説明

携帯端末装置

【課題】タッチパネルへのタッチに対して、従来のEメール着信時と同じ振動モードを用いるとすると、操作中の画面が揺れることによって正確にタッチできないなどの不都合が生じ、商品的価値が低下するおそれがある。
【解決手段】携帯端末装置100において、振動モータ110は、振動を発生する。受付部112は、タッチパネル116へのタッチによる入力動作と着信による入力動作とを受け付ける。制御部114は、受付部112がタッチパネル116へのタッチによる入力動作を受け付けた場合の振動モータ110の振動の度合いが、着信による入力動作を受け付けた場合の振動モータ110の振動の度合いよりも小さくなるように振動モータ110の駆動を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末装置に関し、特に振動を発生させる振動モータを備える携帯端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネルを入力手段として用いる携帯端末が増えている。このような携帯端末では、従来のボタン入力型の携帯端末に比べて、入力が携帯端末に認識されたかどうかが分かりにくいという課題がある。これを解決する方法の1つとして、ユーザのタッチパネルへのタッチに対して振動を発生することで、そのタッチが携帯端末に認識されたことをユーザに伝える方法がある(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−52785号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
携帯端末では、音声通話の着信時やEメール受信時に振動によってユーザにそのことを知らせることが一般的に行われている。音声通話の着信時やEメール受信時の振動の度合いは、その目的から強めに設定されている場合が多い。このような状況下、本発明者は以下の課題を認識するに至った。通信機能を有した携帯端末にタッチパネルを搭載する場合、タッチパネルへのタッチと着信時とに対して同じ振動モードを用いるとすると、操作中の画面が強く揺れることによって正確にタッチできないなどの不都合が生じ、商品的価値が低下するおそれがある。
【0004】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は商品的価値の高い携帯端末装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のある態様は、携帯端末装置に関する。この携帯端末装置は、振動源となる振動モータと、第1の入力動作と第2の入力動作とを受け付ける受付部と、受付部が第1の入力動作を受け付けた場合と第2の入力動作を受け付けた場合とで、振動モータの振動の度合いが異なるよう振動モータの駆動を制御する制御部と、を備える。
【0006】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、商品的価値の高い携帯端末装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、信号には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において本発明に係る実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0009】
実施の形態に係る携帯端末装置は、携帯電話やPDAなどの携帯端末であり、タッチパネルによってユーザからの入力を受け付け、また、通信機能を有する。ここで通信としては、Eメール送受信、音声通話、Webアクセス等が実行されるが、ここでは説明を明瞭にするためにEメールの着信を中心に説明する。
実施の形態に係る携帯端末装置は振動を発生する振動モータを備え、タッチパネル操作や着信などの入力動作に対して振動する。そして着信に対応する強めの振動のモードと、タッチパネル操作に対応する弱めの振動のモードとの間でその振動モータを共用する。
【0010】
