携帯用質量分析のための装置および方法
携帯用質量分析のための方法および装置を開示する。装置は、少なくとも1つのイオン化被分析物源と、少なくとも1つの周波数走査サブシステムと、少なくとも1つの検出器と、随意で、少なくとも1つの真空ポンプとを備え、携帯用である。いくつかの実施形態では、装置は、複数のイオン化被分析物源を備え、および/または少なくとも105のm/z比を伴う被分析物、あるいは少なくとも105Daの分子量を伴う被分析物等の大型被分析物の質量スペクトル、ならびに小分子被分析物の質量スペクトルを取得するように構成されている。いくつかの実施形態では、方法は、上記で説明される携帯用装置を用いて質量スペクトルを取得するステップを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、米国仮特許出願第61/289,531号(2009年12月23日出願)を基礎とする優先権の利益を主張する。該出願の全内容は、参照により本明細書に援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、質量分析の分野に関し、具体的には、小分子被分析物、または高分子量あるいは質量対電荷(m/z)比を伴う被分析物を含むサンプルを使用する、質量分析を含む、携帯用器具を伴う質量分析に関する。
【背景技術】
【0003】
分光分析は、電磁場および放射とのその相互作用に基づいて、被分析物に関する情報を推測する技術である。質量分析(MS)は、その名前が示唆するように、質力の測定に関与する。質量分析計は、それらのうちのいくつかが単一原子の重量を量るため、世界で最も小さいはかりと呼ばれてきた。経時的に、質量分析の使用は、高分子を含む、ますます大きい分子へと拡張されてきた。また、これらの器具のうちのいくつかが携帯用であり、または持ち運びでき、現場で使用することができるように、より軽量かつよりコンパクトな質量分析計を構築することが可能になっているが、これらの器具には深刻な制限がある。
【0004】
質量分析計は、概して、イオン化被分析物源、質量分析器、および検出器を伴う。質量分析器および検出器は、大気に対して減圧下で動作し、該減圧は、真空ポンプによって提供することができる。携帯用器具では、それでもなお高い性能を維持する、軽量かつコンパクトな器具をもたらすように、これらの構成要素を最適化することが重要であり得る。質量分析は、一般に、ますます大きな被分析物に適合するようになってきているため、MSは、生物および化学サンプル中の高分子またはさらに大きい被分析物を識別するように、研究室設定で頻繁に適用されている。ポストゲノム時代では、ますます巨大な高分子アセンブリ、ならびにウイルスおよび全細胞等のさらに大きい生体粒子の特性化に、かつてないほどの関心がある。本発明以前に、携帯用器具を用いたMSに好適な被分析物のサイズの上限は、限定され、強い真空(例えば、<10−5トル)を伴わずに高分子を分析する能力は、さらに限定されていた。したがって、研究室設定の外側、例えば、法医学、生態学、環境、人類学、および考古学の現場作業で、バンベースの臨床またはスクリーニング企業等の移動医療設定で、または発展途上国で、ならびに、例えば、セキュリティ、食品安全性、または環境保護目的で、汚染物質または汚染物のスクリーニングにおいて、大型被分析物を用いたMSを行うことは、困難または不可能であった。しかしながら、そのような携帯用技術の恩恵として、より高速で、その分析力をより入手しやすくすることが挙げられ得る。携帯用器具からの空間および費用の削減はまた、プロテオミクス、ゲノミクス、代謝学、およびバイオマーカ発見等の分野での生物医学研究を含む、研究室用途で、ならびにナノ材料の構造研究および特性化で有用であり得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態は、(a)少なくとも1つのイオン化被分析物源と、(b)少なくとも1つのイオントラップを備えている質量分析器と、(c)少なくとも1つの検出器と、(d)随意で、少なくとも1つの真空ポンプとを備える、質量分析用の装置であり、装置は、携帯用である。
【0006】
本発明の別の実施形態は、(a)被分析物を含むサンプル、および本発明の装置を提供するステップと、(b)装置の少なくとも1つのイオン化被分析物源を使用して、被分析物が中性である場合に、それをイオン化し、それを装置の質量分析器に導入するステップと、(c)そのm/z比に従って被分析物を分別するステップと、(d)そのm/z比に従って分別された被分析物を検出し、それにより、質量スペクトルを取得するステップとを含む、質量スペクトルを取得する方法である。
【0007】
本発明の付加的な目的および利点は、以下に続く説明で部分的に記載され、部分的に説明から明白となり、または本発明の実践によって習得されてもよい。本発明の目的および利点は、添付の請求項で特に指摘されている要素および組み合わせを用いて、実現および達成される。
【0008】
先述の一般的説明および以下の詳細な説明の両方は、例示的および説明的にすぎず、請求されるように、本発明を制限しないことを理解されたい。
【0009】
本明細書に組み込まれ、その一部を構成する、添付図面は、本発明のいくつかの実施形態を図示し、説明とともに、本発明の原則を説明する働きをする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明の先述の側面および利点は、添付図面を参照して、以下の詳細な説明から明白と成り得る。
【図1】図1は、携帯用多重イオン化源生物質量分析計の構成要素の略図である。レーザ1は、2つの鏡2および3に向かって方向付けられるビームを発する。鏡2は、いくらかのレーザ光が鏡3へ通過することを可能にすることができるか、または鏡3へのアクセスを可能にするように、レーザ光の経路の外側の位置に切り替えることができる。鏡2は、レーザ光の経路の中にある場合、マトリクス支援レーザ脱離イオン化(「MALDI」)プレート4に光を向け直す。鏡3は、レーザ誘起音響脱離(「LIAD」)プレート5に光を向け直す。プレート4および5、ならびにエレクトロスプレーイオン化(「ESI」)源6および接地鋼鉄キャピラリ7は、被分析物をイオントラップ質量分析器8に供給することができる。変換ダイノード9およびチャネルトロン10は、電荷増幅検出によって質量分析器8から放出される被分析物を検出することができ、電荷検出器11は、直接電荷検出によって質量分析器8から放出される被分析物を検出することができる。
【図2】図2は、携帯用多重イオン化源生物質量分析計の詳細設計である。図1の構成要素に加えて、レーザ1用のレンズ載置リング20、器具の全ての電動構成要素用の電力供給21、ダイヤフラムポンプ22、ターボ分子ポンプ23、および質量分析器8の中の内部ガス圧の排出および圧力監視用の圧力ゲージ24が示されている。
【図3】図3は、放出された被分析物の同時電荷検出および電荷増幅検出のための異なる質量分析器出口ポートにおける電荷検出器および電荷増幅検出器の構成である。質量分析器8の第1の出口ポートに位置付けられる変換ダイノード9およびチャネルトロン10は、電荷増幅検出によって、そこから放出される被分析物を検出することができ、質量分析器8の第2の出口ポートに位置付けられる電荷検出器11は、電荷検出によって、そこから同時に放出される被分析物を検出することができる。また、MALDIプレート4および進入レーザ光経路31も示されている。電荷増幅検出に関与する一次および二次イオンの経路が標識化されている。
【図4】図4は、アンジオテンシンのMALDI質量スペクトルである。5フェムトモル、100フェムトモル、または100ピコモルのアンジオテンシンが、2,5−ジヒドロキシ安息香酸マトリクスで、実施例1の携帯用質量分析計のMALDIプレート上に配置された。質量スペクトルは、実施例2で説明されるように得られた。
【図5A】図5Aは、アンジオテンシン(a;上)およびインスリン(b;下)のESI質量スペクトルである。アンジオテンシンおよびインスリンは、それぞれ、メタノール/水/酢酸中で10μMの濃度において、実施例3で説明されるように、実施例1の装置を使用して、大気ESI−MSによって分析された。3+および4+と標識された(b)のピークは、それぞれ、三プロトン化および四プロトン化インスリンに対応する。
【図5B】図5Bは、シトクロムc(a;上)およびミオグロビン(b;下)のESI質量スペクトルである。シトクロムcおよびミオグロビンは、それぞれメタノール/水/酢酸中で10μMの濃度において、実施例2で説明されるように、実施例1の装置を使用して、大気ESI−MSによって分析された。
【図6A】図6Aは、プロトタイプ装置である。プロトタイプ装置は、データ収集基板および増幅器基板が利用可能となる前に構築された。図6Aは、プロトタイプ装置の写真である。この装置の選択構成要素が、図1−2で概略的に図示されている。図6Bに示されるようなデータ収集基板および図6Cに示されるような増幅器基板と組み合わせられた場合に、この装置は、図4および5に示されたデータを収集するために使用された種類であった。データ収集および増幅器基板は、以下で説明されるように、掃引正弦波発生器と、シーケンス制御器と、電圧増幅器と、それらの付随インターフェース(USB、DAC、ADC、およびアナログフロントエンド)およびDC電力供給とを含む。この写真が撮られた後に、これら2つのプリント回路基板が設置された位置が示されている。装置は、壁コンセントから受電した。尺度のために示された定規は、センチメートル単位である。
【図6B】図6Bは、データ収集基板である。携帯用質量分析計制御用の電子構成要素を含むプリント回路基板の写真が示されている。基板は、シーケンス制御器と、掃引正弦波発生器と、8−チャネルデジタル・アナログ変換器(DAC)と、10−チャネルアナログ・デジタル変換器(ADC)と、アナログフロントエンドと、ユニバーサルシリアルバス(USB)インターフェースと、DC電力供給とを含んだ。アナログフロントエンドは、チャネルトロン増幅器と、パルスホルダと、電荷検出器パルスホルダとを含んだ。尺度のために示された定規は、センチメートル単位である。図6Cに示されるような増幅器基板および図6Aのプロトタイプ装置とともに、この基板は、携帯用質量分析計を構築するために使用された。
【図6C】図6Cは、増幅器基板である。図6Bの回路基板からのRF信号の高電圧増幅のための機器を含むプリント回路基板の写真が示されている。増幅器基板は、DC入力、演算増幅器(OP増幅器)、RF入力、およびRF出力を2つずつ含み、これらのそれぞれの1つが標識化されている。尺度のために示された定規のデジタル測定値は、ミリメートル単位を表示する。
【図7A】図7A−7Fは、図6Bのデータ収集基板および図6Cの増幅器基板の追加前の複数の図で示されたプロトタイプ器具である。図6Aと同じプロトタイプが種々の角度で示されている。プロトタイプは、図7Aで起動されている、7インチLCDディスプレイを有する。いくつかのパネルで尺度のために示された定規は、センチメートル単位である。
【図7B】図7A−7Fは、図6Bのデータ収集基板および図6Cの増幅器基板の追加前の複数の図で示されたプロトタイプ器具である。図6Aと同じプロトタイプが種々の角度で示されている。プロトタイプは、図7Aで起動されている、7インチLCDディスプレイを有する。いくつかのパネルで尺度のために示された定規は、センチメートル単位である。
【図7C】図7A−7Fは、図6Bのデータ収集基板および図6Cの増幅器基板の追加前の複数の図で示されたプロトタイプ器具である。図6Aと同じプロトタイプが種々の角度で示されている。プロトタイプは、図7Aで起動されている、7インチLCDディスプレイを有する。いくつかのパネルで尺度のために示された定規は、センチメートル単位である。
【図7D】図7A−7Fは、図6Bのデータ収集基板および図6Cの増幅器基板の追加前の複数の図で示されたプロトタイプ器具である。図6Aと同じプロトタイプが種々の角度で示されている。プロトタイプは、図7Aで起動されている、7インチLCDディスプレイを有する。いくつかのパネルで尺度のために示された定規は、センチメートル単位である。
【図7E】図7A−7Fは、図6Bのデータ収集基板および図6Cの増幅器基板の追加前の複数の図で示されたプロトタイプ器具である。図6Aと同じプロトタイプが種々の角度で示されている。プロトタイプは、図7Aで起動されている、7インチLCDディスプレイを有する。いくつかのパネルで尺度のために示された定規は、センチメートル単位である。
【図7F】図7A−7Fは、図6Bのデータ収集基板および図6Cの増幅器基板の追加前の複数の図で示されたプロトタイプ器具である。図6Aと同じプロトタイプが種々の角度で示されている。プロトタイプは、図7Aで起動されている、7インチLCDディスプレイを有する。いくつかのパネルで尺度のために示された定規は、センチメートル単位である。
【図8】図8は、特定のm/z比のイオンを選択するように、周波数走査を使用し、共鳴放出で動作して取得された、アンジオテンシンの質量スペクトルである。主要なピークはプロトン化アンジオテンシンである。
【図9A】図9Aは、シトクロムcのMALDI質量スペクトルである。2fモル(a)、100fモル(b)、および100pモル(c)シトクロムcのスペクトルが、携帯用質量分析計の変換ダイノードに印加された10kV電圧を用いて取得された。
【図9B】図9Bは、ウシ血清アルブミン(BSA)のMALDI質量スペクトルである。10fモル(a)および100fモル(b)BSAのスペクトルが、携帯用質量分析計の変換ダイノードに印加された20kV電圧を用いて取得された。
【図9C】図9Cは、免疫グロブリンG(IgG)のMALDI質量スペクトルである。6fモル(a)および6pモル(c)IgGのスペクトルが、携帯用質量分析計の変換ダイノードに印加された20kV電圧を用いて取得された。
【図10】図10は、アンジオテンシンの四重極イオントラップレーザ脱離質量スペクトルである。アンジオテンシンのスペクトルは、電圧走査を使用し、固定トラッピング周波数を用いて、選択されたm/z比を伴うイオンを選択することによって、取得された。
【図11】図11は、携帯用質量分析計のソフトウェアユーザインターフェースのスナップショットである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(A.定義)
本発明の理解を促進するために、いくつかの用語が以下で定義される。本明細書で定義されていない用語は、本発明に関する分野の当業者によって一般的に理解されるような意味を有する。「1つの」および「その」等の用語は、単数の実体のみを指すことを目的とせず、その具体的実施例が例証に使用されてもよい、一般分類を含む。本明細書の用語は、本発明の具体的実施形態を説明するために使用されるが、それらの使用法は、請求項での概説を除いて、本発明の範囲を定めない。
【0012】
本明細書で使用されるような「携帯用」とは、例えば、手で持ち運ぶこと、転がすこと、カート上で移動させること、車両(電動車両等)の中で輸送すること、または自己推進手段によって、分解または再組立することなく、完全な装置を1つの場所から別の場所へ移動させることができることを意味し、装置は、非研究室設定でサンプルの質量スペクトルを取得するために使用することができ、すなわち、装置が動作するために、おそらく電力源以外の建造物設備は必要とされない。分解および再組立は、装置を電力源またはラップトップコンピュータ等の外部アイテムに接続する、電力またはデータケーブル等の外部構成要素を取り付ける、および/または着脱することを含まない。「人の携帯用」とは、1人または2人によって、分解または再組立することなく、装置を1つの場所から別の場所へ(例えば、スーツケース、バックパック、またはトランクの中で)運ぶことができることを意味する。
【0013】
装置は、装置がイオン化被分析物を質量分析器に提供するか、または少なくとも2つの異なる方法、例えば、イオン化被分析物源の場合はMALDIおよびLIAD、または検出器の場合は直接電荷検出および電荷増幅検出で、そのm/z比に従って質量分析器によって分別されたイオン化被分析物を検出するように構成される時に、2つの「機構的に異なる」イオン化被分析物源または検出器を備える。これは、必ずしもイオン化被分析物源または検出器が構造的に異なることを意味するわけではない。例えば、MALDIおよびLIADを用いると、同じレーザ、光学部、および脱離プレートを、両源の一部として使用することができるが、例えば、532nmの波長において、LIADで周波数倍増とともにレーザを使用することができる一方で、例えば、355nmの波長において、MALDIで周波数3倍増とともにレーザを使用することができる。いくつかの実施形態では、MALDI/LIADレーザは、倍増および3倍増結晶を手動で交換することによって、2倍モードから3倍モードへ、および逆もまた同様に切り替えることができる。いくつかの実施形態では、例えば、ビーム経路の内外に倍増および3倍増結晶を回転させることによって、自動的にモードを切り替えることができる。MALDIでは、レーザは、サンプルが配置されるプレートの側面を衝打するように方向付けられ、LIADでは、レーザは、おそらく増加したレーザフルエンスを用いて、反対側を衝打するように方向付けられる。レーザは、レーザビームを適切に方向付けるように光学部を切り替えることによって向け直すことができる。機構的に異なる源または検出器はまた、源または検出器のうちの一方が、他方の源または検出器によって使用されない少なくとも1つの構成要素を備える場合に、「構造的に異なる」。例えば、装置が、異なるサンプルプレート(しかし、同じレーザ)を使用する、LIAD源およびMALDI源を備える場合、それらは構造的に異なる。装置が、変換ダイノードおよびチャネルトロンを使用する電荷増幅検出器と、ファラデープレートとして変換ダイノードを使用するが、チャネルトロンを使用しない直接電荷検出器を備える場合、検出器は構造的に異なる。
【0014】
「小分子」は、高分子ではない分子である。小分子および高分子の両方は、非荷電および荷電原子または群を含むことができる(すなわち、小分子または高分子はイオンであり得る)。「高分子」は、多糖類、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、および付加物等のポリマー、ならびにそれらの組み合わせを含む。
【0015】
(B.装置の概説)
装置は、携帯用であり、少なくとも1つのイオン化被分析物源と、質量分析器と、周波数走査サブシステムと、少なくとも1つの検出器とを備える。装置は、随意で、真空ポンプを備える。少なくとも1つのイオン化被分析物源は、少なくとも1つの検出器によって検出することができるように、周波数走査サブシステムが、そのm/z比に従ってイオン化被分析物を分別するように制御することができる、質量分析器に、サンプルから取得されたイオン化被分析物を提供することができる。検出器は、分別された被分析物と相互作用することによってデータを取得することができる。例えば、装置内に含まれるコンピュータ、または装置からデータを受信する外部コンピュータによって、検出器によって取得されたデータから質量スペクトルを生成することができる。いくつかの実施形態では、装置は、種々の種類の被分析物、例えば、小分子、ナノ粒子、微粒子、高分子、高分子アセンブリ、胞子、ウイルス、細胞、および/または細胞小器官等の細胞構成要素の質量スペクトルを取得するように構成することができる。
【0016】
いくつかの実施形態では、装置は、105Da以上の分子量を有する被分析物、および1,000Da以下の分子量を有する被分析物、または105以上のm/z比、および1,000以下のm/z比を有する被分析物の質量スペクトルを取得するように構成される。したがって、装置は、概して、小型および大型被分析物の両方を分析することができる。そのような装置は、例えば、生物およびナノ技術サンプルに対して、非研究室設定で多彩な分析能力を提供し、高速で、またはそれらの発生地付近で、サンプルの特性化を促進する。装置は、小分子等のより大型および小型の被分析物の両方を分析することができるため、遭遇する場合があるサンプルの内容物が、予測不可能である用途、および/または質量において大きく異なり得る用途に好適である。
【0017】
いくつかの実施形態では、装置は、MALDI源およびLIAD源から選択される第1のイオン化被分析物源と、第1のイオン化被分析物源とは機構的に異なる少なくとも1つの付加的なイオン化被分析物源とを備える。これらの実施形態の装置はまた、単一の装置が、異なるイオン化被分析物源を使用して、同じまたは異なるサンプルから質量スペクトルを取得することができるという点において、非研究室設定で多彩な分析能力を提供し、遭遇する場合があるサンプルの内容物が、予測不可能である用途、および/または化学的性質において大きく異なり得る用途に好適である。
【0018】
例えば、MALDIまたはLIAD源は、比較的低い程度の断片化を伴って、被分析物を質量分析器に提供することができる。より大きい程度の断片化、例えば、電子イオン化、電子捕獲イオン化、または多光子解離あるいは衝突誘起解離を行う源等の解離源を伴って、被分析物を質量分析器に提供するよう、別の第2の源を選択することができる。低断片化は、高分子、細胞、および/または被分析物の混合物等の被分析物で有用となり得、断片化は、極端に複雑で解釈し難いスペクトルをもたらし得る。より高い断片化は、断片サイズから取得することができる構造的情報が所望される時に、比較的純粋なサンプルで有用であり得る。
【0019】
いくつかの実施形態では、装置の中の少なくとも2つの異なるイオン化被分析物源の存在は、例えば、MALDIおよびLIADがよく適合する、高分子量被分析物を含むサンプルと、関心の被分析物が、MALDIでレーザ照射によって構造的に改変される場合がある、またはLIAD源を使用する時に十分にイオン化しない場合がある、小分子および/または光解離性物質であるサンプルとの両方を含むように、解釈可能なデータまたは質の高いデータを取得することができる、考えられるサンプルの範囲を拡張することができる。
【0020】
(C.イオン化被分析物源)
装置は、イオン化状態において、気相で被分析物を質量分析器に提供する、イオン化被分析物源を備える。いくつかの実施形態では、イオン源は、最初に固体または液体形態で提供される被分析物を蒸発させるように構成することができる。被分析物は、例えば、多原子イオンの場合等に、最初に帯電させることができる。いくつかの実施形態では、イオン源は、正電荷または負電荷を持つ程度を増大させること等によって、最初に中性荷電状態である被分析物をイオン化するように、および/または被分析物のイオン化状態を変化させるように構成される。他の実施形態では、イオン源は、蒸発および/またはイオン化に加えて、例えば、ガスまたは液体クロマトグラフを備えるイオン源等の被分析物を分別し、精製し、または分画することができる。
【0021】
複数のイオン化被分析物源が、装置に存在し得る。生成されるイオンは、イオントラップ、四重極、または飛行時間質量分析器等の質量分析器の中で分析される。それらは全て、質量対電荷比(m/z)分析に同じ質量分析器を使用することができる。それらはまた、1つまたは1つより多くの検出器を備えることができる、同じ検出器システムを共有することもできる。
【0022】
イオン化被分析物源は、マトリクス支援レーザ脱離/イオン化(MALDI)、エレクトロスプレーイオン化(ESI)、レーザ誘起音響脱離(LIAD)、脱離エレクトロスプレーイオン化(DESI)、リアルタイムでの直接分析(DART)、低温プラズマ周囲イオン化(LTP)、超音波イオン化(UI)、電子衝突イオン化(EII)、大気圧化学イオン化(APCI)、電子イオン化(EI)、グロー放電電子イオン化(GDEI)、電子付着(EA)、赤外多光子解離(IRMPD)、電子捕獲解離(ECD)、および衝突誘起解離(CID)を含むことができる。いくつかの実施形態では、イオン化被分析物源は、MALDI、LIAD、またはESI源のうちの少なくとも1つ、これらの種類のイオン化被分析物源のうちの少なくとも2つ、またはこれらのうちの3つ全てを備える。付加的な蒸発およびイオン化モードも、本発明に含まれる。例えば、E. de Hoffmann and V. Stroobant, Mass Spectrometry: Principles and Applications (3rd Ed., John Wiley & Sons Inc., 2007)を参照されたい。
【0023】
いくつかの実施形態では、装置は、接地電圧で、および/または1から30000Vまたは100から500Vに及ぶ電圧で、動作するように構成されるMALDIサンプルプレートを備える。
【0024】
MALDIおよび/またはLIADによるイオン化を達成するために、コンパクトレーザ (例えば、Spectra PhysicモデルExplorer 349 OEMダイオード励起型固体UVレーザ等のダイオード励起型Nd:YAGレーザ)を使用することができる。いくつかの実施形態では、MALDIを行うよりもLIADを行うために、高いレーザフルエンスが使用される。
【0025】
イオン化被分析物源によって生成されるイオンは、後に、衝突誘起解離等の種々の断片化過程による質量分析および/または分子識別のために、質量分析器に導入され、例えば、イオントラップで捕捉されることができる。
【0026】
いくつかの実施形態では、ESI源によって生成されるもの等のイオン化被分析物は、例えば、ピンチ弁を使用することにより、イオン化被分析物源と分析器との間の経路を短く開くことによって、パルス方式で質量分析器に導入することができる。例えば、キャピラリ、例えば、イオン化被分析物源から質量分析器へとつながる、長さ100mmおよび0.1−0.5mm内径入口のステンレス鋼キャピラリを、パルス関数発生器からの電気信号によって制御することができる、常時閉鎖ピンチ弁と連結することができる。このようにして、イオン化源から質量分析器までの経路を、所望の持続時間にわたって開くことができる。
【0027】
