・解除が可能であることから、ナットやボルトを締め付ける作業を必要とせず、道具無しでフロントハンドル4の全長を段階的に伸縮することが可能である。また、フロントハンドル4の延長機能により、作業者と切削位置との間隔が広がり、作業者への飛散する粉塵による空気汚染の影響を軽減し、作業環境を改善することができる。また、フロントハンドルの全長は予め定められた所定の間隔で調節できることから、位置調節が容易となる。
【0024】
さらに、位置調整機構をハウジング1の左右両側に配置することによ、フロントハンドルの位置調整操作に両手を使用する必要が生じ、これによりスロットルレバー2が確実に開放された状態で位置調整が行われるため、位置調整中に回転刃が駆動することを防ぐことができ、作業性を向上させることができる。
【0025】
加えて、ロックレバー13を用いて後方車輪12のロックを解除し、前方車輪14をエンジン工具本体1の外側に引出した状態で、最も伸張した状態のフロントハンドルをキャリングハンドルとして用いることで、携帯用作業機20をころ移動させることができ、運搬時に作業者に掛かる身体負荷の軽減を可能としている。
【0026】
なお、本発明の携帯用作業機は、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。
【0027】
例えば、位置調整機構は、ロックピン15を用いた構成としたが、公知のパイプ固定方法を用いてもよく、ノブ付きの締付ボルトを押し込み、ボルトの端面を固定部11に押し付けることにより、固定するような構造としてもよい。また、本明細書で説明した携帯用作業機20は、2サイクルエンジンを搭載した構成であったが、4サイクルエンジンでもよく、又は電動機を備えたものであってもよい。また、本発明は、実施形態において説明したエンジンカッタに限らず、チェーンソー等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 ハウジング
2 スロットルレバー
3 リアハンドル
3a 後方保持位置
4 フロントハンドル
4a 前方保持位置
5 底部固定具
6 側部固定具
7 ブレードガード
8 ブレード(作業刃)
9 動力伝達部
10 フロントハンドル保持部
11 フロントハンドル固定部
12 後方車輪
13 ロックレバー
14 前方車輪
15 位置調整突起
16 スプリング
20 エンジンカッタ(携帯用作業機)
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯用作業機に関し、特に本体の前後にハンドルを備えた携帯用作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術における携帯用作業機のフロントハンドル構造の例を図1、2を用いて説明する。携帯用作業機を使用する際、作業者はスロットルレバー2を有するリアハンドル3を片手で保持、もう一方の手でフロントハンドル4を保持し作業を行う。この時の作業者が保持している位置を示したものが後方保持位置3aおよび前方保持位置4aである。このような例は特許文献1によっても示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭63−190311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フロントハンドル4はパイプを曲げ加工して作成され、底部固定具5および側部固定具6によりエンジン工具本体1に固定されている。フロントハンドル4は一部品により構成され、エンジン工具本体1と前方保持位置4aの位置関係を調整することは出来ない。
【0005】
アスファルトの切削等低位置での作業が要求される大型エンジン工具の場合、その工具フロントハンドルの長さによっては作業者に無理な作業姿勢が要求され、作業者の腰・脚部などに過剰な負荷が掛かっている。また、大型エンジン工具はその切削能力に比例して重量も大きく、長距離の運搬は作業者の疲労をもたらす。さらに、切削作業時には大量の粉塵が作業者近辺にまで飛散し、呼吸する空気の汚染や衣服への付着等の問題を抱えている。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、作業者の身体負荷の軽減・作業環境の改善を図った携帯用作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明にかかる携帯用作業機は、ハウジングと、前記ハウジングに支持された駆動源と、前記駆動源により駆動され、前記ハウジングの一方側に設けられる作業刃と、前記ハウジングの他方側に設けられるリヤハンドルと、前記ハウジングを囲むように設けられたフロントハンドルと、を備え、前記フロントハンドルは、前記ハウジングとの間に間隔を有するとともに、前記間隔が調節可能とされていることを特徴とする。
