説明

搾乳用家畜の飼育方法、食品用生乳、乳製品、およびそれを用いた食品

【課題】 乳牛の健康を図ることで生乳の品質を向上させる。
【解決手段】 岡山県の蒜山高原に産する塩釜の水と呼ばれる水を、永久磁石により発生する磁束間を通す活性化処理をし、活性化処理した後の活性化処理水を搾乳用家畜に飲ませることで、搾乳用家畜としての例えばジャージー種の乳牛の健康を増進させ、結果としてその乳牛から得られた生乳の乳質改善を図る。ジャージー種の乳牛の血液検査では、ビタミンD、Eに特別に高い値が確認された。生乳においても大腸菌群が陰性になる等種々の特異な差異が見られた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、牛乳、ヨーグルト、バター、チーズ等の乳製品に用いる高品質の生乳の確保、及びその生乳を使用した食品に関し、特にジャージー種の乳牛等の搾乳用家畜の飼育、及びジャージー種の乳牛から得られた生乳の関連食品に適用して有用な技術である。
【背景技術】
【0002】
従来、牛乳、ヨーグルト、バター、チーズ等の乳製品に使用する生乳には、生乳中の細菌数等種々の項目で規定が設けられ、厳しいチェックがなされ、食品の安全確保が図られている。因みに、生乳とは、「乳および乳製品の成分規格に関する省令」(略して、乳等省令とも言う)では、「さく取したままの乳」と定義されている。本明細書でも、生乳とは、かかる乳等省令に基づく定義のものとする。
【0003】
近年のわが国の乳製品の需要に対応して、生乳の品質向上が求められている。かかる生乳の品質、すなわち乳質に関しては、乳牛等の搾乳用家畜の飼料に、乳質改善剤を混ぜることでその対策が検討されてきた。乳質改善剤としては、例えば、特定種の植物であったり、あるいは薬剤、栄養剤等の形であったりと種々の形が採用されている。
【0004】
乳質は、その成分組成は勿論のこと、生乳中の細菌数の多寡も問題とされる。生乳中の細菌数に関しては、乳牛の健康状態が大きく関係しており、健康体の乳牛から搾取された生乳が好ましいことは言うまでもない。
【0005】
乳牛はどうしても乳房炎等に罹患しやすく、特にかかる乳房炎は乳質に大きな影響を与える。そのため、乳牛の乳房炎の罹患の有無の一つの指標ともなる生乳中の体細胞数のチェックも、乳質チェックの大切な項目として挙げられている。
【0006】
乳房炎の治療のために抗生物質等の薬剤が用いられた場合には、かかる薬剤が体内で分解されず生乳に移行する場合も見られ、かかる薬剤の生乳中での検出の有無も極めて重要なチェック項目である。前述の乳等省令では、「抗菌性物質を含有してはならない」と厳しくそのチェックが求められている。
【0007】
このように生乳の乳質改善には、種々の努力が払われてきた。例えば、特許文献1には、乳質改善の一例として、オレガノ等のハーブを飼料等に添加して用いることで、乳牛の乳房炎を治め、生乳中の体細胞数の低減を図る等する技術が提案されている。かかるハーブはそれ自体でも、あるいは固体、液体の賦形剤と共に用いても構わないと記載されている。
【0008】
特許文献2には、ツバキ科の植物の粉末、抽出物を有効成分とする乳質改善剤が開示されている。かかるツバキ科植物を使用することで、牛乳中の体細胞の低減が図れると述べられている。
【特許文献1】特開2004−187527号公報
【特許文献2】特開平7−75506号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者は、品質の優れた乳製品の提供を図るべく、生乳生産者としての立場からそれに参画できないかと常々考えて、種々の試みを行ってきた。
【0010】
生乳生産者としての本発明者は、現に飼育している乳牛種、乳牛を放牧している放牧地、あるいは外部運動場を変更することなく、よりよい品質の生乳生産が行える途はないかと模索してきた。
【0011】
牧草の種類を変えたり、あるいは飼料を変えたり等の種々の試みを行ってきたが、確かに、対策を施さない場合に比べて対策を施した場合の方が有為の差異は認められるものの、画然とした顕著な差異が現れる程ではなかった。
【0012】
一方、牛舎、牧草地等の飼育環境を変える等の手段も他所では試みられているが、場合によっては、乳牛にストレスをかけて逆効果となる場合もあることが報告されている。本発明者は、これらの飼育環境、飼料変更等の対策を特段施すことなく、牧草地に自然に生える草を食ませる等して、乳牛に特段のストレスをかけることなく自然放牧あるいは外部運動場の環境を維持しつつ乳牛の健康の維持、促進を図り、結果として生乳の品質向上を目指すことはできないかと考えた。
