説明

携帯電話端末による事故状況通報方法、事故状況通報機能を有する携帯電話端末、および事故状況通報プログラム

【課題】GPS機能を搭載しない携帯電話端末を利用して、事故の状況および事故の発生位置を事故処理実施機関へ即座に知らせることができるようにする。
【解決手段】動画撮影機能を有する携帯電話端末12を、車両のダッシュボード上に取り付け、走行方向前方の動画像撮影を行って、ドライブレコーダ動作を行わせる。加速度センサ部32が設定レベル以上の衝撃を検出したとき、該衝撃検知時点の前後一定時間内に撮影記録された動画データ(画像データ)と現在位置(自端末の現在位置(車両の現在位置))を、通信部34より携帯電話基地局経由で所定の事故処理実施機関へ自動送信する。自端末の現在位置は、複数の基地局から送られてくるその基地局の位置およびその基地局と自端末との間の距離から算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話端末を利用してドライブレコーダ機能を実現する携帯電話端末による事故状況通報方法、事故状況通報機能を有する携帯電話端末、および事故状況通報プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両に動画撮影可能なカメラを搭載し、車両事故等が発生した際に、事故原因の事後的な検証のための客観的証拠を残すことを目的として、事故発生前後一定時間の状況を画像として記録保存する機能を有するドライブレコーダが提案されている。
【0003】
しかし、ドライブレコーダ専用装置は高価であるため、一般乗用車への普及は進んでいない。そこで、近年普及しているカメラ機能付き携帯電話端末を車両のダッシュボード等に設置した携帯電話取付け機構に固定し、車両運転中に該カメラ機能付き携帯電話端末で撮影した車両前方の動画像を記録保存することにより、カメラ機能付き携帯電話端末にドライブレコーダとしての機能を持たせ、ドライブレコーダシステムを安価に提供にする技術が特許文献1,2等に記載されている。
【0004】
例えば、特許文献1に記載されたドライブレコーダ機能を有する携帯電話端末は、カメラと、このカメラによる撮像画像情報を記録する記録メモリと、前記カメラによる連続撮像画像情報に、日時情報、撮像速度情報を合成して前記記録メモリにエンドレスにて記録するように制御すると共に、衝撃検知時に前記記録メモリの内容を補助記録媒体に保存する手段とを備えている。
【0005】
また、特許文献1に記載されたドライブレコーダ機能を有する携帯電話端末では、更に、衝突検知直前の車速から、車両火災発生の恐れがあるか否かを判定し、衝突検知直前の車速が、車両火災発生の恐れがある速度以上である場合には、予め設定された所定の送信先に前記記録メモリの内容を送付することにより、衝突後の車両火災などによるデータ消失を未然に防止する手段を備えており、さらに、衝撃検知後に、安否確認要求メッセージ/アナウンスを行って確認キーの押下をチェックし、確認キーの押下が一定時間ない場合は、運転者の負傷や失神などの緊急事態と判断して、携帯電話端末のデータ通信機能と連携して所定の保障会社ヘデータ通信することにより、運転者の安否を確認する手段を備えている。
【0006】
また、特許文献2に記載されたドライブレコーダ機能を有する携帯電話端末は、GPS機能を備えており、複数のGPS衛星からの電波を同時に受信して車両の現在位置を認識する。これにより、事故などが発生した場合、その発生位置を特定することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−245836号公報
【特許文献2】特開2007−164775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1,2に記載されたドライブレコーダ機能を有する携帯電話端末によれば、既に普及しているカメラ機能付き携帯電話端末を利用してドライブレコーダ機能を実現できるため、ドライブレコーダシステムの低コスト化、およびドライブレコーダの普及促進への寄与が可能となる。
【0009】
しかし、特許文献1に示された技術では、車両火災発生の恐れがある速度以上でない事故のときには、携帯電話端末内のメモリに記録された動画データは予め設定された所定の送信先には送付されないので、その場合には、データの提出者に対して有利になるようなデータの改竄の可能性が生ずる。
