説明

携帯電子機器

【課題】消費電力を極力抑えつつ種類の異なる有用な情報を十分に受信することができる携帯電子機器を提供する。
【解決手段】携帯電話機1は、送信されてくる緊急地震速報(EEW)を受信するEEW受信部23と、放送される緊急警報放送(EWS)を受信可能状態にて受信するEWS受信部24と、EEW受信部23が緊急地震速報を受信するとEWS受信部24を受信不可能状態から受信可能状態に切り替える制御を行う制御部30とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistants)等の携帯電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、地震、津波、川の氾濫等の自然災害、及び暴動等の人的災害の被害の拡大を極力抑えるべく、緊急地震速報(EEW:Earthquake Early Warning)や緊急警報放送(EWS:Emergency Warning System)等を報知するシステムが実現されている。緊急地震速報は、地震発生時に震源や地震の規模を直ちに推定し、これに基づいて各地における揺れの到達時刻や震度を予測して可能な限り素早く知らせる予報及び警報をいう。また、緊急警報放送は、自然災害、人的災害に拘わらず、大規模災害が発生した場合に、待機状態にあるテレビ・ラジオを自動的に受信可能状態に移行させて行われる放送をいう。
【0003】
近年、携帯電話機を始めとした携帯電子機器は、ユーザの利便性を向上させるとともに付加価値を高めるべく高度に多機能化されており、以上の緊急警報放送等のテレビ放送を受信可能な携帯電話機も開発されている。以下の特許文献1には、緊急警報放送信号を受信して自動的に受信可能状態になった後の所定期間内に、ユーザによる継続視聴指示が無かった場合には、自動的に待機状態に移行することにより消費電力を低減する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−33013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した緊急地震速報を報知するシステムと緊急警報放送を報知するシステムとは基本的には別個のシステムであって互いに連携されていない。このため、個々のシステムでは有用な情報が報知されているにも拘わらず、互いの連携がされていないために、例えば一方のシステムで報知された情報を受信した時には他方のシステムにおける情報の報知が終了していたという事態が生じ、受信者が有用な情報を十分に得ることができない虞があるという問題がある。
【0006】
また、緊急警報放送を受信する受信機は、上述した通り、緊急警報放送信号を受信したときに自動的に電源を投入して緊急警報放送を受信するものである。このため、緊急警報放送信号を受信するために常時電源が投入されている状態で待機する必要があり、無駄に電力が消費される可能性がある。携帯電話機等の携帯電子機器は、無駄な電力消費があると動作時間が短くなることから、無駄な電力消費を避ける必要がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、消費電力を極力抑えつつ種類の異なる有用な情報を十分に受信することができる携帯電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の携帯電子機器は、送信されてくる第1緊急情報を受信する第1受信部と、放送される第2緊急情報を、受信可能状態にて受信する第2受信部と、前記第1受信部が前記第1緊急情報を受信すると、前記第2受信部を受信不可能状態から前記受信可能状態に切り替える制御を行う制御部とを備えることを特徴としている。
また、本発明の携帯電子機器は、前記第2受信部が、チューナを有し、前記受信可能状態は、前記チューナに電力を供給し続ける状態であり、前記受信不可能状態は、前記チューナに電力を供給しない状態であることを特徴としている。
また、本発明の携帯電子機器は、前記制御部が、前記第2受信部を前記受信不可能状態から前記受信可能状態に切り替える制御を行う際には、前記第1受信部による前記第1緊急情報の受信を抑制することを特徴としている。
また、本発明の携帯電子機器は、前記第1受信部が、メールにて前記第1緊急情報を受信し、前記第1緊急情報が、緊急地震速報により送信される情報であり、前記第2緊急情報が、緊急警報放送により放送される情報であることを特徴としている。
また、本発明の携帯電子機器は、揺れを検出する加速度センサを備えており、前記制御部は、前記第1受信部が前記第1緊急情報を受信した後に前記加速度センサで所定の揺れが検出された場合に、前記第2受信部を前記受信不可能状態から前記受信可能状態に切り替えることを特徴としている。
