説明

携帯端末、情報管理装置、地図情報ダウンロードシステム、及び地図情報ダウンロード方法

【課題】携帯端末に現在位置の表示が途切れることなく地図情報をダウンロードする。
【解決手段】携帯端末11は画面に表示された地図上に現在位置を示す機能を備えており、地図としてエリア毎に分割したエリア地図が画面に表示される。携帯端末ではエリア地図を示すエリア地図情報を情報センター14からダウンロードする際、エリア地図間の境界領域を定義する境界領域定義情報をネットワーク12を介してダウンロードする。そして、携帯端末では、現在位置がエリア地図上で境界領域に位置すると当該境界領域に隣接する隣接エリア地図情報と当該隣接エリア情報に対応する境界領域定義情報を情報センターからダウンロードする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現在位置を地図上に表示する機能を有する携帯端末(例えば、携帯電話機又はPDA(Personal Digital Assistant))、携帯端末に地図情報をダウンロードする情報管理装置、さらには、このような携帯端末及び情報管理装置を有する地図情報ダウンロードシステム及び地図情報ダウンロード方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ユビキタスコンピューティングの進展に伴って、歩行者用ナビゲーションシステムが注目されており、例えば、GPS(Global Positioning System)を用いて緯度・経度を示す位置情報をPDA等の携帯端末で取得し、位置情報に応じて携帯端末の画面上に表示された地図に現在位置又は位置の履歴を表示するようにしたものがある。
【0003】
ところで、PDA等の携帯端末では、予めユーザが利用するエリア(地域)の地図情報をダウンロードしておく必要があり、携帯端末のメモリ容量は一般に小さいことを考慮すると、メモリの空き容量が不足することが多く、新たに地図情報をダウンロードする際には、ユーザが現在利用していないエリアの地図情報を削除した後、新たに利用するエリアの地図情報を手動でダウンロードしなければならない。このため、ユーザにとってはナビゲーションシステムとしての使い勝手が極めて悪くなってしまう(なお、携帯電話機においては、地図情報をインターネット上のサーバからダウンロードしている)。
【0004】
このような不具合を防止するため、つまり、携帯端末の使用可能なメモリ容量を考慮するため、GPSにより定期的に測定されて蓄積される現在位置の履歴に基づいて移動方向/移動速度を予測し、携帯電話機から現在位置、地図情報の記憶に使用できるメモリ容量、移動方向、及び移動速度を含むダウンロード要求をデータセンタ(サーバ)に送信して、データセンタでは上記のメモリ容量に応じてダウンロードする地図情報の大きさを決定し、さらに、現在位置が地図情報の周辺に表示され、移動方向側のエリアが広くなるように地図情報を生成するとともに、移動速度に基づいて縮尺を決定するようにしたものがある(特許文献1参照、以下従来例と呼ぶ)。
【特許文献1】特開2002−213990号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来例においては、メモリ容量を考慮して地図情報をダウンロードしているものの、画面上で現在位置を表示できる地図情報がメモリ内に存在しなくなった時点で、サーバから地図情報をダウンロードするので、現在位置を表示可能な地図情報のダウンロードが終了するまで、現在位置を地図上に表示することができなくなってしまう。そして、現在位置を再度地図上に表示するまで時間がかかってしまうという課題がある。
【0006】
さらに、ネットワーク接続手段として無線LAN(ローカルエリアネットワーク)を使用する際、無線LANアクセスポイントと通信可能なエリアが限られていると、表示可能な地図情報がメモリ内に存在しなくなった地点でサーバから地図情報をダウンロードしようとしても、その地点に無線LANアクセスポイントがないと新たに地図情報をダウンロードできなくなってしまい、現在位置を地図上に表示できなくなってしまう。
【0007】