【0010】
また、特許文献1に示された技術では、衝撃検知後に、安否確認要求メッセージ/アナウンスを行って確認キーの押下をチェックし、確認キーの押下が一定時間ない場合は、運転者の負傷や失神などの緊急事態と判断して、携帯電話端末のデータ通信機能と連携して所定の保障会社ヘデータ通信されるので、所定の保障会社は、運転者が確認キーを押下しない場合には緊急事態の発生を判断して救援活動を始動することが可能であるが、運転者が確認キーを押下した場合には、その時点では事故の発生を認識できないという問題がある。さらに、事故通報時に、事故が発生した位置を示す情報は通知されないので、事故発生位置の確認が困難であるという問題がある。
【0011】
なお、特許文献1に特許文献2に示された車両の現在位置を認識する技術を適用し、事故が発生した位置を示す情報を通知することが考えられるが、GPS機能が携帯電話端末に搭載されている必要があり、GPS機能を搭載しない携帯電話端末では、事故が発生した位置を示す情報を通知することができない。
【0012】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、GPS機能を搭載しない携帯電話端末を利用して、事故の状況および事故の発生位置を事故処理実施機関に即座に知らせることができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このような目的を達成するために、本発明の携帯電話端末による事故状況通報方法は、動画撮影機能を有するカメラ部と、加速度センサ部と、メモリ部とを備えた携帯電話端末による事故状況通報方法であって、複数の基地局から送られてくるその基地局の位置およびその基地局と自端末との間の距離から自端末の現在位置を算出するステップと、カメラ部によって撮影された車両の走行方向前方の画像データと算出した自端末の現在位置を古いデータから順に上書きしながら一定時間分だけメモリ部へ記録させるステップと、加速度センサ部により所定レベル以上の加速度を検出したとき、該所定レベル以上の加速度検出時点においてメモリ部に記録されている画像データと自端末の現在位置を、携帯電話基地局経由で所定の事故処理実施機関へ自動送信するステップとを備えることを特徴とする。
【0014】
本発明の事故状況通報機能を有する携帯電話端末は、動画撮影機能を有するカメラ部と、加速度センサ部と、メモリ部と、複数の基地局から送られてくるその基地局の位置およびその基地局と自端末との間の距離から自端末の現在位置を算出する現在位置算出手段と、カメラ部によって撮影された車両の走行方向前方の画像データと現在位置算出手段で算出された自端末の現在位置を古いデータから順に上書きしながら一定時間分だけメモリ部に記録せる処理手段と、加速度センサ部により所定レベル以上の加速度が検出されたとき、該所定レベル以上の加速度検出時点においてメモリ部に記録されている画像データと自端末の現在位置を、携帯電話基地局経由で所定の事故処理実施機関へ自動送信する自動送信手段とを備えることを特徴とする。
【0015】
本発明の事故状況通報プログラムは、動画撮影機能を有するカメラ部と、加速度センサ部と、メモリ部とを備えた携帯電話端末のコンピュータで実行される事故状況通報プログラムであって、コンピュータに、複数の基地局から送られてくるその基地局の位置およびその基地局と自端末との間の距離から自端末の現在位置を算出する処理と、カメラ部によって撮影された車両の走行方向前方の画像データと算出された自端末の現在位置を古いデータから順に上書きしながら一定時間分だけメモリ部に記録させる処理と、加速度センサ部により所定レベル以上の加速度が検出されたとき、該所定レベル以上の加速度検出時点においてメモリ部に記録されている画像データと自端末の現在位置を、携帯電話基地局経由で所定の事故処理実施機関へ自動送信させる処理とを実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、カメラによる動画撮影機能を持つ携帯電話端末に、事故発生時の動画保存機能(ドライブレコーダ機能)を持たせ、事故発生時の車両の走行方向前方の画像データ(動画データ)および事故発生時の自端末の現在位置を所定の事故処理実施機関へ自動送信するので、事故発生場所、事故状況が事故処理実施機関へ正確かつ迅速に連絡され、早急な救援活動が可能となる。また、事故の事後処理の際にデータ提出者によるデータ改竄の可能性がなく、信頼性の高い証拠とすることが可能となる。
