携帯用拭具
【課題】 水等で濡れた対象物に付着していた水分を拭き取ってそのまま携帯したり、かばん等に収容することができる携帯用拭具の提供。
【解決手段】 水の浸透が防がれる第1内側シート状部B1及び第2内側シート状部B2の表側に、基布に対し多数のパイルが設けられたパイル部を形成し、第1内側シート状部B1及び第2内側シート状部B2の裏側の第1外側シート状部Q1及び第2外側シート状部Q2との間に袋状部を形成する。袋状部を内外反転することにより、基布に対し多数のパイルが設けられたパイル部を含む第1内側シート状部B1及び第2内側シート状部B2の表側部分を取り込む。
【解決手段】 水の浸透が防がれる第1内側シート状部B1及び第2内側シート状部B2の表側に、基布に対し多数のパイルが設けられたパイル部を形成し、第1内側シート状部B1及び第2内側シート状部B2の裏側の第1外側シート状部Q1及び第2外側シート状部Q2との間に袋状部を形成する。袋状部を内外反転することにより、基布に対し多数のパイルが設けられたパイル部を含む第1内側シート状部B1及び第2内側シート状部B2の表側部分を取り込む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水等で濡れた対象物に付着していた水分を拭き取ってそのまま携帯したり、かばん等に収容することができる携帯用拭具に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2003−64555号公報には、水分拭き取り性に優れた合撚複合紡績糸布帛として、単糸繊度が1デシテックス以下の合成繊維マルチフィラメントと紡績糸との合撚合撚複合紡績糸を用いてなる布帛であって、当該布帛の吸水率(%)/吸水速度(秒)が0.50以上であることを特徴とするものが開示されている。
【0003】
この発明によれば、水分を拭取る際に出来るだけ繊維屑を拭取り面に残すこと無く、しかも優れた吸水性、保水性を有することにより、水分の絞り回数が少なくて済み、しかも細かな埃をも拭取ることが出来るものとされている。
【0004】
この布帛は、水分拭き取り性に優れるものであったとしても、水分を拭き取ってそのまま携帯したり、かばん等に収容した場合、衣類やかばん内が濡れてしまうという不都合が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−64555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来技術に存した上記のような課題に鑑み行われたものであって、その目的とするところは、水等で濡れた対象物に付着していた水分を拭き取ってそのまま携帯したり、かばん等に収容することができる携帯用拭具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明の携帯用拭具は、表側から裏側への水の浸透が防がれるシート状部の表側に多数のパイルを有するパイル部が形成され、裏側に袋状部が形成された携帯用拭具であって、
前記パイル部に多数有する各パイルを形成するパイル形成体は、略円柱形状をなし、繊維製の線条体が、パイル形成体の軸線を中心としてほぼ径方向に放射状をなすように密設され且つ軸線方向に密設されてなり、その略円柱形状外周面は、前記各線条体の先端部により形成されており、
前記袋状部は、その内外を反転させることにより、内外反転した袋状部内に前記パイル部を含む前記表側部分を取り込むことができるものであることを特徴とする。
【0008】
この携帯用拭具の表側のパイル部に多数有するパイルを形成するパイル形成体は、略円柱形状をなし、繊維製の線条体(例えば各種合成繊維フィラメント、合成繊維若しくは天然繊維ステープル糸等)が、パイル形成体の軸線を中心としてほぼ径方向に放射状をなすように密設され且つ軸線方向に密設されてなり、その略円柱形状外周面は、前記繊維製の線条体の先端部により形成されている。パイル形成体における繊維製の線条体の密度はパイル形成体の表面部から内方部に向かうほど高くなり、毛管現象により、パイル形成体の内方部に向かって強い吸液力が作用するので、パイルは、繊維製の線条体の先端部が位置する表面部からパイル形成体の内方部に向かって迅速に比較的多量の水(他の成分を含有する水又はその他の液体でもよい)を吸収し得る。
【0009】
水等で濡れた対象物を表側のパイル部において拭いた場合、パイル部のパイルは、対象物に付着していた水分を吸収して保持する。パイルが吸水性に優れ、表側と裏側を画するシート状部は表側から裏側への水の浸透が防がれるものであるため、袋状部の内外を反転させることにより、内外反転した袋状部内に前記パイル部を含む前記表側部分を取り込むことによって、内外反転した袋状部からの水の漏出や滲出が効果的に防がれ、そのまま携帯したり、かばん等に収容する上で好適である。