【0013】
本発明の目的は、乳牛の健康を図ることで生乳の品質を向上させることにある。
【0014】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0016】
上記の如く、本発明者は、これまでも飼料の変更等種々の対策を試みたが、画然として顕著な差異を見出す程の効果は得られなかった。このような中、飼料に薬剤等を混入したりすることなく自然に生える草を食ませることで、生乳の食安全性を確保することの方が極めて大切なことではないかと気づいた。
【0017】
飼料中に混入する薬剤等は、かかる飼料を食べる乳牛により生乳中に微量とは言え濃縮された形で、生乳の薬剤汚染を併発する虞が十分にある。近年、アトピー性皮膚炎を始めとして、アレルギーの問題が盛んに話題となるが、かかるアレルギー疾患の中には、薬剤がその原因の一つとされるものが多く見られる。
【0018】
本発明者は、かかるアレルギー対策の観点からも、牧草には不要な農薬を使用せず、飼料から生乳へ移行する薬剤汚染を抑えて、前記の如く自然放牧あるいは外部運動場での環境を維持しつつ生乳品質の向上が図れないかと模索してきた。
【0019】
かかる中、本発明者は、水についてこれまでは、特段の考慮を図っていないことに気づいた。水については、人が飲むのと同じように、水道水を与える等して飼育してきた。しかし、乳牛を含めて牛は、一般に、牛飲馬食と言う程に、よく水を飲む動物である。そこで、再度水に対しての検討を行う必要があるのではないかとの着想を得た。
【0020】
村営の水道水、あるいは湧き水等の天然水等種々の水を与えて飼育してみたが、特筆すべき程に生乳の成分向上が図られたとの実感は得られなかった。併せて、乳牛の健康においても特段にその健康が向上したとの実感も得られなかった。
【0021】
このような中、水のクラスターを分裂させて小さくすることで水を活性化する手段があることを知り、かかる活性化した水を飼育に際して使用してみた。その結果、かかる活性化した水を用いた場合には、かかる活性化水を用いない場合に比べて、乳牛の健康増進傾向が血液成分分析の観点からも明確に確認され、且つ生乳品質にも格段の差異が現れることを見出し本発明に至った。
【0022】
本発明者は、前述の如く、乳牛の飼育に際しては、飼料に薬剤等の乳質改善剤を使用することなく、採草地に生えた牧草を与える方法を維持しながら、併せて、水も天然に産する水を使用する方針で、その飼育を行ってきた。本発明者は、所有する採草地近くに産する天然水を使用している。
【0023】
本発明者の採草地は、岡山県の蒜山高原に位置しており、天然水はかかる蒜山高原に産する天然の湧き水を用いている。かかる水は、先年、日本名水百選にも選ばれた「塩釜の水」として知られるものである。
【0024】
かかる蒜山高原に産する水を源水として、かかる源水に所定の活性化処理を施した活性化処理水を用いることで、飼育されたジャージー種の乳牛の健康増進が図られ、且つ得られた生乳に、かかる活性化処理水を用いない場合と比較して、特定成分等に顕著な差異が認められることが分かり、本発明に至ったものである。
【0025】
すなわち、本発明は、搾乳用家畜の飼育方法であって、岡山県の蒜山高原に産する水を、永久磁石により発生する磁束間を通す活性化処理をし、前記活性化処理した後の活性化処理水を前記搾乳用家畜に飲ませることを特徴とする。
【0026】
かかる搾乳用家畜の飼育方法において、前記水は、塩釜の水と呼ばれている水を使用することを特徴とする。上記いずれかの搾乳用家畜の飼育方法において、前記活性化処理は、N極とS極とを対抗させた少なくとも1対の永久磁石を通水管を隔てて配設し、前記永久磁石間の磁束を臨む位置に通水管を隔てて1対の非磁性導電性金属板を前記通水管の内部と導通することなく対抗して配設し、前記通水管内を水が通過することにより前記磁束及び流水の向きと直交方向に生じる電界を前記非磁性導電性金属板にて遮断することにより電子の漏洩を阻止し、前記電子を前記通水管内の流水に作用させると共に、前記永久磁石の磁力により処理することを特徴とする。
【0027】
上記いずれかの搾乳用家畜の飼育方法において、前記搾乳用家畜とは、ジャージー種の乳牛であることを特徴とする。
【0028】
本発明は、上記構成の搾乳用家畜の飼育方法により飼育したジャージー種の乳牛から搾乳したことを特徴とする食品用生乳でもある。
【0029】