図1は、実施の形態に係る携帯端末装置100を示す斜視図である。携帯端末装置100は、表示部102と、電源スイッチ104と、アンテナ106と、筐体108と、振動モータ110と、を備える。これら以外の構成は、説明を明瞭にするために図1では省略する。ユーザは電源スイッチ104をオンにして携帯端末装置100に電源を入れる。表示部102は、液晶パネルと、その上を覆うタッチパネル116(以降両者を総称してタッチパネル116と呼ぶ)と、を含む。ユーザは、そのタッチパネル116に表示されるボタン等に対応する部分を押し下げることで携帯端末装置100を操作する。タッチパネル116は、そのようなユーザからのタッチを受け付け、携帯端末装置100はユーザからのタッチに応じてソフトウエアプログラムを実行する。アンテナ106は、無線信号を送受信する。
【0011】
振動モータ110は、筐体108に対して固定され、携帯端末装置100に着信があった際や、ユーザがタッチパネル116にタッチする際には振動モータ110が振動することで筐体108が振動する。この振動によりユーザは、Eメールの着信やタッチパネル116へのタッチなどの複数種類の入力動作のうちの1つの入力動作が行われたことを感じ取れる。
【0012】
図2は、携帯端末装置100の機能ブロック図である。ここに示す各ブロックは、ハードウェア的には、集積回路をはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0013】
携帯端末装置100は、受付部112と、制御部114と、タッチパネル116と、タッチ入力部117と、アンテナ106に接続された通信部118と、処理部150と、表示制御部152と、振動モータ110と、を含む。
受付部112は、着信感知部119と、タッチ感知部120と、を含み、携帯端末装置100への着信による入力動作またはユーザによるタッチパネル116へのタッチによる入力動作を受け付ける。
【0014】
制御部114は、着信制御部122と、振動期間設定部124と、電圧生成部126と、第1スイッチ128と、振動制御部130と、第2スイッチ132と、を含む。制御部114は、受付部112によってユーザによるタッチパネル116へのタッチが受け付けられると、タッチパネル操作振動モードを選択する。Eメールの着信が受け付けられると、着信振動モードを選択する。制御部114は、タッチパネル操作振動モードを選択した場合、第1周波数fを有する駆動電圧によって振動モータ110を振動せしめる。また、制御部114は、着信振動モードを選択した場合、第2周波数fを有する駆動電圧によって振動モータ110を振動せしめる。
【0015】
以下タッチパネル116へのタッチがある場合を説明し、次にEメールの着信がある場合を説明し、その次に他の処理を実行する場合を説明する。
【0016】
タッチ入力部117は、ユーザによるタッチパネル116へのタッチを受け付け、それを電気的な信号としてタッチ感知部120へ出力する。これは既知の手段によって達成される。タッチ感知部120は、ユーザのタッチに対応する電気的な信号をタッチ入力部117から受け取る。そしてタッチ感知部120は、振動期間設定部124に対して、1回のタッチの感知に対して1つパルスが生成されるタッチ感知信号S1を出力する。
【0017】
振動期間設定部124は、タッチ感知信号S1または後述する着信振動開始信号S8に現れるパルスを検出し、第2スイッチ132へ第2制御信号S2を出力して第2スイッチ132のオンオフを制御する。タッチ感知信号S1および着信振動開始信号S8のいずれにもパルスが検出されない状態では、第2制御信号S2はローレベルとなる。振動期間設定部124がタッチ感知信号S1にパルスを検出すると、振動期間設定部124は所定のタッチ振動期間T1の間にわたって第2制御信号S2をハイレベルとする。
タッチ振動期間T1は、ユーザが振動を感知するために必要な範囲で設定される。
【0018】
電圧生成部126は、タッチパネル操作振動モードに対応する一定の第1電圧V1、および着信振動モードに対応する一定の第2電圧V2を生成する。電圧生成部126は、第1スイッチ128の第1端子134に第1電圧V1を印加する。また、第1スイッチ128の第2端子136に第2電圧V2を印加する。
【0019】
第1スイッチ128は、第1端子134と、第2端子136と、第3端子138と、を有する。第1端子134には電圧生成部126によって第1電圧V1が印加され、第2端子136には第2電圧V2が印加される。第3端子138は振動制御部130に接続される。第1スイッチ128は、後述する第1制御信号S7がローレベルのとき、第1端子134と第3端子138とを接続し、第1制御信号S7がハイレベルのとき、第2端子136と第3端子138とを接続する。したがってタッチパネル116の操作時は、詳細は後述するが、Eメールの着信がない限り第3端子138は第1端子134に接続されているので振動制御部130には第1電圧V1が供給される。
