説明

携帯端末及び制御方法

【課題】GPS測位の方式を適切に決定し、消費電力を低減できる携帯端末及び制御方法を提供すること。
【解決手段】携帯電話機1は、複数の測位方式のうち選択された一の測位方式により、現在の位置に関する位置情報を取得する測位部32と、複数の地域と前記複数の測位方式とを対応付けた特定情報を記憶する記憶部70と、測位部32により取得された位置情報に基づく現在の位置が、特定情報に基づく前記複数の地域のいずれに該当するかを判定し、判定結果に応じて、複数の測位方式のうち所定の一の測位方式を選択する方式選択部33と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GPS測位機能を有する携帯端末及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、防犯ブザーを鳴らしたときや、所定メッセージの受信を契機として、携帯端末の位置情報を定期的に測位して、登録されている宛先へ通知するサービスが提供されている。このようなサービスでは、携帯端末の正確な位置が迅速に通知されることが望ましいが、GPS測位を頻繁に行うことにより、通信費用や消費電力の増大が懸念される。
【0003】
このような状況において、例えば、特許文献1には、測位した現在地が予め設定された危険箇所に近い場合に測位間隔を短くすることが提案されている。また、特許文献2には、周辺地域の危険度が高いほど測位情報の送信頻度を高くすることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−174396号公報
【特許文献2】特開2004−138562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、高精度の測位方式を用いていると消費電力が大きいため、特許文献1や特許文献2の技術によって測位間隔を長くしても、やはり携帯端末の電池残量不足により現在地の通知ができないおそれがあった。
【0006】
本発明は、GPS測位の方式を適切に決定し、消費電力を低減できる携帯端末及び制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る携帯端末は、複数の測位方式のうち選択された一の測位方式により、現在の位置に関する位置情報を取得する取得手段と、複数の地域と前記複数の測位方式とを対応付けた特定情報を記憶する記憶手段と、前記取得手段により取得された前記位置情報に基づく現在の位置が、前記特定情報に基づく前記複数の地域のいずれに該当するかを判定し、当該判定結果に応じて、前記複数の測位方式のうち所定の一の測位方式を選択する制御手段と、を備える。
【0008】
また、前記複数の測位方式は、基地局との通信が必要かつ位置計算を自端末で行う第1測位方式と、前記基地局との通信が必要かつ位置計算を当該基地局で行う第2測位方式との少なくとも一方、及び前記基地局との通信が不要かつ位置計算を自端末で行う第3測位方式を含むことが好ましい。
【0009】
また、前記制御手段は、前記基地局との通信が不可能ならば、前記判定結果に関わらず、前記第3測位方式を選択することが好ましい。
【0010】
また、前記取得手段は、前記第3測位方式へ移行する場合、前記第1測位方式又は前記第2測位方式による測位時に予め基地局から受信した衛星情報に基づいて位置計算を行うことが好ましい。
【0011】
また、前記記憶手段は、時間帯に応じた前記特定情報を記憶することが好ましい。
【0012】
また、前記制御手段は、前記判定結果に応じて、前記取得手段により前記位置情報を取得する間隔を決定することが好ましい。
【0013】
また、本発明に係る携帯端末は、前記取得手段により取得された前記位置情報を、所定間隔で外部装置へ送信する送信手段をさらに備えることが好ましい。
【0014】
また、本発明に係る携帯端末は、測位開始要求を受け付ける受付手段をさらに備え、前記送信手段は、前記受付手段により前記測位開始要求を受け付けたことに応じて、前記位置情報の送信を開始することが好ましい。
【0015】
また、本発明に係る携帯端末は、緊急入力手段をさらに備え、前記受付手段は、前記緊急入力手段の入力を検出し、当該検出の結果を前記測位開始要求として受け付けることが好ましい。
【0016】
また、前記制御手段は、前記受付手段により前記緊急入力手段の入力が検出されると、前記判定結果に関わらず、前記複数の測位方式のうち測位精度の高い測位方式を優先して選択することが好ましい。
