説明

携帯端末

【課題】臨場感がある良質のステレオ音声を出力可能とするとともに、受話用のレシーバと各種の音声出力用のスピーカとの共用を可能とし、かつ、開閉状態の如何によらず、ハンドセット型、ハンズフリー型双方の通話が可能な折り畳み式またはスライド式の携帯端末を提供する。
【解決手段】通話相手からの受話用の音声を含め各種の音声を出力する二つのスピーカ音孔8、9を、上部筐体部5のディスプレイ11の実装面と同一の面上で、かつ、上部筐体部5の長手方向である上辺と下辺との近傍に配置するとともに、通話相手への送話用のマイク音孔4を下部筐体部6の下側面に配置する。折り畳み式の携帯端末の場合、上部筐体部5をヒンジ7を介して回転させ、スピーカ音孔8、9が筐体の外側に露出された状態のまま下部筐体部6上に重ねて閉じる。スピーカ音孔8、9のいずれかが通話相手からの音声を受話するレシーバとして機能させ、受話専用のレシーバを削除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、折り畳み式の携帯電話端末は、小型化、薄型化が進展するとともに、多機能化も進んでおり、例えば着信通知用の着信メロディ等のステレオ音声化など臨場感に富む良質な音場を形成するものが多数登場してきている。
【0003】
図4は、例えば特許文献1の特開2003−152837号公報「携帯電話機」に記載されている従来の折り畳み式の携帯電話端末の筐体構造におけるスピーカ、レシーバ、マイクの実装例を示す模式図であり、図4(A)は、開いた状態におけるスピーカ、レシーバ、マイクの実装構造を示し、図4(B)は、閉じた状態におけるスピーカ、レシーバ、マイクの実装構造を示している。
【0004】
図4に示すように、従来の折り畳み式の携帯電話端末は、ヒンジ7aを境として、ディスプレイ11が実装されている上部筐体部5と、操作キー12が実装されている下部筐体部6との二つの筐体部に大きく分かれており、図4(A)に示すように、ディスプレイ11が実装されている上部筐体部5をヒンジ7aを中心にして下部筐体部6から離間させるように回動させて開くことにより、ハンドセット状態で、任意に指定した通話相手との通話が可能であって、かつ、ディスプレイ11の表示内容の視認や操作キー12の操作が可能な形状Aの状態になり、一方、図4(B)に示すように、ディスプレイ11が実装されている上部筐体部5をヒンジ7aを中心にして下部筐体部6上に折り畳むように回動させて閉じることにより、携行用やハンズフリー通話用の形状Bの状態に移行することができる。
【0005】
なお、図4において、符号1は、内蔵されているレシーバのレシーバ音孔であり、上部筐体部5の内面側つまりディスプレイ11の実装面と同じ面に配置されており、該レシーバ音孔1の直下(筐体内部)には、受話用のレシーバ(図示していない)が実装され、通話相手からの信号を受話することができる。符号2、3は、ステレオ用の二つのスピーカの音孔であり、ステレオ効果を得るために、それぞれ、上部筐体部5の左右の側面に配置されており、該スピーカ音孔2、3それぞれの直下(筐体内部)には、ステレオ用のスピーカ(図示していない)が実装され、ステレオ音声を出力することができる。符号4は、内蔵されているマイクのマイク音孔であり、下部筐体部6の下側面に配置されており、該マイク音孔4の直下(筐体内部)には、通話用のマイク(図示していない)が実装され、通話相手に対する送話を行うことができる。
【0006】
図4(A)の形状Aのような開いた状態においては、通話しようとするユーザは、携帯電話端末の本体部分である下部筐体部6を把持して、上部筐体部5の上側に配置されているレシーバ音孔1を耳元近傍に持ってくると、下部筐体部6の下側面に配置されているマイク音孔4が、丁度、当該ユーザの口元近傍に位置することになり、ハンドセット状態で、通話相手との通話信号の送受信が可能になるとともに、スピーカ音孔2、3から着信音等のステレオ音声を聞くことも可能となる。
【0007】
