説明

携帯端末及び位置及び方位推定プログラム

【課題】携帯端末及び位置及び方位推定プログラムにおいて、携帯端末に搭載されている比較的安価なセンサを利用して、携帯端末の位置及び方位を高精度に検知することを目的とする。
【解決手段】自己位置情報を格納した外部デバイスと短距離無線通信を行う慣性航法を用いる携帯端末において、携帯端末の加速度を検知して加速度情報を出力する検知部と、画像を撮影する撮影部と、外部デバイスと通信する通信部と、通信部が外部デバイスと通信可能になると、外部デバイスから受信した位置情報を携帯端末の初期位置に設定すると共に、加速度情報のAC成分に基づいて撮影タイミングを予測し、外部デバイスの画像を撮影タイミングで撮影するよう撮影部を制御し、外部デバイスの撮影画像から推定したヨー角を携帯端末の初期方位に設定する制御部を備えるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末及び位置及び方位推定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
スマートホン(Smartphone)等の携帯端末には、携帯端末の位置及び方位(或いは、姿勢)を推定する機能を備えたものもある。携帯端末の位置及び方位を推定する方法としては、様々な方法が提案されている。携帯端末が推定した自己位置及び方位は、ナビゲーションに代表される種々のサービスを携帯端末のユーザに提供するのに使用される。
【0003】
サービスの一例として、携帯端末の位置及び方位を推定することで、携帯端末と同じ空間中に配置されたデバイスに対する直感的なインタフェースを提供するサービスが挙げられる。例えば家庭での応用例では、携帯端末がテレビの近傍に位置しておりテレビを向いた方位を有すると、携帯端末にテレビの番組表を表示することでテレビの簡単、且つ、直感的な操作が可能なインタフェースを提供できる。又、オフィスでの応用例では、携帯端末がプリンタの近傍に位置しておりプリンタを向いた方位で一定時間静止すると、携帯端末が表示している内容をプリンタで印刷する等のプリンタの簡単、且つ、直感的な操作が可能なインタフェースを提供できる。
【0004】
加速度センサ、ジャイロセンサ、地磁気センサ等が搭載された携帯端末では、慣性航法を利用して一定時間内で携帯端末の位置及び方位を推定することができる。しかし、慣性航法を利用する際には、携帯端末の初期位置及び初期方位(又は、初期姿勢)を予め決めておく必要である。従来、飛行機や船舶用の慣性航法装置では、イニシャルアライメント(Initial Alignment)と呼ばれる初期設定により、比較的高性能の慣性センサを利用して慣性航法装置の静止状態で姿勢等の状態量の初期値を決定する。しかし、このような初期設定には、比較的高性能の慣性センサを利用しなければならないので、一般的な携帯端末に搭載されているMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)センサの性能では、このような初期設定に対応することができない。
【0005】
一方、室外で地磁気センサ、GPS(Global Positioning System)センサ等で検知された情報を利用して携帯端末の位置及び方位を推定する方法もある。しかし、工場、オフィス等の室内では、地磁気が乱れて磁気センサで検知された情報の精度が低下し、GPSセンサによる検知を行えない場合もあるため、この方法を室内における携帯端末の位置及び方位の推定に適用することは難しい。
【0006】
尚、例えば特許文献1のように、光学的に読み取られる専用タグを利用することにより携帯端末の姿勢を検知する方法も提案されている。しかし、携帯端末を専用タグを光学的に読み取れる位置まで移動させて読み取りが完了するまで携帯端末を静止状態に保つ必要があり、室内に専用タグを多数設けるには設置コストがかかるので、家庭やオフィスでの応用例には適さない。
【0007】
このように、従来技術では、携帯端末に搭載されている比較的安価なセンサを利用して、位置及び方位の検知精度が携帯端末の運動状態に大きく影響されないように初期位置及び初期方位(又は、初期姿勢)を決定することは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第7287706号公報
【特許文献2】特表2010−520688号公報
【特許文献3】特開2006−194725号公報
【特許文献4】特開2007−18451号公報
【特許文献5】特開2008−33526号公報
【特許文献6】特開2009−287940号公報
【特許文献7】特開2010−271167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来技術では、携帯端末に搭載されている比較的安価なセンサを利用して、携帯端末の位置及び方位を高精度に検知することは難しいという問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、携帯端末に搭載されている比較的安価なセンサを利用して、携帯端末の位置及び方位を高精度に検知することが可能な携帯端末及び位置及び方位推定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一観点によれば、自己位置情報を格納した外部デバイスと短距離無線通信を行う慣性航法を用いる携帯端末であって、前記携帯端末の加速度を検知して加速度情報を出力する第1の検知部と、画像を撮影する撮影部と、前記外部デバイスと通信する通信部と、前記通信部が前記外部デバイスと通信可能になると、前記外部デバイスから受信した位置情報を前記携帯端末の初期位置に設定すると共に、前記加速度情報のAC成分に基づいて撮影タイミングを予測し、前記外部デバイスの画像を前記撮影タイミングで撮影するよう前記撮影部を制御し、前記外部デバイスの撮影画像から推定したヨー角を前記携帯端末の初期方位に設定する制御部を備えたことを特徴とする携帯端末が提供される。