また、本発明の携帯電子機器は、前記制御部が、前記第2受信部を前記受信可能状態に切り替えてから予め設定された所定の時間が経過したときに、前記第2受信部を前記受信不可能状態に切り替えることを特徴としている。
また、本発明の携帯電子機器は、前記制御部が、前記第2受信部を前記受信可能状態に切り替えてから予め設定された所定の時間が経過し、且つ、当該所定の時間の間に前記第1受信部が前記第1緊急情報を受信しない場合には、前記第2受信部を前記受信不可能状態に切り替えることを特徴としている。
また、本発明の携帯電子機器は、前記制御部が、前記受信可能状態にある前記第2受信部の受信感度が予め設定された基準感度以上である場合に、前記第2受信部で受信される前記第2緊急情報を報知する制御を行うことを特徴としている。
また、本発明の携帯電子機器は、前記制御部が、前記受信可能状態にある前記第2受信部の受信感度が前記基準感度よりも低い場合には、その旨を報知する制御を行うことを特徴としている。
また、本発明の携帯電子機器は、位置の検出を行う位置検出装置を備えており、前記制御部は、前記第2受信部を前記受信可能状態に切り替えた後に、前記位置検出装置で検出される位置が海岸から所定の範囲内である場合には、注意を喚起する情報を報知する制御を行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、消費電力を極力抑えつつ種類の異なる有用な情報を十分に受信することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態による携帯電子機器としての携帯電話機の外観斜視図である。
【図2】携帯電話機の要部構成を示すブロック図である。
【図3】携帯電話機の動作を示すフローチャートである。
【図4】携帯電話機の動作を示すフローチャートである。
【図5】携帯電話機の動作を示すフローチャートである。
【図6】津波発生の注意を喚起するメッセージの表示例を示す図である。
【図7】受信感度が弱であることを喚起するメッセージの表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態による携帯電子機器について詳細に説明する。尚、本実施形態では、携帯電子機器が携帯電話機である場合を例に挙げて説明する。図1は、本発明の一実施形態による携帯電子機器としての携帯電話機の外観斜視図である。図1に示す通り、携帯電話機1は、第一筐体11、第一筐体11の厚さ方向に重ね合わせ可能な第二筐体12、及び第一筐体11と第二筐体12とを相互に折り畳み自在に連結するヒンジ部13を備えている。ヒンジ部13は、第一筐体11の基端部11aと第二筐体12の基端部12aとを連結するように配されている。
【0012】
第二筐体12の内部には、各種情報を表示する表示領域14aを有するLCD(Liquid Crystal Display:液晶表示装置)又はEL(Electro Luminescence:有機EL)ディスプレイ等からなる表示部14及び通話用のスピーカ15が設けられている。表示部14の表示領域14aは、第一筐体11と第二筐体12とを相互に重ね合わせた状態において第一筐体11に対向する第二筐体12の表面12c側に露出している。スピーカ15は、基端部12aとは反対側に位置する第二筐体12の先端部12bに配されており、第二筐体12の表面12cから第二筐体12の内部空間に貫通する開口部12dを介して外方に露出している。
【0013】
第一筐体11の内部には、テンキー16a、通話キー16b、終話キー16c、及び多方向キー16d等の各種の押下操作可能な複数の操作キーを備えるキー操作部16及び通話用のマイクロフォン17が設けられている。尚、上記の終話キー16cは、携帯電話機1の電源をオン(投入)又はオフ(切断)するための電源キーとしても用いられ、上記の方向キー16dは、上キー、下キー、左キー、右キー、及びセンターキー等から構成されている。キー操作部16は、第一筐体11と第二筐体12とを相互に重ね合わせた状態において第二筐体12に対向する第一筐体11の表面11cから外方に露出している。
【0014】
マイクロフォン17は、基端部11aとは反対側に位置する第一筐体11の先端部11bに配されており、第一筐体11の表面11cから第一筐体11の内部空間に貫通する開口部11dを介して外方に露出している。尚、第一筐体11の内部には、キースイッチ、シールドケース、回路基板、及びバッテリー(何れも不図示)等が重ねて配されている。また、第一筐体11内部の先端部11b側には、無線通信用のアンテナ21(図2参照)が収容されている。
【0015】
