説明

携帯端末、消費電流診断方法及びプログラム

【課題】電流消費増大状態に陥った状態を正確に検出することができる携帯端末を提供する。
【解決手段】電池100を備えた携帯端末であって、情報を表示する表示部103と、電池100の消費電流を測定する電流測定部105と、操作者による入力操作に応じて、複数の機能のうちの指定された機能を実行するとともに、電池100の消費電流を診断する制御部101と、携帯端末の状態が機能に応じた複数の項目で規定され、項目毎に、電池100の消費電流の閾値が格納されたテーブル手段104と、を有する。制御部101は、消費電流の診断において、電流測定部105に消費電流を測定させるとともに、携帯端末の現在の状態に対応する項目の閾値をテーブル手段104から取得し、消費電流の測定値が閾値より大きい場合に、想定外の量の電流が消費されている状態であることを示す情報を表示部103に表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機等の携帯端末の消費電流を自己診断する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
最近では、携帯電話機の多機能化が進み、音声通話以外に、メール、フルブラウザ、カメラ、赤外線通信、ゲーム、GPS(Global Positioning System)、ワンセグ(携帯電話・移動体端末向けの1セグメント部分受信サービス)、Bluetooth(登録商標)などの様々な機能が搭載された携帯電話機が提供されている。このような多機能の携帯電話機においては、動作条件が複雑化し、使用されるソフトウェアも、高度化または複雑化している。
【0003】
また、最近普及しつつあるスマートフォンにおいては、ダウンロードしたアプリケーションを動作させることが多くなっている。
【0004】
上記の多機能化やダウンロードしたアプリケーションの利用により、携帯電話機の使用時間や使用頻度が増え、その結果、電池の消費が増大し、使用者にとって、電池の使用可能時間を把握することが、ますます重要になっている。一般に、電池の使用可能時間(電池の残量に相当する)は、電池の放電容量を消費電流値で除した値で表わすことができる。
【0005】
そこで、消費電流値に応じた表示により電池の使用可能時間を把握することが可能な端末が提案されている。
【0006】
例えば、特許文献1には、無線通信状態に応じた消費電流値をピクトグラムで表示することが可能な移動体通信端末が記載されている。
【0007】
この移動体通信端末は、無線通信状態を示すステータス情報を出力する無線制御部と、無線通信状態毎に消費電流値が格納された消費電流値テーブルと、この消費電流値テーブルを参照し、無線制御部からのステータス情報に対応する無線通信状態の消費電流値を推定する消費電流推定部と、推定された消費電流値に対応するピクトグラムを表示する消費電流表示部と、を有する。
【0008】
また、特許文献2には、現在の使用状況に応じた消費電流値をリアルタイムで表示することができる通信端末が記載されている。
【0009】
この通信端末は、消費電流を監視する時間を設定するためのタイマを発行する発行手段と、そのタイマに従って一定の時間間隔で消費電流を計測する測定手段と、消費電流値を保持する記憶手段と、保持した消費電流値に応じた表示を行う表示手段と、を有する。
【0010】
例えば、消費電流値が0mA〜100mAの範囲内にある場合は、「消費電流小」を示すアイコンが表示され、消費電流値が101mA〜200mAの範囲内にある場合は、「消費電流中」を示すアイコンが表示され、消費電流値が201mA以上である場合は、「消費電流大」を示すアイコンが表示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2004−048488号公報
【特許文献2】特開2011−101268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
多機能の携帯電話機においては、動作条件の複雑化のために、ある使用条件下で、電流が想定以上に消費される電流消費増大状態に陥る場合がある。例えば、任意の機能を動作せるためにCPUなどの関連モジュールを必要に応じて動作ONなどの設定をして使用するが、機能を停止する際に、ソフトウェアの不具合等により、停止するための設定が正常に行われず、その結果、想定外の電流消費が発生し続ける状態に陥る場合がある。また、ダウンロードしたアプリケーションの互換性などの影響によっても、上記と同様な消費電流増大状態に陥る場合がある。このような消費電流増大状態は、一時的な状態であり、携帯電話機を再起動することにより、または、アプリケーションを終了させることにより、通常の動作状態に復旧する場合がある。