【0017】
また、前記制御手段は、前記緊急入力手段の入力が検出された際に、前記取得手段によって取得された前記位置情報に基づいて、前記特定情報を更新することが好ましい。
【0018】
また、前記制御手段は、前記電池残量が所定の閾値以下になると、前記判定結果に関わらず、前記複数の測位方式のうち消費電力の少ない測位方式を優先して選択することが好ましい。
【0019】
また、本発明に係る携帯端末は、基地局から、前記複数の地域に関するデータを受信し、前記特定情報を更新する更新手段をさらに備えることが好ましい。
【0020】
本発明に係る携帯端末の制御方法は、複数の測位方式のうち選択された一の測位方式により、現在の位置に関する位置情報を取得する取得ステップと、複数の地域と前記複数の測位方式とを対応付けた特定情報を記憶する記憶ステップと、前記取得ステップにおいて取得された前記位置情報に基づく現在の位置が、前記特定情報に基づく前記複数の地域のいずれに該当するかを判定し、当該判定結果に応じて、前記複数の測位方式のうち所定の一の測位方式を選択する制御ステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、携帯端末において、GPS測位の方式を適切に決定し、消費電力を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係る携帯電話機の外観斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る携帯電話機の機能を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係る危険度レベルに対応する測位間隔と測位方式とを示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る移動経路通知処理を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施形態に係る測位処理の詳細を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施形態に係る測位間隔選択処理の詳細を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施形態に係る測位方式選択処理の詳細を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態の一例について説明する。なお、本実施形態では、携帯端末の一例として、携帯電話機1を説明する。
【0024】
図1は、本実施形態に係る携帯電話機1(携帯端末)の外観斜視図である。
携帯電話機1は、操作部側筐体2と、表示部側筐体3と、を備えて構成される。操作部側筐体2は、表面部10に、操作部11と、携帯電話機1の使用者が通話時や音声認識アプリケーションを利用時に発した音声が入力されるマイク12と、を備えて構成される。操作部11は、各種設定機能や電話帳機能やメール機能等の各種機能を作動させるための機能設定操作ボタン13と、電話番号の数字やメールの文字等を入力するための入力操作ボタン14と、各種操作における決定やスクロール等を行う決定操作ボタン15と、から構成されている。
【0025】
また、表示部側筐体3は、表面部20に、各種情報を表示するための表示部21と、通話の相手側の音声を出力するレシーバ22と、を備えて構成されている。
【0026】
また、操作部側筐体2の上端部と表示部側筐体3の下端部とは、ヒンジ機構4を介して連結されている。また、携帯電話機1は、ヒンジ機構4を介して連結された操作部側筐体2と表示部側筐体3とを相対的に回転することにより、操作部側筐体2と表示部側筐体3とが互いに開いた状態(開放状態)にしたり、操作部側筐体2と表示部側筐体3とを折り畳んだ状態(折畳み状態)にしたりできる。
【0027】
図2は、本実施形態に係る携帯電話機1の機能を示すブロック図である。
携帯電話機1は、操作部11と、表示部21と、制御部30と、通信部40と、メインアンテナ41と、GPS通信部50と、GPSアンテナ51と、音声制御部60と、記憶部70と、防犯ブザー80(緊急入力手段)とを備える。
【0028】