【0017】
また、自端末の現在位置は複数の基地局から送られてくるその基地局の位置およびその基地局と自端末との間の距離から算出されるので、携帯電話端末としてGPS機能を有する高機能のものを用いなくてもよく、高価な専用のドライブレコーダの代わりに、誰もが持っている携帯電話端末をドライブレコーダとして使用可能となり、ドライブレコーダ機能を安価に提供することができ、ドライブレコーダの普及に寄与することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る事故状況通報機能を有する携帯電話端末の一実施例の使用形態を説明する図である。
【図2】この携帯電話端末をダッシュボード上に搭載した場合の取り付け構造の一例を示す図である。
【図3】この携帯電話端末の内部機能ブロック図である。
【図4】この携帯電話端末の制御部が実行する特有の処理動作を示すフローチャートである。
【図5】携帯電話端末と基地局との間のDPCCH/DPDCHフレーム送信の手順を表した図である。
【図6】携帯電話端末と基地局との間の距離および基地局の位置から携帯電話端末の位置座標(現在位置)を算出することができる様子を表した図である。
【図7】制御部が実行する処理動作の他の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施例に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明に係る事故状況通報機能を有する携帯電話端末の一実施例の使用形態を説明する図である。
【0020】
本発明に係る事故状況通報機能を有する携帯電話端末12は、例えば車両10のダッシュボード11上に搭載される。そして、車両10を運転中、携帯電話端末12に内蔵されているカメラにより、走行方向前方の動画撮影を行う。その際、携帯電話端末12は、内蔵されたカメラの視野角が、車両前方の信号機や交差点、歩行者などの撮影対象14がカメラ視野13に収まる最適な視野角となるように設定されてダッシュボード11上に設置される。
【0021】
図2は、図1に示した携帯電話端末12を車両10のダッシュボード11上に搭載した場合の取り付け構造の一例を示す図である。
【0022】
車両のダッシュボード11上に携帯電話端末12を固定設置するための取付機構24が設けられる。携帯電話端末12は、この携帯電話端末12に備えられたカメラレンズ部22を車両前方に向けた状態で、取付機構24によりダッシュボード11上に取り付けられる。取付機構24は、角度調整機構26を有しており、カメラレンズ部22の視野が最適となるように調整可能となっている。
【0023】
携帯電話端末12は、車両10の運転中に、動画撮影、現在位置の算出(後述)等の動作を常時実行するので、動作電源を車載バッテリから供給する方法を採用することが好ましい。その場合、車両のシガープラグなどから受電した電力を携帯電話端末12で利用可能な電力に変成し、電池充電用ケーブル25を介して携帯電話端末12の充電端子と接続した状態で使用する。
【0024】
図3は携帯電話端末12の内部機能ブロック図である。本実施例の携帯電話端末12は、静止画および動画撮影機能を備えたカメラ部31と、所定レベル以上の加速度を検知したときに事故発生を判定する加速度センサ部32と、カメラ部31で撮影した画像データおよび現在位置が記録されるメモリ部35と、事故情報を携帯電話基地局経由で事故処理実施機関へ送信する通信部34と、これら各機能ブロックの動作を制御する制御部36とを備えている。
【0025】
通信部34は、携帯電話端末12の通話機能を実現するための構成でもあり、この通話機能を実現するための構成として更に、スピーカ37、表示部38、操作部39、マイク40を備えている。また、携帯電話端末12の動作のための電源を供給する二次電池からなる電源部41と、電池充電用ケーブル25を介して車載バッテリー等からの給電電流を入力するための電源入力端子42を備えている。
【0026】
