説明

携行用調理器具

【課題】
アウトドアなどの際に携行可能であるとともに、屋外でピザやパイなどを容易に調理することができる携行用調理器具を提供する。
【解決手段】
ピザやパイなどの被加熱物を、外部からの加熱手段によって加熱して調理する際に使用される携行用調理器具において、蓄熱性および耐熱性を有する素材より形成された蓋部と鍋部とから構成し、蓋部の全周に亘って、加熱手段を上面に載置可能にするためのフランジ部を有し、かつ、鍋部の側壁の一部に、被加熱物を出し入れするとともに、加熱中に内部が蒸れるのを防止するための開口部を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アウトドアに好適な携行用のオーブン、鍋、調理ポットなどの調理器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の携行用調理器具として、アウトドアなどの料理の際には、煮る、焼く、蒸す、揚げるなどのあらゆる調理に対応できる利便性から、いわゆるダッチオーブンが好まれて使用されていた。
【0003】
図14は、一般的なキャンプ用ダッチオーブンの外観図である。同図において、ダッチオーブン100は、鋳鉄より形成された鍋部101と、同じく鋳鉄から形成された蓋部102とから構成されている。蓋部102は、浅い皿状に形成されているとともに、その周囲にはフランジ部103が設けられているため、上面104に焚火や炭などの加熱手段を置けるようになっている。また、鍋部101は、下面105に、加熱手段である焚火などで使いやすいように複数(3本)の脚106が設けられている。このような構成により、ダッチオーブン100は、上下から加熱される構造になっているので、煮る、焼く、蒸す、揚げるなどのあらゆる調理に対応できるようになっている。
【0004】
また、ダッチオーブン100は、鋳鉄より形成されてので、蓄熱性および耐熱性に優れ、遠赤外線によって被加熱物を熱することができる。これにより、バーベキューなどの屋外で調理をする際にも、容易においしい料理を調理することができる。さらに、鋳鉄製のダッチオーブン100は、強度の面においても優れているので、アウトドア用の調理器具としては好適であり、かつ、低コストで製造することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、近年、アウトドアにおける料理も多様化し、アウトドア愛好者の間では、バーベキューなどの際に、ピザやパイなどを焼くことが可能な調理器具が要望されていた。そこで、上述したように万能な調理器具であるダッチオーブン100を用いてピザの調理を試みてみると、オーブン100内が蒸れてしまい、香ばしいピザを焼くのが困難であった。また、オーブン100の蓋部102をずらして隙間を設けて、蒸れないように加熱する方法もあるが、この方法では、熱が上から逃げてしまうため、内部を高温に維持することができなかった。
【0006】
一般に、ピザは、土やレンガなどから形成されたピザ釜で焼かれる。このようなピザ釜は、蓄熱性が高く、また、遠赤外線によって高温で被加熱物を熱するので、香ばしく、おいしいピザを焼くことができる。
【0007】
しかしながら、上記のようなピザ釜は、所定の場所に据え置かれているものであるため、持ち運ぶことはできない。また、仮に、ピザ釜と同様に、土から形成され、携行可能な大きさに作られた携行用ピザ釜があったとしても、脆弱性に問題があるため、屋外で持ち歩くには不向きであった。
さらに、このような土製のピザ釜では、釜の内部から熱するため、内部にピザを焼くスペースに加え、炭や薪などの加熱手段を配すスペースを要する。これにより、容量が必要以上に大きくなってしまうという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、アウトドアなどの際に携行可能であるとともに、屋外でピザやパイなどを容易に調理することができる携行用調理器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、ピザやパイなどの被加熱物を、外部からの加熱手段によって加熱して調理する際に使用される携行用調理器具において、蓄熱性および耐熱性を有する素材より形成された蓋部と鍋部とからなり、前記蓋部が、その全周に亘って、前記加熱手段を上面に載置可能にするためのフランジ部を有し、かつ、前記鍋部が、前記被加熱物を出し入れするとともに、加熱中の内部が蒸れるのを防止するための開口部を、側壁の一部に備えたことにより、達成される。
【0010】
