説明

摩擦低減シートユニット、ケーソン躯体及び該ケーソン躯体を使用したケーソン工法

【課題】例えばケーソン躯体の沈降に際して、ケーソン躯体、特にケーソン刃口の強度を高く維持し、効果的で安定した摩擦低減作用が得られ、且つ、材料、施工コストの削減、施工労力の軽減及び工期の短縮が図れる摩擦低減シートユニット、ケーソン躯体及び該ケーソン躯体を使用したケーソン工法を提供する。
【解決手段】少なくともその内面31には摩擦低減材層30が設けられた摩擦低減シート21がロール状態部Xおよび折り畳まれ状態部Yで構成され、該摩擦低減シート21がボックス230に繰り出し可能に収容され、前記ボックス230内に水と接触すると膨潤して止水性を発現する粉粒状の止水剤28が充填されている摩擦低減シートユニット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦低減シートがボックスに繰り出し可能に収容されて成る摩擦低減シートユニットに関するものである。
【0002】
更に、本発明は、先端に内刃状をしたケーソン刃口が形成されたケーソン躯体を地中に所定ストロークずつ沈降させ、該ケーソン躯体内部の泥土を掘削しながら外部に排出して、所定深さのケーソン立坑を構築するケーソン工法において使用されるケーソン躯体及び該ケーソン躯体を使用したケーソン工法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
例えば、地中や海底に橋脚を建設する場合や、シールド工事における発進ないし到達用の立坑を掘削する場合には、従来から「ケーソン」と呼ばれる先端に内刃状の刃口が形成された構造躯体が使用され、この「ケーソン」を使用した「ケーソン工法」が実施されている。尚、「ケーソン工法」には、例えば、ニューマチックケーソン工法、圧入ケーソン工法およびPCウェル工法がある。
「ニューマチックケーソン工法」は、ケーソンの下部に気密性の作業室を設けて、該作業室に圧縮空気を送り込んで、地下水の浸入を防ぎながら掘削作業を行い、所定の深さまでケーソンを沈設する工法である。
「圧入ケーソン工法」にはケーソン等の自重を利用してケーソンを地盤中に圧入沈降させる「オープン式圧入ケーソン工法」、油圧ジャッキ等を使用してケーソンを地盤中に圧入沈降させる「油圧式圧入ケーソン工法」、エアを利用してケーソンを地盤中に圧入沈降させる「エア式圧入ケーソン工法(圧入併用ニューマチックケーソン工法)」と呼ばれる圧入ケーソン工法、あるいはこれらの幾つかを組み合わせた構成の圧入ケーソン工法がある。
【0004】
このうち「油圧式圧入ケーソン工法」を例に採れば、掘削部位外方において予め打ち込んでおいた「圧入反力用アンカー」と呼ばれる棒状の支持部材を油圧ジャッキ等によって支持させ、該油圧ジャッキ等を油圧駆動することによって上記「ケーソン」を地中ないし海底に所定ストローク圧入沈降させる。そして、クラムシェルバケット等を使用してケーソン内部の地盤を掘削・排土していた。また、所定ストローク圧入沈降されたケーソン上にプレキャストされた後続の躯体を載置して上述のケーソンの圧入、泥土の掘削及び排出、後続の躯体の増設を繰り返すことによって最終的に所定深さのケーソン立坑を構築していた。
【0005】
「PCウェル工法」は上述した各工法において、ケーソンがプレキャスト部材によって構成されているものであり、例えば円筒形のプレキャスト部材を積み重ねてポストテンション方式でストレスを導入してケーソンを構築し、該ケーソンをグラウンドアンカーなどを反力として圧入沈降させる方法である。
【0006】
そして、このような圧入ケーソン工法において問題になるのが、ケーソン躯体の圧入沈降時に生ずる地盤とケーソン躯体との間、あるいは地盤と後続の躯体との間の摩擦抵抗である。特許文献1には、この摩擦抵抗を低減させる技術(摩擦低減シートユニット)が開示されている。
【0007】
特許文献1では、上述した摩擦抵抗を低減させるために、少なくとも片面に摩擦低減材層を設けた摩擦低減シートが、ロール状に巻き取られた状態でボックスに繰り出し可能に収容され、該ボックスをケーソン躯体の外周面に沿うように複数個所に亘って連接した状態で配設する構成が開示されている(特許文献1の図1、3、7、11等)。
【0008】
このような構成とすることで、ケーソン躯体の圧入沈降に伴って、ボックス内に収容されたロール状に巻き取られた摩擦低減シートを繰り出して、摩擦低減シートを徐々に地盤中に配設するように用いることで、地盤とケーソン躯体との間の摩擦抵抗および摩擦低減シートとケーソン躯体間の摩擦抵抗を摩擦低減材層によって低減するようにしている。そして、特許文献1に記載されている技術では、0.2〜0.3mm程度の薄鉄板に摩擦低減層を塗布または貼設して設けられた摩擦低減シートを採用している(段落0039、0040)。しかし、特許文献1で採用されている摩擦低減シートでは以下のような改善の余地が残っていた。
【0009】
特許文献1の図11に記載されているように摩擦低減シートをロール状とした時に、ロールの直径が大きくなるのは好ましいことではない。その理由は、ロールの直径が大きくなればなるほど、摩擦低減ユニットにおいては、ケーソン躯体が圧入沈降する方向と交差する方向、すなわちケーソンの内側に向かう方向(ケーソンの肉厚方向)の寸法が大きくなり、摩擦低減ユニットが該方向に大型化してしまうからである。ここで、摩擦低減ユニットがケーソン躯体の内側に向かう方向に大型化すると、摩擦低減ユニットが設けられた位置におけるケーソン刃口の肉厚を薄くし、更に内部の鉄筋を一部切断除去することになるので、ケーソン刃口の強度が低下してしまうという問題点が生じる。そのため、ケーソン刃口の強度が低下しないように、摩擦低減ユニットのケーソンの内側に向かう方向の寸法はなるべく小さくする方が好ましい。
【0010】
しかし、摩擦低減シートに鉄板を使用しているため、シート自体が柔軟性に乏しいので、摩擦低減シートをロール状以外の状態で摩擦低減ユニットのボックス内に収納するのは困難であった。その結果、摩擦低減ユニットのケーソン躯体の内側に向かう方向の寸法を小さくすることができず、ケーソン刃口の強度が低下する状況となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−332554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、例えばケーソン躯体の圧入沈降に際して、ケーソン躯体、特にケーソン刃口の強度を高く維持し、効果的で安定した摩擦低減作用が得られ、且つ、材料、施工コストの削減、施工労力の軽減及び工期の短縮が図れる摩擦低減シートユニット、ケーソン躯体及び該ケーソン躯体を使用した圧入ケーソン工法を提供することにある。
【0013】
上記課題を解決するために本発明に係る摩擦低減シートユニットの第1の態様は、折り畳み可能な摩擦低減シートがボックスに繰り出し可能に収容されて成る摩擦低減シートユニットであって、前記摩擦低減シートは折り畳まれた状態で前記ボックスに収容されていることを特徴とするものである。ここで、「折り畳まれた状態」とは、折り目を付けずに畳まれている状態であることが好ましい。
【0014】
本態様によれば、折り畳み可能な摩擦低減シートを使用することにより、ボックス内に摩擦低減シートを折り畳んで収納することが可能になるため、摩擦低減シートをロール状態にした際のロールの直径よりも短い寸法で、摩擦低減シートユニットのボックス内に収納することが可能になる。よって、摩擦低減シートユニットのケーソンの内側に向かう方向の寸法を小さくすることが出来る。
【0015】
なお、ボックス内に摩擦低減シートを幅を小さくして折り畳んで収納すると、ロール状にして収納した時よりも、摩擦低減シートユニットのケーソン躯体を圧入沈降する方向の寸法が大きくなるが、この場合、摩擦低減シートユニットのケーソン躯体の内側に向かう方向の寸法が大きくなる場合よりは、ケーソン刃口の強度は低下しない。つまり、ケーソン躯体を圧入沈降させるのに支障をきたす程のケーソン刃口の強度の低下は起こらない。
【0016】