【0012】
本発明の一観点によれば、自己位置情報を格納した外部デバイスと短距離無線通信を行う慣性航法を用いる携帯端末のコンピュータに、位置及び方位推定処理を行わせるプログラムであって、前記携帯端末の通信部が前記外部デバイスと通信可能であるか否を判定する手順と、前記通信部が前記外部デバイスと通信可能であると判定されると、前記外部デバイスから受信した位置情報を前記携帯端末の初期位置に設定する手順と、前記携帯端末の加速度センサが出力する加速度情報のAC成分に基づいて撮影タイミングを予測する手順と、前記外部デバイスの画像を前記撮影タイミングで撮影するよう前記携帯端末の撮影部を制御する手順と、前記外部デバイスの撮影画像から推定したヨー角を前記携帯端末の初期方位に設定する手順を前記コンピュータに実行させることを特徴とするプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0013】
開示の携帯端末及び位置及び方位推定プログラムによれば、携帯端末に搭載されている比較的安価なセンサを利用して、携帯端末の位置及び方位を高精度に検知することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施例における携帯端末のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【図2】携帯端末の位置と方位の自由度を説明する図である。
【図3】NFCタグの位置取得処理を説明する斜視図である。
【図4】携帯端末の推定位置を表す座標系の一例を示す図である。
【図5】携帯端末の初期方位の推定処理を説明する図である。
【図6】携帯端末の初期方位の推定処理を説明するフローチャートである。
【図7】NFCタグと連動した携帯端末の運動状態の推定を説明するフローチャートである。
【図8】携帯端末の状態推定処理を説明するフローチャートである。
【図9】3軸線加速度とN=1の場合のSMAを示す図である。
【図10】撮影タイミング決定処理を説明する図である。
【図11】撮影タイミング決定処理を説明するフローチャートである。
【図12】静止区間の決定処理を説明するフローチャートである。
【図13】Roll角及びPitch角を推定処理を説明する図である。
【図14】タグ画像の特徴抽出及び携帯端末の方位計算を説明する図である。
【図15】携帯端末の方位計算の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
開示の携帯端末及び位置及び方位推定プログラムでは、自己位置情報を格納した外部デバイスと短距離無線通信を行う携帯端末の加速度情報を第1の検知部で検知し、携帯端末の方位情報を第2の検知部で検知する。携帯端末の制御部は、携帯端末が外部デバイスと短距離無線通信が可能な位置まで移動すると、外部デバイスから受信した位置情報を携帯端末の初期位置に設定すると共に、加速度情報のAC成分に基づいて撮影部による外部デバイスの撮影タイミングを予測する。制御部は、外部デバイスの画像を予測した撮影タイミングで撮影するよう撮影部を制御し、外部デバイスの撮影画像から推定したヨー角を携帯端末の初期方位に設定する。
【0016】
制御部は、外部デバイスの撮影画像から推定したヨー角と、加速度情報のDC成分及び方位情報から推定したロール角及びピッチ角を携帯端末の初期方位に設定しても良い。
【0017】
以下に、開示の携帯端末及び位置及び方位推定プログラムの各実施例を図面と共に説明する。
【実施例】
【0018】
図1は、本発明の一実施例における携帯端末のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。図1において、携帯端末500は、CPU501、記憶部502、テンキー等を含む入力部503、表示部504、通信部505、及びセンサ部506を有する。この例では、記憶部502、入力部503、表示部504、通信部505、及びセンサ部506がバス507を介してCPU501に接続されているが、バス507を用いることなく記憶部502、入力部503、表示部504、通信部505、及びセンサ部506を夫々直接CPU501に接続した構成であっても良い。バス507を介さずに直接CPU501と信号の送受信を行う場合、バス507上のトラフィックの問題が軽減できる。図1に示す如きハードウェア構成を有するスマートホンは周知である。
【0019】
入力部503の少なくとも一部及び表示部504は、タッチパネル等により一体的に設けられていても良い。センサ部506は、例えば加速度センサ506a、ジャイロセンサ(又は、ジャイロスコープ)506b、及びカメラ506cを有する。センサ部506は、例えば地磁気センサ、GPSセンサ等を更に有しても良い。
【0020】
CPU501は、携帯端末500全体の制御を司り、位置及び方位推定プログラムを含む各種プログラムを実行することで携帯端末500の各機能を実現できる。記憶部502は、CPU501が実行するプログラム、及びCPU501が実行する算出処理等の中間データ、例えば地図データ等を含む各種データを格納する。記憶部502は、例えばRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)等で形成可能である。入力部502は、携帯端末500にコマンドやデータを入力する際にユーザにより操作される。表示部503は、入力部502からの入力情報、ユーザへのメッセージ、各種操作メニュー、地図等を表示する。通信部505は、他の装置(図示せず)と無線通信を行う。