図2は、携帯電話機の要部構成を示すブロック図である。図2に示す通り、携帯電話機1は、図1を用いて説明したスピーカ15、マイクロフォン17、キー操作部16、及び表示部14に加えて、アンテナ21、無線通信部22、EEW受信部23(第1受信部)、EWS受信部24(第2受信部)、記憶部25、タイマ部26、加速度センサ27、GPS測位部28、バイブレータ29、及び制御部30を備えており、無線通信ネットワーク(図示省略)を介した通話及び通信、並びに緊急地震速報(以下、「EEW」ともいう)及び緊急警報放送(以下、「EWS」ともいう)の受信が可能である。
【0016】
無線通信部22は、アンテナ21を介して無線通信ネットワークの一部をなす基地局(図示省略)との間で無線信号の送受信を行うことで、その無線通信ネットワークを利用する他の携帯電話機のユーザとの間の通話を実現するものである。尚、この無線通信部22は、他のユーザとの間の通話のみならず、電子メールの送受信やホームページの閲覧等も実現可能である。
【0017】
EEW受信部23は、緊急地震速報によって送信されてくるEEW情報(第1緊急情報)を受信し、受信したEEW情報を制御部30に出力する。具体的に、緊急地震速報は、EメールやCメール等の電子メールにて送信され、EEW受信部23は、電子メールに含まれるEEW情報を受信する。尚、このEEW受信部23は、ハードウェアによって実現されていても良く、ソフトウェアによって実現されていても良い。
【0018】
EWS受信部24は、緊急警報放送によるEWS情報(第2緊急情報)を受信し、受信したEWS情報を制御部30に出力する。このEWS受信部24は、テレビ放送或いはラジオ放送を受信するチューナで実現され、制御部30の制御によって電源(電力)の供給が行われ続けている状態(受信可能状態)と、電源の供給が行われていない状態(受信不可能状態)とが切り替えられる。ここで、電源の供給が行われている状態とは、緊急警報放送信号が受信可能な待機状態又は緊急警報放送を受信している動作状態をいい、電源の供給が行われていない状態とは、緊急警報放送信号及び緊急警報放送の何れもが受信できない停止状態をいう。
【0019】
記憶部25は、例えば不揮発性の半導体メモリによって実現され、携帯電話機1で用いられる文字、記号、画像、地図等の各種情報、携帯電話機1の各種機能を実現するプログラム、及びプログラムの処理で一時的に用いられる各種データを記憶する。また、記憶部25には、地震の揺れの特徴を示す振幅データ(地震による揺れの経時変化を示すデータ)が記憶される。詳細は後述するが、この振幅データは、加速度センサ27で検出された揺れが地震による揺れであるか否かを判断するために用いられる。
【0020】
タイマ部26は、時刻を計時するものであり、現在時刻を示す情報を制御部30に出力する。また、タイマ部26は、制御部30によって指示された時間を指示されたタイミングで計時し、計時を終了した場合にはその旨を示す信号を制御部30に出力する。尚、制御部30がタイマ部26を制御することによって、一時に複数の時間を計時することが可能である。
【0021】
加速度センサ27は、携帯電話機1の状態(姿勢、向き)や揺れを検出するために設けられたセンサであり、その検出結果は制御部30に出力される。尚、本実施形態において、加速度センサ27は、地震の揺れを検出するために用いられる。GPS測位部28は、GPS(Global Positioning System、全地球測位システム)の衛星から送出される位置検出用信号(GPS信号)を受信し、受信したGPS信号に基づいて携帯電話機1の位置(緯度及び経度)を示す位置情報を算出し、その算出結果を制御部30にする。バイブレータ29は、振動子を備えており、制御部30の制御によって振動子が振動することによって、携帯電話機1のユーザに対し、電話や電子メールの着信があった旨、緊急地震速報や緊急警報放送を受信した旨等を報知する。
【0022】
制御部30は、図2に示す各ブロックを制御することにより、携帯電話機1の動作を統括的に制御する。例えば、携帯電話機1のユーザによるキー操作部16の操作に応じて、無線通信部22を制御することによって通話又は通信を実現する。また、EEW受信部23がEEW情報を受信した場合には、EWS受信部24に対する電源供給を行って、EWS受信部24を停止状態から緊急警報放送信号が受信可能な待機状態に切り替える制御を行う。かかる制御を行う際には、制御部30は、EEW受信部23を制御してEEW情報の受信を抑制させる。尚、制御部30によって行われる制御の詳細については後述する。
【0023】
次に、上記構成における携帯電話機1の動作について説明する。図3〜5は、携帯電話機の動作を示すフローチャートである。尚、図3〜5は、緊急地震速報や緊急警報放送の受信処理に関連する処理を示すフローチャートであって、図3がその処理のメインルーチンを示し、図4,5がサブルーチンを示している。尚、図3に示すメインルーチンは、携帯電話機1の電源が投入されている状態(例えば、待ち受け状態)において一定の周期で行われる。