いくつかの実施形態では、ESI源等の源からのイオン化被分析物を、連続的に質量分析器に導入することができる。これは、例えば、質量分析器にイオン化被分析物を直接導入することを含み、例えば、約0.5W、0.75W、1W、またはそれ以上の加熱電力を用いて、凍結を防止するようにスプレー先端が加熱される。
【0028】
いくつかの実施形態では、装置は、例えば、ピンチ弁を連続的に開いて保つこと、またはパルス方式でそれを開くことによって、連続またはパルスモードのいずれか一方で動作するように構成される。いくつかの実施形態では、装置は、連続モード(例えば、約8ミリトル等の5−15ミリトル)よりもパルスモード(例えば、約0.09ミリトル等の0.05−0.2ミリトル)で、質量分析器の中に低い圧力を伴って動作する。
【0029】
いくつかの実施形態では、装置は、MALDIおよびLIADの両方を行うように構成される。LIADは、サンプルプレートの裏面にレーザビームを誘導することによって達成することができる。LIADは、さらなるイオン化を必要とすることなく、電荷を伴う粒子の脱離に有用となり得、少ない量の被分析物断片化を伴ってスペクトルを生成することができる。細胞および微粒子が実施例である。いくつかの実施形態では、中性粒子が生成され、例えば、電子衝突イオン化、またはグロー放電あるいはコロナ放電等の放電に被分析物を暴露させることによって、後続のイオン化過程が行われる。例えば、2009年7月30日に公開された、Chenらの米国特許出願公報第2009/0189059号を参照されたい。LIADは、MALDI用のサンプル上にレーザビームを当てる代わりに、薄いサンプルプレートの裏面からレーザビームを当てることによって達成することができる。LIADおよびMALDIは、1つのサンプルプレートの前面および別のサンプルプレートの裏面上にレーザビームを方向付けるために一式の光学部を使用することによって、同じレーザを使用する同じ装置で達成することができる。例えば、図1を参照されたい。代替として、光学部は、同じサンプルプレートの前面または裏面のいずれか一方の上にレーザ光を方向付けるように構成することができる。
【0030】
いくつかの実施形態では、器具は、イオン化被分析物源によるイオン化および/または気相への導入の前に、サンプルの中の構成要素を分離する、サンプル処理デバイスを備える。サンプル処理デバイスは、クロマトグラフ、例えば、ナノHPLCまたは他のマイクロ流体液体クロマトグラフィデバイスであり得る。
【0031】
(D.質量分析器)
装置は、質量分析器を備える。質量分析器は、種々の種類のイオントラップ質量分析器から選択することができる。
【0032】
質量分析器は、専用または市販の電子構成要素によって制御することができる。例えば、四重極イオントラップによる周波数および/または電圧走査のための信号を生成する際に、ANALOG DEVICES AD5930プログラム可能周波数掃引および出力バースト波形発生器、およびAPEX PA94正弦波増幅器等の構成要素を使用することができる。
【0033】
いくつかの実施形態では、装置は、イオントラップを備え、周波数走査および電圧走査のうちの少なくとも1つによって、質量スペクトルを得るように構成される。いくつかの実施形態では、装置は、別個の運転で、周波数走査および電圧走査の両方によって質量スペクトルを得ることができる。周波数走査は、高いm/z比を伴う被分析物に有用であり得る。電圧走査は、高分解能スペクトルを得るのに有用であり得る。周波数および電圧走査は両方とも、イオントラップからイオンを選択的に放出することによって動作し、放出は、それらのm/z比に従って、走査中に周波数または電圧による不安定な軌道を有するイオンをもたらす。これらのイオンは後に、以下で説明される検出器によって検出される。
【0034】
質量分析器は、それらの質量対電荷比に従って、空間および時間で被分析物を分別し、そうするために電場および/または磁場を使用することができる。
【0035】
被分析物は、イオントラップの中で分析することができる。この種類の質量分析器は、被分析物に、無線周波数(RF)で振動する電場を受けさせることができる。いくつかの実施形態では、不安定性質量選択および隔離を行うように、DCバイアスがイオントラップ電極に印加される。DCバイアスは、例えば、約2000Vであり得る。イオントラップは、ほとんどの種類の質量分析器と比較して、比較的高いガス圧で動作することができ、したがって、例えば、より少ない、またはより小さい真空ポンプの使用を可能にするか、真空ポンプを全く使用せず、その結果として、バッテリ電動式器具の場合に必要なバッテリサイズを縮小することによって、器具の全体的な重量の低減を可能にすることができる。いくつかの実施形態では、装置は、1つの真空ポンプによって達成することができる内部質量分析器圧力を用いて、または真空ポンプを伴わずに、あるいはオフにされている真空ポンプを伴って、周囲大気圧で動作するように構成される。
【0036】
種々のイオントラップの幾何学形状が、当技術分野で公知である。例えば、E. de Hoffman and V. Stroobant, Mass Spectrometry: Principles and Applications (3rd Ed., John Wiley & Sons Inc., 2007) and Ouyang,他, Annu. Rev. Anal. Chem. 2:187−214 (2009)を参照されたい。いくつかの実施形態では、イオントラップは、四重極、線形、直線、円筒形、トロイダル、およびハローイオントラップから選択される種類である。
【0037】
イオントラップは、端部キャップ電極およびリング電極を有することができる、ポールイオントラップとしても知られている、3次元四重極イオントラップであり得る。端部キャップ電極は、双曲線であり得る。端部キャップ電極は、楕円であり得る。光散乱の観察を可能にし、それを通して被分析物を放出することができる、穴を端部キャップ電極に開けることができる。その質量対電荷比に従って、トラップから被分析物を放出するように、振動の周波数を走査することができる。
【0038】
イオントラップは、2次元イオントラップとしても知られている、線形イオントラップ(LIT)であり得る。線形イオントラップは、4つの棒電極を有することができる。棒電極は、RF電位の印加を通して、トラップの中の被分析物の振動を引き起こすことができる。トラップの中央に向かって被分析物をはねつけるように、付加的なDC電圧を棒電極の端部に印加することができる。線形イオントラップは、棒電極の端付近に配置された端部電極を有することができ、これらの端部電極は、トラップの中央に向かって被分析物をはねつけるように、DC電圧を受けることができる。被分析物は、線形イオントラップから放出することができる。放出は、例えば、トラップ付近の付加的な電極によって生成される、フリンジ電界効果を使用して、軸方向に達成することができる。放出は、棒電極に切り込まれたスロットを通して、半径方向に達成することができる。LITは、軸方向および半径方向に放出される被分析物を検出するよう、1つより多くの検出器と連結することができる。
【0039】
イオントラップ質量分析器のサイズは、x0(線形または直線型イオントラップについて)、またはr0およびz0(四重極、円筒形、トロイダル、およびハローイオントラップについて)の寸法に関して説明することができる。例えば、Ouyang,他, Annu. Rev. Anal. Chem. 2:187−214 (2009)を参照されたい。いくつかの実施形態では、装置は、1μmから30mm、20μmから25mm、500μmから20mm、5mmから15mm、1mmから30mm、1mmから25mm、2mmから20mm、2mmから15mm、または1μmから500μmに及ぶ、x0またはr0値を伴うイオントラップを備える。いくつかの実施形態では、装置は、1μmから30mm、20μmから25mm、500μmから20mm、5mmから15mm、1mmから30mm、1mmから25mm、2mmから20mm、2mmから15mm、または1μmから500μmに及ぶ、z0値を伴うイオントラップを備える。いくつかの実施形態では、装置は、1.05から1.6、1.1から1.5、1.15から1.45、1.2から1.42、1.05から1.4、1.1から1.4、または1.25から1.35に及ぶ、r0/z0比を有するように選択されるr0およびz0値を伴うイオントラップを備える。いくつかの実施形態では、比は、例えば、約√2(約1.414)の比を使用して、電界幾何学の理想を最適化するように選択することができる。これは、信号強度を最大限化するのに役立つことができる。他の実施形態では、比は、例えば、z0寸法が、所与のx0値に対して比較的大きい、より低い比を使用して、化学シフトの現象を最大限化するように選択することができ、例えば、1.1対1.41、1.15対1.4、1.2対1.4、1.05対1.4、1.1対1.4、または1.25対1.35である。これは、測定された被分析物のm/z比および質量の精度を最大限化するのに役立つことができる。例えば、Wells,他, Anal. Chem. 71:3405−3415 (1999)を参照されたい。
【0040】
いくつかの実施形態では、質量分析器は、小さい寸法を伴うイオントラップのアレイ、例えば、1μmから20μmに及ぶ寸法r0またはx0を有する、256個の円筒形または線形イオントラップのアレイを備える。イオントラップのアレイを備える質量分析器を使用することにより、より高いイオン捕捉能力をもたらすことができる。例えば、Ouyang,他, Annu. Rev. Anal. Chem. 2:187−214 (2009)を参照されたい。
【0041】
(E.周波数走査サブシステム)
装置は、イオントラップの中で振動電場を生成することができる、生成することが可能である、および/または生成するように構成される、周波数走査サブシステムを備え、電場は、段階的に、または掃引的に、走査中に経時的に変化する周波数を有する。
【0042】
いくつかの実施形態では、サブシステムは、範囲、例えば、1,000,000Hzから100Hz、200,000Hzから500Hz、または10,000Hzから100Hzを含む範囲を通して円滑に移動する、掃引周波数を伴う電場を生成することができる。走査の持続時間は、例えば、50ms等の、5から500ms、または25から100msに及ぶ時間であり得る。
【0043】
いくつかの実施形態では、サブシステムは、経時的に階段状になる、一連の周波数を伴う電場を生成することができる。周波数は、サイクルの数の値、例えば、5サイクル等の、2から50、または3から10に及ぶサイクルの数で維持され、次いで、次の周波数へと階段状になる。秒でのサイクルの長さは、周波数、例えば、100Hzの逆数であり、サイクルは、0.01秒かかる。例えば、周波数は、10000Hzから100Hzへ階段状になることができ、各段階は、Hzの設定数によって、前の周波数の相対的割合によって、周波数を変化させる。設定数は、例えば、1Hz等の、0.1から100Hz、0.2から50Hz、0.3から20Hz、または0.5から5Hzに及ぶ数であり得る。割合は、例えば、100万分の1から100、または100万分の10から20に及ぶ、前の周波数の割合であり得る。
【0044】
電場の振幅は、所望のm/z比の被分析物を捕捉するのに十分な電圧、例えば、200、300、350、400、450、500、550、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、または1500Vで、周波数走査中に一定に保つことができる。いくつかの実施形態では、電圧は、公差内で一定に保たれる。公差は、例えば、1%、0.5%、0.25%、または0.1%以下であり得る。振幅を一定に保つことにより、マシュー方程式qz=8eV/(mΩ2(r02+2z02))を使用して決定することができる、周波数の関数として放出されるイオンのm/z比の決定を簡略化することができ、式中、qzは、被分析物電荷であり、eは、電子の電荷であり、Vは、電場の(電圧における)振幅であり、mは、被分析物の質量であり、Ωは、被分析物の放出時の周波数であり、r0およびz0は、3Dイオントラップのトラップ寸法である。適切な同様の方程式を、他のトラップ幾何学形状に使用することができる。
【0045】
周波数走査サブシステムは、掃引および/またはステップ周波数を伴うRF信号を生成することができる、同調可能な構成要素を伴う共鳴電子要素、例えば、同調可能なインダクタまたはコンデンサを伴うLC回路、または関数発生器を備えることができる。同調可能な要素は、例えば、コンデンサの要素の間の距離を変化させることにより、またはインダクタコイルの長さまたは断面積を変化させることにより、静電容量を調整することによって、走査中に周波数を掃引するか、または階段状にするように同調することができる。同調可能な要素を同調することによって周波数を調整するために、ステッピングモータを使用することができる。
【0046】
いくつかの実施形態では、周波数走査サブシステムは、関数発生器と、演算増幅器と、質量分析計シーケンス制御器とを備える。関数発生器は、周波数掃引波形発生器としても知られている掃引正弦波発生器、または任意波形発生器であり得る。関数発生器は、掃引周波数を生成する、電圧制御された発振器を備えることができる。関数発生器は、直接デジタル合成(DDS)回路を備えることができる。DDS回路は、電子制御器と、メモリと、水晶発振器等の基準周波数源と、DACと、カウンタとを備えることができる。
【0047】
関数発生器は、専用または市販の発生器、例えば、ANALOG DEVICES AD5930プログラム可能周波数掃引および出力バースト波形発生器であり得る。好適な市販の演算増幅器の実施例は、APEX PA94正弦波増幅器である。
【0048】
いくつかの実施形態では、装置は、実行されると、上記で論議されるように、掃引またはステップ周波数走査を行うように周波数走査サブシステムに命令する、命令を備える、電子メモリ媒体を備える。いくつかの実施形態では、該電子メモリ媒体は、装置に接続される外部コンピュータによって含まれる。いくつかの実施形態では、該命令は、内部コンピュータによって含まれる。
【0049】
いくつかの実施形態では、装置は、装置を用いて周波数走査を行うための人間が読み取れる命令を伴う。人間が読み取れる命令は、コンピュータを用いて読み取ることができる命令を含む。命令は、書面(例えば、マニュアルまたはブックレット)または電子形態(例えば、CD−ROM、ディスケット、メモリスティック、または他のデジタル記憶媒体上に、装置あるいは装置に付随するコンピュータの内部メモリ(例えば、ROM、NVRAM、またはハードドライブ)の中に含まれた、任意の可読形態のファイル)であり得る。
【0050】
(F.検出器)
装置は、少なくとも1つの検出器、例えば、直接電荷検出器、電荷増幅検出器、または光散乱検出器を備える。
【0051】
直接電荷検出器は、質量分析器から退出するイオン(「一次イオン」)を直接検出するように動作し、被分析物上の電荷の総数を測定する。最初の信号が、増幅を伴わずに被分析物との相互作用を介して生成され、背景信号の存在を制限するので、直接電荷検出器は、比較的低い雑音レベルを有する。
【0052】
電荷増幅検出器は、一次イオンが、そのような接触の結果として複数の電子またはイオンを発する構成要素に接触することを可能にすることによって、電子または二次イオンを生成する。この構成要素は、例えば、変換ダイノードであり得る。電荷増幅検出器は、電子または二次イオンの放出が信号を増幅するので、より優れた感受性を有することができる。いくつかの実施形態では、最大約25kV、例えば、約20kVのDCバイアスが、変換ダイノードに印加される。いくつかの実施形態では、感受性を最適化し、電子雑音を最小限化するために、15kVよりも大きい電圧等の高いダイノード電圧が、0.1ミリトル未満、例えば、0.01−0.1ミリトルの圧力で、検出と組み合わせられる。他の実施形態では、電力消費または重量等の特徴を最小限化することによって(例えば、比較的小さいバッテリ、および/または、より少ない、あるいは小さい真空ポンプの使用を可能にすることによって)、携帯性および/または装置が外部電力なしで動作することができる持続時間を増進するために、ダイノードDCバイアス用のより低い電圧を、検出時のより高い圧力とともに使用することができる。
【0053】
カメラ、例えば、CCDカメラ等の光散乱検出器は、質量分析器の中の被分析物によって散乱される光(例えば、レーザ光)を検出するように構成することができる。例えば、W.P. Peng,他, Angewandte Chemie Int. Ed., 45:1423−1426 (2006)を参照されたい。
【0054】
少なくとも1つの検出器は、ファラデープレート、ファラデーカップ、または誘導電荷検出器等の直接電荷検出器、マイクロチャネルプレート(MCP)、マイクロスフェアプレート、電子増倍管、およびチャネルトロン等の電荷増幅検出器、および光散乱検出器から選択することができる。BURLE 5900チャネル検出器等の市販の検出器が、器具で使用するために好適である。
【0055】
いくつかの実施形態では、同じ構成要素を、電荷検出および電荷増幅検出の両方で使用することができる。例えば、プレートを、電荷検出用のファラデープレートとして、かつ、電荷増幅検出用の変換ダイノードプレートとして使用することができる。そのような実施形態では、装置は、電荷検出によって、次いで、電荷増幅検出によって、または逆もまた同様に、連続的にスペクトルを得ることができるように、複数の検出モードを有するように構成される。
【0056】
いくつかの実施形態では、装置は、例えば、質量分析器の異なる出口ポートに位置することによって、同時に動作することができる、別個の電荷および電荷増幅検出器を備える。例えば、図3を参照されたい。
【0057】
いくつかの実施形態では、装置は、その1つが一次イオンに接触しない、例えば、誘導電荷検出器である、2つの検出器を備える。誘導電荷検出器は、被分析物の電荷の1つ以上の測定値をもたらす、単段または多段デバイスであり得る。誘導電荷検出器はまた、検出器の1つまたは複数の段階を通る被分析物の飛行時間の測定値をもたらすこともできる。センサは、1つ以上の伝導管またはプレートを含むことができる。管は、共線的かつ円筒形であり、等しい直径を有することができる。プレートは、平行ペアで配置することができる。センサへの入口は、一度に1つ等に進入粒子の数を制限し、それらの軌道が円柱軸に近いままであることを確実にする、より狭い管であり得る。荷電粒子が各感知管に進入する場合、荷電粒子は、それ自身にほぼ等しい電荷を管上に誘発する。各感知管は、誘発された電荷と関連付けられる電位を感知する、演算増幅器回路に接続することができる。粒子の電荷は、この電位および管の静電容量から計算することができる。誘導電荷検出器は、例えば、NASAのジェット推進研究所(Jet Propulsion Laboratory)による、「Induction Charge Detector With Multiple Sensing Stages」(2008年1月1日)で説明されている。したがって、一次イオンは、一次イオンに接触しない検出器を通過し、次いで、上記で説明されるように、電子または二次イオンを生成するように電荷増幅検出器の構成要素に接触することができる。
【0058】
被分析物に関する情報はまた、分子撮像によって取得することもできる。サンプルの分子撮像を行うために、サンプルがマイクロメータ制御されたプレート上に載置されるか、または、鏡またはレンズ等の光学構成要素を調整して、質量分析器の中へレーザを方向付けて被分析物を照射するように、マイクロメータを用いてレーザ光路を変化させることによって、レーザビームが誘導される。光散乱および振動情報をもたらすことができる、照射された被分析物に由来する画像を収集するために、CCDカメラ等の画像収集デバイスを使用することができる。例えば、Peng,他, Angew. Chem. Int. Ed. 45:1423−1426 (2006)を参照されたい。いくつかの実施形態では、例えば、約1000Hzの繰り返し率および20μmのビーム直径を伴って動作することによって、高速分子撮像が可能であるレーザが使用される。
【0059】
(G.真空ポンプおよび動作圧力)
本発明の装置は、質量分析器の内部が大気に対する低減空気圧下、または周囲大気圧で操作することができ、(随意で、減圧において)質量分析器の中に存在するガスは、例えば、空気、窒素、ヘリウム、アルゴン、六フッ化硫黄、ネオン、およびキセノンから選択することができる。減圧は、少なくとも1つの真空ポンプによって提供することができる。いくつかの実施形態では、ダイヤフラムポンプまたはスクロールポンプ等の第1のポンプは、ターボ分子ポンプ等の第2のポンプと連結される。いくつかの実施形態では、スクロールポンプまたはダイヤフラムポンプ等の単一の真空ポンプが使用される。いくつかの実施形態では、装置は、希ガスまたは不活性ガスの供給なしで動作する。いくつかの実施形態では、装置は、真空ポンプを備えないか、または少なくとも1つの真空ポンプを備え、真空ポンプ使用が低減または排除される、少なくとも1つの低電力モードで動作することができる。少なくとも1つの低電力モードでは、少なくとも1つの真空ポンプは、少なくとも1つのポンプの全出力動作によって生成される真空に対して圧力の中間低減を提供するように、より低い速度で操作することができる。装置が1つより多くの真空ポンプを備える場合、ポンプのうちの少なくとも1つが全能力未満で操作される少なくとも1つの低出力モードで、装置が動作することが可能であり得る。
【0060】
いくつかの実施形態では、装置は、0.01から100ミリトル、例えば、0.1から50ミリトル、0.2から40ミリトル、0.5から30ミリトル、1から15ミリトル、1から30ミリトル、1から40ミリトル、1から50ミリトル、1から60ミリトル、1から75ミリトル、または1から100ミリトルに及ぶ、内部質量分析器ガス圧で動作する。いくつかの実施形態では、装置は、1、5、10、15、20、25、30、40、50、60、75、または100ミリトルよりも大きい内部質量分析器ガス圧で動作するように構成される。
【0061】
いくつかの実施形態では、装置は、1気圧または周囲大気圧の圧力で動作する。これは、バッテリ寿命を延長するのに有用、および/または装置の重量およびサイズを低減するのに有用であり得る。装置が被分析物を検出する感度は、例えば、検出器とのガスの相互作用からの増大した雑音による、大気圧での動作によって低減され得る。この感度の損失は、他の検出器の種類よりもガス圧によって少ない影響を受け得る光散乱検出器を使用することによって、軽減することができる。光散乱検出器は、光散乱が、概して、より小さい被分析物に対するよりも大きい、より大きい被分析物で効果的であり得る。
【0062】
いくつかの実施形態では、装置は、エレクトロスプレーイオン化源を備え、パルスモードエレクトロスプレーイオン化を介して動作する。サンプル入力パルスの長さおよび周波数は、例えば、イオン化源と質量分析器との間のピンチ弁またはボール弁を使用して、開口を開閉することによって制御することができる。好適なピンチ弁の実施例は、24V DC信号によって操作される、二方向の常時閉鎖ピンチ弁である。好適なボール弁の実施例は、Swagelok電気アクチュエータ1/16インチボール弁である。パルスモード動作は、開口が開いている時に可能であるよりも開口が閉じている時に低いレベルまで、少なくとも1つの真空ポンプが質量分析器の中の内部ガス圧を低減することを可能にすることができる。代替として、イオン化源は、後続の操作、例えば、電圧走査、周波数走査、または飛行時間の測定等の、m/z比によって被分析物を分別するために、サンプルを質量分析器の真空チャンバの中へ直接注入することができる。いくつかの実施形態では、装置は、例えば、より高速のサンプリングおよびデータ収集を可能にするように、連続サンプル導入モードで動作することができる。いくつかの実施形態では、装置は、例えば、より高い分解能および/またはより低い雑音データ、またはより高速のサンプリングおよびデータ収集のために、ユーザ選好に適合するようにパルスおよび連続サンプル導入モードの間で切り替えることができる。
【0063】
(H.制御および通信)
いくつかの実施形態では、器具は、マイクロプロセッサ、ディスプレイ、インターフェース、バス、およびメモリ等の種々の要素を含む、内蔵コンピュータを備える。メモリは、揮発性(例えば、RAM)および不揮発性メモリ(例えば、ROM、ハードドライブ、NVRAM、または可撤性記憶媒体)を備えることができる。直接電荷検出器および/または電荷増幅検出器から取得される信号は、メモリにエンコードまたはインストールすることができるソフトウェアを使用して分析することができる。インターフェースは、例えば、ヒューマンインターフェースデバイス、例えば、キーボードまたはキーパッド、タッチパッド、タッチスクリーン、またはトラックボール、マウス、ジョイスティック、または外部キーボードあるいはタッチスクリーン等のヒューマンインターフェースデバイス用の端末またはポート、ならびに上記のデバイスのうちのいずれかの無線バージョン用の伝送機、受信機、および送受信機を含むことができる。いくつかの実施形態では、インターフェース構成要素は、ヒューマンインターフェースデバイス、外部メモリ、コンピュータ、電源、および同等物に接続することができる、多目的インターフェース、例えば、USBポート、シリアルポート、SCSIポート、パラレルポート、IEEE1394ポート、または同等物である。
【0064】
いくつかの実施形態では、器具は、器具を制御するオペレーティングソフトウェア、質量スペクトルを生成および/または描画するデータ分析ソフトウェア、および/またはユーザが器具を操作すること、および/または器具によって得られたデータを視認する、または取り出すことを可能にする、少なくとも1つのヒューマンインターフェースデバイスを備える、外部コンピュータに接続するための無線または有線インターフェースを備える。実施形態のうちのいくつかでは、上記の機能のうちのいくつかは、装置の中の内部コンピュータによって行われ、他の機能は、装置と通信する外部コンピュータによって行われる。
