説明

携帯端末、衝撃通報方法および衝撃通報プログラム

【課題】車両が受けた衝撃とは無関係の衝撃の検知に応じて通報が行われることを防止する。
【解決手段】衝撃センサと、前記衝撃センサが衝撃を検知したか否かを判定する衝撃判定手段と、車載器が衝撃を検知した場合に通報先装置に通報する車載器側通報機能が、当該車載器において正常に実行されているか否かを診断する診断手段と、前記車載器側通報機能が正常に実行されていると診断された場合に、前記通報先装置に通報せず、前記衝撃センサにて衝撃が検知されたと判定され、かつ、前記車載器側通報機能が正常に実行されていないと診断された場合に、前記通報先装置に通報する通報手段と、を備える携帯端末。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末、衝撃通報方法および衝撃通報プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一定以上の衝撃を検知した場合に、通報センタへ通報する車載器が提案されている(特許文献1、参照。)。また、スマートフォンの衝撃センサが一定以上の衝撃を感知すると自動的に通報ボタンを画面に表示させるプログラムが提案されている(非特許文献1、参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−298786号公報
【非特許文献1】"smart G−BOOKの主なサービス HELPNET通報支援機能",[URL]http://g-book.com/pc/smart_G-BOOK/default.asp
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、車両が衝突した場合に、車両が受けた衝撃が車載器に伝達されやすく、通報を行うべき段階ではすでに車載器が壊れているという問題があった。すなわち、特許文献1の技術では、通報を行うべきにも拘わらず、車載器が通報できないという問題があった。一方、スマートフォンは、車両から衝撃が伝達されにくいが、車両が受けた衝撃とは無関係の衝撃を受けやすいという問題があった。すなわち、特許文献2の技術では、例えば車内においてスマートフォンを落下させた等の衝撃を受けた場合でも、通報ボタンを画面に表示させ誤った通報を誘起させてしまうという問題があった。
本発明は、前記課題にかんがみてなされたものであり、車両が受けた衝撃とは無関係の衝撃に応じて通報が行われることを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の目的を達成するため、本発明の携帯端末において、診断手段は、車載器が衝撃を検知した場合に通報先装置に通報する車載器側通報機能が、当該車載器において正常に実行されているか否かを診断する。衝撃判定手段は、衝撃センサにて衝撃が検知されたか否かを判定する。通報手段は、車載器側通報機能が正常に実行されていると診断された場合に、通報先装置に通報しない。一方、通報手段は、車載器側通報機能が正常に実行されていないと診断され、かつ、衝撃センサにて衝撃が検知されたと判定された場合に、通報先装置に通報する。
【0006】
通常、携帯端末は車両に固定治具を用いて固定されていないため、事故等により車両が受けた衝撃によって携帯端末が壊れる可能性は車載器よりも低い。従って、衝撃センサにて衝撃が検知されたと判定された場合に携帯端末が通報先装置に通報することにより、車載器が壊れるような衝撃を車両が受けた場合でも、壊れる可能性の低い携帯端末が通報先装置に通報できる。
【0007】
しかしながら、通常、携帯端末は車両に固定されることなく車両内に持ち込まれるため、携帯端末の衝撃センサは車両が受けた衝撃とは無関係の衝撃も検知し得る。従って、携帯端末単独による衝撃の検知に応じて通報を行うと、車両が受けた衝撃とは無関係の衝撃に応じた通報がなされる可能性が生じる。これに対して車両に備えられる車載器は、車両に組み込まれた衝撃検知手段から衝撃検知の情報を得るように構成することができ、事故等により車両が衝撃を受けたことを高い確度で検知できる。車載器側通報機能が正常に実行されていると診断された場合に携帯端末が通報先装置に通報しないようにすることにより、車両が衝撃を受けたことを高い確度で通報可能な車載器側通報機能に通報を委ねることができる。従って、車載器側通報機能が正常である場合には、車両が受けた衝撃とは無関係の衝撃に応じて携帯端末により通報が行われることを防止できる。
【0008】
