説明

携帯端末

【課題】 小型化,薄型化を犠牲にすることなく,イヤーピース部における使用者の耳介の対向位置によらず,出力音を安定して放出可能な携帯端末を提供する。
【解決手段】 表示部5及び受話スピーカ6を内蔵した筐体と,受話スピーカ6からの出力音を聞き取るためのイヤーピース部20と,受話スピーカ6からイヤーピース部20に出力音を導く第1の放音部8及び第2の放音部9と,第1の放音部8と第2の放音部9とを連通する導音孔26と,表示部5を保護するスクリーン12とを備えた携帯端末であって,第1の放音部8は,受話スピーカ6における出力音主発生面6aと対向する位置に形成され,第2の放音部9は,受話スピーカ6における出力音主発生面6aと対向する位置の隣接部に形成され,導音孔26は、第1の放音部8と第2の放音部9を繋ぐように筐体上に形成された溝部23をスクリーン12が被覆することにより形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機,PHS(Personal Handyphon System),その他の情報携帯端末等の各種携帯端末に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機は,一般に筐体内部に受話スピーカが収容され,受話スピーカの収容箇所から外部に連通する貫通孔が形成されている。そして,通話時には,使用者は耳を上記貫通孔にあてがい,受話スピーカが発する出力音を上記貫通孔を通じて傍聴して通話を行う。上記貫通孔の構造については,以下のようなものが提案されている。
【0003】
第1の従来例(特許文献1)として,イヤーピース部を筐体から突出させる膨出構造とし,耳介を対向させたときに耳孔に向かう方向に設けられた第1の貫通孔と,耳孔に対応しない外側空間に向かって解放される第2の貫通孔(プレリーク部)とを設ける例が開示されている。当該文献の技術によれば,イヤーピース部に適切に音漏れを生じさせるプレリーク部を設けているので,イヤーピース部と耳との間の隙間が異なっても,その影響を緩和することができる旨が記載されている。
【0004】
第2の従来例(特許文献2)として,受話スピーカからイヤーピース部に貫通する貫通孔を備え,この貫通孔の開口部から筐体の端部に至る溝が形成されている折りたたみ式携帯電話機の例が開示されている。当該文献の技術によれば,リンガーの機能を兼ね備えさせることができ,貫通孔の開口部から筐体の端部に至る溝を形成することにより適切な音漏れを生じさせ,音質の安定化を図ることができる旨が記載されている。
【0005】
第3の従来例(特許文献3)として,受話スピーカ(音源)の前方向の筐体に構成された第1の貫通孔と,受話スピーカの前方向以外の面からの音声を外部に導出する音声導出構造と,これを筐体外部に放出するように設けられた第2の貫通孔とを備え,2方向の面から発生した音声をそれぞれ外部に放出する例が開示されている。当該文献の技術によれば,受話スピーカの電力を大きくしたり,受話スピーカに印加する電圧を上げることなく,受話スピーカからの音声を効率よく筐体外部へ放出し,音声の音圧を高めることができる旨が記載されている。
【特許文献1】特開平10−304036号公報
【特許文献2】特開2000−244618号公報
【特許文献3】特開2001−230841号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで,使用者が通話のためにイヤーピース部に耳をあてがう際に,上記貫通孔を使用者の耳の枠体部若しくは耳たぶ等(以降,単に「耳の枠体部等」という)により塞いでしまう場合がある。かかる場合,出力音量が著しく低下してしまうという問題が生じる。この問題を解決する方法として,受話スピーカからの貫通孔を複数設ける手段が考えられる。また,受話スピーカと対向する貫通孔の形成領域を大きくすべく,受話スピーカ自体を大きくすることが考えられる。
【0007】
しかしながら,昨今,携帯電話機等に代表される携帯端末の小型化への要求は著しく,これらに搭載する電子部品の小型化が強く要求されている。受話スピーカについても例外ではなく,小型化が強く要求されている。このため,受話スピーカを大きくすることは困難である。また,小型化された受話スピーカにおいて,貫通孔を複数設けたとしても,これらの複数の貫通孔のすべてを耳の枠体部等により塞いでしまう恐れがある。