【0013】
特許文献1に記載のものにおいては、消費電流の測定は行われないので、消費電流増大状態に陥ったことを検出することはできない。このため、使用者は、消費電流増大状態に陥ったことを認識することができず、消費電流増大状態のまま携帯電話機を使用し続け、その結果、電池が必要以上に消費されて、電池の使用可能時間が急激に減少する。
【0014】
特許文献2に記載のものにおいては、現在の消費電流の測定値に応じて、大中小のいずれかの状態を示すアイコンが表示されるので、使用者は、表示されたアイコンに基づいて、現在の消費電流が多いのかどうかを判断することができる。しかし、このようなアイコン表示では、消費電流増大状態に陥った否かを判断することは困難である。
【0015】
なお、特許文献2に記載のものにおいて、例えば、「消費電流大」を示すアイコンが表示される状態を消費電流増大状態と見做すことは可能であるが、この場合は、以下のような問題がある。
【0016】
消費電流増大状態に陥っていない状態、すなわち、通常消費の状態において、消費電流値は、実行される機能に応じて変化する。また、消費電流増大状態における消費電流値も、実行される機能に応じて変化する。特許文献2に記載のものでは、大中小の判定の基準となる閾値は、機能の実行状態に関係なく、固定であるので、通常消費時の消費電流値が大きな機能が実行されている状態を消費電流増大状態であると誤判定したり、消費電流値が小さな消費電流増大状態に対して「消費電流中」を示すアイコンを表示したりする場合がある。
【0017】
このように、特許文献2に記載のものにおいても、消費電流増大状態に陥ったか否かを正確に判断することが困難であり、特許文献1と同様の問題が生じる。
【0018】
本発明の目的は、上記の問題を解決し、電流消費増大状態に陥ったか否かを正確に判断することができる、携帯端末、消費電流診断方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するため、本発明の一態様によれば、
電池を備えた携帯端末であって、
情報を表示する表示部と、
前記電池の消費電流を測定する電流測定部と、
操作者による入力操作に応じて、複数の機能のうちの指定された機能を実行するとともに、前記電池の消費電流を診断する制御部と、
当該携帯端末の状態が前記機能に応じた複数の項目で規定され、該項目毎に、前記電池の消費電流の閾値が格納されたテーブル手段と、を有し、
前記制御部は、前記消費電流の診断において、前記電流測定部に消費電流を測定させるとともに、当該携帯端末の現在の状態に対応する項目の閾値を前記テーブル手段から取得し、前記消費電流の測定値が該閾値より大きい場合に、想定外の量の電流が消費されている状態であることを示す所定の情報を前記表示部に表示させる、携帯端末が提供される。
【0020】
本発明の別の態様によれば、
複数の機能と電池を備えた携帯端末の消費電流診断方法であって、
電流測定部が、前記電池の消費電流を測定するステップと、
制御部が、
当該携帯端末の状態が前記機能に応じた複数の項目で規定され、該項目毎に、前記電池の消費電流の閾値が格納されたテーブル手段を参照し、
当該携帯端末の現在の状態に対応する項目の閾値を前記テーブル手段から取得し、
前記消費電流の測定値が該閾値より大きい場合に、想定外の量の電流が消費されている状態であることを示す所定の情報を表示部に表示させる、消費電流診断方法が提供される。
【0021】
本発明の他の態様によれば、
複数の機能と電池を備えた携帯端末のコンピュータに、
電流測定部に前記電池の消費電流を測定させる処理と、
当該携帯端末の状態が前記機能に応じた複数の項目で規定され、該項目毎に、前記電池の消費電流の閾値が格納されたテーブル手段を参照し、当該携帯端末の現在の状態に対応する項目の閾値を前記テーブル手段から取得する処理と、
前記消費電流の測定値が該閾値より大きい場合に、想定外の量の電流が消費されている状態であることを示す所定の情報を表示部に表示させる処理と、を実行させるプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0022】