制御部30は、携帯電話機1の全体を制御しており、例えば、表示部21、通信部40、GPS通信部50、音声制御部60等に対して所定の制御を行う。また、制御部30は、操作部11、通信部40、防犯ブザー80等から入力を受け付けて、各種処理を実行する。そして、制御部30は、処理実行の際には、記憶部70を制御し、各種プログラム及びデータの読み出し、並びにデータの書き込みを行う。
【0029】
また、本実施形態において、制御部30は、測位開始要求に応じて、GPS測位により取得した位置情報を、定期的に所定の宛先へ送信する。ここで、GPS測位の方式は、携帯電話機1が位置している地域の危険度レベルに応じて選択される。なお、制御部30が備える各部の機能は後述する。
【0030】
通信部40は、所定の周波数帯(例えば、2GHz帯や800MHz帯等)で外部装置(基地局)と通信を行う。そして、通信部40は、メインアンテナ41より受信した信号を復調処理し、処理後の信号を制御部30に供給し、また、制御部30から供給された信号を変調処理し、メインアンテナ41から外部装置に送信する。
【0031】
特に、本実施形態において、通信部40は、音声通話やメール等に係る信号の送受信に加えて、基地局を介して測位サーバと接続し、衛星サーチ補助情報(GPS衛星捕捉補助情報)や、測位結果等を取得する。なお、詳細は後述するが、衛星の捕捉状況や指示入力に応じて、制御部30にて実行される測位の方法は異なり、送受信されるデータの内容も異なる。
【0032】
GPS通信部50は、GPSアンテナ51により受信したGPS衛星からの所定周波数帯の電波信号を復調処理し、処理後の信号を制御部30に供給する。なお、GPS通信部50及びGPSアンテナ51の機能は、それぞれ、通信部40及びメインアンテナ41が担ってもよい。
【0033】
音声制御部60は、制御部30の制御に従って、通信部40から供給された信号に対して所定の音声処理を行い、処理後の信号をレシーバ22に出力する。レシーバ22は、音声制御部60から供給された信号を外部に出力する。なお、この信号は、レシーバ22に代えて、又はレシーバ22と共に、スピーカ(図示せず)から出力されるとしてもよい。
【0034】
また、音声制御部60は、制御部30の制御に従って、マイク12から入力された信号を処理し、処理後の信号を通信部40に出力する。通信部40は、音声制御部60から供給された信号に所定の処理を行い、処理後の信号をメインアンテナ41より出力する。
【0035】
記憶部70は、例えば、ワーキングメモリを含み、制御部30による演算処理に利用される。また、記憶部70は、本実施形態の処理を実行するプログラムや、複数の地域と複数の測位方式とを対応付けた特定情報として、危険度レベルマップ、並びに危険度レベルと測位間隔及び測位方式との対応付けデータを記憶する。なお、記憶部70は、着脱可能な外部メモリを兼ねていてもよい。
【0036】
防犯ブザー80は、利用者が何らかの危険を察知した時に大音量を鳴らす事によって、周囲の人へ注意を促す防犯装置である。制御部30は、この防犯ブザー80が起動したことに応じて、位置情報の通知を開始する。また、防犯ブザー80は、一実施形態として、緊急である旨の信号を制御部30へ通知する入力装置であり、この信号を受けた制御部30は、音声制御部60によって警告音を出力させたり、通信部40によって基地局へ緊急である旨を通知させたりしてもよい。
【0037】
ここで、携帯電話機1におけるGPS測位の測位方式について説明する。測位方式には、一実施形態として、Assisted測位(第2測位方式)、Based測位(第1測位方式)及びStandalone測位(第3測位方式)が存在する。
【0038】
Assisted測位では、携帯電話機1は、測位サーバから衛星サーチ補助情報(AA(Acquisition Assistance)データ)を受信し、GPS衛星をサーチする。サーチ結果は測位サーバに戻され、測位サーバにて位置計算が行われる。携帯電話機1は、位置計算の結果を受信し、測位結果として出力する。
【0039】
ここで、携帯電話機1が衛星をサーチした際に、4個以上の衛星を捕捉できた場合には、最も高い精度が期待できるGPS−Fixモードの測位(Differential GPS測位)が行える。一方、捕捉できなかった場合には、基地局からの電波の遅延時間を利用するHybrid−Fixモードや、AFLT−Fixモード、さらには、基地局の位置情報を用いるSector−Fixモードの測位が行われる。携帯電話機1は、利用者又はアプリケーションからの指定を受け付けて、各モードを指定して測位を実行できる。例えば、AFLT−Fixモードでは、衛星からの情報を取得しないため消費電力は低減できるが、平面空間での測位になるため、GPS−Fixモードに比べて測位精度は低下する。また、ネットワーク圏外状態においては、測位サーバとの通信ができないため、Assisted測位による測位はできない。