一方、図4(B)の形状Bのような閉じた状態においては、例えば机等の上に置いたハンズフリーの状態で、下部筐体部6の下側面に配置されているマイク音孔4と上部筐体部5の左右の側面に配置されているスピーカ音孔2、3のいずれか一方または双方とを用いて送受話を行うことが可能になるとともに、スピーカ音孔2、3から着信音等を聞くことも可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−152837号公報(第2−3頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、図4に示すような従来の携帯電話端末の筐体構造においては、スピーカ音孔2、3が、上部筐体部5の短辺側である左右の側面に配置されているため、次のような課題が生じている。
【0010】
(課題1)左右の二つのスピーカ間の間隔が狭く、左右の音声の分離性に問題があるため、ステレオ再生性能の向上を図ることが困難である。
【0011】
(課題2)スピーカ音孔2、3の向きが、上部筐体部5の左右側面の方向つまりディスプレイ11の画面と平行な方向に向いていて、二つのスピーカの鳴動音が、ディスプレイ11の画面に対して、垂直な方向ではなく、側面方向つまり平行な方向に放射されるため、ディスプレイ11の画面から音が出ているような迫力、臨場感を演出することができない。また、ディスプレイ11と対向して画面を見ているユーザにとって、スピーカ音孔2、3から出力される音量が低下して聞こえることになる。
【0012】
(課題3)また、スピーカ音孔2、3を受話用のレシーバ音孔1と兼用可能にしても、図4(A)のような開いた状態でハンドセット通話を行う際に、上部筐体部5の左右側面に配置されたスピーカ音孔2、3に耳を当てて通話を行うことは、安定性やユーザビリティの観点から現実的ではない。したがって、二つのスピーカとレシーバとの兼用は困難となるため、ステレオ音声出力用のスピーカ音孔2、3のスピーカのみならず、受話用のレシーバ音孔1のレシーバをも別途備えた音声出力手段の実装が不可避となる。
【0013】
(課題4)また、受話用のレシーバ音孔1が、上部筐体部5の内面側に配置されているため、図4(B)のような閉じた状態では、レシーバ音孔1は、上部筐体部5と下部筐体部6との間に挟みこまれて、筐体の外部に露出することなく、隠れてしまうので、ハンドセット型の通話に使用することができなく、閉じた状態ではハンドセット型の通話を行うことが困難である。
【0014】
本発明は、かくのごとき問題に鑑みてなされたものであり、折り畳み式またはスライド式の携帯端末であっても、臨場感がある良質のステレオ音声を出力することを可能とするとともに、受話用のレシーバと各種の音声出力用のスピーカとの共用を可能とし、かつ、開閉状態、スライド状態の如何によらず、ハンドセット型、ハンズフリー型の通話を可能にする携帯端末および携帯端末スピーカ実装方法を提供することを、その目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前述の課題を解決するため、本発明による携帯端末および携帯端末スピーカ実装方法は、次のような特徴的な構成を採用している。
【0016】
(1)ディスプレイが実装されている上部筐体部と操作キーが実装されている下部筐体部とを、任意の方向に回動自在なヒンジを介して開閉可能な状態で連結した筐体構造からなる携帯端末において、通話相手からの受話用の音声を含め各種の音声を出力することが可能な二つのスピーカのスピーカ音孔を、前記上部筐体部の前記ディスプレイの実装面と同一の面上であって、前記上部筐体部の長手方向である上辺と下辺との近傍に配置するとともに、通話相手への送話用のマイクのマイク音孔を、前記下部筐体部の下側面に配置する携帯端末。
【発明の効果】
【0017】
本発明の携帯端末および携帯端末スピーカ実装方法によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0018】
第1の効果は、一つ以上のスピーカ音孔をディスプレイ画面と同一面上に実装することにより、スピーカ鳴動音が、ディスプレイ画面から出ているような臨場感を演出することができる点にある。
【0019】
第2の効果は、着信音等を鳴動させる一つ以上のスピーカ音孔およびスピーカを受話用のレシーバ機能と兼用可能とするとともに、二つの筐体部の開閉状態、スライド移動状態など2つ以上の形状の如何を問わず、使用時においては、一つ以上の該スピーカ音孔を筐体の外側に露出させることを可能とすることにより、ハンドセット通話、ハンズフリー通話のいずれの通話であっても行うことができる点にある。