本発明者が初めて見出した事実は、これまでには知られていなかった特性を有する生乳としても把握することができる。すなわち、本発明は、ジャージー種の乳牛から搾乳した生乳における大腸菌群の検査項目が、乳及び乳製品の成分規格に照らして陰性であることを特徴とする食品用生乳である。本発明は、ジャージー種の乳牛から搾乳した生乳における一般細菌数が、10/mlのオーダーであることを特徴とする食品用生乳である。本発明は、ジャージー種の乳牛から搾乳した生乳におけるビタミンAのレチノール等量に換算した含有量が、70μg/100g以上であることを特徴とする食品用生乳である。
【0030】
本発明は、ジャージー種の乳牛から搾乳した生乳におけるビタミンDの含有量が、0.1μg/100g以上であることを特徴とする食品用生乳である。本発明は、ジャージー種の乳牛から搾乳した生乳におけるビタミンEの含有量が、α−トコフェロールに換算して0.2μg/100g以上であることを特徴とする食品用生乳である。本発明は、上記いずれかの構成の食品用生乳において、前記ジャージー種の乳牛は、前述のいずれかの構成の搾乳用家畜の飼育方法により飼育されていることを特徴とする。
【0031】
本発明は乳牛から搾乳した生乳を用いて製造される乳製品であって、前記生乳は、上記いずれかの構成を有する食品用生乳であることを特徴とする。また、本発明は、原料としてかかる構成の乳製品を用いることを特徴とする食品としても把握することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0033】
本発明の一つは、搾乳用家畜の飼育方法に関する技術で、特に与える水に留意することで乳牛等の搾乳用家畜の健康の維持、増進を図るものである。以下その飼育方法について、ジャージー種の乳牛を例に挙げて説明する。
【0034】
乳牛は、ジャージー種の乳牛で、より詳細には、昭和20年代後半に現在の岡山県の蒜山高原にニュージーランドから輸入して飼育され、何代かを経て今日にいたるニュジーランド産のジャージー種の子孫である。
【0035】
本発明者は、かかるジャージー種の乳牛に、蒜山上長田地区の自家牧草地で採草した牧草を与えている。主な飼料とされる牧草には、播種したチモシー種の牧草が使用されている。かかる牧草を乾燥させて、乳酸発酵等させたサイレージも飼料として与えている。
【0036】
併せて、水は、前述の如く、岡山県の蒜山高原に産する天然水を用いている。かかる天然水は、塩釜の水と呼ばれているものを牧場内に引き込み、活性化処理をしてから飲ませている。より詳細には、塩釜の水は、中蒜山の麓の八束村下福田に湧く水で、名水百選に選定された水である。
【0037】
八束村の村営の簡易水道の水源としても利用され、簡易水道では滅菌処理をして飲み水も含めて生活水として使用されている。ジャージー種の乳牛の飼育には、かかる簡易水道における滅菌処理が施された水を、さらに活性化処理手段で活性化処理した後に、飲ませるようにしている。
【0038】
活性化処理とは、磁力の作用により水のクラスター(分子集合体)を分裂させて、小さくすることで、水が大きなクラスターを構成している場合よりも浸透性を向上させる等して水を活性化させる処理である。
【0039】
かかる処理としては、例えば、N極とS極とを対抗させた少なくとも1対の永久磁石を通水管を隔てて配設し、永久磁石間の磁束を臨む位置に通水管を隔てて1対の非磁性導電性金属板を通水管の内部と導通することなく対抗して配設し、通水管内を水が通過することにより磁束及び流水の向きと直交方向に生じる電界を非磁性導電性金属板にて遮断することにより電子の漏洩を阻止し、電子を通水管内の流水に作用させると共に、永久磁石の磁力により処理するものである。
【0040】
実際には、かかる活性化処理装置としては、株式会社エッチアールディ社から販売されている高密度磁束活性水装置ダイポール( DIPOLE 20A:完全防水直結型)を使用している。かかる高密度磁束活性水装置を使用することで、場内に引き込んだ源水を塩釜の水とする簡易水道水を活性化処理し、その活性化処理水をジャージー種の乳牛に飲ませている。
【0041】
初めてかかる活性化処理した水に切り換えた際には、乳牛は水を飲もうとしなかったが、その後にようやく水を飲み始める等の現象が見られた。直ぐには、水に口をつけようとしなかった。しかし、かかる塩釜の水の活性化処理水をその後与え続ける内に、本発明者は、ジャージー種の乳牛等には下痢が少なくなったことに気づいた。
【0042】