【0065】
(I.質量および組成)
いくつかの実施形態では、本発明の装置は、100、90、80、70、60、50、45、40、35、30、25、20、15、10、7、5、または4kg未満の総重量を有する。
【0066】
いくつかの実施形態では、質量分析器は、重量で少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、または99.9%の非金属材料、例えば、ポリ(メチルメタクリレート)(例えば、LUCITETM)、ポリプロピレン、ポリカーボネート、またはポリ塩化ビニル等のプラスチックから成る、真空チャンバを備える。いくつかの実施形態では、真空チャンバが構成される材料は、100、50、25、20、15、10、5、2、1、0.5、0.2、0.1、0.01、または0.001ミリトル未満の蒸気圧を有する。蒸気圧は、Jensen, J. Appl. Phys. 27:1460−1462 (1956;「Jensen」)の方法によれば、25℃で決定することができる。いくつかの実施形態では、真空チャンバが構成される材料は、10−2から10−5ミリトルに及ぶ蒸気圧を有する。例えば、Jensenの表1を参照されたい。いくつかの実施形態では、比較的高い圧力で動作する装置の能力により、そのような非金属真空チャンバを使用することが可能である。いくつかの実施形態では、真空チャンバは、ポリカーボネートまたはポリ(メチルメタクリレート)等の透明プラスチックを含み、眼で真空チャンバ内部を観察することが可能である。
【0067】
いくつかの実施形態では、真空チャンバは主に、金属被覆を伴う非金属である。金属は、アルミニウムまたはチタン等の軽量金属であり得る。いくつかの実施形態では、真空チャンバは主に、アルミニウムまたはチタン等の軽量金属であり得る、金属から成る。
【0068】
(J.電源)
いくつかの実施形態では、器具の電力消費は、500、400、300、200W、または150W未満、例えば、約150Wまたは約100Wである。いくつかの実施形態では、器具は、例えば、発電機から、または自動車のバッテリ、携帯用電子機器に好適なバッテリ(例えば、ラップトップコンピュータで一般的に使用されているもの等のリチウムイオンバッテリ)を含む、再充電可能であり得る、1つまたは複数の内部または外部バッテリからのDC電力、または変圧器あるいは壁コンセントを伴う発電機から等のAC電力等の電源を使用する。電源は、携帯用非バッテリ電源、例えば、太陽電池から等の太陽熱電力、燃料電池からの電力、または人力デバイス、例えば、手動クランクまたはフットペダルが装着された発電機からの電力であり得る。
【0069】
(K.質量分析計能力および構成)
いくつかの実施形態では、装置は、被分析物電荷と質量対電荷比(m/z比)とを同時に測定するように構成される。いくつかの実施形態では、被分析物電荷測定値は、個々の電荷が知られているイオン群の正味電荷の測定値であり(例えば、個々のイオンは、−1、+1、−2、+2、−3、+3等から選択される同じ電荷を有する)、この測定値は、イオン種の数量を取得するために使用することができる。いくつかのそのような実施形態では、被分析物は、2000、1500、1000、750、500、400、300、または200Da未満の分子量を伴う小分子である。
【0070】
いくつかの実施形態では、装置は、個々の被分析物種の電荷およびm/z比を測定するために使用される。これらのデータから、個々の被分析物種の質量を取得することができる。
【0071】
装置は、高いm/z比または分子量、例えば、少なくとも105、106、107、108、109、1010、1011、または1012のm/z比、または少なくとも105、106、107、108、109、1010、1011、1012、1013、1014、1015、または1016Daの分子量を伴う被分析物を用いて、MSを行うことができる、イオントラップを備えることができる。したがって、携帯用装置は、上記で論議されるように、比較的弱い真空を用いて、高いm/z比の被分析物または高分子量の被分析物でMSを行うことができる。装置が、少なくともある値の分子量またはm/z比を有する被分析物を用いてMSを行うことができるという指示は、装置がまた、小分子等のより小さい被分析物を用いてMSを行うことができないことを暗示しない。概して、この場合、本発明の装置は、小さい被分析物および大きい被分析物の両方を用いてMSを行うことができる。例えば、いくつかの実施形態では、装置は、100、500、1,000、5,000、または10,000Da以下の分子量を有する被分析物を用いて、あるいは100、500、1,000、5,000、または10,000以下のm/z比を有する被分析物を用いて、MSを行うことができる。この能力は、上記で論議されるような、より大きい被分析物を分析する能力に加えることができる。
【0072】
いくつかの実施形態では、装置は、モジュール構造を有し、少なくとも1つ、少なくとも2つ、またはそれより多くのイオン化モジュールが、各々が異なるイオン化被分析物源を備えて提供される。例えば、MALDI、LIAD、およびESI源から選択される源を個々に備える、少なくとも2つのモジュールを提供することができる。所望の用途に応じて、適切なモジュールを設置することができる。また、ユーザが、付加的なモジュールを得ることによって、器具の能力を拡張することができる。一方で、所望される時に、より少ないモジュールを使用することによって、器具の重量および費用を削減することができる。そのようなモジュール性質はまた、修復が必要になった場合に、より便利であり得る。
【0073】
いくつかの実施形態では、イオン化被分析物のESI源が、MALDIまたはLIAD源のうちの少なくとも1つと組み合わせられる。この源の組み合わせを備える装置は、高いm/z比を伴う被分析物に適合するイオントラップを用いて、非常に広い質量範囲を測定するために使用することができる。そのような装置の構築費用は、1つはMALDI−TOF質量分析用、もう1つはESI−イオントラップ質量分析用である、2つの別個の器具の構築費用よりも有意に少なくなり得る。
【0074】
いくつかの実施形態では、装置は、少なくとも2つの異なるイオン検出器、例えば、直接電荷検出器および増幅二次電子放出検出器を備える。いくつかの実施形態では、各検出器は、アセンブルモジュール上に載置される。イオン化モジュールと同様に、重量、費用、および能力の考慮に応じて、選択された検出器モジュールまたは複数の検出器モジュールを設置することができる。
【0075】
いくつかの実施形態では、装置は、少なくとも1,000、少なくとも5,000のダイナミックレンジ、または1,000から10,000に及ぶダイナミックレンジを有する。ダイナミックレンジとは、同じスペクトルの中で検出することができる、最大信号と最小信号との比を指す。いくつかの実施形態では、ダイナミックレンジは、タンデム質量分析を通して、例えば、106または107まで拡張することができる。いくつかの実施形態では、装置の全体的な質量範囲(すなわち、必ずしも同じスペクトルの中ではない、最小および最大可能測定質量)は、約10Daまたは約100Daから約1015Daまたは約1016Daに及ぶ。いくつかの実施形態では、m/Δmとして表される、装置によって取得される質量スペクトルの分解能、つまり、半最大値Δmにおけるピーク幅に対する測定質量mの比は、小分子については約500から2,000に及び、例えば、約1,000であり、約100kDaの質量の被分析物については約50から約100、および/または約1016Daの質量の被分析物については約4である。
【0076】
(L.移動式、電動式、自律、および/または遠隔制御実施形態)
いくつかの実施形態では、装置は、移動式である。移動性は、以下の組み合わせを含む、モータおよび車輪、トレッド、ホバーファン、ヘリコプターの羽、プロペラ、翼等のうちの少なくとも1つの存在によって、与えることができる。装置は、加えて、装置の移動が遠隔制御されることを可能にする、受信機を備えることができる。装置は、加えて、センサ、例えば、カメラ、マイクロホン、グローバルポジショニングシステム(GPS)、温度計、高度計、気圧計、光センサ等と、その位置および/または周辺に関する情報が無線で伝送されることを可能にする伝送機とを備えることができる。装置は、加えて、例えば、起伏の多い地形上で、指定された地理的な場所に向かって、および/または温度、圧力、高さ、アルベド、または同等物の指定のパラメータに合致する場所に向かって、装置が自律的にナビゲートすることを可能にする、人工知能システムを備えることができる。装置は、加えて、その周辺からサンプルを取得し、それを少なくとも1つのイオン化被分析物源に提供する、サンプリングシステムを備えることができる。いくつかの実施形態では、サンプリングシステムは、例えば、サンプルを粉砕する、精製する、溶解させる、または蒸発させることによって、それをイオン化被分析物源に提供する前に処理する。
【0077】
移動式、遠隔制御、および/または自律実施形態は、例えば、サンプルが毒性である、放射性である、感染性である、または潜在的にそうである、そのような物質の付近にある、または極端な環境に位置する時に、人間の操作者の安全性がサンプルの付近で、またはサンプルへの近接性によって危険にさらされる、危険な状況で有用であり得る。移動式、遠隔制御、および/または自律実施形態はまた、サンプルが、人間の操作者の手が届きにくい場所、例えば、洞窟の中、深海、宇宙空間、または別の惑星あるいは他の天体上にある状況で、有用であり得る。移動式、遠隔制御、および/または自律実施形態はまた、人間の介入を全く伴わずに、または最小限に伴って、領域を繰り返し調査する、または一掃する、例えば、単一の装置、または該装置が移動式ではない場合に必要とされるよりも少ない数の装置を用いて、複数の場所で経時的に種々の化合物または粒子の存在について試験するのに有用であり得る。
【0078】
(M.方法および用途)
いくつかの実施形態では、本発明は、携帯用装置を使用して少なくとも1つの質量スペクトルを取得する方法を提供する。方法は、サンプル、および上記で説明されるような装置を提供するステップと、被分析物が中性である場合にイオン化するために、装置の少なくとも1つのイオン化被分析物源を使用し、それを装置の質量分析器に導入するステップと、そのm/z比に従って被分析物を分別するステップと、そのm/z比に従って分別された被分析物を検出し、それにより、質量スペクトルを取得するステップとを含むことができる。
【0079】
いくつかの実施形態では、方法は、イオントラップを備える質量分析器を有する装置を用いて、被分析物の周波数走査を行うステップを含む。周波数走査は、100、150、200、500、1,000、2,000、5,000、および10,000Hz等の周波数を含む、周波数範囲にわたって走査するステップを含むことができる。いくつかの実施形態では、例えば、適切な分解能で、より広い質量範囲にわたって情報を取得するために、少なくとも2回の走査が、異なる走査速度で、および/または異なる周波数範囲にわたって行われる。例えば、100から10,000Daの質量範囲に対応する周波数における、より高い分解能で、およびより低い分解能であるが、10,000から1,000,000,000Daのより広い範囲で行うことができる。いくつかの実施形態では、方法は、イオントラップを備える質量分析器を有する装置を用いて、被分析物の電圧走査を行うステップを含む。いくつかの実施形態では、方法は、第1のスペクトルを取得するように、第1の範囲にわたって周波数走査を行い、次いで、第1のスペクトルのある領域を選択し、選択された領域に対して、より高い分解能を有することができる第2のスペクトルを取得するように、電圧走査であり得る、第2の走査を行うステップを含む。
【0080】
方法のいくつかの実施形態では、サンプルは、少なくとも105、106、107、108、109、1010、1011、1012、1013、1014、1015、または1016Daの分子量、または少なくとも105、106、107、108、109、1010、1011、または1012のm/z比を伴う被分析物を備え、質量スペクトルは、少なくとも105、106、107、108、109、1010、1011、1012、1013、1014、1015、または1016Daの分子量、または少なくとも105、106、107、108、109、1010、1011、または1012のm/z比に対応するピークを備える。
【0081】
いくつかの実施形態では、被分析物が中性である場合にイオン化するために、装置の少なくとも1つのイオン化被分析物源を使用し、それを装置の質量分析器に導入するステップは、被分析物をイオン化するステップ、または被分析物のイオン化状態を変化させるステップを含む。いくつかの実施形態では、被分析物は、液体または溶解状態で提供され、方法は、装置のイオントラップに被分析物を導入する前に、被分析物の状態を液体または溶解から気体に変化させるステップを含む。
【0082】
いくつかの実施形態では、方法は、そのm/z比にしたがって被分析物を分別する前に、被分析物で衝突誘起解離を行うステップを含む。これらの実施形態はさらに、例えば、衝突誘起解離を行う前に、望ましくない比を伴う被分析物を放出することによって、特定のm/z比の被分析物を選択するステップを含むことができる。これは、タンデム質量分析の形態である。
【0083】
いくつかの実施形態では、被分析物を検出するステップは、二次イオンまたは電子を生成し、検出するステップ、被分析物の直接電荷検出、または両方を含む。
【0084】
いくつかの実施形態では、装置の質量分析器は、イオントラップを備え、電圧または周波数走査等の、そのm/z比に従った被分析物の分別中に、イオントラップは、0.01から100ミリトル、例えば、0.1から50ミリトル、0.1から100ミリトル、0.2から100ミリトル、0.2から50ミリトル、0.2から40ミリトル、0.5から30ミリトル、1から15ミリトル、1から30ミリトル、1から40ミリトル、1から50ミリトル、1から60ミリトル、1から75ミリトル、または1から100ミリトルに及ぶ内部ガス圧等の、内部ガス圧を有する。いくつかの実施形態では、そのm/z比に従った被分析物の分別および/または電圧あるいは周波数走査中に、装置は、15、20、25、30、40、50、60、75、または100ミリトルよりも大きい内部質量分析器ガス圧で動作する。いくつかの実施形態では、装置は、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、または0.9気圧よりも大きい内部質量分析器ガス圧で、または周囲大気圧におけるガス圧で動作する。
【0085】
いくつかの実施形態では、被分析物は、周囲大気圧、または0.1から1atm、0.1から100ミリトル、0.2から100ミリトル、0.2から50ミリトル、0.2から40ミリトル、0.5から30ミリトル、1から15ミリトル、1から30ミリトル、1から40ミリトル、1から50ミリトル、1から60ミリトル、1から75ミリトル、または1から100ミリトルに及ぶ圧力等の、比較的高い圧力で捕捉され、周波数および/または電圧走査は、より低い圧力、例えば、0.01から0.1ミリトル、0.01から0.15ミリトル、0.02から0.1ミリトル、0.02から0.15ミリトル、0.05から0.1ミリトル、または0.05から0.15ミリトルに及ぶ圧力で行われる。これは、化学質量シフトの現象を最小限化することができる。例えば、Wells,他, Anal. Chem. 71:3405−3415 (1999)を参照されたい。これはまた、検出器によって登録される電子雑音等の雑音の量を低減することもできる。
【0086】
いくつかの実施形態では、方法は、上記で説明されるような少なくとも2つのイオン化被分析物源を備える、装置を提供するステップを含む。これらの方法はさらに、少なくとも2つのイオン化被分析物源、例えば、MALDIおよびESI、LIADおよびESI等を使用して、質量分析器に提供された被分析物から質量スペクトルを取得するステップを含むことができる。
【0087】
いくつかの実施形態では、方法は、車両、例えば、車、バン、バス、ヘリコプター、ホバークラフト、船、飛行機、潜水艦等の移動設定で、テントまたは他のシェルター等の単純構造で、住居、学校、レストラン、店、オフィス、工場、発電所、または同等物等の、化学または生物学的分析手順が日常的に行われない、住居、商業、または工業用の非研究室建造物の中等の非研究室設定で、サンプルから少なくとも1つの質量スペクトルを取得するステップを含む。少なくとも1つの質量スペクトルは、いずれの建造物設備とも無関係に、または電源以外のいずれの建造物設備とも無関係に取得することができる。いくつかの実施形態では、方法は、そのような設定または方式で、小分子、高分子、高分子錯体、ウイルス、細胞、胞子、微粒子、またはナノ粒子等の少なくとも1つの被分析物を含む、サンプルを特性化または識別するステップを含む。
【0088】
いくつかの実施形態では、方法は、疾患の少なくとも1つの指標が、動物(人間を含む)、植物、または他の生物からのサンプルに存在するかどうかを決定するステップを含み、疾患の指標は、例えば、代謝産物、細胞、細胞成分、タンパク質、または他の小分子、高分子、あるいは病原菌、古細菌、胞子(真核性および原核生物)、ウイルス、プリオン、または毒素等の感染物質を含む、疾患と関連付けられる粒子、それらの構成要素または代謝産物、あるいは癌または前癌細胞、あるいはそれらの構成要素または代謝産物を含むことができる。
【0089】
いくつかの実施形態では、方法は、法医学サンプル等のサンプルの起源または組成を決定または特性化するステップを含む。これは、サンプルの中の少なくとも1つの被分析物の存在または不在を決定することによって達成することができ、サンプルの中の被分析物の存在または不在は、サンプルの年齢、身元、または起源(例えば、生物サンプルの場合、サンプルが由来する生物の種、性別、民族性、血液型、年齢、健康または病状、遺伝子型、表現型等)等のサンプルの少なくとも1つの属性に関して、発見が行われることを可能にする。
【0090】
いくつかの実施形態では、方法は、ガス中に存在する分子または粒子を識別または特性化するステップを含む。ガスは、周囲空気であり得る。例えば、質、純度、通気性、工業、医療、または研究用途への好適性、あるいはガスの安全性に関連する、揮発性有機化合物、汚染物質、不純物、毒素、花粉、胞子、および他の構成要素を検出することができる。いくつかの実施形態では、方法は、建造物、車両、地下領域、または他の囲いの空気供給、または市、町、自治体、あるいはその小区分等の地理的地域中の大気等の、ガス中に存在する分子または粒子の長期監視のための場所に装置を設置するステップを含む。
【0091】
(実施例)
以下の具体的実施例は、いかなる方法でも残りの開示を制限せず、例証的にすぎないものとして解釈される。さらなる詳述がなくても、当業者であれば、本明細書の説明に基づいて、本発明をその最大限の程度で利用することができると考えられる。
【0092】
(実施例1)携帯用質量分析計の構築
真空チャンバ用の合成ポリ(メチルメタクリレート)を使用して、携帯用質量分析計を構築した。器具は、真空を提供するように、KNFダイヤフラムポンプおよびAlcatelターボ分子ポンプを含んだ。器具の全ての構成要素は、長さ30cm、高さ28cm、および幅25cmのケーシング内に含まれた。器具の全質量は、約16kgであった。この質量分析計は、約500から約200万に及ぶm/z比を測定することができる。装置は、r0=10mmおよびz0=7.07mmの寸法を伴うイオントラップを備えた。器具が鏡3またはLIADプレート5を含まなかったことを除いて、器具の構成要素を示す概略設計が図1に示されている。装置は、壁コンセントを使用して電力供給された。
【0093】
2つのDC電力供給(Matsusada Precision Inc.、モデルS3−25NおよびS3−25P)が、±25kVを変換ダイノードに提供した。別のDC電力供給(Matsusada Precision Inc.、モデルS1−5N)が、−2kVを電荷増幅検出器に供給した。さらに別のDC電力供給(Matsusada Precision Inc.、モデルS1−5P)が、2kVをエレクトロスプレーイオン化源に供給した。全てのDC電力供給は、自家製D/A変換器によって制御された。小型フォトダイオード励起型Nd:YAGレーザの3倍増からの355nmの波長を伴うパルスレーザビームを、MALDI用のレーザ光源として器具で使用することができる。パルスあたりのレーザエネルギーは、約120μJであった。
【0094】
携帯用質量分析計は、本質的に図6Bに示されるように、データ収集基板を含んだ。基板は、約11cm×11cmであった。基板は、イオントラップ質量分析器への正弦波信号入力を生成した自家製任意波形発生器である、質量分析計シーケンス制御器チップおよび掃引正弦波合成器回路を使用して、イオントラップRF電場を制御した。合成器回路を、以下で論議される高電圧演算増幅器に結び付けた。質量分析計シーケンス制御器チップおよび掃引正弦波合成器回路の上流制御は、コンピュータに接続することができる、USBインターフェースまたは汎用デジタル入出力インターフェースを介した。データ収集基板はさらに、アナログフロントエンドと、基板構成要素用の電力供給とを備えた。
【0095】
携帯用質量分析計はさらに、高電圧演算増幅器を含んだ。高電圧演算増幅器は、専用プリント回路基板(約14cm×14cmのサイズを伴う)上で、高電圧電力帯域幅MOS−FET演算増幅器(APEX microtechnology,モデルPA85A)を、最大±450Vまで信号を増幅することができる正および負のDC電圧電力供給(Matsusada Precision Inc.、モデルS30−0.6NおよびS30−0.6P)(図6C参照)と連結することによって作製された。
【0096】
電荷増幅検出用のチャネルトロンパルス増幅器およびパルスホルダ回路によって、および直接電荷検出用の電荷検出器パルス増幅器およびパルスホルダによって、(電荷検出プレート/カップおよび変換ダイノード等のオフボード検出器構成要素とともに)粒子検出を行った。これらは、図6Bに示されるアナログフロントエンドの一部であった。
【0097】
10チャネルADC、8チャネルDAC、汎用デジタルI/Oインターフェース、およびUSBインターフェースによって、マルチチャネルアナログおよびデジタル入出力(I/O)を行った。10チャネルADCは、アナログフロントエンドから粒子検出パルスデータを(および随意で、オフボードデバイスからアナログ信号を)読み出した。8チャネルDACは、変換ダイノード、ピンチ弁、イオン化源等を含む、オフボードデバイスのアナログ制御を提供した。装置の上流制御に、および/またはデータ出力に、USBインターフェースを使用した。
【0098】
この装置は、壁コンセントまたは発電機等の外部電源によって電力供給された。質量分析計のケーシングにリチウムイオンバッテリを含み、バッテリを装置の電動構成要素に接続することによって、この実施例で説明されるような器具に基づいて、内蔵型電源を伴う携帯用装置が構築される。リチウムイオンバッテリは、ラップトップコンピュータに電力供給するバッテリと同様であり、150W電力を供給することが可能である。このバッテリ電動式質量分析計の分析能力は、上記で説明される壁コンセントまたは発電機電動式器具の能力と同様になると見込まれる。
【0099】
(実施例2)携帯用質量分析計を用いたMALDI
5フェムトモル、100フェムトモル、または100ピコモルのアンジオテンシンを、携帯用質量分析計のMALDIサンプルプレート上に配置し、2,5−ジヒドロキシン安息酸マトリクスを使用した。20回のレーザパルスを使用して、脱離イオン化を達成し、2ミリトルの内圧を有した四重極イオントラップ質量分析器に被分析物を導入した。これらの量のアンジオテンシンのそれぞれを使用した周波数走査によって取得されたMALDI質量スペクトルは、図4((a)5fモル、(b)100fモル、(c)100pモル)に示されている。各質量スペクトルでは、主要なピークは、プロトン化アンジオテンシンであった。携帯用質量分析計を使用して検出可能なアンジオテンシンの最低数量は、5fモル(図4(a))であった。
【0100】
(実施例3)携帯用質量分析計を用いたESI
インスリン、アンジオテンシン、シトクロムc、およびミオグロビンを用いて、各々、45%メタノール/45%水/10%酢酸中で10−5Mの濃度において、パルスモード大気ESIを別個に行った。エレクトロスプレーイオン化を行うために、KDS−100シリンジポンプとともに、30μmPicoTipエミッタを使用した。100μl Hamiltonシリンジを使用して、サンプルをこの源に導入した。シリンジ流速は60μl/hであり、エミッタ電圧は2.5kVであり、イオン導入時間は5秒であった。二方常時閉鎖ピンチ弁と連結された、127μm内径のステンレス鋼キャピラリ入口を、パルス関数発生器によって制御し、ピンチ弁は、24VDC信号で開いた。1/16インチ内径のシリコン管を使用して、ピンチ弁およびキャピラリを接続した。サンプル導入後、四重極イオントラップ質量分析器の内圧を0.8ミリトルまで低減した。1秒の走査時間で、周波数走査を300から100kHzまで行った。アンジオテンシンおよびインスリンのESI質量スペクトルが、それぞれ、図5A(a)および(b)に示されている。10kD以上までイオントラップによって選択されたサンプル分子量を増加させることによって、質量スペクトルを観察した。シトクロムcおよびミオグロビンのESIスペクトルが、それぞれ、図5B(a)および(b)に示されている。複数の荷電種からのピークが、図5Aおよび5Bで標識化されている。
【0101】
(実施例4)イオン濃縮および衝突誘起解離