【0008】
さらに,近時においては,カメラと携帯電話機との複合機能を備えたカメラ付携帯電話機が普及してきている。例えば,電話機本体の正面にCCD(Charge Coupled Device)カメラと液晶画面とが配置され,CCDカメラで使用者の顔を撮影し,この画像を相手側に送信することができる技術が提案されている。また,使用者が撮影した動画を通話相手に送付するW−CDMA方式(Wideband Code Division Multiple Access)の携帯電話機も提案されている。SDカード等の記憶媒体を搭載した携帯電話機の普及に伴い,携帯電話機に搭載されるカメラの性能は飛躍的に向上してきた。画素数においては,100万画素を超えて200万画素にもなり,オートフォーカス機能を持ったカメラを搭載した製品も市場に出できている。
【0009】
このような背景から,携帯電話機に搭載されるカメラは,携帯電話機の小型化への要求に反して大型化する傾向にある。それに伴って,従来筐体の中心付近に配置されていた受話用スピーカを,筐体の外側に配置せざるを得ない状況となっている。すなわち,従来イヤーピースの略中央部に対向配置されていた受話スピーカを,イヤーピース部の端部に配置せざるを獲ない状況となっている。かかる状況下においては,上記イヤーピース部に耳をあてがって通話する際,貫通孔を使用者の耳の枠体部等により塞いでしまい,出力音が使用者に十分な音量で届かない恐れが従来にも増して懸念される。
【0010】
本発明は、上記背景に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、小型化,薄型化を達成しつつ,イヤーピース部における使用者の耳介の対向位置によらず,出力音を安定して放出可能な携帯端末を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る携帯端末は,表示部及び受話スピーカを内蔵した筐体と,前記受話スピーカからの出力音を聞き取るためのイヤーピース部と,前記受話スピーカから前記イヤーピース部に出力音を導く第1の放音部及び第2の放音部と,前記第1の放音部と前記第2の放音部とを連通する導音孔と,前記表示部を保護するスクリーンとを備えた携帯端末であって,前記第1の放音部は,前記受話スピーカにおける出力音主発生面と対向する位置に形成され,前記第2の放音部は,前記受話スピーカにおける出力音主発生面と対向する位置の隣接部に形成され,前記導音孔は、前記第1の放音部と前記第2の放音部を繋ぐように前記筐体上に形成された溝部を前記スクリーンが被覆することにより形成されているものである。
【0012】
本発明に係る携帯端末によれば,受話スピーカの出力音主発生面と対向する位置の隣接部に第2の放音部を設けているので,出力音主発生面と対向する位置にある第1の放音部が仮に,使用者の耳介の枠体部等により塞がれてしまった場合であっても,使用者は,導音孔を介して第2の放音部より出力音を傍聴することができる。第1の放音部は、受話スピーカと対向する位置に、第2の放音部は、受話スピーカと対向する位置の隣接部に設けることにより、第1の放音部と第2の放音部をイヤーピース内で適切に離間させて配置させることができる。その結果,イヤーピース部への使用者の耳介の対向位置如何によらず,出力音を安定して放出可能な携帯端末を提供することができる。
【0013】
また,第2の放音部に導くための導音孔は,筐体表面に設けた溝に対してスクリーンを被覆することのみにより形成されているので,携帯電話機の厚みを変更せずに設置可能である。また,第2の放音部は,受話スピーカの対向面以外のところに設けているので,受話スピーカのさらなる小型化も可能である。さらに,第2の放音部を設けることにより,受話スピーカの形成可能位置の設計自由度も増加する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、小型化,薄型化を達成しつつ,イヤーピース部への使用者の耳介の対向位置如何によらず,出力音を安定して放出可能な携帯端末を提供することができるという優れた効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を適用した実施形態の一例について説明する。なお、本発明の趣旨に合致する限り、他の実施形態も本発明の範疇に属し得ることは言うまでもない。