携帯端末が備える衝撃センサは、例えば加速度センサや角加速度センサとすることができる。衝撃センサは加速度や角加速度を示す検知信号を生成し、衝撃判定手段は検知信号が示す加速度や角加速度が所定の閾値よりも大きい場合に衝撃センサにて衝撃が検知されたと判定してもよい。また、衝撃センサが加速度や角加速度を検知する具体的手法は特に限定されない。例えば加速度や角加速度を受けることに起因する物体の運動や変形や変質を電磁的手法や光学的手法によって検知することにより衝撃センサが加速度や角加速度を検知してもよい。また、衝撃センサが衝撃を検知する方向は、一軸方向であっても二軸方向以上であってもよい。例えば、事故により車両が受けやすい水平方向の衝撃を他の方向の衝撃と区別して検知してもよい。
【0009】
通報手段が行う通報とは、通報先装置に衝撃を検知したことを伝達するために行う動作であり、通報先装置に衝撃を検知したことを示す通報データを送信することであってもよい。通報データには、衝撃を検知したことを示す衝撃検知データのほかに、携帯端末または車載器の位置を示す位置データ、携帯端末または車載器を識別する識別データ、衝撃強度や衝撃検知時刻を示す衝撃データ等を含んでもよい。また、通報手段が行う通報とは、携帯端末と通報先装置との間で音声通信を確立することであってもよい。さらに、通報手段が通報する通報先装置は、一つの装置に限られず、複数の装置であってもよい。また、携帯端末の通報手段が通報する通報先装置と、車載器側通報機能によって通報される通報先装置とが共通してもよいし、互いに異なってもよい。例えば、携帯端末の通報手段は、車載器側通報機能が通報する通報先装置を示すデータを予め取得することにより、車載器側通報機能が通報する通報先装置と共通する通報先装置に通報を行ってもよい。
【0010】
携帯端末の診断手段は、所定の通信手段を介して車載器側通報機能を診断する。この通信手段は、有線通信手段であってもよいし無線通信手段であってもよい。診断手段は、車載器に対して所定のデータを送信し、当該データに応答する実行確認データを車載器から受信したことをもって車載器側通報機能が正常に実行されていると診断してもよい。さらに、診断手段は、実行確認データが受信されないことをもって車載器側通報機能が正常に実行されていないと診断してもよい。また、車載器が自発的に送信した実行確認データを受信したことをもって車載器側通報機能が正常に実行されていると診断してもよい。なお、実行確認データは、車載器側通報機能が正常に実行されていることを肯定するデータに限らず、車載器側通報機能が正常に実行されていることを否定するデータであってもよい。すなわち、診断手段は、車載器側通報機能が正常に実行されていないことを示す実行確認データが受信されたことをもって車載器側通報機能が正常に実行されていないと診断してもよい。
【0011】
衝撃判定手段により衝撃センサにて衝撃が検知されたと判定された場合に、診断手段による車載器側通報機能の診断を行うことにより、診断手段が定期的に車載器側通報機能を診断しなくても、衝撃センサが衝撃を検知したタイミングにおける車載器側通報機能の状態を診断できる。すなわち、衝撃判定手段により衝撃センサが衝撃を検知した段階で、車載器側通報機能の診断を行うことにより、通報の即応性を確保しつつ、携帯端末と車載器との通信頻度を抑制できる。なお、診断手段による診断を、衝撃判定手段による衝撃の判定よりも先に行ってもよい。
【0012】
また、診断手段は、所定の周期タイミングごとと、衝撃センサにて衝撃が検知されたと判定された場合との双方において診断を行ってもよい。予め所定の周期タイミングごとに車載器側通報機能の診断をしておけば、衝撃判定手段が衝撃を検知したと判定する前に車載器側通報機能が正常に実行されていないことを診断できる。衝撃判定手段が衝撃を検知したと判定する前に車載器側通報機能が正常に実行されていないと診断された場合、車載器側通報機能が衝撃以外の要因によって正常に実行されなくなったと判断できる。このような場合、衝撃判定手段が衝撃を検知したと判定するまでの間に車載器側通報機能が正常な状態へと回復しない限り、衝撃判定手段が衝撃を検知したと判定したことをもって通報手段による通報が行われることとなる。すなわち、携帯端末単独による衝撃の検知に応じて通報が行われ、車両が受けた衝撃とは無関係の衝撃に応じて通報がなされる可能性が高くなる。
【0013】
従って、予め車載器側通報機能が正常に実行されていないと診断された場合には、予め車載器側通報機能が正常に実行されていると診断された場合よりも、衝撃判定手段が衝撃を検知したと判定するための要件を厳しくするのが望ましい。例えば、最も現在に近い周期タイミングにて車載器側通報機能が正常に実行されていると診断された場合には衝撃センサが検知した衝撃強度が所定の第1閾値以上である場合に衝撃センサにて衝撃が検知されたと判定するとともに、最も現在に近い周期タイミングにて車載器側通報機能が正常に実行されていないと診断された場合には衝撃センサが検知した衝撃強度が第1閾値以上よりも強い第2閾値以上である場合に衝撃センサにて衝撃が検知されたと判定してもよい。周期タイミングとは、所定の時間が経過するごとの周期であってもよいし、所定の距離だけ携帯端末が移動するごとの周期であってもよい。