約500Daから約2MDaの分子量を伴うイオンを、サンプルから生成し、実施例1の内蔵型電源を伴う携帯用装置のイオントラップを備えている質量分析器に導入した。特定のm/z比のイオンを、電圧走査によって選択した。150kHz、10Vppの補足ACを用いた共鳴放出(以下参照)で動作する、300から100kHz、800Vpp(ピーク間電圧)の周波数走査を使用することによって取得される、アンジオテンシンの質量スペクトルが、図8に示されている。この質量スペクトルの中の主要なピークは、プロトン化アンジオテンシンであった。
【0102】
トラップの中の選択されたイオンは、イオン識別のために後続の断片化を受ける。イオントラップの中のイオンは、m/z比に依存する共鳴周波数を有する。イオンへの共鳴周波数の印加は、イオンによる励起および振動の増大した半径をもたらし、最終的にイオンの放出につながる。これは、異なる共鳴周波数を伴うイオンの放出を引き起こさない。高速フーリエ変換技術を使用することによって、複数のイオン共鳴励起周波数を含有する波形が合成される。この波形は、自家製任意波形発生器によって生成される。この波形は、イオンの捕捉後にRF増幅器に提供される。この過程を繰り返すことによって、所望されないイオンが放出されるため、所望のm/z比のイオンが選択的に濃縮される。次いで、所望のイオンは、衝突誘起解離によって分析され、それにより、それらの構造に関して情報が取得される。
【0103】
(実施例5)放出されたイオンの検出
高分子およびより大きい粒子の検出のために周波数走査を使用することができ、小さい有機化合物等の被分析物の高分解能スペクトルのために電圧走査を使用することができる。イオン化サンプル分子は、内蔵型電源を伴う携帯用質量分析計のイオントラップから放出され、2つの出口ポートのうちの1つを通って移動した。電荷を直接測定するように、一方の出口ポートのすぐ外側に電荷検出器を設置した。電子回路および質量分析計設計に応じた固有電子背景を含んだ電荷検出器からのデータは、約200個の電子と同等であった。高電圧でバイアスされた変換ダイノードを、他方の出口ポートの外側に設置した。後に変換ダイノードから放出された二次イオンまたは電子が、電荷増幅デバイスによって検出された。トラップから退出する小さいイオン(m/z<10,000)を検出するために、変換ダイノードを二次電子放出に対してバイアスした。高分子イオン(m/z>10,000)を検出するために、変換ダイノードおよび電荷増幅検出器を、それぞれ、二次イオンの放出および検出に対して設定した。
【0104】
異なる量のシトクロムcの比較MALDI質量スペクトルが、図9A((a)2fモル、(b)100fモル、および(c)100pモル)に示されている。高分子量の分子を用いた二次イオン放出効率を増進するために、10kVの高電圧を変換ダイノードに印加した。携帯用質量分析計を使用して検出可能なシトクロムcの最低数量は、2fモル(図9A(a))であった。
【0105】
同様に取得された異なる量のBSAのMALDIスペクトルが、図9B((a)10fモルおよび(b)100fモル)に示されている。20kVの高電圧を変換ダイノードに印加し、二次イオン効率を増進した。質量分析計を使用して検出可能なBSAの最低数量は、10fモル(図9B(a))であった。
【0106】
サンプルの分子量が150kD以上であった時、質量スペクトルを依然として観察することができた。異なる量のIgGのMALDI質量スペクトルが、図9C((a)6fモル、および(b)6pモル)に示されている。質量分析計を使用して検出可能なIgGの最低数量は、6fモル(図9C(a))であった。
【0107】
(実施例6)電圧走査による質量分析
内蔵型電源を伴う携帯用質量分析計の中の共鳴電子LC回路を使用することによって、電圧走査用の高電圧正弦波を生成した。共鳴周波数は、Lがインダクタンスであり、Cが静電容量である、(L/C)1/2に等しい。μ0が自由空間の透過性であり、Kが長岡係数であり、Nが巻数であり、Aが断面積であり、lがコイルの長さである、μ0KN2Al−1として決定されたインダクタンスを用いて、自家製空気型円筒コイルインダクタを製造した。電圧走査のために、イオントラップ電場振動周波数を固定し、イオントラップの静電容量を決定し、固定周波数で共鳴を生じるようにインダクタンスの計算を可能にした。増幅のための使用を支援するように、インダクタンスの式に従ったパラメータを用いて、円筒コイルを製造した。自家製正弦波増幅器は、二次側高電圧を生成するようにインダクタを通過させられる一次側電圧を生成した。回路の共鳴を使用して、一次側電圧を高いレベルまで引き上げた。空気インダクタは、36mmの直径および50pFの負荷容量を有し、一次側ワイヤは、0.2mmの直径を有し、かつ1回の巻数を有し、二次側ワイヤは、1mmの直径を有し、かつ100回の巻数を有した。電圧は、700kHzで3kVppまで引き上げることができた。電力供給と連結されたパルス発生器を、選択されたイオンを濃縮するように、選択されたm/zを伴うイオンを捕捉するために使用した。引き上げられたトラッピング電圧および固定トラッピング周波数を使用して、アンジオテンシンの四重極イオントラップレーザ脱離質量スペクトル(図10)を取得した。
【0108】
(実施例7)データ処理および分析
内蔵型電源を伴う携帯用質量分析計の直接電荷検出器および/または電荷増幅検出器から取得された信号を、分析のために内蔵型コンピュータに投入した。質量スペクトルがコンピュータディスプレイ上に示された。デジタルデータを、さらなる分析のために、コンピュータに、または可撤性USBドライブ上に保存した。
【0109】
データが電荷増幅によって得られた。検出器からのアナログ信号が、自家製A/D変換器によってデジタル信号に変換された。A/D変換器は、データ入力および出力を制御するように、ビジュアルベーシックまたはC++を使用してプログラムされた。ソフトウェアは、随意で、データ収集および/または処理を表すパラメータとともに、7インチLCDディスプレイ上に示された、質量スペクトルを描画するように、正弦波関数発生器からのデジタル信号および情報を分析した。携帯用質量分析計のソフトウェアユーザインターフェースのスナップショットが図11に示されている。
【0110】
本明細書内の実施形態は、本発明の実施形態の例証を提供し、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。当業者であれば、多くの他の実施形態が本発明によって包含されることを容易に認識する。本開示で引用される全ての出版物および特許は、それらの全体で参照することにより組み込まれる。参照することにより組み込まれる資料が本明細書と相反する、または矛盾する程度に、本明細書は、いずれのそのような資料にも優先する。本明細書のあらゆる参考文献の引用は、そのような参考文献が本発明にとって従来技術であるという承認ではない。
【0111】
特に指示がない限り、請求項を含む本明細書で使用される、原料の数量、反応条件等を表す全ての数字は、「約」という用語によって、全ての場合に修正されるものとして理解されるものである。したがって、それとは反対に特に指示がない限り、数値パラメータは、近似値であり、本発明によって取得されることが求められる所望の性質に応じて変化してもよい。最低限でも、請求項の範囲の同等物の原則の適用を限定しようとせずに、各数値パラメータは、有効桁の数字および通常の丸めアプローチを踏まえて解釈されるべきである。
【0112】
特に指示がない限り、一連の要素に先行する「少なくとも」という用語は、一連の中のあらゆる要素を指すと理解されるものである。当業者であれば、日常の実験のみを使用して、本明細書で説明される本発明の具体的実施形態の多くの同等物を認識するか、または解明することができるであろう。そのような同等物は、以下の請求項によって包含されることを目的としている。
【0113】
ある構成要素またはステップを含み、ある他の構成要素またはステップを含まないものとして記載される、請求された実施形態は、除外された構成要素またはステップを除いて、オープンであると理解され、つまり、除外された構成要素またはステップを含む装置または方法は、問題の請求された実施形態の範囲外となる。
【0114】
記載された機能を果たすように「構成される」、または記載された機能を行うことが「可能である」請求された実施形態は、外部必需品(例えば、分析用のサンプル、外部必需品はさらに、装置の仕様に応じて、外部コンピュータ、外部エネルギー源等を含むことができる)が提供される時に、装置が記載されていることを行うことができる方式で配置された、その構成要素を有すると理解される。概して、装置は、機能を実際に果たすために日常的設定(随意で、ユーザのコマンドを受けて生じてもよい、サンプルの導入およびコンピュータ制御された初期化等のステップを含む)が必要とされる場合に、機能を果たすように「構成される」、または機能を果たすことが「可能である」と見なされるが、装置の内部構成要素を追加、交換、または(例えば、構成要素が相互に接続される方法を変更することによって)手動で再構成しなければならない場合には、そのように見なされない。
【技術分野】
【0001】
本願は、米国仮特許出願第61/289,531号(2009年12月23日出願)を基礎とする優先権の利益を主張する。該出願の全内容は、参照により本明細書に援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、質量分析の分野に関し、具体的には、小分子被分析物、または高分子量あるいは質量対電荷(m/z)比を伴う被分析物を含むサンプルを使用する、質量分析を含む、携帯用器具を伴う質量分析に関する。
【背景技術】
【0003】
分光分析は、電磁場および放射とのその相互作用に基づいて、被分析物に関する情報を推測する技術である。質量分析(MS)は、その名前が示唆するように、質力の測定に関与する。質量分析計は、それらのうちのいくつかが単一原子の重量を量るため、世界で最も小さいはかりと呼ばれてきた。経時的に、質量分析の使用は、高分子を含む、ますます大きい分子へと拡張されてきた。また、これらの器具のうちのいくつかが携帯用であり、または持ち運びでき、現場で使用することができるように、より軽量かつよりコンパクトな質量分析計を構築することが可能になっているが、これらの器具には深刻な制限がある。
【0004】
質量分析計は、概して、イオン化被分析物源、質量分析器、および検出器を伴う。質量分析器および検出器は、大気に対して減圧下で動作し、該減圧は、真空ポンプによって提供することができる。携帯用器具では、それでもなお高い性能を維持する、軽量かつコンパクトな器具をもたらすように、これらの構成要素を最適化することが重要であり得る。質量分析は、一般に、ますます大きな被分析物に適合するようになってきているため、MSは、生物および化学サンプル中の高分子またはさらに大きい被分析物を識別するように、研究室設定で頻繁に適用されている。ポストゲノム時代では、ますます巨大な高分子アセンブリ、ならびにウイルスおよび全細胞等のさらに大きい生体粒子の特性化に、かつてないほどの関心がある。本発明以前に、携帯用器具を用いたMSに好適な被分析物のサイズの上限は、限定され、強い真空(例えば、<10−5トル)を伴わずに高分子を分析する能力は、さらに限定されていた。したがって、研究室設定の外側、例えば、法医学、生態学、環境、人類学、および考古学の現場作業で、バンベースの臨床またはスクリーニング企業等の移動医療設定で、または発展途上国で、ならびに、例えば、セキュリティ、食品安全性、または環境保護目的で、汚染物質または汚染物のスクリーニングにおいて、大型被分析物を用いたMSを行うことは、困難または不可能であった。しかしながら、そのような携帯用技術の恩恵として、より高速で、その分析力をより入手しやすくすることが挙げられ得る。携帯用器具からの空間および費用の削減はまた、プロテオミクス、ゲノミクス、代謝学、およびバイオマーカ発見等の分野での生物医学研究を含む、研究室用途で、ならびにナノ材料の構造研究および特性化で有用であり得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態は、(a)少なくとも1つのイオン化被分析物源と、(b)少なくとも1つのイオントラップを備えている質量分析器と、(c)少なくとも1つの検出器と、(d)随意で、少なくとも1つの真空ポンプとを備える、質量分析用の装置であり、装置は、携帯用である。
【0006】
本発明の別の実施形態は、(a)被分析物を含むサンプル、および本発明の装置を提供するステップと、(b)装置の少なくとも1つのイオン化被分析物源を使用して、被分析物が中性である場合に、それをイオン化し、それを装置の質量分析器に導入するステップと、(c)そのm/z比に従って被分析物を分別するステップと、(d)そのm/z比に従って分別された被分析物を検出し、それにより、質量スペクトルを取得するステップとを含む、質量スペクトルを取得する方法である。
【0007】
本発明の付加的な目的および利点は、以下に続く説明で部分的に記載され、部分的に説明から明白となり、または本発明の実践によって習得されてもよい。本発明の目的および利点は、添付の請求項で特に指摘されている要素および組み合わせを用いて、実現および達成される。
【0008】
先述の一般的説明および以下の詳細な説明の両方は、例示的および説明的にすぎず、請求されるように、本発明を制限しないことを理解されたい。
【0009】
本明細書に組み込まれ、その一部を構成する、添付図面は、本発明のいくつかの実施形態を図示し、説明とともに、本発明の原則を説明する働きをする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明の先述の側面および利点は、添付図面を参照して、以下の詳細な説明から明白と成り得る。
【図1】図1は、携帯用多重イオン化源生物質量分析計の構成要素の略図である。レーザ1は、2つの鏡2および3に向かって方向付けられるビームを発する。鏡2は、いくらかのレーザ光が鏡3へ通過することを可能にすることができるか、または鏡3へのアクセスを可能にするように、レーザ光の経路の外側の位置に切り替えることができる。鏡2は、レーザ光の経路の中にある場合、マトリクス支援レーザ脱離イオン化(「MALDI」)プレート4に光を向け直す。鏡3は、レーザ誘起音響脱離(「LIAD」)プレート5に光を向け直す。プレート4および5、ならびにエレクトロスプレーイオン化(「ESI」)源6および接地鋼鉄キャピラリ7は、被分析物をイオントラップ質量分析器8に供給することができる。変換ダイノード9およびチャネルトロン10は、電荷増幅検出によって質量分析器8から放出される被分析物を検出することができ、電荷検出器11は、直接電荷検出によって質量分析器8から放出される被分析物を検出することができる。
【図2】図2は、携帯用多重イオン化源生物質量分析計の詳細設計である。図1の構成要素に加えて、レーザ1用のレンズ載置リング20、器具の全ての電動構成要素用の電力供給21、ダイヤフラムポンプ22、ターボ分子ポンプ23、および質量分析器8の中の内部ガス圧の排出および圧力監視用の圧力ゲージ24が示されている。
【図3】図3は、放出された被分析物の同時電荷検出および電荷増幅検出のための異なる質量分析器出口ポートにおける電荷検出器および電荷増幅検出器の構成である。質量分析器8の第1の出口ポートに位置付けられる変換ダイノード9およびチャネルトロン10は、電荷増幅検出によって、そこから放出される被分析物を検出することができ、質量分析器8の第2の出口ポートに位置付けられる電荷検出器11は、電荷検出によって、そこから同時に放出される被分析物を検出することができる。また、MALDIプレート4および進入レーザ光経路31も示されている。電荷増幅検出に関与する一次および二次イオンの経路が標識化されている。
【図4】図4は、アンジオテンシンのMALDI質量スペクトルである。5フェムトモル、100フェムトモル、または100ピコモルのアンジオテンシンが、2,5−ジヒドロキシ安息香酸マトリクスで、実施例1の携帯用質量分析計のMALDIプレート上に配置された。質量スペクトルは、実施例2で説明されるように得られた。
【図5A】図5Aは、アンジオテンシン(a;上)およびインスリン(b;下)のESI質量スペクトルである。アンジオテンシンおよびインスリンは、それぞれ、メタノール/水/酢酸中で10μMの濃度において、実施例3で説明されるように、実施例1の装置を使用して、大気ESI−MSによって分析された。3+および4+と標識された(b)のピークは、それぞれ、三プロトン化および四プロトン化インスリンに対応する。
【図5B】図5Bは、シトクロムc(a;上)およびミオグロビン(b;下)のESI質量スペクトルである。シトクロムcおよびミオグロビンは、それぞれメタノール/水/酢酸中で10μMの濃度において、実施例2で説明されるように、実施例1の装置を使用して、大気ESI−MSによって分析された。
【図6A】図6Aは、プロトタイプ装置である。プロトタイプ装置は、データ収集基板および増幅器基板が利用可能となる前に構築された。図6Aは、プロトタイプ装置の写真である。この装置の選択構成要素が、図1−2で概略的に図示されている。図6Bに示されるようなデータ収集基板および図6Cに示されるような増幅器基板と組み合わせられた場合に、この装置は、図4および5に示されたデータを収集するために使用された種類であった。データ収集および増幅器基板は、以下で説明されるように、掃引正弦波発生器と、シーケンス制御器と、電圧増幅器と、それらの付随インターフェース(USB、DAC、ADC、およびアナログフロントエンド)およびDC電力供給とを含む。この写真が撮られた後に、これら2つのプリント回路基板が設置された位置が示されている。装置は、壁コンセントから受電した。尺度のために示された定規は、センチメートル単位である。
【図6B】図6Bは、データ収集基板である。携帯用質量分析計制御用の電子構成要素を含むプリント回路基板の写真が示されている。基板は、シーケンス制御器と、掃引正弦波発生器と、8−チャネルデジタル・アナログ変換器(DAC)と、10−チャネルアナログ・デジタル変換器(ADC)と、アナログフロントエンドと、ユニバーサルシリアルバス(USB)インターフェースと、DC電力供給とを含んだ。アナログフロントエンドは、チャネルトロン増幅器と、パルスホルダと、電荷検出器パルスホルダとを含んだ。尺度のために示された定規は、センチメートル単位である。図6Cに示されるような増幅器基板および図6Aのプロトタイプ装置とともに、この基板は、携帯用質量分析計を構築するために使用された。
【図6C】図6Cは、増幅器基板である。図6Bの回路基板からのRF信号の高電圧増幅のための機器を含むプリント回路基板の写真が示されている。増幅器基板は、DC入力、演算増幅器(OP増幅器)、RF入力、およびRF出力を2つずつ含み、これらのそれぞれの1つが標識化されている。尺度のために示された定規のデジタル測定値は、ミリメートル単位を表示する。
【図7A】図7A−7Fは、図6Bのデータ収集基板および図6Cの増幅器基板の追加前の複数の図で示されたプロトタイプ器具である。図6Aと同じプロトタイプが種々の角度で示されている。プロトタイプは、図7Aで起動されている、7インチLCDディスプレイを有する。いくつかのパネルで尺度のために示された定規は、センチメートル単位である。
【図7B】図7A−7Fは、図6Bのデータ収集基板および図6Cの増幅器基板の追加前の複数の図で示されたプロトタイプ器具である。図6Aと同じプロトタイプが種々の角度で示されている。プロトタイプは、図7Aで起動されている、7インチLCDディスプレイを有する。いくつかのパネルで尺度のために示された定規は、センチメートル単位である。
【図7C】図7A−7Fは、図6Bのデータ収集基板および図6Cの増幅器基板の追加前の複数の図で示されたプロトタイプ器具である。図6Aと同じプロトタイプが種々の角度で示されている。プロトタイプは、図7Aで起動されている、7インチLCDディスプレイを有する。いくつかのパネルで尺度のために示された定規は、センチメートル単位である。
【図7D】図7A−7Fは、図6Bのデータ収集基板および図6Cの増幅器基板の追加前の複数の図で示されたプロトタイプ器具である。図6Aと同じプロトタイプが種々の角度で示されている。プロトタイプは、図7Aで起動されている、7インチLCDディスプレイを有する。いくつかのパネルで尺度のために示された定規は、センチメートル単位である。
【図7E】図7A−7Fは、図6Bのデータ収集基板および図6Cの増幅器基板の追加前の複数の図で示されたプロトタイプ器具である。図6Aと同じプロトタイプが種々の角度で示されている。プロトタイプは、図7Aで起動されている、7インチLCDディスプレイを有する。いくつかのパネルで尺度のために示された定規は、センチメートル単位である。
【図7F】図7A−7Fは、図6Bのデータ収集基板および図6Cの増幅器基板の追加前の複数の図で示されたプロトタイプ器具である。図6Aと同じプロトタイプが種々の角度で示されている。プロトタイプは、図7Aで起動されている、7インチLCDディスプレイを有する。いくつかのパネルで尺度のために示された定規は、センチメートル単位である。
【図8】図8は、特定のm/z比のイオンを選択するように、周波数走査を使用し、共鳴放出で動作して取得された、アンジオテンシンの質量スペクトルである。主要なピークはプロトン化アンジオテンシンである。
【図9A】図9Aは、シトクロムcのMALDI質量スペクトルである。2fモル(a)、100fモル(b)、および100pモル(c)シトクロムcのスペクトルが、携帯用質量分析計の変換ダイノードに印加された10kV電圧を用いて取得された。
【図9B】図9Bは、ウシ血清アルブミン(BSA)のMALDI質量スペクトルである。10fモル(a)および100fモル(b)BSAのスペクトルが、携帯用質量分析計の変換ダイノードに印加された20kV電圧を用いて取得された。
【図9C】図9Cは、免疫グロブリンG(IgG)のMALDI質量スペクトルである。6fモル(a)および6pモル(c)IgGのスペクトルが、携帯用質量分析計の変換ダイノードに印加された20kV電圧を用いて取得された。
【図10】図10は、アンジオテンシンの四重極イオントラップレーザ脱離質量スペクトルである。アンジオテンシンのスペクトルは、電圧走査を使用し、固定トラッピング周波数を用いて、選択されたm/z比を伴うイオンを選択することによって、取得された。
【図11】図11は、携帯用質量分析計のソフトウェアユーザインターフェースのスナップショットである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(A.定義)
本発明の理解を促進するために、いくつかの用語が以下で定義される。本明細書で定義されていない用語は、本発明に関する分野の当業者によって一般的に理解されるような意味を有する。「1つの」および「その」等の用語は、単数の実体のみを指すことを目的とせず、その具体的実施例が例証に使用されてもよい、一般分類を含む。本明細書の用語は、本発明の具体的実施形態を説明するために使用されるが、それらの使用法は、請求項での概説を除いて、本発明の範囲を定めない。
【0012】
本明細書で使用されるような「携帯用」とは、例えば、手で持ち運ぶこと、転がすこと、カート上で移動させること、車両(電動車両等)の中で輸送すること、または自己推進手段によって、分解または再組立することなく、完全な装置を1つの場所から別の場所へ移動させることができることを意味し、装置は、非研究室設定でサンプルの質量スペクトルを取得するために使用することができ、すなわち、装置が動作するために、おそらく電力源以外の建造物設備は必要とされない。分解および再組立は、装置を電力源またはラップトップコンピュータ等の外部アイテムに接続する、電力またはデータケーブル等の外部構成要素を取り付ける、および/または着脱することを含まない。「人の携帯用」とは、1人または2人によって、分解または再組立することなく、装置を1つの場所から別の場所へ(例えば、スーツケース、バックパック、またはトランクの中で)運ぶことができることを意味する。
【0013】
装置は、装置がイオン化被分析物を質量分析器に提供するか、または少なくとも2つの異なる方法、例えば、イオン化被分析物源の場合はMALDIおよびLIAD、または検出器の場合は直接電荷検出および電荷増幅検出で、そのm/z比に従って質量分析器によって分別されたイオン化被分析物を検出するように構成される時に、2つの「機構的に異なる」イオン化被分析物源または検出器を備える。これは、必ずしもイオン化被分析物源または検出器が構造的に異なることを意味するわけではない。例えば、MALDIおよびLIADを用いると、同じレーザ、光学部、および脱離プレートを、両源の一部として使用することができるが、例えば、532nmの波長において、LIADで周波数倍増とともにレーザを使用することができる一方で、例えば、355nmの波長において、MALDIで周波数3倍増とともにレーザを使用することができる。いくつかの実施形態では、MALDI/LIADレーザは、倍増および3倍増結晶を手動で交換することによって、2倍モードから3倍モードへ、および逆もまた同様に切り替えることができる。いくつかの実施形態では、例えば、ビーム経路の内外に倍増および3倍増結晶を回転させることによって、自動的にモードを切り替えることができる。MALDIでは、レーザは、サンプルが配置されるプレートの側面を衝打するように方向付けられ、LIADでは、レーザは、おそらく増加したレーザフルエンスを用いて、反対側を衝打するように方向付けられる。レーザは、レーザビームを適切に方向付けるように光学部を切り替えることによって向け直すことができる。機構的に異なる源または検出器はまた、源または検出器のうちの一方が、他方の源または検出器によって使用されない少なくとも1つの構成要素を備える場合に、「構造的に異なる」。例えば、装置が、異なるサンプルプレート(しかし、同じレーザ)を使用する、LIAD源およびMALDI源を備える場合、それらは構造的に異なる。装置が、変換ダイノードおよびチャネルトロンを使用する電荷増幅検出器と、ファラデープレートとして変換ダイノードを使用するが、チャネルトロンを使用しない直接電荷検出器を備える場合、検出器は構造的に異なる。
【0014】