【0010】
上記パイル形成体は、繊維製の線条体を飾り糸とするモール糸によるループ部が、そのモール糸の芯糸を中心として撚り合わさることにより略円柱形状を形成したものとすることができる。
【0011】
また上記パイル形成体における上記線条体は、0.05乃至0.8デニールの非吸水性のフィラメントであるものとすることが望ましい。
【0012】
この場合の携帯用拭具は、表側から裏側への水の浸透が防がれるシート状部の表側に多数のパイルを有するパイル部が形成され、裏側に袋状部が形成された携帯用拭具であって、
前記パイル部に多数有する各パイルを形成するパイル形成体は、略円柱形状をなし、0.05乃至0.8デニールの非吸水性のフィラメントが、パイル形成体の軸線を中心としてほぼ径方向に放射状をなすように密設され且つ軸線方向に密設されてなり、その略円柱形状外周面は、前記各フィラメントの先端部により形成されており、
前記袋状部は、その内外を反転させることにより、内外反転した袋状部内に前記パイル部を含む前記表側部分を取り込むことができるものである。
【0013】
この携帯用拭具の表側のパイル部に多数有するパイルを形成するパイル形成体は、略円柱形状をなし、0.05乃至0.8デニールの極めて細い非吸水性のフィラメントが、パイル形成体の軸線を中心としてほぼ径方向に放射状をなすように密設され且つ軸線方向に密設されてなり、その略円柱形状外周面は、前記フィラメントの先端部により形成されている。パイル形成体におけるフィラメントの密度はパイル形成体の表面部から内方部に向かうほど高くなり、毛管現象により、パイル形成体の内方部に向かって強い吸液力が作用するので、パイルは、フィラメントの先端部が位置する表面部からパイル形成体の内方部に向かって迅速に比較的多量の水(他の成分を含有する水又はその他の液体でもよい)を吸収し得る。また、各パイルを構成するフィラメントが非吸水性であるという材質と、そのフィラメントがパイル形成体の軸線を中心としてほぼ径方向に放射状をなすように密設され且つ軸線方向に密設され、パイルの略円柱形状外周面は各フィラメントの先端部により形成されているという構造との両者よりして、遠心脱水性等の慣性力による脱水性又はその他の脱水性及び脱水後の乾燥性に優れる。
【0014】
水等で濡れた対象物を表側のパイル部において拭いた場合、パイル部のパイルは、対象物に付着していた水分を吸収して保持する。パイルが吸水性に優れ、表側と裏側を画するシート状部は表側から裏側への水の浸透が防がれるものであるため、袋状部の内外を反転させることにより、内外反転した袋状部内に前記パイル部を含む前記表側部分を取り込むことによって、内外反転した袋状部からの水の漏出や滲出が効果的に防がれ、そのまま携帯したり、かばん等に収容する上で好適である。
【0015】
上記パイル形成体は、0.05乃至0.8デニールの非吸水性のフィラメントを飾り糸とするモール糸によるループ部が、そのモール糸の芯糸を中心として撚り合わさることにより略円柱形状を形成したもの(パイル形成糸)とすることができる。
【0016】
また上記非吸水性のフィラメントは、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリプロピレン系又はポリエチレン系のフィラメントであるものとすることができる。
【0017】
また上記非吸水性のフィラメントは、その吸水率が20℃相対湿度65%において5%以下であるものとすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の携帯用拭具によれば、水等で濡れた対象物を表側のパイル部において拭いた場合、パイル部のパイルは、対象物に付着していた水分を吸収して保持する。袋状部の内外を反転させることにより、内外反転した袋状部内に前記パイル部を含む前記表側部分を取り込むことによって、内外反転した袋状部からの水の漏出や滲出が効果的に防がれ、そのまま携帯したり、かばん等に収容する上で好適である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】模式的断面図である。
【図2】模式的底面図である。
【図3】模式的平面図である。
【図4】収納状態の模式的断面図である。
【図5】パイルが設けられた基布の模式的要部拡大図である。
【図6】パイルの模式的拡大横断面図である。
【図7】モール糸によりパイルを形成する工程の一部を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0021】
図面は何れも本発明の実施の形態の一例としての携帯用拭具についてのものである。