本発明に係る摩擦低減シートユニットの第2の態様は、折り畳み可能な摩擦低減シートがボックスに繰り出し可能に収容されて成る摩擦低減シートユニットであって、前記摩擦低減シートはロール状に巻き取られた状態のロール状態部と折り畳まれた状態の折り畳まれ状態部とを有していることを特徴とするものである。
【0017】
本態様によれば、摩擦低減シートは、ロール状に巻き取られた状態のロール状態部と折り畳まれた状態の折り畳まれ状態部とを有しているで、摩擦低減シートをロール状にしてその直径を従来のものより小さくし、直径を小さくした分の摩擦低減シートを折り曲げることによりボックス内に収容することが可能となる。その結果、摩擦低減シートユニットのケーソン躯体の内側に向かう方向の寸法を小さくすることが出来る。すなわち、ケーソン刃口の強度を高く維持することが可能となる。
【0018】
本発明に係る摩擦低減シートユニットの第3の態様は、第1の態様または第2の態様の摩擦低減シートユニットにおいて、前記摩擦低減シートは、少なくとも片面にテープが長手方向に貼設されていることを特徴とするものである。
【0019】
ケーソン躯体の圧入沈降に伴って、摩擦低減ユニットから繰り出された摩擦低減シートには、シートの長手(長さ)方向、すなわち、ケーソン躯体の圧入沈降方向に前記繰り出しに伴う力(引っ張り力)が加わるため、摩擦低減シートの種類によっては摩擦低減シートが破損する場合がある。すなわち、摩擦低減シートとして使用できるシートの種類(素材)の選定の自由度が低かった。
本態様によれば、摩擦低減シートの少なくとも片面にテープが長手方向に貼設されているので、テープが補強材の役目を果たし、摩擦低減シートの前記選定の自由度を高めることができる。
【0020】
本発明に係る摩擦低減シートユニットの第4の態様は、第1の態様から第3の態様のいずれか一の態様の摩擦低減シートユニットにおいて、前記摩擦低減シートは少なくとも片面に摩擦低減材層が設けられていることを特徴とするものである。
【0021】
本態様によれば、摩擦低減シートはその表面に摩擦低減材層が設けられている。従って、例えば地盤と摺接するケーソン躯体の先端外周面に当該摩擦低減シートユニットを取り付け、ケーソン躯体の圧入沈降に伴って前記ロール状摩擦低減シートを繰り出して当該摩擦低減シートを徐々に地盤中に配設するように用いることで、地盤とケーソン躯体との間の摺接抵抗を充分に回避できると共に、摩擦低減シートとケーソン躯体間の摺接抵抗も当該摩擦低減材層によって大幅に低減することができる。
【0022】
本発明に係る摩擦低減シートユニットの第5の態様は、第4の態様の摩擦低減シートユニットにおいて、前記摩擦低減シートの前記摩擦低減材層は水と接触すると膨潤し、この膨潤によって摩擦低減機能を発現する材料で形成されていることを特徴とするものである。
【0023】
本態様によれば、摩擦低減シートがボックス外に繰り出された際に地盤中の水と接触して膨潤しつつケーソン躯体と摺接した時に、摩擦低減シートとケーソン躯体間の摺接抵抗をさらに低減することが可能となる。
【0024】
本発明に係る摩擦低減シートユニットの第6の態様は、第4の態様または第5の態様の摩擦低減シートユニットにおいて、前記摩擦低減材層が前記摩擦低減シートの片面に設けられている場合に、該面と反対の面にテープが前記摩擦低減シートの長手方向に貼設されていることを特徴とするものである。
【0025】
本態様によれば、第4の態様または第5の態様の効果に加え、摩擦低減材層が設けられている面と反対の面にテープが前記摩擦低減シートの長手方向に貼設されているので、例えば、ケーソン躯体と摺接する面に摩擦低減材層が設けられているときは、反対側の地盤と接する面にテープが貼設されているので、摩擦低減シートとケーソン躯体間の摺接抵抗を低減しつつ、摩擦低減シートの破損も防止できるという効果を有する。
【0026】
本発明に係る摩擦低減シートユニットの第7の態様は、第1の態様から第6の態様のいずれか一の態様の摩擦低減シートユニットにおいて、前記摩擦低減シートは前記繰り出し方向における上流側に位置するロール状に巻き取られた状態のロール状態部と下流側に位置する折り畳まれた状態の折り畳まれ状態部とを有することを特徴とするものである。
【0027】
本態様によれば、摩擦低減シートは、ロール状に巻き取られた状態のロール状態部と折り畳まれた状態の折り畳まれ状態部とを有しているで、摩擦低減シートをロール状にしてその直径を従来のものより小さくし、直径を小さくした分の摩擦低減シートを折り曲げることによりボックス内に収容することが可能となる。従って、摩擦低減シートユニットのケーソン躯体の内側に向かう方向の寸法を小さくすることが出来る。
さらに、本態様は折り畳まれ状態部がロール状態部より下流にあるため、最初に折り畳まれ状態部から摩擦低減シートが繰り出され続いてロール状態部の摩擦低減シートが繰り出されるという、すなわち、一連のスムーズな流れの中で摩擦低減シートが繰り出されるという効果を有している。
【0028】
本発明に係る摩擦低減シートユニットの第8の態様は、第1の態様から第7の態様のいずれか一の態様の摩擦低減シートユニットにおいて、前記ボックス内に水と接触すると膨潤して止水性を発現できる粉粒状の止水剤が充填されていることを特徴とするものである。
【0029】
本態様によれば、前記ボックス内には、水と接触すると膨潤して止水性を発現できる粉粒状の止水剤が充填されている。従って、摩擦低減シートの繰り出し口から水が浸入すると、その浸入と同時に前記繰り出し口付近で粉粒状止水剤と接触して反応して膨潤し、これにより前記繰り出し口を封止して外部と遮断し、すなわち止水性が発現されて、当該ボックス内への水の浸入が防止される。
摩擦低減シートが前記繰り出し口から繰り出されると前記膨潤による封止状態が壊れてそこから水が入り込むが、直ちに未反応状態の止水剤と反応して新たに膨潤し、前記繰り出し口は再び封止される。
【0030】
ボックス内に止水剤が充填されていないとボックス内に容易に水が入る。すると、例えば摩擦低減シートが摩擦低減材層を有している場合に摩擦低減材層が水と接触することになる。そうなると摩擦低減材層は、その素材の種類にも因るが、水との接触によって劣化してしまい、ボックス外に繰り出されて摩擦低減機能を発揮すべき時点では、前記劣化によってその摩擦低減機能を確実には発揮できなくなる虞がある。
【0031】
本態様によれば、ボックス内に充填された前記止水剤によって、当該ボックス内への水の浸入が防止されるので、摩擦低減材層が水によって劣化する虞が無くなり、当該摩擦低減シートがボックス外に繰り出されて摩擦低減機能を発揮すべき時点において、その摩擦低減機能を確実に発揮させることができる。
【0032】
本発明に係る第9の態様であるケーソン躯体は、先端に内刃状をしたケーソン刃口が形成されたケーソン躯体を地中に所定ストロークずつ沈降させ、該ケーソン躯体内部の泥土を掘削しながら外部に排出して、所定深さのケーソン立坑を構築するケーソン工法において使用されるケーソン躯体であって、前記ケーソン躯体には、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載された摩擦低減シートユニットが該ケーソン躯体の外周面に沿うように複数個所に亘ってほぼ連接した状態で配されており、ケーソン躯体の沈降に伴って上記摩擦低減シートが徐々に繰り出されるように構成されていることを特徴とするものである。
【0033】
本態様によれば、前記第1の態様から第8の態様のいずれかの効果と同様の効果を得ることができる。
【0034】
本発明に係る第10の態様であるケーソン躯体を使用したケーソン工法は、先端に内刃状をしたケーソン刃口が形成されたケーソン躯体を地中に所定ストロークずつ沈降させ、該ケーソン躯体内部の泥土を掘削しながら外部に排出して、所定深さのケーソン立坑を構築するケーソン工法であって、前記ケーソン躯体として前記請求項9に記載のケーソン躯体が使用され、上記摩擦低減シートは、その繰出し先端部を保持した状態でケーソン躯体を沈降させることによって徐々に下方に繰り出されて行き、該ケーソン躯体あるいはその上方に打ち足される後続の躯体は前記摩擦低減シートに対して摺接することを特徴とするものである。