また、上記目的は、ピザやパイなどの被加熱物を、外部からの加熱手段によって加熱して調理する際に使用される携行用調理器具において、蓄熱性および耐熱性を有する素材より形成された蓋部と鍋部とからなり、前記蓋部が、その全周に亘って、前記加熱手段を上面に載置可能にするためのフランジ部を有し、かつ、前記鍋部が、前記被加熱物を加熱する加熱部と、該加熱部と一体に形成された突出部とからなり、該突出部が、前記被加熱物を出し入れするとともに、加熱中に内部が蒸れるのを防止するための開口部を、側壁に備えたことにより、達成される。
【0011】
また、上記目的は、前記蓋部が、ドーム状に形成されていることにより、効果的に達成される。
【0012】
また、上記目的は、前記蓋部のうち少なくとも前記加熱部の上方に該当する部分が、ドーム状に形成されていることにより、効果的に達成される。
【0013】
また、上記目的は、前記蓋部および前記鍋部の素材が、鋳鉄であることにより、効果的に達成される。
【0014】
さらに、上記目的は、前記鍋部が、底壁の下面に、前記加熱手段の上に配設可能にするための複数の脚を有することにより、効果的に達成される。
【0015】
さらに、上記目的は、前記鍋部が、底壁の下方に配された前記加熱手段によって熱せられた熱い空気を逃がさずに集めるために、前記底壁の下面の略周端に沿って設けられた下部熱集束部材と、前記下部熱集束部材によって集められた前記熱い空気を取り入れるために、前記開口部と反対側の側壁の外側に設けられたダクト部と、前記ダクト部によって取り入れられた前記熱い空気が前記鍋部の内側に入り込むように、前記開口部の反対側の側壁に形成されたスリット部とを備えることにより、効果的に達成される。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明に係る携行用調理器具によると、焚火や炭などの加熱手段を外部の上下に配して加熱する構造になっていることよって、内部に加熱手段を配すことなく、内部を高温にすることができる。これにより、調理器具の小容量化を図ることができ、携行性を向上することができる。また、鍋部から蓋部を取り外せるので、調理後の掃除が容易である。
【0017】
また、鍋部の側壁の一部が、被加熱物を出し入れする開口部になっていることによって、下から上に移動しようとする熱の流出を防止して内部を高温に保つことができ、かつ、蒸れることなく熱することができる構造になっている。これにより、屋外においても、容易に、香ばしくておいしいピザやパイなどを調理することができる。
【0018】
また、蓋部のうち少なくとも被加熱物を加熱する加熱部の上方に該当する部分が、ドーム状に形成されていることによって、内部の熱が対流しやすくなり、拡散した輻射熱を有効に用いることができるので、被加熱物を満遍なく加熱することができる。この結果、ピザ釜で焼いたものと同様に、香ばしく、おいしいピザを調理することができる。
【0019】
また、蓋部および鍋部を鋳鉄より形成することによって、頑丈で携行性に優れ、かつ高い蓄熱性および耐熱性を有し、遠赤外線によって熱することができる調理器具を、低コストで提供することができる。
【0020】
また、鍋部を加熱部と突出部とから構成することにより、加熱部内の熱が開口部から外部へ逃げにくくなるとともに、蓋部の上面に加熱手段を載置することができる面積が増加するため、加熱中の内部温度をより高温に維持することができる。
【0021】
さらに、鍋部が、底壁の下面の略周端に沿って設けられた下部熱集束部材と、開口部と反対側の側壁の外側に設けられたダクト部と、開口部と反対側の側壁に形成されたスリット部とを備えることにより、鍋部の下方に配された加熱手段により熱せられた熱い空気を、鍋部の内側に取り入れて対流させることができる。これにより、鍋部内の底壁上に配された被加熱物は、底壁から伝わる熱だけではなく、非加熱物の表面上を舐めるように対流する熱い空気によっても加熱されるため、より香ばしくて美味しいピザやパイなどを調理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0023】
図1は、本発明の第1実施形態に係る携行用調理器具10を示す斜視図である。同図において、携行用調理器具10は、大別すると、一部が切り取られた略円形を成している鍋部20と、同じく一部が切り取れた略円形を成している蓋部30とからなり、この鍋部20と蓋部30とは、上下に対称な形状を成しており、互いに突き合わせることができる。
【0024】
この鍋部20および蓋部30は、上述したダッチオーブンの特性である、蓄熱性および耐熱性に優れ、かつ、遠赤外線によって被加熱物を熱すことができるという利点から、鋳鉄(可鍛鋳鉄、ダクタイル鋳鉄など)より形成されている。この鋳鉄製の調理器具(オーブン)10は、高い強度を有するため、アウトドア用の調理器具として好適である。また、鍋部20および蓋部30の厚さtは、所望の蓄熱性および強度を得る必要があるため、5mm以上であることが望ましい。