「小分子」は、高分子ではない分子である。小分子および高分子の両方は、非荷電および荷電原子または群を含むことができる(すなわち、小分子または高分子はイオンであり得る)。「高分子」は、多糖類、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、および付加物等のポリマー、ならびにそれらの組み合わせを含む。
【0015】
(B.装置の概説)
装置は、携帯用であり、少なくとも1つのイオン化被分析物源と、質量分析器と、周波数走査サブシステムと、少なくとも1つの検出器とを備える。装置は、随意で、真空ポンプを備える。少なくとも1つのイオン化被分析物源は、少なくとも1つの検出器によって検出することができるように、周波数走査サブシステムが、そのm/z比に従ってイオン化被分析物を分別するように制御することができる、質量分析器に、サンプルから取得されたイオン化被分析物を提供することができる。検出器は、分別された被分析物と相互作用することによってデータを取得することができる。例えば、装置内に含まれるコンピュータ、または装置からデータを受信する外部コンピュータによって、検出器によって取得されたデータから質量スペクトルを生成することができる。いくつかの実施形態では、装置は、種々の種類の被分析物、例えば、小分子、ナノ粒子、微粒子、高分子、高分子アセンブリ、胞子、ウイルス、細胞、および/または細胞小器官等の細胞構成要素の質量スペクトルを取得するように構成することができる。
【0016】
いくつかの実施形態では、装置は、105Da以上の分子量を有する被分析物、および1,000Da以下の分子量を有する被分析物、または105以上のm/z比、および1,000以下のm/z比を有する被分析物の質量スペクトルを取得するように構成される。したがって、装置は、概して、小型および大型被分析物の両方を分析することができる。そのような装置は、例えば、生物およびナノ技術サンプルに対して、非研究室設定で多彩な分析能力を提供し、高速で、またはそれらの発生地付近で、サンプルの特性化を促進する。装置は、小分子等のより大型および小型の被分析物の両方を分析することができるため、遭遇する場合があるサンプルの内容物が、予測不可能である用途、および/または質量において大きく異なり得る用途に好適である。
【0017】
いくつかの実施形態では、装置は、MALDI源およびLIAD源から選択される第1のイオン化被分析物源と、第1のイオン化被分析物源とは機構的に異なる少なくとも1つの付加的なイオン化被分析物源とを備える。これらの実施形態の装置はまた、単一の装置が、異なるイオン化被分析物源を使用して、同じまたは異なるサンプルから質量スペクトルを取得することができるという点において、非研究室設定で多彩な分析能力を提供し、遭遇する場合があるサンプルの内容物が、予測不可能である用途、および/または化学的性質において大きく異なり得る用途に好適である。
【0018】
例えば、MALDIまたはLIAD源は、比較的低い程度の断片化を伴って、被分析物を質量分析器に提供することができる。より大きい程度の断片化、例えば、電子イオン化、電子捕獲イオン化、または多光子解離あるいは衝突誘起解離を行う源等の解離源を伴って、被分析物を質量分析器に提供するよう、別の第2の源を選択することができる。低断片化は、高分子、細胞、および/または被分析物の混合物等の被分析物で有用となり得、断片化は、極端に複雑で解釈し難いスペクトルをもたらし得る。より高い断片化は、断片サイズから取得することができる構造的情報が所望される時に、比較的純粋なサンプルで有用であり得る。
【0019】
いくつかの実施形態では、装置の中の少なくとも2つの異なるイオン化被分析物源の存在は、例えば、MALDIおよびLIADがよく適合する、高分子量被分析物を含むサンプルと、関心の被分析物が、MALDIでレーザ照射によって構造的に改変される場合がある、またはLIAD源を使用する時に十分にイオン化しない場合がある、小分子および/または光解離性物質であるサンプルとの両方を含むように、解釈可能なデータまたは質の高いデータを取得することができる、考えられるサンプルの範囲を拡張することができる。
【0020】
(C.イオン化被分析物源)
装置は、イオン化状態において、気相で被分析物を質量分析器に提供する、イオン化被分析物源を備える。いくつかの実施形態では、イオン源は、最初に固体または液体形態で提供される被分析物を蒸発させるように構成することができる。被分析物は、例えば、多原子イオンの場合等に、最初に帯電させることができる。いくつかの実施形態では、イオン源は、正電荷または負電荷を持つ程度を増大させること等によって、最初に中性荷電状態である被分析物をイオン化するように、および/または被分析物のイオン化状態を変化させるように構成される。他の実施形態では、イオン源は、蒸発および/またはイオン化に加えて、例えば、ガスまたは液体クロマトグラフを備えるイオン源等の被分析物を分別し、精製し、または分画することができる。
【0021】
複数のイオン化被分析物源が、装置に存在し得る。生成されるイオンは、イオントラップ、四重極、または飛行時間質量分析器等の質量分析器の中で分析される。それらは全て、質量対電荷比(m/z)分析に同じ質量分析器を使用することができる。それらはまた、1つまたは1つより多くの検出器を備えることができる、同じ検出器システムを共有することもできる。
【0022】
イオン化被分析物源は、マトリクス支援レーザ脱離/イオン化(MALDI)、エレクトロスプレーイオン化(ESI)、レーザ誘起音響脱離(LIAD)、脱離エレクトロスプレーイオン化(DESI)、リアルタイムでの直接分析(DART)、低温プラズマ周囲イオン化(LTP)、超音波イオン化(UI)、電子衝突イオン化(EII)、大気圧化学イオン化(APCI)、電子イオン化(EI)、グロー放電電子イオン化(GDEI)、電子付着(EA)、赤外多光子解離(IRMPD)、電子捕獲解離(ECD)、および衝突誘起解離(CID)を含むことができる。いくつかの実施形態では、イオン化被分析物源は、MALDI、LIAD、またはESI源のうちの少なくとも1つ、これらの種類のイオン化被分析物源のうちの少なくとも2つ、またはこれらのうちの3つ全てを備える。付加的な蒸発およびイオン化モードも、本発明に含まれる。例えば、E. de Hoffmann and V. Stroobant, Mass Spectrometry: Principles and Applications (3rd Ed., John Wiley & Sons Inc., 2007)を参照されたい。
【0023】
いくつかの実施形態では、装置は、接地電圧で、および/または1から30000Vまたは100から500Vに及ぶ電圧で、動作するように構成されるMALDIサンプルプレートを備える。
【0024】
MALDIおよび/またはLIADによるイオン化を達成するために、コンパクトレーザ (例えば、Spectra PhysicモデルExplorer 349 OEMダイオード励起型固体UVレーザ等のダイオード励起型Nd:YAGレーザ)を使用することができる。いくつかの実施形態では、MALDIを行うよりもLIADを行うために、高いレーザフルエンスが使用される。
【0025】
イオン化被分析物源によって生成されるイオンは、後に、衝突誘起解離等の種々の断片化過程による質量分析および/または分子識別のために、質量分析器に導入され、例えば、イオントラップで捕捉されることができる。
【0026】
いくつかの実施形態では、ESI源によって生成されるもの等のイオン化被分析物は、例えば、ピンチ弁を使用することにより、イオン化被分析物源と分析器との間の経路を短く開くことによって、パルス方式で質量分析器に導入することができる。例えば、キャピラリ、例えば、イオン化被分析物源から質量分析器へとつながる、長さ100mmおよび0.1−0.5mm内径入口のステンレス鋼キャピラリを、パルス関数発生器からの電気信号によって制御することができる、常時閉鎖ピンチ弁と連結することができる。このようにして、イオン化源から質量分析器までの経路を、所望の持続時間にわたって開くことができる。
【0027】
いくつかの実施形態では、ESI源等の源からのイオン化被分析物を、連続的に質量分析器に導入することができる。これは、例えば、質量分析器にイオン化被分析物を直接導入することを含み、例えば、約0.5W、0.75W、1W、またはそれ以上の加熱電力を用いて、凍結を防止するようにスプレー先端が加熱される。
【0028】
いくつかの実施形態では、装置は、例えば、ピンチ弁を連続的に開いて保つこと、またはパルス方式でそれを開くことによって、連続またはパルスモードのいずれか一方で動作するように構成される。いくつかの実施形態では、装置は、連続モード(例えば、約8ミリトル等の5−15ミリトル)よりもパルスモード(例えば、約0.09ミリトル等の0.05−0.2ミリトル)で、質量分析器の中に低い圧力を伴って動作する。
【0029】
いくつかの実施形態では、装置は、MALDIおよびLIADの両方を行うように構成される。LIADは、サンプルプレートの裏面にレーザビームを誘導することによって達成することができる。LIADは、さらなるイオン化を必要とすることなく、電荷を伴う粒子の脱離に有用となり得、少ない量の被分析物断片化を伴ってスペクトルを生成することができる。細胞および微粒子が実施例である。いくつかの実施形態では、中性粒子が生成され、例えば、電子衝突イオン化、またはグロー放電あるいはコロナ放電等の放電に被分析物を暴露させることによって、後続のイオン化過程が行われる。例えば、2009年7月30日に公開された、Chenらの米国特許出願公報第2009/0189059号を参照されたい。LIADは、MALDI用のサンプル上にレーザビームを当てる代わりに、薄いサンプルプレートの裏面からレーザビームを当てることによって達成することができる。LIADおよびMALDIは、1つのサンプルプレートの前面および別のサンプルプレートの裏面上にレーザビームを方向付けるために一式の光学部を使用することによって、同じレーザを使用する同じ装置で達成することができる。例えば、図1を参照されたい。代替として、光学部は、同じサンプルプレートの前面または裏面のいずれか一方の上にレーザ光を方向付けるように構成することができる。
【0030】
いくつかの実施形態では、器具は、イオン化被分析物源によるイオン化および/または気相への導入の前に、サンプルの中の構成要素を分離する、サンプル処理デバイスを備える。サンプル処理デバイスは、クロマトグラフ、例えば、ナノHPLCまたは他のマイクロ流体液体クロマトグラフィデバイスであり得る。
【0031】
(D.質量分析器)
装置は、質量分析器を備える。質量分析器は、種々の種類のイオントラップ質量分析器から選択することができる。
【0032】
質量分析器は、専用または市販の電子構成要素によって制御することができる。例えば、四重極イオントラップによる周波数および/または電圧走査のための信号を生成する際に、ANALOG DEVICES AD5930プログラム可能周波数掃引および出力バースト波形発生器、およびAPEX PA94正弦波増幅器等の構成要素を使用することができる。
【0033】
いくつかの実施形態では、装置は、イオントラップを備え、周波数走査および電圧走査のうちの少なくとも1つによって、質量スペクトルを得るように構成される。いくつかの実施形態では、装置は、別個の運転で、周波数走査および電圧走査の両方によって質量スペクトルを得ることができる。周波数走査は、高いm/z比を伴う被分析物に有用であり得る。電圧走査は、高分解能スペクトルを得るのに有用であり得る。周波数および電圧走査は両方とも、イオントラップからイオンを選択的に放出することによって動作し、放出は、それらのm/z比に従って、走査中に周波数または電圧による不安定な軌道を有するイオンをもたらす。これらのイオンは後に、以下で説明される検出器によって検出される。
【0034】
質量分析器は、それらの質量対電荷比に従って、空間および時間で被分析物を分別し、そうするために電場および/または磁場を使用することができる。
【0035】
被分析物は、イオントラップの中で分析することができる。この種類の質量分析器は、被分析物に、無線周波数(RF)で振動する電場を受けさせることができる。いくつかの実施形態では、不安定性質量選択および隔離を行うように、DCバイアスがイオントラップ電極に印加される。DCバイアスは、例えば、約2000Vであり得る。イオントラップは、ほとんどの種類の質量分析器と比較して、比較的高いガス圧で動作することができ、したがって、例えば、より少ない、またはより小さい真空ポンプの使用を可能にするか、真空ポンプを全く使用せず、その結果として、バッテリ電動式器具の場合に必要なバッテリサイズを縮小することによって、器具の全体的な重量の低減を可能にすることができる。いくつかの実施形態では、装置は、1つの真空ポンプによって達成することができる内部質量分析器圧力を用いて、または真空ポンプを伴わずに、あるいはオフにされている真空ポンプを伴って、周囲大気圧で動作するように構成される。
【0036】
種々のイオントラップの幾何学形状が、当技術分野で公知である。例えば、E. de Hoffman and V. Stroobant, Mass Spectrometry: Principles and Applications (3rd Ed., John Wiley & Sons Inc., 2007) and Ouyang,他, Annu. Rev. Anal. Chem. 2:187−214 (2009)を参照されたい。いくつかの実施形態では、イオントラップは、四重極、線形、直線、円筒形、トロイダル、およびハローイオントラップから選択される種類である。
【0037】
イオントラップは、端部キャップ電極およびリング電極を有することができる、ポールイオントラップとしても知られている、3次元四重極イオントラップであり得る。端部キャップ電極は、双曲線であり得る。端部キャップ電極は、楕円であり得る。光散乱の観察を可能にし、それを通して被分析物を放出することができる、穴を端部キャップ電極に開けることができる。その質量対電荷比に従って、トラップから被分析物を放出するように、振動の周波数を走査することができる。
【0038】
イオントラップは、2次元イオントラップとしても知られている、線形イオントラップ(LIT)であり得る。線形イオントラップは、4つの棒電極を有することができる。棒電極は、RF電位の印加を通して、トラップの中の被分析物の振動を引き起こすことができる。トラップの中央に向かって被分析物をはねつけるように、付加的なDC電圧を棒電極の端部に印加することができる。線形イオントラップは、棒電極の端付近に配置された端部電極を有することができ、これらの端部電極は、トラップの中央に向かって被分析物をはねつけるように、DC電圧を受けることができる。被分析物は、線形イオントラップから放出することができる。放出は、例えば、トラップ付近の付加的な電極によって生成される、フリンジ電界効果を使用して、軸方向に達成することができる。放出は、棒電極に切り込まれたスロットを通して、半径方向に達成することができる。LITは、軸方向および半径方向に放出される被分析物を検出するよう、1つより多くの検出器と連結することができる。
【0039】
イオントラップ質量分析器のサイズは、x0(線形または直線型イオントラップについて)、またはr0およびz0(四重極、円筒形、トロイダル、およびハローイオントラップについて)の寸法に関して説明することができる。例えば、Ouyang,他, Annu. Rev. Anal. Chem. 2:187−214 (2009)を参照されたい。いくつかの実施形態では、装置は、1μmから30mm、20μmから25mm、500μmから20mm、5mmから15mm、1mmから30mm、1mmから25mm、2mmから20mm、2mmから15mm、または1μmから500μmに及ぶ、x0またはr0値を伴うイオントラップを備える。いくつかの実施形態では、装置は、1μmから30mm、20μmから25mm、500μmから20mm、5mmから15mm、1mmから30mm、1mmから25mm、2mmから20mm、2mmから15mm、または1μmから500μmに及ぶ、z0値を伴うイオントラップを備える。いくつかの実施形態では、装置は、1.05から1.6、1.1から1.5、1.15から1.45、1.2から1.42、1.05から1.4、1.1から1.4、または1.25から1.35に及ぶ、r0/z0比を有するように選択されるr0およびz0値を伴うイオントラップを備える。いくつかの実施形態では、比は、例えば、約√2(約1.414)の比を使用して、電界幾何学の理想を最適化するように選択することができる。これは、信号強度を最大限化するのに役立つことができる。他の実施形態では、比は、例えば、z0寸法が、所与のx0値に対して比較的大きい、より低い比を使用して、化学シフトの現象を最大限化するように選択することができ、例えば、1.1対1.41、1.15対1.4、1.2対1.4、1.05対1.4、1.1対1.4、または1.25対1.35である。これは、測定された被分析物のm/z比および質量の精度を最大限化するのに役立つことができる。例えば、Wells,他, Anal. Chem. 71:3405−3415 (1999)を参照されたい。
【0040】
いくつかの実施形態では、質量分析器は、小さい寸法を伴うイオントラップのアレイ、例えば、1μmから20μmに及ぶ寸法r0またはx0を有する、256個の円筒形または線形イオントラップのアレイを備える。イオントラップのアレイを備える質量分析器を使用することにより、より高いイオン捕捉能力をもたらすことができる。例えば、Ouyang,他, Annu. Rev. Anal. Chem. 2:187−214 (2009)を参照されたい。
【0041】
(E.周波数走査サブシステム)
装置は、イオントラップの中で振動電場を生成することができる、生成することが可能である、および/または生成するように構成される、周波数走査サブシステムを備え、電場は、段階的に、または掃引的に、走査中に経時的に変化する周波数を有する。
【0042】
いくつかの実施形態では、サブシステムは、範囲、例えば、1,000,000Hzから100Hz、200,000Hzから500Hz、または10,000Hzから100Hzを含む範囲を通して円滑に移動する、掃引周波数を伴う電場を生成することができる。走査の持続時間は、例えば、50ms等の、5から500ms、または25から100msに及ぶ時間であり得る。
【0043】
いくつかの実施形態では、サブシステムは、経時的に階段状になる、一連の周波数を伴う電場を生成することができる。周波数は、サイクルの数の値、例えば、5サイクル等の、2から50、または3から10に及ぶサイクルの数で維持され、次いで、次の周波数へと階段状になる。秒でのサイクルの長さは、周波数、例えば、100Hzの逆数であり、サイクルは、0.01秒かかる。例えば、周波数は、10000Hzから100Hzへ階段状になることができ、各段階は、Hzの設定数によって、前の周波数の相対的割合によって、周波数を変化させる。設定数は、例えば、1Hz等の、0.1から100Hz、0.2から50Hz、0.3から20Hz、または0.5から5Hzに及ぶ数であり得る。割合は、例えば、100万分の1から100、または100万分の10から20に及ぶ、前の周波数の割合であり得る。
【0044】
電場の振幅は、所望のm/z比の被分析物を捕捉するのに十分な電圧、例えば、200、300、350、400、450、500、550、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、または1500Vで、周波数走査中に一定に保つことができる。いくつかの実施形態では、電圧は、公差内で一定に保たれる。公差は、例えば、1%、0.5%、0.25%、または0.1%以下であり得る。振幅を一定に保つことにより、マシュー方程式qz=8eV/(mΩ2(r02+2z02))を使用して決定することができる、周波数の関数として放出されるイオンのm/z比の決定を簡略化することができ、式中、qzは、被分析物電荷であり、eは、電子の電荷であり、Vは、電場の(電圧における)振幅であり、mは、被分析物の質量であり、Ωは、被分析物の放出時の周波数であり、r0およびz0は、3Dイオントラップのトラップ寸法である。適切な同様の方程式を、他のトラップ幾何学形状に使用することができる。
【0045】
周波数走査サブシステムは、掃引および/またはステップ周波数を伴うRF信号を生成することができる、同調可能な構成要素を伴う共鳴電子要素、例えば、同調可能なインダクタまたはコンデンサを伴うLC回路、または関数発生器を備えることができる。同調可能な要素は、例えば、コンデンサの要素の間の距離を変化させることにより、またはインダクタコイルの長さまたは断面積を変化させることにより、静電容量を調整することによって、走査中に周波数を掃引するか、または階段状にするように同調することができる。同調可能な要素を同調することによって周波数を調整するために、ステッピングモータを使用することができる。
【0046】
いくつかの実施形態では、周波数走査サブシステムは、関数発生器と、演算増幅器と、質量分析計シーケンス制御器とを備える。関数発生器は、周波数掃引波形発生器としても知られている掃引正弦波発生器、または任意波形発生器であり得る。関数発生器は、掃引周波数を生成する、電圧制御された発振器を備えることができる。関数発生器は、直接デジタル合成(DDS)回路を備えることができる。DDS回路は、電子制御器と、メモリと、水晶発振器等の基準周波数源と、DACと、カウンタとを備えることができる。
【0047】
関数発生器は、専用または市販の発生器、例えば、ANALOG DEVICES AD5930プログラム可能周波数掃引および出力バースト波形発生器であり得る。好適な市販の演算増幅器の実施例は、APEX PA94正弦波増幅器である。
【0048】
いくつかの実施形態では、装置は、実行されると、上記で論議されるように、掃引またはステップ周波数走査を行うように周波数走査サブシステムに命令する、命令を備える、電子メモリ媒体を備える。いくつかの実施形態では、該電子メモリ媒体は、装置に接続される外部コンピュータによって含まれる。いくつかの実施形態では、該命令は、内部コンピュータによって含まれる。
【0049】
いくつかの実施形態では、装置は、装置を用いて周波数走査を行うための人間が読み取れる命令を伴う。人間が読み取れる命令は、コンピュータを用いて読み取ることができる命令を含む。命令は、書面(例えば、マニュアルまたはブックレット)または電子形態(例えば、CD−ROM、ディスケット、メモリスティック、または他のデジタル記憶媒体上に、装置あるいは装置に付随するコンピュータの内部メモリ(例えば、ROM、NVRAM、またはハードドライブ)の中に含まれた、任意の可読形態のファイル)であり得る。
【0050】
(F.検出器)
装置は、少なくとも1つの検出器、例えば、直接電荷検出器、電荷増幅検出器、または光散乱検出器を備える。
【0051】
直接電荷検出器は、質量分析器から退出するイオン(「一次イオン」)を直接検出するように動作し、被分析物上の電荷の総数を測定する。最初の信号が、増幅を伴わずに被分析物との相互作用を介して生成され、背景信号の存在を制限するので、直接電荷検出器は、比較的低い雑音レベルを有する。
【0052】
電荷増幅検出器は、一次イオンが、そのような接触の結果として複数の電子またはイオンを発する構成要素に接触することを可能にすることによって、電子または二次イオンを生成する。この構成要素は、例えば、変換ダイノードであり得る。電荷増幅検出器は、電子または二次イオンの放出が信号を増幅するので、より優れた感受性を有することができる。いくつかの実施形態では、最大約25kV、例えば、約20kVのDCバイアスが、変換ダイノードに印加される。いくつかの実施形態では、感受性を最適化し、電子雑音を最小限化するために、15kVよりも大きい電圧等の高いダイノード電圧が、0.1ミリトル未満、例えば、0.01−0.1ミリトルの圧力で、検出と組み合わせられる。他の実施形態では、電力消費または重量等の特徴を最小限化することによって(例えば、比較的小さいバッテリ、および/または、より少ない、あるいは小さい真空ポンプの使用を可能にすることによって)、携帯性および/または装置が外部電力なしで動作することができる持続時間を増進するために、ダイノードDCバイアス用のより低い電圧を、検出時のより高い圧力とともに使用することができる。
【0053】
カメラ、例えば、CCDカメラ等の光散乱検出器は、質量分析器の中の被分析物によって散乱される光(例えば、レーザ光)を検出するように構成することができる。例えば、W.P. Peng,他, Angewandte Chemie Int. Ed., 45:1423−1426 (2006)を参照されたい。
【0054】
少なくとも1つの検出器は、ファラデープレート、ファラデーカップ、または誘導電荷検出器等の直接電荷検出器、マイクロチャネルプレート(MCP)、マイクロスフェアプレート、電子増倍管、およびチャネルトロン等の電荷増幅検出器、および光散乱検出器から選択することができる。BURLE 5900チャネル検出器等の市販の検出器が、器具で使用するために好適である。
【0055】
いくつかの実施形態では、同じ構成要素を、電荷検出および電荷増幅検出の両方で使用することができる。例えば、プレートを、電荷検出用のファラデープレートとして、かつ、電荷増幅検出用の変換ダイノードプレートとして使用することができる。そのような実施形態では、装置は、電荷検出によって、次いで、電荷増幅検出によって、または逆もまた同様に、連続的にスペクトルを得ることができるように、複数の検出モードを有するように構成される。
【0056】
いくつかの実施形態では、装置は、例えば、質量分析器の異なる出口ポートに位置することによって、同時に動作することができる、別個の電荷および電荷増幅検出器を備える。例えば、図3を参照されたい。
【0057】