メモリ部35には、前記画像データおよび現在位置が記録される記憶部以外に、携帯電話端末12に備えられた機能を実行するための各種プログラム、データが格納されたROM、および制御部36がROMに格納されたプログラムを読み込み、そのプログラムに従って各種機能を実行する際の作業領域として用いるためのRAM等の各種記憶部が含まれている。制御部36およびメモリ部35は、携帯電話端末12に備えられた動作プログラムを実行するためのコンピュータとしての機能を有している。
【0027】
図4は、制御部36が実行する特有の処理動作を示すフローチャートである。以下、このフローチャートに従う制御部36の処理動作について説明する。
【0028】
携帯電話端末12を、運転する車両10のダッシュボード11上に設けた取付機構24に取り付け、角度調整機構26によりカメラレンズ部22が前方に向くように調整して、カメラ視野13に道路の交通状況が映し出されることを液晶表示部21にて確認する。次に、操作部39より、ドライブレコーダモードを開始する操作を行うことにより、携帯電話端末12はステップS1からのドライブレコーダ動作を開始する。
【0029】
ステップS2、ステップS5はループ処理の始端、終端を表しており、終了条件である、割り込み処理(操作部39からのドライブレコーダモード停止入力、または、加速度センサ部32による衝撃の検知)があるまで、このループ処理が実行される。
【0030】
ステップS3では、自端末の現在位置、すなわち車両10の現在位置の算出(位置情報の算出)を行う。この位置情報の算出については後述するが、複数の基地局から送られてくるその基地局の位置およびその基地局と携帯電話端末12との間の距離から自端末の現在位置を算出する。算出した位置情報はメモリ部35に格納される。メモリ部35は有限であるため、ある一定時間以上データがたまった場合は、古いデータから順に上書きしていく。
【0031】
ステップS4では、カメラ部31が撮影した車両前方の動画データは、制御部36によって圧縮処理されるとともに、圧縮処理された動画データはメモリ部35に格納される。メモリ部35は有限であるため、ある一定時間以上データがたまった場合は、古いデータから順に上書きしていく。このステップS3とステップS4は並列に処理される。
【0032】
加速度センサ部32が設定レベル以上の衝撃を検知した場合、または、操作部39からドライブレコーダモードの停止入力があった場合に、割り込み処理ありとなり、ループ処理の終了条件を満たすため、ステップS2〜S5のループ処理は終了する。
【0033】
ステップS6では、ループ処理が終了した時点においてメモリ部35に格納されている位置情報に対して、ファイル名をつけてメモリ部35に保存する。ステップS7では、ループ処理が終了した時点においてメモリ部35に格納されている動画データに対して、ファイル名をつけてメモリ部35に保存する。このステップS6、ステップS7は並列に処理される。
【0034】
ステップS8では割り込み種別の確認を行い、衝撃検知による割り込み処理であった場合は、ステップS9へ移行する。ステップS9では、ステップS6,S7にて保存した位置情報のデータと動画データを、携帯電話機能を用いてあらかじめ設定してある事故処理実施機関へ送信する。
【0035】
ステップS10にてドライブレコーダモードを停止する。ステップS8にて割り込み種別の確認を行い、操作部39によるドライブレコーダモードの停止入力の場合は、直ちにステップS10へ移行し、ドライブレコーダモードを停止する。
【0036】
図5、図6はステップS3で位置情報を算出するための概念図である。図5は携帯電話端末12と基地局100との間のDPCCH/DPDCHフレーム送信の手順を表したものであり、図6は基地局100の位置および携帯電話端末12と基地局100との間の距離rから携帯電話端末12の位置座標(現在位置)を算出することができる様子を表したものである。
【0037】
図5において、TAは「下りDPCCH/DPDCHフレームを基地局が送信してから携帯電話端末が受信するまでの時間」を示し、TBは「携帯電話端末が下りDPCCH/DPDCHフレームの検出後上りDPCCH/DPDCHフレームを送信するまでの時間」を示し、TCは「上りDPCCH/DPDCHフレームを携帯電話端末が送信してから基地局が受信するまでの時間」を示し、TXは「基地局が下りDPCCH/DPDCHフレームを送信してから上りDPCCH/DPDCHフレームを受信するまでの時間」を示している。