【0035】
本態様によれば、前記第1の態様から第8の態様のいずれかの効果と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、折り畳み可能な摩擦低減シートを使用することにより、ボックス内に摩擦低減シートを折り畳んで収納することが可能になるため、摩擦低減シートをロール状態にした際のロールの直径よりも短い寸法で、摩擦低減シートユニットのボックス内に収納することができるので、摩擦低減シートユニットのケーソンの内側に向かう方向の寸法を小さくすることが出来る。よって、ケーソン刃口の強度を高く維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本願発明に係るケーソン躯体及び該ケーソン躯体を使用したケーソン工法について、圧入ケーソン工法を例にとって実施例1と実施例2に基づいて説明する。なお、本発明は圧入ケーソン工法に限らず、上述した、ニューマチックケーソン工法、PCウェル工法にも適用可能であることは言うまでもない。
最初に本願発明の圧入ケーソン工法の概要と、圧入ケーソン工法を実行する場合に必要となる機械設備について説明する。
【0038】
図1は本発明のケーソン躯体を使用した圧入ケーソン工法の実行に使用する機械設備の一例を示す側断面図、図2は本発明のケーソン躯体を使用した圧入ケーソン工法の実行に使用する機械設備の一例を示す平面図である。
【0039】
圧入ケーソン工法には上述したような3種類の工法があるが、ここではオープン式圧入ケーソン工法と油圧式圧入ケーソン工法を組み合わせた圧入ケーソン工法について説明する。この圧入ケーソン工法には先端に内刃状に傾斜したケーソン刃口2が形成されたケーソン躯体1が使用され、該ケーソン躯体1の圧入沈降手段として自重を利用した加圧桁9と、圧入装置である油圧ジャッキ13とが使用されている。
【0040】
この圧入ケーソン工法では、上記ケーソン躯体1を地中(海底、河川下を含む)の地盤G中に所定ストロークずつ圧入沈降させ、更にケーソン躯体1内部の泥土(土砂を含む)Rを掘削しながらケーソン躯体1の外部(例えば地上)に排出する。そして、ケーソン躯体1の上方にプレキャストされた一例としてコンクリート製の後続の躯体4を打ち足して行くことによって所定深さのケーソン立坑5を構築する。尚、圧入ケーソン工法は、橋脚を建設するための立坑や地下にシールドトンネル15を建設する場合の発進ないし到達用の立坑等を構築する場合等に利用される。
【0041】
そして、このような圧入ケーソン工法を実施するためには、図示のような機械設備6や後続の躯体4をプレキャストするための型枠10及び作業用の足場8等が使用される(図5)。機械設備6としては、ケーソン立坑5を構築する部位の周囲の地面に据え付けられ、固定されるクレーン7と、クレーン7の吊持アーム先端から垂下されている吊持ワイヤーの下端に取り付けられる吊下げフック16(図5)ないしグラブバケット14等が存在する。尚、図示のクレーン7は、自由な方向に移動できるクローラタイプのクレーンであるが、地面に完全に固定状態で据え付けられる固定式のクレーンや更に大型の門型の機枠によって支持される大型クレーン等を採用することも勿論可能である。
【0042】
油圧ジャッキ13は、ケーソン立坑5を構築する部位の地中に予め打設され、上方に立ち上げられている棒状の支持部材であるアースアンカー17との協働作用によってケーソン躯体1を地中の地盤G中に圧入沈降させる装置である。図示の機械設備6では、アースアンカー17は、図2に示すように12本設けられており、そのうち2本ずつのアースアンカー17を使用して1本の加圧桁9と2基の油圧ジャッキ13とによって一組の圧入沈降手段が構成されている。また、本発明で使用される油圧ジャッキ13は、中心にグリッパーロッドを受け入れるための穴が形成されたセンターホールジャッキであり、グリッパーロッド下端に設けられるアンカーチャック18によってアースアンカー17を挟持した時に油圧ジャッキ13とアースアンカー17は接続状態、アンカーチャック18の挟持状態が解除された時に油圧ジャッキ13とアースアンカー17は非接続状態になるようになっている。
【0043】
また、グラブバケット14は、先端に地盤Gを掘削するための櫛歯状の爪部を備えた開閉自在に回動する一対のバケット要素によって構成されており、地盤Gの掘削、掘削した泥土Rの捕獲及び捕獲した泥土Rの排出ができるようになっている。また、吊下げフック16は、ケーソン躯体1や後続の躯体4、あるいは後続の躯体4の要素となるピース19等(図8)を吊り下げ、移動、設置する際に使用される吊下げ具である。
【0044】
[実施例1]
次に、このような機械設備6を使用して構築される本発明のケーソン躯体1と該ケーソン躯体1を使用した本発明の圧入ケーソン工法、更に本発明に係る摩擦低減シートユニット29について図3〜図12に示す実施例1を例に採って説明する。
図3は本発明のケーソン躯体の一例を示す側断面図、図4は本発明のケーソン躯体の一例を示す横断面図である。図5は本発明の圧入ケーソン工法の一例を工程別に示す前半部分(a)〜(d)の側断面図、図6は本発明の圧入ケーソン工法の一例を工程別に示す後半部分(a)〜(d)の側断面図である。図7はケーソン躯体の圧入沈降に伴って繰り出される摩擦低減シートの伸展状態を示す側断面図、図8は本発明のケーソン躯体によって構築されるケーソン立坑の種々の態様を示す斜視図である。また図9は摩擦低減シートの巻取り基端部の係止状態を段階的に示す斜視図、図10は円環状に配設されたシートユニットの一部を拡大して示す斜視図である。
図11は本発明に係る摩擦低減シートユニットの一例を示す二つの実施例(A)(B)の側断面図であり、図12は図11(A)の同水平断面図である。
【0045】
図示のケーソン躯体1は、図8(b)、(d)に示すような円筒状のケーソン立坑5を構築される場合に使用される。従って、円筒状の躯体部20(図4)を有しており、該躯体部20の先端(圧入沈降側の端部)に内刃状をしたケーソン刃口2が円環状に形成されている(図3)。更に、躯体部20の中央より幾分上方の位置の外周部には、ロール状に巻き取られた長尺の摩擦低減シート21を収容した摩擦低減シートユニット29を設置するためのシート設置部22が設けられている。
【0046】
図11(A)に記載したように摩擦低減シートユニット29は、長尺な摩擦低減シート21がロール状に巻き取られ、その巻き取られた状態における前記シートの少なくとも内面31に摩擦低減材層30が設けられて成る摩擦低減シート21が、ロール状態部Xおよび折り畳まれ状態部Yを構成しボックス230に繰り出し可能に、収容されている。本実施例においては、摩擦低減シート21は、繰り出し方向に対して上流側(図の下側)にロール状態部X、下流側(図の上側)に折り畳まれ状態部Yを有する構造となっている。
【0047】
このように、折り畳まれ状態部Xを有することで、ロール状態部Xのロールの直径を小さくすることが出来る。すなわち、摩擦低減シートユニット29のケーソン躯体1の内側に向かう方向の寸法、すなわちケーソンの肉厚方向の寸法(L)を小さくすることが可能となる。その結果、ケーソン刃口2の強度を低下せず高く維持することが可能となる。なお、摩擦低減シートユニット29の他の態様は、図14から図18に記載されているが、これらについては後述する。
【0048】
図3と図11に示したように、該ボックス230内には水と接触すると膨潤して止水性を発現する粉粒状の止水剤28が充填されている。そして、前記摩擦低減シート21の前記摩擦低減材層30は水と接触すると膨潤し、この膨潤によって摩擦低減機能を発現する材料で形成されている。
【0049】
図11(A)に示した本実施例においては、前記ボックス230内には、前述したロール状態部Xおよび折り畳まれ状態部Yを有する摩擦低減シート21が収容され、止水剤28が充填されている。止水剤28は、摩擦低減シート21をボックス230に収容した後、止水剤注入用配管235のキャップ235’を開けて注入しボックス内に充填する。充填後はキャップ235’を閉めボックス230内の下部に形成される空気溜まりの空気を空気抜き用プラグ236から抜く。また、摩擦低減シート21のロール状態部Xはボックス230に回転自在に保持されている。すなわち、ボックス230の対向する左右の側板間に、摩擦低減シート21のロール状態部Xの摩擦低減シート21の回転軸となる巻取り軸24が水平に架け渡されている。