いくつかの実施形態では、装置は、その1つが一次イオンに接触しない、例えば、誘導電荷検出器である、2つの検出器を備える。誘導電荷検出器は、被分析物の電荷の1つ以上の測定値をもたらす、単段または多段デバイスであり得る。誘導電荷検出器はまた、検出器の1つまたは複数の段階を通る被分析物の飛行時間の測定値をもたらすこともできる。センサは、1つ以上の伝導管またはプレートを含むことができる。管は、共線的かつ円筒形であり、等しい直径を有することができる。プレートは、平行ペアで配置することができる。センサへの入口は、一度に1つ等に進入粒子の数を制限し、それらの軌道が円柱軸に近いままであることを確実にする、より狭い管であり得る。荷電粒子が各感知管に進入する場合、荷電粒子は、それ自身にほぼ等しい電荷を管上に誘発する。各感知管は、誘発された電荷と関連付けられる電位を感知する、演算増幅器回路に接続することができる。粒子の電荷は、この電位および管の静電容量から計算することができる。誘導電荷検出器は、例えば、NASAのジェット推進研究所(Jet Propulsion Laboratory)による、「Induction Charge Detector With Multiple Sensing Stages」(2008年1月1日)で説明されている。したがって、一次イオンは、一次イオンに接触しない検出器を通過し、次いで、上記で説明されるように、電子または二次イオンを生成するように電荷増幅検出器の構成要素に接触することができる。
【0058】
被分析物に関する情報はまた、分子撮像によって取得することもできる。サンプルの分子撮像を行うために、サンプルがマイクロメータ制御されたプレート上に載置されるか、または、鏡またはレンズ等の光学構成要素を調整して、質量分析器の中へレーザを方向付けて被分析物を照射するように、マイクロメータを用いてレーザ光路を変化させることによって、レーザビームが誘導される。光散乱および振動情報をもたらすことができる、照射された被分析物に由来する画像を収集するために、CCDカメラ等の画像収集デバイスを使用することができる。例えば、Peng,他, Angew. Chem. Int. Ed. 45:1423−1426 (2006)を参照されたい。いくつかの実施形態では、例えば、約1000Hzの繰り返し率および20μmのビーム直径を伴って動作することによって、高速分子撮像が可能であるレーザが使用される。
【0059】
(G.真空ポンプおよび動作圧力)
本発明の装置は、質量分析器の内部が大気に対する低減空気圧下、または周囲大気圧で操作することができ、(随意で、減圧において)質量分析器の中に存在するガスは、例えば、空気、窒素、ヘリウム、アルゴン、六フッ化硫黄、ネオン、およびキセノンから選択することができる。減圧は、少なくとも1つの真空ポンプによって提供することができる。いくつかの実施形態では、ダイヤフラムポンプまたはスクロールポンプ等の第1のポンプは、ターボ分子ポンプ等の第2のポンプと連結される。いくつかの実施形態では、スクロールポンプまたはダイヤフラムポンプ等の単一の真空ポンプが使用される。いくつかの実施形態では、装置は、希ガスまたは不活性ガスの供給なしで動作する。いくつかの実施形態では、装置は、真空ポンプを備えないか、または少なくとも1つの真空ポンプを備え、真空ポンプ使用が低減または排除される、少なくとも1つの低電力モードで動作することができる。少なくとも1つの低電力モードでは、少なくとも1つの真空ポンプは、少なくとも1つのポンプの全出力動作によって生成される真空に対して圧力の中間低減を提供するように、より低い速度で操作することができる。装置が1つより多くの真空ポンプを備える場合、ポンプのうちの少なくとも1つが全能力未満で操作される少なくとも1つの低出力モードで、装置が動作することが可能であり得る。
【0060】
いくつかの実施形態では、装置は、0.01から100ミリトル、例えば、0.1から50ミリトル、0.2から40ミリトル、0.5から30ミリトル、1から15ミリトル、1から30ミリトル、1から40ミリトル、1から50ミリトル、1から60ミリトル、1から75ミリトル、または1から100ミリトルに及ぶ、内部質量分析器ガス圧で動作する。いくつかの実施形態では、装置は、1、5、10、15、20、25、30、40、50、60、75、または100ミリトルよりも大きい内部質量分析器ガス圧で動作するように構成される。
【0061】
いくつかの実施形態では、装置は、1気圧または周囲大気圧の圧力で動作する。これは、バッテリ寿命を延長するのに有用、および/または装置の重量およびサイズを低減するのに有用であり得る。装置が被分析物を検出する感度は、例えば、検出器とのガスの相互作用からの増大した雑音による、大気圧での動作によって低減され得る。この感度の損失は、他の検出器の種類よりもガス圧によって少ない影響を受け得る光散乱検出器を使用することによって、軽減することができる。光散乱検出器は、光散乱が、概して、より小さい被分析物に対するよりも大きい、より大きい被分析物で効果的であり得る。
【0062】
いくつかの実施形態では、装置は、エレクトロスプレーイオン化源を備え、パルスモードエレクトロスプレーイオン化を介して動作する。サンプル入力パルスの長さおよび周波数は、例えば、イオン化源と質量分析器との間のピンチ弁またはボール弁を使用して、開口を開閉することによって制御することができる。好適なピンチ弁の実施例は、24V DC信号によって操作される、二方向の常時閉鎖ピンチ弁である。好適なボール弁の実施例は、Swagelok電気アクチュエータ1/16インチボール弁である。パルスモード動作は、開口が開いている時に可能であるよりも開口が閉じている時に低いレベルまで、少なくとも1つの真空ポンプが質量分析器の中の内部ガス圧を低減することを可能にすることができる。代替として、イオン化源は、後続の操作、例えば、電圧走査、周波数走査、または飛行時間の測定等の、m/z比によって被分析物を分別するために、サンプルを質量分析器の真空チャンバの中へ直接注入することができる。いくつかの実施形態では、装置は、例えば、より高速のサンプリングおよびデータ収集を可能にするように、連続サンプル導入モードで動作することができる。いくつかの実施形態では、装置は、例えば、より高い分解能および/またはより低い雑音データ、またはより高速のサンプリングおよびデータ収集のために、ユーザ選好に適合するようにパルスおよび連続サンプル導入モードの間で切り替えることができる。
【0063】
(H.制御および通信)
いくつかの実施形態では、器具は、マイクロプロセッサ、ディスプレイ、インターフェース、バス、およびメモリ等の種々の要素を含む、内蔵コンピュータを備える。メモリは、揮発性(例えば、RAM)および不揮発性メモリ(例えば、ROM、ハードドライブ、NVRAM、または可撤性記憶媒体)を備えることができる。直接電荷検出器および/または電荷増幅検出器から取得される信号は、メモリにエンコードまたはインストールすることができるソフトウェアを使用して分析することができる。インターフェースは、例えば、ヒューマンインターフェースデバイス、例えば、キーボードまたはキーパッド、タッチパッド、タッチスクリーン、またはトラックボール、マウス、ジョイスティック、または外部キーボードあるいはタッチスクリーン等のヒューマンインターフェースデバイス用の端末またはポート、ならびに上記のデバイスのうちのいずれかの無線バージョン用の伝送機、受信機、および送受信機を含むことができる。いくつかの実施形態では、インターフェース構成要素は、ヒューマンインターフェースデバイス、外部メモリ、コンピュータ、電源、および同等物に接続することができる、多目的インターフェース、例えば、USBポート、シリアルポート、SCSIポート、パラレルポート、IEEE1394ポート、または同等物である。
【0064】
いくつかの実施形態では、器具は、器具を制御するオペレーティングソフトウェア、質量スペクトルを生成および/または描画するデータ分析ソフトウェア、および/またはユーザが器具を操作すること、および/または器具によって得られたデータを視認する、または取り出すことを可能にする、少なくとも1つのヒューマンインターフェースデバイスを備える、外部コンピュータに接続するための無線または有線インターフェースを備える。実施形態のうちのいくつかでは、上記の機能のうちのいくつかは、装置の中の内部コンピュータによって行われ、他の機能は、装置と通信する外部コンピュータによって行われる。
【0065】
(I.質量および組成)
いくつかの実施形態では、本発明の装置は、100、90、80、70、60、50、45、40、35、30、25、20、15、10、7、5、または4kg未満の総重量を有する。
【0066】
いくつかの実施形態では、質量分析器は、重量で少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、または99.9%の非金属材料、例えば、ポリ(メチルメタクリレート)(例えば、LUCITETM)、ポリプロピレン、ポリカーボネート、またはポリ塩化ビニル等のプラスチックから成る、真空チャンバを備える。いくつかの実施形態では、真空チャンバが構成される材料は、100、50、25、20、15、10、5、2、1、0.5、0.2、0.1、0.01、または0.001ミリトル未満の蒸気圧を有する。蒸気圧は、Jensen, J. Appl. Phys. 27:1460−1462 (1956;「Jensen」)の方法によれば、25℃で決定することができる。いくつかの実施形態では、真空チャンバが構成される材料は、10−2から10−5ミリトルに及ぶ蒸気圧を有する。例えば、Jensenの表1を参照されたい。いくつかの実施形態では、比較的高い圧力で動作する装置の能力により、そのような非金属真空チャンバを使用することが可能である。いくつかの実施形態では、真空チャンバは、ポリカーボネートまたはポリ(メチルメタクリレート)等の透明プラスチックを含み、眼で真空チャンバ内部を観察することが可能である。
【0067】
いくつかの実施形態では、真空チャンバは主に、金属被覆を伴う非金属である。金属は、アルミニウムまたはチタン等の軽量金属であり得る。いくつかの実施形態では、真空チャンバは主に、アルミニウムまたはチタン等の軽量金属であり得る、金属から成る。
【0068】
(J.電源)
いくつかの実施形態では、器具の電力消費は、500、400、300、200W、または150W未満、例えば、約150Wまたは約100Wである。いくつかの実施形態では、器具は、例えば、発電機から、または自動車のバッテリ、携帯用電子機器に好適なバッテリ(例えば、ラップトップコンピュータで一般的に使用されているもの等のリチウムイオンバッテリ)を含む、再充電可能であり得る、1つまたは複数の内部または外部バッテリからのDC電力、または変圧器あるいは壁コンセントを伴う発電機から等のAC電力等の電源を使用する。電源は、携帯用非バッテリ電源、例えば、太陽電池から等の太陽熱電力、燃料電池からの電力、または人力デバイス、例えば、手動クランクまたはフットペダルが装着された発電機からの電力であり得る。
【0069】
(K.質量分析計能力および構成)
いくつかの実施形態では、装置は、被分析物電荷と質量対電荷比(m/z比)とを同時に測定するように構成される。いくつかの実施形態では、被分析物電荷測定値は、個々の電荷が知られているイオン群の正味電荷の測定値であり(例えば、個々のイオンは、−1、+1、−2、+2、−3、+3等から選択される同じ電荷を有する)、この測定値は、イオン種の数量を取得するために使用することができる。いくつかのそのような実施形態では、被分析物は、2000、1500、1000、750、500、400、300、または200Da未満の分子量を伴う小分子である。
【0070】
いくつかの実施形態では、装置は、個々の被分析物種の電荷およびm/z比を測定するために使用される。これらのデータから、個々の被分析物種の質量を取得することができる。
【0071】
装置は、高いm/z比または分子量、例えば、少なくとも105、106、107、108、109、1010、1011、または1012のm/z比、または少なくとも105、106、107、108、109、1010、1011、1012、1013、1014、1015、または1016Daの分子量を伴う被分析物を用いて、MSを行うことができる、イオントラップを備えることができる。したがって、携帯用装置は、上記で論議されるように、比較的弱い真空を用いて、高いm/z比の被分析物または高分子量の被分析物でMSを行うことができる。装置が、少なくともある値の分子量またはm/z比を有する被分析物を用いてMSを行うことができるという指示は、装置がまた、小分子等のより小さい被分析物を用いてMSを行うことができないことを暗示しない。概して、この場合、本発明の装置は、小さい被分析物および大きい被分析物の両方を用いてMSを行うことができる。例えば、いくつかの実施形態では、装置は、100、500、1,000、5,000、または10,000Da以下の分子量を有する被分析物を用いて、あるいは100、500、1,000、5,000、または10,000以下のm/z比を有する被分析物を用いて、MSを行うことができる。この能力は、上記で論議されるような、より大きい被分析物を分析する能力に加えることができる。
【0072】
いくつかの実施形態では、装置は、モジュール構造を有し、少なくとも1つ、少なくとも2つ、またはそれより多くのイオン化モジュールが、各々が異なるイオン化被分析物源を備えて提供される。例えば、MALDI、LIAD、およびESI源から選択される源を個々に備える、少なくとも2つのモジュールを提供することができる。所望の用途に応じて、適切なモジュールを設置することができる。また、ユーザが、付加的なモジュールを得ることによって、器具の能力を拡張することができる。一方で、所望される時に、より少ないモジュールを使用することによって、器具の重量および費用を削減することができる。そのようなモジュール性質はまた、修復が必要になった場合に、より便利であり得る。
【0073】
いくつかの実施形態では、イオン化被分析物のESI源が、MALDIまたはLIAD源のうちの少なくとも1つと組み合わせられる。この源の組み合わせを備える装置は、高いm/z比を伴う被分析物に適合するイオントラップを用いて、非常に広い質量範囲を測定するために使用することができる。そのような装置の構築費用は、1つはMALDI−TOF質量分析用、もう1つはESI−イオントラップ質量分析用である、2つの別個の器具の構築費用よりも有意に少なくなり得る。
【0074】
いくつかの実施形態では、装置は、少なくとも2つの異なるイオン検出器、例えば、直接電荷検出器および増幅二次電子放出検出器を備える。いくつかの実施形態では、各検出器は、アセンブルモジュール上に載置される。イオン化モジュールと同様に、重量、費用、および能力の考慮に応じて、選択された検出器モジュールまたは複数の検出器モジュールを設置することができる。
【0075】
いくつかの実施形態では、装置は、少なくとも1,000、少なくとも5,000のダイナミックレンジ、または1,000から10,000に及ぶダイナミックレンジを有する。ダイナミックレンジとは、同じスペクトルの中で検出することができる、最大信号と最小信号との比を指す。いくつかの実施形態では、ダイナミックレンジは、タンデム質量分析を通して、例えば、106または107まで拡張することができる。いくつかの実施形態では、装置の全体的な質量範囲(すなわち、必ずしも同じスペクトルの中ではない、最小および最大可能測定質量)は、約10Daまたは約100Daから約1015Daまたは約1016Daに及ぶ。いくつかの実施形態では、m/Δmとして表される、装置によって取得される質量スペクトルの分解能、つまり、半最大値Δmにおけるピーク幅に対する測定質量mの比は、小分子については約500から2,000に及び、例えば、約1,000であり、約100kDaの質量の被分析物については約50から約100、および/または約1016Daの質量の被分析物については約4である。
【0076】
(L.移動式、電動式、自律、および/または遠隔制御実施形態)
いくつかの実施形態では、装置は、移動式である。移動性は、以下の組み合わせを含む、モータおよび車輪、トレッド、ホバーファン、ヘリコプターの羽、プロペラ、翼等のうちの少なくとも1つの存在によって、与えることができる。装置は、加えて、装置の移動が遠隔制御されることを可能にする、受信機を備えることができる。装置は、加えて、センサ、例えば、カメラ、マイクロホン、グローバルポジショニングシステム(GPS)、温度計、高度計、気圧計、光センサ等と、その位置および/または周辺に関する情報が無線で伝送されることを可能にする伝送機とを備えることができる。装置は、加えて、例えば、起伏の多い地形上で、指定された地理的な場所に向かって、および/または温度、圧力、高さ、アルベド、または同等物の指定のパラメータに合致する場所に向かって、装置が自律的にナビゲートすることを可能にする、人工知能システムを備えることができる。装置は、加えて、その周辺からサンプルを取得し、それを少なくとも1つのイオン化被分析物源に提供する、サンプリングシステムを備えることができる。いくつかの実施形態では、サンプリングシステムは、例えば、サンプルを粉砕する、精製する、溶解させる、または蒸発させることによって、それをイオン化被分析物源に提供する前に処理する。
【0077】
移動式、遠隔制御、および/または自律実施形態は、例えば、サンプルが毒性である、放射性である、感染性である、または潜在的にそうである、そのような物質の付近にある、または極端な環境に位置する時に、人間の操作者の安全性がサンプルの付近で、またはサンプルへの近接性によって危険にさらされる、危険な状況で有用であり得る。移動式、遠隔制御、および/または自律実施形態はまた、サンプルが、人間の操作者の手が届きにくい場所、例えば、洞窟の中、深海、宇宙空間、または別の惑星あるいは他の天体上にある状況で、有用であり得る。移動式、遠隔制御、および/または自律実施形態はまた、人間の介入を全く伴わずに、または最小限に伴って、領域を繰り返し調査する、または一掃する、例えば、単一の装置、または該装置が移動式ではない場合に必要とされるよりも少ない数の装置を用いて、複数の場所で経時的に種々の化合物または粒子の存在について試験するのに有用であり得る。
【0078】
(M.方法および用途)
いくつかの実施形態では、本発明は、携帯用装置を使用して少なくとも1つの質量スペクトルを取得する方法を提供する。方法は、サンプル、および上記で説明されるような装置を提供するステップと、被分析物が中性である場合にイオン化するために、装置の少なくとも1つのイオン化被分析物源を使用し、それを装置の質量分析器に導入するステップと、そのm/z比に従って被分析物を分別するステップと、そのm/z比に従って分別された被分析物を検出し、それにより、質量スペクトルを取得するステップとを含むことができる。
【0079】
いくつかの実施形態では、方法は、イオントラップを備える質量分析器を有する装置を用いて、被分析物の周波数走査を行うステップを含む。周波数走査は、100、150、200、500、1,000、2,000、5,000、および10,000Hz等の周波数を含む、周波数範囲にわたって走査するステップを含むことができる。いくつかの実施形態では、例えば、適切な分解能で、より広い質量範囲にわたって情報を取得するために、少なくとも2回の走査が、異なる走査速度で、および/または異なる周波数範囲にわたって行われる。例えば、100から10,000Daの質量範囲に対応する周波数における、より高い分解能で、およびより低い分解能であるが、10,000から1,000,000,000Daのより広い範囲で行うことができる。いくつかの実施形態では、方法は、イオントラップを備える質量分析器を有する装置を用いて、被分析物の電圧走査を行うステップを含む。いくつかの実施形態では、方法は、第1のスペクトルを取得するように、第1の範囲にわたって周波数走査を行い、次いで、第1のスペクトルのある領域を選択し、選択された領域に対して、より高い分解能を有することができる第2のスペクトルを取得するように、電圧走査であり得る、第2の走査を行うステップを含む。
【0080】
方法のいくつかの実施形態では、サンプルは、少なくとも105、106、107、108、109、1010、1011、1012、1013、1014、1015、または1016Daの分子量、または少なくとも105、106、107、108、109、1010、1011、または1012のm/z比を伴う被分析物を備え、質量スペクトルは、少なくとも105、106、107、108、109、1010、1011、1012、1013、1014、1015、または1016Daの分子量、または少なくとも105、106、107、108、109、1010、1011、または1012のm/z比に対応するピークを備える。
【0081】
いくつかの実施形態では、被分析物が中性である場合にイオン化するために、装置の少なくとも1つのイオン化被分析物源を使用し、それを装置の質量分析器に導入するステップは、被分析物をイオン化するステップ、または被分析物のイオン化状態を変化させるステップを含む。いくつかの実施形態では、被分析物は、液体または溶解状態で提供され、方法は、装置のイオントラップに被分析物を導入する前に、被分析物の状態を液体または溶解から気体に変化させるステップを含む。
【0082】
いくつかの実施形態では、方法は、そのm/z比にしたがって被分析物を分別する前に、被分析物で衝突誘起解離を行うステップを含む。これらの実施形態はさらに、例えば、衝突誘起解離を行う前に、望ましくない比を伴う被分析物を放出することによって、特定のm/z比の被分析物を選択するステップを含むことができる。これは、タンデム質量分析の形態である。
【0083】
いくつかの実施形態では、被分析物を検出するステップは、二次イオンまたは電子を生成し、検出するステップ、被分析物の直接電荷検出、または両方を含む。
【0084】
いくつかの実施形態では、装置の質量分析器は、イオントラップを備え、電圧または周波数走査等の、そのm/z比に従った被分析物の分別中に、イオントラップは、0.01から100ミリトル、例えば、0.1から50ミリトル、0.1から100ミリトル、0.2から100ミリトル、0.2から50ミリトル、0.2から40ミリトル、0.5から30ミリトル、1から15ミリトル、1から30ミリトル、1から40ミリトル、1から50ミリトル、1から60ミリトル、1から75ミリトル、または1から100ミリトルに及ぶ内部ガス圧等の、内部ガス圧を有する。いくつかの実施形態では、そのm/z比に従った被分析物の分別および/または電圧あるいは周波数走査中に、装置は、15、20、25、30、40、50、60、75、または100ミリトルよりも大きい内部質量分析器ガス圧で動作する。いくつかの実施形態では、装置は、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、または0.9気圧よりも大きい内部質量分析器ガス圧で、または周囲大気圧におけるガス圧で動作する。
【0085】
いくつかの実施形態では、被分析物は、周囲大気圧、または0.1から1atm、0.1から100ミリトル、0.2から100ミリトル、0.2から50ミリトル、0.2から40ミリトル、0.5から30ミリトル、1から15ミリトル、1から30ミリトル、1から40ミリトル、1から50ミリトル、1から60ミリトル、1から75ミリトル、または1から100ミリトルに及ぶ圧力等の、比較的高い圧力で捕捉され、周波数および/または電圧走査は、より低い圧力、例えば、0.01から0.1ミリトル、0.01から0.15ミリトル、0.02から0.1ミリトル、0.02から0.15ミリトル、0.05から0.1ミリトル、または0.05から0.15ミリトルに及ぶ圧力で行われる。これは、化学質量シフトの現象を最小限化することができる。例えば、Wells,他, Anal. Chem. 71:3405−3415 (1999)を参照されたい。これはまた、検出器によって登録される電子雑音等の雑音の量を低減することもできる。
【0086】
いくつかの実施形態では、方法は、上記で説明されるような少なくとも2つのイオン化被分析物源を備える、装置を提供するステップを含む。これらの方法はさらに、少なくとも2つのイオン化被分析物源、例えば、MALDIおよびESI、LIADおよびESI等を使用して、質量分析器に提供された被分析物から質量スペクトルを取得するステップを含むことができる。
【0087】
いくつかの実施形態では、方法は、車両、例えば、車、バン、バス、ヘリコプター、ホバークラフト、船、飛行機、潜水艦等の移動設定で、テントまたは他のシェルター等の単純構造で、住居、学校、レストラン、店、オフィス、工場、発電所、または同等物等の、化学または生物学的分析手順が日常的に行われない、住居、商業、または工業用の非研究室建造物の中等の非研究室設定で、サンプルから少なくとも1つの質量スペクトルを取得するステップを含む。少なくとも1つの質量スペクトルは、いずれの建造物設備とも無関係に、または電源以外のいずれの建造物設備とも無関係に取得することができる。いくつかの実施形態では、方法は、そのような設定または方式で、小分子、高分子、高分子錯体、ウイルス、細胞、胞子、微粒子、またはナノ粒子等の少なくとも1つの被分析物を含む、サンプルを特性化または識別するステップを含む。
【0088】
いくつかの実施形態では、方法は、疾患の少なくとも1つの指標が、動物(人間を含む)、植物、または他の生物からのサンプルに存在するかどうかを決定するステップを含み、疾患の指標は、例えば、代謝産物、細胞、細胞成分、タンパク質、または他の小分子、高分子、あるいは病原菌、古細菌、胞子(真核性および原核生物)、ウイルス、プリオン、または毒素等の感染物質を含む、疾患と関連付けられる粒子、それらの構成要素または代謝産物、あるいは癌または前癌細胞、あるいはそれらの構成要素または代謝産物を含むことができる。
【0089】
いくつかの実施形態では、方法は、法医学サンプル等のサンプルの起源または組成を決定または特性化するステップを含む。これは、サンプルの中の少なくとも1つの被分析物の存在または不在を決定することによって達成することができ、サンプルの中の被分析物の存在または不在は、サンプルの年齢、身元、または起源(例えば、生物サンプルの場合、サンプルが由来する生物の種、性別、民族性、血液型、年齢、健康または病状、遺伝子型、表現型等)等のサンプルの少なくとも1つの属性に関して、発見が行われることを可能にする。