【0008】
また、前記フロントハンドルは、前記ハウジングを挟んだ両側面でそれぞれ複数位置で固定可能に設けられていてもよい。
【0009】
また、前記ハウジングは、前記作業刃と前記リヤハンドルを結ぶ軸線と略垂直な方向に延びる固定パイプを備え、前記フロントハンドルは、前記固定パイプに摺動可能に設けられていてもよい。
【0010】
また、前記ハウジングは、前記把持部と反対側に突出可能な第1の車輪を備えていてもよい。 また、前記第1の車輪は、前後方向において前記ハウジングの前記作業刃側に設けられ、前記ハウジングは、前記ハウジングの前記リヤハンドル側に第2の車輪を更に備えていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、作業者の身体負荷を軽減・作業環境の改善を図った携帯用作業機を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】従来技術における携帯用作業機の上面図
【図2】従来技術における携帯用作業機の正面図
【図3】本発明の実施形態を示す正面図
【図4】本発明の実施形態を示す上面図
【図5】本発明におけるフロントハンドルの最伸張状態
【図6】本発明におけるフロントハンドルの最短縮状態
【図7】図5のA‐A断面図
【図8】図7のB‐B断面図
【図9】図7のC‐C断面図
【図10】図7からロックピンを押し込んだ状態を示す断面図
【図11】図7からフロントハンドルを一段短縮した状態を示す断面図
【図12】本発明における工具運搬形態
【図13】図10のD‐D断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を添付図面に沿って説明する。図3に示すように、携帯用作業機(以下、エンジンカッタ)20は、2サイクルエンジン(駆動源)21を支持する本体ハウジング1(ハウジング)を備える。本体ハウジング1は、エンジン21の出力を調整するスロットルトリガ2が配置されたリアハンドル3と、フロントハンドル4を備える。また、本体ハウジング1は、リアハンドル3の延出方向である後方側(図の左方向)と逆方向の前方側(図の右方向)に延び、本体ハウジング1と離れた側の端部に円板状のカッター8が回転可能に取付けられたアーム9を備える。
【0014】
図4に示すように、アーム9の両端部には、カッター8の回転軸に取付けられたカッター側プーリ(従動プーリ)24と、エンジン21の出力軸に図示しない遠心クラッチを介して接続されるエンジン側プーリ(駆動プーリ)22とがそれぞれ回転可能に支持される。カッター側プーリ24とエンジン側プーリ22とにはベルト23が巻き掛けられ、エンジン21の出力はエンジン側プーリ22からベルト23、カッター側プーリ24を経由してカッター8に伝達される。尚、本明細書では作業者がチェンソー1を保持した際を基準に、図中に示す方向を前後、上下左右方向と定義して説明する。
【0015】
フロントハンドル4は、ハウジング1の周囲を覆うように設けられ、上方にハウジング1と間隔dを有する把持部4aが設けられている。図5に示すように、フロントハンドル4は、作業者が把持するための把持部4aを有する可動部10と、エンジン工具本体に固定され、本体ハウジング1を挟んで略平行に延びる固定部(固定パイプ)11とから構成されている。可動部10と固定部11は互いに入れ子構造とし、可動部10を固定部11上で、固定部11の軸線方向に沿って摺動可能に構成されている。図6は、可動部10を固定部11に沿って移動させ、フロントハンドル4を短くした状態を示す図である。以下、フロントハンドル4とハウジング1との間隔dを調整するための位置調整機構について詳細に説明する。
【0016】
図7は、図5におけるA−A断面図である。可動部10は、中空のパイプ材によってU字状に形成され、両端部にハウジング1からみて外方に向かって開口する開口部17を備えている。また、可動部10の開口部17には、後述するロックピン15が設けられている。また、図8及び図9については、それぞれ図7におけるB−B断面図及びC−C断面図である。
【0017】
固定部11は、可動部10より小径パイプ材を曲げ加工して形成されており、固定部11の軸線に沿って、直線状の溝18及び直線状の溝と重なる位置で等間隔に形成された溝18より幅の大きな円形の孔部19が形成されている。固定部11は、可動部10に挿入されると共に、可動部10に設けられたロックピン15が溝18もしくは孔部19に位置するよう構成されている。