【0021】
携帯端末500に少なくとも位置及び方位推定機能を持たせるプログラム(位置及び方位推定プログラム)は、CPU501を慣性航法を用いた位置及び方位推定機能を有する携帯端末500として動作させる。プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に格納されていても良い。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、例えばIC(Integrated Circuit)カードメモリ等の半導体記憶装置、フロッピー(登録商標)ディスク等の磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM等の可搬型記録媒体に限定されるものではなく、CPU500でアクセス可能な各種記録媒体を含む。又、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、例えば記憶部502で形成されても良い。
【0022】
言うまでもなく、CPU501は、位置及び方位推定機能に加え、各種プログラムを実行することで携帯端末500の通話機能、撮影機能等の各種機能の少なくとも一部を更に実現しても良い。
【0023】
スマートホンは携帯端末500の一例である。携帯端末500は、無線通信機能、加速度検知機能、方位(又は、姿勢)検知機能及び撮影機能を備えた電子装置であれば特に限定されない。無線通信機能は、例えば無線発信機及び無線受信機を含む通信部505で実現可能であり、少なくとも後述する短距離無線通信(NFC:Near Field Communication)で周知のNFCタグ10と双方向無線通信を行う機能を含む。NFCタグ10に情報を書き込む必要がない場合には、無線通信機能は、少なくともNFCタグ10に格納された情報を読み取るタグリーダ505−1を含む通信部505で実現可能である。
【0024】
加速度検知機能は、例えばセンサ部506の加速度センサ(又は、加速度検知部)506aで実現可能である。方位検知機能は、例えばセンサ部506のジャイロセンサ(又は、姿勢検知部)506bで実現可能である。撮影機能は、例えばセンサ部506のデジタルカメラ、デジタルビデオカメラ等のカメラ(撮影部又は撮像部)506cで実現可能である。
【0025】
図2は、携帯端末の位置と方位の自由度を説明する図である。図2は、空間中の6自由度(位置について3自由度、方位(又は、姿勢)について3自由度)を検知する場合を示す。図2において、X, Y, Zは携帯端末500の位置が表されるXYZ座標系の3軸を示し、携帯端末500の方位はX, Y, Z軸を中心とした矢印の如き回転角度Roll, Pitch, Yawで表される。
【0026】
次に、携帯端末500の動作を図3以降と共に説明する。図3は、NFCタグの位置取得処理を説明する斜視図である。
【0027】
先ず、携帯端末500を使用する環境、例えば家庭或いはオフィスにおける室内の任意の位置にNFCタグ10を設置する。NFCタグ10は、携帯端末500と短距離無線通信(NFC:Near Field Communication)を行う機能を有する外部デバイスの一例である。NFCタグ10は、例えば携帯端末500を保持するユーザが携帯端末500をNFCタグ10に対して翳しやすい高さ位置の基準面11に配置されている。基準面11は、携帯端末500の外部に設けられた重力方向と略垂直な水平面であり、この例ではテーブル等の上面である。
【0028】
NFCは無線通信の国際規格である。携帯端末500とNFCタグ10との間の通信には例えば13.56MHzの電波を使い、例えば10cm程度の近距離で例えば100kbps〜400kbpsの双方向通信が可能である。図3のように携帯端末500がNFCタグ100と通信可能な近距離にあれば、通信部505によりNFCタグ10への情報の書き込み又はNFCタグ10から情報読み出しを行うことができる。
【0029】
携帯端末500の通信部505(例えば、タグリーダ505−1)は、携帯端末500がNFCタグ10に近接するとNFCタグ10に格納されているタグ位置の情報を読み取る。携帯端末500の通信部505がNFCタグ10のタグ位置の情報をNFCで読み取れるということは、携帯端末500はNFCタグ10に近接しているので、読み取ったタグ位置は携帯端末500の推定位置とする。図4は、携帯端末の推定位置を表す座標系の一例を示す図である。図4は、携帯端末500の推定位置を表すXYZ座標系を示す。
【0030】
ロール(Roll)角、ピッチ(Pitch)角及びヨー(Yaw)角で表される携帯端末500の方位(又は、姿勢)は、以下の処理を実行することで推定する。
【0031】