【0024】
図3に示すメインルーチンが開始されると、まず制御部30は、EEW受信部23が緊急地震速報(EEW)を受信したか否かを判断する(ステップS11)。EEW受信部23が緊急地震速報を受信していないと判断した場合(ステップS11の判断結果が「NO」の場合)には、図3に示す一連の処理が終了する。これに対し、EEW受信部23が緊急地震速報を受信したと判断した場合(ステップS11の判断結果が「YES」の場合)には、制御部30はEEW受信部23から出力されるEEW情報を報知する制御を行う(ステップS12)。具体的には、EEW情報に応じた文字を表示部14に表示させ、EEW情報に応じた音声をスピーカ15から発生させ、或いはEEW情報に応じた振動をバイブレータ29に発生させる制御を行う。
【0025】
EEW情報の報知が終了すると、制御部30は、タイマ部26を制御して揺れ検出用タイマを起動し(ステップS13)、加速度センサ27を用いた地震の揺れの検出を開始する(ステップS14)。ここで、上記の揺れ検出用タイマは、地震の揺れを検出する期間を計時するために用いられるタイマであり、その計時時間は数秒〜数十秒程度に設定される。緊急地震速報を受信した後に加速度センサ27を用いた地震の揺れを検出するのは、受信した緊急地震速報が正しいものであるか否か(誤報であるか否か)を確認するためである。
【0026】
加速度センサ27を用いた揺れの検出が開始されると、制御部30は、異常な揺れを検出したか否かを判断する(ステップS15)。具体的に、制御部30は、加速度センサ27の検出結果と記憶部25に記憶された振幅データとを比較し、振幅の大きさ、振幅の周期、振幅の減衰率等を総合的に判断し、加速度センサ27で検出された揺れが、振幅データで示される地震の揺れに似ているか否かを判断する。
【0027】
加速度センサ27で揺れが検出されず、或いは加速度センサ27で検出された揺れが振幅データで示される地震の揺れに似ておらず、異常な揺れが検出されていないと判断した場合(ステップS15の判断結果が「NO」の場合)には、制御部30は揺れ検出用タイマが満了したか否かを判断する(ステップS16)。揺れ検出用タイマが満了していないと判断した場合(ステップS16の判断結果が「NO」の場合)には、ステップS15の処理が繰り返される。これに対し、揺れ検出用タイマが満了したと判断した場合(ステップS16の判断結果が「YES」の場合)には、制御部30は加速度センサ27を用いた地震の揺れの検出を終了し(ステップS17)、これにより図3に示す一連の処理が終了する。
【0028】
これに対し、ステップS15において、加速度センサ27で検出された揺れが振幅データで示される地震の揺れに似ており、異常な揺れが検出されたと判断した場合(判断結果が「YES」の場合)には、制御部30はGPS測位部28を用いて位置検出処理を行う(ステップS18)。位置検出処理が開始されると、図4に示す通り、まず制御部30は、GPS測位部28によるGPS測位が可能であるか否かを判断する(ステップS21)。
【0029】
例えば、携帯電話機1が地下に位置しており、GPS測位部28がGPSの衛星から送出されるGPS信号を受信できない場合には、ステップS21の判断結果は「NO」になり、図4に示す一連の処理が終了する。これに対し、GPS測位部28によるGPS測位が可能であると判断した場合(ステップS21の判断結果が「YES」の場合)には、GPS測位部28によるGPS測位が行われ、その結果が制御部30に出力される(ステップS22)。
【0030】
GPS測位部28の測位結果が入力されると、制御部30は、記憶部25に記憶された地図データを読み出し、GPS測位部28の測位結果で示される位置が沿岸付近であるか否かを判断する(ステップS23)。例えば、GPS測位部28の測位結果で示される位置と周囲の海岸線との最短距離が5km以内であるかを判断することによって沿岸付近であるか否かを判断する。制御部30が沿岸付近ではないと判断した場合(ステップS23の判断結果が「NO」の場合)には、図4に示す一連の処理が終了する。
【0031】
これに対し、沿岸付近であると判断した場合(ステップS23の判断結果が「YES」の場合)には、制御部30は携帯電話機1のユーザに対して津波注意を喚起するための制御を行う(ステップS24)。例えば、津波注意を喚起するメッセージを表示部14に表示する制御を行う。図6は、津波発生の注意を喚起するメッセージの表示例を示す図である。図6に示す通り、表示部14の表示領域14aには「沿岸付近のため津波の危険性がございます!」なるメッセージが表示される。
【0032】