【0014】
なお、本発明のように、携帯端末が衝撃を検知しても、車載器の車載器側通報機能が正常であれば携帯端末が通報をしない手法は、この処理を行う方法やプログラムとしても適用可能である。また、本発明の手法を適用した衝撃通報装置、方法、プログラムは、単独の装置として実現される場合もあれば、複数の装置として実現される場合もある。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、衝撃通報装置を制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】衝撃通報システムを示すブロック図である。
【図2】(2A)は開始処理のフローチャート、(2B)は衝撃通報処理のフローチャートである。
【図3】閾値調整処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)衝撃通報システムの構成:
(2)衝撃通報処理:
(3)第2実施形態:
(4)他の実施形態:
【0017】
(1)衝撃通報システムの構成:
図1は、携帯端末10を含む衝撃通報システム1の構成を示すブロック図である。衝撃通報システム1は、携帯端末10の他に、車載器としてのナビゲーション装置20と、通報先装置30(サーバ30a,電話機30b)とを含む。携帯端末10とナビゲーション装置20とは、近距離通信媒体を介して相互に通信する。近距離通信媒体は、例えば有線通信媒体であってもよいし、電波や赤外線等の無線通信媒体であってもよい。本実施形態において携帯端末10とナビゲーション装置20とは、所定の通信規格に準じた無線電波通信により通信する。また、携帯端末10とナビゲーション装置20とはそれぞれ遠距離通信媒体を介して通報先装置30と通信する。遠距離通信媒体は、例えば携帯電話通信網とされる。
【0018】
本実施形態において携帯端末10は多機能携帯電話(スマートフォン)である。図1に示すように携帯端末10は、CPUとRAMとROM等を備える制御部11と記録媒体12と加速度センサ13とGPS受信部14と遠距離通信部15と近距離通信部16とを備える。制御部11は、記録媒体12やROMに記録されたプログラムを実行する。制御部11は、プログラムの一つとして衝撃通報プログラム110を実行する。記録媒体12は、通報先情報12aを記録する。通報先情報12aは、通報先装置30に対して通報を行うための通信アドレスを示すデータである。すなわち、サーバ30aについては当該サーバ30aに割り当てられたIPアドレス等が記録され、電話機30bについては電話番号が記録されている。
【0019】
加速度センサ13は、携帯端末10が受けた衝撃の衝撃強度としての加速度を検知するセンサであり、本実施形態では加速度に応じて変形する圧電素子に生じた電圧等に基づいて得られる。また、加速度センサ13は、3個の直交軸方向の加速度に応じた検知信号を生成する3次元加速度センサとされる。加速度センサ13は、検知信号を制御部11に出力する。
GPS受信部14は、GPS衛星からの電波を受信し、図示しないインタフェースを介して携帯端末10の位置を算出するための位置情報を制御部11に出力する。
遠距離通信部15は、通報先装置30と携帯電話通信網を介して通信するための回路によって構成される。
近距離通信部16は、ナビゲーション装置20と無線電波を介して通信するための回路によって構成される。
【0020】
衝撃通報プログラム110は、衝撃判定部110aと診断部110bと通報部110cとを含む。
衝撃判定部110aは、加速度センサ13が衝撃を検知したか否かを判定する機能を制御部11に実行させるモジュールである。すなわち、衝撃判定部110aの機能により制御部11は、加速度センサ13から出力された検知信号に基づいて加速度センサ13が検知した加速度を取得し、当該加速度が所定の閾値以上である場合に加速度センサ13にて衝撃が検知されたと判定する。この閾値は、例えば通常の携帯端末10の使用によって携帯端末10が受ける加速度よりも大きい値とされる。
【0021】
診断部110bは、車載器側通報部210bがナビゲーション装置20において正常に実行されているか否かを診断する機能を制御部11に実行させるモジュールである。車載器側通報部210bとは、ナビゲーション装置20が衝撃を検知した場合に通報先装置30に通報する機能をナビゲーション装置20に実行させるモジュールである。車載器側通報部210bの詳細については後述する。
【0022】