【0038】
「3GPP TS25.211、 7.6.3 Uplink/downlink timing at UE」により、携帯電話端末12(UE)において、基地局100への上りDPCCH/DPDCHフレーム送信は、基地局100からの対応する下りDPCCH/DPDCHフレームの最初の検出から1024チップ(266.6usec)後に行われる。すなわち、図5において、TBはTB=266.6usecとなる。したがって、基地局100では、下りDPCCH/DPDCHフレームの送信から、上りDPCCH/DPDCHフレームの受信までの遅延時間TXより、携帯電話端末12までの距離rを算出することができる。
【0039】
また、図6に示されるように、基地局100Aと携帯電話端末12との間の距離r1が分かれば、基地局100Aの位置を中心とした半径r1の円上のどこかに携帯電話端末12が位置することが分かる。携帯電話端末12と基地局100Aとの間の距離r1、携帯電話端末12と基地局100Bとの間の距離r2が分かれば、基地局100Aの位置を中心とした半径r1の円と基地局100Bの位置を中心とした半径r2の円とが交わる2点の内のどちらかに携帯電話端末12が位置することが分かる。携帯電話端末12と基地局100Aとの間の距離r1、携帯電話端末12と基地局100Bとの間の距離r2、携帯電話端末12と基地局100Cとの間の距離r3が分かれば、基地局100Aの位置を中心とした半径r1の円と基地局100Bの位置を中心とした半径r2の円と基地局100Cの位置を中心とした半径r3の円とが交わる1点に携帯電話端末12が位置することが分かる。
【0040】
そこで、本実施例では、各基地局100において、下りDPCCH/DPDCHフレームの送信から、上りDPCCH/DPDCHフレームの受信までの遅延時間より、携帯電話端末12までの距離rを算出するようにし、この算出した距離rを自己の位置(基地局の位置)と合わせて携帯電話端末12へ送るようにしている。この場合、携帯電話端末12では、少なくとも3つの基地局100から送られてくるその基地局100の位置およびその基地局100と自端末との間の距離rから自端末の現在位置を算出し、この算出した自端末の現在位置を車両10の現在位置としてメモリ部35に格納する。
【0041】
以上の説明から分かるように、本実施例によれば、カメラによる動画撮影機能を持つ携帯電話端末12に、事故発生時の動画保存機能(ドライブレコーダ機能)を持たせ、事故発生時の車両10の走行方向前方の動画データ(画像データ)および事故発生時の自端末の現在位置(車両10の現在位置)を所定の事故処理実施機関へ自動送信するので、事故発生場所、事故状況を事故処理実施機関へ正確かつ迅速に連絡することができ、早急な救援活動が可能となる。また事故の事後処理の際にデータ提出者によるデータ改竄の可能性がなく、信頼性の高い証拠とすることが可能となる。
【0042】
また、自端末の現在位置(車両10の現在位置)は複数の基地局100から送られてくるその基地局100の位置およびその基地局100と自端末との間の距離から算出されるので、携帯電話端末12としてGPS機能を有する高機能のものを用いなくてもよく、高価な専用のドライブレコーダの代わりに、誰もが持っている携帯電話端末をドライブレコーダとして使用可能となり、ドライブレコーダシステムの低コスト化、およびドライブレコーダの普及促進に向けて一層の寄与を図ることができる。
【0043】
図7は、制御部36が実行する処理動作の他の例を示すフローチャートである。この例では、事故発生時の動画データおよび事故発生場所を所定の事故処理実施機関へ自動送信した後、事故処理実施機関との間で自動的に音声回線接続を実行して、音声通話を可能にする手段を追加している。
【0044】
図7において、ステップS1〜S10の動作は、図4に示すフローチャートと同様であるので、主にこの例で追加されたステップS11〜S14の動作について、以下説明する。
【0045】
この例において、制御部36は、衝撃検知による割り込みが発生した場合、ステップS9で、ステップS6,S7にて保存した位置情報および動画データを、携帯電話機能を用いてあらかじめ設定してある事故処理実施機関へ送信した後に、ステップS11に移行して事故処理機関との間で音声回線を接続する。
