説明

携帯通信端末

【課題】筐体の内部圧力の上昇にともなう、キーシート等の変形を防ぐ。
【解決手段】本発明の携帯電話機10においては、ユーザに情報を表示するための表示部20を備える表示筐体11の内部空間と、ユーザからの情報を受け付ける操作部26を有する操作筐体14の内部空間とは、チューブ72を介して通じている。そして、チューブ72は、操作部26のキーシート80よりも膨張しやすい弾性素材からなる。このため、表示筐体11及び操作筐体14の内部の圧力が高くなった場合に生じるキーシート80の変形を防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯通信端末に関し、更に詳しくは、防水機能を備える携帯通信端末に関する。
【背景技術】
【0002】
防水機能を有する携帯電話機は、携帯電話機の構成部品間の間隙が、ゴムパッキンなどによって塞がれた構造となっている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−312255号公報
【特許文献2】特開2008−135248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献に記載の携帯電話機は、水密性が高いだけではなく、気密性も高い。このため、ユーザによって、携帯電話機に電池カバーが取り付けられると、電池カバーの内側の空気が筐体内に押し込まれ、筐体の内部の圧力が一時的に上昇する。そうすると、キーシートが膨らんでしまう。
【0005】
この対策として、キーシートを厚くして、その剛性を上げることが考えられる。しかし、この場合、キーシートが厚くなるので、携帯電話機の薄型化が妨げられる可能性ある。
【0006】
また、キーシートをメタルドームシートに貼り付けることによって、キーシートの膨張を防ぐことが、考えられる。しかし、この場合、キーの押し感が悪化する可能性がある。
【0007】
本発明は、上述の事情の下になされたもので、筐体の内部の圧力が高くなった場合に生じる、キーシート等の変形を防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するために、本発明に係る携帯通信端末は、
ユーザからの情報を受け付ける操作部を有する操作筐体と、
前記操作筐体の内部空間に通じる空間を有する膨張部材と、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、筐体の内部の圧力が高くなった場合に生じるキーシート等の変形を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る携帯電話機を示す斜視図である。
【図2】携帯電話機の分解斜視図である。
【図3】(A)は、操作筐体の断面図であり、(B)は、(A)の分解断面図である。
【図4】ヒンジユニットの断面図である。
【図5】チューブの斜視図である。
【図6】(A)は、携帯電話機にカバーを取り付ける前の操作筐体の断面図であり、(B)は、携帯電話機にカバーを取り付けた後の操作筐体の断面図である。
【図7】(A)は、携帯電話機にカバーを取り付ける前のチューブの断面図であり、(B)は、携帯電話機にカバーを取り付けた後のチューブの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係る携帯電話機10の斜視図である。図1に示すように、携帯電話機10は、表示筐体11と、操作筐体14と、ヒンジユニット17とを有している。操作筐体14は、ヒンジユニット17を介して、表示筐体11と回動可能に接続されている。表示筐体11には、表示部20と、スピーカ24とが配設されている。そして、操作筐体14には、マイク22と、操作部26とが配設されている。
【0013】
本実施形態に係る携帯電話機10は、通常の携帯電話機と同様に、音声通話機能、電子メールの送信及び受信機能、インターネットへの接続機能、TV放送受信・再生やゲームなどの各種アプリケーション機能を有している。
【0014】
表示部20は、画像、図形、文字、記号などの情報を表示する。表示部20は、例えば、液晶パネルである。操作部26は、テンキー、方向キー/決定キー、及びファンクションキー等を備える。ユーザによる情報の入力は、操作部26を通じて行われる。
【0015】