表示部14に表示されたメッセージを参照することにより、携帯電話機1のユーザは、津波の危険性があることを知ることができる。尚、津波発生の注意を喚起するメッセージを表示部14に表示することに代えて、又は表示とともに、津波発生の注意を喚起する音声をスピーカ15から発生させても良い。これにより、目が不自由なユーザも、津波の危険性があることを知ることができる。
【0033】
GPS測位部28を用いた位置検出処理が終了すると、制御部30は、EWS受信部24を制御して緊急警報放送の受信処理を行う(ステップS19)。尚、かかる制御を行う際には、制御部30は、EEW受信部23を制御してEEW受信部23にEEW情報の受信を抑制させる。これは、EEW受信部23の消費電力を削減するためである。緊急警報放送の受信処理が開始されると、図5に示す通り、まず制御部30は、EWS受信部24に対する電源供給を行って、EWS受信部24を停止状態から緊急警報放送信号が受信可能な待機状態に切り替える制御を行う(ステップS31)。これにより、EWS受信部24は、緊急警報放送信号を受信すれば動作状態に切り替わることが可能な状態になる。
【0034】
EWS受信部24に対する電源供給を行うと、制御部30は、タイマ部26を制御して受信用タイマを起動する(ステップS32)。ここで、上記の受信用タイマは、EWS受信部24で緊急警報放送を受信する期間を計時するために用いられるタイマであり、その計時時間は数分〜十数分程度に設定される。この受信用タイマは、EWS受信部24における無駄な電力消費を抑えるためのタイマである。次に、制御部30は、受信用タイマが満了したか否かを判断する(ステップS33)。
【0035】
受信用タイマが満了していないと判断した場合(ステップS33の判断結果が「NO」の場合)には、制御部30は、EWS受信部24の受信感度が強であるか否か判断する(ステップS34)。具体的には、予め設定された強度以上の受信信号がEWS受信部24から出力されており、EWS受信部24の受信感度が予め設定された基準感度以上であるか否かを判断することにより、受信感度が強であるか否かを判断する。
【0036】
EWS受信部24の受信感度が強であると判断した場合(ステップS34の判断結果が「YES」の場合)には、制御部30はEWS受信部24が緊急警報放送を受信したか否かを判断する(ステップS35)。緊急警報放送を受信していないと判断した場合(ステップS35の判断結果が「NO」の場合)には、ステップS33の処理に戻って受信用タイマが満了したか否かが判断される。
【0037】
これに対し、EWS受信部24が緊急警報放送を受信したと判断した場合(ステップS35の判断結果が「YES」の場合)には、制御部30はEWS受信部24から出力されるEWS情報を報知する制御を行う(ステップS36)。具体的には、EEW情報を報知する場合と同様に、EWS情報に応じた文字を表示部14に表示させ、EWS情報に応じた音声をスピーカ15から発生させ、或いはEWS情報に応じた振動をバイブレータ29に発生させる制御を行う。尚、EWS情報が報知されると、ステップS33の処理に戻って受信用タイマが満了したか否かが判断される。
【0038】
ステップS34において、EWS受信部24の受信感度が強ではないと判断した場合(判断結果が「NO」の場合)には、制御部30は携帯電話機1のユーザに対して受信感度が弱であることを喚起するための制御を行う(ステップS37)。例えば、受信感度が弱であることを喚起するメッセージを表示部14に表示する制御を行う。図7は、受信感度が弱であることを喚起するメッセージの表示例を示す図である。図7に示す通り、表示部14の表示領域14aには「受信感度が弱く緊急警報放送が受信できません!」なるメッセージが表示される。
【0039】
表示部14に表示されたメッセージを参照することにより、携帯電話機1のユーザは、受信感度が低いことが原因で緊急警報放送が受信できない旨を知ることができる。これにより、携帯電話機1のユーザは、緊急警報放送を受信することができる場所に移動するといった対策を早期にとることができる。受信感度が弱であることをを喚起するメッセージを表示部14に表示することに代えて、又は表示とともに、受信感度が弱であることを喚起する音声をスピーカ15から発生させても良い。これにより、目が不自由なユーザも、受信感度が低いことが原因で緊急警報放送が受信できない旨を知ることができる。尚、以上の喚起がされた後は、ステップS33の処理に戻って受信用タイマが満了したか否かが判断される。
【0040】
他方、受信用タイマが満了したと判断した場合(ステップS33の判断結果が「YES」の場合)には、制御部30は、EWS受信部24に対する電源供給を停止して、EWS受信部24を停止状態に切り替える制御を行う(ステップS38)。これにより、EWS受信部24は、緊急警報放送信号及び緊急警報放送の何れもが受信できない状態になり、EWS受信部24における無駄な電力消費を抑えることができる。