【0040】
Based測位では、携帯電話機1は、基地局から衛星情報(Ephemerisデータ及びAlmanacデータ)を受信する。携帯電話機1は、受信した衛星情報に基づいてAAデータを作成した後、衛星をサーチする。さらに、携帯電話機1は、Assisted測位とは異なり、サーチ結果を測位サーバに送信することなく、自ら位置計算を行う。そのため、測位サーバにて位置計算が行われるAssisted測位に比べて消費電力が大きい。また、Based測位は、携帯電話機1が衛星を捕捉できない状態や基地局との通信がネットワーク圏外状態において測位することができない。
【0041】
Standalone測位では、Based測位、Assisted測位と異なり、携帯電話機1によって、測位のために基地局との通信が行われない。すなわち、携帯電話機1は、GPS衛星の信号を解読して、Ephemerisデータ及びAlmanacデータを自ら取得する。したがって、携帯電話機1は、ネットワーク圏外であっても、Standalone測位によって現在位置の取得が可能である。
【0042】
なお、Based方式及びStandalone方式では、携帯電話機1は、前回の測位で取得したEphemerisデータ及びAlmanacデータと測位結果とを、次回の測位に利用する。したがって、これらの方式は、移動している携帯電話機1の追跡に有効な測位方式である。
また、Based方式及びStandalone方式は、連続測位時において、Assisted方式に比べて測位精度が高いが、位置計算を携帯電話機1で実行するため、処理負荷が大きい。
【0043】
このように、測位精度では、概ね「Standalone方式=Based方式>Assisted方式」の関係となり、消費電力では、概ね「Standalone方式>Based方式>Assisted方式」の関係となる。
【0044】
次に、制御部30の各部について詳述する。
制御部30は、受付部31(受付手段)と、測位部32(取得手段)と、方式選択部33(制御手段)と、送信部34(送信手段)と、更新部35(更新手段)とを備える。
【0045】
受付部31は、測位開始要求を受け付ける。具体的には、例えば、操作部11を介して利用者から所定の指示入力があった場合、通信部40により所定のメッセージ(ショートメッセージ)を受信した場合、防犯ブザー80の起動を検出した場合等に、これらを測位開始要求として受け付ける。
【0046】
測位部32は、上述の複数の測位方式のうち選択された一の測位方式により、現在の位置に関する位置情報を取得する。以下、測位方式としては、Based測位、Assisted測位(GPS−Fixモード及びAFLT−Fixモード)、並びにStandalone測位のいずれかを用いることとする。
【0047】
ここで、測位部32は、Standalone測位へ移行する場合、Based測位又はAssisted測位時に予め基地局から受信した衛星情報に基づいて位置計算を行う。これにより、初期測位に掛かる時間が短縮される。具体的には、測位部32は、Based測位の場合、処理中に基地局から衛星情報(Almanacデータ及びEphemerisデータ)を取得しているため、Standalone測位へ移行した際には、この取得済みの衛星情報を用いる。また、測位部32は、Assisted測位の場合、衛星の電波環境が悪化した場合に、Standalone測位への移行に備えて、基地局から測位計算結果とは別に衛星情報を取得しておく。
【0048】
方式選択部33は、測位部32により取得された位置情報により、複数の地域ごとの危険度レベルを示した危険度レベルマップを参照して、現在の位置が該当する地域の危険度レベルを判定し、この判定された危険度レベルに応じて、複数の測位方式のうち所定の一の測位方式を選択する。
【0049】
ここで、危険度レベルマップは、記憶部70に予め記憶されており、犯罪発生率等に基づいて緯度及び経度で指定されるエリアごとにレベル分けされた地図データベースである。例えば、危険度レベルは、3段階(高、中、低)に設定され、暗くて人通りが少ないエリア、学校の周辺、建物の内よりも外、等がより高く設定される。また、危険度レベルは、季節、曜日や、時間帯等によって変化してもよい。
【0050】