なお、摩擦低減シート21の折り畳まれ状態部Yの部分を形成するには、図13に記載したような、折り畳まれ状態部形成具Zを使用する。
【0050】
図13において、(A)は折り畳まれ状態部形成具Zの斜視図、(B)は正面図、(C)は摩擦低減シート21の折り畳まれ状態部Yを形成した状態を表した正面図である。
折り畳まれ状態部形成具Zは、基板P上の鉛直方向に板状体Qを所定の間隔Jで立てて設置したものである、基板Pおよび板状体Qの材質は、木、プラスチック、金属等が上げられるが、摩擦低減シート21を折り畳み易くするために摩擦が少なく、更に強度が大きいものが良い。よって、鉄などの金属性のものが好ましい。また、板状態Qの形状は、特に限定はないが、上部の形状が丸みを帯びているものの方が好ましい。摩擦低減シート21に強い折り目がつくと、折り目の部分で抵抗が生じ摩擦低減シート21の繰り出し状態が滑らかにいかないおそれがあるからである。
【0051】
折り畳まれ状態部Yは、ロール状に巻き取られた摩擦低減シート21を、所定量引き出して折り畳まれ状態部形成具Zの板状体Qの上部に置いた後、所定の間隔Jで板状体Q同士の間に形成された溝J’に摩擦低減シートを押し込み(図(C))、その後折り畳まれ状態部形成具Zを取り除くことにより形成される。そして、ロール状態部Xと折り畳まれ状態部Yを有する摩擦低減シート21が形成され、これをボックス230内に収容する。
溝J’に摩擦低減シートを押し込むような方法で折り畳まれ状態部Yを形成するため、摩擦低減シート21の基材はなるべく薄くかつ柔軟性に富んでいるものが好ましい。
【0052】
本実施例では、摩擦低減シート21として薄くて柔軟性を有するレーヨン製の基材を用いている。よって、薄鉄板を使用する特許文献1で記載されている摩擦低減金属シートよりも折り畳みやすく、折り畳まれ状態部Yが形成しやすい構成となっている。
【0053】
ボックス230は、図11(A)及び図12に示したように、金属製薄板を適宜折り曲げて加工される角箱状の部材であり、その外方端面は躯体部20の外周面からはみ出さないようにほぼ面一に設定されている。摩擦低減シート21はボックス230内でロール状態部Xおよび折り畳まれ状態部Yを構成しボックス230に繰り出し可能に収容されている。図11(A)においては、摩擦低減シート21は繰り出し方向に対して上流側にロール状態部X、下流側に折り畳まれ状態部Yを構成しており、ボックス230に形成されている繰出し開口部27を通ってケーソン躯体1及びその上方に設置される後続の躯体4の外周面を沿うようにして地上に導かれている。該繰り出し開口部27には、摩擦低減シート21が滑らかに繰り出されるようにガイド234が設けられ、ガイド234に対向してシール部材233が設けられ、ボックス230のシール性が高められている。
【0054】
このようなボックス230、巻取り軸24、止水剤28、摩擦低減シート21およびシール部材233等を備えた摩擦低減シートユニット29は、図4、図10に示したように、ケーソン躯体1の外周面に沿うように複数個所に亘ってほぼ連接した状態で複数ユニット設けられている。
【0055】
前述したように、本実施例で使用する摩擦低減シート21は、基材として厚さ0.1mm〜0.3mm程度のレーヨン製のシートが用いられている。そして、その表面は滑らかに加工されており、所望の摩擦低減作用と次に述べる摩擦低減材層30の良好な塗工性ないし貼設性を発揮し得ると共に、繰り出し及び引き抜きに耐えられるだけの機械的強度を摩擦低減シート21は有している。
更に、本発明では、図9に示したように、摩擦低減シート21の基材上に摩擦低減材層30が設けられた内面31と反対側(地盤Gと接する側)の面に、摩擦低減シート21の長手方向にテープTが貼設されており、摩擦シート21の機械的強度を更に向上させるようにしている。
【0056】
なお、摩擦低減シート21を構成する基材の素材としては、レーヨン、ポリエステル等の合成繊維、綿等の天然繊維が使用でき、摩擦低減シート21の種類としては、フィルム、織物、編物、不織布等が挙げられる。なお、薄くて柔軟性があれば金属であっても構わない。また、テープについては特に限定はないが、ポリプロピレン、ポリエステル等のフィルム基材をガラス繊維、ポリエステル繊維等で補強した耐水性、耐摩耗性を有する、高接着力、高強度のものが好ましい。貼設されるテープの幅や長さは適宜設定できる。
【0057】
このような摩擦低減シート21の内面31には、既述のように、摩擦低減材層30が塗布ないし貼設により設けられている。そして本実施例では、摩擦低減シート21の内面31に対して摩擦低減シート21の巻取り基端側から繰出し先端側に向けて段階的に厚さが増加するように溶液状態の摩擦低減材層の原料を塗工し、複数の層からなる積層状態の摩擦低減材層30を形成している。ここで、原料としては吸水性樹脂(a)、親水性バインダー樹脂(b)及び溶剤(c)を必須成分とする摩擦低減樹脂塗料をレーヨン製の基材に予め塗布することにより当該摩擦低減材層30が形成されている。
また、前記止水剤28としては、具体的には前記吸水性樹脂(a)が使われている。
【0058】
以下、止水剤28と摩擦低減材層30に使われる材料について説明する。
摩擦低減樹脂塗料に用いられる吸水性樹脂(a)は、水を吸水することによって膨潤し、かつ、自重に対するイオン交換水の吸水倍率が3倍以上(25℃、1時間)の樹脂であれば特に限定されない。ただし、以下に例示する、水溶性親水性化合物(モノマーおよび/またはポリマー)を架橋剤で架橋させた合成吸水性樹脂は、天然水膨潤性物(ゼラチン、寒天など)よりも膨潤倍率、水可溶分、吸水速度、強度などのバランスが良好であり、かつその調整も容易であるので、これらの方が天然水膨潤性物(ゼラチン、寒天など)よりも好ましい。止水剤28としては、吸水、膨潤させた吸水性樹脂でもよい。
【0059】
上記のような吸水性樹脂(a)としては、具体的には、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸架橋体、ポリ(メタ)アクリル酸塩架橋体、スルホン酸基を有するポリ(メタ)アクリル酸エステル架橋体、ポリオキシアルキレン基を有するポリ(メタ)アクリル酸エステル架橋体、ポリ(メタ)アクリルアミド架橋体、(メタ)アクリル酸塩と(メタ)アクリルアミドとの共重合架橋体、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルと(メタ)アクリル酸塩との共重合架橋体、ポリジオキソラン架橋体、架橋ポリエチレンオキシド、架橋ポリビニルピロリドン、スルホン化ポリスチレン架橋体、架橋ポリビニルピリジン、デンプン−ポリ(メタ)アクリロニトリルグラフト共重合体のケン化物、デンプン−ポリ(メタ)アクリル酸(塩)グラフト架橋共重合体、ポリビニルアルコールと無水マレイン酸(塩)との反応生成物、架橋ポリビニルアルコールスルホン酸塩、ポリビニルアルコール−アクリル酸グラフト共重合体、ポリイソブチレンマレイン酸(塩)架橋重合体等が挙げられる。これら吸水性樹脂(a)は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。
【0060】
本発明では、吸水性樹脂(a)として、耐塩性吸水性樹脂を用いることが好ましい。耐塩性吸水性樹脂が好ましい理由は、耐塩性吸水性樹脂は、多価金属を含む硬水の吸水倍率が比較的高く、摩擦低減樹脂塗料に用いた場合、土中の水質にあまり影響を受けず、摩擦低減効果を発揮できるからである。
【0061】