図2は、携帯電話機10の分解斜視図である。図2に示すように、表示筐体11は、筐体本体12と筐体蓋部13とを有している。そして、表示筐体11の内部には、基板40が収納されている。また、操作筐体14は、筐体本体15と筐体蓋部16とを有している。そして、操作筐体14の内部には、基板41及び電池60が収納されている。
【0016】
筐体蓋部13は、パッキン42を介して、筐体本体12に取り付けられている。同様に、筐体蓋部16は、パッキン43を介して、筐体本体15に取り付けられている。
【0017】
表示筐体11の筐体蓋部13には、ヒンジ筒13aが形成されている。また操作筐体14の筐体蓋部16には、一対のヒンジ筒16aが形成されている。ヒンジ筒13aとヒンジ筒16aとには、ヒンジ軸50とヒンジ軸51とが挿通されている。ヒンジユニット17は、ヒンジ筒13a,16aと、ヒンジ軸50,51とから構成される。
【0018】
ヒンジ軸50は、図示しないトルク発生機構を有している。これにより、ヒンジユニット17は、表示筐体11と操作筐体14との間の角度を、所定の角度に保持することができる。また、ヒンジ軸51は、断面形状がアルファベットのC形の有底円筒形状である。また、ヒンジユニット17の内部には、後述する同軸ケーブル70が挿通されている。
【0019】
基板40及び基板41は、例えばエポキシ樹脂からなる。エポキシ樹脂は、樹脂含浸処理により、ガラス繊維(例えばガラス布又はガラス不織布)やアラミド繊維(例えばアラミド不織布)等の補強材を含んでいることが好ましい。この基板40及び基板41の表面には、複数の電子部品が実装されている。基板40と基板41とは、同軸ケーブル70によって、電気的に接続されている。また基板41には、コネクタ41aが実装されている。コネクタ41aは、外部機器との接続に用いられる。
【0020】
操作筐体14の筐体本体15には、通気孔15a及び開口15bが形成されている。通気孔15aには、通気膜54が取り付けられる。通気膜54は、防水性のある素材からなる。通気膜54の素材としては、例えば、フッ素樹脂多孔体、ポリオレフィン多孔体を用いることができる。
【0021】
操作筐体14の筐体蓋部16には、開口16bが形成されている。基板41は、開口16bからコネクタ41aが露出した状態で、操作筐体14の内部に配置されている。開口16bには、パッキン53を介して、キャップ52が脱着可能に取り付けられる。
【0022】
電池60は、基板40及び基板41に実装された電子部品等に電力を供給する。電池60は、筐体本体15の開口15bから、操作筐体14の内部に収納されている。そして、電池60は、基板41に形成された開口41bに挿入された状態で、配置される。開口15bには、パッキン61を介して、カバー62が脱着可能に取り付けられる
【0023】
図3(A)は、携帯電話機10の操作筐体14の断面図であり、図3(B)は、図3(A)の分解断面図である。図3(A)及び図3(B)に示すように、操作部26は、キーシート80とメタルドームシート81とを有する。
【0024】
キーシート80は、防水性の両面テープ82によって、操作筐体14の筐体蓋部16に貼り付けられている。キーシート80は、例えば、積層されたPET(Polyethylene Terephthalate)フィルムとラバーシートとを有している。そして、キーシート80は、操作部26のテンキー、方向キー/決定キー、及びファンクションキーの位置に対応して、キートップ80aを有している。
【0025】
メタルドームシート81は、キーシート80の下方に配置されている。メタルドームシート81は、操作部26のテンキー、方向キー/決定キー、及びファンクションキーの位置に対応して配置されたメタルドーム81aと、スイッチが実装された基板と、を有している。このスイッチの接点は、操作部26のテンキー、方向キー/決定キー、及びファンクションキーが押下された場合にクローズする。メタルドームシート81の基板は、フレキシブル配線基板(図示なし)を介して、基板41に電気的に接続されている。
【0026】
図4は、ヒンジユニット17の断面図である。図4に示すように、同軸ケーブル70は、ヒンジユニット17の内部を通って、基板40,41に接続されている。
【0027】
図5は、同軸ケーブル70の斜視図である。同軸ケーブル70は、その両端にコネクタ75とコネクタ76とを有している。そして、同軸ケーブル70は、防水性のチューブ72により覆われている。
【0028】