【0016】
図1(a)及び図1(b)は、本実施形態に係る携帯端末たるカメラ機能付の折りたたみ式携帯電話機1の正背面外観図である。図1(a)は、表示部側筐体2の面と入力部側筐体3の面を開いた状態のディスプレイ側の外観図であり,図1(b)は,図1(a)の反対側からみた外観図である。図1(a)及び図1(b)に示すように、折りたたみ式携帯電話機1は、表示部側筐体2、入力部側筐体3、ヒンジ4、表示部5,受話スピーカ6,カメラ部7,第1の放音部8,第2の放音部9等を備えている。また,図示を省略するがバッテリー,着信メロディー等を鳴動するスピーカ,音声等を集音するためのマイク等も設けられている。
【0017】
表示部側筐体2と入力部側筐体3とは、ヒンジ4により回動可能に連結された構造となっており,ヒンジ4を回動させることにより,表示部側筐体2が入力部側筐体3に対して開閉されるようになっている。入力部側筐体3には,文字や数字,記号を入力するボタン,電源のON/OFFボタン等の操作部,回路基板,バッテリー等が備えられている。一方,表示部側筐体2には,表示部5,受話スピーカ6,カメラ部7等が備えられている。
【0018】
表示部5は,画像,電話番号等のデータ,各種メニュー,操作説明等の情報を表示する役割を担い,例えば,LCD(Liquid Clysatl Display)等により構成される。受話スピーカ6は,図1中の点線で示されている位置に実装されており,受話音声を鳴動する役割を担う。受話スピーカ6からの出力音は,第1の放音部8及び第2の放音部9から外部に開放される。本実施形態に係る音声出力方式は,リークトレラント方式を採用している。これについては,後述する。カメラ部7は,図1(b)の点線で示されている位置に配置されている。固体撮像素子(CCD等)と作動時に入力される光学系の画像信号を画像データとしてデジタル信号に変換する回路を備えている。
【0019】
図2は,本実施形態に係る折りたたみ式携帯電話機1の表示部側筐体2の分解斜視図である。同図に示すように,表示部側筐体2は,フロント筐体10,リア筐体11,スクリーン12,表示部フレーム13等の部材から構成されている。
【0020】
表示部フレーム13には,表示部5の他,受話スピーカ6及びカメラ部7が配設されている。受話スピーカ6及びカメラ部7のそれぞれは,ヒンジ4と係合する側の一辺と対向する一辺近傍に設けられている。カメラ部7は,その一辺近傍の略中央部に設けられ,受話スピーカ6は,カメラ部7の隣接部に並んで配設されている。カメラ部7には,オートフォーカス機能等が搭載され,受話スピーカ6に比して大きな面積を占有している。
また,これら受話スピーカ6とカメラ部7とは,図1(a)に示すようにイヤーピース部20(ここで,イヤーピース部とは,使用者が通話時に耳をあてがう領域をいう)と対向した位置に形成されている。カメラ部7は,このイヤーピース部20の略中心部に形成されている。表示部5は,カメラ部7及び受話スピーカ6の隣接部から,ヒンジ4と係合する側の一辺近傍までに亘って設けられている。
【0021】
フロント筐体10及びリア筐体11は,表示部フレーム13を挟持し,互いに勘合されて表示部側筐体2として機能する。勘合する方法としては,例えば図2に示すように,ビスにより固定する方法を挙げることができる。リア筐体11には,カメラレンズなどが備えられている。
【0022】
フロント筐体10は,第1の貫通孔21,第2の貫通孔22,溝部23,スクリーン貼付座面24,及び開口部25等を備えている。第1の貫通孔21は,フロント筐体10とリア筐体11とが表示部フレーム13を挟持したときに,表示部フレーム13上の受話スピーカ6と対向する位置に設けられている。また,第2の貫通孔22は,フロント筐体10とリア筐体11とが表示部フレーム13を挟持したときに,表示部フレーム13上のカメラ部7と対向する位置に設けられている。溝部23は,フロント筐体10の表面側に第1の貫通孔21と第2の貫通孔22を連通させるように形成されている。従って,溝部23は,フロント筐体10とリア筐体11とが表示部フレーム13を挟持したときには,受話スピーカ6からカメラ部7に亘る対向位置に配設されている。スクリーン貼付座面24は,両面テープを介してスクリーン12と固着する部分である。開口部25は,表示部5を視認可能にするために設けられている。