【0041】
次いで、制御部30は、図5に示すEWS受信処理が開始された後に、緊急警報放送が受信済みであるか否かを判断する(ステップS39)。緊急警報放送が受信済みであると判断した場合(ステップS39の判断結果が「YES」の場合)には、図5に示す一連の処理が終了する。これに対し、緊急警報放送が受信済みではないと判断した場合(ステップS39の判断結果が「NO」の場合)には、制御部30は、タイマ部26を制御して再受信用タイマを起動する(ステップS40)。
【0042】
ここで、上記の再受信用タイマは、EWS受信部24に対する電源供給を再度行うまでの時間(インターバル期間)を計時するために用いられるタイマであり、その計時時間は数分〜十数分程度に設定される。次に、制御部30は、再受信用タイマが満了したか否かを判断する(ステップS41)。再受信用タイマが満了していないと判断した場合(ステップS41の判断結果が「NO」の場合)には、ステップS41の処理が繰り返される。
【0043】
これに対し、再受信用タイマが満了したと判断した場合(ステップS41の判断結果が「YES」の場合)には、制御部30は、EWS受信部24に対する電源供給を行って、EWS受信部24を停止状態から緊急警報放送信号が受信可能な待機状態に切り替える制御を行う(ステップS31)。かかる制御を行うことによって、緊急警報放送の受信が再度試みられる。尚、図3に示す一連の処理が終了すると、図3のステップS16の処理が行われる。
【0044】
以上の通り、本実施形態では、EEW受信部23が緊急地震速報を受信したときに、制御部30がEWS受信部24に対する電源供給を行って、EWS受信部24を停止状態から緊急警報放送信号が受信可能な待機状態に切り替える制御を行っているため、緊急地震速報と緊急警報放送という種類の異なる有用な情報の何れをも受信することができる。また、EWS受信部24に対する電源供給を行うのは、緊急地震速報を受信してから一定の期間(受信用タイマが満了するまでの期間)のみであるため、EWS受信部24における無駄な電力消費を抑えることができる。
【0045】
また、上記実施形態では、EEW受信部23が緊急地震速報を受信した後に加速度センサ27を用いて地震の揺れの有無を検出し、地震の揺れが検出された場合にのみEWS受信処理を行っているため、受信した緊急地震速報が誤報である場合の無駄な電力消費を抑えることができる。加えて、GPS測位部28の測定結果に基づいて沿岸付近であるか否かを判断し、沿岸付近である場合には注意を喚起する報知をユーザに対して行っているため、津波の危険性を早急にユーザに知らせることができる。
【0046】
また、緊急警報放送の受信感度が低い場合にはその旨をユーザに報知しているため、未受信のEWS情報を少なくすることができる。更に、EWS受信部24に対する電源供給を停止した後に、緊急警報放送が受信されていない場合には、EWS受信部24に対して再度の電源供給を行って緊急警報放送を再度受信するようにしているため、無駄な電力消費を抑えつつ、未受信のEWS情報を少なくすることが可能である。
【0047】
以上、本発明の一実施形態による携帯電子機器について説明したが、本発明は上記実施形態に制限されず、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、上記実施形態では、EEW情報が電子メールで送信され、EWS情報がテレビ放送やラジオ放送により放送される場合を例に挙げて説明した。しかしながら、EEW情報がテレビ放送やラジオ放送により放送され、EWS情報が電子メールで送信される場合にも本発明は適用可能である。
【0048】
また、上記実施形態では、携帯電話機1が備えるGPS測位部28によって携帯電話機1の位置を測定する場合を例に挙げて説明したが、携帯電話機1の位置測定はGPS測位に制限されない。例えば、複数の基地局から送信される電波の到達時間に基づいて位置を測定しても良い。また、上記実施形態では、携帯電話機1の制御部30が測定された位置情報に基づいて沿岸付近であるか否かを判定していた。しかしながら、測定された位置情報をサーバ装置に送信して沿岸付近であるかを判定してもらい、その判定結果を受信する形態であっても良い。
【0049】
また、上記実施形態では、制御部30は、EWS受信部24に対する電源投入を行ってから受信用タイマが満了したときにEWS受信部24に対する電源供給を停止する制御を行っていた(図5のステップS31〜S38参照)。しかしながら、EWS受信部24に対する電源供給を停止する制御(ステップS38)は、EWS受信部24に対する電源投入を行ってから受信用タイマが満了し、且つ、受信用タイマが満了するまでにEEW情報がEEW受信部23で受信されなかった場合に行っても良い。これにより、受信用タイマの満了前にEEW情報が再送された場合には、EWS受信部24に対する電源供給が継続されるため、EWS情報を受信できる可能性が高まる。