チューブ72は、弾性を有する素材からなる。そして、チューブ72は、表示筐体11及び操作筐体14の内部の圧力が高くなった場合に、キーシート80よりも変形しやすい素材からなる。チューブ72の素材としては、例えば、シリコン樹脂等を用いることができる。チューブ72は、その両端にパッキン73とパッキン74とを有している。
【0029】
図4に戻り、コネクタ75は、基板40に接続され、コネクタ76は、基板41に接続されている。そして、パッキン73は、表示筐体11の筐体蓋部13に形成された孔13bと嵌合し、パッキン74は、操作筐体14の筐体蓋部16に形成された孔16cと嵌合している。
【0030】
図2を参照するとわかるように、表示筐体11及び操作筐体14は、上述したパッキン42,43,53,61,73,74と通気膜54とによって、水密に保たれる。また、通気膜54によって、表示筐体11及び操作筐体14の通気性が保たれる。
【0031】
図6(A)は、携帯電話機10にカバー62を取り付ける前の操作筐体14の断面図であり、図6(B)は、携帯電話機10にカバー62を取り付けた後の操作筐体14の断面図である。また、図7(A)は、携帯電話機10にカバー62を取り付ける前のチューブ72の断面図であり、図7(B)は、携帯電話機10にカバー62を取り付けた後のチューブ72の断面図である。
【0032】
図6(A)に示すように、ユーザが、携帯電話機10にカバー62を取り付ける前においては、表示筐体11及び操作筐体14の内部の圧力は、大気圧と同等である。したがって、チューブ72は、図7(A)に示すように、非膨張状態に保たれている。
【0033】
そして、ユーザが、携帯電話機10にカバー62を取り付けると、まず図6(A)に示すように、先ずパッキン61が開口15bに当接して、カバー62の内側に空気Aが閉じ込められる。そして、図6(B)に示すように、さらにユーザが、カバー62を押し込むと、空気Aは操作筐体14の内部に押し込まれる。その結果、表示筐体11及び操作筐体14の内部の圧力が一時的に上昇する。
【0034】
そうすると、図7(B)に示すように、キーシート80よりも変形しやすい素材からなるチューブ72は、膨張する。その後、表示筐体11及び操作筐体14の内部の空気が、徐々に図2に示す通気孔15aから外部に抜けていく。そして、膨張したチューブ72は、弾性回復することによって、収縮していき、図7(A)に示すように、再び元の形状に戻る。
【0035】
同様に、図2に示すように、キャップ52及びパッキン53を、携帯電話機10に取り付けた場合にも、表示筐体11及び操作筐体14の内部の圧力が一時的に上昇する。そうすると、図7(B)に示すように、チューブ72は、膨張する。その後、表示筐体11及び操作筐体14の内部の空気が、徐々に通気孔15aから外部に抜けていく。そして、膨張したチューブ72は、弾性回復することによって、収縮していき、図7(A)に示すように、元の形状に戻る。
【0036】
以上、説明したように、本実施形態に係る携帯電話機10では、キーシート80よりも膨張しやすいチューブ72を介して、表示筐体11の内部空間と操作筐体14の内部空間とは通じている。このため、表示筐体11及び操作筐体14の内部の圧力が高くなった場合に生じるキーシート80の変形を防ぐことができる。
【0037】
また、本実施形態に係る携帯電話機10では、キーシート80の膨張を防ぐために、キーシート80の剛性を上げる必要がない。このため、キーシート80を薄型とすることができる。ひいては、携帯電話機10を薄型化、小型化とすることができる。
【0038】
また、本実施形態に係る携帯電話機10では、キーシート80の膨張を防ぐために、キーシート80をメタルドームシート81に貼り付ける必要がない。このため、キーシートをメタルドームシートに貼り付けた携帯電話機よりも、操作部26の押し感が良好になる。
【0039】
また本実施形態においては、基板40と基板41との接続に、同軸ケーブル70を用いているが、これに限らず、フレキシブル配線基板を用いてもよい。
【0040】
また本実施形態においては、表示筐体11及び操作筐体14の内部の圧力が高くなった場合、チューブ72が膨張する。これに限らず、チューブ以外の弾性の部材を設け、この弾性の部材を、膨張させるようにしてもよい。
【0041】
また本実施形態においては、同軸ケーブル70の外周に設けられたチューブ72は、同軸ケーブル70を防水するとともに、表示筐体11及び操作筐体14の内部の圧力が高くなった場合には膨張する、二つの機能を有している。これに限らず、通常の防水チューブを同軸ケーブル70の外周に設けるとともに、内部の圧力が高くなった場合に膨張するチューブを、別の箇所に設けてもよい。