通信部505がNFCタグ10と通信可能となることでNFCタグ10を検知すると、加速度センサ506aが検知した加速度及びジャイロセンサ506bが検知した方位のバッファリング処理を起動すると共に、検知された加速度に基づきリアルタイムで携帯端末500の運動区間の判別処理を起動する。又、携帯端末500の静止状態からの離脱(又は、運動状態への遷移)を後述する方法で検知すると、初期速度及び初期方位での予測に基づきNFCタグ10の撮影時刻(又は、撮影タイミング)を計算する。携帯端末500でNFCタグ10を触れることで携帯端末500の初期位置及び初期方位を設定することが前提となっている。このため、通信部505がNFCタグ10を検知し、加速度センサ506aが検知した加速度の線加速度成分の積分値(即ち、速度)がゼロ(0)であると共にジャイロセンサ506bが検知した角速度がゼロ(0)であれば、携帯端末500はNFCタグ10と近接した位置で静止していることがわかるので、携帯端末500とNFCタグ10の接触状態を推定することができる。又、通信部505がNFCタグ10を検知できなくなると、即ち、NFCタグ10と通信できなくなると、携帯端末500とNFCタグ10とNFCタグ10の非接触状態を推定することができる。カメラ506cは、計算された撮影時刻にNFCタグ10の画像を撮影する。カメラ506cによるNFCタグ10の撮影が完了した時点で、携帯端末500とNFCタグ10の接触状態、或いは、非接触状態を推定し、再度Roll角及びPitch角を推定するための静止区間を求める。求めた静止区間での重力ベクトルを計算することで、Roll角及びPitch角を推定する。又、撮影されたNFCタグ10の画像の特徴を抽出することで、携帯端末500のYaw角を求める。静止区間で推定した携帯端末500の位置及び方位で現在時刻まで位置及び方位を再度更新し、連続して位置及び方位を推定する。
【0032】
これにより、携帯端末500で水平面に配置したNFCタグ10を触れる(以下、タッチと言う)だけで、携帯端末500の位置及び方位を推定できる。携帯端末500でNFCタグ10をタッチする時には、携帯端末500の1つの面(例えば、底面)をNFCタグ10の表面と接触させる。この際、タッチの衝撃の有無に影響されることなく、携帯端末500の位置及び方位を精度良く推定できる。携帯端末500の位置及び方位を推定するために、携帯端末500を比較的長時間静止状態に保つといったユーザへ負担となる操作は不要である。複数のNFCタグ10へのタッチにより、例えば複数の推定位置の平均及び複数の推定方位の平均を求めることで、安価な慣性センサ(加速度センサ506a、ジャイロセンサ506b)を利用した慣性航法で発生した推定誤差を減少させるようにしても良い。携帯端末500の位置及び方位の推定には、携帯端末500に搭載されている既存のセンサ506a,506b,506cを利用すれば、携帯端末500のハードウェア構成を変更したり、携帯端末500を使用する環境に専用のデバイス等を多数設置したりする必要はない。
【0033】
上記の如く、携帯端末500に搭載されている加速度センサ506a、ジャイロセンサ506b及びカメラ506cを連携させることにより、携帯端末500の位置及び方位を推定する。携帯端末500の位置を推定する際、携帯端末500がNFCタグ10と通信可能な距離は例えば1cm〜10cmと短いことから、NFCタグ10の位置(X, Y ,Z)を携帯端末500の位置として推定する。又、携帯端末500の方位(又は、姿勢)を推定する際、携帯端末500がNFCタグ10と短距離無線通信が可能な位置まで移動したこと、即ち、携帯端末500とNFCタグ10との間の短距離無線通信の開始をトリガとして利用し、加速度センサ506aが検知した加速度及びジャイロセンサ506bが検知した角速度に基づいて携帯端末500でNFCタグ10をタッチする静止区間を求めることで、携帯端末500のRoll角とPitch角を特定する。更に、携帯端末500の運動を予測し、NFCタグ10の画像をカメラ506cで撮影して解析することで、携帯端末500のYaw角を推定する。
【0034】
次に、携帯端末500の初期位置及び初期方位(又は、初期姿勢)の推定について、より詳細に説明する。
【0035】
携帯端末500の初期位置は、以下の手順ST1〜ST4で推定(又は、設定)することができる。先ず、手順ST1では、事前に絶対座標系で観測したNFCタグ10の位置(x,y,z)を計測する。手順ST2では、計測したNFCタグ10の位置をNFCタグ10の固有情報(即ち、位置情報)として周知の方法でNFCタグ10へ書き込む。例えば、通信部505のタグライタ505−2、或いは、初期設定用の専用装置のタグライタを用いてNFCタグ10の位置情報をNFCタグ10へ書き込む。手順ST3では、携帯端末500でNFCタグ10をタッチする際、通信部505のタグリーダ505−1を用いて周知の方法でNFCタグ10の位置情報を読み出す。手順ST4では、タグリーダ505−1がNFCタグ10の位置情報を短距離無線通信で読み出すことから、読み出した位置情報が示すNFCタグ10の位置を絶対座標系の携帯端末500の推定位置に設定する。
【0036】
一方、携帯端末500の初期方位(又は、初期姿勢)は、3軸直交加速度データで推定できるRoll角及びPitch角と、3軸直交加速度データで推定できないYaw角とをグループ分けして、グループ毎に別々の方法で推定する。図5は携帯端末の初期方位の推定処理を説明する図であり、図6は携帯端末の初期方位の推定処理を説明するフローチャートである。
【0037】
図5は、加速度センサ506a及びジャイロセンサ506bの検知データをバッファリングするデータバッファリング期間、携帯端末500の運動を予測してNFCタグ10の画像を撮影する画像撮影期間、センサ区間(又は、撮影タイミング)の特定及び撮影画像による方位推定期間、及び推定した方位での現在位置更新期間を夫々白抜きの矢印で示す。接近区間は携帯端末500がNFCタグ10に接近する区間、静止区間は携帯端末500がNFCタグ10をタッチして静止状態にある区間、離脱区間は携帯端末500が静止状態から離脱して(即ち、移動して)運動状態に遷移する区間である。携帯端末500は、時刻t1からNFCタグ10と通信可能(即ち、NFCタグ10を検知可能)となり、NFCタグ10をタッチして時刻t2に静止状態となり、時刻t3からNFCタグ10と通信可能な状態から離脱する(即ち、NFCタグ10を検知不能となる)。
【0038】