本発明での耐塩性吸水性樹脂は、人工海水での吸水倍率(25℃、24時間)が10倍以上のものであれば、特に限定されないが、例えば、上記例示の吸水性樹脂(a)のうち、ノニオン性基および/またはスルホン酸(塩)基を有するものがより好ましく、アミド基またはヒドロキシアルキル基を有するものは、さらに好ましい。前記のような耐塩性吸水性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸塩と(メタ)アクリルアミドとの共重合架橋体、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルと(メタ)アクリル酸塩との共重合架橋体等が挙げられる。さらに、ポリオキシアルキレン基を有するものが特に好ましい。このような吸水性樹脂(a)としては、例えば、メトキシポリオキシアルキレン基を有する(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸塩との共重合架橋体等が挙げられる。
【0062】
これらの耐塩性吸水性樹脂は該吸水性樹脂を用いる事により、土中の水の性質(軟水、硬水など)に関係なく一定倍率まで膨潤し、より確実に、摩擦低減機能を発揮することができる。
【0063】
さらに、摩擦低減樹脂塗料に使用する吸水性樹脂(a)の製造方法は特に限定されないが、例えば、水溶性を有するエチレン性不飽和単量体と、必要に応じて架橋剤とを含む単量体成分を重合する方法が挙げられる。エチレン性不飽和単量体を(共)重合してなる吸水性樹脂(a)は、水に対する吸水性により優れており、かつ、一般的に安価である。尚、上記の架橋剤は、特に限定されるものではない。
【0064】
上記のエチレン性不飽和単量体としては、具体的には、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコン酸、ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、並びに、これら単量体のアルカリ金属塩やアンモニウム塩;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、並びに、その四級化物;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン等の(メタ)アクリルアミド類、並びに、これら単量体の誘導体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルスクシンイミド等のN−ビニル単量体;N−ビニルホルムアミド、N−ビニル−N−メチルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド等のN−ビニルアミド単量体;ビニルメチルエーテル;等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これらエチレン性不飽和単量体は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。
【0065】
上記例示のエチレン性不飽和単量体のうち、ノニオン性基および/またはスルホン酸(塩)基を有するエチレン性不飽和単量体からなるものは耐塩性が高いのでより好ましい。該単量体としては、例えば、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。さらに、ポリオキシアルキレン基を有するエチレン性不飽和単量体が特に好ましい。
【0066】
単量体成分としてエチレン性不飽和単量体を二種類以上併用する場合における、より好ましい組み合わせとしては、例えば、アクリル酸ナトリウム等の(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩とアクリルアミドとの組み合わせ、(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩とメトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートとの組み合わせ等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0067】
上記の単量体成分を重合することにより、吸水性樹脂(a)が得られる。また、吸水性樹脂(a)の平均分子量や形状、平均粒子径等は、摩擦低減剤用塗料の組成やバインダーの種類、物性、作業環境等に応じて設定すればよく、特に限定されるものではないが、吸水性樹脂(a)の平均粒子径は30〜800μmが好ましく、30〜600μmが更に好ましく、30〜400μmが最も好ましい。
【0068】
摩擦低減樹脂塗料に使用する吸水性樹脂(a)の平均粒子径が800μmを超えると、粒子径が大き過ぎ、親水性バインダー樹脂(b)の溶剤(c)溶液に吸水性樹脂(a)を混合した時に吸水性樹脂(a)の粒子が沈降し易くなるので好ましくない。
【0069】
また一方、吸水性樹脂(a)の平均粒子径が30μm未満になると、取扱いが非常に困難になる(微粉として飛び散り易いなど)ので好ましくない。
【0070】
次に摩擦低減樹脂塗料を構成する親水性バインダー樹脂(b)について説明する。
摩擦低減樹脂塗料に利用される親水性バインダー樹脂(b)は、(i)水溶性または水膨潤性であり、(ii)バインダーとして、吸水性樹脂(a)を基材に定着させる機能を有し、かつ(iii)溶剤(c)に溶解するものであれば、他には特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ酢酸ビニルの部分加水分解物、エチレン−ポリビニルアルコール共重合体などが挙げられ、これらの1種または2種以上の混合物を用いることができる。
【0071】
親水性バインダー樹脂(b)は、親水性が低すぎると、吸水性樹脂(a)の膨潤を阻害してしまい、土中水分の吸収が低下し、摩擦低減剤用塗料の摩擦低減機能が低下してしまうので、好ましくない。一方、親水性バインダー樹脂(b)の親水性が高すぎると、土中にある水分吸水時に、バインダーの基材に対する密着力が低下しすぎ、塗膜全体が早く剥がれすぎるので好ましくない。以上の様な理由より、親水性バインダー樹脂(b)は、適度な親水性を有すことが好ましい。
【0072】
親水性バインダー樹脂(b)の酸価は、適度な親水性を有するために40mgKOH/g以上である事が好ましく、50mgKOH/g以上である事がより好ましく、70mgKOH/g以上である事がさらに好ましい。
【0073】
親水性バインダー樹脂(b)の酸価が40mgKOH/g未満になると、親水性が低くなりすぎて好ましくない。また、吸水時のバインダー機能を保持するためには500mgKOH/g以下である事が好ましく、300mgKOH/g以下である事がより好ましく、200mgKOH/g以下である事がさらに好ましい。親水性バインダー樹脂(b)の酸価が500mgKOH/gを超えると、親水性が高くなりすぎて好ましくない。
【0074】
次に、親水性バインダー樹脂(b)のガラス転移温度としては特に限定はないが、基材となる摩擦低減金属シート21への密着性及び基材を地盤G中へ埋設する際の作業性や、摩擦低減樹脂塗料の塗膜の強靭性の両立という観点から、−20℃〜120℃にガラス転移温度を有する事が好ましい。ガラス転移温度が−20℃以下であると摩擦低減樹脂塗料の塗膜がべたつきやすくなり、特に塗布後の基材をすぐに巻き取って放置した場合にはブロッキングを生じる恐れがある。また摩擦低減樹脂塗料の強度が不足するために、基材を地盤G中へ埋設する際に剥離し易くなるため好ましくない。この事からガラス転移温度が0℃以上であると更に好ましい。
【0075】
また、親水性バインダー樹脂(b)のガラス転移温度が120℃以上であると接着防止材層が硬くなり過ぎ、基材への密着性、摩擦低減樹脂塗料の塗膜の柔軟性が乏しくなり、やはり基材を地盤G中に埋設する際に剥離および吸水性樹脂(a)の脱落が生じ易くなり好ましくない。この事からガラス転移温度が100℃以下であるとさらに好ましく、0℃〜20℃の間と、20℃〜100℃の間のそれぞれにガラス転移温度を有すると柔軟化成分と形状保持成分とのバランスが良くさらに好ましい。
【0076】
