説明

携帯電話端末装置

【課題】を提供する。
【解決手段】携帯電話端末装置は、受信した音声符号化データを復号して音声出力する。このとき、音声符号化データのなかのインデックス情報を用いて各フレームの音声らしさを判定する(ST12)。すなわち、合成フィルタに関するインデックスを用い、合成フィルタの周波数特性またはそれに準ずる特性から各フレームの音声らしさを判定する。詳しくは、現フレームのフィルタ周波数特性と過去フレームのフィルタ周波数特性との類似度を算出し、算出された前記類似度が所定閾値を超えている場合には、現フレームを音声らしくないと判定し、算出された前記類似度が所定閾値以下である場合には、現フレームに音声らしさがあると判定する。音声らしくないフレームに対してその音が出力されないようにパラメータエラー処理を行う(ST14)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信した音声符号化データを復号して音声出力する携帯電話端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、W-CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)の音声通話では、個人のプライバシーを守るために秘匿通信が行われ、単に無線の電波を検波して復調しただけでは音声データを解読できないようにしている。秘匿通信には、基地局と携帯電話端末との間で暗号が使われている。基地局と携帯電話端末とは、互いに暗号処理を開始するタイミングを合わせて秘匿をかけるようにしている(例えば、特許文献1、非特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-54718号公報
【特許文献2】国際公開第2008/053539号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、送受信間で暗号処理のタイミングがずれてしまうことがある。このようなタイミングずれは、電波環境の影響で生じることもあるし、また、通話開始時や基地局間のハンドオーバーを行う場合に基地局と端末との間で暗号処理のタイミングがずれることによって発生する。このような暗号処理のタイミングずれが生じると、受信側で音声符号化データが正常に復号化できず、異音が発生してしまう。そのため、従来の携帯電話端末装置では、音声通話を行う際に、通話相手からの音声がキュルキュルという異音となって聞こえることが稀にあった。
【0005】
また、伝送路で生じる誤りを検出して訂正するFEC(Forward Error Correction)処理を行うことも行われるが(特許文献1)、FEC処理で検出できないような極稀に生じるデータで異音が発生してしまう場合がある。
【0006】
上記のような異音が発生してしまうと、通話音声品質を大きく損なってしまうという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、異音の発生を防止して通話音声品質を向上させる携帯電話端末装置および携帯電話端末装置の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の携帯電話端末装置は、
受信した音声符号化データを復号して音声出力する携帯電話端末装置であって、
音声符号化データのなかのインデックス情報を用いて各フレームの音声らしさを判定する音声情報解析部と、
音声らしくないフレームに対してその音が出力されないようにパラメータエラー処理を行うパラメータエラー処理部と、を備える
ことを特徴とする。
【0009】
本発明の携帯電話端末装置の制御方法は、
受信した音声符号化データを復号して音声出力する携帯電話端末装置の制御方法であって、
音声符号化データのなかのインデックス情報を用いて各フレームの音声らしさを判定し、
音声らしくないフレームに対してその音が出力されないようにパラメータエラー処理を行う
ことを特徴とする。
【0010】
本発明の音声処理装置は、音声符号化データのなかのインデックス情報を用いて各フレームの音声らしさを判定する音声情報解析部と、
音声らしくないフレームに対してその音が出力されないようにパラメータエラー処理を行うパラメータエラー処理部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1実施形態に係る携帯電話端末装置の構成を示す図。
【図2】音声処理部復号化処理の動作手順を示すフローチャート。
【図3】音声情報解析の処理手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態を図示するとともに図中の各要素に付した符号を参照して説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る携帯電話端末装置の構成を示す図である。
携帯電話端末装置10は、送受信回路部1と、信号処理部2と、秘匿処理部3と、音声処理部4と、スピーカ5と、マイク6と、を備える。
