説明

携帯端末

【課題】閉状態、開状態におけるガタツキを抑えつつ、そのスライド動作をスムーズに行う。
【解決手段】第一筐体2の端部に形成された第一リブ31と第二筐体3に形成された第二リブ32とが対向した状態において、第一リブ31と第二リブ32との間にクリアランス調整部材30が設けられ、その舌部の先端部34aが第二リブ32に突き当たって弾性変形することで、第二リブ32を第一リブ31から離間する方向に押圧し、第一筐体2と第二筐体3とのガタツキを抑える。そして、舌部の先端部34aは、第二リブ32に干渉して弾性変形した状態においても、第一リブ31との間には隙間が確保され、第一筐体2、第二筐体3の色に関わらず、舌部の先端部34aが第二リブ32に突き当たったときに、第一リブ31側に弾性変形が可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二つの筐体同士を相対移動可能に接続する携帯端末に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話をはじめとした、無線送受信によって種々のデータの送受信を行う携帯型通信端末(以下、単に端末と称することがある)は、不使用時においてはそのコンパクト性が求められる一方で、使用時においてモニター画面を見やすくしたり操作キーの操作性を高めることが求められる。これに応じ、第一筐体と第二筐体とをヒンジで回動可能に連結することで、端末を折り畳み可能としたり、第一筐体に対して第二筐体をスライド自在に設けることで、端末をスライド操作によって展開させる構成がある。
【0003】
ここで、第一筐体に対して第二筐体をスライド自在とするスライド式の端末においては、第一筐体と第二筐体とのスムーズなスライド動作のために、スライド機構に、スライド方向と直交する方向に最小限のクリアランスが設けられている。その一方で、スライド機構にクリアランスがあると、第一筐体と第二筐体とを重ね合わせた閉状態や、第一筐体に対して第二筐体を重ね合わせた状態からスライドさせた開状態において、第一筐体と第二筐体との間にガタツキが生じ、使用感を損ねる。そこで、第一筐体と第二筐体を、閉状態、開状態のいずれの状態においてもガタツキが生じないようにすることが望まれる。
【0004】
これに対し、特許文献1は、第一筐体と第二筐体との間に弾性部材を挟み込む構成を開示しており、この構成においては、第一、第二筐体の一方に設けられた凸部が、他方に設けられた弾性部材
に対向して突き当たり、凸部が弾性部材を弾性変形させることでガタツキ(遊び)を吸収している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−193630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、実際の端末の筐体には、デザイン性を高めるために塗装による着色が施されている。そして、その塗色により塗料の重ね塗り回数が異なる等して、筐体の表面に形成された塗膜の厚さが異なることがある。すると、特許文献1に記載の構成において、弾性部材が第一、第二筐体の表面の塗膜に突き当たった場合、塗膜の厚さ、つまり筐体の色によって、弾性部材への当たり具合が異なってしまう。その結果、塗膜が厚くなる場合には、第一筐体、第二筐体との間における弾性部材への当たりがきつくなり、スライドによる開閉動作が行いにくくなるといった問題が生じる。
そこでなされた本発明の目的は、閉状態、開状態におけるガタツキを抑えつつ、そのスライド動作をスムーズに行うことのできる携帯端末を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明は、第一筐体と、第一筐体の一面に対向して配置された第二筐体と、第一筐体と第二筐体との間に設けられ、第一筐体と第二筐体とを重ね合わせた閉状態と、第二筐体を第一筐体の一面に沿った方向に相対移動させた開状態との間で、第一筐体と第二筐体とをスライド移動可能とするスライド機構と、第一筐体の一面の端部に設けられ、閉状態および開状態の少なくとも一方において第二筐体に突き当たり、当該第二筐体を第一筐体から離間させる方向に押圧する弾性部材と、を備え、弾性部材は、第一筐体から第二筐体側に張り出す舌部を有し、舌部は、第二筐体に突き当たった状態で、第一筐体との間に隙間を有するよう形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、閉状態および開状態の少なくとも一方において、弾性部材の舌部が第二筐体に突き当たることにより、第二筐体を第一筐体から離間させる方向に押圧することができる。さらに、この状態で、弾性部材の舌部と第一筐体との間に隙間が形成されるため、第一筐体、第二筐体の塗色によって塗膜の厚さが異なる場合にも、弾性部材の舌部が弾性変形するスペースを確保することができる。これにより、第一筐体と第二筐体のガタツキを抑えつつ、そのスライド動作をスムーズに行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態にかかる携帯端末の外観を示す斜視図である。