【0022】
携帯用拭具Aは、水の浸透が防がれる第1内側シート状部B1及び第2内側シート状部B2の表側(図1における下側)に、基布に対し多数のパイルが設けられたパイル部が形成され、第1内側シート状部B1及び第2内側シート状部B2の裏側(図1における上側)に、第1外側シート状部Q1及び第2外側シート状部Q2が縫着されることにより、第1内側シート状部B1及び第2内側シート状部B2と第1外側シート状部Q1及び第2外側シート状部Q2の間に袋状部(図1及び図3における右側に開口する袋状部)が形成されてなる。第1内側シート状部B1と第2内側シート状部B2は1枚のシートの図1及び図3におけるそれぞれ左右部であり、第1外側シート状部Q1と第2外側シート状部Q2も、1枚のシートの図1及び図3におけるそれぞれ左右部である。
【0023】
この例では袋状部は第1内側シート状部B1と第2内側シート状部B2の裏側の全体にわたるが、必ずしも裏側全体にわたるものであることを要しない。
【0024】
また、シート状部(第1内側シート状部B1及び第2内側シート状部B2)は、表側から裏側への水の浸透が防がれることが必要である(尤も、完全に浸透が防がれることを要するものではない。)が、通常は表側から裏側への水の浸透も防がれるものが用いられる。シート状部は1枚のシートであることを要しない。
【0025】
袋状部のうち第2内側シート状部B2と第2外側シート状部Q2により形成される部分(図1及び図3における右側、すなわち開口部側の部分)について、第2内側シート状部B2を図1における下方左側へ、第2外側シート状部Q2を図1における上方左側へと反転させることにより、図4に示されるように、内外反転した袋状部内に、基布に対し多数のパイルが設けられたパイル部を含む第1内側シート状部B1及び第2内側シート状部B2の表側部分を取り込むことができる。
【0026】
第1内側シート状部B1と第1外側シート状部Q1の間には、図3における上下、図1における奥と手前に分けて形成された袋状部を有する。開口部から挿入した手指を分けて挿入し得るようにするものである。
【0027】
図1及び図3に二点鎖線で示すように袋状部の開口部(右側)における第2外側シート状部Q2の内側に小袋状部Dを設けておき、図4の状態で左上部に位置する小袋状部Dを下方に反転させることにより、図4における内外反転した袋状部の左側の開口部を更に覆蓋することができる。
【0028】
パイル部を構成する基布には、その全面にわたり多数のパイルPが密に設けられている。
【0029】
吸水用の各パイルPは、略円柱形状をなし、パイルPの基部は基布Sに結合されている。
【0030】
各パイルPは、0.3デニールの非吸水性のポリエステルフィラメントF(なお、フィラメントを用いずにステープル糸等の繊維製の線条体を用いることもできる)を飾り糸とするモール糸Mにより形成されている。すなわち、図7に示すように、基布Sに対し、モール糸Mによるループ部Rを形成した後、ループ部Rを構成するモール糸Mのうち、ループ部Rの一方の基部から端部を構成する部分と他方の基部から端部を構成する部分が、両部分の芯糸Cを中心として撚り合わさることにより、略円柱形状をなすパイル形成体(パイル形成糸)によるパイルPを形成したものである。例えば、強撚モール糸Mを用い、基布Sに対しモール糸Mによるループ部Rを形成した後、熱処理(染色工程における熱処理が好ましい)を行うことにより各ループ部Rがそのモール糸Mの芯糸Cを中心として撚り合わさるものとすることができる。
【0031】
このようにして形成された各パイルPは、略円柱形状をなし、0.3デニールの非吸水性のフィラメントFが、パイルPの軸線を中心としてほぼ径方向に放射状をなすように密設され且つ軸線方向に密設されてなり、パイルPの略円柱形状外周面は、各フィラメントFの先端部により形成される。パイルPの先端部Paは、パイルPを構成する放射状に配されたフィラメントFの先端部により形成された略凸曲面状をなす。
【0032】
パイルPを形成するパイル形成体におけるフィラメントの密度はパイル形成体の表面部から内方部に向かうほど高くなり、毛管現象により、パイル形成体の内方部に向かって強い吸液力が作用するので、パイルPは、フィラメントの先端部が位置する表面部からパイル形成体の内方部に向かって迅速に比較的多量の水(他の成分を含有する水又はその他の液体でもよい)を吸収し得る。また、各パイルPを構成するフィラメントが非吸水性であるという材質と、そのフィラメントがパイル形成体の軸線を中心としてほぼ径方向に放射状をなすように密設され且つ軸線方向に密設され、パイルPの略円柱形状外周面は各フィラメントの先端部により形成されているという構造との両者よりして、遠心脱水性等の慣性力による脱水性又はその他の脱水性及び脱水後の乾燥性に優れる。