【0050】
更に、上記実施形態では、位置検出処理(ステップS18)を行ってからEWS受信処理(ステップS19)を行う例について説明したが、これらの処理を逆の順序で行っても良く、また並列して行っても良い。また、本発明は携帯電話機に限られず、PDA等の携帯性を有する携帯電子機器に適用可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 携帯電話機
23 EEW受信部
24 EWS受信部
27 加速度センサ
28 GPS測位部
29 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信されてくる第1緊急情報を受信する第1受信部と、
放送される第2緊急情報を、受信可能状態にて受信する第2受信部と、
前記第1受信部が前記第1緊急情報を受信すると、前記第2受信部を受信不可能状態から前記受信可能状態に切り替える制御を行う制御部と
を備えることを特徴とする携帯電子機器。
【請求項2】
前記第2受信部は、チューナを有し、
前記受信可能状態は、前記チューナに電力を供給し続ける状態であり、
前記受信不可能状態は、前記チューナに電力を供給しない状態である
ことを特徴とする請求項1記載の携帯電子機器。
【請求項3】
前記制御部は、前記第2受信部を前記受信不可能状態から前記受信可能状態に切り替える制御を行う際には、前記第1受信部による前記第1緊急情報の受信を抑制することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の携帯電子機器。
【請求項4】
前記第1受信部は、メールにて前記第1緊急情報を受信し、
前記第1緊急情報は、緊急地震速報により送信される情報であり、
前記第2緊急情報は、緊急警報放送により放送される情報である
ことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の携帯電子機器。
【請求項5】
揺れを検出する加速度センサを備えており、
前記制御部は、前記第1受信部が前記第1緊急情報を受信した後に前記加速度センサで所定の揺れが検出された場合に、前記第2受信部を前記受信不可能状態から前記受信可能状態に切り替えることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一項に記載の携帯電子機器。
【請求項6】
前記制御部は、前記第2受信部を前記受信可能状態に切り替えてから予め設定された所定の時間が経過したときに、前記第2受信部を前記受信不可能状態に切り替えることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の携帯電子機器。
【請求項7】
前記制御部は、前記第2受信部を前記受信可能状態に切り替えてから予め設定された所定の時間が経過し、且つ、当該所定の時間の間に前記第1受信部が前記第1緊急情報を受信しない場合には、前記第2受信部を前記受信不可能状態に切り替えることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の携帯電子機器。
【請求項8】
前記制御部は、前記受信可能状態にある前記第2受信部の受信感度が予め設定された基準感度以上である場合に、前記第2受信部で受信される前記第2緊急情報を報知する制御を行うことを特徴とする請求項1から請求項7の何れか一項に記載の携帯電子機器。
【請求項9】
前記制御部は、前記受信可能状態にある前記第2受信部の受信感度が前記基準感度よりも低い場合には、その旨を報知する制御を行うことを特徴とする請求項8記載の携帯電子機器。
【請求項10】
位置の検出を行う位置検出装置を備えており、
前記制御部は、前記第2受信部を前記受信可能状態に切り替えた後に、前記位置検出装置で検出される位置が海岸から所定の範囲内である場合には、注意を喚起する情報を報知する制御を行うことを特徴とする請求項1から請求項9の何れか一項に記載の携帯電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−176587(P2011−176587A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38821(P2010−38821)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】