【0025】
なお、本発明は、鋳鉄製に限定されるものではなく、蓄熱性および耐熱性に優れ、かつ、遠赤外線によって被加熱物を熱することができるものであれば、鉄やアルミニウム、チタン、あるいはこれらの合金であってもよい。また、強度の面において問題がなければ、セラミックス製や土製であってもよい。さらに、セラミックスや土などの強度の弱い材質で形成された鍋部および蓋部の外側を、上述したような金属をハニカム構造にしたもので覆うことによって、強度を増してもよい。すなわち、蓄熱性、耐熱性、および強度に優れていれば、その材質の種類、あるいはその材質の組み合わせを適宜選択することができる。
【0026】
図2は、蓋部30を取り外した状態の鍋部20を示す斜視図である。同図において、鍋部20は、略円形の底壁21と、該底壁21から立ち上がっている側壁22と、該側壁22の一部に形成された開口部23と、底壁21の下面に、鍋部20を焚火や炭などの加熱手段の上に配設可能にするための複数(本実施形態では3本)の脚24とを備えている。なお、符号25は、鍋部20の把持部である。また、符号40は、この調理器具10によって加熱される被加熱物であり、本実施形態では、この被加熱物40は、ピザまたはパイとする。
【0027】
図3は、図1中のIII−III線に沿った携行用調理器具10の断面図である。図1および図3に示すように、蓋部30は、その全周にわたって、焚火や炭などの加熱手段を載置可能にするためのフランジ部31を有し、この蓋部30の上面は、中央が隆起したドーム部32になっている。また、このドーム部32上面の蓋部30の重心に該当する位置には、把持部33が配されている。このように、蓋部30をドーム形状にすることによって、調理器具10内の熱が対流しやすくなり、被加熱物40を満遍なく加熱することができる。なお、調理器具10の奥行きPは、一般的なアウトドアユーザが調理できるピザの最大サイズが、直径約12インチ(304.8mm)であることや、携行面における利便性などを考慮すると、300mmから320mmであることが望ましい(例えば、ナポリピザは、直径が12インチ以内である)。
【0028】
また、ダッチオーブンの料理法の1つである、複数の調理器具を上に重ね、それぞれの調理器具10の間と、最上部および最下部とに加熱手段を配し、複数の被加熱物40を同時に調理するスタッキングと呼ばれる手法を実行することを考慮すると、各脚24の長さは、少なくともドーム部32の高さより大きくなっていることが望ましい。あるいは、各脚24を取り外し可能な構造(例えばネジ式)にしておき、長さの異なる脚24を数種類用意して、状況に応じて適宜変更できるようにしてもよい。
【0029】
図4は、図1中のA矢印方向から見た携行用調理器具10の正面図である。同図に示すように、把持部25,25は、携行用調理器具10とは別体になっていて着脱可能である手持部材50のフック51,51を掛けられるようになっている。この手持部材50は、加熱終了直後でまだ熱い携行用調理器具10を加熱手段から取出したり、あるいは、加熱手段の上に配されている携行用調理器具10の位置を移動させたりする際に用いられる。
【0030】
また、開口部23のサイズは、被加熱物40(例えば、上述したような直径12インチのピザ)の出し入れの妨げにならないようにするとともに、加熱中に内部が蒸れることなく、適切な温度(300℃〜500℃)に維持されるようにする必要があるため、幅sが300mmないし320mmであり、かつ、高さhが50mmから90mmであることが望ましい。仮に、幅sがこの範囲より小さい場合には、調理できるピザのサイズが限定されてしまう。一方、この範囲より大きい場合には、携行性を損なう可能性がある。
【0031】
本実施形態では、開口部23の形状は、図4に示すように、横方向に長い矩形であったが、内部の温度調整をするために、図5Aに示すように、開口部23と同じ寸法である矩形の板の一部が半円状の切り取られた鋳鉄製のカバー部材60を配してもよい。加熱中にこのカバー部材60が配されることによって、内部の温度をより高温にすることができ、ピザ釜に近い形態を再現することができる。なお、このカバー部材60は、必要に応じて適宜配され、使用しないときには、図5bに示すように、上方に収納しておくことができる。
【0032】
以上のように、本実施形態の携行用調理器具10によると、蓋部30がフランジ部31を備え、かつ、鍋部20が複数の脚24を備えたことによって、加熱手段により外部の上下から加熱できる構造になっている。これにより、内部に加熱手段を配すことなく、高温にすることができるので、調理器具10の小容量化を図ることができる。