以上の本発明によれば、電流消費増大状態に陥ったか否かを正確に判断することができ、電流消費増大状態に陥った場合には、電流消費増大状態に陥ったことを示す表示がなされる。この表示により、使用者は、携帯端末が電流消費増大状態に陥ったことを認識することができ、例えば、携帯電話機の電源の入れ直しや実行中の機能を終了するための操作を行うことで、携帯端末を通常消費の状態に復旧させることができる。この結果、電池が必要以上に消費されて、電池の使用可能時間が急激に減少するといったことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施形態である携帯端末の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す携帯端末の消費電流診断処理に関わる部分の具体的な構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示す携帯端末にて用いられる状態別消費電流値テーブルの一例を示す図である。
【図4】図1に示す携帯端末にて用いられる状態別オフセット消費電流値テーブルの一例を示す図である。
【図5】図1に示す携帯端末にて行われる消費電流診断処理の一手順を示すフローチャートである。
【図6】図1に示す携帯端末にて行われる消費電流診断結果の表示例を説明するための図である。
【図7】本発明の第2の実施形態である携帯端末の構成を示すブロック図である。
【図8】図7に示す携帯端末にて行われる消費電流診断処理の一手順を示すフローチャートである。
【図9】本発明の他の実施形態である携帯端末の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0025】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態である携帯端末の構成を示すブロック図である。
【0026】
図1を参照すると、本実施形態の携帯端末は、多機能の携帯電話機やスマートフォンなどの端末装置であって、制御部1、操作部2、ディスプレイ部3、ディスプレイ照明部4、電流測定部5、記憶部6、マイクロホン7、A/D変換部8、D/A変換部9、レシーバ10、データ符号/復号処理部11、無線部12およびアンテナ13を有する。
【0027】
操作部2は、複数の操作キーからなるキー操作部やタッチパネルなどの入力手段である。使用者は、操作部2を使用して携帯電話機を操作する。
【0028】
ディスプレイ部3は、例えば液晶ディスプレイ等の表示装置である。ディスプレイ照明部4は、ディスプレイ部3の視認性を良くするための照明手段である。ディスプレイ照明部4からの照明光がディスプレイ部3の表示画面部分に照射される。
【0029】
電流測定部5は、自端末の消費電流(不図示の電池の消費電流)を測定するものであって、制御部1からの指示に従って、一定の時間間隔で消費電流を測定する。
【0030】
記憶部6は、半導体メモリまたはHDD(ハードディスクドライブ)装置である。携帯端末を動作させるのに必要なプログラムやデータが記憶部6に格納される。プログラムは、消費電流診断プログラムを含む。
【0031】
マイクロホン7は、音声等を入力するための手段である。マイクロホン7の出力(アナログ)は、A/D変換部8に供給される。A/D変換部8は、マイクロホン7の出力信号をデジタル信号に変換する。A/D変換部8の出力は、制御部1に供給される。
【0032】
D/A変換部9は、制御部1からの、通話時の音声信号(デジタル)やメディア再生時のオーディオ信号(デジタル)を入力とし、入力信号をアナログ信号に変換する。D/A変換部9の出力は、レシーバ10に供給される。レシーバ10は、スピーカ等であって、D/A変換部9からの信号を出力する。
【0033】
無線部12は、アンテナ13を介して外部装置からの無線信号(符号データ)を受信し、その受信した信号をデータ符号/復号処理部11に供給する。無線部12は、データ符号/復号処理部11から供給された信号(符号データ)を、アンテナ13を介して外部装置へ送信する。
【0034】
データ符号/復号処理部11は、無線部12から供給された符号データを復号し、その復号したデータを制御部1に供給する。データ符号/復号処理部11は、制御部1から供給されたデータを符号化し、その符号データを無線部12に供給する。
【0035】
制御部1は、記憶部6に格納されたプログラムに従って動作し、携帯端末全体の動作を制御する。制御部1は、操作部2から、使用者による入力操作に応じた指示信号を受信し、その指示信号に従って必要な機能を実行する。
【0036】
制御部1が実行する機能は、音声通話、メール、フルブラウザ、カメラ、赤外線通信、ゲーム、GPS(Global Positioning System)、ワンセグ(携帯電話・移動体端末向けの1セグメント部分受信サービス)、Bluetooth(登録商標)などの様々な機能を含む他、前述した電流消費増大状態を検出するための消費電流診断処理の機能を含む。消費電流診断処理以外の機能は、既存の携帯電話機等で実施されている良く知られた機能であるので、ここではそれらの機能の説明は省略し、消費電流診断処理を中心に説明する。