【0020】
第3の効果は、一つ以上のスピーカ音孔およびスピーカを備えることにより、ステレオもしくは多チャンネルのスピーカ再生性能を向上させることができる点にある。
【0021】
第4の効果は、一つ以上のスピーカ音孔(スピーカ)を備えることにより、通話中に着信があって、着信音を鳴動させる際に、当該通話で受話用のレシーバ機能として使用しているスピーカ音孔(スピーカ)以外のスピーカ音孔(スピーカ)を着信音鳴動用のスピーカ音孔(スピーカ)として使用することが可能であり、通話中の状態であっても、常時、適切な音量で、着信音の鳴動と通話の受話とを両立させることができる点にある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明による折り畳み式の携帯端末の筐体構造におけるスピーカ、レシーバ、マイクの実装例を示す模式図である。
【図2】本発明による携帯端末の図1とは異なる筐体構造におけるスピーカ、レシーバ、マイク実装例を示す模式図である。
【図3】図2のスライド式の携帯端末の筐体構造におけるスピーカ、レシーバ、マイクの図2とは異なる実装例を示す模式図である。
【図4】従来の折り畳み式の携帯電話端末の筐体構造におけるスピーカ、レシーバ、マイクの実装例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明による携帯端末および携帯端末スピーカ実装方法の好適な実施例について添付図を参照して説明する。なお、本発明による携帯端末は、携帯電話機、PHS端末(Personal Handy-Phone System)、携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistants)、携帯ノートPC(Personal Computer)など、電話機能を有する折り畳み式またはスライド式の端末であれば、如何なる携帯端末であっても構わない。
【0024】
(本発明の特徴)
本発明の実施形態の説明に先立って、本発明の特徴についてその概要をまず説明する。本発明は、折り畳み式またはスライド式の携帯端末に関するものであり、回動自在なヒンジ、もしくは、直線的なスライド移動が可能なスライド機構を境にして、ディスプレイを実装する上部筐体部と操作キーを実装する下部筐体部との二つの筐体部に分離し、かつ、該ヒンジもしくは該スライド機構を介して片方の筐体部を他方の筐体部に対して自在に回動もしくは直線的にスライド移動させることが可能な筐体構造において、下記の4点の音響特性を良好に実現するために、着信音等の音声を出力することが可能な一つ以上のスピーカ音孔をディスプレイ画面と同一面上に搭載するとともに、該スピーカ音孔を、二つの筐体部の開閉状態、スライド移動状態の如何によらず、各種音声出力用の機能の他に、受話用のレシーバ音孔の機能をも兼用させることを可能としていることを主要な特徴としている。
【0025】
(1)一つ以上のスピーカ音孔およびスピーカを受話用のレシーバ機能と兼用可能とするとともに、二つの筐体部の開閉状態、スライド移動状態などの如何に関わらず、使用時においては、一つ以上の該スピーカ音孔を筐体の外側に常に露出することを可能とすることにより、ハンドセット通話、ハンズフリー通話のいずれの通話も可能とする。
【0026】
(2)一つ以上のスピーカ音孔およびスピーカを備えることにより、ステレオもしくは多チャンネルのスピーカ再生性能を向上させることができる。
【0027】
(3)一つ以上のスピーカ音孔をディスプレイ画面と同一面上に搭載することにより、スピーカ鳴動音が、ディスプレイ画面から出ているような臨場感を演出することができる。
【0028】
(4)一つ以上のスピーカ音孔(スピーカ)を備えることにより、通話中に着信があって、着信音を鳴動させる際に、当該通話で受話用のレシーバ機能として使用しているスピーカ音孔(スピーカ)以外のスピーカ音孔(スピーカ)を着信音鳴動用のスピーカ音孔(スピーカ)として使用することが可能であり、通話中の状態であっても、常時、適切な音量で、着信音の鳴動と通話の受話とを両立させることができる。