また、現在位置を、GPSを用いて取得する際には、高い建物の多い市街地等ではGPS衛星からの電波を受信できないことがあり、その結果、地図上に現在位置を表示できないという事態が生じる。さらに、携帯電話回線等ではネットワーク接続手段が低速な従量課金回線であるため、地図情報をダウンロードする際に情報量が多いと課金額が多くなってしまうという課題もある。
【0008】
本発明の目的は、現在位置の表示が途切れることなく現在位置を表示可能な地図情報を蓄積することのできる携帯端末を提供するとともに、携帯端末に地図情報をダウンロードする情報管理装置を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は上述の携帯端末及び情報管理装置を有する地図情報ダウンロードシステム及び地図情報ダウンロード方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、画面に表示された地図上に現在位置を示す機能を備える携帯端末において、前記地図としてエリア毎に分割したエリア地図が前記画面に表示され、前記エリア地図を示すエリア地図情報をダウンロードする際に前記エリア地図間の境界領域を定義する境界領域定義情報をネットワークを介してダウンロードするダウンロード手段を備え、前記ダウンロード手段は、前記現在位置が前記エリア地図上で前記境界領域に位置すると当該境界領域に隣接する隣接エリア地図情報と当該隣接エリア情報に対応する前記境界領域定義情報をダウンロードすることを特徴とする携帯端末が得られる。
【0011】
本発明では、携帯端末はGPS衛星からのGPS信号に応じて前記現在位置を求める第1の現在位置取得手段と、予め設置場所が規定された標識票を認識して当該認識結果に応じて前記現在位置を取得する第2の現在位置取得手段と、前記第1及び前記第2の現在位置取得手段を選択的に用いる選択手段とを有している。
【0012】
本発明では、携帯端末は前記隣接エリア地図情報及び前記境界領域定義情報を記憶する記憶手段を備え、前記ダウンロード手段は、前記ダウンロードを行う際に前記記憶手段の空き容量を検知して空き容量が不足すると判定すると前記隣接エリア地図情報及び前記境界領域定義情報のうち最も利用頻度が少ない隣接エリア地図情報及び前記境界領域定義情報から順次削除する。
【0013】
本発明では、前記ダウンロード手段は無線LANアクセスポイントを介して前記隣接エリア地図情報及び前記境界領域定義情報をダウンロードする第1のダウンロード部と、携帯電話回線を介して前記隣接エリア地図情報及び前記境界領域定義情報をダウンロードする第2のダウンロード部とを備えて、前記無線LANアクセスポイントが存在しない場合にのみ前記携帯電話回線を用いる。
【0014】
本発明では、前記境界領域定義情報として少なくとも第1の境界領域定義情報と該第1の境界領域定義情報における境界領域よりもその領域が広くされた第2の境界領域定義情報とがあり、前記画面に表示されたエリア地図内に設置された前記無線LANアクセスポイントが予め規定された数未満である際には前記第2の境界領域定義情報を用いる。
【0015】
本発明では、前記エリア地図情報をダウンロードする際、前記ダウンロード手段は前記標識票の設置場所を示す標識票設置場所情報をダウンロードする。
【0016】
さらに、本発明によれば、画面に表示された地図上に現在位置を示す機能を備える携帯端末に、前記地図としてエリア毎に分割したエリア地図を表すエリア地図情報を送信する情報管理装置であって、前記エリア地図情報及び前記エリア地図間の境界領域を定義する境界領域定義情報を記憶するデータベースと、携帯端末からのダウンロード要求に応じて前記エリア地図情報及び当該エリア地図情報に対応する境界領域定義情報をネットワークを介して前記携帯端末に送信する送信手段とを有することを特徴とする情報管理装置が得られる。
【0017】
本発明では、前記データベースには前記境界領域定義情報として少なくとも第1の境界領域定義情報と該第1の境界領域定義情報における境界領域よりもその領域が広くされた第2の境界領域定義情報とが蓄積され、前記送信手段は、前記携帯端末から前記ダウンロード要求があった際、前記ダウンロード要求で要求されたエリア地図情報で示されるエリア内に位置する無線LANアクセスポイント数が予め規定された閾値数以上であるか否かを判定する判定手段と、前記無線LANアクセスポイント数が前記閾値数以上であると前記エリア地図情報とともに前記第1の境界領域定義情報を前記携帯端末に送信し、前記無線LANアクセスポイント数が前記閾値数未満であると前記エリア地図情報とともに前記第2の境界領域定義情報を前記携帯端末に送信する送信部とを有している。