送受信回路部1は、例えばW-CDMA方式の変調および復調を行い、基地局(不図示)との間で電波による信号(データ)の送受信をおこなう。
基地局から送信された電波信号は、送受信回路部1で検波および復調され、復調データとして信号処理部2に出力される。
【0013】
信号処理部2は、復調データの中から、制御データやユーザーデータ(音声符号化データ)を分離し、さらに誤り訂正処理を施す。
信号処理部2で処理されたデータは後段の秘匿処理部3に出力される。
【0014】
秘匿処理部3は、音声通話開始に伴い、基地局と公開鍵の受け渡しを行い、この公開鍵を用いて、基地局の暗号処理に同期した暗号解読処理(復号処理)を実行する。すなわち、ユーザーデータ(音声符号化データ)は、秘匿処理部3により、暗号解読がなされる。このとき、公開鍵の情報は制御データとして送受信される。
【0015】
ここで、理想的には、暗号解読処理が基地局の暗号処理に完全に同期しているはずであるが、タイミングがずれる場合がありえる。あるいは、周囲の電波環境によっては前記誤り訂正で訂正しきれない受信エラーが生じている場合がありえる。このようなエラーをそのまま音声出力してしまうと、異音になってしまう恐れがあるところ、本実施形態では、次段の音声処理部4の動作に特徴がある。以下、説明する。
【0016】
暗号が解読されたユーザーデータ(音声符号化データ)は音声処理部4へ出力される。
音声処理部4は、音声情報解析部41、パラメータエラー処理部42、デコーダ43、エンコーダ44、などを有する。
音声処理部4は、秘匿処理部3で暗号解読された音声符号化データを復号する。復号された音声データは、スピーカ5等の出力部から音声信号として出力される。異音の発生を防ぐ処理を行うが、各処理部の動作とともにこの点は後述する。
【0017】
なお、マイク6から入力された音声を基地局に向けて送信する場合には、上記と逆のコースをたどることになる。すなわち、エンコーダ44で音声符号化を行って、暗号処理した後、送受信回路1のアンテナから送信することになる。
本発明は受信動作処理に特徴があるので、送信時の動作については詳しい説明を省略する。
【0018】
音声処理部4における復号化処理の動作手順について、図2のフローチャートを参照しながら具体的な動作説明を行う。
音声処理部4には、秘匿処理部3にて暗号解読された音声符号化データが入力される。音声処理部4は、この音声符号化データを復号処理し、各音声符号化データのインデックスデータを得る(ST11)。
【0019】
次に、ST11の復号処理で得たインデックス情報のうち合成フィルタに関するインデックスに対して処理を行い、フィルタの周波数特性(またはそれに準ずる特性)から音声の特徴を分析する(音声情報解析、ST12)。
この音声情報解析によって、フレームごとの"音声らしさ"を判定する。
【0020】
音声情報解析(ST12)の処理手順を図3のフローチャートに表す。
例えば、合成フィルタに関するインデックスを周波数特性に準じたLSP(Line Spectral Pair)またはLSF(Line Spectral Frequency)に変換し(ST121)、現フレームの特性と過去フレームの特性との類似度(ここでは類似度をDistanceとして記載)を計算する(ST122、ST123、ST124)。
【0021】
類似度の計算は次の式により行う。
現フレームのLSFをCurrLSF[i]とし、過去jフレーム前のLSFをPrevLSF[j][i]とする。
"i"は次数を意味する。
また、"ABS"は絶対値を意味する。
【0022】
【数1】

【0023】
上記式により、現フレームと1フレーム過去との類似度をDistance 1として求め(ST122)、現フレームと2フレーム過去との類似度をDistance 2として求め(ST123)、現フレームと3フレーム過去との類似度をDistance 3として求める(ST124)。
【0024】
上記に求めた各類似度(Distance 1、Distance 2、Distance 3)と予め設定された閾値Aとを対比する(ST125)。ここで、類似度が閾値Aを越えている場合、そのフレームは音声符号化データとして適していないと判断できる。(すなわち、音声らしくなく、異音が発生する可能性がある)
【0025】
そこで、前記算出された類似度のうちいずれかが閾値Aを超えている場合(ST126:YES)、現フレームは"音声らしくない"と判定する(ST127)。その一方、前記算出された類似度の総てが閾値A以下である場合(ST126:NO)、現フレームは"音声らしさがある"と判定する(ST128)。
【0026】
ST12の音声情報解析において"音声らしさ"がある場合(ST13:YES)、通常の音声復号処理を行う(ST15−ST18)。
【0027】
一方、ST12の音声情報解析において"音声らしさ"がない場合(ST13:NO)、異音が発生する可能性があるので、パラメータエラー処理を行う(ST14)。
