説明

携帯用紙箱

【課題】内箱に形成された係合部が外箱の開口部から外部に露出しないようにし、外観を損なうこと、破損を生じること、及び、内部に収納している紙の汚損を防止し、組立作業を簡略化する。
【解決手段】紙31を取り出すスリット状の開口部2aを備えた内箱1と、該内箱1を引き出し式に挿入する外箱11とで構成し、内箱1の背面3の下端部に外側に折り曲げた内箱側折曲片3aを形成し、外箱11の背面12の上端部に内側に折り曲げた外箱用折曲片12aを形成した。内箱側折曲片3aと外箱用折曲片12aとが外箱11の内部で係合することにより、外箱11の上面側への内箱1の引き出し範囲が規制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば化粧用の脂取り紙等の複数枚の紙を収納する携帯用紙箱の構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
図4は、従来の携帯用紙箱の構成を示す外観図である。紙箱41は、紙45を収納する収納部42と蓋部43とから成り、収納部42には内部の紙45を取り出すためのスリット状の開口部44が設けられている。また、蓋部43の先端の中央には凸部43aが設けられており、収納部42の対向する部分には凸部43aと同じ幅の切込み部42aが設けられている。収納部42に収められた紙45は1枚ずつ噛み合わせた状態で折り重ねられており、1枚引き抜くと次の紙の先端が開口部44から出るようになっている。このため、使用しない時には凸部43aを切込み部42aに挿入して蓋をすることにより、次の紙が汚れたり破れたりすることを防止している。
【0003】
ところが、このような紙箱では蓋をする際、蓋の凸部を切込み部に挿入するのが困難であったり、開ける際に凸部が切込み部からうまく抜けず、蓋が破れたりすることがあった。また、長期間使用している間に凸部が破れたり、切込み部が広がって凸部を挿入したにも関わらず蓋が開いてしまう等の問題があった。
【0004】
このため、出願人は、図5に示すように、収納された紙を取り出すスリットを備えた内箱31と、該内箱31を引き出し式に挿入する外箱32と、で構成され、内箱31および外箱32に内箱31を抜脱しない位置で係止する係合部33及び開口部34を設けた携帯用紙箱を提案した(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
この構成においては、内箱31が外箱32から引き出され、内箱31の前面に開設されたスリットから、内部31の紙が取り出される。この際内箱31は、内箱31および外箱32の背面に設けられた係合部33と開口部34との係合により係止されて、外箱32から抜脱することはなく、使用後には内箱31が再度挿入されることによりスリットが閉じられる。このため、開閉の際の操作性が良く、使用が長期間におよぶ場合でも破れることなく、最後まできちんと蓋をすることができる。
【特許文献1】実開平05−075179号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された構成では、内箱31に設けられた係合部33が外箱32の開口部34から外部に常時露出する。このため、外観が煩雑なイメージになるだけでなく、収納時や取り出し時に係合部33が引っ掛かり、破損を生じ易い問題がある。また、係合部33が紙を収納している内箱31の背面から切り起こされているため、外箱32から内箱31を引き出した際に、内箱31における係合部33の切り起こし部分35から内箱31の内部が外部に露出し、内箱31に収納されている紙が汚損される可能性がある。さらに、紙箱の組立時において外箱32内に内箱31を収納する際に、係合部33を外箱32の開口部34から外部に露出させなければならず、組立作業が煩雑になる問題がある。
【0007】
この発明の目的は、開閉の際の操作性が良く、使用が長期間におよぶ場合でも破れることなく、最後まできちんと蓋をすることができる携帯用紙箱であって、内箱に形成された係合部が外箱の開口部から外部に露出することがなく、外観を損なうことがないとともに、破損を生じることがなく、内部に収納している紙の汚損を防止でき、組立作業を容易にすることができる携帯用紙箱を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、この発明の携帯用紙箱は、以下の構成を備えたものである。
【0009】