【0020】
振動制御部130は、第1スイッチ128の第3端子138と接続され、そこに現れるモード電圧信号S3を受信する。そして第2スイッチ132へ原駆動電圧S4を供給する。モード電圧信号S3は上述の説明より、第1電圧V1もしくは第2電圧V2となる。振動制御部130はそのそれぞれの電圧値に応じて原駆動電圧S4の周波数を変える。つまり、モード電圧信号S3が第1電圧V1であるときは、原駆動電圧S4の周波数を第1周波数fとし、モード電圧信号S3が第2電圧V2であるときは、原駆動電圧S4の周波数を第2周波数fとする。ここでその理由は後述するが、f<fに設定される。原駆動電圧S4の振幅は一定のまま維持する。
【0021】
第2スイッチ132は、振動制御部130から供給される原駆動電圧S4を、後述する振動モータ110に供給するためのスイッチである。第2制御信号S2がローレベルのときはオフとなる。第2制御信号S2がハイレベルのときはオンとなり、振動モータ110の入力端16に駆動電圧S5が供給される。
【0022】
次にEメールの着信がある場合について説明する。通信部118は、アンテナ106を介して無線信号を送受信し、図示しない外部の無線装置と通信する。ここで通信部118は、無線LAN(Local Area Network)システムや携帯電話システムに対応するが、それらには公知の技術が使用されればよいので説明を省略する。通信部118は、図示しない外部の無線装置から、Eメールの着信通知を受信すると、着信感知部119に対してEメールを着信したことを知らせる電気的な信号を出力する。着信感知部119は、その電気的な信号を受け付けると、着信制御部122および振動期間設定部124に対して、着信を受信してから一定期間T4に亘ってハイレベルとなる着信信号S6を出力する。
【0023】
着信制御部122は、着信感知部119から着信信号S6を受信し、第1スイッチ128へ第1制御信号S7を出力してその接続を制御する。着信信号S6がローレベルである、つまりEメールの着信が無い状態では、第1制御信号S7はローレベルとなる。Eメールの着信があり、着信信号S6がハイレベルとなると、第1制御信号S7もハイレベルとなる。そして着信信号S6がハイレベルである間、つまり着信を受信してから一定期間に亘って第1制御信号S7もまたハイレベルとなる。
また、着信制御部122は振動期間設定部124に対して、着信信号S6がハイレベルとなる際の立ち上がりエッジから所定の遅延時間τだけ経過した後にパルスが生成される着信振動開始信号S8を出力する。
この所定の遅延時間τは、第1スイッチ128および振動制御部130における処理時間を考慮して決定される。
【0024】
振動期間設定部124に関して、着信信号S6がハイレベルとなり、振動期間設定部124が着信振動開始信号S8にパルスを検出すると、振動期間設定部124は所定の着信振動周期T3で第2制御信号S2を所定の着信振動期間T2の間ハイレベルとする。ここでは当然T4>T3>T2である。そして着信を受信してから一定期間T4後に着信信号S6がローレベルとなると、第2制御信号S2を周期的にハイレベルとする動作を終了する。
なお、タッチ感知信号S1および着信振動開始信号S8にほぼ同時にパルスが検出された場合は、振動期間設定部124はタッチ感知信号S1にパルスが検出された場合の処理を優先する。
着信振動期間T2および着信振動周期T3は、ユーザが着信を振動によって感知できるように選択される。
【0025】
Eメールの着信時の電圧生成部126、第1スイッチ128、振動制御部130および第2スイッチ132の動作はタッチパネル116へのタッチがある場合に説明した通りである。なお、第1スイッチ128では第1制御信号S7がハイレベルとなる間、第2端子136と第3端子138とが接続されるので、その間モード電圧信号S3は第1電圧V1から第2電圧V2に切り替わる。
【0026】
振動モータ110は、その入力端16に入力される駆動電圧S5によって振動する。説明は後述するが、駆動電圧S5の周波数が第2周波数fの場合の振動の度合いは、周波数が第1周波数fの場合の振動の度合いよりも大きい。したがってEメールの着信時における振動の度合いの方が、タッチパネル操作時の振動の度合いよりも大きくなる。なお、振動の度合いとは、例えばユーザが体感する振動の強さであり、具体的には、振動の振幅、エネルギー、周期などによって表される。以下では説明を明瞭にするため、振動の振幅に着目して説明する。