また、分娩に際しても、かかる活性化処理水を飲ませていなかった頃に比べて、顕著な差異が生じていることに気づいた。すなわち、高齢の乳牛程、後産に時間がかかり、場合によっては完全に後産が終了しない場合も見られるが、活性化処理水を飲ませて飼育していると、かかる後産が軽くなっている事実に気がついた。
【0043】
そこで、本発明者は、活性化処理水を飲ませたジャージー種の乳牛の血液検査を行った結果、特定の成分値の値が基準値より大きく増加していることに気づいた。すなわち、図1に示すように、場内に引き込んだ塩釜の水を上記エッチアールディ社製の高密度磁束活性水装置により活性化処理した活性化処理水を飲ませて飼育したジャージー種の乳牛では、血中のビタミンD、Eが平均値より顕著に高いことが確認された。
【0044】
図1に示す結果は、蒜山上長田地区にある蒜山高原の美甘ファームと呼ばれる場内で、蒜山高原の天然水である塩釜の水を上記処理した活性化処理水を飲ませて飼育しているジャージー種の乳牛13頭を、I群、II群、III群、及び乾乳期の4グループに分け、それぞれについてミネラル、ビタミン類、肝機能、エネルギー代謝、タンパク代謝について検査したものである。
【0045】
尚、上記グループ分けでは、分娩後60日以内の乳牛をI群に、分娩後61日〜120日以内の乳牛をII群に、分娩後120日以上〜乾乳期前の乳牛をIII群に、分娩2カ月前の乳牛を乾乳期として分けた。また、図1中、検査を実施していない部分は、その旨が明確になるように黒色潰し等の処理をしてある。
【0046】
また、血液検査において、ミネラルについては、Ca、P、Ca/P、Mg、K、Na、Cl、Seの各々について検査した。ビタミン類については、ビタミンA、D、Eのそれぞれについて検査した。肝機能検査については、GOT、γGTPのそれぞれにつき、エネルギー代謝についてはGLU(血糖値)、T−cho(総コレステロール)のそれぞれにつき、タンパクについてはALB、BUNのそれぞれについて検査した。
【0047】
図1から明らかなように、ビタミンDについては、基準値の0.097〜0.103(μmol/l)対して、最大で0.32μmol/l(基準値の上限規格の約3倍)の値を示している。ビタミンEについては、基準値の4.2〜7.6(μmol/l)に対して21.59〜37.61μmol/l(基準値の上限規格の約3〜5倍)の値を示している。尚、かかる数値は、真庭家畜保健衛生所の試験データに基づいている。
【0048】
ビタミンDについては、幼若牛、成牛の骨軟化の影響が指摘されているが、図1に示すように、本発明に係る搾乳用家畜の飼育方法により飼育したジャージー種の乳牛には、血中のビタミンDが十分に確保され、骨軟化等の心配がないことが確認された。
【0049】
また、ビタミンEは、その不足が子牛の白筋症、胎盤停滞等に関係すると言われているが、しかし、図1に示すように、本発明に係る搾乳用家畜の飼育方法により飼育したジャージー種の乳牛には、血中のビタミンEが十分に確保され、かかる障害の虞がないことが確認される。
【0050】
また、肝機能、エネルギー代謝、タンパク代謝については、基準値の範囲内に入っており、かかる検査項目については、本発明に係る搾乳用家畜の飼育方法により飼育したジャージー種の乳牛では、健康状態が維持されていることが確認される。
【0051】
以上の結果より、蒜山高原の美甘ファームと呼ばれる所で、蒜山高原の天然水である塩釜の水を処理した活性化処理水を飲ませて飼育する本発明に係る搾乳用家畜の飼育方法で飼育したジャージー種の乳牛は、その健康体が維持され、且つビタミンD、Eについて特異的にかかる成分値が高くなっている事実が確認された。
【0052】
何故、ビタミンD、Eについて特異的に高い値を示すのかは、理論的根拠は現在のところ解明はできないが、しかし、事実として、上記塩釜の水を活性化処理水にして与えることで、上記結果が現出することは初めて本発明者において確認されたことである。
【0053】
また、乳牛の健康状態を乳牛の病傷事故記録から判断すると、活性化処理水を飲ませて飼育している場合の方が、かかる活性化処理水を飲ませていなかったそれまでの場合に比べて獣医にかかった乳牛の月平均頭数が約半分程度に下がっている事実が確認された。特に、下痢治療が殆どなくなった。併せて、活性化処理水を飲ませて飼育している方が、食欲が旺盛になっていることが観察された。
【0054】
さらに、ビタミンD、Eが高値を示していることは、かかる本発明に係る搾乳用家畜の飼育方法により飼育されたジャージー種の乳牛から搾乳された生乳に、乳質の改善効果が見られるのではないかと、本発明者は生乳の検査を行った。