【0046】
事故処理機関側でオフフック動作が行われると通話状態(ステップS12)となり、運転者あるいは同乗者から、事故処理機関側に対して、事故の状況、怪我の状態等、詳細な状況について音声通話により報告することが可能となる。ステップS13で終話要求(端末の操作部39からの入力、または、ネットワーク側からの切断要求)の検出を行い、終話要求がない場合は、ステップS12へ戻り、通話状態を続ける。
【0047】
終話要求があった場合、ステップS14へ移行して音声回線を切断し、音声回線の切断完了後、ステップS10へ移行しドライブレコーダモードを終了する。
【0048】
この例によれば、加速度センサ部32が設定レベル以上の衝撃を検知して事故発生と判定した時の動画データおよび事故発生場所を所定の事故処理実施機関へ自動送信するとともに、事故処理機関との間で音声回線の自動接続が行われるので、運転者あるいは同乗者から、その時の状況を直接聞き出すことができる。また、運転者からの応答がない場合には、運転者が応答不可能な状態にあることが予測でき、早急且つ適切な救援活動が可能となる。
【0049】
また、加速度センサ部32により設定レベル以上の衝撃が検知されて、その時の動画データおよび事故発生場所が所定の事故処理実施機関へ自動送信されたにも拘らず、実際には事故に至らなかったような場合、音声回線により運転者から直接そのときの状況を聞いて確認することができるので、無駄な救援活動あるいは事後処理等をしなくて済む効果も生ずる。
【0050】
その際、運転者に対して、加速度センサ部32により設定レベル以上の衝撃が検知されるような運転操作が行われたため、ステップS14での音声回線切断後にドライブレコーダモードが一旦終了することを通知し、ドライブレコーダモードを再開するためにステップS1のドライブレコーダモード開始操作を行うように指示するとともに、運転者に事故防止のための注意を促すこともできる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の携帯電話端末による事故状況通報方法、事故状況通報機能を有する携帯電話端末、および事故状況通報プログラムは、GPS機能を機能を搭載していない携帯電話端末を利用したドライブレコーダとして、各種車両に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0052】
10…車両、11…ダッシュボード、12…携帯電話端末、13…カメラ視野、14…撮影対象、21…液晶表示部、22…カメラレンズ部、24…取付機構、25…電池充電用ケーブル、26…角度調整機構、31…カメラ部、32…加速度センサ部、34…通信部、35…メモリ部、36…制御部、37…スピーカ、38…表示部、39…操作部、40…マイク、41…電源部、42…電源入力端子、100(100A、100B、100C)…基地局。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動画撮影機能を有するカメラ部と、加速度センサ部と、メモリ部とを備えた携帯電話端末による事故状況通報方法であって、
複数の基地局から送られてくるその基地局の位置およびその基地局と自端末との間の距離から自端末の現在位置を算出するステップと、
前記カメラ部によって撮影された車両の走行方向前方の画像データと前記算出した自端末の現在位置を古いデータから順に上書きしながら一定時間分だけ前記メモリ部へ記録させるステップと、
前記加速度センサ部により所定レベル以上の加速度を検出したとき、該所定レベル以上の加速度検出時点において前記メモリ部に記録されている前記画像データと前記自端末の現在位置を、携帯電話基地局経由で所定の事故処理実施機関へ自動送信するステップと
を備えることを特徴とする携帯電話端末による事故状況通報方法。
【請求項2】
請求項1に記載された携帯電話端末による事故状況通報方法において、
前記自動送信するステップは、
前記所定レベル以上の加速度検出時点において前記メモリ部に記録されている前記画像データと前記自端末の現在位置に対して、ファイル名をつけて前記メモリ部に保存し、該保存したファイル名付きの前記画像データと前記自端末の現在位置を、携帯電話基地局経由で所定の事故処理実施機関へ自動送信する