【0029】
つまり、本発明は、二つ以上の複数の筐体部に分離して構成され、ヒンジやスライド機構を利用して、端末全体として、一つ以上の筐体部の回動やスライド移動等の複数の形状変化が可能な折り畳み式またはスライド式の携帯電話端末において、一つ以上のスピーカ音孔をディスプレイ画面と同一面に搭載し、かつ、該スピーカ音孔を受話用のレシーバ音孔としても兼用することを可能としている点を主要な特徴としている。
【0030】
(本発明の実施例)
次に、本発明の実施例について説明する。図1は、本発明による折り畳み式の携帯端末の筐体構造におけるスピーカ、レシーバ、マイクの実装例を示す模式図であり、回動自在な回転ヒンジ7を介して、ディスプレイ11が実装されている上部筐体部5と操作キー12が実装されている下部筐体部6との二つの筐体部が回動自在な形態で連結されている場合を示しており、図1(A)は、開いた状態におけるスピーカ、レシーバ、マイクの実装構造を形状Cとして示し、図1(B)は、閉じた状態におけるスピーカ、レシーバ、マイクの実装構造を形状Dとして示している。
【0031】
図1の筐体構造においては、回転ヒンジ7は、図4のヒンジ7aとは異なり、回転軸が固定されておらず、上部筐体部5を下部筐体部6に対して任意の方向に自在に回動させることが可能である。つまり、図1(A)に示すように、図4(A)の形状Aと同様に、ディスプレイ11が実装されている上部筐体部5を回転ヒンジ7を中心にして下部筐体部6から離間させるように回動させて開くことにより、例えばハンドセット状態で任意に指定した通話相手との通話が可能であって、かつ、ディスプレイ11の表示内容の視認や操作キー12の操作が可能な形状Cの状態に設定することができる。一方、図1(B)に示すように、図4(B)の形状Bとは異なり、ディスプレイ11が実装されている上部筐体部5を回転ヒンジ7を中心にして上部筐体部5の左右方向に回転させて、ディスプレイ11の画面を筐体の外部に露出させた状態のまま、下部筐体部6上に移動させ、下部筐体部6上に重ね合わせることにより、ハンドセット通話用やハンズフリー通話用の形状Dの状態に移行することができる。また、図示していないが、ディスプレイ11の画面を隠すように回転ヒンジ7を中心にして上部筐体部5を前後方向に回動させて、下部筐体部6上に移動させ、下部筐体部6上に重ね合わせることにより、使用していない状態または携行中の状態に移行することもできる。
【0032】
また、図1の筐体構造においては、図4の筐体構造とは異なり、ステレオ音声用の二つのスピーカ音孔8、9は、ディスプレイ11が実装されている上部筐体部5の側面ではなく、上部筐体部5に実装されているディスプレイ11の実装面と同一の面上に実装され、該スピーカ音孔8、9それぞれの直下(筐体内部)には、ステレオ用のスピーカ(図示していない)が実装されている。また、スピーカ音孔8、9は、上部筐体部5の長手方向である上辺、下辺それぞれの近傍の上下の位置に配置されている。この結果、ディスプレイ11の画面から音声が飛び出してくるような臨場感を有するステレオ音声を出力することができるとともに、上部筐体部5の長手方向に配置することによって、二つのスピーカ音孔8、9間の距離を図4の場合よりも離すことが可能であり、両者の音声の分離性を向上させ、より良質のステレオ音声を得ることができる。
【0033】
また、図1の筐体構造においては、図4の筐体構造とは異なり、二つのスピーカ音孔8、9は、受話用のレシーバ音孔と兼用することが可能な位置に配置されており、図1(A)の開いた状態の形状Cの状態にある場合においてハンドセット状態で通話を行おうとする場合は、二つのスピーカ音孔8、9およびスピーカのうち、上部筐体部5の上辺側に配置されているスピーカ音孔8(スピーカ)が、受話用のレシーバ音孔(レシーバ)として機能する。一方、上部筐体部5を回転させて図1(B)の閉じた状態の形状Dの状態にある場合においてハンドセット状態で通話を行おうとする場合は、二つのスピーカ音孔8、9およびスピーカのうち、上部筐体部5の下辺側(図1(B)のように回転させた形状Dの状態では上側に移動している)に配置されているスピーカ音孔9(スピーカ)が、受話用のレシーバ音孔(レシーバ)として機能する。この結果、携帯端末の開閉状態の如何によらず、筐体の外部に露出している二つのスピーカ音孔8、9(直下のスピーカ)のいずれかが、受話用のレシーバ音孔(レシーバ)として機能することが可能であり、受話機能専用のレシーバ音孔およびレシーバを削除することが可能となる。