【0055】
その結果、図2に示すように、乳質の重要チェック項目である一般細菌の数が、7.0×10/mlと、10オーダーであることが確認された。通常は、10オーダー以上であることから、極めて細菌数が少ない生乳であることが確認された。また、これと呼応するかのように、大腸菌群の検査項目についても基準値以下となり、陰性であることが確認された。
【0056】
さらに、蒜山高原の美甘ファームと呼ばれる所で、蒜山高原の天然水である塩釜の水を処理した活性化処理水を飲ませて飼育する本発明に係る搾乳用家畜の飼育方法で飼育したジャージー種の乳牛から搾乳して得られた生乳について、ビタミン類についてその量を調べた。ビタミンAについては、2個の検体に対して、レチノール当量で78μg/100g、87μg/100gとの結果を得た。かかる結果は、科学技術庁資源調査会報告第124号(平成12年11月22日)「日本食品標準成分表の改訂に関する調査報告−五訂日本食品標準成分表−」の254頁に記載の資料(以下、本資料を文献資料1と言う。)のジャージー種、ホルスタイン種のビタミンA(レチノール当量)である51μg/100g、38μg/100gよりも格段に高い値を示していることが確認された。
【0057】
このように、本発明に係る搾乳用家畜の飼育方法を適用して飼育したジャージー種の乳牛からの生乳では、ビタミンAがレチノール換算で70μg/100g以上の値を示すことが分かった。
【0058】
一方、ビタミンDについては、2検体について、0.1μg/100g、0.2μg/100gとの結果が得られた。かかる結果は、上記文献資料1に記載のジャージー種、ホルスタイン種のビタミンDでTR(痕跡量)に比して、極めて大きい値を示していることが確認された。このように、本発明に係る搾乳用家畜の飼育方法を適用して飼育したジャージー種の乳牛からの生乳では、ビタミンDが0.1μg/100g以上の値を示すことが分かった。
【0059】
さらに、ビタミンEについても、α−トコフェロール換算で、0.2μg/100gとの結果が得られた。かかる結果は、上記文献資料1に記載のジャージー種、ホルスタイン種のビタミンEで0.1μg/100gに比して、約2倍の大きい値を示すことが確認された。このように、本発明に係る搾乳用家畜の飼育方法を適用して飼育したジャージー種の乳牛からの生乳では、ビタミンEが0.15(≒0.2)μg/100g以上の値を示すことが分かる。
【0060】
このように本発明に係る搾乳用家畜の飼育方法により飼育されたジャージー種の乳牛から搾乳された生乳では、その一般細菌数、大腸菌群、ビタミンA、D、Eについて、本発明にかかる搾乳用家畜の飼育方法を適用しないで飼育した場合に比べて、格段にその検査値が向上していることが分かる。
【0061】
また、定量的には示すことができないが、かかる特徴を有する生乳では、ジャージー種の生乳特有の青臭い匂い等の飲みにくさが解消されていた。特に、一般細菌数、大腸菌群が十分に低く抑えられているので、生乳を用いた乳製品の加工が極めて行い易い。特に、ヨーグルト等、乳酸発酵等の発酵を必要とする乳製品では、一般細菌の混在による異常発酵が十分に抑えられ、乳製品加工時の取り扱いがし易い。
【0062】
かかる生乳を用いて製造される乳製品としては、例えば、牛乳、ヨーグルト、チーズ、バター、クリーム等を挙げることができる。かかる生乳を用いた乳製品は、特に牛乳では、牛乳嫌いが指摘する牛乳臭さがなく、飲み易いとの評価も得られている。
【0063】
また、牛乳に対して特段の抵抗が無い人でも、従来のジャージー種の牛乳では、脂肪、タンパク質等が高いため、ホルスタイン種等の牛乳と比べて風味的に飲みにくいとの評価もなされていたが、しかし、活性化処理水を飲ませて飼育したジャージー種の乳牛の生乳から製造された牛乳に関しては、さらっとしており、従来のジャージー種の牛乳に比べて格段に飲み易くなったと言われている。
【0064】
さらには、かかる牛乳、ヨーグルト、チーズ、バター、クリーム等を用いることで、牛乳臭さに敏感な消費者でも、特段にかかる牛乳臭さを感じさせない食べ易い食品の製造が行える。
【0065】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0066】
上記実施の形態では、本発明に係る搾乳用家畜の飼育方法について、ジャージー種の乳牛を例に挙げて説明したが、家畜の健康維持、増進に関しては、ジャージー種以外の乳牛にも十分に適用できるものと思われる。