【0018】
また、本発明によれば、画面に表示された地図上に現在位置を示す機能を備える携帯端末と、該携帯端末に前記地図としてエリア毎に分割したエリア地図を表すエリア地図情報を送信する情報管理装置とを有する地図情報ダウンロードシステムであって、前記情報管理装置には、前記エリア地図情報及び前記エリア地図間の境界領域を定義する境界領域定義情報を記憶するデータベースと、前記携帯端末からのダウンロード要求に応じて前記エリア地図情報及び当該エリア地図情報に対応する境界領域定義情報をネットワークを介して前記携帯端末に送信する送信手段とが備えられ、前記携帯端末には前記現在位置が前記エリア地図上で前記境界領域に位置すると当該境界領域に隣接する隣接エリア地図情報と当該隣接エリア情報に対応する前記境界領域定義情報のダウンロード要求を行うダウンロード手段が備えられていることを特徴とする地図情報ダウンロードシステムが得られる。
【0019】
加えて、本発明によれば、画面に表示された地図上に現在位置を示す機能を備える携帯端末に前記地図としてエリア毎に分割したエリア地図を表すエリア地図情報をダウンロードするための地図情報ダウンロード方法であって、前記現在位置が前記エリア地図上で前記境界領域に位置すると当該境界領域に隣接する隣接エリア地図情報と当該隣接エリア情報に対応する前記境界領域定義情報のダウンロード要求を行う第1のステップと、前記携帯端末からのダウンロード要求に応じて前記隣接エリア地図情報及び当該隣接エリア地図情報に対応する境界領域定義情報をネットワークを介して前記携帯端末に送信する第2のステップとを有することを特徴とする地図情報ダウンロード方法が得られる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明では、携帯端末が境界領域に入ると、当該境界領域に隣接するエリア地図情報を予めダウンロードするようにしたので、エリア地図上への現在位置の表示が途切れることがなく速やかに現在位置を表示することができるという効果がある。
【0021】
本発明によれば、無線LANアクセスポイントと無線通信可能なエリアが限定されていても、事前にエリア地図情報をダウンロードするようにしたので、エリア地図情報をダウンロードできないという事態となることがない。
【0022】
本発明では、GPS信号及び標識票(例えば、無線タグ)を選択的に用いて現在位置を取得するようにしたので、例えば、高い建物の多い市街地等GPS信号が良好に受信できない環境においても現在位置を取得できるという効果がある。
【0023】
本発明では、携帯電話回線等の低速な従量課金回線ばかりでなく、無線LAN等の高速な定額回線も利用できるので、地図情報等を高速にダウンロードすることができ、しかもダウンロード回数による課金額を考慮する必要がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明の実施の形態による地図情報ダウンロードシステムの一例を示すブロック図であり、この地図情報ダウンロードシステムでは、携帯端末(例えば、携帯電話機又はPDA)11はインターネット等のネットワーク12に接続された無線アクセスポイント13又は携帯電話回線(図示せず)を介して情報センター(情報管理装置)14と通信を行って、後述するようにして、情報センターら14から地図情報をダウンロードする。
【0025】
図2も参照すると、図示の例では、携帯端末11には、GPS信号受信部21、情報処理部(端末情報処理部)22、表示部23、ネットワーク接続部(端末ネットワーク接続部)24、無線タグ読み取り部25、及び記憶部(メモリ)26を備えており(携帯端末11は携帯電話機機能も備えているが、図2には示されていない)、記憶部26に地図情報が格納される。GPS信号受信部21ではGPS衛星15からの電波(GPS信号)を受信し、そのGPS信号を情報処理部22に渡す。情報処理部22ではGPS信号に応じて現在位置を求めて、この現在位置に対応した地図情報を記憶部26から読み出し、表示部23に表示された地図上に現在位置をプロットする。
【0026】