【図2】携帯端末を開状態としたときの側面図である。
【図3】第一筐体と第二筐体を展開した状態を示す斜視図である。
【図4】第一筐体と第二筐体との間に設けられた弾性部材を示す断面図である。
【図5】弾性部材のたわみ量を示すための断面図である。
【図6】弾性部材が第一筐体と第二筐体との間に挟み込まれた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明による携帯端末を実施するための最良の形態を説明する。しかし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
図1、図2に示すように、携帯端末1は、互いに対向するように配置された第一筐体2及び第二筐体3と、を備えている。
【0011】
第一筐体2は、扁平直方状の薄型に形成されており、第二筐体3と対向する長方形を呈する面を主面4とし、長辺4aに沿う方向の一方側の範囲にテンキー等の各種ボタン5aを配列した操作部5が設けられている。なお、図3に示すように、第一筐体2には、内部構成として操作部5の各種ボタンやマイクと接続された基板6や、電源となる電池などが内蔵されている。
また、第二筐体3は、本実施形態では第一筐体2と同一形状の扁平直方状の薄型に形成されており、第一筐体2の主面4と対向する対向面7を有している。
【0012】
第二筐体3は、互いに対向する第一筐体2の主面4と第二筐体3の対向面7との間に設けられた図示しないスライド機構により、第一筐体2に対して相対的にスライド可能に設けられている。そして、本実施形態では、携帯端末1において、第一筐体2と第二筐体3とは、主面4と対向面7とがずれることなく重なり合った閉状態から、長辺4aに沿う方向を移動方向Aとして相対的にスライド移動して開状態へと展開することが可能である。なお、スライド機構の具体的構成については何ら限定するものではなく、周知のスライド機構を適宜採用することができる。
【0013】
ここで、図3に示すように、開状態における第一筐体2と第二筐体3とのガタツキを抑えるため、第一筐体2と第二筐体3との間には、シート状のクリアランス調整部材30が設けられている。
このクリアランス調整部材30は、例えば、第一筐体2に固定されて設けられている。クリアランス調整部材30は、第二筐体3側に固定して設けても良い。
図4に示すように、第一筐体2において、この第一筐体2に対して第二筐体3がスライドして開く方向の端部2aに、第二筐体3側に突出する第一リブ31が形成されている。一方、第二筐体3において、開状態となったときに第二筐体3において第一リブ31に対向する位置と、閉状態となったときに第二筐体3において第一リブ31に対向する位置とに、それぞれ第一筐体2側に突出する第二リブ32が形成されている。
【0014】
図3、図4に示すように、クリアランス調整部材30は、第一筐体2の主面4にビス等の固定手段により固定されるベース面33と、第一リブ31に乗り上げるように形成された舌部34とを有している。ベース面33の端部33aは、第一リブ31の基部に形成された溝35に挿入されている。
舌部34は、第一筐体2の幅方向両端部にそれぞれ設けられている。舌部34はベース面33の端部33aから第二筐体3側に突出するよう形成され、第一リブ31の表面に沿い、その先端部34aは、第一リブ31から第二筐体3側に離間するよう張り出して形成されている。そして、舌部34の先端部34aは、第一リブ31と第二リブ32とが対向した状態において、これらの間に位置するよう形成されている。このとき、舌部34の先端部34aは、第二リブ32に突き当たることで、第一リブ31側に弾性変形するようになっており、その反発力によって第二リブ32を第一リブ31から離間する方向に押圧している。
【0015】
ここで、図4〜図6に示すように、舌部34の先端部34aは、第二リブ32が干渉しないフリーの状態(図5中実線の状態)に対し、図6に示した第二リブ32が干渉した状態では、第二リブ32との干渉により第一リブ31に接近する側に弾性変形している。ここで、第一筐体2、第2筐体3に施される塗装色のうち、最も塗膜の厚い塗装色による塗装が施された第二リブ32が干渉した状態における舌部34の先端部34aのたわみ量bよりも、第一リブ31と第二リブ32との間隙寸法sの方が大きくなるようにする。
【0016】