【0033】
また、蓋部30および鍋部20を、蓄熱性および耐熱性に優れ、頑丈である鋳鉄より形成し、鍋部20の側壁22の一部に、被加熱物40を出し入れするとともに、加熱中に内部が蒸れるのを防止するための開口部23を備え、蓋部30の形状をドーム形状にしたことによって、被加熱物であるピザやパイなどを、屋外で容易に、かつ本格的に調理することができる。この結果、アウトドアにおける料理の多様化を図ることができるので、より楽しいキャンプを行うことができる。
【0034】
なお、本実施形態では、鍋部下方および蓋部上面に加熱手段を配すようにしたが、これに限定されず、より強力な加熱を要する場合には、例えば鍋部20の側壁22の周囲に加熱手段を配してもよい。
【0035】
また、鍋部20の側壁22を熱するために、図6に示すような、半円筒状部材70を調理器具10の周囲に配してもよい。この半円筒状部材70は、耐熱性に優れた素材よりなり、上昇しようとする調理器具10の下方に配された加熱手段の熱を、鍋部20の側壁22の外周に集約して、伝達するようになっている。さらに、この半円筒状部材70を配すことによって、外に逃げようとする熱を反射するようになるため、より効率の良い熱伝達を行うことができる。
【0036】
図7は、本発明の第2実施形態に係る携行用調理器具10Aの外観を示す斜視図であり、図8は、図7中のVIII−VIII線に沿った携行用調理器具10Aの断面図である。なお、第1実施形態と同一の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0037】
この携行用調理器具10Aでは、鍋部20Aは、被加熱物40を加熱する略円形の加熱部26と、該加熱部26と一体に形成された突出部27とからなり、該突出部27には、被加熱物40を出し入れするとともに、加熱中に内部が蒸れるのを防止するための開口部23が備えられている。
【0038】
蓋部30Aは、鍋部20Aに対して上下に対称な形状を成しており、互いに突き合わせることができる。また、この蓋部30Aの上面は、加熱部26の上方に該当する部分がドーム部32になっているとともに、突出部27の上方に該当する部分が扁平部34になっている。
【0039】
なお、略円形の加熱部26の直径は、一般的なピザのサイズが直径12インチ(304.8mm)であることを考慮すると、300mmから320mmであることが望ましい。
【0040】
また、本第2実施形態では、蓋部30Aは、鍋部20Aに対して上下に対称な形状を成して、互いに突き合わせることができるようにしたが、本発明はこれに限定されず、例えば、ドーム部32だけを蓋部として取り外せるようにし、一方、扁平部34は、鍋部20と一体に形成されていてもよい。
【0041】
以上のように、本第2実施形態では、鍋部20Aを、被加熱物40を加熱する略円形の加熱部26と、該加熱部26と一体に形成された突出部27とから構成し、該突出部27に、被加熱物40を出し入れするとともに、加熱中に内部が蒸れるのを防止するための開口部23を設けたが、第1実施形態と同様の作用効果を得られる。
【0042】
また、蓋部30Aが扁平部34を有することによって、第1実施形態の携帯用調理器具10に比べ、加熱手段を載置できる面積が大きくなるので、より強い火力で調理することが可能である。
【0043】
図9は、本発明の第3実施形態に係る携行用調理器具10Bの外観を示す斜視図である。なお、第1実施形態あるいは第2実施形態と同一の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0044】
この携行用調理器具10Bでは、上から見た形状が矩形になっており、蓋部30Bは、その全周にわたって、焚火や炭などの加熱手段を載置可能にするためのフランジ部31を有し、上面は扁平になっている。
【0045】
また、鍋部20Bは、被加熱物40を加熱する矩形の加熱部26と、該加熱部26と一体に形成された突出部27とからなり、該突出部27には、被加熱物40を出し入れするとともに、加熱中に内部が蒸れるのを防止するための開口部23Bが備えられている。この開口部23Bの形状は、半円形になっており、その左右に開閉可能な扉部材80,80が備えられている。この扉部材80,80は、内部温度がピザを焼く適正温度である300℃〜500℃になるまでは閉じられている。一方、被加熱物40を加熱する際には、内部が蒸れるのを防止するため、扉部材80,80は開けられている。
【0046】