図6において、ステップS1は、携帯端末500がNFCタグ10と通信可能となることでNFCタグ10を検知すると加速度センサ506a及びジャイロセンサ506bの検知データ502A,502Bの記憶部502へのバッファリングを起動し、加速度に基づきリアルタイムで運動区間の判別を開始する。例えば、携帯端末500の通信部505がNFCタグ10との通信を開始すると、携帯端末500がNFCタグ10と通信可能になったことを検知することができる。ステップS2は、携帯端末500の静止状態からの離脱を検知する際、初期加度及び初期方位での予測に基づきカメラ506cによるNFCタグ10の撮影時刻を計算して記憶部502に格納する。ステップS3は、計算された撮影時刻にカメラ506cでNFCタグ10を撮影し、撮影画像のデータ502Cを記憶部502に格納する。
【0039】
ステップS4は、撮影が完了した時点で、携帯端末500とNFCタグ10との接触状態又は非接触状態を検知データ502A,502Bに基づいて確認した上で、静止区間を特定して記憶部502に格納する。ステップS4と並行して、ステップS5は、撮影画像のデータ502Cから撮影画像の特徴を抽出し、抽出された特徴から携帯端末500のYaw角を特定して記憶部502に格納する。ステップS4の後、ステップS6は、静止区間での加速度の検知データ502Aに基づいて、携帯端末500のRoll角及びPitch角を特定して記憶部502に格納する。ステップS5又はS6の後、ステップS7は、静止区間で推定した位置及び方位で現在時刻までの位置及び方位を再度更新して記憶部502に格納する。
【0040】
3軸直交加速度データでRoll角及びPitch角を精度良く推定するために、後述する理由で、図6の処理を行うために、携帯端末500がNFCタグ10へのタッチ操作中の、静止や離脱等の運動状態を先に推定して静止区間を特定する。又、Yaw角を特定するためにNFCタグ10の画像を撮影するタイミングを決定するため、携帯端末500の運動状態に基づいた撮影タイミングを予測する。この結果、加速度による携帯端末500のRoll角及びPitch角の特定、及び画像撮影による携帯端末500のYaw角の特定が可能となる。
【0041】
次に、NFCタグ10と連動した携帯端末500の運動状態の推定について説明する。携帯端末500の運動状態の推定は、NFCタグ10を検知してから、NFCタグ10の画像の撮影が完了まで行う。図7は、NFCタグと連動した携帯端末の運動状態の推定を説明するフローチャートである。
【0042】
図7において、携帯端末500の状態推定のタイミングは以下のように決定することができる。携帯端末500がNFCタグ10から一定距離(例えば、1cm〜10cm)まで近づくと、通信部505がNFCタグ10と通信可能になるため、ステップS11はNFCタグ検知イベントが発生する。このNFCタグ検知イベントが発生した時点で、携帯端末500の状態推定処理を起動する。このように、状態推定処理は、NFCタグ検知イベントが発生したときだけ起動されるため、携帯端末500の消費電力を抑えることができる。
【0043】
状態推定処理のためのフィルタリング処理は、以下のように行える。携帯端末500の状態を推定するために、ステップS12は加速度センサ506aが検知した加速度データから重力ベクトルによる重力データ(成分)と携帯端末500の運動による3軸線加速度(Linear Acceleration)データ(成分)とを分離する。重力データは、加速度データをローパスフィルタ(LPF:Low-Pass Filter)を通すことで、加速度データのDC成分502A−2として求められる。一方、3軸線加速度データは、加速度データをハイパスフィルタ(HPF:High-Pass Filter)を通すことで加速度データのAC成分502A−1として求められる。LPF及びHPF自体は周知であるため、その説明は省略する。分離した3軸線加速度データを利用することで、携帯端末500の運動状態又は静止状態を推定することができる。
【0044】
バッファリング処理は、以下のように行える。携帯端末500の状態を推定するために、ステップS12はフィルタリングされた加速度のAC成分502A1−1と加速度のDC成分502A−2を記憶部502にバッファリングすると共に、ジャイロセンサ506bが検知したジャイロデータ502Bを記憶部502にバッファリングする。又、ステップS12は、ステップS11で検知されたNFCタグ10から受信したタグ位置の情報を携帯端末500の初期位置の情報として記憶部502にバッファリングする。
【0045】
携帯端末500の静止状態及び運動状態(又は、静止状態からの離脱)は、以下のように推定することができる。重力データを除いた線加速度データは、携帯端末500の運動状態を示すため、リアルタイムで携帯端末500の運動状態を判別することが可能である。そこで、ステップS13は、AC成分502A−1から携帯端末500の静止状態及び運動状態を推定する。
【0046】
図8は、携帯端末の状態推定処理を説明するフローチャートである。図8の状態推定処理は、上記ステップS12,S13の処理に相当する。図8において、ステップS21は、加速度センサ506aが検知した加速度データを取得する。ステップS22は、取得した加速度データを、重力データである加速度のDC成分502A−2と、3軸線加速度データである加速度のAC成分502A−1とに分離する。ステップS23は、加速度のAC成分502A−1のSMA(Signal Magnitude Area)を計算する。SMAは、一定時間T内の運動量の大きさ(エネルギー)を示す特徴量であり、以下の式から計算できる。
【0047】
【数1】

【数2】