(1)収納された紙を取り出すスリットを前面に備えた内箱と、該内箱が上面側に引き出し自在にして挿入される外箱と、で構成され、前記内箱の背面における下端部を外側に折り曲げて内箱側折曲片を形成し、前記外箱の背面における上端部を内側に折り曲げて外箱側折曲片を形成したことを特徴とする。
【0010】
この構成においては、背面における下端部を外側に折り曲げることによって内箱側折曲片が形成された内箱が、背面における上端部を内側に折り曲げることによって外箱側折曲片が形成された外箱に、上面側に引き出し自在にして挿入される。外箱に挿入された内箱を上面側に引き出すと、内箱の前面に形成されたスリットが外箱の外部に露出し、内箱の内部に収納された紙がスリットから取り出せる状態になる。このとき、内箱の背面における下端部を外側に折り曲げて形成された内箱側折曲片が、外箱の背面における上端部を内側に折り曲げて形成された外箱側折曲片に、外箱の内部で引っ掛かり、内箱の上面側への移動が規制される。
【0011】
(2)前記前記外箱の前面における上端部を、中央が両端よりも下方になるように形成したことを特徴とする。
【0012】
この構成においては、内箱を外箱の内部に挿入する際に、スリットから一部を露出した状態で収納されている紙が、中央を両端よりも下方になるように形成された外箱の前面の上端部に当接する。したがって、スリットから露出した紙の一部は、両端部から中央に向かって順次外箱の前面の上端部に当接し、外箱の前面の外側に露出することがない。
【発明の効果】
【0013】
上記の構成により、この発明によれば、以下の効果を奏することができる。
【0014】
(1)外箱の上面側から内箱を外箱の内部に一旦挿入すると、内箱を外箱の上面側に引き出した際に、外箱の内部における内箱側折曲片と外箱側折曲片との係合によって内箱の上面側への移動を規制することができる。これによって、内箱に形成された係合部が外箱の開口部から外部に露出することがないため、外観を損なうこと、破損を生じること、及び、内部に収納している紙の汚損を防止し、かつ、組立作業を容易にしつつ、開閉の際の操作性を向上し、長期間にわたって繰り返し使用することができる。
【0015】
(2)内箱を外箱内に収納する際に、スリットから露出した紙の一部が、両端部から中央に向かって順次外箱の前面の上端部に当接するようにし、外箱の前面と内箱の前面との間に確実に収納することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、この発明の実施形態に係る携帯用紙箱の内箱の構成を示す展開図である。内箱1は、厚紙を素材として、差し込み片6、底面8、前面2、上面7、背面3及び内箱側折曲片3aをそれぞれの間に折線を設けて上下方向に連続して形成し、前面2の左右両側に側面4及び折り返し片4aをそれぞれの間に折線を設けて連続して形成し、背面3の左右両側に押し上げ片5を折線を介して連続して形成したものである。内箱1の前面2には、内部に収納された図示しない紙を取り出すためのスリット2aが打ち抜かれている。
【0017】
内箱1は、内箱側折曲片3aを除く、差し込み片6、底面8、上面7、背面3、側面4、折り返し片4a及び押し上げ片5を、前面2を基準にして、各折線で内側に折り曲げ、差し込み片6を押し上げ片5と背面3との間に挿入して紙の収納部を形成する。内箱側折曲片3aは折線において外側に折り曲げる。
【0018】
図2は、上記携帯用紙箱の外箱の構成を示す展開図である。外箱11は、厚紙を素材として、前面13、側面14、背面12、側面14及び糊代片15をそれぞれの間に折線を設けて横方向に連続して形成し、前面の下方に底面18及び折り返し片17をそれぞれの間に折線を設けて連続して形成し、2つの側面14の下方に折り返し片16を折線を介して連続して形成し、背面12の上方に外箱側折曲片12aを折線を介して連続して形成したものである。
【0019】
なお、外箱11の前面13の上端部13aは、中央を両端よりも下方になるように湾曲した形状に形成されている。また、側面14の上端部は、所定の長さにわたって切り欠かれている。
【0020】
外箱11は、背面12を基準として、前面13、側面14、糊代片15、底面18、折り返し片16、折り返し片17及び外箱側折曲片12aを各折線で内側に折り曲げ、糊代片15を底面13に接着して、折り返し16を内側に折った状態で、折り返し17を底面12と折り返し16の間に挿入して組み立てられる。
【0021】
図3は上記携帯用紙箱の断面図であり、同図(A)は内箱を外箱内に収納した状態を示し、同図(B)は内箱を外箱から引き出した状態を示している。内箱1及び外箱11をそれぞれ個別に組み立て、内箱1の内部に所定枚数の紙31を収納する。内箱1は、外箱11の上面側から外箱11の内部に挿入する。