【0034】
なお、図1の筐体構造において、内蔵されているマイクのマイク音孔4は、図4の筐体構造と同様、下部筐体部6の下側面に配置されており、該マイク音孔4の直下(筐体内部)には、通話用のマイク(図示していない)が実装され、通話相手に対する送話を行うことができる。
【0035】
つまり、図1(A)の形状Cのような開いた状態においては、通話しようとするユーザは、携帯端末の本体部分である下部筐体部6を把持して、上部筐体部5の上辺側に配置されているスピーカ音孔8を耳元近傍に持ってくると、下部筐体部6の下側面に配置されているマイク音孔4が、丁度、当該ユーザの口元近傍に位置することになり、ハンドセット状態で、通話相手との通話信号の送受信が可能になるとともに、スピーカ音孔8、9から着信音等のステレオ音声を聞くことも可能となる。
【0036】
一方、図1(B)の形状Dのような閉じた状態において、例えば机等の上に置いたハンズフリーの状態では、下部筐体部6の下側面に配置されているマイク音孔4と上部筐体部5の上辺側に配置されているスピーカ音孔8または下辺側(図1(B)の状態では上側に移動している)に配置されているスピーカ音孔9を用いて送受話を行うことが可能であるとともに、スピーカ音孔8、9の双方またはいずれか一方から着信音等を聞くことができる。また、図1(B)の形状Dのような閉じた状態であっても、通話内容をより明確に聞き分けることができるように、または、私的な通話を行うために、携帯端末を把持して、耳元にスピーカ音孔を持ってきて、ハンドセット通話を行おうとする場合、下部筐体部6の下側面に配置されているマイク音孔4と上部筐体部5の下辺側(図1(B)の状態では上側に移動している)に配置されているスピーカ音孔9を用いて送受話を行うことも可能である。
【0037】
以上のように、図1に示す実施例においては、二つのスピーカ音孔8、9のそれぞれを、携帯端末の長手方向一杯に離して実装することが可能であり、ステレオ再生性能の向上を図ることができ、[発明が解決しようとする課題]において説明した課題1を解決することができる。
【0038】
また、ディスプレイ11と同一面内にスピーカ音孔8、9が配置されており、スピーカ音孔8、9からの鳴動音が、ディスプレイ11の画面に垂直な方向とされて、ユーザ側に放射されるため、ディスプレイ11の画面に対向して画面を見ているユーザ側では、鳴動音が大きく聞こえ、かつ、あたかもディスプレイ11の画面から音声が飛び出してくるような迫力、臨場感を演出することができるので、[発明が解決しようとする課題]において説明した課題2を解決することができる。
【0039】
さらに、スピーカ音孔8、9がディスプレイ11と同一面内に配置されており、かつ、図1(A)の開いた状態の形状Cの状態にある場合は、スピーカ音孔8およびその直下に実装されているスピーカが、図4の従来技術における受話用のレシーバ音孔1および直下のレシーバと同様な位置に実装することができるため、ハンドセット通話時において、スピーカ音孔8を受話用のレシーバ音孔1としても兼用することができ、受話専用のレシーバ音孔および直下のレシーバを削除することが可能であり、[発明が解決しようとする課題]において説明した課題3を解決することができる。
【0040】
加えて、上部筐体部5を回転させて、下部筐体部6と重ね合わせた図1(B)の形状Dの閉じた状態においては、スピーカ音孔8、9および直下のスピーカの双方またはいずれか一方を、あるいは、スピーカ音孔9および直下のスピーカを受話用のレシーバ音孔および直下のレシーバとして使用することができるため、受話専用のレシーバ音孔および直下のレシーバを削除することが可能であり、かつ、閉じた状態であっても、ハンズフリー通話のみならずハンドセット通話を行うことも可能であり、[発明が解決しようとする課題]において説明した課題4を解決することができる。さらには、通話時の着信音鳴動については、スピーカ音孔8、9いずれか一方を通話時に受話用として使用し、他方を着信音鳴動用として使用することも可能であり、通話の受話用と着信音鳴動用との双方の用途に対しても、なんら問題なく、両立させることができる。