【0018】
ロックピン15は、可動部10から開口部17を介して一部が突出した状態で設けられており、固定部11に対して摺動可能なスプリング16によって、パイプ外方に向かって付勢されている。ロックピン15はフロントハンドル4と垂直な軸線において円筒状に形成され、可動部10の開口部17及び固定部11の溝部18より幅の小さな小径部15aと、可動部10の開口部17及び固定部11の溝部18より幅が大きく、固定部11の孔部19より幅が小さい大径部15bを備えて構成されている。図7の状態では、ロックピン15bが孔部19に収まることで、可動部10が固定部11に対して固定されている。
【0019】
次に、フロントハンドル4を伸縮する際の方法、即ち先述の図5の状態から図6の状態とする方法について説明する。図7の状態において、作業者は、可動部10の開口部17から突出して露出したロックピン15を外方から押し込むことで、図10の状態とすることができる。図10の状態においては、溝部18と軸線方向で重なるのが小径部15aとなることで、固定が解除された状態となる。作業者は、ロックピン15を押圧した状態を保ったまま(図10の状態のまま)、可動部10を固定部11に沿って下方に移動させ、固定部11に形成された他の孔部19と、開口部17が重なる位置で押圧を開放することにより、ロックピン15が孔部19に嵌り込み、可動部10と固定部11が固定される(図11)。尚、作業者は、孔部19と孔部19の間の溝部18の位置で押圧を開放してもよく、この状態で作業者が可動部10を移動させると、次に孔部19と大径部15bとが重なった位置で自動的に固定状態へ移行する所謂セルフラッチとして作用する。
【0020】
孔部19は、溝部18に沿って等間隔に複数設けられていることから、段階的にフロントハンドル4の全長を伸縮することが出来る。尚、同様の位置調整機構はエンジン工具本体の左右両側に計二箇所配置されるため、作業者はエンジンカッタ20のハウジング1を挟んで両側において、ロックピン15を同時に押し込みながら可動部10を調節する。
【0021】
本発明の実施形態に記載のエンジンカッタ20は、図12に示すように、リアハンドル3の底部に後方車輪12を配置し、これはロック機能を制御するロックレバー13を有し、さらにハウジング1の底部には引出し式の前方車輪14が設けられている。前方車輪14は、クランク軸25の両端に回転可能に設けられ、クランク軸25は、ハウジング1より大きな幅を有する中央部26が突曲して形成されるとともに、中央部26をハウジング1の底部に回転固定可能に配設されることにより、車輪14を収納可能となっている。後方車輪12はロック機能を制御するロックレバー13を有すると共に、前方車輪14が引き出し式となっていることから、使用時以外には車輪の回転が起きない構成となっている。
【0022】
本構成によれば、フロントハンドルを伸縮可能な構造とし、作業者の体格に対して適切なハンドル全長および切削位置からの間隔を確保することにより作業者の体格・姿勢に最適なハンドル全長・保持位置に調整が可能である。
【0023】
また、備え付けのロックピンを押し込むだけの構造でフロントハンドル長さの固定・解除が可能であることから、ナットやボルトを締め付ける作業を必要とせず、道具無しでフロントハンドル4の全長を段階的に伸縮することが可能である。また、フロントハンドル4の延長機能により、作業者と切削位置との間隔が広がり、作業者への飛散する粉塵による空気汚染の影響を軽減し、作業環境を改善することができる。また、フロントハンドルの全長は予め定められた所定の間隔で調節できることから、位置調節が容易となる。
【0024】
さらに、位置調整機構をハウジング1の左右両側に配置することによ、フロントハンドルの位置調整操作に両手を使用する必要が生じ、これによりスロットルレバー2が確実に開放された状態で位置調整が行われるため、位置調整中に回転刃が駆動することを防ぐことができ、作業性を向上させることができる。
【0025】
加えて、ロックレバー13を用いて後方車輪12のロックを解除し、前方車輪14をエンジン工具本体1の外側に引出した状態で、最も伸張した状態のフロントハンドルをキャリングハンドルとして用いることで、携帯用作業機20をころ移動させることができ、運搬時に作業者に掛かる身体負荷の軽減を可能としている。
【0026】
なお、本発明の携帯用作業機は、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。
【0027】