この開口部23Bのサイズは、第1実施形態と同様に、被加熱物40(例えば、一般的な直径12インチのピザ)の出し入れの妨げにならないようにするとともに、加熱中に内部が蒸れることなく、適切な温度(300℃〜500℃)に維持されるようにする必要があるため、幅s(B)が300mmないし320mmであり、かつ、高さh(B)が50mmから90mmであることが望ましい。
【0047】
また、加熱部26の奥行きP(B)は、一般的なピザのサイズが直径12インチ(304.8mm)であることを考慮すると、300mmから320mmであることが望ましい。
【0048】
さらに、突出部27の上面は、アーチ状になっているが、蓋部30Bと同様に、全周にわたってフランジ部28を有しており、加熱手段を載置できるようになっている。
【0049】
以上のように、本第3実施形態では、上から見た形状が矩形であるとともに、開口部23Bの形状が半円形になっているが、第1実施形態と同様の作用効果を得られる。
【0050】
また、蓋部30Bの上面が扁平であることによって、加熱手段を載置できる面積が大きくなるので、より強い火力で調理することができる。さらに、加熱手段の載置面積が大きいことにより火力の微調整ができるので、第1実施形態で述べたスタッキングを行う際に、有効である。
【0051】
図10は、本発明の第4実施形態に係る携行用調理器具の外観を示す側面図であり、図11は、その下面図である。また、図12は、この携行用調理器具の蓋部を取り外した状態を示す斜視図である。なお、第1ないし第3実施形態と同一の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0052】
本実施形態に係る携行用調理器具10Cでは、蓋部30Cの形状は、第2実施形態の携行用調理器具10Aの蓋部30Aと同じものとし、また、その蓋部30Cが装着される鍋部20Cの内側の形状も、第2実施形態の携行用調理器具10Aの鍋部20Aと同じものとする。
【0053】
図10および図11に示すように、携行用調理器具10Cの鍋部20Cは、底壁21の下面の略周端に沿って下部熱集束部材51が設けられている。この下部熱集束部材51は、底壁21の下方に配された焚火や炭などの加熱手段によって熱せられた熱い空気を外部へ逃がさずに集束するための板状部材であり、底壁21の下面周端部から鉛直に延びていて、その高さは脚24より短くなっている。
【0054】
また、鍋部20Cの開口部23と反対側の側壁22の外側には、下部熱集束部材51によって集められた熱い空気を取り込んで上記側壁22の上部に送り込むためのダクト部52が設けられている。図11に示すように、鍋部21の後部(開口部23の反対側)では、底壁21の周端と下部熱集束部材51との間には隙間(図12では、点線の斜線領域)が設けられており、この隙間がダクト部52の取り込み口になっている。
【0055】
さらに、鍋部20Cの開口部23と反対側の側壁22には、図12に示すように、ダクト部52によって取り込まれた熱い空気が鍋部20Cの内側に入り込むように、スリット部53が形成されている。このスリット部53は、開口部23と反対側の側壁22の上部の一部が切り欠かかれたものであり、その幅は鍋部全周の約1/3であり、また、その高さは鍋部内高さの約1/3である。
【0056】
図13は、本実施形態における鍋部20Cの下方で熱せられた熱い空気の流れを示す説明図である。同図において、鍋部20Cの下方に配された加熱手段60によって熱せられた熱い空気は、矢印Xで示すように、下部熱集束部材51によって外部に逃げることなく集められ、ダクト部52に取り込まれる。そして、ダクト部52に取り込まれた熱い空気は、矢印Yおよび矢印Zで示すように、スリット部53から鍋部20C内に入り込み、蓋部30Cなどに当たって鍋部20C内で対流し(矢印Y)、開口部23から外部に排出されるようになっている(矢印Z)。これにより、鍋部20C内の底壁21上に配された被加熱物(ピザ、パイなど)40は、底壁21から伝わる熱だけではなく、表面上を舐めるように対流する熱い空気によっても加熱されるため、より香ばしくて美味しく調理される。
【0057】
以上、本発明を具体的に説明してきたが、本発明はそれに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0058】
なお、上記第1ないし第4実施形態では、調理される被加熱物40を、主にピザやパイとしたが、本発明はこれに限定されず、例えば、肉や魚をグリルする際にも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の第1実施形態に係る携行用調理器具の外観を示す斜視図である。