【0037】
例えば、使用者が、操作部2を用いて消費電流診断処理を実行するための所定の入力操作を行うと、消費電流診断の実行を示す指示信号が操作部2から制御部1に供給される。制御部1は、その指示信号を受信すると、記憶部6に格納されている消費電流診断プログラムを読み出し、その消費電流診断プログラムに従って消費電流診断処理を実行する。ここで、所定の入力操作は、携帯端末の電源を入れる操作であってもよい。
【0038】
図2は、消費電流診断処理に関わる部分の具体的な構成を示すブロック図である。
【0039】
図2に示すように、制御部1は、消費電流診断部14を有する。消費電流診断部14は、タイマ発行部14−1、タイムアウト判定部14−2、状態判定部14−3、状態別判断消費電流値算出部14−4および消費電流判定部14−5を有する。状態別消費電流値テーブル6−1および状態別オフセット消費電流値テーブル6−2が、記憶部6に格納されている。
【0040】
携帯端末の状態には、待ち受け状態の他、音声通話、メール、フルブラウザ、カメラ、赤外線通信、ゲーム、GPS(Global Positioning System)、ワンセグ、Bluetoothなどの各機能に応じた状態がある。
【0041】
状態別消費電流値テーブル6−1は、それら状態のうちの予め定められた複数の状態について、状態毎に、通常消費時の消費電流値を格納したテーブルである。ここで、通常消費とは、想定内の範囲で電流を消費することを意味する。
【0042】
図3に、状態別消費電流値テーブル6−1の一例を示す。
【0043】
図3に示す状態別消費電流値テーブル6−1においては、携帯端末の状態として、待ち受け、音声通話、TV電話、ミュージックプレイヤ、ワンセグ視聴の5つの状態が設定されており、状態毎に、消費電流値が格納されている。
【0044】
具体的には、待ち受け状態において、ディスプレイON時の消費電流値は50mAであり、ディスプレイOFF時の消費電流値は1mAである。音声通話状態において、ディスプレイON時の消費電流値は250mAであり、ディスプレイOFF時の消費電流値は200mAである。TV電話状態の消費電流値は350mAである。ミュージックプレイヤ動作状態において、ディスプレイON時の消費電流値は80mAであり、ディスプレイOFF時の消費電流値は30mAである。ワンセグ視聴状態の消費電流値は150mAである。各状態の消費電流値はいずれも、事前に測定された結果に基づいて設定されるものであり、その値は想定内の範囲内である。
【0045】
状態別オフセット消費電流値テーブル6−2は、携帯端末の状態毎に、電流消費増大状態における消費電流値と通常消費時の消費電流値との差分を示すオフセット消費電流値を格納したものである。通常消費時の消費電流値にオフセット消費電流値を加えた状態別判断消費電流値が、電流消費増大状態に陥ったか否かを判定するための閾値として用いられる。
【0046】
図4に、状態別オフセット消費電流値テーブル6−2の一例を示す。
【0047】
図4に示す状態別オフセット消費電流値テーブル6−2においても、図3に示した状態別消費電流値テーブル6−1と同じ状態の項目(待ち受け、音声通話、TV電話、ミュージックプレイヤ、ワンセグ視聴)が設定されており、状態毎に、オフセット消費電流値が格納されている。図4の例では、各状態のオフセット消費電流値は全て20mmAである。
【0048】
図4に示した状態別オフセット消費電流値テーブル6−2において、オフセット消費電流値は、携帯端末の状態別に変えても良い。なお、待ち受け状態においてもオフセット消費電流値が設定されているが、これは、他の状態から待ち受け状態に戻るときに、CPUの設定などの不備により、停止するための設定が正常に行われず、その結果、想定外の電流消費が発生し続ける状態に陥る場合があるためである。
【0049】
図2に示した消費電流診断部14において、タイマ発行部14−1は、消費電流測定の開始タイミングを指定するためのタイマを発行する。タイマがタイムアウトするタイミングが、消費電流測定の開始タイミングである。タイマのタイムアウトの時間は、任意に設定可能である。
【0050】
タイムアウト判定部14−2は、タイマ発行部14−1により発行されたタイマがタイムアウトしたか否かを判定する。タイマがタイムアウトすると、タイムアウト判定部14−2は、タイムアウト信号を電流測定部5および動作状態判定部14−3に供給する。
【0051】
電流測定部5は、タイムアウト信号を受信すると、消費電流の測定を開始し、その測定により得られた消費電流値を消費電流判定部14−5に供給する。消費電流値は、単位時間当たりの電流の消費量(電池からの持ち出し電流の値)である。電流測定部5は、一定時間にわたって消費電流を測定し、消費電流値の平均を消費電流判定部14−5に供給してもよい。