診断部110bの機能により制御部11は、衝撃判定部110aの機能により加速度センサ13にて衝撃が検知されたと判定された場合に、車載器側通報部210bが正常に実行されているか否かを判定する。診断部110bの機能により制御部11は、ナビゲーション装置20の制御部21と近距離通信部16により通信し、ナビゲーション装置20に対して車載器側通報部210bが正常に実行されているか否かを問い合わせる。診断部110bの機能により制御部11は、前記問い合わせに応じてナビゲーション装置20から実行確認データを受信した場合には、ナビゲーション装置20にて車載器側通報部210bが正常に実行されていると診断する。すなわち、診断部110bの機能により制御部11は、前記問い合わせに応じてナビゲーション装置20から実行確認データを受信されない場合には、ナビゲーション装置20にて車載器側通報部210bが正常に実行されていないと診断する。実行確認データは、車載器側通報部210bを正常に実行している場合にナビゲーション装置20が携帯端末10に送信するデータである。
【0023】
通報部110cは、車載器側通報部210bが正常に実行されていると診断された場合に、通報先装置30に通報せず、加速度センサ13にて衝撃が検知されたと判定され、かつ、車載器側通報部210bが正常に実行されていないと診断された場合に、通報先装置30に通報する機能を制御部11に実行させるモジュールである。すなわち、通報部110cの機能により制御部11は、ナビゲーション装置20にて車載器側通報部210bが正常に実行されている限りは、加速度センサ13が検知した加速度に拘わらず通報先装置30に通報しない。一方、通報部110cの機能により制御部11は、加速度センサ13にて衝撃が検知されたと判定され、さらに車載器側通報部210bが正常に実行されたと診断されなかった場合には、通報先装置30に通報する。本実施形態において通報部110cの機能により制御部11は、加速度センサ13が衝撃を検知したことを示す衝撃検知データを含む通報データを生成する。そして、通報部110cの機能により制御部11は、遠距離通信部15によって通報データを通報先情報12aが示すIPアドレスが割り当てられたサーバ30aに送信する。
【0024】
図1に示すようにナビゲーション装置20は、車両Cに搭載される。車両Cは、固定治具C1とエアバッグ制御部C2とGPS受信C3とを備える。固定治具C1は、ナビゲーション装置20を車両Cに固定する。エアバッグ制御部C2は、車両Cに備えられたエアバッグを制御するためのコンピュータであり、図示しない加速度センサが検知した加速度が所定値以上である場合に、衝撃を検知したとしてエアバッグを動作させる。この加速度センサは、例えば車両正面からの衝撃を検知するために車両Cのフロアトンネル部に備えられたり、車両側面からの衝撃を検知するために車両Cのクロスメンバ部に備えられたりする。このように、加速度センサを車両Cの高剛性部位に備えさせることにより、エアバッグ制御部C2は車両Cが衝撃を受けたことを高い確度で検知できる。エアバッグ制御部C2は、衝撃の検知に応じてエアバッグを動作させた場合に、制御部21にエアバッグ動作信号を出力する。GPS受信C3は、GPS衛星からの電波を受信し、図示しないインタフェースを介して車両Cの位置を算出するためのデータを制御部21に出力する。
【0025】
ナビゲーション装置20は、CPUとRAMとROM等を備える制御部21と記録媒体22と遠距離通信部25と近距離通信部26とを備える。制御部21は、記録媒体22やROMに記録されたナビゲーションプログラム210を実行する。記録媒体22は、通報先情報22aを記録する。通報先情報22aは、携帯端末10の記録媒体12に記録された通報先情報12aと同様に通報先装置30の通信アドレスを示すデータである。遠距離通信部25は、携帯端末10の遠距離通信部15と同様に通報先装置30と携帯電話通信網を介して通信するための回路によって構成される。近距離通信部26は、携帯端末10の近距離通信部16と無線電波を介して通信するための回路によって構成される。
【0026】
ナビゲーションプログラム210は、ナビゲーション部210aと車載器側通報部210bとを含む。
ナビゲーション部210aは、地図や車両Cの走行予定経路を運転者に案内させる機能を制御部21に実行させるモジュールである。また、ナビゲーション部210aの機能により制御部21は、携帯端末10からの問い合わせに応じて車載器側通報部210bが正常に実行されているか否かを判定し、車載器側通報部210bが正常に実行されている場合には実行確認データを携帯端末10へ返信する。例えば、車載器側通報部210bが正常に実行されている場合にRAM上にて常時書き換えられるパラメータを監視し、当該パラメータが変化している場合には、実行確認データを携帯端末10へ返信する。車載器側通報部210bが正常に実行されていない場合には、実行確認データは携帯端末10へと返信されない。また、車両Cの衝突によりナビゲーション装置20が破壊されナビゲーション部210aが実行されていない場合にも、実行確認データは携帯端末10へ返信されないこととなる。