【0027】
次に振動以外の他の処理を実行する場合について説明する。通信部118およびタッチ入力部117は、処理部150に接続される。処理部150は、タッチパネル116へのタッチの情報をタッチ入力部117から取得し、対応するソフトウエアプログラムを実行する。例えば、処理部150は、ユーザのタッチによって指定された項目に対応した処理を実行する。また、処理部150は、通信部118からEメールの着信通知を受け取ると、Eメールの取得を指示する。処理部150は表示制御部152にタッチパネル116に表示すべき情報を指示し、表示制御部152は当該情報をタッチパネル116に表示せしめる。
【0028】
図3は、振動モータ110の上面図である。図3ではカバー70を取り外した状態を示す。図4は、図3のA−A線断面図である。以下では、図3および図4を使用しながら振動モータ110の構成を説明する。振動モータ110は、コイル12と総称される第1の平面コイル12aおよび第2の平面コイル12bを有する積層基板10と、可動部を構成する永久磁石20と、ガイド枠30と、第1の板バネ42および第2の板バネ44と、図3では図示しないカバー70と、を備える。以下、積層基板10の面のうち永久磁石20が搭載されている面を上面とし、その反対側の面を下面とする。また、説明の便宜上、積層基板10の下面が地表を向いており、重力は下方向に働く場合について考える。
【0029】
積層基板10は、第1絶縁樹脂層52と、コイル12が形成される配線層54と、第2絶縁樹脂層56とを上面側からこの順番に積層してなる基板である。第1絶縁樹脂層52は、レジスト材料等によって形成される絶縁層である。配線層54は、第1の平面コイル12aおよび第2の平面コイル12bを含む。第1絶縁樹脂層52および第2絶縁樹脂層56は、配線層54に含まれる第1の平面コイル12aおよび第2の平面コイル12bを外部から絶縁する。
【0030】
第1の平面コイル12aおよび第2の平面コイル12bはどちらも平らな渦巻状のコイルであり、そのコイルの面が積層基板10の上面10aに対して平行となるように配列される。ここで、平行とは、互いに平行な状態だけでなく、永久磁石20が移動する際の妨げとならない程度に平行な状態からずれた状態を含んでいる。第1の平面コイル12aの渦巻の中心に当たる一端は第1接続配線62と接続され、第1の平面コイル12aの渦巻の外側に当たる一端は第2接続配線64と接続される。第2の平面コイル12bの渦巻の中心に当たる一端は第4接続配線68と接続され、第2の平面コイル12bの渦巻の外側に当たる一端は第3接続配線66と接続される。第1の平面コイル12aおよび第2の平面コイル12bは、永久磁石20の移動方向に沿って互いに離間して配列される。
【0031】
第1接続配線62および第4接続配線68は携帯端末装置100内の配線を通じて接地される。第2接続配線64と第3接続配線66は共に入力端16に接続される。入力端16は制御部114の第2スイッチ132に接続され、駆動電圧S5が印加される。第1の平面コイル12aの渦巻の巻回の方向と、第2の平面コイル12bの渦巻の巻回の方向は異なるように形成される。このようなコイル12の構成では、入力端16から駆動電流を流すと、第1の平面コイル12aおよび第2の平面コイル12bには互いに逆方向の磁束が発生する。そしてそれぞれのコイル12に発生する磁束の向きは、駆動電流の極性が反転すると反転する。その結果、駆動電流の極性の時間的変動に応じて、それぞれのコイル12によって発生される磁束の向きも時間的に変動する。
【0032】
永久磁石20は、フェライトやネオジウムなどの強磁性材料からなる直径10mm、厚さ1.4mmの円板形状に形成されている。また、永久磁石20は、その厚み方向に着磁されており、積層基板10の上面10aと対向した磁極面20NがN極、磁極面20Nと反対側の磁極面20SがS極となっている。そして、永久磁石20は、コイル12のそれぞれとN極との間の磁力が引力と斥力との間で切り替わることによって積層基板10の上面10a側をコイル12の配列方向(矢印A1または矢印A2の方向)に沿って移動する。
【0033】