【0041】
(他の実施例)
次に、本発明による携帯端末の図1とは異なる筐体構造について図2を用いて説明する。図2は、本発明による携帯端末の図1とは異なる筐体構造におけるスピーカ、レシーバ、マイク実装例を示す模式図であり、図1の場合とは異なり、上部筐体部5と下部筐体部6とは、回動自在な回転ヒンジを介してではなく、スライド機構13を介して連結されており、該スライド機構13によって上部筐体部5が下部筐体部6上を直線的にスライド移動するというスライド式の携帯端末における筐体構造を示している。なお、図2に示すスライド式の携帯端末の筐体構造においては、マイク音孔4およびスピーカ音孔8、9の実装位置は、図1の折り畳み式の携帯端末と同様であり、マイク音孔4は、下部筐体部6の下側面に、また、二つのスピーカ音孔8、9は、上部筐体部5の上下の長手方向である上辺、下辺の近傍にそれぞれ実装されているが、上部筐体部5に実装されているディスプレイ11は、使用していない状態では内側に隠すことができる図1の折り畳み式の携帯端末とは異なり、スライド移動の有無によらず、常に露出した状態にある。
【0042】
図2の筐体構造においては、下部筐体部6の操作キー12を露出させるように上部筐体部5を上方向に直線的に下部筐体部6上をスライド移動させることにより、図2(A)に示すように、下部筐体部6に実装されている操作キー12を操作可能な開いた状態になり、ハンドセット状態で任意に指定した通話相手との通話が可能であって、かつ、ディスプレイ11の表示内容の視認や操作キー12の操作が可能な形状Eの状態に設定することが可能である。一方、図2(B)に示すように、ディスプレイ11が実装されている上部筐体部5を下方向に直線的に下部筐体部6上をスライド移動させ、下部筐体部6上に重ね合わせることにより、携行用やハンズフリー通話用や場合によってはハンドセット通話用の形状Fの状態に移行することができる。
【0043】
ここで、図2の筐体構造においても、図1の折り畳み式の携帯端末の場合と同様、ステレオ音声用の二つのスピーカ音孔8、9は、ディスプレイ11が実装されている上部筐体部5の側面ではなく、上部筐体部5に実装されているディスプレイ11の実装面と同一の面上に実装され、該スピーカ音孔8、9それぞれの直下(筐体内部)には、ステレオ用のスピーカ(図示していない)が実装されており、かつ、スピーカ音孔8、9は、上部筐体部5の長手方向である上辺、下辺それぞれの近傍の上下の位置に配置されている。この結果、ディスプレイ11の画面から音声が飛び出してくるような臨場感を有するステレオ音声を出力することができるとともに、上部筐体部5の長手方向に配置することによって、二つのスピーカ音孔8、9間の距離を図4の場合よりも離すことが可能であり、両者の音声の分離性を向上させ、より良質のステレオ音声を得ることができる。
【0044】
また、図2の筐体構造においても、図1の折り畳み式の携帯端末の場合と同様、二つのスピーカ音孔8、9は、受話用のレシーバ音孔と兼用することが可能な位置に配置されている。ただし、図2(A)の開いた状態の形状Eの状態にある場合においてハンドセット状態で通話を行おうとする場合は、図1の折り畳み式の携帯端末の場合と同様、二つのスピーカ音孔8、9のうち、上部筐体部5の上辺側に配置されているスピーカ音孔8が、受話用のレシーバ音孔として機能するが、図2(B)の閉じた状態の形状Fの状態にある場合においてハンドセット状態で通話を行おうとする場合は、図1の折り畳み式の携帯端末の場合とは異なり、図2(A)の開いた状態の形状Eの状態にある場合と同様、上部筐体部5の上辺側に配置されているスピーカ音孔8が、受話用のレシーバ音孔として機能する。また、図2(B)の閉じた状態の形状Fの状態にある場合においてハンズフリー状態で通話を行おうとする場合は、図1の折り畳み式の携帯端末の場合と同様、二つのスピーカ音孔8、9のいずれでも、受話用のレシーバ音孔として機能することができる。この結果、携帯端末の開閉状態の如何によらず、また、ハンドセット通話、ハンズフリー通話の如何によらず、筐体の外部に常に露出しているスピーカ音孔8が、受話用のレシーバ音孔として機能することができる。