【0027】
車載器側通報部210bは、ナビゲーション装置20が衝撃を検知した場合に通報先装置30に通報する機能を制御部21に実行させるモジュールである。ここで、ナビゲーション装置20が衝撃を検知した場合とは、エアバッグ制御部C2からエアバッグ動作信号が出力された場合を意味する。車載器側通報部210bの機能により制御部21は、エアバッグ動作信号が出力された場合に、通報先情報22aが示す通信アドレスが割り当てられた通報先装置30に対して遠距離通信部25を介して、ナビゲーション装置20(エアバッグ制御部C2)が衝撃を検知したことを示す通報データを送信する。
【0028】
以上説明したように、車両Cに備えられるナビゲーション装置20は、車両Cに組み込まれたエアバッグ制御部C2から衝撃を検知したことを示すエアバッグ動作信号を得ることができ、事故等により車両Cが衝撃を受けたことを高い確度で検知できる。これに対して、通常、携帯端末10は固定治具C1を用いて車両Cに固定されることなく車両C内に持ち込まれるため、携帯端末10の加速度センサ13は車両Cが受けた衝撃とは無関係の衝撃も検知し得る。ナビゲーション装置20にて車載器側通報部210bが正常に実行されていると診断された場合に、携帯端末10が通報先装置30に通報しないようにすることにより、車載器側通報部210bが正常である場合には車載器側通報部210bに通報を委ねることができる。従って、車載器側通報部210bが正常である場合には、車両Cが受けた衝撃とは無関係の衝撃に応じて携帯端末10により通報が行われることを防止できる。
【0029】
一方、通常、携帯端末10は車両Cに固定治具C1を用いて固定されていないため、事故等により車両Cが受けた衝撃によって携帯端末10が壊れる可能性はナビゲーション装置20よりも低い。従って、車載器側通報部210bが正常に実行されていないと診断され、かつ、加速度センサ13にて衝撃が検知されたと判定された場合に携帯端末10が通報先装置30に通報することにより、ナビゲーション装置20が壊れるような衝撃を車両Cが受けた場合でも、壊れる可能性の低い携帯端末10が通報先装置30に通報することができる。
【0030】
制御部11は加速度センサ13にて衝撃が検知されたと判定された場合に、車載器側通報部210bの診断を行うことにより、診断部110bの機能により定期的に車載器側通報部210bを診断しなくても、加速度センサ13が衝撃を検知したタイミングにおける車載器側通報部210bの状態を診断できる。すなわち、制御部11は、加速度センサ13にて衝撃が検知されたと判定された場合に、車載器側通報部210bの診断を行うことにより、通報の即応性を確保しつつ、携帯端末10とナビゲーション装置20との通信頻度を抑制できる。
【0031】
(2)衝撃通報処理:
図2Aは携帯端末10が実行する開始処理のフローチャートであり、図2Bは衝撃通報処理のフローチャートである。開始処理のステップS100において、携帯端末10の制御部11は診断部110bの機能により、近距離通信部16を介してナビゲーション装置20と通信を確立する。制御部11はナビゲーション装置20に対して周期的に通信を試みており、携帯端末10がナビゲーション装置20に対して通信可能距離以内に接近した場合に、携帯端末10とナビゲーション装置20との通信が確立される。携帯端末10が車両C内に持ち込まれた場合には、携帯端末10とナビゲーション装置20とは通信可能距離以内となる。
【0032】
続くステップS110において、診断部110bの機能により制御部11は、近距離通信部16を介してナビゲーション装置20の記録媒体22に記録された通報先情報22aと、記録媒体12に記録された通報先情報12aとを同期する。本実施形態において制御部11は、記録媒体12に記録された通報先情報12aを、ナビゲーション装置20の記録媒体22に記録された通報先情報22aで上書きする。例えば、通報先情報22aにはサーバ30aとして、交通情報を集中的に管理するサーバや、ナビゲーション装置20の使用者が登録したサーバが登録されている。また、通報先情報22aには電話機30bとして、緊急通報用電話番号や、ナビゲーション装置20の使用者が登録した電話機や携帯電話機の電話番号が登録されている。開始処理が終了すると、制御部11は図2Bに示す衝撃通報処理を実行する。
【0033】