【0033】
袋状部に手を挿入して水等で濡れた対象物を第1内側シート状部B1及び第2内側シート状部B2の表側の基布Sに対し多数のパイルPが設けられたパイル部において拭いた場合、パイルPは、対象物に付着していた水分を吸収して保持する。パイルPが吸水性に優れ、表側と裏側を画する第1内側シート状部B1及び第2内側シート状部B2は水の浸透が防がれるものであるため、袋状部のうち第2内側シート状部B2と第2外側シート状部Q2により形成される部分の内外を反転させることにより、内外反転した袋状部内に前記基布Sに対し多数のパイルPが設けられたパイル部を含む前記表側部分を取り込むことによって、内外反転した袋状部からの水の漏出や滲出が効果的に防がれ、そのまま携帯したり、かばん等に収容する上で好適である。
【0034】
パイルPの形状は、例えば軸線方向長さが直径の1.5倍乃至10倍の略円柱形状とすることができる。好ましくは、軸線方向長さが直径の2倍乃至8倍、より好ましくは、軸線方向長さが直径の3倍乃至6倍程度である。パイルPの軸線方向長さは、例えば5乃至40mmとすることができる。好ましくは10乃至30mmである。なお、パイルPの直径は軸線方向にほぼ一定であることが好ましいが、必ずしもこれに限るものではない。
【0035】
吸水用のパイルPは、0.05乃至0.8デニールの非吸水性のフィラメントを飾り糸とする2本又は3本以上のモール糸が、そのモール糸の芯糸を中心として撚り合わさることにより略円柱形状を形成したパイル形成糸(パイル形成体)等により形成したループパイルPとすることもできる。
【0036】
パイルPを構成するフィラメントFは、0.05乃至0.8デニールであり、好ましくは0.1乃至0.5デニール、好ましくは0.2乃至0.4デニールである。フィラメントFの材質は、ポリエステル系の他、例えば、ポリアミド系、ポリプロピレン系又はポリエチレン系のフィラメントFを用いることができる。非吸水性のフィラメントの吸水率は、20℃相対湿度65%において5%以下であるものとすることができる。
【0037】
芯糸Cは、吸水性糸および/または非吸水性糸とすることができる。芯糸Cの一部若しくは全部として熱融着糸を用いて飾り糸としてのフィラメントFを融着したモール糸Mの場合、フィラメントFの脱落を確実性高く防ぐことができる。
【0038】
各パイルPは同一形状及び同一サイズであるものとすることができるが、形状及びサイズが異なる複数種のパイルPを備えたものとすることもできる。
【0039】
なお、以上の実施の形態についての記述における構成部品の寸法、個数、材質、形状、その相対配置などは、特にそれらに限定される旨の記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではなく、単なる説明例に過ぎない。
【符号の説明】
【0040】
A 携帯用拭具
B1 第1内側シート状部
B2 第2内側シート状部
C 芯糸
D 小袋状部
F フィラメント
M モール糸
P パイル
Pa 先端部
Q1 第1外側シート状部
Q2 第2外側シート状部
R ループ部
S 基布
【技術分野】
【0001】
本発明は、水等で濡れた対象物に付着していた水分を拭き取ってそのまま携帯したり、かばん等に収容することができる携帯用拭具に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2003−64555号公報には、水分拭き取り性に優れた合撚複合紡績糸布帛として、単糸繊度が1デシテックス以下の合成繊維マルチフィラメントと紡績糸との合撚合撚複合紡績糸を用いてなる布帛であって、当該布帛の吸水率(%)/吸水速度(秒)が0.50以上であることを特徴とするものが開示されている。
【0003】
この発明によれば、水分を拭取る際に出来るだけ繊維屑を拭取り面に残すこと無く、しかも優れた吸水性、保水性を有することにより、水分の絞り回数が少なくて済み、しかも細かな埃をも拭取ることが出来るものとされている。
【0004】
この布帛は、水分拭き取り性に優れるものであったとしても、水分を拭き取ってそのまま携帯したり、かばん等に収容した場合、衣類やかばん内が濡れてしまうという不都合が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−64555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来技術に存した上記のような課題に鑑み行われたものであって、その目的とするところは、水等で濡れた対象物に付着していた水分を拭き取ってそのまま携帯したり、かばん等に収容することができる携帯用拭具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明の携帯用拭具は、表側から裏側への水の浸透が防がれるシート状部の表側に多数のパイルを有するパイル部が形成され、裏側に袋状部が形成された携帯用拭具であって、