【0023】
スクリーン12は,フロント筐体10の表面を被覆して表示部5を保護する役割を担う。本実施形態においては,スクリーン12により表示部5の他,導音孔26が被覆されるように構成されている。スクリーン12は,第3の貫通孔31及び第4の貫通孔32を備えている。第3の貫通孔31及び第4の貫通孔32は,スクリーン12をフロント筐体10に被覆したときに,フロント筐体10に設けられた第1の貫通孔21及び第2の貫通孔22とそれぞれ重なって貫通孔が形成される位置に配設されている。スクリーン12の材質としては,表示部5により表示された画像を視認可能なように少なくとも表示部5と対向する領域は,透明性に優れた部材を用いることが好ましい。
【0024】
上記第1の放音部8は,フロント筐体10の第1の貫通孔21及びスクリーン12の第3の貫通孔31が一体となることにより形成せしめられる。また,上記第2の放音部9は,フロント筐体10の第2の貫通孔22,及びスクリーン12の第4の貫通孔34とが一体となることにより形成せしめられる。第1の放音部8及び第2の放音部9は,受話スピーカ6からの出力音を外部に放出するための役割を担う。第2の放音部9は,受話スピーカ6の実装方式であるリークトレラント方式を構成するためのリーク孔の役割を担っている。リークトレラント方式とは,受話スピーカと耳との間の空気漏れによる音響的な影響を小さくするために,通常分離されている出力音主発生面と出力音主発生面とは反対側の面(背面)とを音響的に結合させ,受話スピーカの音響出力インピーダンスを下げる方式を言う。本実施形態においては,イヤーピース部20に,出力音主発生面からの出力音を発生する放音部(第1の放音部8)と,出力音主発生面とは反対側の面からの出力音をリークさせるためのリーク部(第2の放音部9)とを備えている。
【0025】
導音孔26は,スクリーン12がフロント筐体10に被覆されることにより,フロント筐体10の溝部23の部分に形成せしめられる。導音孔26は,出力音を第1の放音部8と第2の放音部9とを連通させ,出力音主発生面からの出力音を第2の放音部からも放出可能とする役割を担っている。従って、第2の放音部9は、リーク孔の役割を担うとともに、出力音主発生面からの出力音も放出されるように構成されている。
【0026】
図3(a)及び図3(b)は,折りたたみ式携帯電話機1のイヤーピース部20に使用者が耳をあてがい,受話スピーカ6からの出力音を傍聴する様子を説明するための模式的断面図である。同図には,受話スピーカ6からの出力音の出方も模式的に図示している。
受話スピーカ6は,その周縁部に固設されたクッション16を介して,フロント筐体に突き当てられ実装されている。クッション16は,出力音主発生面6aからの出力音を漏らさないための役割,放音部等から水等が浸入した場合に,装置内部に侵入しないための役割を担う。また,受話スピーカ6とフロント筐体10との間には空間部17が設けられている。
【0027】
図3(a)は,イヤーピース部20に設けられた第1の放音部8及び第2の放音部9が,使用者の耳介により形成される内部空間に対向された状態を示している。受話スピーカ6の出力音主発生面6aから出力された出力音の大部分は,第1の放音部8を介して使用者の耳介に向かい,外耳道29を通って知覚される。一方,第2の放音部からは,出力音主発生面6aの反対側の背面(以降,「出力音副発生面6b」という)から出力された出力音が,第2の放音部9を介して放出される。また,受話スピーカ6の出力音主発生面6aから出力された出力音のごく一部が導音孔26を介して第2の放音部9から放出される。
【0028】