また、親水性バインダー樹脂(b)の重量平均分子量(Mw)は、特に限定はないが、30,000〜300,000の範囲が好ましく、50,000〜200,000の範囲がより好ましい。前述の重量平均分子量の樹脂を用いる事により、強靭性と溶解性のバランスを取ることが容易となる。
【0077】
親水性バインダー樹脂(b)としては、酸価調節などにより、容易に親水性を調節できるので、アルカリ水可溶性樹脂あるいは酸価が40〜500mgKOH/gの樹脂を用いることが好ましい。
【0078】
以下に、アルカリ水可溶性樹脂について説明する。摩擦低減樹脂塗料を構成する親水性バインダー樹脂(b)の1種であるアルカリ水可溶性樹脂は、0.4重量%濃度のNaOH水溶液に溶解し、中性あるいは酸性の水には溶解しない樹脂である。アルカリ水可溶性樹脂は、上で規定した溶解性を有するものであれば特に限定はなく、たとえば、α,β−不飽和カルボン酸単量体と、それと共重合できる他の単量体の共重合体を挙げることができる。
【0079】
なお、上述のアルカリ水への溶解性であるが、溶解性の度合いは特に限定しないが、後述に好ましく使用できるバインダー樹脂としてのアルカリ水可溶性樹脂の、好ましい溶解度合いを示す。またアルカリ水可溶性樹脂という言葉であるが、別の表現ではアルカリ可溶性樹脂と表現される場合もある。アルカリ水可溶性樹脂とした方が、より明確であるので、本明細書ではアルカリ水可溶性樹脂とした。
【0080】
また、好ましく用いることのできるアルカリ水可溶性樹脂のアルカリ水への溶解性であるが、所望の摩擦低減作用を阻害しない限り、特に限定されることはない。
【0081】
アルカリ水可溶性樹脂としては、この値が、好ましくは、50%−100%である。より好ましくは、60−100%である。さらに好ましくは、70−100重量%である。ろ別しても樹脂分が残らなかった場合は溶解している事になる。
【0082】
アルカリ水可溶性樹脂および酸価が40〜500mgKOH/gの親水性バインダー樹脂の製造方法は特に限定されないが、下記のα,β−不飽和カルボン酸単量体と、それと共重合できるα,β−不飽和カルボン酸単量体以外の単量体からなる不飽和単量体成分を用いて重合して得る事のできる共重合体が好ましい。
【0083】
例えば、アルカリ水可溶性樹脂および酸価が40〜500mgKOH/gの親水性バインダー樹脂の製造に用いられる、α,β−不飽和カルボン酸単量体としては、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等のα,β−不飽和カルボン酸;無水マレイン酸、無水イタコン酸等のα,β−不飽和カルボン酸無水物;マレイン酸モノエステル、フマル酸モノエステル、イタコン酸モノエステル等のα,β−不飽和ジカルボン酸モノエステル等を挙げることができる。上記α,β−不飽和カルボン酸単量体は、1種類のみでもよく、2種類以上であってもよい。これらのうちアクリル系α,β−不飽和カルボン酸であるアクリル酸および/またはメタクリル酸は、安価でかつ他の不飽和単量体との共重合性が良好であるため、好ましく用いられる。
【0084】
次に、α,β−不飽和カルボン酸単量体と共重合できる他の単量体としては、たとえば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ステアリルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート等の、炭素数1〜18の一価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル系単量体;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有ビニル系単量体;ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート等の水酸基含有ビニル系単量体;グリシジルメタクリレート等のエポキシ基含有ビニル系単量体;アクリル酸亜鉛、メタクリル酸亜鉛等のα,β−不飽和カルボン酸の金属塩;スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル系単量体;酢酸ビニル等の脂肪族ビニル系単量体;塩化ビニル、臭化ビニル、ヨウ化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン含有ビニル系単量体;アリルエーテル類;マレイン酸のジアルキルエステル等のマレイン酸誘導体;フマル酸のジアルキルエステル等のフマル酸誘導体;マレイミド、N−メチルマレイミド、ステアリルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド誘導体;イタコン酸のモノおよびジアルキルエステル、イタコンアミド類、イタコンイミド類、イタコンアミドエステル類等のイタコン酸誘導体;エチレン、プロピレン等のアルケン類;ブタジエン、イソプレン等のジエン類等;ビニルエーテル類;2−(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸(塩)、3−アリルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(塩)等のスルホン酸(塩)基を有する不飽和単量体、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート類等を挙げることができ、この中の1種または2種以上で使用することができる。
【0085】
またこれらの中では、(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、種々の性質を有するエステルが容易に入手することができ、それを適宜組み合わせることによってバインダー樹脂のTg(硬さ、柔らかさ)、基材への密着性などが容易に調節でき、また、α,β−不飽和カルボン酸単量体との共重合性も比較的良好なので好ましい。
【0086】
上記の(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、α,β−不飽和カルボン酸単量体と共重合できる他の単量体全量を100重量%として、30重量%〜100重量%用いられることが好ましく、50重量%以上〜100重量%用いられることが更に好ましい。より好ましくは60〜100重量%、さらに好ましくは70〜100重量%である。すなわち、他の単量体としてアクリル系の単量体を使用する事は、親水性バインダー樹脂(b)としてのアルカリ水可溶性樹脂の形態として、好ましい実施形態である。
【0087】
上記のα,β−不飽和カルボン酸単量体と、それと共重合できる他の単量体からなる不飽和単量体成分の割合は特に限定されないが、例えば、α,β−不飽和カルボン酸単量体と、それと共重合できる他の単量体からなる不飽和単量体成分を100重量%とした場合、全単量体成分中のα,β−不飽和カルボン酸の割合は、好ましくは不飽和単量体全成分中の7〜80重量%。より好ましくは7〜50重量%である。さらに好ましくは、9〜30重量%である。
【0088】
アルカリ水可溶性樹脂中の全単量体中のα,β−不飽和カルボン酸単量体の割合が7重量%未満であると、酸価が低くなることにより親水性が低くなりすぎやすい。また、割合が80重量%を超えると、親水性が高くなりすぎることにより問題が生じやすい。
【0089】
酸価が40mgKOH/g以上、500mgKOH/g以下の親水性バインダー樹脂、つまり上記の不飽和単量量体成分を重合してなるバインダー樹脂を製造する場合の原料として使用するα,β−不飽和カルボン酸単量体以外の共重合可能な単量体の量は、上記のα,β−不飽和カルボン酸単量体と、それと共重合可能な他の単量体からなる不飽和単量体全成分を100重量%として、好ましくは不飽和単量体全成分中の93〜20重量%。より好ましくは93〜50重量%である。さらに好ましくは、91〜70重量%である。
【0090】
α,β−不飽和カルボン酸単量体の割合が20%未満になると親水性が低くなり、また93%を超えると親水性が高くなりすぎたりして共に好ましくない。
【0091】