図3は、本実施形態に係る危険度レベルに対応する測位間隔と測位方式とを示す図である。これらのデータは、記憶部70に記憶され、方式選択部33により参照される。
【0051】
方式選択部33は、基地局との通信が可能、すなわち圏内ならば、Based測位又はAssisted測位を選択し、基地局との通信が不可能、すなわち圏外ならば、Standalone測位を選択する。また、方式選択部33は、判定された危険度レベルに応じて、測位部32により位置情報を取得する間隔を決定する。
【0052】
具体的には、方式選択部33は、圏内か圏外かを問わず、危険度レベルが高いほど測位間隔を短くして携帯電話機1の移動経路をより正確に取得させ、危険度レベルが低いほど測位間隔を長くして消費電力を低減させる。例えば、危険度レベル「中」で測位間隔が標準の1分であれば、危険度レベルが「高」のとき測位間隔を30秒に短縮し、危険度レベルが「低」のとき測位間隔を2分に延長する。
【0053】
また、圏内において、方式選択部33は、危険度レベルが「高」なら、測位方式として、測位精度が高く連続測位に適したBased測位を選択する。また、方式選択部33は、危険度レベルが「中」なら、測位方式として、Based測位より電力消費が少ないAssisted測位(GPS−Fixモード)を選択する。さらに、方式選択部33は、危険度レベルが「低」なら、測位方式として、さらに電力消費が少ないAssisted測位(AFLT−Fixモード)を選択する。
一方、圏外においては、方式選択部33は、危険度レベルによらず、測位方式として、基地局との通信が不要なStandalone測位を選択する。
【0054】
なお、方式選択部33は、受付部31により防犯ブザー80の起動が検出されると、判定された危険度レベルによらず、複数の測位方式のうち測位精度の高い測位方式(例えば、Based測位)を優先して選択する。また、方式選択部33は、防犯ブザー80の起動が検出された際に、既に測位が行われていた場合には、より高い精度の測位方式を選択する。例えば、方式選択部33は、防犯ブザー80が起動された際に、Assisted測位により位置測位が行われていた場合は、Based測位に切り替える。
【0055】
また、防犯ブザー80が起動された際に、方式選択部33は、測位部32によって取得された位置情報に基づいて、地図情報を更新することが好ましい。防犯ブザー80の入力をトリガとして、取得した位置情報に対応した地図情報における危険度レベルを自動的に上昇させることによって、再度、利用者がこの位置に立ち寄った際には、高い危険度レベルに対応した測位方式が選択される。
【0056】
送信部34は、受付部31により測位開始要求を受け付けたことに応じて、測位部32により取得された位置情報を所定間隔で外部装置へ送信する。具体的には、例えば、携帯電話機1の利用者(子供)の親が利用している携帯端末等、予め設定されている他の端末へ、携帯電話機1の移動経路を通知する。なお、送信部34は、通信部40によって親等の所有する特定の端末から測位開始要求を受け付けた場合にも、位置情報を外部装置へ送信する。
【0057】
更新部35は、基地局から危険度レベルに関するデータを受信し、地図情報を更新する。受信するデータは、基地局の通信エリア内の詳細情報であり、管理者により最新状態に維持管理される。これにより、携帯電話機1は、基地局と通信することにより、地図情報を最新かつ詳細な内容に更新できる。
【0058】
図4は、本実施形態に係る携帯電話機1における移動経路通知処理を示すフローチャートである。
【0059】
ステップS1において、制御部30は、移動経路通知機能を実行中か否かを判定する。この移動経路通知機能は、防犯ブザーの起動や所定メッセージの受信等に応じて実行される。制御部30は、この判定がYESの場合、処理をステップS2に移し、判定がNOの場合、処理を終了する。
【0060】
ステップS2において、制御部30(測位部32)は、予め設定されている測位方式により測位処理を実行し、測位結果である位置情報を所定の宛先へ通知する。なお、処理の詳細は後述する(図5参照)。
【0061】
ステップS3において、制御部30(方式選択部33)は、ステップS2における測位結果を、記憶部70の危険度レベルマップと比較し、現在の地域の危険度レベルを取得する。
【0062】
ステップS4において、制御部30(方式選択部33)は、ステップS3で取得した危険度レベルが前回の測位時から変化したか否かを判定する。制御部30は、この判定がYESの場合、処理をステップS5に移し、判定がNOの場合、処理をステップS7に移す。