【0052】
状態判定部14−3は、タイムアウト信号を受信すると、自端末の現在の状態を判定する。例えば、制御部1が、操作部2からの指示信号に応じた動作を行う場合(アプリケーションを含む各機能のうちの指定された機能を実行する場合)に、その動作の状態を識別可能な状態情報を現在状態情報として記憶部6に格納するようにしておき、タイムアウト信号の受信時に、動作状態判定部14−3が、記憶部6に格納された現在状態情報を参照して現在の状態を判定してもよい。
【0053】
現在状態情報は、例えば、状態別消費電流値テーブル6−1や状態別オフセット消費電流値テーブル6−2に設定された各状態について、状態毎に、フラグを立てる欄を設けたテーブルにより提供されてもよい。この場合は、制御部1が、操作部2からの指示信号に応じた動作を行う場合に、その動作に対応する状態の欄にフラグを立てる。動作終了時には、終了対象の動作に対応する状態の欄のフラグを削除する。なお、制御部1は、複数のアプリケーションを並列して実行した場合は、それぞれのアプリケーションに対応する状態の欄にフラグを立てる。
【0054】
状態別判断消費電流値算出部14−4は、状態別消費電流値テーブル6−1および状態別オフセット消費電流値テーブル6−2を参照し、状態判定部14−3にて判定された現在の状態に対応する状態別判断消費電流値を算出する。
【0055】
具体的には、状態判定部14−3にて現在の状態が判定されると、状態別判断消費電流値算出部14−4は、状態別消費電流値テーブル6−1からその現在の状態に対応する通常消費時の消費電流値を取得し、さらに、状態別オフセット消費電流値テーブル6−2からその現在の状態に対応するオフセット消費電流値を取得する。そして、状態別判断消費電流値算出部14−4は、取得した通常消費時の消費電流値に取得したオフセット消費電流値を加算して状態別判断消費電流値を得る。この状態別判断消費電流値は、電流消費増大状態を検出するための閾値である。状態別判断消費電流値算出部14−4は、状態別判断消費電流値を消費電流判定部14−5に供給する。
【0056】
消費電流判定部14−5は、電流測定部5からの測定消費電流値と、状態別判断消費電流値算出部14−4からの状態別判断消費電流値(閾値)とを比較し、測定消費電流値が状態別判断消費電流値より大きい場合に、所定の情報をディスプレイ部3に表示させる。測定消費電流値が状態別判断消費電流値以下である場合は、消費電流判定部14−5は、ディスプレイ部3に対する表示は行わない。
【0057】
所定の情報は、電流消費増大状態を示すアイコンやメッセージ、電源の入れ直しを指示するためのアイコンやメッセージなどである。
【0058】
次に、本実施形態の携帯端末にて行われる消費電流診断の動作を説明する。
【0059】
図5は、消費電流診断処理の一手順を示すフローチャートである。以下、図1〜図5を参照して消費電流診断処理を具体的に説明する。
【0060】
消費電流診断プログラムが実行されると、まず、タイマ発行部14−1が、消費電流測定の開始タイミングを指定するためのタイマを発行する(ステップS11)。
【0061】
次に、タイムアウト判定部14−2が、タイマ発行部14−1が発行したタイマがタイムアウトしたか否かを判定する(ステップS12)。
【0062】
タイマがタイムアウトすると、続いて、電流測定部5が、消費電流を測定して消費電流値を消費電流判定部14−5に供給する(ステップS13)。
【0063】
次に、状態判定部14−3が、自端末の現在の状態を判定する(ステップS14)。
【0064】
状態判定部14−3にて現在の状態が判定されると、続いて、状態別判断消費電流値算出部14−4が、状態別消費電流値テーブル6−1から現在の状態に対応する通常消費時の消費電流値を取得する(ステップS15)。さらに、状態別判断消費電流値算出部14−4が、状態別オフセット消費電流値テーブル6−2から現在の状態に対応するオフセット消費電流値を取得する(ステップS16)。そして、状態別判断消費電流値算出部14−4が、取得した通常消費時の消費電流値に取得したオフセット消費電流値を加算して状態別判断消費電流値を得る(ステップS17)。
【0065】
最後に、消費電流判定部14−5が、電流測定部5から供給された測定消費電流値と、状態別判断消費電流値算出部14−4から供給された状態別判断消費電流値(閾値)とを比較する(ステップS18)。測定消費電流値が状態別判断消費電流値より大きい場合には、消費電流判定部14−5が、所定の情報をディスプレイ部3に表示させる(ステップS19)。測定消費電流値が状態別判断消費電流値以下である場合は、消費電流判定部14−5は、ディスプレイ部3に対する表示は行わない。