【0045】
つまり、図2に示す実施例においても、図1の場合とまったく同様の効果を得ることができ、[発明が解決しようとする課題]において説明した課題1ないし課題4のいずれについても解決することができる。
【0046】
次に、本発明による携帯端末の図1、図2とはさらに異なる筐体構造について図3を用いて説明する。図3は、図2のスライド式の携帯端末の筐体構造におけるスピーカ、レシーバ、マイクの図2とは異なる実装例を示す模式図であり、図2の場合と同様、上部筐体部5と下部筐体部6とは、回動自在な回転ヒンジを介してではなく、スライド機構13を介して連結されており、該スライド機構13によって上部筐体部5が下部筐体部6上を直線的にスライド移動するというスライド式の携帯端末における筐体構造を示している。ただし、図2の場合とは異なり、上部筐体部5に実装されるスピーカ音孔は、二つではなく、スピーカ音孔8として上部筐体部5の長手方向に相当する上辺側の近傍にのみ実装されている。
【0047】
図3に示す実施例においては、図1、図2の場合とは異なり、一つのスピーカ音孔8しか実装していないため、ステレオ音声を出力することができなくなるとともに、通話中に通話の受話用とは独立に着信音を鳴動させることができなくなるというマイナス面はあるものの、携帯端末の小型化・薄型化をより一層図ることができるとともに、[発明が解決しようとする課題]において説明した課題2ないし課題4のいずれについても解決することができる。
【0048】
以上、本発明の好適実施例の構成を説明した。しかし、斯かる実施例は、本発明の単なる例示に過ぎず、何ら本発明を限定するものではないことに留意されたい。本発明の要旨を逸脱することなく、特定用途に応じて種々の変形変更が可能であることが、当業者には容易に理解できよう。例えば、本発明の実施形態は、課題を解決するための手段における構成(1)に加えて次のような構成として表現できる。
(2)前記上部筐体部を前記下部筐体部上に重ねて閉じた状態に設定する際に、前記上部筐体部を、前記ヒンジを介して回転させて、前記ディスプレイの実装面と同一の面上に配置されている前記スピーカ音孔が筐体の外側に露出されている状態のまま、前記下部筐体部上に重ねる上記(1)の携帯端末。
(3)二つの前記スピーカ音孔のスピーカの少なくともいずれかが、通話相手からの音声を受話するレシーバとして機能することにより、通話相手からの受話のみに専用のレシーバを備えていない上記(1)または(2)の携帯端末。
(4)通話中の状態にある場合、二つの前記スピーカ音孔のスピーカのうち、前記上部筐体部の上辺または下辺の近傍に位置するいずれか一方のスピーカ音孔のスピーカが、通話相手からの音声を受話するレシーバとして機能し、他方のスピーカ音孔のスピーカが、着信音を含む各種音声を出力するスピーカとして機能する上記(1)ないし(3)のいずれかの携帯端末。
(5)ディスプレイが実装されている上部筐体部と操作キーが実装されている下部筐体部とを、直線的にスライド移動するスライド機構を介してスライド移動可能な状態で連結した筐体構造からなる携帯端末において、通話相手からの受話用の音声を含め各種の音声を出力することが可能な二つのスピーカのスピーカ音孔を、前記上部筐体部の前記ディスプレイの実装面と同一の面上であって、前記上部筐体部の長手方向である上辺と下辺との近傍に配置するとともに、通話相手への送話用のマイクのマイク音孔を、前記下部筐体部の下側面に配置する携帯端末。
(6)二つの前記スピーカ音孔のスピーカの少なくともいずれかが、通話相手からの音声を受話するレシーバとして機能することにより、通話相手からの受話のみに専用のレシーバを備えていない上記(5)の携帯端末。
(7)通話中の状態にある場合、二つの前記スピーカ音孔のスピーカのうち、前記上部筐体部の上辺の近傍に位置するスピーカ音孔のスピーカが、通話相手からの音声を受話するレシーバとして機能し、前記上部筐体部の下辺の近傍に位置するスピーカ音孔のスピーカが、着信音を含む各種音声を出力するスピーカとして機能する上記(5)または(6)の携帯端末。