【0063】
ステップS5において、制御部30(方式選択部33)は、ステップS3で取得した危険度レベルに応じた測位間隔を選択する。なお、処理の詳細は後述する(図6参照)。
【0064】
ステップS6において、制御部30(方式選択部33)は、ステップS3で取得した危険度レベルに応じた測位方式を選択する。なお、処理の詳細は後述する(図7参照)。
【0065】
ステップS7において、制御部30は、ステップS5で選択された測位間隔用のタイマを設定する。
【0066】
ステップS8において、制御部30は、ステップS7で設定した測位間隔用タイマが満了するまで待機する。そして、制御部30は、測位間隔用タイマが満了すると、処理をステップS1に戻し、移動経路通知処理を継続する。
【0067】
図5は、本実施形態に係る携帯電話機1における測位処理の詳細を示すフローチャートである。本処理は、移動経路通知処理(図4)のステップS2に相当する。
【0068】
ステップS11において、制御部30(測位部32)は、通信部40により、携帯電話機1が基地局と通信可能な状態であるか否かを示す圏内・圏外情報を取得する。圏内・圏外情報とは、例えば、基地局との通信により取得した電波強度に関する情報である。
【0069】
ステップS12において、制御部30(測位部32)は、ステップS11で取得した情報に基づいて、携帯電話機1が基地局の通信ネットワークの圏内か否かを判定する。制御部30は、この判定がYESの場合、処理をステップS13に移し、判定がNOの場合、処理をステップS14に移す。
【0070】
ステップS13において、制御部30(測位部32)は、測位方式選択処理(図7)で設定されている測位方式で、又は初回実行時には初期設定の測位方式(例えば、Based測位)でGPS測位を実行する。
【0071】
ステップS14において、制御部30(測位部32)は、基地局と通信が不要なStandalone測位でGSP測位を実行する。
【0072】
図6は、本実施形態に係る携帯電話機1における測位間隔選択処理の詳細を示すフローチャートである。本処理は、移動経路通知処理(図4)のステップS5に相当する。
【0073】
ステップS21において、制御部30(方式選択部33)は、携帯電話機1が位置している地域の危険度レベルに応じて処理を分岐させる。すなわち、危険度レベルが「高」の場合、処理をステップS22に移し、危険度レベルが「中」の場合、処理をステップS23に移し、危険度レベルが「低」の場合、処理をステップS24に移す。
【0074】
ステップS22において、制御部30(方式選択部33)は、測位間隔用タイマを短周期のT1に設定する。
【0075】
ステップS23において、制御部30(方式選択部33)は、測位間隔用タイマを中周期(標準)のT2に設定する。
【0076】
ステップS24において、制御部30(方式選択部33)は、測位間隔用タイマを長周期のT3に設定する。
【0077】
図7は、本実施形態に係る携帯電話機1における測位方式選択処理の詳細を示すフローチャートである。本処理は、移動経路通知処理(図4)のステップS6に相当する。
【0078】
ステップS31において、制御部30(方式選択部33)は、携帯電話機1が位置している地域の危険度レベルに応じて処理を分岐させる。すなわち、危険度レベルが「高」の場合、処理をステップS32に移し、危険度レベルが「中」の場合、処理をステップS33に移し、危険度レベルが「低」の場合、処理をステップS34に移す。
【0079】
ステップS32において、制御部30(方式選択部33)は、測位方式をBased測位に設定する。
【0080】
ステップS33において、制御部30(方式選択部33)は、測位方式をAssisted測位(GPS−Fixモード)に設定する。
【0081】
ステップS34において、制御部30(方式選択部33)は、測位方式をAssisted測位(AFLT−Fixモード)に設定する。
【0082】
以上のように、本実施形態によれば、携帯電話機1は、測位した現在地を危険度レベルマップと対比し、取得した危険度レベルに応じて、複数の測位方式のうち、適切な方式を選択する。したがって、携帯電話機1は、危険度が高く高精度な測位を要する場合には、高精度な測位方式を選択し、逆に危険度が低く測位精度を抑制できる場合には、処理負荷の小さい測位方式を選択して消費電力を低減できる。