このような構成によれば、舌部34の先端部34aが、第二リブ32に突き当たって弾性変形することで、第二リブ32を第一リブ31から離間する方向に押圧し、第一筐体2と第二筐体3とのガタツキを抑えるようになっている。
このとき、最も塗膜の厚い塗装色による塗装が施された第二リブ32が干渉した状態における舌部34の先端部34aのたわみ量bよりも、第一リブ31と第二リブ32との間隙寸法sの方が大きくなるよう形成されている。これにより、塗膜が最も厚い塗装色による塗装が施された場合であっても、舌部34の先端部34aと第一リブ31との間に、クリアランスcが形成される。つまり、第一筐体2、第二筐体3の間に舌部34の先端部34aが挟み込まれないようになっている。塗膜がより薄い塗装色による塗装が施された場合は、クリアランスcは、より大きくなる。このようにして、塗装色による第一筐体2、第二筐体3のクリアランス変動を舌部34により吸収することができる。その結果、いかなる塗装色であっても、第一筐体2と第二筐体3とのガタツキを抑えつつ、第一筐体2、第二筐体3のスライド動作がきつくなることもなく、スムーズにスライド動作を行うことが可能となる。
【0017】
また、舌部34は、第一筐体2と第二筐体3のスライド方向に直交する、第一筐体2の幅方向の両端部に設けられている。このように、舌部34は、第一筐体2の幅に対して十分に小さい。これにより、舌部34は、先端部34aが第二筐体3に突き当たったときに、第一筐体2側に弾性変形しやすく、第一筐体2と第二筐体3とのスライド動作を摩擦により妨げるのを抑えることができ、スムーズなスライド動作に寄与できる。
【0018】
なお、本発明の携帯端末は、図面を参照して説明した上述の各実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、第一筐体2と第二筐体3とは、扁平直方状で同一形状のものとしたが、これに限るものではなく、様々な形状を適用することが可能であり、また、互いに異なる形状、大きさとしても良い。
また、第二リブ32は、第一筐体2および第二筐体3が閉状態であるときと開状態であるときに、それぞれ第一リブ31と対向するようにしたが、これに限るものではなく、いずれか一方のみに設けても良い。
さらに、上記実施形態では、携帯端末について説明したが、これに限ることはなく、スライド機構によってそれぞれの筐体をスライド可能に連結した携帯端末であれば、例えばノート型のパーソナルコンピュータや電子辞書やPDA(パーソナル・データ・アシスタンス)等、様々な携帯端末においても本発明を有効に適用し得ることは言うまでもない。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0019】
1 携帯端末
2 第一筐体
3 第二筐体
4 主面
5 操作部
7 対向面
30 クリアランス調整部材
31 第一リブ
32 第二リブ
33 ベース面
33a 端部
34 舌部
34a 先端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一筐体と、
前記第一筐体の一面に対向して配置された第二筐体と、
前記第一筐体と前記第二筐体との間に設けられ、前記第一筐体と前記第二筐体とを重ね合わせた閉状態と、前記第二筐体を前記第一筐体の前記一面に沿った方向に相対移動させた開状態との間で、前記第一筐体と前記第二筐体とをスライド移動可能とするスライド機構と、
前記第一筐体の前記一面の端部に設けられ、前記閉状態および前記開状態の少なくとも一方において前記第二筐体に突き当たり、当該第二筐体を前記第一筐体から離間させる方向に押圧する弾性部材と、を備え、
前記弾性部材は、前記第一筐体から前記第二筐体側に張り出す舌部を有し、前記舌部は、前記第二筐体に突き当たった状態で、前記第一筐体との間に隙間を有するよう形成されていることを特徴とする携帯端末。
【請求項2】
前記弾性部材の前記舌部に対応した位置における前記第一筐体と前記第二筐体との隙間寸法が、前記舌部が前記第二筐体に突き当たった状態における当該舌部の自由状態からのたわみ寸法よりも大きく設定されていることを特徴とする請求項1に記載の携帯端末。
【請求項3】
前記舌部は、前記第一筐体のスライド方向に直交する幅方向の両端部に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の携帯端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−65216(P2012−65216A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208781(P2010−208781)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】