【0022】
このとき、内箱側折曲片3aは、内箱1の外側に折り曲げられているが、内箱1の背面3との間の折線側から外箱11内に挿入される。また、外箱11の内部には外箱11の内側に折り曲げられた外箱側折曲片12aが存在するが、外箱11内に挿入される内箱1は、外箱11の背面12との間の折線側から外箱側折曲片12aに当接する。
【0023】
したがって、内箱1を外箱11の上面側から外箱11の内部に、何ら抵抗なく挿入することができ、図3(A)に示すように、内箱1の底面8が外箱11の底面18に当接するまで挿入することができる。
【0024】
なお、外箱11において側面14の上端部は切り欠かれているため、外箱11の内部に挿入した内箱1の側面4の上端部が外部に露出している。この部分を一方の手の拇指と人差指又は中指とで摘むことにより、外箱11から内箱1を容易に引き出すことができる。
【0025】
内箱1を外箱11の上面側に引き出していくと、内箱側折曲片3aの開放端が、外箱11の背面12と外箱側折曲片12aとの間に進入する。さらに、内箱1を外箱11の上面側に引き出していくと、図3(B)に示すように、外箱側折曲片12aの開放端が、内箱1の背面3と内箱側折曲片3aとに当接する。また、内箱側折曲片3aの開放端が、外箱11の背面12と外箱側折曲片12aとに当接する。これらの当接により、内箱1は、外箱11の上面側にそれ以上引き出せなくなる。
【0026】
このとき、内箱1の前面2に形成されたスリット2aは、外箱11の前面13の上方において外部に露出している。このため、内箱1の内部に収納された紙を、スリット2aを経由して取り出すことができる。
【0027】
内箱1には、紙31が1枚ずつ一部を噛み合わせた状態で折り重ねられて収納されており、1枚引き抜くと次の紙31の先端31aがスリット2aの上方又は下方に交互に露出する。この状態で、内箱1を外箱11の内部に挿入する際には、スリット2aから一部を露出した紙31が、中央を両端よりも下方になるように湾曲して形成された外箱11の前面13の上端部13aに当接する。したがって、スリット2aから露出した紙31の一部は、両端部から中央に向かって順次外箱11の前面13の上端部13aに当接し、外箱11の前面12の外側に露出することなく、内箱1の前面2と外箱11の前面13との間に収納される。
【0028】
上記のように、この実施形態に係る携帯用紙箱においては、外箱11の内部における内箱側折曲片3aと外箱側折曲片12aとの係合により、外箱11の上面側への内箱1の引き出し範囲を規定することができるため、係合部材が外箱11の外部に露出することがない。このため、携帯用紙箱の外観を損なうことや一部に破損を生じること、及び、内部に収納している紙の汚損を防止し、かつ、組立作業を容易にしつつ、開閉の際の操作性を向上し、長期間にわたって繰り返し使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明の実施形態に係る携帯用紙箱の内箱の構成を示す展開図である。
【図2】同携帯用紙箱の外箱の構成を示す展開図である。
【図3】同携帯用紙箱の断面図である。
【図4】従来の携帯用紙箱の外観図である。
【図5】従来の別の携帯用紙箱の外観図である。
【符号の説明】
【0030】
1 内箱
2 前面
2a スリット
3 背面
3a 内箱側折曲片
11 外箱
12 背面
12a 外箱側折曲片
31 紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納された紙を取り出すスリット状の開口部を前面に備えた内箱と、該内箱が上面に引き出し自在にして挿入される外箱と、で構成され、前記内箱の背面における下端部を外側に折り曲げて内箱側折曲片を形成し、前記外箱の背面における上端部を内側に折り曲げて外箱側折曲片を形成したことを特徴とする携帯用紙箱。
【請求項2】
前記前記外箱の前面における上端部を、中央が両端よりも下方になるように形成したことを特徴とする請求項1に記載の携帯用紙箱。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−103741(P2006−103741A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−291770(P2004−291770)
【出願日】平成16年10月4日(2004.10.4)
【出願人】(592061810)株式会社ニチエイ (12)
【Fターム(参考)】