衝撃通報処理のステップS115において、衝撃判定部110aの機能により制御部11は、加速度センサ13から出力された検知信号に基づいて加速度センサ13が衝撃を検知したか否かを判定する。すなわち、制御部11は、加速度センサ13が検知した加速度を取得し、当該加速度が所定の閾値以上である場合に加速度センサ13にて衝撃が検知されたと判定する。加速度センサ13にて衝撃が検知されたと判定しなかった場合、制御部11は所定期間待機した後に、再度、ステップS115を実行する。すなわち、ステップS115は、加速度センサ13にて衝撃が検知されたと判定されない限り所定周期で繰り返される。
【0034】
一方、ステップS115において加速度センサ13にて衝撃が検知されたと判定された場合、制御部11はステップS120を実行する。ステップS120において、診断部110bの機能により制御部11は、ナビゲーション装置20に対して車載器側通報部210bが正常に実行されているか否かを問い合わせる。そして、診断部110bの機能により制御部11は、ナビゲーション装置20から所定のタイムアウト期間以内に実行確認データを受信した場合には、ナビゲーション装置20にて車載器側通報部210bが正常に実行されていると診断する。
【0035】
ナビゲーション装置20にて車載器側通報部210bが正常に実行されていると診断された場合、通報部110cの機能により制御部11は、通報先装置30に通報を行うことなく、ステップS115に戻り、再度、衝撃を検知したか否かを判定する。この場合には、ナビゲーション装置20にて正常に実行されている車載器側通報部210bによって、車両Cが受けた衝撃に応じた通報を行うことができる。
【0036】
一方、ステップS120において車載器側通報部210bが正常に実行されていないと診断された場合、ステップS125において通報部110cの機能により制御部11は、記録媒体12から通報先情報12aを取得する。すなわち、ナビゲーション装置20から前記タイムアウト期間以内に実行確認データを受信しなかった場合、制御部11はナビゲーション装置20が通報すべきであった通報先装置30の通信アドレスを取得する。本実施形態において制御部11は、サーバ30aのIPアドレスと、電話機30bの電話番号とを取得する。
【0037】
続くステップS130において通報部110cの機能により制御部11は、GPS受信部14から出力された位置情報を取得する。ステップS135において通報部110cの機能により制御部11は、サーバ30aに対して通報データを送信する。すなわち、加速度センサ13が衝撃を検知したことを示す衝撃検知データと、GPS受信部14からの位置情報に基づく携帯端末10の位置を示す位置データと、携帯端末10を識別する識別データとを含む通報データを生成し、当該通報データをサーバ30aに送信する。これにより、サーバ30aは、携帯端末10と対応付けられた車両Cが衝突したこと、および、衝突した位置を特定することができる。複数のサーバ30aが通報先情報12aに登録されている場合には、複数のサーバ30aのそれぞれに対して通報データを送信してもよい。
【0038】
ステップS140において通報部110cの機能により制御部11は、通報先情報12aが示すサーバ30aに通報データが正常に送信できたか否かを判定する。そして、通報データが正常に送信できなかった場合には、通報部110cの機能により制御部11は、通報データの送信が成功するまで通報データの送信を繰り返して実行する。なお、本実施形態の携帯端末10はマルチタスクOS(不図示)を実行しており、ステップS135〜S140が繰り返されている期間においても携帯端末10の使用者の操作により、例えば緊急通報用電話番号に対して通話をすることができる。
【0039】
ステップS140において通報データが正常に送信できたと判定した場合、ステップS145において通報部110cの機能により制御部11は、通報先情報12aが示す電話番号の電話機30bを発呼(音声接続を試行)する。なお、ステップS135にて通報データが正常に送信できた場合に限らず、ステップS135〜S140を所定期間繰り返しても通報データが正常に送信できなかった場合にも、ステップS145を実行してもよい。ステップS150において通報部110cの機能により制御部11は、通報先情報12aが示す電話機30bと音声接続ができたか否かを判定する。そして、電話機30bとの音声接続ができなかった場合には、通報部110cの機能により制御部11は、電話機30bとの音声接続に成功するまで電話機30bの発呼を繰り返して実行する。なお、ステップS135〜S140にて通報データの送信を実行する間に、携帯端末10の使用者の操作により電話機30bとの通話が行われた場合に、ステップS145〜S150をスキップしてもよい。
【0040】