一方、図1に示すように、都市部等においては予め無線タグ(ID(識別番号)を無線で通知する機能を有するICタグ(標識票))16が設置され、無線タグ読み取り部25ではこの無線タグ16を読み取って、無線タグ16の設置位置を情報処理部22に渡す。情報処理部22では無線タグ16の設置位置から現在位置を得て、前述したように、地図上に現在位置を表示する。なお、GPS信号受信部21及び無線タグ読み取り部25は選択的に用いられる。
【0027】
さらに、情報処理部22はネットワーク接続部24によって無線アクセスポイント13と無線接続して、情報センター14から地図情報をダウンロードして記憶部26に格納する(後述するように、携帯電話回線を用いて地図情報をダウンロードする場合もある)。
【0028】
再び図1を参照して、情報センター14には情報管理サーバ17及びデータベース18が備えられ、データベース18には地図情報が格納されている。図3に示すように、情報管理サーバ17はネットワーク接続部(サーバネットワーク接続部)31及び情報処理部(サーバ情報処理部)32を有しており、ネットワーク接続部31によってネットワーク12に接続されている。そして、情報処理部32はデータベース18に接続されている。
【0029】
図4(a)に示すように、データベース18には、地図情報41、後述する境界領域定義情報42、及び無線タグ16の設置場所を表す無線タグ設置場所情報43、及び無線アクセスポイント13の設置場所を表すアクセスポイント設置場所情報47が格納されており、地図情報は予め規定されたエリア(地域)毎に区分されており(以下エリア地図情報と呼ぶ)、エリア地図情報に対応付けてそれぞれ境界領域定義情報42及び無線タグ設置場所情報43が規定されている。
【0030】
図4(b)に示すように、地図情報41には各エリア毎の地図44、地図41を識別するための地図識別子45、及び地図をカバーするエリアを示すカバーエリア情報(例えば、緯度経度で示される)46が備えられている。無線タグ設置場所情報43には当該エリア地図情報で規定されたエリアに設置された無線タグに関する情報が備えられ、例えば、図5に示すように、無線タグ毎にタグID51が設けられ、タグID51に対応して設置場所の緯度52及び経度53が規定されている。そして、情報管理サーバ17では、後述するように、携帯端末11からのダウンロード依頼に応じてエリア地図情報41、境界領域定義情報42、無線タグ設置場所情報43を携帯端末11に送る。
【0031】
図6は携帯端末11の記憶部26に格納される情報の一例を示す図であり、図6(a)に示すように、記憶部26には情報センター14から送られた地図情報、境界領域定義情報、及び無線タグ設置場所情報がそれぞれ地図情報61、境界領域定義情報62、及び無線タグ設置場所情報63としてとして記憶されるとともに、地図管理情報64が記憶される。なお、図4(b)で説明したように、地図情報61には地図65、地図識別子66、及びカバーエリア情報67が含まれている(図6(b)参照)。
【0032】
前述の地図管理情報64は情報処理部22で生成され、地図管理情報には、図7に示すように、ダウンロードした地図情報のエリアを示すエリア情報71、地図情報を使用した順番を示す順番情報(直近に使用した地図情報に“1”が付される)72、及び地図情報毎の占有メモリ量73が備えられる。
【0033】
ここで、図8も参照して、本実施の形態による地図情報ダウンロードシステムの動作について説明する。いま、携帯端末11が現在位置を表示するためオンされているとする。情報処理部22では終了指示が入力されたか否かを判定しており(ステップS1)、終了指示があると、処理を終了する。一方、終了指示がないと、情報処理部22では前述したようにして、現在位置を取得する(ステップS2)。
【0034】
続いて、情報処理部22では、記憶部26に現在位置を含む地図情報が既に存在するか否かを調べて(ステップS3)、この地図情報が存在していないと、記憶部26に十分な空き容量があるか調べて(ステップS4)、十分な空き容量がなければ記憶部26に存在する地図情報のうち最も古い順に地図情報を削除し(ステップS5、対応する境界領域定義情報、無線タグ設置場所情報、及び地図管理情報も削除する)、記憶部26の空き容量を増加させる。
【0035】