【0066】
以上のステップS11〜S19の処理を繰り返すことで、一定の時間間隔で、携帯端末が電流消費増大状態に陥ったか否かの判定が行われ、携帯端末が電流消費増大状態に陥った場合には、所定の情報がディスプレイ部2に表示される。
【0067】
例えば、図6に示すように、所定の情報として、ディスプレイ部3の画面に、「消費電流多い」のアイコン51を表示させ、さらに、「消費電流が多い状態です。携帯電話機の電源を入れ直して下さい。」のポップアップ表示52を表示させる。
【0068】
使用者は、ディスプレイ部2に表示されたアイコン51やポップアップ表示52を見ることで、携帯端末が電流消費増大状態に陥ったことを認識することができる。そして、使用者が、例えば、携帯端末を再起動したり、実行中の機能を終了する操作を行ったりすることで、携帯端末を通常消費の状態に復旧させることができ、その結果、電池が必要以上に消費されて、電池の使用可能時間が急激に減少するといったことを抑制することができる。
【0069】
携帯端末が電流消費増大状態に陥ったことを示すアイコンやメッセージの表示により、使用者が、消費電流が多くなる使用条件やその改善策を学習する効果を得ることが期待される。
【0070】
図5に示した消費電流診断処理において、ステップS13の処理と、ステップS14〜S16の処理は、どちらが先に行われてもよく、また、並行して行われてもよい。
【0071】
また、携帯端末が、待受けの状態で、ディスプレイ部3がOFFの状態である場合は、ステップS19において、所定の情報をディスプレイ部3へ表示することはできない。この場合は、消費電流判定部14−5は、ディスプレイ部3がONの状態に遷移したタイミングで、または、ディスプレイ部3をONにしてから、所定の情報を表示させる。待受け状態以外の状態においても、これと同様の表示動作が行われる。
【0072】
また、上述の説明では、状態別消費電流値テーブル6−1は、事前に記憶部6に格納されているが、これに限定されない。消費電流診断処理の実行開始時、または、操作部2にて所定の入力操作が行われた場合に、制御部1が、自端末の状態を順次遷移させ、それぞれの状態において、電流測定部5にて通常消費の消費電流値を測定させ、その測定結果に基づいて、状態別消費電流値テーブル6−1を作成または更新してもよい。
【0073】
また、携帯端末の使用中に、制御部1が、状態毎に、電流測定部5にて消費電流値を測定させ、その平均値を算出して平均最小値を求め、その平均最小値に基づいて状態別消費電流値テーブル6−1を更新してもよい。
【0074】
以上説明したように、本発明によれば、携帯端末が電流消費増大状態に陥ったことを使用者に認識させ、携帯端末の電源の入れ直しやアプリケーションの終了といった動作を行わせることで、電流消費増大状態に陥った状態から通常消費状態に復旧させることができる。これにより、使用者が、電流消費増大状態のまま携帯端末を使用することを抑制し、その結果、不必要な電流の消費が抑制される。
【0075】
(第2の実施形態)
図7は、本発明の第2の実施形態である携帯端末の構成を示すブロック図である。
【0076】
図7に示すように、本実施形態の携帯端末は、第1の実施形態の構成に時刻情報出力部15を加えたものとなっており、消費電流診断処理の一部が第1の実施形態の構成と異なる。図7中、第1の実施形態と同じ構成には、同じ符号が付されている。
【0077】
時刻情報出力部15は、現在の時刻を示す時刻情報を制御部1に供給する。制御部1は、図2に示した構成を備えており、消費電流判定部14−5が、想定外の量の電流が消費されたと判断した場合に、消費電流の測定値と時刻情報出力部15からの時刻情報より得られる現在時刻を示す情報と、自端末の現在の状態の情報と、電流測定部5にて測定された消費電流値(測定値)とを互いに関連付けて記憶部6に格納する。
【0078】
図8に、本実施形態の携帯端末にて行われる消費電流診断処理の一手順を示す。図8において、ステップS11〜S19の処理は図5に示したものと同じであるので、ここではその説明は省略する。
【0079】
図8に示す消費電流診断処理においては、ステップS19で判断結果に応じた処理が行われると、続いて、消費電流判定部14−5が、時刻情報出力部15からの時刻情報に基づいて現在時刻を取得し、該現在時刻の情報と、ステップS14の判定結果である自端末の現在の状態の情報と、ステップS15で取得した消費電流値(測定値)とを含む消費電流診断履歴情報を、記憶部6に格納する(ステップS20)。そして、ステップS11〜S20の処理が一定の時間間隔で繰り返される。