前記パイル部に多数有する各パイルを形成するパイル形成体は、略円柱形状をなし、繊維製の線条体が、パイル形成体の軸線を中心としてほぼ径方向に放射状をなすように密設され且つ軸線方向に密設されてなり、その略円柱形状外周面は、前記各線条体の先端部により形成されており、
前記袋状部は、その内外を反転させることにより、内外反転した袋状部内に前記パイル部を含む前記表側部分を取り込むことができるものであることを特徴とする。
【0008】
この携帯用拭具の表側のパイル部に多数有するパイルを形成するパイル形成体は、略円柱形状をなし、繊維製の線条体(例えば各種合成繊維フィラメント、合成繊維若しくは天然繊維ステープル糸等)が、パイル形成体の軸線を中心としてほぼ径方向に放射状をなすように密設され且つ軸線方向に密設されてなり、その略円柱形状外周面は、前記繊維製の線条体の先端部により形成されている。パイル形成体における繊維製の線条体の密度はパイル形成体の表面部から内方部に向かうほど高くなり、毛管現象により、パイル形成体の内方部に向かって強い吸液力が作用するので、パイルは、繊維製の線条体の先端部が位置する表面部からパイル形成体の内方部に向かって迅速に比較的多量の水(他の成分を含有する水又はその他の液体でもよい)を吸収し得る。
【0009】
水等で濡れた対象物を表側のパイル部において拭いた場合、パイル部のパイルは、対象物に付着していた水分を吸収して保持する。パイルが吸水性に優れ、表側と裏側を画するシート状部は表側から裏側への水の浸透が防がれるものであるため、袋状部の内外を反転させることにより、内外反転した袋状部内に前記パイル部を含む前記表側部分を取り込むことによって、内外反転した袋状部からの水の漏出や滲出が効果的に防がれ、そのまま携帯したり、かばん等に収容する上で好適である。
【0010】
上記パイル形成体は、繊維製の線条体を飾り糸とするモール糸によるループ部が、そのモール糸の芯糸を中心として撚り合わさることにより略円柱形状を形成したものとすることができる。
【0011】
また上記パイル形成体における上記線条体は、0.05乃至0.8デニールの非吸水性のフィラメントであるものとすることが望ましい。
【0012】
この場合の携帯用拭具は、表側から裏側への水の浸透が防がれるシート状部の表側に多数のパイルを有するパイル部が形成され、裏側に袋状部が形成された携帯用拭具であって、
前記パイル部に多数有する各パイルを形成するパイル形成体は、略円柱形状をなし、0.05乃至0.8デニールの非吸水性のフィラメントが、パイル形成体の軸線を中心としてほぼ径方向に放射状をなすように密設され且つ軸線方向に密設されてなり、その略円柱形状外周面は、前記各フィラメントの先端部により形成されており、
前記袋状部は、その内外を反転させることにより、内外反転した袋状部内に前記パイル部を含む前記表側部分を取り込むことができるものである。
【0013】
この携帯用拭具の表側のパイル部に多数有するパイルを形成するパイル形成体は、略円柱形状をなし、0.05乃至0.8デニールの極めて細い非吸水性のフィラメントが、パイル形成体の軸線を中心としてほぼ径方向に放射状をなすように密設され且つ軸線方向に密設されてなり、その略円柱形状外周面は、前記フィラメントの先端部により形成されている。パイル形成体におけるフィラメントの密度はパイル形成体の表面部から内方部に向かうほど高くなり、毛管現象により、パイル形成体の内方部に向かって強い吸液力が作用するので、パイルは、フィラメントの先端部が位置する表面部からパイル形成体の内方部に向かって迅速に比較的多量の水(他の成分を含有する水又はその他の液体でもよい)を吸収し得る。また、各パイルを構成するフィラメントが非吸水性であるという材質と、そのフィラメントがパイル形成体の軸線を中心としてほぼ径方向に放射状をなすように密設され且つ軸線方向に密設され、パイルの略円柱形状外周面は各フィラメントの先端部により形成されているという構造との両者よりして、遠心脱水性等の慣性力による脱水性又はその他の脱水性及び脱水後の乾燥性に優れる。
【0014】
水等で濡れた対象物を表側のパイル部において拭いた場合、パイル部のパイルは、対象物に付着していた水分を吸収して保持する。パイルが吸水性に優れ、表側と裏側を画するシート状部は表側から裏側への水の浸透が防がれるものであるため、袋状部の内外を反転させることにより、内外反転した袋状部内に前記パイル部を含む前記表側部分を取り込むことによって、内外反転した袋状部からの水の漏出や滲出が効果的に防がれ、そのまま携帯したり、かばん等に収容する上で好適である。