次に、情報処理部22では当該携帯端末11が通信方式として無線LAN及び携帯電話回線(通信方式)のいずれを使用しているかについて判定し(ステップS6)、両方ともに使用可能であると、情報処理部22は無線LANを選択通信方式として選択する(ステップS7)。一方、無線LAN及び携帯電話回線のいずれか一方のみが使用可能であると、情報処理部22では使用可能な通信方式を選択通信方式として選択する(ステップS8)。
【0036】
続いて、情報処理部22では、選択通信方式が無線LANである際には、現在位置を含む地図情報のダウンロード要求を、ネットワーク接続部24を介して無線アクセスポイント13に送り、これによって、情報管理サーバ17(つまり、情報処理部32)ではデータベース18に格納された対応する地図情報41、境界領域定義情報42、及び無線タグ設置場所情報43を携帯端末11に送る。
【0037】
携帯端末11においては、これら地図情報41、境界領域定義情報42、及び無線タグ設置場所情報43を地図情報61、境界領域定義情報62、及び無線タグ設置場所情報63として記憶部26に格納する(ステップS9:地図情報ダウンロード)。この際、情報処理部22では、地図管理情報64を生成して記憶部26に格納する。そして、情報処理部22では現在位置がプロットされた地図を表示部23に表示する(ステップS10)。そして、情報処理部22はステップS1の処理に戻る。
【0038】
ステップS3において、現在位置を含む地図情報が既に記憶部26に存在すると、情報処理部22では境界領域定義情報62によって現在位置が境界領域に位置するか否かを判定する(ステップS11)。図9は境界領域定義情報(第1の境界領域定義情報)の一例を示す図であり、いま、携帯端末11が符号“e”で示す地図(エリア)上に位置するとする(なお、図9に符号“a”乃至“i”で示すエリアは、ダウンロードされるエリア地図情報の区域を示しており、表示部23にはエリア“a”乃至“i”のいずれかが表示される。つまり、図示の例では、エリア“e”が表示部23に表示されていることになる)。
【0039】
エリア“e”には符号“1”乃至“8”で示す境界領域が設定されており(つまり、境界領域定義情報62には境界領域“1”乃至“8”が規定されている)、境界領域“1”、“3”、“6”及び“8”はエリア“e”の四隅にそれぞれ規定されている。前述のように、情報処理部22は無線タグ16(又はGPS信号)によって現在位置を得ており、現在位置が境界領域“1”乃至“8”のいずれか内に位置すると、情報処理部22では後述するように、隣接するエリア地図情報のダウンロードを実行する。
【0040】
例えば、現在位置が境界領域“1”に位置すると、情報処理部22では境界領域“1”に隣接するエリア“a”、“b”、及び“d”に関するエリア地図情報の取得を情報センター14に依頼することになる。また、現在位置が境界領域“5”に位置すると、情報処理部22では境界領域“5”に隣接するエリア“f”に関するエリア地図情報の取得を情報センター14に依頼することになる。
【0041】
情報処理部22では現在位置が境界領域“1”乃至“8”のいずれかに位置すると判定すると、まず、記憶部26に十分な空き容量があるか調べて(ステップS12)、十分な空き容量がなければ、記憶部26に存在する地図情報のうち最も古い順に地図情報を削除し(ステップS13)、記憶部26の空き容量を増加させる。
【0042】
次に、情報処理部22では、前述したステップS6乃至S8と同様の処理(ステップS14乃至S16)を行った後、境界領域に隣接するエリア地図情報のダウンロード要求を、ネットワーク接続部24を介して無線アクセスポイント13に送り、これによって、情報管理サーバ17ではデータベース18に格納された対応する地図情報41、境界領域定義情報42、及び無線タグ設置場所情報43を携帯端末11に送る。
【0043】
携帯端末11においては、これら地図情報41、境界領域定義情報42、及び無線タグ設置場所情報43を地図情報61、境界領域定義情報62、及び無線タグ設置場所情報63として記憶部26に格納することになる(ステップS17:隣接エリア地図情報のダウンロード)。その後、情報処理部22はステップS10の処理を実行する。なお、ステップS11において、現在位置が境界領域に位置しないと、処理はステップS10に進む。
【0044】