【0048】
一定時間TM以上、SMAのレベルが図9に太い破線で示す運動及び静止閾値以下であれば、携帯端末500が静止状態にあると判定できる。一方、SMAのレベルが運動及び静止閾値を超えると、携帯端末500の静止状態から運動状態への遷移を検知でき、携帯端末500が運動状態にあると判定できる。ステップS24は、SMAのレベルに基づいて携帯端末500が静止状態にあるか、或いは、運動状態にあるかを分類する。
【0049】
図7の説明に戻るに、携帯端末500の運動状態の推定に基づく撮影タイミングは、以下のように決定することができる。後述する画像処理に基づき携帯端末500のYaw角を推定するため、携帯端末500がNFCタグ10をタッチした後にNFCタグ10から離れたときに、携帯端末500がNFCタグ10から適切な高さ位置(又は、距離)にある状態でNFCタグ10を撮影できるように、ステップS14は適切な撮影タイミングを予測(即ち、計算)に基づいて決定する。撮影タイミングが早すぎたり遅すぎたりした場合、撮影されたNFCタグ10の画像データから画像処理に必要なNFCタグ10の特徴を抽出(又は、キャプチャ)できない可能性がある。そこで、携帯端末500が適切な高さ位置(NFCタグ10からの距離)でNFCタグ10を撮影できるように、ステップS12でバッファリングした加速度のAC成分502A−1と、ステップS13で検知された静止状態からの運動状態への遷移(又は、静止状態からの離脱)を利用して撮影タイミング決定処理を行う。
【0050】
図10は、撮影タイミング決定処理を説明する図である。図10において、Sはカメラ506cによるNFCタグ10の撮影に必要な最小撮影距離を示し、例えば予め指定されているものとする。図10に示すように、ステップS13で携帯端末500の静止状態及び静止状態からの離脱が検知されると、ステップS14で撮影タイミングを決定し、その後にステップS15でカメラ506cによるNFCタグ10の撮影が行われる。ステップS15の詳細については後述する。
【0051】
【数3】

【0052】
【数4】

【0053】
次に、携帯端末500の静止区間の決定について説明する。図7において、ステップS16は、後述するように加速度のDC成分502A−2に基づいて携帯端末500のRoll角及びPitch角を推定するための携帯端末500の静止区間を決定する。加速度のAC成分502A−1のSMAに基づき携帯端末500の静止状態を検出することは可能であるが、加速度のAC成分502A−1のみでは検知できない携帯端末500の回転をも考慮するようにしても良い。そこで、この例では、ジャイロセンサ506bが検知したジャイロデータ502−BのSMAも加速度のAC成分502A−1のSMAと同時に評価し、夫々のSMAから求めた静止区間の時間軸上での共通区間(即ち、積集合)を推定用の静止区間に決定する。
【0054】
図12は、静止区間の決定処理を説明するフローチャートである。図12において、ステップS41は、バッファリングされたジャイロデータ502−Bと加速度のAC成分502A−1を記憶部502から取得する。ステップS42は、取得したジャイロデータ502−Bのと取得した加速度のAC成分502A−1のSMAを計算する。ステップS43は、計算された各SMAが指定されたSMAの閾値以下である区間を特定する。ステップS44は、ステップS43で特定された二つの区間の共通区間(即ち、積集合)を特定し、Roll角及びPitch角の推定用静止区間に決定する。
【0055】
次に、決定された静止区間内の3軸直交加速度データを利用してRoll角及びPitch角を推定する処理を説明する。図7において、ステップS17は、ステップS16で決定した携帯端末500の静止区間の3軸直交加速度データ(即ち、加速度のAC成分502A−1)で重力ベクトル或いは重力データ(即ち、加速度データのDC成分502A−2)を用いて携帯端末500のRoll角及びPitch角を推定する。
【0056】
図13は、Roll角及びPitch角を推定処理を説明する図である。図13のように、先ず、絶対座標系(X, Y, Z)のZ軸を重力方向に設定する。絶対座標系のY軸の周りを角度θだけ回転し(X, Y, Z→X', Y', Z')、その後X'軸の周りを角度φだけ回転する(X', Y', Z' → X", Y", Z")。又、座標系(X", Y", Z")を実際に携帯端末500に配置するボディ座標系(ローカル座標系)とし、ボディ座標系で観測した3軸加速度のデータに基づいて上記の回転角度φ,θを計算することで、携帯端末500のRoll角φ及び Pitch角θを推定することができる。上記二つ回転の変換行列は次のようになる。
【0057】
【数5】

【0058】
次に、カメラ506cで撮影したNFCタグ10の画像データに基づきYaw角を推定する処理を説明する。加速度センサ506aで検知した加速度データに基づき携帯端末500のYaw角を推定することは難しい。そこで、図7において、ステップS15はカメラ506cで撮影したNFCタグ10の画像データに基づきYaw角を推定する。具体的には、先ずNFCタグ10の方位データを予めNFCタグ10に登録しておくか、或いは、例えば記憶部502内のデータベース(DB:Data-Base)に登録しておく。又、携帯端末500のカメラ506cでNFCタグ10をステップS14で決定された撮影タイミングで撮影する。更に、撮影したNFCタグ10の画像データの特徴を抽出することにより、カメラ506cとNFCタグ10の相対方位関係と登録したNFCタグ10の絶対方位に基づいて携帯端末500の方位を計算する。
【0059】