ガイド枠30は、永久磁石20およびコイル12の配列を囲むように積層基板10の上面10a上に設けられる。ガイド枠30は、一定の幅を持つ長方形の枠であり、アルミニウムやプラスチックなどの非磁性素材によって形成される。ガイド枠30の内周面30aの短手方向の長さは10.5mmであり、永久磁石20の直径よりも僅かに大きくなるように形成される。また、その内周面30aの長手方向の長さは13.5mmであり、永久磁石20と内周面30aとの間の距離に余裕を持たせるように形成される。
【0034】
ガイド枠30の一方の短辺側に第1の板バネ42が、他方の短辺側に第2の板バネ44が設けられる。各板バネは、PET(PolyEthylene Terephthalate)などの非磁性材料からなる厚さ350μm、長さ10mm、幅1.2mmのバネである。第1の板バネ42および第2の板バネ44のそれぞれの一端はガイド枠30の内部に埋設される。そして、第1の板バネ42および第2の板バネ44のそれぞれの他端により、永久磁石20をその側面から挟み込んでいる。このようにすることで、各板バネは、それぞれ、ガイド枠30への取り付け部分を支持点として撓み変形可能になり、永久磁石20を互いに他方の板バネ側に付勢する機能を有する。各板バネは、静止状態(コイル12に電流を流していない状態)においては永久磁石20をガイド枠30の長手方向略中央部に保持する。そして、積層基板10の上面10a上において永久磁石20が往復移動する際、第1の板バネ42および第2の板バネ44は交互に永久磁石20によって押される。これによりこれらの板バネからガイド枠30に圧力が伝達される。その結果、ガイド枠30およびそれを含む振動モータ110全体が振動する。
ガイド枠30の上面30bにはカバー70が接着され、永久磁石20の飛び出しを防止する。
【0035】
このような振動モータ110を用いれば、振動源としての振動モータの薄型化を図ることができるので、携帯端末装置100の更なる薄型化に貢献する。
【0036】
ここで振動モータ110の振動の振幅と駆動電圧の周波数との関係について説明する。振動モータ110の振動の振幅は振動モータ110の共振現象を用いて調節される。一般にモータに同じ振幅の駆動電圧を供給しても、その周波数によってモータの振動の振幅に違いがあることが知られている。特にその振動の振幅が極大値をとるような駆動電圧の周波数が1つ若しくは複数存在することが知られており、このような現象はモータの共振と呼ばれる。その振動の振幅が極大値をとるような駆動電圧の周波数は共振周波数fと呼ばれる。
【0037】
図5は、振動モータ110の共振の様子を示す模式的なグラフである。横軸は駆動電圧の周波数を示し、縦軸は振動モータ110の振動の振幅を示す。この図5では、いずれの周波数においても駆動電圧の振幅は一定である場合を考える。上述のごとく、振動モータ110の振動の振幅は、共振周波数fにピークを有する。振動制御部130は、タッチパネル116へのユーザのタッチに対応する第1周波数fを、図5に示されるように、共振周波数fから外れるように設定する。また、着信に対応する第2周波数fを、共振周波数fに設定する。または振動モータ110の振動の振幅のピークの頂上付近に対応するように設定する。
【0038】
以上のように構成された携帯端末装置100の動作について説明する。図6は、携帯端末装置100における処理を示すフローチャートである。受付部112は、ユーザによるタッチパネル116への入力やEメールの着信などによる入力動作を受け付ける(S202)。受付部112はその入力動作が、タッチによるものであるか、着信によるものであるか判別する(S204)。それがタッチによるものである場合(S204のタッチ)、制御部114は第2スイッチ132をオンにする(S206)。振動モータ110は振幅Vd、第1周波数fの駆動電圧S5で駆動される(S208)。ここで図5より第1周波数fでの振動モータ110の振動の振幅は、Eメールの着信時の第2周波数fでの振動の振幅よりも小さい。制御部114はタッチ振動期間T1経過後第2スイッチ132をオフにする(S210)。
【0039】