【図2】上記携行用調理器具の鍋部の外観を示す斜視図である。
【図3】図1中のIII−III線に沿った上記携行用調理器具の断面矢視図である。
【図4】図1中のA矢印方向から見た上記携行用調理器具の正面図である。
【図5a】図4に示された上記携行用調理器具の開口部にカバー部材を配した状態を示す正面図である。
【図5b】図5Aに示されたカバー部材を上方に収納した状態を示す上記携行用調理器具の正面図である。
【図6】上記携行用調理器具の周囲に、半円筒状部材を配した状態を示す斜視図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る携行用調理器具の外観を示す斜視図である。
【図8】図7中のVIII−VIII線に沿った上記携行用調理器具の断面矢視図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係る携行用調理器具の外観を示す斜視図である。
【図10】本発明の第4実施形態に係る携行用調理器具の外観を示す側面図である。
【図11】図10に示された上記携行用調理器具の外観を示す下面図である。
【図12】図10に示された上記携行用調理器具の蓋部を取り外した状態を示す斜視図である。
【図13】本発明の第4実施形態に係る携行用調理器具における、鍋部の下方で熱せられた熱い空気の流れを示す説明図である。
【図14】従来のキャンプ用ダッチオーブンの外観を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0060】
10 携行用調理器具
20 鍋部
21 側壁
23 開口部
24 脚
26 加熱部
27 突出部
30 蓋部
32 ドーム部
40 被加熱物
51 下部熱集束部材
52 ダクト部
53 スリット部
60 (鍋部下方に配された)加熱手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピザやパイなどの被加熱物を、外部からの加熱手段によって加熱して調理する際に使用される携行用調理器具であって、
蓄熱性および耐熱性を有する素材より形成された蓋部と鍋部とからなり、
前記蓋部は、その全周に亘って、前記加熱手段を上面に載置可能にするためのフランジ部を有し、かつ、
前記鍋部は、前記被加熱物を出し入れするとともに、加熱中に内部が蒸れるのを防止するための開口部を、側壁の一部に備えていることを特徴とする携行用調理器具。
【請求項2】
ピザやパイなどの被加熱物を、外部からの加熱手段によって加熱して調理する際に使用される携行用調理器具であって、
蓄熱性および耐熱性を有する素材より形成された蓋部と鍋部とからなり、
前記蓋部は、その全周に亘って、前記加熱手段を上面に載置可能にするためのフランジ部を有し、かつ、
前記鍋部は、前記被加熱物を加熱する加熱部と、該加熱部と一体に形成された突出部とからなり、該突出部は、前記被加熱物を出し入れするとともに、加熱中に内部が蒸れるのを防止するための開口部を備えていることを特徴する携行用調理器具。
【請求項3】
前記蓋部は、ドーム状に形成されている請求項1に記載の携行用調理器具。
【請求項4】
前記蓋部のうち少なくとも前記加熱部の上方に該当する部分は、ドーム状に形成されている請求項2に記載の携行用調理器具。
【請求項5】
前記蓋部および前記鍋部の素材は、鋳鉄である請求項1ないし4のいずれかに記載の携行用調理器具。
【請求項6】
前記鍋部は、底壁の下面に、前記加熱手段の上に配設可能にするための複数の脚を有する請求項1ないし5のいずれかに記載の携行用調理器具。
【請求項7】
前記鍋部は、
底壁の下方に配された前記加熱手段によって熱せられた熱い空気を逃がさずに集めるために、前記底壁の下面の略周端に沿って設けられた下部熱集束部材と、
前記下部熱集束部材によって集められた前記熱い空気を取り入れるために、前記開口部と反対側の側壁の外側に設けられたダクト部と、
前記ダクト部によって取り入れられた前記熱い空気が前記鍋部の内側に入り込むように、前記開口部の反対側の側壁に形成されたスリット部と
を備える請求項1ないし6のいずれかに記載の携行用調理器具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−102488(P2006−102488A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−259038(P2005−259038)
【出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【出願人】(504345919)株式会社バッカルーデザイン (1)
【Fターム(参考)】