図14は、タグ画像の特徴抽出及び携帯端末の方位計算を説明する図である。図14に示すように、ステップS101は、撮影したNFCタグ10の生画像とテンプレート画像を用いて周知のテンプレートマッチングによりNFCタグ10の特徴を抽出する。この例では、NFCタグ10の角部(即ち、タグコーナ)をNFCタグ10の特徴として抽出するので、テンプレート画像はNFCタグ10のコーナ画像(又は、コーナテンプレート)である。テンプレートは、事前に用意しておくことができ、NFCタグ10に登録しておくことができる。又、テンプレートは、NFCタグ10に対応するタグIDでアクセス可能に、遠隔サーバや携帯端末500の記憶部502内のDB等に登録しておくこともできる。
【0060】
ステップS102は、抽出したNFCタグ10の特徴(図14中、○印で示すタグコーナ)の幾何特徴に基づいてNFCタグ10とNFCタグ10の向き(即ち、カメラ506cに対する相対方位)を決定する。ステップS103は、ステップS102で決定したNFCタグ10の向きと、NFCタグ10に登録されているNFCタグ10の絶対方位に基づき、カメラ506c(即ち、携帯端末500)の方位を計算する。これにより、図14に示すように、絶対座標系O、タグ座標系T、及びテンプレートマッチングにより画像で抽出した差分dに対して、絶対座標系O下の携帯端末500の座標系が求められる。
【0061】
【数6】

【0062】
ところで、携帯端末500は、NFCタグ10を検知した後、予測に基づいて撮影タイミングを決定する代わりに、カメラ506cにより連続的に画像撮影を行うことにより、上記の如き画像処理でYaw角を推定しても良い。この場合、連続的に撮影された画像から特徴を多く抽出可能な画像を複数選択することができ、Yaw角の推定精度を向上させることができる。
【0063】
又、静止区間の加速度データに基づいて推定したRoll角及びPitch角と、予測した撮影タイミングで撮影した画像に基づいて推定したYaw角は、異なるタイミングで取得するため、慣性航法の初期方位として利用する際にはRoll角及びPitch角を再度更新しても良い。この場合、NFCタグ10の画像が撮影されるまでのジャイロデータ502Bがバッファリングされているので、携帯端末500がNFCタグ10から離れる動きを検知してから、Yaw角の推定が完了するまでのジャイロデータ502BでRoll角及びPitch角を補正れば良い。このように補正したRoll角及びPitch角と、撮影画像から推定したYawを初期方位として設定すれば良い。
【0064】
上記実施例によれば、携帯端末500の初期位置及び初期方位を比較的簡単な操作で正確に設定できるので、その後携帯端末500の位置及び方位は、初期位置及び初期方位に基づいて慣性航法を用いる周知の方法で高精度に検知することが可能となる。
【0065】
携帯端末500の初期位置及び初期方位を設定した後に提供するサービスの一例として、初期位置及び初期方位に対する携帯端末500の位置及び方位は周知の方法で推定することができるので、携帯端末500と同じ空間中に配置されたデバイスに対する直感的なインタフェースを提供するサービスが挙げられる。例えば家庭での応用例では、携帯端末500がテレビ(図示せず)の近傍に位置しておりテレビを向いた方位を有すると、携帯端末500の表示部504にテレビの番組表を表示することでテレビの簡単、且つ、直感的な操作が可能なインタフェースを提供できる。又、オフィスでの応用例では、携帯端末500がプリンタ(図示せず)の近傍に位置しておりプリンタを向いた方位で一定時間静止すると、携帯端末500の表示部504に表示されている内容をプリンタで印刷する等のプリンタの簡単、且つ、直感的な操作が可能なインタフェースを提供できる。
【0066】
上記の例では、携帯端末はNFCタグと通信可能であるが、携帯端末が通信するデバイスは短距離無線通信(NFC)が可能で自己位置を格納可能なデバイスであれば特に限定されない。
【0067】
以上の実施例を含む実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
自己位置情報を格納した外部デバイスと短距離無線通信を行う慣性航法を用いる携帯端末であって、
前記携帯端末の加速度を検知して加速度情報を出力する第1の検知部と、
画像を撮影する撮影部と、
前記外部デバイスと通信する通信部と、
前記通信部が前記外部デバイスと通信可能になると、前記外部デバイスから受信した位置情報を前記携帯端末の初期位置に設定すると共に、前記加速度情報のAC成分に基づいて撮影タイミングを予測し、前記外部デバイスの画像を前記撮影タイミングで撮影するよう前記撮影部を制御し、前記外部デバイスの撮影画像から推定したヨー角を前記携帯端末の初期方位に設定する制御部
を備えたことを特徴とする、携帯端末。
(付記2)
前記携帯端末の方位情報を検知する第2の検知部を更に備え、
前記制御部は、前記外部デバイスの撮影画像から推定したヨー角と、前記加速度情報のDC成分及び前記方位情報から推定したロール角及びピッチ角を前記携帯端末の初期方位に設定することを特徴とする、付記1記載の携帯端末。
(付記3)
前記制御部は、前記通信部が前記外部デバイスと通信可能になると、前記加速度情報のAC成分及び前記方位情報に基づいて前記携帯端末が前記外部デバイスと接触する静止区間を推定し、前記静止区間で前記ロール角及び前記ピッチ角を推定することを特徴とする、付記2記載の携帯端末。
(付記4)
記憶部を更に備え、
前記制御部は、前記加速度情報を線加速度成分である前記AC成分と、重力成分である前記DC成分にフィルタリングして前記記憶部に格納することを特徴とする、付記2又は3記載の携帯端末。
(付記5)