受付部112で受け付けられた入力動作が着信によるものである場合(S204の着信)、制御部114は第1スイッチ128を第2端子136と第3端子138が接続されるように切り替える(S212)。振動制御部130に入力されるモード電圧信号S3は第1電圧V1から第2電圧V2に切り替わる(S214)。振動制御部130は出力する原駆動電圧S4の周波数を第1周波数fから第2周波数fへ切り替える(S216)。着信を感知してから遅延時間τだけ経過した後に、制御部114は第2スイッチ132をオンにする(S218)。振動モータ110は振幅Vd、第1周波数fの駆動電圧S5で駆動される(S220)。ここで図5より第2周波数fは振動モータ110の共振周波数fに設定されるので、タッチパネル116へのタッチ時の振動モータ110の振動よりもより振幅の大きい、ユーザが感知しやすい振動となる。
【0040】
制御部114は着信振動期間T2経過後第2スイッチ132をオフにする(S222)。制御部114は第2スイッチ132のオンオフを繰り返す(S224)。この際、オンオフの繰り返しの周期は着信振動周期T3である。制御部114は、着信を受信してから一定期間T4後に第2スイッチ132をオフとしてこのオンオフの繰り返しを終了し、第1スイッチ128を第1端子134と第3端子138とが接続されるように切り替える(S226)。振動制御部130に入力されるモード電圧信号S3は第2電圧V2から第1電圧V1に切り替わる(S228)。振動制御部130は出力する原駆動電圧S4の周波数を第2周波数fから第1周波数fへ切り替える(S230)。こうして制御部114はタッチパネル116のタッチ待ち受け状態に復帰する。
【0041】
次に振動モータ110の動作についてさらに説明する。第2スイッチ132がオフの場合、第1の平面コイル12aおよび第2の平面コイル12bには電圧は印加されず、第1の板バネ42および第2の板バネ44によって挟持された永久磁石20は、ガイド枠30の長手方向略中央部に図3のように静止する。
【0042】
第2スイッチ132がオンの場合、入力端16から、振幅Vdを有し第1周波数fもしくは第2周波数fでその極性が反転する駆動電圧S5が供給される。すると第1の平面コイル12aと第2の平面コイル12bには、そのコイル面に垂直な方向、つまり積層基板10の上面10aに垂直な方向に磁束が発生する。ここで第1の平面コイル12aに発生する磁束の向きは第2の平面コイル12bに発生する磁束の向きと逆である。
【0043】
入力端16から第1接続配線62および第4接続配線68に向けて駆動電流が流れる場合は、第1の平面コイル12aの上面はS極、第2の平面コイル12bの上面はN極となる。永久磁石20の積層基板10に対向する面はN極であるので、永久磁石20には第1の平面コイル12aによって磁気引力が、第2の平面コイル12bによって磁気斥力が加えられる。すると永久磁石20には、積層基板10の上面10a上を、ガイド枠30の長手方向に沿って、第1の板バネ42を押す形で第1の平面コイル12a側へ移動せしめる力が働く。駆動電流の向きが反転した場合は、第1の平面コイル12aの上面はN極、第2の平面コイル12bの上面はS極となる。したがって、永久磁石20には、積層基板10の上面10a上を、ガイド枠30の長手方向に沿って、第2の板バネ44を押す形で第2の平面コイル12b側へ移動せしめる力が働く。このようにして、駆動電圧S5の反転とほぼ同じ周波数で永久磁石20がその周りに対して往復移動する。永久磁石20の質量はその周りの質量に対して無視できないので、永久磁石20の往復移動に合わせて、振動モータ110全体も振動する。
【0044】
本実施の形態に係る携帯端末装置100では、例えば以下の効果を得ることができる。
【0045】
(1)制御部114は、受付部112がEメールの着信による入力動作を受け付けた場合とタッチパネル操作による入力動作を受け付けた場合とで同じ振動モータ110を用いる構成としている。したがって、振動のモード毎に別々のモータを用意する必要が無く、携帯端末装置100内で振動発生用のモータが占める体積を減らすことができる。また、制御用の回路構成が簡単となると共に、携帯端末装置100の小型化および部品点数を削減できる。
【0046】
(2)タッチパネル操作等の手入力時の振動の振幅が、Eメールの着信時の振動の振幅よりも小さくなる構成としている。これにより、タッチパネル操作時には振動モータ110が所定の振動の振幅に達するのに要する時間である応答速度を高めることができると同時に、Eメールの着信時にはより大きな振動の振幅でより確実にユーザにEメールの着信を知らせることができる。また、タッチパネル操作時等の手入力時は、着信時ほど大きな振動が発生しないので、入力操作を行い易い。したがって、携帯端末装置100の操作性が向上し、延いては商品的価値が高くなる。