例えば、位置調整機構は、ロックピン15を用いた構成としたが、公知のパイプ固定方法を用いてもよく、ノブ付きの締付ボルトを押し込み、ボルトの端面を固定部11に押し付けることにより、固定するような構造としてもよい。また、本明細書で説明した携帯用作業機20は、2サイクルエンジンを搭載した構成であったが、4サイクルエンジンでもよく、又は電動機を備えたものであってもよい。また、本発明は、実施形態において説明したエンジンカッタに限らず、チェーンソー等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 ハウジング
2 スロットルレバー
3 リアハンドル
3a 後方保持位置
4 フロントハンドル
4a 前方保持位置
5 底部固定具
6 側部固定具
7 ブレードガード
8 ブレード(作業刃)
9 動力伝達部
10 フロントハンドル保持部
11 フロントハンドル固定部
12 後方車輪
13 ロックレバー
14 前方車輪
15 位置調整突起
16 スプリング
20 エンジンカッタ(携帯用作業機)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングに支持された駆動源と、
前記駆動源により駆動され、前記ハウジングの一方側に設けられる作業刃と、
前記ハウジングの他方側に設けられるリアハンドルと、
前記ハウジングを囲むように設けられたフロントハンドルと、を備え、
前記フロントハンドルは、前記ハウジングとの間に間隔を有するとともに、前記間隔が調節可能とされていることを特徴とする携帯用作業機。
【請求項2】
前記フロントハンドルは、前記ハウジングを挟んだ両側面でそれぞれ複数位置で固定可能に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の携帯用作業機。
【請求項3】
前記ハウジングは、前記作業刃と前記リアハンドルを結ぶ軸線と略垂直な方向に延びる固定パイプを備え、
前記フロントハンドルは、前記固定パイプに摺動可能に設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の携帯用作業機。
【請求項4】
前記ハウジングは、前記把持部と反対側に突出可能な第1の車輪を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうち何れか一項に記載の携帯用作業機。
【請求項5】
前記第1の車輪は、前後方向において前記ハウジングの前記作業刃側に設けられ、
前記ハウジングは、前記ハウジングの前記リアハンドル側に第2の車輪を更に備えることを特徴とする請求項4に記載の携帯用作業機。
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングに支持された駆動源と、
前記駆動源により駆動され、前記ハウジングの一方側に設けられる作業刃と、
前記ハウジングの他方側に設けられるリアハンドルと、
前記ハウジングを囲むように設けられたフロントハンドルと、を備え、
前記フロントハンドルは、前記ハウジングとの間に間隔を有するとともに、前記間隔が調節可能とされていることを特徴とする携帯用作業機。
【請求項2】
前記フロントハンドルは、前記ハウジングを挟んだ両側面でそれぞれ複数位置で固定可能に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の携帯用作業機。
【請求項3】
前記ハウジングは、前記作業刃と前記リアハンドルを結ぶ軸線と略垂直な方向に延びる固定パイプを備え、
前記フロントハンドルは、前記固定パイプに摺動可能に設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の携帯用作業機。
【請求項4】
前記ハウジングは、前記把持部と反対側に突出可能な第1の車輪を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうち何れか一項に記載の携帯用作業機。
【請求項5】
前記第1の車輪は、前後方向において前記ハウジングの前記作業刃側に設けられ、
前記ハウジングは、前記ハウジングの前記リアハンドル側に第2の車輪を更に備えることを特徴とする請求項4に記載の携帯用作業機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−171033(P2012−171033A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33562(P2011−33562)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
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