さらに、携帯電話機1は、危険度レベルマップにおいて、季節、曜日や、時間帯等によって異なる危険度レベルを設定できるようにすると、取得される危険度レベルの精度が向上し、より適切に測位方式及び測位間隔を選択できる。
【0083】
また、携帯電話機1は、通信ネットワークの圏外に移動すると、Standalone測位を実行するが、このときに必要な衛星情報(Ephemerisデータ等)を予め基地局から取得しておく。したがって、携帯電話機1は、特に危険度レベルが高い圏外の地域において、初期測位に掛かる時間を短縮でき、利便性を向上できる。
【0084】
また、携帯電話機1は、測位した現在地の危険度レベルに応じて、危険度レベルが低いほど、測位の実行間隔を長く設定する。したがって、携帯電話機1は、危険度が高く高精度な移動経路を要する場合には、短い測位間隔を選択し、逆に危険度が低く移動経路の精度を抑制できる場合には、長い測位間隔を選択して消費電力を低減できる。
【0085】
また、携帯電話機1は、設定された測位間隔で測位された位置情報を、移動経路として他の端末へ送信するので、受信者は、他の端末から、携帯電話機1及びその利用者の移動経路をタイムリーに知ることができる。
さらに、携帯電話機1は、所定の操作入力、防犯ブザー80の起動やメッセージの受信等の測位開始要求に応じて、位置情報の送信を開始するので、必要なタイミングでのみ移動経路の通知サービスを提供でき、利便性が向上する。
【0086】
また、携帯電話機1は、防犯ブザー80が起動された場合には、危険度が高いと判断し、危険度レベルマップにより判定された危険度レベルによらず、高精度の測位方式を優先的に選択する。したがって、携帯電話機1は、利用者の実際の状況を優先して危険度レベルを高く変更するので、測位精度が不必要に低下するのを抑制できる。
さらに、携帯電話機1は、このとき変更された危険度レベルに基づいて地図情報を更新するので、地図情報の精度を向上できる。
【0087】
また、携帯電話機1は、基地局から通信エリア内の危険度レベルに関する詳細データを受信し、地図情報を更新する。このデータは、管理者により最新状態に維持管理されるので、携帯電話機1は、基地局と通信することにより、地図情報を最新かつ詳細な内容に更新でき、取得する危険度レベルの精度を向上できる。
【0088】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限るものではない。また、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0089】
上述の実施形態では、方式選択部33は、取得した危険度レベルに応じて測位方式及び測位間隔を選択したが、さらに、電池残量に応じて選択してもよい。すなわち、携帯電話機1は、電池残量が所定の閾値以下になると、危険度レベルが高い地域において選択される処理負荷の大きい高精度の測位方式が継続できないおそれがあるため、方式選択部33は、消費電力の少ない測位方式を優先する。
このことにより、携帯電話機1は、できる限り移動経路の通知を要する危険度レベルが高い地域において、処理を継続できる時間を延長できる。
【0090】
また、危険度レベルマップは、携帯電話機1の利用者により編集可能であってもよい。このことにより、携帯電話機1は、利用者の希望に従って、安全性と消費電力のバランスを一層向上できる。
【0091】
また、上述の実施形態では、複数の地域と複数の測位方式とを対応付けた特定情報の一部として、地図データベースである危険度レベルマップを記憶したが、これには限られない。例えば、住所と危険度レベルとを関連付けたデータベースであってもよく、この場合、方式選択部33は、測位結果から変換された住所に基づいて危険度レベルを取得する。
【0092】
また、本発明に係る無線端末装置は、携帯電話機1には限られず、PHS(登録商標;Personal Handy phone System)、PDA(Personal Digital Assistant)の他、ゲーム機、ナビゲーション装置、パーソナルコンピュータ等、様々な端末に適用可能である。
【符号の説明】
【0093】
1 携帯電話機(携帯端末)
11 操作部
21 表示部
30 制御部
31 受付部(受付手段)
32 測位部(取得手段)
33 方式選択部(制御手段)
34 送信部(送信手段)
35 更新部(更新手段)
40 通信部
41 メインアンテナ
50 GPS通信部
51 GPSアンテナ
60 音声制御部
70 記憶部(記憶手段)