【0047】
(3)モータの共振現象を利用し、駆動電圧の周波数を変えるだけで、駆動電圧の振幅は一定のまま振動の振幅を変更する構成としている。したがって、より簡易な回路で所望の振動制御を実現できる。
【0048】
(4)振動制御部130は、受付部112が入力動作を待ち受けている状態では、タッチパネル操作時の振動のモードに対応する駆動電圧(Vd、f)を第2スイッチ132に出力する。したがって、タッチパネルへのタッチに対して携帯端末装置100を振動させる際、第2スイッチ132をオンにするだけでよい。これにより反応速度が早く操作性の高い携帯端末装置100が実現できる。
【0049】
(5)タッチパネル116へのタッチの受け付けと着信の受け付けとがほぼ同時に起こった場合、携帯端末装置100はタッチの受け付けに基づく振動モータの駆動を優先する。したがって、文字入力などのタッチパネル操作中に、タッチ感覚が着信信号で中断されることがなくなるので、タッチパネル操作を違和感なく続行させることができる。
【0050】
(6)着信制御部122において、遅延時間τは、第1スイッチ128および振動制御部130における処理時間を考慮して決定される。これにより、振動制御部130がEメールの着信に対応する第2周波数fの駆動電圧を生成するタイミングと、振動期間設定部124が第2スイッチ132をオンにするタイミングとを調整することができる。なお、この所定の遅延時間τを、着信制御部122が着信信号S6の立ち上がりエッジを検出してから、振動制御部130がEメールの着信に対応する第2周波数fの駆動電圧の生成を完了するまでの時間よりも長く設定してもよい。この場合、振動制御部130がEメールの着信に対応する第2周波数fの駆動電圧を生成する前に、振動期間設定部124が第2スイッチ132をオンにすることを防ぐことができる。
【0051】
(7)携帯端末装置100は、着信時の振動の振幅(度合い)とタッチパネル操作時の振動の振幅とを異ならせているので、使用者にとって、どのような操作を行っているのか判別しやすく、操作性に優れ商品的価値が高い。
【0052】
以上、実施の形態に係る携帯端末装置100の構成と動作について説明した。これらの実施の形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、また、そうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0053】
本実施の形態では振動モータ110を駆動する駆動電圧の振幅を一定とし、その周波数を変えることで振動の振幅を調節する場合について説明したが、これに限られない。例えば、振動モータ110に供給する電力を、電圧、電流などを変えることで調節してもよい。このように様々なバリエーションの制御形態が可能である。
【0054】
本実施の形態ではタッチ感知部120はユーザのタッチパネル116へのタッチに対してパルスをタッチ感知信号S1に生成し、振動期間設定部124はタッチ感知信号S1にパルスを検知すると所定のタッチ振動期間T1だけ第2制御信号S2をハイレベルとする場合について説明したが、これに限られない。例えば、ユーザがタッチしている間だけ継続して振動モータ110を振動させる場合、タッチ感知部120はタッチを感知している間継続してタッチ感知信号S1をハイレベルとする。そして振動期間設定部124はタッチ感知信号S1がハイレベルである間第2制御信号S2をハイレベルとしてもよい。この場合、ユーザがタッチパネルに触れた瞬間に振動が発生し、タッチパネルから指を離した瞬間に振動が停止する。したがって、より操作性の高い携帯端末装置100が実現される。
【0055】
本実施の形態では携帯端末装置100はタッチパネル操作振動モードと着信振動モードの2つのモードを備える場合について説明したが、これに限られず、その他の振動モードが設定されてもよい。この際、電圧生成部126および第1スイッチ128によって第1電圧V1および第2電圧V2以外の第3電圧V3を選択可能とする構成とすれば、簡易にそのような他の振動モードを設定できる。さらには、タッチパネル操作振動モードにおける振動の振幅が最小となるように設定されてもよい。この場合、より即応性の求められるタッチ動作に対して反応速度を高めることができるので、操作性の高い携帯端末装置が実現される。
【0056】