ことを特徴とする携帯電話端末による事故状況通報方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載された携帯電話端末による事故状況通報方法において、
前記画像データおよび前記自端末の現在位置を前記事故処理実施機関へ送信後、前記事故処理実施期間との間で自動的に音声回線接続を行うステップ
を備えることを特徴とする携帯電話端末による事故状況通報方法。
【請求項4】
動画撮影機能を有するカメラ部と、
加速度センサ部と、
メモリ部と、
複数の基地局から送られてくるその基地局の位置およびその基地局と自端末との間の距離から自端末の現在位置を算出する現在位置算出手段と、
前記カメラ部によって撮影された車両の走行方向前方の画像データと前記現在位置算出手段で算出された自端末の現在位置を古いデータから順に上書きしながら一定時間分だけ前記メモリ部に記録せる処理手段と、
前記加速度センサ部により所定レベル以上の加速度が検出されたとき、該所定レベル以上の加速度検出時点において前記メモリ部に記録されている前記画像データと前記自端末の現在位置を、携帯電話基地局経由で所定の事故処理実施機関へ自動送信する自動送信手段と
を備えることを特徴とする事故状況通報機能付き携帯電話端末。
【請求項5】
請求項4に記載された事故状況通報機能付き携帯電話端末において、
前記自動送信手段は、
前記所定レベル以上の加速度検出時点において前記メモリ部に記録されている前記画像データと前記自端末の現在位置に対して、ファイル名をつけて前記メモリ部に保存し、該保存したファイル名付きの前記画像データと前記自端末の現在位置を、携帯電話基地局経由で所定の事故処理実施機関へ自動送信する
ことを特徴とする事故状況通報機能付き携帯電話端末。
【請求項6】
請求項4または5に記載された事故状況通報機能付き携帯電話端末において、
前記画像データおよび前記自端末の現在位置を前記事故処理実施機関へ送信した後に、自動的に前記事故処理実施期間との間で音声回線接続を行う手段
を備えることを特徴とする事故状況通報機能付き携帯電話端末。
【請求項7】
動画撮影機能を有するカメラ部と、加速度センサ部と、メモリ部とを備えた携帯電話端末のコンピュータで実行される事故状況通報プログラムであって、
前記コンピュータに、
複数の基地局から送られてくるその基地局の位置およびその基地局と自端末との間の距離から自端末の現在位置を算出する処理と、
前記カメラ部によって撮影された車両の走行方向前方の画像データと前記算出された自端末の現在位置を古いデータから順に上書きしながら一定時間分だけ前記メモリ部に記録させる処理と、
前記加速度センサ部により所定レベル以上の加速度が検出されたとき、該所定レベル以上の加速度検出時点において前記メモリ部に記録されている前記画像データと前記自端末の現在位置を、携帯電話基地局経由で所定の事故処理実施機関へ自動送信させる処理と
を実行させることを特徴とする事故状況通報プログラム。
【請求項8】
請求項7に記載された事故状況通報プログラムにおいて、
前記自動送信させる処理は、
前記所定レベル以上の加速度検出時点において前記メモリ部に記録されている前記画像データと前記自端末の現在位置に対して、ファイル名をつけて前記メモリに保存し、該保存したファイル名付きの前記画像データと前記自端末の現在位置を、携帯電話基地局経由で所定の事故処理実施機関へ自動送信させる
ことを特徴とする事故状況通報プログラム。
【請求項9】
請求項7または8に記載された事故状況通報プログラムにおいて、
前記コンピュータに、
前記画像データおよび前記自端末の現在位置を前記事故処理実施機関へ送信した後に、自動的に前記事故処理実施期間との間で音声回線接続を行わせる処理
を実行させることを特徴とする事故状況通報プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−176550(P2011−176550A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38434(P2010−38434)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】