図3(b)は,第1の放音部8が,使用者の耳介の枠体部等により塞がれ,第2の放音部9が使用者の耳介により形成される内部空間に対向された状態を示している。この場合には,第1の放音部8が使用者の耳介により塞がれているので,第1の放音部8からはほとんど出力音が放出されない。その代わりに,受話スピーカ6の出力音主発生面6aから出力された出力音は,導音孔26を介して第2の放音部9から使用者の耳介に向かい,外耳道29を通って知覚される。これにより,使用者は,第1の放音部8を自らの耳介の枠体部等により塞いでしまった場合においても,十分な出力音を得ることができる。
【0029】
本実施形態によれば,第1の放音部8が,受話スピーカ6の対向面に,第2の放音部がカメラ部の対向面に設けられている。どちらか一方の放音部が耳介の枠体部等により塞がれてしまった場合であっても,他の一方の放音部により受話スピーカ6からの出力音を知覚することができる。本実施形態においては,イヤーピース部20の中心部に第2の放音部を設け,中心からずれた位置に第1の放音部8を設けているので,第1の放音部8が使用者の耳介の枠体等により塞がれてしまう可能性が高い。しかしながら,かかる場合であっても上記構成により,使用者は出力音を快適に傍聴することができる。また,出力音副発生面6bから出力される出力音を,イヤーピース部から受話できる構造(リークトレラント構造)としているので,高音質な出力音を提供することができる。
【0030】
また,導音孔26は,フロント筐体10に溝部23を設け,これに対してスクリーン12とを被覆させることにより形成するので,上記特許文献1に記載の携帯電話機のようにイヤーピース部を膨出させる必要がない。このため,フロント筐体10を薄くすることが可能となるとともに,携帯電話機の表面におけるデザインの制約がない。また,受話スピーカ6と対向する部分と隣接する位置に第2の放音部を設けているので,受話スピーカ6自体を大きくしたりする必要がなく,小型化を犠牲にする必要がない。受話スピーカ6と対向しない第2の放音部からも出力音主発生面からの出力音を傍聴可能なように構成しているので,受話スピーカの形成位置の自由度を上げることができる。このため,受話スピーカの配置を中心からずれた位置に配置せざるを得ないカメラ付のデジタル式携帯電話機や,W−CDMA方式の情報通信端末に特に好適に用いることができる。
【0031】
[変形例1]
次に,上記実施形態とは異なる変形例について説明する。なお,以降の説明において,上記実施形態と同一の要素部材は,同一の符号を付し,適宜その説明を省略する。
【0032】
本変形例に係る携帯電話機は,下記の点を除く基本的な構成,動作は上記実施形態と同様である。すなわち,上記実施形態においてはリークトレラント構造を採用していたが,本変形例ではリークトレラント構造を採用せず,イヤーピース部20において出力音主発生面側からの出力音のみを傍聴可能な構成になっている点が異なる。具体的には,上記実施形態に係る第2の放音部9は貫通孔により構成されていたが,本変形例に係る第2の放音部109は溝部により構成されている点が異なる。すなわち,上記実施形態に係る第2の放音部は,第2の貫通孔22と第4の貫通孔32とにより構成されていたが,本変形例に係る第2の放音部109は,第2の放音部形成用溝122と第4の貫通孔32とから構成されている。
【0033】
図4(a)及び図4(b)は,本変形例に係る受話スピーカ6の出力音を,使用者が傍聴する様子を説明するための模式的説明図である。図4(a)は,第1の放音部8及び第2の放音部109が,使用者の耳介により形成される内部空間に対向された状態を示している。受話スピーカ6の出力音主発生面6aから出力された出力音は,第1の放音部8を介して使用者の耳介に向かい,外耳道29を通って知覚される。また,受話スピーカ6の出力音主発生面6aから出力された出力音は,第1の放音部8と連通された導音孔26を介して第2の放音部109を介して使用者の耳介に向かい,外耳道29を通って出力音が知覚される。
【0034】
図4(b)は,第1の放音部8が,使用者の耳介の枠体部等により塞がれ,第2の放音部9が使用者の耳介により形成される内部空間に対向された状態を示している。この場合には,第1の放音部8が使用者の耳介により塞がれているので,受話スピーカ6の出力音主発生面6aから出力された出力音は,主として導音孔26及び第2の放音部109を介して,使用者の耳介に向かい,外耳道29を通って知覚されることになる。