アルカリ水可溶性樹脂の製法は、特に限定されず、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合など通常公知の重合方法が利用できるが、その中でも、有機溶媒中での溶液重合で製造することが好ましい。
【0092】
これは、溶液重合で得られたアルカリ水可溶性樹脂を含む溶液あるいは分散液にそのまま吸水性樹脂を混合することにより、摩擦低減樹脂塗料を製造することが可能となるからである。
【0093】
また、重合形態としては、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合、配位重合などが挙げられるが、工業的な製法としてはラジカル重合が好ましい。
【0094】
原料重合体の製造に使用される反応容器としては、槽型反応器のほか、ニーダーや、スタティックミキサー等の管式反応器等を挙げることができる。これらの反応器を必要に応じ併用することもできる。滴下槽も必要に応じて用いる。反応容器内の圧力は減圧、常圧、加圧のいずれであってもよい。
【0095】
次に、ラジカル重合で使用されるラジカル重合開始剤については、特に限定されないが、その具体例として、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等の過酸化物系開始剤等を挙げることができる。これらのラジカル重合開始剤は2種類以上を併用してもよい。
【0096】
溶液重合で使用される溶媒としては、ラジカル重合反応を妨げない溶媒であれば特に制限はなく、たとえば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル等の脂肪族エステル類、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル等のエチレングリコール誘導品、プロピレグリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のプロピレングリコール誘導品等を挙げることができる。これらの溶媒は2種類以上を併用してもよい。
【0097】
次に摩擦低減樹脂塗料に使用される溶剤(c)に関して説明する。溶剤(c)は、通常の塗料などに用いられる公知の溶剤であれば、特に限定なく用いることができ、例えば、前記アルカリ水可溶性樹脂の製造方法の説明で例示した溶媒などを、1種または2種以上の組み合わせで使用することができる。
【0098】
また、溶剤(c)の選定方法としては、基材へ塗布するのに適した沸点、安全性等を有する溶媒を選定する事が好ましい。低沸点の溶媒を選定すれば速乾性があり、短時間で塗膜が形成できるために厚塗り等が容易となり、高沸点の溶媒を選定すれば作業時間を長くすることができる。媒体として有機溶剤を使用することにより、水を含む媒体を用いた場合に生じる吸水性樹脂の吸水による膨潤はなく、ゲル状にならないために塗布作業が容易になる。また、メチルエチルケトンやメタノール等の揮発性の大きな溶媒を用いると10分程度で乾燥し、水を媒体として用いる場合よりも非常に早く乾燥するために次の作業あるいは工程に迅速に移行する事ができ、工期あるいは、基材への塗布に要する時間を著しく短縮することができる。
【0099】
本発明の摩擦低減樹脂塗料は、これまでに説明した吸水性樹脂(a)、親水性バインダー樹脂(b)および溶剤(c)を必須成分として含んでいれば、その特徴を阻害しない範囲で、その他の添加剤(h)として他の樹脂、顔料、各種安定剤、各種充填材などを含んでいてもかまわない。
【0100】
吸水性樹脂(a)、親水性バインダー(b)および溶剤(c)とその他の添加剤(h)の比率は特に限定されないが、摩擦低減樹脂塗料の特徴を遺憾なく発揮するためには、吸水性樹脂(a)、親水性バインダー(b)および溶剤(c)を合わせたものの全体に対する重量比([(a)+(b)+(c)]/[(a)+(b)+(c)+(h)]×100(%)で表される。)が、50%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、80%以上が最も好ましい。
【0101】
また、吸水性樹脂(a)、親水性バインダー(b)、溶剤(c)およびその他の添加剤(h)の比率も特に限定されないが、摩擦低減樹脂塗料の特徴を遺憾なく発揮するためには、吸水性樹脂(a)は5〜60重量%、親水性バインダー(b)は5〜70重量%、溶剤(c)は5〜90重量%、その他の添加剤(h)は0〜50重量%が好ましく、吸水性樹脂(a)は10〜50重量%、親水性バインダー(b)は10〜80重量%、溶剤(c)は10〜60重量%、その他の添加剤(h)は0〜30重量%がより好ましい。
【0102】
摩擦低減樹脂塗料の各種基材への塗布方法は、公知の塗料塗布の方法であれば、特に限定されないが、例えば、はけ、ローラー等を用いても良いし、リシンガン等のスプレー器具を用いて吹き付け塗装しても良い。
【0103】
本実施例では、摩擦低減シート21の基材の外面(地盤Gと接する側)の長手方向に、摩擦低減シート21に強度を持たすためテープTが貼設されている。これは、ケーソン躯体の圧入沈降に伴って、摩擦低減ユニット29から繰り出された摩擦低減シート21には、シートの長手(長さ)方向、すなわち、ケーソン躯体の圧入沈降方向に力(引っ張り力)が加わるため、摩擦低減シート21が、引っ張り力によって破損するのを防ぐためである。勿論、摩擦低減シート21が引っ張り力に対して十分な強度を有している材料であればテープTを貼設する必要はない。
【0104】
なお、本実施例では、摩擦低減シート21の基材の外面にテープTを貼設しているが、図9のように、摩擦低減シート21の基材の外面に摩擦低減材層300を設けて、その上にテープTを摩擦低減シート21の長手方向に貼設しても良い。そうすれば、摩擦低減シート21の破損を防止すると共に、摩擦低減シート21を地盤中から引き抜く際に、地盤Gとの摩擦が低減されるので都合が良い。
【0105】
摩擦低減シート21は、最初に折り畳まれ状態部Yの部分が、次にロール状態部Xの部分がケーソン躯体1の圧入沈降に伴って徐々に下方に繰り出され、ケーソン躯体1の圧入沈降終了後に上方に引き抜くことができるように構成されている。即ち、図9(a)に示すように、巻取り軸24には係止スリット32が軸に直交する方向に貫通状態で設けられており、図9(b)に示すように摩擦低減シート21の巻取り基端部33を上記係止スリット32に挿し込み、図9(c)に示すように巻取り軸24の周りに摩擦低減シート21を巻いて行くことによって摩擦低減金属シート21は巻取り軸24に取り付けられている。
【0106】
そして、摩擦低減シート21の繰出し先端部34を地上において保持した状態でケーソン躯体1が圧入沈降されることによって巻取り軸24に巻き取られていた摩擦低減シート21が徐々に繰り出されて行く(図7)。そして、最終的に摩擦低減シート21の巻取り基端部33が係止スリット32を擦り抜けることによって巻取り軸24との接続状態が解除されるため、摩擦低減シート21を上方に引き抜くことができるようになっている。
【0107】
次に、このようなケーソン躯体1を使用することによって実行される本発明の圧入ケーソン工法について説明する。本発明の圧入ケーソン工法には、上述した本発明のケーソン躯体1が使用され、巻き取られた状態の摩擦低減シート21がケーソン躯体1を圧入沈降させることによって徐々に下方に繰り出されて行き、地盤Gとケーソン躯体1あるいはその上方に打ち足される後続の躯体4との摺接を防止すると共に、ケーソン躯体1の圧入沈降終了後は巻取り基端部33のケーソン躯体1との係合が解除されて上方に引き抜くことができるように構成されている点に特徴を有している。
【0108】
以下、図5乃至図7に従って本発明の圧入ケーソン工法の具体的な構成について説明する。即ち、本発明の圧入ケーソン工法は図示のように(1)縁切り・マウンド設置工程、(2)一次圧入準備工程、(3)一次圧入・掘削工程、(4)二次圧入準備工程、(5)二次圧入・掘削工程、(6)圧入・掘削完了工程、(7)摩擦低減金属シート引抜き工程、(8)底版コンクリート打設工程を順次実行することによって構成されている。
【0109】