前記制御部は、前記通信部の前記外部デバイスとの通信の開始をトリガとして前記静止区間の推定及び前記静止区間での前記ロール角及び前記ピッチ角の推定を行うことを特徴とする、付記1乃至4のいずれか1項記載の端末装置。
(付記6)
自己位置情報を格納した外部デバイスと短距離無線通信を行う慣性航法を用いる携帯端末のコンピュータに、位置及び方位推定処理を行わせるプログラムであって、
前記携帯端末の通信部が前記外部デバイスと通信可能であるか否を判定する手順と、
前記通信部が前記外部デバイスと通信可能であると判定されると、前記外部デバイスから受信した位置情報を前記携帯端末の初期位置に設定する手順と、
前記携帯端末の加速度センサが出力する加速度情報のAC成分に基づいて撮影タイミングを予測する手順と、
前記外部デバイスの画像を前記撮影タイミングで撮影するよう前記携帯端末の撮影部を制御する手順と、
前記外部デバイスの撮影画像から推定したヨー角を前記携帯端末の初期方位に設定する手順
を前記コンピュータに実行させることを特徴とする、プログラム。
(付記7)
前記初期方位に設定する手順は、前記外部デバイスの撮影画像から推定したヨー角と、前記加速度情報のDC成分及び前記携帯端末のジャイロセンサが出力する方位情報から推定したロール角及びピッチ角を前記携帯端末の初期方位に設定することを特徴とする、付記6記載のプログラム。
(付記8)
前記通信部が前記外部デバイスと通信可能であると判定されると、前記加速度情報のAC成分及び前記方位情報に基づいて前記携帯端末が前記外部デバイスと接触する静止区間を推定する手順と、
前記静止区間で前記ロール角及び前記ピッチ角を推定する手順
を前記コンピュータに更に実行させることを特徴とする、付記7記載のプログラム。
(付記9)
前記加速度情報を線加速度成分である前記AC成分と、重力成分である前記DC成分にフィルタリングして前記携帯端末の記憶部に格納する手順
を前記コンピュータに更に実行させることを特徴とする、付記7又は8記載のプログラム。
(付記10)
前記初期位置を設定する手順は、前記通信部と前記外部デバイスとの通信の開始を検知すると、前記通信部が前記外部デバイスと通信可能であると判定することを特徴とする、付記6乃至9のいずれか1項記載のプログラム。
【0068】
以上、開示の携帯端末及び位置及び方位推定プログラムを実施例により説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形及び改良が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0069】
10 NFCタグ
500 携帯端末
501 CPU
502 記憶部
505 通信部
506 センサ部
506a 加速度センサ
506b ジャイロセンサ
506c カメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己位置情報を格納した外部デバイスと短距離無線通信を行う慣性航法を用いる携帯端末であって、
前記携帯端末の加速度を検知して加速度情報を出力する第1の検知部と、
画像を撮影する撮影部と、
前記外部デバイスと通信する通信部と、
前記通信部が前記外部デバイスと通信可能になると、前記外部デバイスから受信した位置情報を前記携帯端末の初期位置に設定すると共に、前記加速度情報のAC成分に基づいて撮影タイミングを予測し、前記外部デバイスの画像を前記撮影タイミングで撮影するよう前記撮影部を制御し、前記外部デバイスの撮影画像から推定したヨー角を前記携帯端末の初期方位に設定する制御部
を備えたことを特徴とする、携帯端末。
【請求項2】
前記携帯端末の方位情報を検知する第2の検知部を更に備え、
前記制御部は、前記外部デバイスの撮影画像から推定したヨー角と、前記加速度情報のDC成分及び前記方位情報から推定したロール角及びピッチ角を前記携帯端末の初期方位に設定することを特徴とする、請求項1記載の携帯端末。
【請求項3】
前記制御部は、前記通信部が前記外部デバイスと通信可能になると、前記加速度情報のAC成分及び前記方位情報に基づいて前記携帯端末が前記外部デバイスと接触する静止区間を推定し、前記静止区間で前記ロール角及び前記ピッチ角を推定することを特徴とする、請求項2記載の携帯端末。
【請求項4】
記憶部を更に備え、
前記制御部は、前記加速度情報を線加速度成分である前記AC成分と、重力成分である前記DC成分にフィルタリングして前記記憶部に格納することを特徴とする、請求項2又は3記載の携帯端末。
【請求項5】
自己位置情報を格納した外部デバイスと短距離無線通信を行う慣性航法を用いる携帯端末のコンピュータに、位置及び方位推定処理を行わせるプログラムであって、
前記携帯端末の通信部が前記外部デバイスと通信可能であるか否を判定する手順と、
前記通信部が前記外部デバイスと通信可能であると判定されると、前記外部デバイスから受信した位置情報を前記携帯端末の初期位置に設定する手順と、
前記携帯端末の加速度センサが出力する加速度情報のAC成分に基づいて撮影タイミングを予測する手順と、
前記外部デバイスの画像を前記撮影タイミングで撮影するよう前記携帯端末の撮影部を制御する手順と、
前記外部デバイスの撮影画像から推定したヨー角を前記携帯端末の初期方位に設定する手順
を前記コンピュータに実行させることを特徴とする、プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−42246(P2013−42246A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176417(P2011−176417)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】