【0035】
本変形例によれば,第1の放音部8が,受話スピーカ6の対向面に,第2の放音部109がカメラ部の対向面に設けられている。どちらか一方の放音部が耳介の枠体部等により塞がれてしまった場合であっても,他の一方の放音部により受話スピーカ6からの出力音を知覚することができる。本変形例においては,イヤーピース部20の中心部に第2の放音部109を設け,中心からずれた位置に第1の放音部8を設けているので,第1の放音部8が使用者の耳介の枠体等により塞がれてしまう可能性が高い。しかしながら,かかる場合であっても上記構成により,使用者は出力音を快適に傍聴することができる。
【0036】
上記実施形態及び上記変形例においては,第1の放音部8及び第2の放音部9(109)がそれぞれ,一つずつ配設された例について説明したが,これに限定されるものではなく,それぞれにおいて複数備えていてもよい。図5に示すように,例えば第2の放音部209として,貫通孔を3つ備えることができる。
【実施例】
【0037】
次に,本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが,本発明の範囲は,下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0038】
実施例に係る携帯電話機として,上記実施形態に係る携帯電話機1の受話スピーカ6の受話システムを用いた(図3参照)。すなわち,リークトレラント構造を採用し,受話スピーカ6と対向する第1の放音部8,受話スピーカの出力音副発生面から発生する出力音をリークさせる第2の放音部9をイヤーピース部20に設け,第1の放音部8と第2の放音部9とを導音孔26で連通させた。導音孔26は,深さ0.25mm,幅1.2mm,長さ7mmとした。一方,比較例に係る携帯電話機は,導音孔26を設けない以外は上記実施例と同様の構成とした。
【0039】
上記実施例及び比較例のそれぞれについて,受話スピーカから外部に出力される音圧周波数特性を測定した。測定は,図3(a)に示すように,イヤーピース部20に設けられた第1の放音部8及び第2の放音部9が,使用者の耳介により形成される内部空間に対向された状態と,図3(b)に示すように,第1の放音部8が,使用者の耳介の枠体部等により塞がれ,第2の放音部9が使用者の耳介により形成される内部空間に対向された状態を再現する条件下で行った。
【0040】
図6に,本実施例に係る携帯電話機の受話スピーカの音圧周波数特性を測定した結果を示す。同図は,周波数に対して,音圧をプロットしたものである。図6(a)は,第1の放音部8と第2の放音部9の両方が塞がれていない状態で測定した結果であり,図6(b)は,第1の放音部のみを塞いだ状態で測定した結果である。第1の放音部8が塞がれていない状態では,図6(a)に示すように,1kHzにおいて音圧が約103dBsplであった。一方,第1の放音部8を塞いだ場合には,図6(b)に示すように,1kHzにおいて音圧が約100dBsplであった。この結果より,第1の放音部8を塞いだ場合であっても,第1の放音部8及び第2の放音部9の両者を塞がない場合に比して低下する音圧は3dB程度であり,実用上特に問題とならないレベルであることを確認した。
【0041】
図7に,比較例に係る携帯電話機の受話スピーカの音圧周波数特性を実施例と同様の方法により測定した結果を示す。図7(a)は,第1の放音部と第2の放音部の両方が塞がれていない状態で測定した結果であり,図7(b)は,第1の放音部のみを塞いだ状態で測定した結果である。第1の放音部が塞がれていない状態では,図7(a)に示すように,1kHzにおいて音圧が約100dBsplであった。一方,第1の放音部を塞いだ場合には,図7(b)に示すように,1kHzにおいて音圧は約50dBsplとなった。これは,第1の放音部を塞いだ場合,第1の放音部及び第2の放音部をともに塞がない場合に比して50dBの音圧低下が起こることを示している。500Hzの周波数においては,およそ64dBの音圧低下が起こることが判明した。500Hzの周波数において第1の放音部を塞いだ状態の実際の音圧は,約36dBspl程度であり,使用者が無音であると感じる程度の出力音しか出ていなかった。