【0067】
また、搾乳用家畜としては、乳牛は勿論のこと、山羊、羊等の場合にも適用できるものと思われる。
【0068】
上記実施の形態では、塩釜の水を一旦活性化処理して使用しているが、かかる活性化処理に際して、エッチアールディ社製の高密度磁束活性水装置を用いたが、かかる装置と同様の機能を有する装置であれば、エッチアールディ社製とは別の活性化処理装置を使用しても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、乳牛の飼育技術、生乳の品質向上等の分野で有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明に係る搾乳用家畜の飼育方法を適用して飼育したジャージー種の乳牛の健康状態を示す血液検査の結果を示す説明図である。
【図2】本発明に係る搾乳用家畜の飼育方法を適用して飼育したジャージー種の乳牛から搾乳された生乳における分析結果を示す説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搾乳用家畜の飼育方法であって、
岡山県の蒜山高原に産する水を、永久磁石により発生する磁束間を通す活性化処理をし、前記活性化処理した後の活性化処理水を前記搾乳用家畜に飲ませることを特徴とする搾乳用家畜の飼育方法。
【請求項2】
請求項1記載の搾乳用家畜の飼育方法において、
前記水は、塩釜の水と呼ばれている水を使用することを特徴とする搾乳用家畜の飼育方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の搾乳用家畜の飼育方法において、
前記活性化処理は、N極とS極とを対抗させた少なくとも1対の永久磁石を通水管を隔てて配設し、前記永久磁石間の磁束を臨む位置に通水管を隔てて1対の非磁性導電性金属板を前記通水管の内部と導通することなく対抗して配設し、前記通水管内を水が通過することにより前記磁束及び流水の向きと直交方向に生じる電界を前記非磁性導電性金属板にて遮断することにより電子の漏洩を阻止し、前記電子を前記通水管内の流水に作用させると共に、前記永久磁石の磁力により処理することを特徴とする搾乳用家畜の飼育方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の搾乳用家畜の飼育方法において、
前記搾乳用家畜とは、ジャージー種の乳牛であることを特徴とする搾乳用家畜の飼育方法。
【請求項5】
請求項4に記載の搾乳用家畜の飼育方法により飼育した前記ジャージー種の乳牛から搾乳したことを特徴とする食品用生乳。
【請求項6】
ジャージー種の乳牛から搾乳した生乳における大腸菌群の検査項目が、乳及び乳製品の成分規格に照らして陰性であることを特徴とする食品用生乳。
【請求項7】
ジャージー種の乳牛から搾乳した生乳における一般細菌数が、10/mlのオーダーであることを特徴とする食品用生乳。
【請求項8】
ジャージー種の乳牛から搾乳した生乳におけるビタミンAのレチノール等量に換算した含有量が、70μg/100g以上であることを特徴とする食品用生乳。
【請求項9】
ジャージー種の乳牛から搾乳した生乳におけるビタミンDの含有量が、0.1μg/100g以上であることを特徴とする食品用生乳。
【請求項10】
ジャージー種の乳牛から搾乳した生乳におけるビタミンEの含有量が、α−トコフェロールに換算して0.2μg/100g以上であることを特徴とする食品用生乳。
【請求項11】
請求項6〜10のいずれか1項に記載の食品用生乳において、
前記ジャージー種の乳牛は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の搾乳用家畜の飼育方法により飼育されていることを特徴とする食品用生乳。
【請求項12】
乳牛から搾乳した生乳を用いて製造される乳製品であって、
前記生乳は、請求項5〜11のいずれか1項に記載の食品用生乳であることを特徴とする乳製品。
【請求項13】
原料として請求項12記載の乳製品を用いることを特徴とする食品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−103(P2007−103A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−186054(P2005−186054)
【出願日】平成17年6月27日(2005.6.27)
【出願人】(505241887)
【Fターム(参考)】