【0015】
上記パイル形成体は、0.05乃至0.8デニールの非吸水性のフィラメントを飾り糸とするモール糸によるループ部が、そのモール糸の芯糸を中心として撚り合わさることにより略円柱形状を形成したもの(パイル形成糸)とすることができる。
【0016】
また上記非吸水性のフィラメントは、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリプロピレン系又はポリエチレン系のフィラメントであるものとすることができる。
【0017】
また上記非吸水性のフィラメントは、その吸水率が20℃相対湿度65%において5%以下であるものとすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の携帯用拭具によれば、水等で濡れた対象物を表側のパイル部において拭いた場合、パイル部のパイルは、対象物に付着していた水分を吸収して保持する。袋状部の内外を反転させることにより、内外反転した袋状部内に前記パイル部を含む前記表側部分を取り込むことによって、内外反転した袋状部からの水の漏出や滲出が効果的に防がれ、そのまま携帯したり、かばん等に収容する上で好適である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】模式的断面図である。
【図2】模式的底面図である。
【図3】模式的平面図である。
【図4】収納状態の模式的断面図である。
【図5】パイルが設けられた基布の模式的要部拡大図である。
【図6】パイルの模式的拡大横断面図である。
【図7】モール糸によりパイルを形成する工程の一部を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0021】
図面は何れも本発明の実施の形態の一例としての携帯用拭具についてのものである。
【0022】
携帯用拭具Aは、水の浸透が防がれる第1内側シート状部B1及び第2内側シート状部B2の表側(図1における下側)に、基布に対し多数のパイルが設けられたパイル部が形成され、第1内側シート状部B1及び第2内側シート状部B2の裏側(図1における上側)に、第1外側シート状部Q1及び第2外側シート状部Q2が縫着されることにより、第1内側シート状部B1及び第2内側シート状部B2と第1外側シート状部Q1及び第2外側シート状部Q2の間に袋状部(図1及び図3における右側に開口する袋状部)が形成されてなる。第1内側シート状部B1と第2内側シート状部B2は1枚のシートの図1及び図3におけるそれぞれ左右部であり、第1外側シート状部Q1と第2外側シート状部Q2も、1枚のシートの図1及び図3におけるそれぞれ左右部である。
【0023】
この例では袋状部は第1内側シート状部B1と第2内側シート状部B2の裏側の全体にわたるが、必ずしも裏側全体にわたるものであることを要しない。
【0024】
また、シート状部(第1内側シート状部B1及び第2内側シート状部B2)は、表側から裏側への水の浸透が防がれることが必要である(尤も、完全に浸透が防がれることを要するものではない。)が、通常は表側から裏側への水の浸透も防がれるものが用いられる。シート状部は1枚のシートであることを要しない。
【0025】
袋状部のうち第2内側シート状部B2と第2外側シート状部Q2により形成される部分(図1及び図3における右側、すなわち開口部側の部分)について、第2内側シート状部B2を図1における下方左側へ、第2外側シート状部Q2を図1における上方左側へと反転させることにより、図4に示されるように、内外反転した袋状部内に、基布に対し多数のパイルが設けられたパイル部を含む第1内側シート状部B1及び第2内側シート状部B2の表側部分を取り込むことができる。
【0026】
第1内側シート状部B1と第1外側シート状部Q1の間には、図3における上下、図1における奥と手前に分けて形成された袋状部を有する。開口部から挿入した手指を分けて挿入し得るようにするものである。
【0027】
図1及び図3に二点鎖線で示すように袋状部の開口部(右側)における第2外側シート状部Q2の内側に小袋状部Dを設けておき、図4の状態で左上部に位置する小袋状部Dを下方に反転させることにより、図4における内外反転した袋状部の左側の開口部を更に覆蓋することができる。
【0028】
パイル部を構成する基布には、その全面にわたり多数のパイルPが密に設けられている。
【0029】
吸水用の各パイルPは、略円柱形状をなし、パイルPの基部は基布Sに結合されている。
【0030】