【0042】
また本実施形態においては、キーシート80は、積層されたPETフィルムとラバーシートとを有している。これに限らず、キーシートは、PETフィルムのみを有していてもよい。
【0043】
本発明は、上記実施形態で説明した携帯電話機に限らず、PDA(Personal Digital Assistant)、PHS(Personal Handy-phone System)、携帯型PC(Mobile Personal Computer)などの携帯通信端末、及びその他の情報処理装置においても適用することができる。
【0044】
また、本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施形態及び変形が可能とされるものである。上述した実施形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0045】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0046】
(付記1)ユーザからの情報を受け付ける操作部を有する操作筐体と、前記操作筐体の内部空間に通じる空間を有する膨張部材と、を有する携帯通信端末。
【0047】
(付記2)前記ユーザに情報を表示するための表示部を有する表示筐体を更に備え、前記操作筐体の内部空間と、前記表示筐体の内部空間とは、前記膨張部材を介して通じている付記1に記載の携帯通信端末。
【0048】
(付記3)前記膨張部材は、弾性素材からなるチューブである付記1又は2に記載の携帯通信端末。
【0049】
(付記4)前記チューブには、前記操作筐体の内部空間に配置される電子ユニットと、前記表示筐体の内部空間に配置される電子ユニットとを接続する同軸ケーブルが配線される付記3に記載の携帯通信端末。
【0050】
(付記5)前記チューブには、前記操作筐体の内部空間に配置される電子ユニットと、前記表示筐体の内部空間に配置される電子ユニットとを接続するフレキシブル配線基板が配線される付記3に記載の携帯通信端末。
【符号の説明】
【0051】
10 携帯電話機
11 表示筐体
12、15 筐体本体
13、16 筐体蓋部
13a、16a ヒンジ筒
13b、16c 孔
14 操作筐体
15a 通気孔
15b、16b、41b 開口
17 ヒンジユニット
20 表示部
22 マイク
24 スピーカ
26 操作部
40、41 基板
41a コネクタ
42、43、53、61、73、74 パッキン
50、51 ヒンジ軸
52 キャップ
54 通気膜
60 電池
62 カバー
70 同軸ケーブル
72 チューブ(膨張部材)
75、76 コネクタ
80 キーシート
80a キートップ
81 メタルドームシート
81a メタルドーム
82 両面テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザからの情報を受け付ける操作部を有する操作筐体と、
前記操作筐体の内部空間に通じる空間を有する膨張部材と、
を有する携帯通信端末。
【請求項2】
前記ユーザに情報を表示するための表示部を有する表示筐体を更に備え、
前記操作筐体の内部空間と、前記表示筐体の内部空間とは、前記膨張部材を介して通じている請求項1に記載の携帯通信端末。
【請求項3】
前記膨張部材は、弾性素材からなるチューブである請求項1又は2に記載の携帯通信端末。
【請求項4】
前記チューブには、前記操作筐体の内部空間に配置される電子ユニットと、前記表示筐体の内部空間に配置される電子ユニットとを接続する同軸ケーブルが配線される請求項3に記載の携帯通信端末。
【請求項5】
前記チューブには、前記操作筐体の内部空間に配置される電子ユニットと、前記表示筐体の内部空間に配置される電子ユニットとを接続するフレキシブル配線基板が配線される請求項3に記載の携帯通信端末。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−188135(P2011−188135A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−49763(P2010−49763)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】