【0090】
いくつかの実施形態では、方法は、ガス中に存在する分子または粒子を識別または特性化するステップを含む。ガスは、周囲空気であり得る。例えば、質、純度、通気性、工業、医療、または研究用途への好適性、あるいはガスの安全性に関連する、揮発性有機化合物、汚染物質、不純物、毒素、花粉、胞子、および他の構成要素を検出することができる。いくつかの実施形態では、方法は、建造物、車両、地下領域、または他の囲いの空気供給、または市、町、自治体、あるいはその小区分等の地理的地域中の大気等の、ガス中に存在する分子または粒子の長期監視のための場所に装置を設置するステップを含む。
【0091】
(実施例)
以下の具体的実施例は、いかなる方法でも残りの開示を制限せず、例証的にすぎないものとして解釈される。さらなる詳述がなくても、当業者であれば、本明細書の説明に基づいて、本発明をその最大限の程度で利用することができると考えられる。
【0092】
(実施例1)携帯用質量分析計の構築
真空チャンバ用の合成ポリ(メチルメタクリレート)を使用して、携帯用質量分析計を構築した。器具は、真空を提供するように、KNFダイヤフラムポンプおよびAlcatelターボ分子ポンプを含んだ。器具の全ての構成要素は、長さ30cm、高さ28cm、および幅25cmのケーシング内に含まれた。器具の全質量は、約16kgであった。この質量分析計は、約500から約200万に及ぶm/z比を測定することができる。装置は、r0=10mmおよびz0=7.07mmの寸法を伴うイオントラップを備えた。器具が鏡3またはLIADプレート5を含まなかったことを除いて、器具の構成要素を示す概略設計が図1に示されている。装置は、壁コンセントを使用して電力供給された。
【0093】
2つのDC電力供給(Matsusada Precision Inc.、モデルS3−25NおよびS3−25P)が、±25kVを変換ダイノードに提供した。別のDC電力供給(Matsusada Precision Inc.、モデルS1−5N)が、−2kVを電荷増幅検出器に供給した。さらに別のDC電力供給(Matsusada Precision Inc.、モデルS1−5P)が、2kVをエレクトロスプレーイオン化源に供給した。全てのDC電力供給は、自家製D/A変換器によって制御された。小型フォトダイオード励起型Nd:YAGレーザの3倍増からの355nmの波長を伴うパルスレーザビームを、MALDI用のレーザ光源として器具で使用することができる。パルスあたりのレーザエネルギーは、約120μJであった。
【0094】
携帯用質量分析計は、本質的に図6Bに示されるように、データ収集基板を含んだ。基板は、約11cm×11cmであった。基板は、イオントラップ質量分析器への正弦波信号入力を生成した自家製任意波形発生器である、質量分析計シーケンス制御器チップおよび掃引正弦波合成器回路を使用して、イオントラップRF電場を制御した。合成器回路を、以下で論議される高電圧演算増幅器に結び付けた。質量分析計シーケンス制御器チップおよび掃引正弦波合成器回路の上流制御は、コンピュータに接続することができる、USBインターフェースまたは汎用デジタル入出力インターフェースを介した。データ収集基板はさらに、アナログフロントエンドと、基板構成要素用の電力供給とを備えた。
【0095】
携帯用質量分析計はさらに、高電圧演算増幅器を含んだ。高電圧演算増幅器は、専用プリント回路基板(約14cm×14cmのサイズを伴う)上で、高電圧電力帯域幅MOS−FET演算増幅器(APEX microtechnology,モデルPA85A)を、最大±450Vまで信号を増幅することができる正および負のDC電圧電力供給(Matsusada Precision Inc.、モデルS30−0.6NおよびS30−0.6P)(図6C参照)と連結することによって作製された。
【0096】
電荷増幅検出用のチャネルトロンパルス増幅器およびパルスホルダ回路によって、および直接電荷検出用の電荷検出器パルス増幅器およびパルスホルダによって、(電荷検出プレート/カップおよび変換ダイノード等のオフボード検出器構成要素とともに)粒子検出を行った。これらは、図6Bに示されるアナログフロントエンドの一部であった。
【0097】
10チャネルADC、8チャネルDAC、汎用デジタルI/Oインターフェース、およびUSBインターフェースによって、マルチチャネルアナログおよびデジタル入出力(I/O)を行った。10チャネルADCは、アナログフロントエンドから粒子検出パルスデータを(および随意で、オフボードデバイスからアナログ信号を)読み出した。8チャネルDACは、変換ダイノード、ピンチ弁、イオン化源等を含む、オフボードデバイスのアナログ制御を提供した。装置の上流制御に、および/またはデータ出力に、USBインターフェースを使用した。
【0098】
この装置は、壁コンセントまたは発電機等の外部電源によって電力供給された。質量分析計のケーシングにリチウムイオンバッテリを含み、バッテリを装置の電動構成要素に接続することによって、この実施例で説明されるような器具に基づいて、内蔵型電源を伴う携帯用装置が構築される。リチウムイオンバッテリは、ラップトップコンピュータに電力供給するバッテリと同様であり、150W電力を供給することが可能である。このバッテリ電動式質量分析計の分析能力は、上記で説明される壁コンセントまたは発電機電動式器具の能力と同様になると見込まれる。
【0099】
(実施例2)携帯用質量分析計を用いたMALDI
5フェムトモル、100フェムトモル、または100ピコモルのアンジオテンシンを、携帯用質量分析計のMALDIサンプルプレート上に配置し、2,5−ジヒドロキシン安息酸マトリクスを使用した。20回のレーザパルスを使用して、脱離イオン化を達成し、2ミリトルの内圧を有した四重極イオントラップ質量分析器に被分析物を導入した。これらの量のアンジオテンシンのそれぞれを使用した周波数走査によって取得されたMALDI質量スペクトルは、図4((a)5fモル、(b)100fモル、(c)100pモル)に示されている。各質量スペクトルでは、主要なピークは、プロトン化アンジオテンシンであった。携帯用質量分析計を使用して検出可能なアンジオテンシンの最低数量は、5fモル(図4(a))であった。
【0100】
(実施例3)携帯用質量分析計を用いたESI
インスリン、アンジオテンシン、シトクロムc、およびミオグロビンを用いて、各々、45%メタノール/45%水/10%酢酸中で10−5Mの濃度において、パルスモード大気ESIを別個に行った。エレクトロスプレーイオン化を行うために、KDS−100シリンジポンプとともに、30μmPicoTipエミッタを使用した。100μl Hamiltonシリンジを使用して、サンプルをこの源に導入した。シリンジ流速は60μl/hであり、エミッタ電圧は2.5kVであり、イオン導入時間は5秒であった。二方常時閉鎖ピンチ弁と連結された、127μm内径のステンレス鋼キャピラリ入口を、パルス関数発生器によって制御し、ピンチ弁は、24VDC信号で開いた。1/16インチ内径のシリコン管を使用して、ピンチ弁およびキャピラリを接続した。サンプル導入後、四重極イオントラップ質量分析器の内圧を0.8ミリトルまで低減した。1秒の走査時間で、周波数走査を300から100kHzまで行った。アンジオテンシンおよびインスリンのESI質量スペクトルが、それぞれ、図5A(a)および(b)に示されている。10kD以上までイオントラップによって選択されたサンプル分子量を増加させることによって、質量スペクトルを観察した。シトクロムcおよびミオグロビンのESIスペクトルが、それぞれ、図5B(a)および(b)に示されている。複数の荷電種からのピークが、図5Aおよび5Bで標識化されている。
【0101】
(実施例4)イオン濃縮および衝突誘起解離
約500Daから約2MDaの分子量を伴うイオンを、サンプルから生成し、実施例1の内蔵型電源を伴う携帯用装置のイオントラップを備えている質量分析器に導入した。特定のm/z比のイオンを、電圧走査によって選択した。150kHz、10Vppの補足ACを用いた共鳴放出(以下参照)で動作する、300から100kHz、800Vpp(ピーク間電圧)の周波数走査を使用することによって取得される、アンジオテンシンの質量スペクトルが、図8に示されている。この質量スペクトルの中の主要なピークは、プロトン化アンジオテンシンであった。
【0102】
トラップの中の選択されたイオンは、イオン識別のために後続の断片化を受ける。イオントラップの中のイオンは、m/z比に依存する共鳴周波数を有する。イオンへの共鳴周波数の印加は、イオンによる励起および振動の増大した半径をもたらし、最終的にイオンの放出につながる。これは、異なる共鳴周波数を伴うイオンの放出を引き起こさない。高速フーリエ変換技術を使用することによって、複数のイオン共鳴励起周波数を含有する波形が合成される。この波形は、自家製任意波形発生器によって生成される。この波形は、イオンの捕捉後にRF増幅器に提供される。この過程を繰り返すことによって、所望されないイオンが放出されるため、所望のm/z比のイオンが選択的に濃縮される。次いで、所望のイオンは、衝突誘起解離によって分析され、それにより、それらの構造に関して情報が取得される。
【0103】
(実施例5)放出されたイオンの検出
高分子およびより大きい粒子の検出のために周波数走査を使用することができ、小さい有機化合物等の被分析物の高分解能スペクトルのために電圧走査を使用することができる。イオン化サンプル分子は、内蔵型電源を伴う携帯用質量分析計のイオントラップから放出され、2つの出口ポートのうちの1つを通って移動した。電荷を直接測定するように、一方の出口ポートのすぐ外側に電荷検出器を設置した。電子回路および質量分析計設計に応じた固有電子背景を含んだ電荷検出器からのデータは、約200個の電子と同等であった。高電圧でバイアスされた変換ダイノードを、他方の出口ポートの外側に設置した。後に変換ダイノードから放出された二次イオンまたは電子が、電荷増幅デバイスによって検出された。トラップから退出する小さいイオン(m/z<10,000)を検出するために、変換ダイノードを二次電子放出に対してバイアスした。高分子イオン(m/z>10,000)を検出するために、変換ダイノードおよび電荷増幅検出器を、それぞれ、二次イオンの放出および検出に対して設定した。
【0104】
異なる量のシトクロムcの比較MALDI質量スペクトルが、図9A((a)2fモル、(b)100fモル、および(c)100pモル)に示されている。高分子量の分子を用いた二次イオン放出効率を増進するために、10kVの高電圧を変換ダイノードに印加した。携帯用質量分析計を使用して検出可能なシトクロムcの最低数量は、2fモル(図9A(a))であった。
【0105】
同様に取得された異なる量のBSAのMALDIスペクトルが、図9B((a)10fモルおよび(b)100fモル)に示されている。20kVの高電圧を変換ダイノードに印加し、二次イオン効率を増進した。質量分析計を使用して検出可能なBSAの最低数量は、10fモル(図9B(a))であった。
【0106】
サンプルの分子量が150kD以上であった時、質量スペクトルを依然として観察することができた。異なる量のIgGのMALDI質量スペクトルが、図9C((a)6fモル、および(b)6pモル)に示されている。質量分析計を使用して検出可能なIgGの最低数量は、6fモル(図9C(a))であった。
【0107】
(実施例6)電圧走査による質量分析
内蔵型電源を伴う携帯用質量分析計の中の共鳴電子LC回路を使用することによって、電圧走査用の高電圧正弦波を生成した。共鳴周波数は、Lがインダクタンスであり、Cが静電容量である、(L/C)1/2に等しい。μ0が自由空間の透過性であり、Kが長岡係数であり、Nが巻数であり、Aが断面積であり、lがコイルの長さである、μ0KN2Al−1として決定されたインダクタンスを用いて、自家製空気型円筒コイルインダクタを製造した。電圧走査のために、イオントラップ電場振動周波数を固定し、イオントラップの静電容量を決定し、固定周波数で共鳴を生じるようにインダクタンスの計算を可能にした。増幅のための使用を支援するように、インダクタンスの式に従ったパラメータを用いて、円筒コイルを製造した。自家製正弦波増幅器は、二次側高電圧を生成するようにインダクタを通過させられる一次側電圧を生成した。回路の共鳴を使用して、一次側電圧を高いレベルまで引き上げた。空気インダクタは、36mmの直径および50pFの負荷容量を有し、一次側ワイヤは、0.2mmの直径を有し、かつ1回の巻数を有し、二次側ワイヤは、1mmの直径を有し、かつ100回の巻数を有した。電圧は、700kHzで3kVppまで引き上げることができた。電力供給と連結されたパルス発生器を、選択されたイオンを濃縮するように、選択されたm/zを伴うイオンを捕捉するために使用した。引き上げられたトラッピング電圧および固定トラッピング周波数を使用して、アンジオテンシンの四重極イオントラップレーザ脱離質量スペクトル(図10)を取得した。
【0108】
(実施例7)データ処理および分析
内蔵型電源を伴う携帯用質量分析計の直接電荷検出器および/または電荷増幅検出器から取得された信号を、分析のために内蔵型コンピュータに投入した。質量スペクトルがコンピュータディスプレイ上に示された。デジタルデータを、さらなる分析のために、コンピュータに、または可撤性USBドライブ上に保存した。
【0109】
データが電荷増幅によって得られた。検出器からのアナログ信号が、自家製A/D変換器によってデジタル信号に変換された。A/D変換器は、データ入力および出力を制御するように、ビジュアルベーシックまたはC++を使用してプログラムされた。ソフトウェアは、随意で、データ収集および/または処理を表すパラメータとともに、7インチLCDディスプレイ上に示された、質量スペクトルを描画するように、正弦波関数発生器からのデジタル信号および情報を分析した。携帯用質量分析計のソフトウェアユーザインターフェースのスナップショットが図11に示されている。
【0110】
本明細書内の実施形態は、本発明の実施形態の例証を提供し、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。当業者であれば、多くの他の実施形態が本発明によって包含されることを容易に認識する。本開示で引用される全ての出版物および特許は、それらの全体で参照することにより組み込まれる。参照することにより組み込まれる資料が本明細書と相反する、または矛盾する程度に、本明細書は、いずれのそのような資料にも優先する。本明細書のあらゆる参考文献の引用は、そのような参考文献が本発明にとって従来技術であるという承認ではない。
【0111】
特に指示がない限り、請求項を含む本明細書で使用される、原料の数量、反応条件等を表す全ての数字は、「約」という用語によって、全ての場合に修正されるものとして理解されるものである。したがって、それとは反対に特に指示がない限り、数値パラメータは、近似値であり、本発明によって取得されることが求められる所望の性質に応じて変化してもよい。最低限でも、請求項の範囲の同等物の原則の適用を限定しようとせずに、各数値パラメータは、有効桁の数字および通常の丸めアプローチを踏まえて解釈されるべきである。
【0112】
特に指示がない限り、一連の要素に先行する「少なくとも」という用語は、一連の中のあらゆる要素を指すと理解されるものである。当業者であれば、日常の実験のみを使用して、本明細書で説明される本発明の具体的実施形態の多くの同等物を認識するか、または解明することができるであろう。そのような同等物は、以下の請求項によって包含されることを目的としている。
【0113】
ある構成要素またはステップを含み、ある他の構成要素またはステップを含まないものとして記載される、請求された実施形態は、除外された構成要素またはステップを除いて、オープンであると理解され、つまり、除外された構成要素またはステップを含む装置または方法は、問題の請求された実施形態の範囲外となる。
【0114】
記載された機能を果たすように「構成される」、または記載された機能を行うことが「可能である」請求された実施形態は、外部必需品(例えば、分析用のサンプル、外部必需品はさらに、装置の仕様に応じて、外部コンピュータ、外部エネルギー源等を含むことができる)が提供される時に、装置が記載されていることを行うことができる方式で配置された、その構成要素を有すると理解される。概して、装置は、機能を実際に果たすために日常的設定(随意で、ユーザのコマンドを受けて生じてもよい、サンプルの導入およびコンピュータ制御された初期化等のステップを含む)が必要とされる場合に、機能を果たすように「構成される」、または機能を果たすことが「可能である」と見なされるが、装置の内部構成要素を追加、交換、または(例えば、構成要素が相互に接続される方法を変更することによって)手動で再構成しなければならない場合には、そのように見なされない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量分析用の装置であって、
a.少なくとも1つのイオン化被分析物源と、
b.少なくとも1つのイオントラップを備えている質量分析器と、
c.少なくとも1つの周波数走査サブシステムと、
d.少なくとも1つの検出器と、
e.随意で、少なくとも1つの真空ポンプと
を備え、前記装置は、携帯用である、
装置。
【請求項2】
前記装置は、少なくとも1つの真空ポンプを備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記装置は、真空ポンプを備えていない、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つのイオン化被分析物源は、少なくとも2つの機構的に異なるイオン化被分析物源を備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記少なくとも2つの機構的に異なるイオン化被分析物源は、
a.MALDI源およびLIAD源から選択される第1のイオン化被分析物源と、
b.前記第1のイオン化被分析物源とは機構的に異なる少なくとも1つの付加的なイオン化被分析物源と
を備えている、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記装置は、人の携帯用である、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つのイオントラップは、周波数走査を介して動作するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つのイオントラップは、100,000Hz以下の最小周波数を伴う周波数走査を介して動作するように構成されている、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つのイオントラップは、10,000Hz以下の最小周波数を伴う周波数走査を介して動作するように構成されている、請求項7に記載の装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つのイオントラップは、1,000Hz以下の最小周波数を伴う周波数走査を介して動作するように構成されている、請求項7に記載の装置。
【請求項11】
前記少なくとも1つのイオントラップは、100Hz以下の最小周波数を伴う周波数走査を介して動作するように構成されている、請求項7に記載の装置。
【請求項12】
前記少なくとも1つのイオントラップは、四重極イオントラップ、直線型イオントラップ、および線形イオントラップから選択されるイオントラップを備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記少なくとも2つの異なるイオン化被分析物源は、LIAD源、MALDI源、ESI源、EI源、GDEI源、APCI源、DESI源、DART源、LTP源、UI源、EII源、およびEA源から選択される、請求項4に記載の装置。
【請求項14】
前記少なくとも2つの機構的に異なるイオン化被分析物源は、構造的に異なる、請求項4に記載の装置。
【請求項15】
前記少なくとも2つの機構的に異なるイオン化被分析物源は、LIAD源、MALDI源、およびESI源から選択される、請求項4に記載の装置。
【請求項16】
前記少なくとも2つの機構的に異なるイオン化被分析物源は、LIAD源と、MALDI源とを備えている、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記少なくとも2つの機構的に異なるイオン化被分析物源は、LIAD源と、ESI源とを備えている、請求項15に記載の装置。
【請求項18】
前記少なくとも2つの機構的に異なるイオン化被分析物源は、MALDI源と、ESI源とを備えている、請求項15に記載の装置。
【請求項19】
前記少なくとも2つの機構的に異なるイオン化被分析物源は、LIAD源と、MALDI源と、ESI源とを備えている、請求項15に記載の装置。
【請求項20】
前記装置は、20以上のm/z比を有する被分析物の質量スペクトルを取得するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項21】
前記装置は、105以上のm/z比を有する被分析物と1,000以下のm/z比を有する被分析物との質量スペクトルを取得するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項22】
前記装置は、105以上のm/z比を有する被分析物と100以下のm/z比を有する被分析物との質量スペクトルを取得するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項23】
前記装置は、106以上のm/z比を有する被分析物と1,000以下のm/z比を有する被分析物との質量スペクトルを取得するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項24】
前記装置は、109以上のm/z比を有する被分析物と1,000以下のm/z比を有する被分析物との質量スペクトルを取得するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項25】
前記装置は、1012以上のm/z比を有する被分析物と1,000以下のm/z比を有する被分析物との質量スペクトルを取得するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項26】
前記装置は、20Da以上の分子量を有する被分析物の質量スペクトルを取得するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項27】
前記装置は、少なくとも105Daの分子量を有する被分析物と1,000Da以下の分子量を有する被分析物との質量スペクトルを取得するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項28】
前記装置は、少なくとも105Daの分子量を有する被分析物と100Da以下の分子量を有する被分析物との質量スペクトルを取得するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項29】
前記装置は、少なくとも106Daの分子量を有する被分析物と1,000Da以下の分子量を有する被分析物との質量スペクトルを取得するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項30】
前記装置は、少なくとも109Daの分子量を有する被分析物と1,000Da以下の分子量を有する被分析物との質量スペクトルを取得するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項31】
前記装置は、少なくとも1012Daの分子量を有する被分析物と1,000Da以下の分子量を有する被分析物との質量スペクトルを取得するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項32】
前記少なくとも1つの検出器は、直接電荷検出器、電荷増幅検出器、および光散乱検出器から選択される検出器を備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項33】
前記少なくとも1つの検出器は、ファラデープレート、ファラデーカップ、誘導電荷検出器、マイクロチャネルプレート、マイクロスフェアプレート、電子増倍管、チャネルトロン、およびCCDカメラから選択される検出器を備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項34】
前記少なくとも1つの検出器は、少なくとも2つの機構的に異なる検出器を備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項35】
前記少なくとも2つの機構的に異なる検出器は、構造的に異なる、請求項34に記載の装置。
【請求項36】
前記装置は、被分析物の電荷および被分析物のm/z比を測定するように構成されている、請求項34に記載の装置。
【請求項37】
前記少なくとも2つの異なる検出器は、直接電荷検出器と、電荷増幅検出器とを備えている、請求項34に記載の装置。
【請求項38】
前記直接電荷検出器は、ファラデープレートまたはカップを備え、前記電荷増幅検出器は、チャネルトロンを備えている、請求項37に記載の装置。
【請求項39】
前記装置は、40kg未満の質量を有している、請求項1に記載の装置。
【請求項40】
前記装置は、25kg未満の質量を有している、請求項1に記載の装置。
【請求項41】
被分析物を前記イオン化被分析物源に提供するように構成されているクロマトグラフをさらに備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項42】