パラメータエラー処理としては、例えば、フレーム消失処理を行う。これにより、そのフレームによる異音はなくなる。
または、パラメータエラー処理として、正常な音声符号化データで上書きするなどの処理を行う。例えば、音質に重要なパラメータは正常受信したパラメータで置き換える。
また、エラーが数フレームにわたって継続する場合には、音声レベルを徐々に低減するようなフェードアウト処理を実行してもよい。
これにより、異音の発生はなくなる。
【0028】
通常の復号処理(ST15−ST18)では、インデックスから合成フィルタ係数の復号処理を行い(ST15)、電力符号の復号処理を行い(ST16)、固定符号長/適応符号長の復号処理を行う(ST17)。
インデックスから復号された合成フィルタ係数、電力符号、固定符号長/適応符号長で得られた信号ベクトルを用いて、合成音声信号を生成する(ST18)。
合成された音声データ列はスピーカ5を通して出力される。
【0029】
このような本実施形態によれば、基地局と端末間で送受信の暗号開始タイミングがことなる等の原因によりエラーが生じたとしても、異音の発生を防ぐことができ通話音声品質を向上させることができる。
【0030】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0031】
1…送受信回路部、2…信号処理部、3…秘匿処理部、4…音声処理部、5…スピーカ、6…マイク、10…携帯電話端末装置、41…音声情報解析部、42…パラメータエラー処理部、43…デコーダ、44…エンコーダ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信した音声符号化データを復号して音声出力する携帯電話端末装置であって、
音声符号化データのなかのインデックス情報を用いて各フレームの音声らしさを判定する音声情報解析部と、
音声らしくないフレームに対してその音が出力されないようにパラメータエラー処理を行うパラメータエラー処理部と、を備える
ことを特徴とする携帯電話端末装置。
【請求項2】
請求項1に記載の携帯電話端末装置において、
前記音声情報解析部は、合成フィルタに関するインデックスを用い、合成フィルタの周波数特性またはそれに準ずる特性から各フレームの音声らしさを判定する
ことを特徴とする携帯電話端末装置。
【請求項3】
請求項2に記載の携帯電話端末装置において、
前記音声情報解析部は、現フレームのフィルタ周波数特性と過去フレームのフィルタ周波数特性との類似度を算出し、
算出された前記類似度が所定閾値を超えている場合には、現フレームを音声らしくないと判定し、
算出された前記類似度が所定閾値以下である場合には、現フレームに音声らしさがあると判定する
ことを特徴とする携帯電話端末装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の携帯電話端末装置において、
前記パラメータエラー処理部は、音声らしくないと判定されたフレームに対し、フレーム消失処理を行う
ことを特徴とする携帯電話端末装置。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の携帯電話端末装置において、
前記パラメータエラー処理部は、音声らしくないと判定されたフレームに対し、正常な音声符号化データで上書きする処理を行う
ことを特徴とする携帯電話端末装置。
【請求項6】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の携帯電話端末装置において、
前記パラメータエラー処理部は、音声らしくないと判定されたフレームが所定数以上連続した場合には、音声レベルを徐々に低減させるフェードアウト処理を行う
ことを特徴とする携帯電話端末装置。
【請求項7】
受信した音声符号化データを復号して音声出力する携帯電話端末装置の制御方法であって、
音声符号化データのなかのインデックス情報を用いて各フレームの音声らしさを判定し、
音声らしくないフレームに対してその音が出力されないようにパラメータエラー処理を行う
ことを特徴とする携帯電話端末装置の制御方法。
【請求項8】
音声符号化データのなかのインデックス情報を用いて各フレームの音声らしさを判定する音声情報解析部と、
音声らしくないフレームに対してその音が出力されないようにパラメータエラー処理を行うパラメータエラー処理部と、を備える音声処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−159730(P2012−159730A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19856(P2011−19856)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(310006855)NECカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】