ところで、エリアによっては、無線アクセスポイントの数が少ないことがある。この様な場合には、図10に示す境界領域定義情報(第2の境界領域定義情報)が用いられる。図10を参照すると、エリア“e”には符号“1”乃至“4”で示す境界領域が設定されている(図示の例では、エリア“e”全体に亘って境界領域“1”乃至“4”が規定される。この境界領域定義情報においては、図9に示す境界領域定義情報よりも境界領域が広くされている)。
【0045】
情報処理部22は無線タグ16(又はGPS信号)によって現在位置を得ており、現在位置が境界領域“1”乃至“4”のいずれか内に位置すると、情報処理部22では隣接するエリア地図情報のダウンロードを実行する。
【0046】
例えば、現在位置が境界領域“1”に位置すると、情報処理部22では境界領域“1”に隣接するエリア“a”、“b”、及び“d”に関するエリア地図情報の取得を情報センター14に依頼することになる。また、現在位置が境界領域“4”に位置すると、情報処理部22では境界領域“4”に隣接するエリア“f”、“i”、及び“h”に関するエリア地図情報の取得を情報センター14に依頼することになる。
【0047】
このようにして、無線アクセスポイント13の数に応じて図9及び図10に示す境界領域定義情報のいずれかを用いることになるが、図9及び図10に示す境界領域定義情報のいずれを用いるかは次のようにして決定される。図11を参照すると、図8に示すステップS17の代わりに次の処理が行われる。境界領域に隣接するエリア地図情報のダウンロード要求が携帯端末11から情報センター14にあると、情報管理サーバ17では該当する隣接エリア地域における無線アクセスポイントの数を調べる(ステップP1)。
【0048】
図4(a)に示す無線アクセスポイントの設置場所を示すアクセスポイント設置場所情報47には、例えば、図12に示すように、無線アクセスポイント毎に無線LAN−ID54が設けられ、無線LAN−ID54に対応して無線アクセスポイント13の設置場所の緯度55及び経度56が規定されている。
【0049】
情報管理サーバ17ではアクセスポイント設置場所情報に基づいて隣接エリア地図情報で示されるエリアに存在する無線アクセスポイントの数を調べて、この無線アクセスポイント数が予め規定された閾値数以上であるか否かを判定する(ステップP2)。無線アクセスポイント数≧閾値数であると、情報管理サーバ17は当該エリアについて図9に示す境界領域定義情報が適当であるとして(ステップP3:第1のモード)、この境界領域定義情報を隣接エリア地図情報及び無線タグ設置場所情報とともに携帯端末11に送る(ステップP4)。
【0050】
一方、無線アクセスポイント数<閾値数であると、情報管理サーバ17は当該エリアについて図10に示す境界領域定義情報が適当であるとして(ステップP5:第2のモード)、ステップP4でこの境界領域定義情報を隣接エリア地図情報及び無線タグ設置場所情報とともに携帯端末11に送る。なお、メモリ(記憶部26)の空き容量と通信回線の速度とに応じてダウンロードする地図の大きさ(ファイル容量)を変化させるようにしてもよい。
【0051】
さらに、上述の実施の形態では、無線タグを利用する例について説明したが、無線タグの代わりに赤外線又は微弱無線、Bluetooth(登録商標)等でIDを発信する無線マーカを利用するようにしてもよい。また、地図情報には店舗情報及び公共施設の情報等を含むようにしてもよい。
また、上述の実施の形態では、図9に示す境界領域定義情報と図10に示す境界領域定義情報のいずれか一方を適用する場合について説明したが、図9に示す境界領域定義情報と図10に示す境界領域定義情報とを組み合わせてエリア“e”に適用するようにしてもよい。
【0052】
このように、本実施の形態では、携帯端末11が境界領域に入ると、自動的に当該境界領域に隣接するエリア地図情報を情報センター14から予めダウンロードするようにしたから、エリア地図上への現在位置の表示が途切れることがなく速やかに現在位置を表示することができる。
【0053】
なお、上述の説明から明らかなように、情報処理部22がダウンロード手段として機能し、GPS信号受信部21及び情報処理部22が第1の現在位置取得手段として機能する。また、無線タグ読み取り部25及び情報処理部22が第2の現在位置取得手段として機能し、情報処理部22が選択手段として機能する。そして、情報処理部32及びネットワーク接続部31が送信手段として機能する。