ステップS150において電話機30bとの音声接続ができた場合には、ステップS155において通報部110cの機能により制御部11は、電話機30bとの通話を実行させる。そして、ステップS160において電話機30bとの通話が終和すると、衝撃通報処理を終了させる。なお、複数の電話機30bが通報先情報12aに登録されている場合には、複数の電話機30bのそれぞれに対して順次通話を行うようにしてもよい。
【0041】
(3)第2実施形態:
図3は、他の実施形態において携帯端末10が実行する閾値調整処理のフローチャートである。ステップS200において、制御部11は、所定の周期タイミングが到来したか否かを判定する。この周期タイミングは、衝撃の検知の有無に拘わらず携帯端末10がナビゲーション装置20の車載器側通報部210bを定期的に診断するタイミングであり、例えば1分(図2Bの衝撃通報処理の実行周期よりも周期が長い)とされる。なお、閾値調整処理と並行して第1実施形態の衝撃通報処理(図2B)は実行されている。
【0042】
図3のステップS200において周期タイミングが到来したと判定された場合には、図2BのステップS120と同様に制御部11は車載器側通報部210bが正常に実行されているか否かを診断する(ステップS210)。そして、車載器側通報部210bが正常に実行されていると判定された場合には、ステップS220において制御部11は、図2BのステップS115にて衝撃を検知したか否かを判定するための閾値を第1閾値(第1実施形態と同じ値)とする。一方、車載器側通報部210bが正常に実行されていないと判定された場合には、ステップS230において制御部11は、図2BのステップS115にて衝撃を検知したか否かを判定するための閾値を第2閾値とする。ここで、第2閾値は第1閾値よりも大きくされる。以上のようにして、ステップS220またはステップS230において閾値を第1閾値または第2閾値に設定すると、制御部11はステップS200に戻り、再び周期タイミングの到来を待つ。
【0043】
以上説明した閾値調整処理おいて、制御部11は、周期タイミングごとに車載器側通報部210bが正常に実行されているか否かを診断する。そして、最も現在に近い周期タイミングにおいて車載器側通報部210bが正常に実行されていると診断された場合には、図2BのステップS115にて衝撃を検知したか否かを判定するための閾値を第2閾値よりも小さい第1閾値とする。一方、最も現在に近い周期タイミングにおいて車載器側通報部210bが正常に実行されていないと診断された場合には、図2BのステップS115にて衝撃を検知したか否かを判定するための閾値を第1閾値よりも大きい第2閾値とする。
【0044】
本実施形態のように予め所定の周期タイミングごとに車載器側通報部210bを診断しておけば、図2BのステップS115にて衝撃を検知したと判定する前に車載器側通報部210bが正常に実行されているか否かを診断できる。図2BのステップS115にて衝撃を検知したと判定する前に車載器側通報部210bが正常に実行されていないと診断された場合、車載器側通報部210bが衝撃以外の要因によって正常に実行されなくなったと判断できる。このような場合、図2BのステップS115にて衝撃を検知したと判定するまでの間に車載器側通報部210bが正常な状態へと回復しない限り、通報部110cの機能により通報が行われることとなる。すなわち、携帯端末10による衝撃の検知に応じて通報が行われ、車両Cが受けた衝撃とは無関係の衝撃に応じて通報がなされる可能性が高くなる。本実施形態では、予め車載器側通報部210bが正常に実行されていないと診断された場合には、図2BのステップS115にて衝撃を検知するための閾値を第1閾値よりも大きい第2閾値とする。これにより、車載器側通報部210bが衝撃以外の要因によって正常に実行されなくなった場合に、車両Cが受けた衝撃とは無関係の衝撃の検知が通報に直結することを防止できる。
【0045】
(4)他の実施形態:
なお、本発明の実施形態は上述の実施形態に限られない。例えば、携帯端末10が備える加速度センサ13は、角加速度センサであってもよい。また、加速度センサ13は、衝撃(所定よりも大きい加速度や角加速度)を検知した場合に限り検知信号を制御部11に出力し、制御部11は検知信号の出力を受けた場合に加速度センサ13にて衝撃が検知されたと判定してもよい。さらに、加速度センサ13が加速度や角加速度を検知する具体的手法は特に限定されない。例えば加速度や角加速度を受けることに起因する物体の運動や変質を電磁的手法や光学的手法によって検知することにより加速度センサ13が加速度や角加速度を検知してもよい。また、衝突により車両Cが受けやすい水平方向の衝撃のみを検知してもよい。これにより、車両C内における携帯端末10の鉛直方向の落下に応じて通報がされることが防止できる。