【0080】
上記の消費電流診断処理によれば、第1の実施形態で説明した各効果を奏することに加えて、以下のような効果を得ることができる。
【0081】
携帯端末が電流消費増大状態に陥った場合には、そのときの自端末の状態情報、消費電流値、および時刻情報が消費電流診断履歴情報として記憶部6に格納される。したがって、故障等の際には、記憶部6に格納されている消費電流診断履歴情報の内容を確認することで原因を解析することが可能である。
【0082】
(他の実施形態)
図9は、本発明の他の実施形態である携帯端末の構成を示すブロック図である。
【0083】
図9に示すように、本実施形態の携帯端末は、電池100、制御部101、操作部102、表示部103、テーブル手段104および電流測定部105を有する。
【0084】
電池100は、2次電池(蓄電式電池とも呼ばれる)であって、その出力は、電流測定部105を介して、制御部101、表示部103およびテーブル手段104のそれぞれに供給されている。
【0085】
電流測定部105は、電池100の消費電流を測定する。表示部103は、液晶ディスプレイ等の表示装置よりなり、情報を表示する。操作部102は、キーボードやタッチパネル等の入力手段である。
【0086】
テーブル手段104は、半導体メモリやHDDに代表される記憶装置によって提供されるものであって、当該携帯端末の状態が機能に応じた複数の項目で規定され、項目毎に、電池100の消費電流の閾値が格納されている。
【0087】
制御部101は、プログラム(消費電流診断プログラムを含む)によって動作するコンピュータであって、操作部102を介して操作者による入力操作を受け付け、該入力操作に応じて、複数の機能のうちの指定された機能を実行するとともに、電池100の消費電流を診断する。消費電流の診断において、制御部101は、電流測定部105に電池100の消費電流を測定させるとともに、携帯端末の現在の状態に対応する項目の閾値をテーブル手段104から取得し、消費電流の測定値が該閾値より大きい場合に、想定外の量の電流が消費されている状態であることを示す所定の情報を表示部103に表示させる。
【0088】
本実施形態の携帯端末において、テーブル手段104は、項目毎に、想定される消費電流値が格納された状態別消費電流値テーブルと、項目毎に、想定されるオフセット消費電流値が格納された状態別オフセット消費電流値テーブルと、を有していていもよい。例えば、状態別消費電流値テーブルおよび状態別オフセット消費電流値テーブルとして第1または第2の実施形態のものを適用してもよい。この場合、制御部101は、当該携帯端末の現在の状態に対応する項目の消費電流値およびオフセット消費電流値を、状態別消費電流値テーブルおよび状態別オフセット消費電流値テーブルからそれぞれ取得し、該消費電流値に該オフセット消費電流値を加算した値を、閾値として用いて消費電流を診断してもよい。
【0089】
制御部101は、項目それぞれに対応する状態の消費電流を電流測定部105にて測定させ、該測定により得られた消費電流値に基づいて、状態別消費電流値テーブルを作成または更新してもよい。
【0090】
本実施形態の携帯端末は、情報を保持する記憶部と、現在時刻を示す時刻情報を出力する時刻情報出力部と、をさらに有していてもよい。この場合、制御部101は、想定外の量の電流が消費されている状態であると判断した場合に、当該携帯端末の現在の状態と、消費電流の測定値と、時刻情報出力部からの時刻情報より得られる現在時刻の情報と、を含む履歴情報を、記憶部に保持させてもよい。
【0091】
上述の想定外の量の電流が消費されている状態であることを示す所定の情報は、当該携帯端末の再起動を要求するメッセージまたは現在実行中の機能に対応する処理の終了を要求するメッセージを含んでいてもよい。
【0092】
以上説明した各実施形態の携帯端末において、消費電流診断プログラムは、携帯端末の記憶部に予め格納されてもよい。また、消費電流診断プログラムは、CD−ROMやDVD等のディスクやUSBメモリ等のコンピュータ読み出し可能な記録媒体により提供されてもよく、また、インターネット等のネットワークを介して携帯端末に直接ダウンロードされてもよい。
【0093】
消費電流診断プログラムを記録したディスクを利用する場合は、例えば、パーソナルコンピュータ等のディスク装置を備えた外部装置を用い、USB端子等の入出力端子により携帯端末と外部装置とを接続して、ディスクに記録した消費電流診断プログラムを外部装置から携帯端末の記憶部にダウンロードしてもよい。
【0094】