【産業上の利用可能性】
【0054】
携帯端末が境界領域に入った際、当該境界領域に隣接するエリア地図情報を予め情報センターからダウンロードするようにしたから、エリア地図上への現在位置の表示が途切れることがなく速やかに現在位置を表示することができる結果、各種ナビゲーションシステムに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施の形態による地図情報ダウンロードシステムの一例を示すブロック図である。
【図2】図1に示す携帯端末の構成の一例を示すブロック図である。
【図3】図1に示す情報管理サーバの構成の一例を示すブロック図である。
【図4】図3に示すデータベースに格納される情報を説明するための図であり、(a)はデータベースに記憶される内容を示す図、(b)は地図情報の内容を示す図である。
【図5】図4(a)に示す無線タグ設置場所情報の内容を示す図である。
【図6】図2に示す記憶部に格納される情報を説明するための図であり、(a)は記憶部に格納される内容を示す図、(b)は地図情報の内容を示す図である。
【図7】図6(a)に示す地図管理情報の内容を示す図である。
【図8】図1に示す地図ダウンロードシステムの動作を説明するためのめフロー図である。
【図9】境界領域定義情報の一例を説明するための図である。
【図10】境界領域定義情報の他の例を説明するための図である。
【図11】図1に示す情報管理サーバにおいて境界領域定義情報の選択動作を説明するための図である。
【図12】図1に示すデータベースに格納されるアクセスポイント設置場所情報の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0056】
11・・・携帯端末、
12・・・ネットワーク、
13・・・無線アクセスポイント、
14・・・情報センター、
15・・・GPS衛星、
16・・・無線タグ、
17・・・情報管理サーバ、
18・・・データベース、
21・・・GPS信号受信部、
22・・・情報処理部、
23・・・表示部、
24・・・ネットワーク接続部、
25・・・無線タグ読み取り部、
26・・・記憶部、
31・・・ネットワーク接続部、
32・・・情報処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画面に表示された地図上に現在位置を示す機能を備える携帯端末において、
前記地図としてエリア毎に分割したエリア地図が前記画面に表示されており、
前記エリア地図を示すエリア地図情報をダウンロードする際に前記エリア地図間の境界領域を定義する境界領域定義情報をネットワークを介してダウンロードするダウンロード手段を備え、
前記ダウンロード手段は、前記現在位置が前記エリア地図上で前記境界領域に位置すると当該境界領域に隣接する隣接エリア地図情報と当該隣接エリア情報に対応する前記境界領域定義情報をダウンロードすることを特徴とする携帯端末。
【請求項2】
GPS衛星からのGPS信号に応じて前記現在位置を求める第1の現在位置取得手段と、
予め設置場所が規定された標識票を認識して当該認識結果に応じて前記現在位置を取得する第2の現在位置取得手段と、
前記第1及び前記第2の現在位置取得手段を選択的に用いる選択手段とを有することを特徴とする請求項1記載の携帯端末。
【請求項3】
前記隣接エリア地図情報及び前記境界領域定義情報を記憶する記憶手段を備え、
前記ダウンロード手段は、前記ダウンロードを行う際に前記記憶手段の空き容量を検知して空き容量が不足すると判定すると前記隣接エリア地図情報及び前記境界領域定義情報のうち最も利用頻度が少ない隣接エリア地図情報及び前記境界領域定義情報から順次削除するようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載の携帯端末。
【請求項4】
前記ダウンロード手段は無線LANアクセスポイントを介して前記隣接エリア地図情報及び前記境界領域定義情報をダウンロードする第1のダウンロード部と、
携帯電話回線を介して前記隣接エリア地図情報及び前記境界領域定義情報をダウンロードする第2のダウンロード部とを有し、