80 防犯ブザー(緊急入力手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の測位方式のうち選択された一の測位方式により、現在の位置に関する位置情報を取得する取得手段と、
複数の地域と前記複数の測位方式とを対応付けた特定情報を記憶する記憶手段と、
前記取得手段により取得された前記位置情報に基づく現在の位置が、前記特定情報に基づく前記複数の地域のいずれに該当するかを判定し、当該判定結果に応じて、前記複数の測位方式のうち所定の一の測位方式を選択する制御手段と、を備える携帯端末。
【請求項2】
前記複数の測位方式は、基地局との通信が必要かつ位置計算を自端末で行う第1測位方式と、前記基地局との通信が必要かつ位置計算を当該基地局で行う第2測位方式との少なくとも一方、及び前記基地局との通信が不要かつ位置計算を自端末で行う第3測位方式を含む請求項1に記載の携帯端末。
【請求項3】
前記制御手段は、前記基地局との通信が不可能ならば、前記判定結果に関わらず、前記第3測位方式を選択する請求項2に記載の携帯端末。
【請求項4】
前記取得手段は、前記第3測位方式へ移行する場合、前記第1測位方式又は前記第2測位方式による測位時に予め基地局から受信した衛星情報に基づいて位置計算を行う請求項2又は請求項3に記載の携帯端末。
【請求項5】
前記記憶手段は、時間帯に応じた前記特定情報を記憶する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の携帯端末。
【請求項6】
前記制御手段は、前記判定結果に応じて、前記取得手段により前記位置情報を取得する間隔を決定する請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の携帯端末。
【請求項7】
前記取得手段により取得された前記位置情報を、所定間隔で外部装置へ送信する送信手段をさらに備える請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の携帯端末。
【請求項8】
測位開始要求を受け付ける受付手段をさらに備え、
前記送信手段は、前記受付手段により前記測位開始要求を受け付けたことに応じて、前記位置情報の送信を開始する請求項7に記載の携帯端末。
【請求項9】
緊急入力手段をさらに備え、
前記受付手段は、前記緊急入力手段の入力を検出し、当該検出の結果を前記測位開始要求として受け付ける請求項8に記載の携帯端末。
【請求項10】
前記制御手段は、前記受付手段により前記緊急入力手段の入力が検出されると、前記判定結果に関わらず、前記複数の測位方式のうち測位精度の高い測位方式を優先して選択する請求項9に記載の携帯端末。
【請求項11】
前記制御手段は、前記緊急入力手段の入力が検出された際に、前記取得手段によって取得された前記位置情報に基づいて、前記特定情報を更新する請求項9又は請求項10に記載の携帯端末。
【請求項12】
前記制御手段は、前記電池残量が所定の閾値以下になると、前記判定結果に関わらず、前記複数の測位方式のうち消費電力の少ない測位方式を優先して選択する請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の携帯端末。
【請求項13】
基地局から、前記複数の地域に関するデータを受信し、前記特定情報を更新する更新手段をさらに備える請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の携帯端末。
【請求項14】
複数の測位方式のうち選択された一の測位方式により、現在の位置に関する位置情報を取得する取得ステップと、
複数の地域と前記複数の測位方式とを対応付けた特定情報を記憶する記憶ステップと、
前記取得ステップにおいて取得された前記位置情報に基づく現在の位置が、前記特定情報に基づく前記複数の地域のいずれに該当するかを判定し、当該判定結果に応じて、前記複数の測位方式のうち所定の一の測位方式を選択する制御ステップと、を実行させる携帯端末の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−21851(P2012−21851A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−159050(P2010−159050)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】