また、各実施形態の携帯端末において、複数の機能が同時に実行状態になる場合は、その状態に対応する項目を、状態別消費電流値テーブルおよび状態別オフセット消費電流値テーブルのそれぞれに設定し、その設定した項目について、状態別消費電流値および状態別オフセット消費電流値を格納する。これら状態別消費電流値および状態別オフセット消費電流値も、事前の測定結果または携帯端末の使用中の測定結果に基づいて取得することができる。
【符号の説明】
【0095】
1、101 制御部
2、102 操作部
3、103 ディスプレイ部
4 ディスプレイ照明部
5、105 電流測定部
6 記憶部
7 マイクロホン
8 A/D変換部
9 D/A変換部
10 レシーバ
11 データ符号/復号処理部
12 無線部
13 アンテナ
100 電池
104 テーブル手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池を備えた携帯端末であって、
情報を表示する表示部と、
前記電池の消費電流を測定する電流測定部と、
操作者による入力操作に応じて、複数の機能のうちの指定された機能を実行するとともに、前記電池の消費電流を診断する制御部と、
当該携帯端末の状態が前記機能に応じた複数の項目で規定され、該項目毎に、前記電池の消費電流の閾値が格納されたテーブル手段と、を有し、
前記制御部は、前記消費電流の診断において、前記電流測定部に消費電流を測定させるとともに、当該携帯端末の現在の状態に対応する項目の閾値を前記テーブル手段から取得し、前記消費電流の測定値が該閾値より大きい場合に、想定外の量の電流が消費されている状態であることを示す所定の情報を前記表示部に表示させる、携帯端末。
【請求項2】
前記テーブル手段は、
前記項目毎に、想定される消費電流値が格納された状態別消費電流値テーブルと、
前記項目毎に、想定されるオフセット消費電流値が格納された状態別オフセット消費電流値テーブルと、を有し、
前記制御部は、当該携帯端末の現在の状態に対応する項目の消費電流値およびオフセット消費電流値を、前記状態別消費電流値テーブルおよび状態別オフセット消費電流値テーブルからそれぞれ取得し、該消費電流値に該オフセット消費電流値を加算した値を前記閾値として用いて前記消費電流を診断する、請求項1に記載の携帯端末。
【請求項3】
前記制御部は、前記項目それぞれに対応する状態の消費電流を前記電流測定部にて測定させ、該測定により得られた消費電流値に基づいて、前記状態別消費電流値テーブルを作成または更新する、請求項2に記載の携帯端末。
【請求項4】
情報を保持する記憶部と、
現在時刻を示す時刻情報を出力する時刻情報出力部と、をさらに有し、
前記制御部は、想定外の量の電流が消費されている状態であると判断した場合に、当該携帯端末の現在の状態と、前記消費電流の測定値と、前記時刻情報出力部からの時刻情報と、を含む履歴情報を、前記記憶部に保持させる、請求項1から3のいずれか1項に記載の携帯端末。
【請求項5】
前記所定の情報は、当該携帯端末の再起動を要求するメッセージまたは現在実行中の機能に対応する処理の終了を要求するメッセージを含む、請求項1から4のいずれか1項に記載の携帯端末。
【請求項6】
複数の機能と電池を備えた携帯端末の消費電流診断方法であって、
電流測定部が、前記電池の消費電流を測定するステップと、
制御部が、
当該携帯端末の状態が前記機能に応じた複数の項目で規定され、該項目毎に、前記電池の消費電流の閾値が格納されたテーブル手段を参照し、
当該携帯端末の現在の状態に対応する項目の閾値を前記テーブル手段から取得し、
前記消費電流の測定値が該閾値より大きい場合に、想定外の量の電流が消費されている状態であることを示す所定の情報を表示部に表示させる、消費電流診断方法。
【請求項7】
複数の機能と電池を備えた携帯端末のコンピュータに、
電流測定部に前記電池の消費電流を測定させる処理と、
当該携帯端末の状態が前記機能に応じた複数の項目で規定され、該項目毎に、前記電池の消費電流の閾値が格納されたテーブル手段を参照し、当該携帯端末の現在の状態に対応する項目の閾値を前記テーブル手段から取得する処理と、
前記消費電流の測定値が該閾値より大きい場合に、想定外の量の電流が消費されている状態であることを示す所定の情報を表示部に表示させる処理と、を実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−115716(P2013−115716A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261989(P2011−261989)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】