前記無線LANアクセスポイントが存在しない場合にのみ前記携帯電話回線を用いるようにしたことを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項記載の携帯端末。
【請求項5】
前記境界領域定義情報として少なくとも第1の境界領域定義情報と該第1の境界領域定義情報における境界領域よりもその領域が広くされた第2の境界領域定義情報とがあり、
前記画面に表示されたエリア地図内に設置された前記無線LANアクセスポイントが予め規定された数未満である際には前記第2の境界領域定義情報を用いるようにしたことを特徴とする請求項4記載の携帯端末。
【請求項6】
前記エリア地図情報をダウンロードする際、前記ダウンロード手段は前記標識票の設置場所を示す標識票設置場所情報をダウンロードするようにしたことを特徴とする請求項2記載の携帯端末。
【請求項7】
画面に表示された地図上に現在位置を示す機能を備える携帯端末に、前記地図としてエリア毎に分割したエリア地図を表すエリア地図情報を送信する情報管理装置であって、
前記エリア地図情報及び前記エリア地図間の境界領域を定義する境界領域定義情報を記憶するデータベースと、
携帯端末からのダウンロード要求に応じて前記エリア地図情報及び当該エリア地図情報に対応する境界領域定義情報をネットワークを介して前記携帯端末に送信する送信手段とを有することを特徴とする情報管理装置。
【請求項8】
前記データベースには前記境界領域定義情報として少なくとも第1の境界領域定義情報と該第1の境界領域定義情報における境界領域よりもその領域が広くされた第2の境界領域定義情報とが蓄積されており、
前記送信手段は、前記携帯端末から前記ダウンロード要求があった際、前記ダウンロード要求で要求されたエリア地図情報で示されるエリア内に位置する無線LANアクセスポイント数が予め規定された閾値数以上であるか否かを判定する判定手段と、
前記無線LANアクセスポイント数が前記閾値数以上であると前記エリア地図情報とともに前記第1の境界領域定義情報を前記携帯端末に送信し、前記無線LANアクセスポイント数が前記閾値数未満であると前記エリア地図情報とともに前記第2の境界領域定義情報を前記携帯端末に送信する送信部とを有することを特徴とする請求項7記載の情報管理装置。
【請求項9】
画面に表示された地図上に現在位置を示す機能を備える携帯端末と、該携帯端末に前記地図としてエリア毎に分割したエリア地図を表すエリア地図情報を送信する情報管理装置とを有する地図情報ダウンロードシステムであって、
前記情報管理装置には、前記エリア地図情報及び前記エリア地図間の境界領域を定義する境界領域定義情報を記憶するデータベースと、
前記携帯端末からのダウンロード要求に応じて前記エリア地図情報及び当該エリア地図情報に対応する境界領域定義情報をネットワークを介して前記携帯端末に送信する送信手段とが備えられ、
前記携帯端末には前記現在位置が前記エリア地図上で前記境界領域に位置すると当該境界領域に隣接する隣接エリア地図情報と当該隣接エリア情報に対応する前記境界領域定義情報のダウンロード要求を行うダウンロード手段が備えられていることを特徴とする地図情報ダウンロードシステム。
【請求項10】
画面に表示された地図上に現在位置を示す機能を備える携帯端末に前記地図としてエリア毎に分割したエリア地図を表すエリア地図情報をダウンロードするための地図情報ダウンロード方法であって、
前記現在位置が前記エリア地図上で前記境界領域に位置すると当該境界領域に隣接する隣接エリア地図情報と当該隣接エリア情報に対応する前記境界領域定義情報のダウンロード要求を行う第1のステップと、
前記携帯端末からのダウンロード要求に応じて前記隣接エリア地図情報及び当該隣接エリア地図情報に対応する境界領域定義情報をネットワークを介して前記携帯端末に送信する第2のステップとを有することを特徴とする地図情報ダウンロード方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−240206(P2007−240206A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−59932(P2006−59932)
【出願日】平成18年3月6日(2006.3.6)
【出願人】(397065480)エヌ・ティ・ティ・コムウェア株式会社 (187)
【Fターム(参考)】