前記クロマトグラフは、高速液体クロマトグラフィを行うように構成されている、請求項41に記載の装置。
【請求項43】
前記周波数走査サブシステムは、任意波形発生器を備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項44】
前記周波数走査サブシステムは、掃引正弦波合成器を備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項45】
前記周波数走査サブシステムは、同調可能なコンデンサおよび同調可能なインダクタから選択される同調可能な要素を備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項46】
前記少なくとも1つのイオン化被分析物源は、MALDI、LIAD、およびESI源のうちの少なくとも2つを備え、前記質量分析器は、重量で50%より多いプラスチックから成る真空チャンバを備えているイオントラップを備え、100Hz以下の最小周波数を伴う周波数走査を介して動作するように構成され、前記少なくとも1つの検出器は、少なくとも直接電荷検出器と電荷増幅検出器とを備え、前記装置は、1012以上のm/z比を有する被分析物と1,000以下のm/z比を有する被分析物との質量スペクトルを取得するように構成され、前記装置は、25kg未満の質量を有している、請求項1に記載の装置。
【請求項47】
a.被分析物を含むサンプル、および請求項1に記載の装置を提供するステップと、
b.前記装置の前記少なくとも1つのイオン化被分析物源を使用して、前記被分析物が中性である場合に、前記被分析物をイオン化するステップと、前記被分析物を前記装置の前記質量分析器に導入するステップと、
c.前記被分析物のm/z比に従って前記被分析物を分別するステップと、
d.前記被分析物のm/z比に従って分別された被分析物を検出し、それにより、質量スペクトルを取得するステップと
を含む、質量スペクトルを取得する方法。
【請求項48】
前記被分析物のm/z比に従って前記被分析物を分別するステップは、周波数走査を行うステップを含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記周波数走査を行うステップは、200Hzを含む周波数範囲にわたって走査するステップを含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記周波数範囲は、100Hz以下から10,000Hz以上にわたる、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記周波数走査を行うステップは、1,000Hzを含む周波数範囲にわたって走査するステップを含む、請求項48に記載の方法。
【請求項52】
前記周波数走査を行うステップは、10,000Hzを含む周波数範囲にわたって走査するステップを含む、請求項48に記載の方法。
【請求項53】
前記周波数走査を行うステップは、100,000Hzを含む周波数範囲にわたって走査するステップを含む、請求項48に記載の方法。
【請求項54】
請求項47に記載のステップ(d)の前記質量スペクトル内の質量範囲またはm/z範囲を選択するステップと、ステップ(b)から(d)を繰り返し、第2の質量スペクトルを取得するステップをさらに含み、前記第2の質量スペクトルは、請求項47に記載のステップ(d)の前記質量スペクトルの分解能よりも大きい分解能で、前記質量範囲または前記m/z範囲を網羅する、請求項48に記載の方法。
【請求項55】
前記ステップ(b)から(d)を繰り返すステップによって含まれる前記被分析物のm/z比に従って前記被分析物を分別するステップは、電圧走査を行うステップを含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記被分析物のm/z比に従って前記被分析物を分別するステップは、電圧走査を行うステップを含む、請求項47に記載の方法。
【請求項57】
前記サンプルは、105Da以下の分子量または105以下のm/z比を伴う被分析物を含み、前記質量スペクトルは、105Da以下の分子量または105以下のm/z比に対応するピークを備えている、請求項47に記載の方法。
【請求項58】
前記サンプルは、103Da以下の分子量または103以下のm/z比を伴う被分析物を含み、前記質量スペクトルは、103Da以下の分子量または103以下のm/z比に対応するピークを備えている、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記サンプルは、105Da以上の分子量または105以上のm/z比を伴う被分析物を含み、前記質量スペクトルは、少なくとも105Daの分子量または少なくとも105のm/z比に対応するピークを備えている、請求項47に記載の方法。
【請求項60】
前記サンプルは、106Da以上の分子量または106以上のm/z比を伴う被分析物を含み、前記質量スペクトルは、少なくとも106Daの分子量または少なくとも106のm/z比に対応するピークを備えている、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記イオントラップは、ステップ(c)および(d)中に周囲大気圧の内部ガス圧を有している、請求項47に記載の方法。
【請求項62】
前記イオントラップは、ステップ(c)および(d)中に0.01ミリトルから760トルに及ぶ内部ガス圧を有している、請求項47に記載の方法。
【請求項63】
前記ガス圧は、0.1ミリトルから1トルに及ぶ、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記ガス圧は、0.1ミリトルから100ミリトルに及ぶ、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記ガス圧は、1ミリトルから60ミリトルに及ぶ、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記ガス圧は、1ミリトルから15ミリトルに及ぶ、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
ステップ(b)は、前記被分析物をイオン化するステップ、または前記被分析物のイオン化状態を変化させるステップを含む、請求項47に記載の方法。
【請求項68】
ステップ(c)の前に、前記被分析物に衝突誘起解離を行うステップをさらに含む、請求項47に記載の方法。
【請求項69】
前記被分析物は、液体または溶解状態で提供され、ステップ(b)は、前記装置の前記質量分析器に前記被分析物を導入する前に、前記被分析物の状態を液体または溶解から気体に変化させるステップをさらに含む、請求項47に記載の方法。
【請求項70】
前記被分析物を検出するステップは、二次イオンまたは電子を生成し、検出するステップを含む、請求項47に記載の方法。
【請求項71】
前記被分析物を検出するステップは、被分析物電荷の直接検出を含む、請求項47に記載の方法。
【請求項72】
前記被分析物は、105Daより大きい質量を有している高分子、高分子錯体、ナノ粒子、または微粒子を含み、前記質量スペクトルは、105Daより大きい質量を有している前記高分子、高分子錯体、ナノ粒子、または微粒子の質量に対応するピークを備えている、請求項47に記載の方法。
【請求項73】
前記被分析物は、細胞、胞子、細胞小器官、またはウイルスを含み、前記質量スペクトルは、前記細胞、胞子、細胞小器官、またはウイルスの質量に対応するピークを備えている、請求項47に記載の方法。
【請求項1】
質量分析用の装置であって、
a.少なくとも1つのイオン化被分析物源と、
b.少なくとも1つのイオントラップを備えている質量分析器と、
c.少なくとも1つの周波数走査サブシステムと、
d.少なくとも1つの検出器と、
e.随意で、少なくとも1つの真空ポンプと
を備え、前記装置は、携帯用である、
装置。
【請求項2】
前記装置は、少なくとも1つの真空ポンプを備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記装置は、真空ポンプを備えていない、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つのイオン化被分析物源は、少なくとも2つの機構的に異なるイオン化被分析物源を備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記少なくとも2つの機構的に異なるイオン化被分析物源は、
a.MALDI源およびLIAD源から選択される第1のイオン化被分析物源と、
b.前記第1のイオン化被分析物源とは機構的に異なる少なくとも1つの付加的なイオン化被分析物源と
を備えている、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記装置は、人の携帯用である、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つのイオントラップは、周波数走査を介して動作するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つのイオントラップは、100,000Hz以下の最小周波数を伴う周波数走査を介して動作するように構成されている、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つのイオントラップは、10,000Hz以下の最小周波数を伴う周波数走査を介して動作するように構成されている、請求項7に記載の装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つのイオントラップは、1,000Hz以下の最小周波数を伴う周波数走査を介して動作するように構成されている、請求項7に記載の装置。
【請求項11】
前記少なくとも1つのイオントラップは、100Hz以下の最小周波数を伴う周波数走査を介して動作するように構成されている、請求項7に記載の装置。
【請求項12】
前記少なくとも1つのイオントラップは、四重極イオントラップ、直線型イオントラップ、および線形イオントラップから選択されるイオントラップを備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記少なくとも2つの異なるイオン化被分析物源は、LIAD源、MALDI源、ESI源、EI源、GDEI源、APCI源、DESI源、DART源、LTP源、UI源、EII源、およびEA源から選択される、請求項4に記載の装置。
【請求項14】
前記少なくとも2つの機構的に異なるイオン化被分析物源は、構造的に異なる、請求項4に記載の装置。
【請求項15】
前記少なくとも2つの機構的に異なるイオン化被分析物源は、LIAD源、MALDI源、およびESI源から選択される、請求項4に記載の装置。
【請求項16】
前記少なくとも2つの機構的に異なるイオン化被分析物源は、LIAD源と、MALDI源とを備えている、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記少なくとも2つの機構的に異なるイオン化被分析物源は、LIAD源と、ESI源とを備えている、請求項15に記載の装置。
【請求項18】
前記少なくとも2つの機構的に異なるイオン化被分析物源は、MALDI源と、ESI源とを備えている、請求項15に記載の装置。
【請求項19】
前記少なくとも2つの機構的に異なるイオン化被分析物源は、LIAD源と、MALDI源と、ESI源とを備えている、請求項15に記載の装置。
【請求項20】
前記装置は、20以上のm/z比を有する被分析物の質量スペクトルを取得するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項21】
前記装置は、105以上のm/z比を有する被分析物と1,000以下のm/z比を有する被分析物との質量スペクトルを取得するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項22】
前記装置は、105以上のm/z比を有する被分析物と100以下のm/z比を有する被分析物との質量スペクトルを取得するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項23】
前記装置は、106以上のm/z比を有する被分析物と1,000以下のm/z比を有する被分析物との質量スペクトルを取得するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項24】
前記装置は、109以上のm/z比を有する被分析物と1,000以下のm/z比を有する被分析物との質量スペクトルを取得するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項25】
前記装置は、1012以上のm/z比を有する被分析物と1,000以下のm/z比を有する被分析物との質量スペクトルを取得するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項26】
前記装置は、20Da以上の分子量を有する被分析物の質量スペクトルを取得するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項27】
前記装置は、少なくとも105Daの分子量を有する被分析物と1,000Da以下の分子量を有する被分析物との質量スペクトルを取得するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項28】
前記装置は、少なくとも105Daの分子量を有する被分析物と100Da以下の分子量を有する被分析物との質量スペクトルを取得するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項29】
前記装置は、少なくとも106Daの分子量を有する被分析物と1,000Da以下の分子量を有する被分析物との質量スペクトルを取得するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項30】
前記装置は、少なくとも109Daの分子量を有する被分析物と1,000Da以下の分子量を有する被分析物との質量スペクトルを取得するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項31】
前記装置は、少なくとも1012Daの分子量を有する被分析物と1,000Da以下の分子量を有する被分析物との質量スペクトルを取得するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項32】
前記少なくとも1つの検出器は、直接電荷検出器、電荷増幅検出器、および光散乱検出器から選択される検出器を備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項33】
前記少なくとも1つの検出器は、ファラデープレート、ファラデーカップ、誘導電荷検出器、マイクロチャネルプレート、マイクロスフェアプレート、電子増倍管、チャネルトロン、およびCCDカメラから選択される検出器を備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項34】
前記少なくとも1つの検出器は、少なくとも2つの機構的に異なる検出器を備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項35】
前記少なくとも2つの機構的に異なる検出器は、構造的に異なる、請求項34に記載の装置。
【請求項36】
前記装置は、被分析物の電荷および被分析物のm/z比を測定するように構成されている、請求項34に記載の装置。
【請求項37】
前記少なくとも2つの異なる検出器は、直接電荷検出器と、電荷増幅検出器とを備えている、請求項34に記載の装置。
【請求項38】
前記直接電荷検出器は、ファラデープレートまたはカップを備え、前記電荷増幅検出器は、チャネルトロンを備えている、請求項37に記載の装置。
【請求項39】
前記装置は、40kg未満の質量を有している、請求項1に記載の装置。
【請求項40】
前記装置は、25kg未満の質量を有している、請求項1に記載の装置。
【請求項41】
被分析物を前記イオン化被分析物源に提供するように構成されているクロマトグラフをさらに備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項42】
前記クロマトグラフは、高速液体クロマトグラフィを行うように構成されている、請求項41に記載の装置。
【請求項43】
前記周波数走査サブシステムは、任意波形発生器を備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項44】
前記周波数走査サブシステムは、掃引正弦波合成器を備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項45】
前記周波数走査サブシステムは、同調可能なコンデンサおよび同調可能なインダクタから選択される同調可能な要素を備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項46】
前記少なくとも1つのイオン化被分析物源は、MALDI、LIAD、およびESI源のうちの少なくとも2つを備え、前記質量分析器は、重量で50%より多いプラスチックから成る真空チャンバを備えているイオントラップを備え、100Hz以下の最小周波数を伴う周波数走査を介して動作するように構成され、前記少なくとも1つの検出器は、少なくとも直接電荷検出器と電荷増幅検出器とを備え、前記装置は、1012以上のm/z比を有する被分析物と1,000以下のm/z比を有する被分析物との質量スペクトルを取得するように構成され、前記装置は、25kg未満の質量を有している、請求項1に記載の装置。
【請求項47】
a.被分析物を含むサンプル、および請求項1に記載の装置を提供するステップと、
b.前記装置の前記少なくとも1つのイオン化被分析物源を使用して、前記被分析物が中性である場合に、前記被分析物をイオン化するステップと、前記被分析物を前記装置の前記質量分析器に導入するステップと、
c.前記被分析物のm/z比に従って前記被分析物を分別するステップと、
d.前記被分析物のm/z比に従って分別された被分析物を検出し、それにより、質量スペクトルを取得するステップと
を含む、質量スペクトルを取得する方法。
【請求項48】
前記被分析物のm/z比に従って前記被分析物を分別するステップは、周波数走査を行うステップを含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記周波数走査を行うステップは、200Hzを含む周波数範囲にわたって走査するステップを含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記周波数範囲は、100Hz以下から10,000Hz以上にわたる、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記周波数走査を行うステップは、1,000Hzを含む周波数範囲にわたって走査するステップを含む、請求項48に記載の方法。
【請求項52】
前記周波数走査を行うステップは、10,000Hzを含む周波数範囲にわたって走査するステップを含む、請求項48に記載の方法。
【請求項53】
前記周波数走査を行うステップは、100,000Hzを含む周波数範囲にわたって走査するステップを含む、請求項48に記載の方法。
【請求項54】
請求項47に記載のステップ(d)の前記質量スペクトル内の質量範囲またはm/z範囲を選択するステップと、ステップ(b)から(d)を繰り返し、第2の質量スペクトルを取得するステップをさらに含み、前記第2の質量スペクトルは、請求項47に記載のステップ(d)の前記質量スペクトルの分解能よりも大きい分解能で、前記質量範囲または前記m/z範囲を網羅する、請求項48に記載の方法。
【請求項55】
前記ステップ(b)から(d)を繰り返すステップによって含まれる前記被分析物のm/z比に従って前記被分析物を分別するステップは、電圧走査を行うステップを含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記被分析物のm/z比に従って前記被分析物を分別するステップは、電圧走査を行うステップを含む、請求項47に記載の方法。
【請求項57】
前記サンプルは、105Da以下の分子量または105以下のm/z比を伴う被分析物を含み、前記質量スペクトルは、105Da以下の分子量または105以下のm/z比に対応するピークを備えている、請求項47に記載の方法。
【請求項58】
前記サンプルは、103Da以下の分子量または103以下のm/z比を伴う被分析物を含み、前記質量スペクトルは、103Da以下の分子量または103以下のm/z比に対応するピークを備えている、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記サンプルは、105Da以上の分子量または105以上のm/z比を伴う被分析物を含み、前記質量スペクトルは、少なくとも105Daの分子量または少なくとも105のm/z比に対応するピークを備えている、請求項47に記載の方法。
【請求項60】
前記サンプルは、106Da以上の分子量または106以上のm/z比を伴う被分析物を含み、前記質量スペクトルは、少なくとも106Daの分子量または少なくとも106のm/z比に対応するピークを備えている、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記イオントラップは、ステップ(c)および(d)中に周囲大気圧の内部ガス圧を有している、請求項47に記載の方法。
【請求項62】
前記イオントラップは、ステップ(c)および(d)中に0.01ミリトルから760トルに及ぶ内部ガス圧を有している、請求項47に記載の方法。
【請求項63】
前記ガス圧は、0.1ミリトルから1トルに及ぶ、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記ガス圧は、0.1ミリトルから100ミリトルに及ぶ、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記ガス圧は、1ミリトルから60ミリトルに及ぶ、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記ガス圧は、1ミリトルから15ミリトルに及ぶ、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
ステップ(b)は、前記被分析物をイオン化するステップ、または前記被分析物のイオン化状態を変化させるステップを含む、請求項47に記載の方法。
【請求項68】
ステップ(c)の前に、前記被分析物に衝突誘起解離を行うステップをさらに含む、請求項47に記載の方法。
【請求項69】
前記被分析物は、液体または溶解状態で提供され、ステップ(b)は、前記装置の前記質量分析器に前記被分析物を導入する前に、前記被分析物の状態を液体または溶解から気体に変化させるステップをさらに含む、請求項47に記載の方法。
【請求項70】
前記被分析物を検出するステップは、二次イオンまたは電子を生成し、検出するステップを含む、請求項47に記載の方法。
【請求項71】
前記被分析物を検出するステップは、被分析物電荷の直接検出を含む、請求項47に記載の方法。
【請求項72】
前記被分析物は、105Daより大きい質量を有している高分子、高分子錯体、ナノ粒子、または微粒子を含み、前記質量スペクトルは、105Daより大きい質量を有している前記高分子、高分子錯体、ナノ粒子、または微粒子の質量に対応するピークを備えている、請求項47に記載の方法。
【請求項73】
前記被分析物は、細胞、胞子、細胞小器官、またはウイルスを含み、前記質量スペクトルは、前記細胞、胞子、細胞小器官、またはウイルスの質量に対応するピークを備えている、請求項47に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図7F】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図7F】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2013−516036(P2013−516036A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−546200(P2012−546200)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【国際出願番号】PCT/US2010/061821
【国際公開番号】WO2011/079202
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(596118493)アカデミア シニカ (33)
【氏名又は名称原語表記】ACADEMIA SINICA
【住所又は居所原語表記】128 Sec 2,Academia Road,Nankang,Taipei 11529 TW
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【国際出願番号】PCT/US2010/061821
【国際公開番号】WO2011/079202
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(596118493)アカデミア シニカ (33)
【氏名又は名称原語表記】ACADEMIA SINICA
【住所又は居所原語表記】128 Sec 2,Academia Road,Nankang,Taipei 11529 TW
【Fターム(参考)】
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