各パイルPは、0.3デニールの非吸水性のポリエステルフィラメントF(なお、フィラメントを用いずにステープル糸等の繊維製の線条体を用いることもできる)を飾り糸とするモール糸Mにより形成されている。すなわち、図7に示すように、基布Sに対し、モール糸Mによるループ部Rを形成した後、ループ部Rを構成するモール糸Mのうち、ループ部Rの一方の基部から端部を構成する部分と他方の基部から端部を構成する部分が、両部分の芯糸Cを中心として撚り合わさることにより、略円柱形状をなすパイル形成体(パイル形成糸)によるパイルPを形成したものである。例えば、強撚モール糸Mを用い、基布Sに対しモール糸Mによるループ部Rを形成した後、熱処理(染色工程における熱処理が好ましい)を行うことにより各ループ部Rがそのモール糸Mの芯糸Cを中心として撚り合わさるものとすることができる。
【0031】
このようにして形成された各パイルPは、略円柱形状をなし、0.3デニールの非吸水性のフィラメントFが、パイルPの軸線を中心としてほぼ径方向に放射状をなすように密設され且つ軸線方向に密設されてなり、パイルPの略円柱形状外周面は、各フィラメントFの先端部により形成される。パイルPの先端部Paは、パイルPを構成する放射状に配されたフィラメントFの先端部により形成された略凸曲面状をなす。
【0032】
パイルPを形成するパイル形成体におけるフィラメントの密度はパイル形成体の表面部から内方部に向かうほど高くなり、毛管現象により、パイル形成体の内方部に向かって強い吸液力が作用するので、パイルPは、フィラメントの先端部が位置する表面部からパイル形成体の内方部に向かって迅速に比較的多量の水(他の成分を含有する水又はその他の液体でもよい)を吸収し得る。また、各パイルPを構成するフィラメントが非吸水性であるという材質と、そのフィラメントがパイル形成体の軸線を中心としてほぼ径方向に放射状をなすように密設され且つ軸線方向に密設され、パイルPの略円柱形状外周面は各フィラメントの先端部により形成されているという構造との両者よりして、遠心脱水性等の慣性力による脱水性又はその他の脱水性及び脱水後の乾燥性に優れる。
【0033】
袋状部に手を挿入して水等で濡れた対象物を第1内側シート状部B1及び第2内側シート状部B2の表側の基布Sに対し多数のパイルPが設けられたパイル部において拭いた場合、パイルPは、対象物に付着していた水分を吸収して保持する。パイルPが吸水性に優れ、表側と裏側を画する第1内側シート状部B1及び第2内側シート状部B2は水の浸透が防がれるものであるため、袋状部のうち第2内側シート状部B2と第2外側シート状部Q2により形成される部分の内外を反転させることにより、内外反転した袋状部内に前記基布Sに対し多数のパイルPが設けられたパイル部を含む前記表側部分を取り込むことによって、内外反転した袋状部からの水の漏出や滲出が効果的に防がれ、そのまま携帯したり、かばん等に収容する上で好適である。
【0034】
パイルPの形状は、例えば軸線方向長さが直径の1.5倍乃至10倍の略円柱形状とすることができる。好ましくは、軸線方向長さが直径の2倍乃至8倍、より好ましくは、軸線方向長さが直径の3倍乃至6倍程度である。パイルPの軸線方向長さは、例えば5乃至40mmとすることができる。好ましくは10乃至30mmである。なお、パイルPの直径は軸線方向にほぼ一定であることが好ましいが、必ずしもこれに限るものではない。
【0035】
吸水用のパイルPは、0.05乃至0.8デニールの非吸水性のフィラメントを飾り糸とする2本又は3本以上のモール糸が、そのモール糸の芯糸を中心として撚り合わさることにより略円柱形状を形成したパイル形成糸(パイル形成体)等により形成したループパイルPとすることもできる。
【0036】
パイルPを構成するフィラメントFは、0.05乃至0.8デニールであり、好ましくは0.1乃至0.5デニール、好ましくは0.2乃至0.4デニールである。フィラメントFの材質は、ポリエステル系の他、例えば、ポリアミド系、ポリプロピレン系又はポリエチレン系のフィラメントFを用いることができる。非吸水性のフィラメントの吸水率は、20℃相対湿度65%において5%以下であるものとすることができる。
【0037】
芯糸Cは、吸水性糸および/または非吸水性糸とすることができる。芯糸Cの一部若しくは全部として熱融着糸を用いて飾り糸としてのフィラメントFを融着したモール糸Mの場合、フィラメントFの脱落を確実性高く防ぐことができる。
【0038】
各パイルPは同一形状及び同一サイズであるものとすることができるが、形状及びサイズが異なる複数種のパイルPを備えたものとすることもできる。
【0039】
なお、以上の実施の形態についての記述における構成部品の寸法、個数、材質、形状、その相対配置などは、特にそれらに限定される旨の記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではなく、単なる説明例に過ぎない。