【0046】
通報データは、衝撃の程度や衝撃検知時刻を示す衝撃データ等を含んでもよい。さらに、ナビゲーション装置20が携帯端末10よりも正確な位置を特定する手段(車速センサ,ジャイロセンサ,地図情報を用いたマップマッチング手段)等を備える場合には、通報データに含める位置データを衝撃検知の直前においてナビゲーション装置20が特定していた位置に基づいて生成してもよい。また、通報部110cの機能により携帯端末10が通報する通報先装置30と、車載器側通報部210bの機能によりナビゲーション装置20が通報する通報先装置30とは、互いに異なってもよい。すなわち、携帯端末10の通報先情報12aと、ナビゲーション装置20の通報先情報22aとは同期していなくてもよい。
【0047】
また、診断を行う際に制御部11は、必ずしもナビゲーション装置20に問い合わせる必要はなく、ナビゲーション装置20が自発的に送信した実行確認データを受信したことをもって車載器側通報部210bが正常に実行されていると診断してもよい。なお、実行確認データは、車載器側通報部210bが正常に実行されていることを肯定するデータに限らず、車載器側通報部210bが正常に実行されていることを否定するデータであってもよい。すなわち、制御部11は、車載器側通報部210b正常に実行されていないことを示す実行確認データが受信されたことをもって車載器側通報部210bが正常に実行されていないと診断してもよい。
【符号の説明】
【0048】
1…衝撃通報システム、10…携帯端末、11…制御部、12…記録媒体、12a…通報先情報、13…加速度センサ、14…GPS受信部、15…遠距離通信部、16…近距離通信部、20…ナビゲーション装置、21…制御部、22…記録媒体、22a…通報先情報、25…遠距離通信部、26…近距離通信部、30…通報先装置、30a…サーバ、30b…電話機、110…衝撃通報プログラム、110a…衝撃判定部、110b…診断部、110c…通報部、210…ナビゲーションプログラム、210a…ナビゲーション部、210b…車載器側通報部、C…車両、C1…固定治具、C2…エアバッグ制御部、C3…GPS受信。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
衝撃センサと、
前記衝撃センサが衝撃を検知したか否かを判定する衝撃判定手段と、
車載器が衝撃を検知した場合に通報先装置に通報する車載器側通報機能が、当該車載器において正常に実行されているか否かを診断する診断手段と、
前記車載器側通報機能が正常に実行されていると診断された場合に、前記通報先装置に通報せず、
前記衝撃センサにて衝撃が検知されたと判定され、かつ、前記車載器側通報機能が正常に実行されていないと診断された場合に、前記通報先装置に通報する通報手段と、
を備える携帯端末。
【請求項2】
前記診断手段は、前記衝撃センサにて衝撃が検知されたと判定された場合において、前記車載器側通報機能が正常に実行されているか否かを診断する、
請求項1に記載の携帯端末。
【請求項3】
携帯端末が行う衝撃通報方法であって、
前記携帯端末が備える衝撃センサが衝撃を検知したか否かを判定する衝撃判定工程と、
車載器が衝撃を検知した場合に通報先装置に通報する車載器側通報機能が、当該車載器において正常に実行されているか否かを診断する診断工程と、
前記車載器側通報機能が正常に実行されていると診断された場合に、前記通報先装置に通報せず、
前記車載器側通報機能が正常に実行されていないと診断され、かつ、前記衝撃センサにて衝撃が検知されたと判定された場合に、前記通報先装置に通報する通報工程と、
を含む衝撃通報方法。
【請求項4】
携帯端末が備える衝撃センサが衝撃を検知したか否かを判定する衝撃判定機能と、
車載器が衝撃を検知した場合に通報先装置に通報する車載器側通報機能が、当該車載器において正常に実行されているか否かを診断する診断機能と、
前記車載器側通報機能が正常に実行されていると診断された場合に、前記通報先装置に通報せず、
前記車載器側通報機能が正常に実行されていないと診断され、かつ、前記衝撃センサにて衝撃が検知されたと判定された場合に、前記通報先装置に通報する通報機能と、
を前記携帯端末に実行させる衝撃通報プログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−208544(P2012−208544A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71424(P2011−71424)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】