【0042】
本実施例によれば,第1の放音部を塞いだ場合であっても,音圧低下量を比較例に比して1/10以下に低減でき,実用レベルにおいて問題ない出力音を放出できることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】(a)(b)は,本実施形態に係る携帯電話機の外観図。
【図2】本実施形態に係る携帯電話機の分解斜視図。
【図3】(a)(b)は,本実施形態に係るイヤーピース部に使用者が耳をあてがい,受話スピーカからの出力音を傍聴する様子を説明するための模式的断面図。
【図4】(a)(b)は,変形例に係るイヤーピース部に使用者が耳をあてがい,受話スピーカからの出力音を傍聴する様子を説明するための模式的断面図。
【図5】第2の放音部を複数備える携帯電話機の外観図。
【図6】実施例に係る携帯電話機において,周波数に対して音圧をプロットした図。
【図7】比較例に係る携帯電話機において,周波数に対して音圧をプロットした図。
【符号の説明】
【0044】
1 折りたたみ式携帯電話機
2 表示部側筐体
3 入力部側筐体
4 ヒンジ
5 表示部
6 受話スピーカ
7 カメラ部
8 第1の放音部
9 第2の放音部
10 フロント筐体
11 リア筐体
12 スクリーン
13 表示部フレーム
16 クッション
17 空間部
20 イヤーピース部
21 第1の貫通孔
22 第2の貫通孔
23 溝
24 スクリーン貼付座面
25 開口部
26 導音孔
31 第3の貫通孔
32 第4の貫通孔
109 第2の放音部
122 第2の放音部形成用溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部及び受話スピーカを内蔵した筐体と,
前記受話スピーカからの出力音を聞き取るためのイヤーピース部と,
前記受話スピーカから前記イヤーピース部に出力音を導く第1の放音部及び第2の放音部と,
前記第1の放音部と前記第2の放音部とを連通する導音孔と,
前記表示部を保護するスクリーンとを備えた携帯端末であって,
前記第1の放音部は,前記受話スピーカにおける出力音主発生面と対向する位置に形成され,
前記第2の放音部は,前記受話スピーカにおける出力音主発生面と対向する位置の隣接部に形成され,
前記導音孔は、前記第1の放音部と前記第2の放音部を繋ぐように前記筐体上に形成された溝部を前記スクリーンが被覆することにより形成されている携帯端末。
【請求項2】
請求項1に記載の携帯端末において,
前記第2の放音部は,前記出力音主発生面から発生した出力音を外部に放出するとともに,前記受話スピーカの出力音主発生面以外の他の面から発生した出力音を外部に放出することを特徴とする携帯端末。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の携帯端末において,
前記第2の放音部は,前記イヤーピース部の略中央部にあることを特徴とする携帯端末。
【請求項4】
請求項1,2又は3に記載の携帯端末において,
前記第1の放音部は,貫通孔からなり,
前記第2の放音部は,貫通孔又は溝構造からなることを特徴とする携帯端末。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の携帯端末において,
前記第1の放音部,又は/及び前記第2の放音部は,複数あることを特徴とする携帯端末。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の携帯端末において,
前記筐体内には,カメラ部を備え,
前記イヤーピース部は,前記筐体内に内蔵された前記受話スピーカ及び前記カメラ部と対向し,
前記カメラ部が,前記イヤーピース部の略中央部に配置され,前記第2の放音部は,前記カメラ部と対向していることを特徴とする携帯端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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