【符号の説明】
【0040】
A 携帯用拭具
B1 第1内側シート状部
B2 第2内側シート状部
C 芯糸
D 小袋状部
F フィラメント
M モール糸
P パイル
Pa 先端部
Q1 第1外側シート状部
Q2 第2外側シート状部
R ループ部
S 基布
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表側から裏側への水の浸透が防がれるシート状部の表側に多数のパイルを有するパイル部が形成され、裏側に袋状部が形成された携帯用拭具であって、
前記パイル部に多数有する各パイルを形成するパイル形成体は、略円柱形状をなし、繊維製の線条体が、パイル形成体の軸線を中心としてほぼ径方向に放射状をなすように密設され且つ軸線方向に密設されてなり、その略円柱形状外周面は、前記各線条体の先端部により形成されており、
前記袋状部は、その内外を反転させることにより、内外反転した袋状部内に前記パイル部を含む前記表側部分を取り込むことができるものであることを特徴とする携帯用拭具。
【請求項2】
上記パイル形成体が、繊維製の線条体を飾り糸とするモール糸によるループ部が、そのモール糸の芯糸を中心として撚り合わさることにより略円柱形状を形成したものである請求項1記載の携帯用拭具。
【請求項3】
上記パイル形成体における上記線条体が0.05乃至0.8デニールの非吸水性のフィラメントである請求項1又は2記載の携帯用拭具。
【請求項4】
上記パイル形成体が、0.05乃至0.8デニールの非吸水性のフィラメントを飾り糸とするモール糸によるループ部が、そのモール糸の芯糸を中心として撚り合わさることにより略円柱形状を形成したものである請求項3記載の携帯用拭具。
【請求項5】
上記非吸水性のフィラメントが、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリプロピレン系又はポリエチレン系のフィラメントである請求項3又は4記載の携帯用拭具。
【請求項6】
上記非吸水性のフィラメントの吸水率が、20℃相対湿度65%において5%以下である請求項3又は4記載の携帯用拭具。
【請求項1】
表側から裏側への水の浸透が防がれるシート状部の表側に多数のパイルを有するパイル部が形成され、裏側に袋状部が形成された携帯用拭具であって、
前記パイル部に多数有する各パイルを形成するパイル形成体は、略円柱形状をなし、繊維製の線条体が、パイル形成体の軸線を中心としてほぼ径方向に放射状をなすように密設され且つ軸線方向に密設されてなり、その略円柱形状外周面は、前記各線条体の先端部により形成されており、
前記袋状部は、その内外を反転させることにより、内外反転した袋状部内に前記パイル部を含む前記表側部分を取り込むことができるものであることを特徴とする携帯用拭具。
【請求項2】
上記パイル形成体が、繊維製の線条体を飾り糸とするモール糸によるループ部が、そのモール糸の芯糸を中心として撚り合わさることにより略円柱形状を形成したものである請求項1記載の携帯用拭具。
【請求項3】
上記パイル形成体における上記線条体が0.05乃至0.8デニールの非吸水性のフィラメントである請求項1又は2記載の携帯用拭具。
【請求項4】
上記パイル形成体が、0.05乃至0.8デニールの非吸水性のフィラメントを飾り糸とするモール糸によるループ部が、そのモール糸の芯糸を中心として撚り合わさることにより略円柱形状を形成したものである請求項3記載の携帯用拭具。
【請求項5】
上記非吸水性のフィラメントが、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリプロピレン系又はポリエチレン系のフィラメントである請求項3又は4記載の携帯用拭具。
【請求項6】
上記非吸水性のフィラメントの吸水率が、20℃相対湿度65%において5%以下である請求項3又は4記載の携帯用拭具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2010−279451(P2010−279451A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−133566(P2009−133566)
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【出願人】(000178583)山崎産業株式会社 (77)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【出願人】(000178583)山崎産業株式会社 (77)
【Fターム(参考)】
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