(8)ディスプレイが実装されている上部筐体部と操作キーが実装されている下部筐体部とを、直線的にスライド移動するスライド機構を介してスライド移動可能な状態で連結した筐体構造からなる携帯端末において、通話相手からの受話用の音声を含め各種の音声を出力することが可能なスピーカのスピーカ音孔を、前記上部筐体部の前記ディスプレイの実装面と同一の面上であって、前記上部筐体部の長手方向である上辺の近傍に配置するとともに、通話相手への送話用のマイクのマイク音孔を、前記下部筐体部の下側面に配置する携帯端末。
(9)前記上部筐体部の上辺の近傍に位置するスピーカ音孔のスピーカが、通話相手からの音声を受話するレシーバとして機能するとともに、着信音を含む各種音声を出力するスピーカとして機能する上記(6)の携帯端末。
(10)前記スピーカ音孔のスピーカが、通話相手からの音声を受話するレシーバとして機能することにより、通話相手からの受話のみに専用のレシーバを備えていない上記(8)または(9)の携帯端末。
(11)ディスプレイが実装されている上部筐体部と操作キーが実装されている下部筐体部とを、任意の方向に回動自在なヒンジを介して開閉可能な状態で連結した筐体構造からなる携帯端末に、通話相手からの受話用の音声を含め各種音声を出力することが可能なスピーカを実装するための携帯端末スピーカ実装方法であって、二つの前記スピーカのスピーカ音孔を、前記上部筐体部の前記ディスプレイの実装面と同一の面上であって、前記上部筐体部の長手方向である上辺と下辺との近傍に配置する携帯端末スピーカ実装方法。
(12)ディスプレイが実装されている上部筐体部と操作キーが実装されている下部筐体部とを、直線的にスライド移動するスライド機構を介してスライド移動可能な状態で連結した筐体構造からなる携帯端末に、通話相手からの受話用の音声を含め各種音声を出力することが可能なスピーカを実装するための携帯端末スピーカ実装方法であって、一つまたは二つの前記スピーカのスピーカ音孔を、前記上部筐体部の前記ディスプレイの実装面と同一の面上であって、前記上部筐体部の長手方向である上辺の近傍、または、前記上部筐体部の長手方向である上辺と下辺との近傍に配置する携帯端末スピーカ実装方法。
【符号の説明】
【0049】
1 レシーバ音孔
2、3 スピーカ音孔
4 マイク音孔
5 上部筐体部
6 下部筐体部
7 回転ヒンジ
7a ヒンジ
11 ディスプレイ
12 操作キー
13 スライド機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイが実装されている上部筐体部と操作キーが実装されている下部筐体部とを、直線的にスライド移動するスライド機構を介してスライド移動可能な状態で連結した筐体構造からなる携帯端末において、通話相手からの受話用の音声を含め各種の音声を出力することが可能なスピーカのスピーカ音孔を、前記上部筐体部の前記ディスプレイの実装面と同一の面上であって、前記上部筐体部の長手方向である上辺の近傍に配置するとともに、通話相手への送話用のマイクのマイク音孔を、前記下部筐体部の下側面に配置することを特徴とする携帯端末。
【請求項2】
前記上部筐体部の上辺の近傍に位置するスピーカ音孔のスピーカが、通話相手からの音声を受話するレシーバとして機能するとともに、着信音を含む各種音声を出力するスピーカとして機能することを特徴とする請求項1に記載の携帯端末。
【請求項3】
前記スピーカ音孔のスピーカが、通話相手からの音声を受話するレシーバとして機能することにより、通話相手からの受話のみに専用のレシーバを備えていないことを特徴とする請求項1または2に記載の携帯端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−235532(P2012−235532A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−183379(P2012−183379)
【出願日】平成24年8月22日(2012.8.22)
【分割の表示】特願2008−273265(P2008−273265)の分割
【原出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】