以上、実施の形態にもとづき本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎないことはいうまでもなく、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】実施の形態に係る携帯端末装置を示す斜視図である。
【図2】図1の携帯端末装置の機能ブロック図である。
【図3】カバーを取り外した状態での図2の振動モータの上面図である。
【図4】図3のA−A線断面図である
【図5】図2の振動モータの共振の様子を示す模式的なグラフである。
【図6】携帯端末装置における処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0058】
100 携帯端末装置、 102 表示部、 104 電源スイッチ、 106 アンテナ、 108 筐体、 110 振動モータ、 112 受付部、 114 制御部、 116 タッチパネル、 117 タッチ入力部、 118 通信部、 119 着信感知部、 120 タッチ感知部、 122 着信制御部、 124 振動期間設定部、 126 電圧生成部、 128 第1スイッチ、 130 振動制御部、 132 第2スイッチ、 10 積層基板、 12 コイル、 20 永久磁石、 30 ガイド枠、 42 第1の板バネ、 44 第2の板バネ、 70 カバー、 S1 タッチ感知信号、 S2 第2制御信号、 S3 モード電圧信号、 S4 原駆動電圧、 S5 駆動電圧、 S6 着信信号、 S7 第1制御信号、 S8 着信振動開始信号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動源となる振動モータと、
第1の入力動作と第2の入力動作とを受け付ける受付部と、
前記受付部が前記第1の入力動作を受け付けた場合と前記第2の入力動作を受け付けた場合とで、前記振動モータの振動の度合いが異なるよう前記振動モータの駆動を制御する制御部とを具備したことを特徴とする携帯端末装置。
【請求項2】
前記第1の入力動作はユーザによる手入力動作であり、前記第2の入力動作は前記手入力動作以外の動作であり、前記制御部は、前記第1の入力動作を受け付けた場合の前記振動モータの振動の度合いが、前記第2の入力動作を受け付けた場合の前記振動モータの振動の度合いよりも小さくなるように前記振動モータの駆動を制御することを特徴とする請求項1に記載の携帯端末装置。
【請求項3】
タッチパネルからのタッチを受け付ける入力部と、外部からの着信を受け付ける通信部とを更に備え、
前記第1の入力動作は前記入力部からの入力動作であり、前記第2の入力動作は前記通信部からの入力動作であることを特徴とする請求項2に記載の携帯端末装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1の入力動作を受け付けた場合の前記振動モータの制御を、前記第2の入力動作を受け付けた場合の前記振動モータの制御よりも優先することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の携帯端末装置。
【請求項5】
前記制御部は、入力動作を待ち受ける状態においては、前記第1の入力動作を受け付けた場合の振動の度合いで前記振動モータを駆動できるように設定されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の携帯端末装置。
【請求項6】
前記振動モータは、
コイルを有する基板と、
磁極を有し、前記コイルの配列方向に沿って移動する可動部と、
前記可動部を往復移動させる移動手段と、を含み、
前記制御部は、前記受付部が前記第1の入力動作を受け付けた場合と前記第2の入力動作を受け付けた場合とで、前記振動モータの振動の度合いが異なるよう前記可動部の往復移動を制御することを特徴とする請求項1に記載の携帯端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−249857(P2011−249857A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−230955(P2008−230955)
【出願日】平成20年9月9日(2008.9.9)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】