(1)縁切り・マウンド設置工程(図5(a)参照)
本工程ではケーソン立坑5を構築する地盤Gと周辺地盤とを縁切りするために鋼矢板3等を地盤G中に打設する。因みに鋼矢板3等を打設した場合には周辺地盤に与える振動等の伝搬が防止され、該伝搬によって引き起こされる種々の影響が遮断される。またケーソン躯体1の設置に備えてマウンド(置換砂)Mを設ける。
【0110】
(2)一次圧入準備工程(図5(b)参照)
本工程ではアースアンカー17を打設し、アースアンカー17に加圧桁9を架け渡す。そして加圧桁9上に油圧ジャッキ13を設置してアンカーチャック18によりアースアンカー17の上部をチャックする。また加圧桁9の下面にケーソン刃口2を下にしてケーソン躯体1をセットしてケーソン躯体1の圧入に備える。
またこの時、摩擦低減シート21の繰出し先端部34を加圧桁9等に保持させておく。
【0111】
(3)一次圧入・掘削工程(図5(c)、図7(a)参照)
本工程では加圧桁9及びケーソン躯体1の自重と油圧ジャッキ13の油圧を利用した圧入作用によってケーソン躯体1を地盤G中に圧入沈降させる。そしてケーソン躯体1の圧入沈降を先行させながらケーソン躯体1内部の地盤Gの掘削をクレーン7及びグラブバケット14等を利用して進めて行く。
【0112】
またこの時、ケーソン躯体1の圧入沈降に伴ってケーソン躯体1に取り付けられたシートユニット29も下方に移動するため、巻き取られた状態の摩擦低減シート21は少しずつ巻き解かれて行く。
【0113】
(4)二次圧入準備工程(図5(d)参照)
本工程ではケーソン躯体1の圧入沈降が完了した後、その上方に打ち足される後続の躯体4の圧入沈降の準備を行う。この場合には設置した加圧桁9や油圧ジャッキ13等をクレーン7と吊下げフック16等を利用して一旦取り外す。そして足場8及び型枠10を設置して地盤G中に圧入されたケーソン躯体1の上方の型枠10内に原料を流し込み後続の躯体4をプレキャストする。そして後続の躯体4の固化を確認後、上記足場8と型枠10を取り外す。
【0114】
(5)二次圧入・掘削工程(図6(a)、図7(b)(c)参照)
本工程では、再びアースアンカー17に加圧桁9を架け渡し、加圧桁9上に油圧ジャッキ13を設置してアンカーチャック18によりアースアンカー17の上部をチャックする。そして上記(3)一次圧入・掘削工程と同様にケーソン躯体1と後続の躯体4の圧入沈降を先行させながらケーソン躯体1内部の地盤Gの掘削を進めて行く。
【0115】
またこの時、既述したように摩擦低減シート21の基材の外面(地盤Gと接する側)に摩擦低減材層300を設ければ(図9)、ケーソン躯体1及び後続の躯体4の外周面と外側の地盤Gとの間には摩擦低減材層300が塗布された摩擦低減シート21が位置しているから、両者の間の摩擦抵抗は極めて低く押えられており、ケーソン躯体1と後続の躯体4は円滑に無理なく地盤G中に圧入されて行く。
【0116】
すなわち、地盤Gと摺接するケーソン躯体1の先端外周面に当該摩擦低減シートユニットを取り付け、ケーソン躯体1の圧入沈降に伴って前記摩擦低減シート21を徐々に地盤G中に繰り出すように用いることで、地盤Gとケーソン1との間の摺接抵抗を完全に回避できる。さらに摩擦低減シート21とケーソン1間の摺接抵抗も当該摩擦低減材層30によって大幅に低減することができる。
【0117】
さらに、当該摩擦低減シートユニット29の作用を説明する。前記ロール状摩擦低減シート21が収容されるボックス230内には、水と接触すると膨潤して止水性を発現する粉粒状の止水剤28が充填されている。従って、摩擦低減シート21の繰り出し開口部27から水が浸入すると、その浸入と同時に前記繰り出し開口部27付近で粉粒状止水剤28と接触して反応して膨潤し、これにより前記繰り出し開口部27を封止部280によって封止して外部と遮断し、すなわち止水性が発現されて、当該ボックス230内への水の浸入が防止される(図11)。
【0118】
摩擦低減シート21が前記繰り出し開口部27から繰り出されると前記膨潤による封止状態が壊れてそこから水が入り込むが、直ちに未反応状態の止水剤28と新たに反応して新たに膨潤し、前記繰り出し開口部27は再び封止される。
【0119】
本実施例によれば、ボックス230内に充填された前記止水剤28によって、当該ボックス230内への水の浸入が防止されるので、摩擦低減材層30が水によって劣化する虞が無くなり、当該摩擦低減シート21がボックス230外に繰り出されて摩擦低減機能を発揮すべき時点において、その摩擦低減機能を確実に発揮させることができる。
【0120】
また、本実施例では、摩擦低減シート21の前記摩擦低減材層30は水と接触すると膨潤し、この膨潤によって摩擦低減機能を発現する材料で形成されている。この種の摩擦低減材層30は、ケーソン1との摺接摩擦の低減効果に優れている。それは摩擦低減シート21がボックス230外に繰り出されてから地盤G中の水と接触して膨潤しつつケーソン1と摺接する場合に得られる効果である。摩擦低減シート21がボックス230外に繰り出される前にボックス230内で水と接触すると、そこで反応して膨潤してしまい、ボックス230から繰り出される際に摩擦低減材層30は剥落し、本来の摩擦低減機能を発揮すべき時点ではその機能を発揮できなくなる虞がある。本実施例によれば、前記の如く、この虞を確実に低減することができる。
【0121】
さらに、本実施例では、摩擦低減シート21は、ロール状に巻き取られた状態のロール状態部Xと折り畳まれた状態の折り畳まれ状態部Yとを有し、ボックス230内に収容されている。
そのため、摩擦低減シート21をロール状にしてその直径を従来のものより小さくしても、直径を小さくした分の摩擦低減シート21を折り曲げて折り畳まれ状態部Yとすることにより、ボックス230内に収容することが可能となるので、結果、摩擦低減シートのロールの直径を小さくし、すなわち、摩擦低減シートユニットのケーソン躯体1の内側に向かう方向の寸法L(図11)を小さくすることが出来る。すなわち、ケーソン刃口の強度を向上させることが可能となる。
【0122】
さらにまた、本実施例によれば、ケーソン躯体1の圧入沈降時に徐々に繰り出されて長尺に延設される摩擦低減シート21の繰り出し時において摩擦抵抗を最も長い時間にわたって受ける繰出し先端側で摩擦低減材層30の厚さが最も厚くなり、摩擦抵抗を最も短い時間受ける巻取り基端側に向かって摩擦低減材層30の厚さが徐々に薄くなるように構成されている。従って、摩擦低減材層30の使用量を過剰に増やすことなく、摩擦低減材層30の剥離ないし摩耗に伴う摩擦低減作用の低下を防止することができる。
【0123】
(6)圧入・掘削完了工程(図6(b)参照)
以下、上記(4)二次圧入準備工程と(5)二次圧入・掘削工程を繰り返すことによってケーソン躯体1と所定の数の後続の躯体4すべての圧入沈降とケーソン躯体1内部の地盤Gの掘削を完了させる。また地盤Gの掘削を進める中で、途中地下水W等が流れる部位に到達する場合もあるが、そのような場合にはケーソン躯体1及び後続の躯体4内に流入した地下水W等は図示しないポンプ等を使用して地上に汲み上げるようにする。
【0124】
(7)摩擦低減金属シート引抜き工程(図6(c)参照)
ケーソン躯体1の圧入沈降が終了すると摩擦低減金属シート21の巻取り基端部33は係止されていた巻取り軸24の係止スリット32から外れるため当該摩擦低減金属シート21を上方に引き抜くことが可能となる。これに伴い、摩擦低減金属シート21を上方に引き抜き、アースアンカー17、加圧桁9、油圧ジャッキ13および鋼矢板3等を撤去する。
【0125】
その際、本実施例では摩擦低減シート21の外面(地盤Gと接する側)にも摩擦低減材層300が塗布ないし貼設されているので、摩擦低減シート21の引抜き時に該摩擦低減シート21の外面が地盤Gに対して摺接するが、この摺接による摩擦抵抗を効果的に低減することができる。また、摩擦低減シート21の内面がケーソン躯対1および増設躯対4の外周面に対して摺接するが、この摺接による摩擦抵抗は前記摩擦低減材層30により効果的に低減することができる。更に、摩擦低減シート21は上方に引き抜くことができるように構成されているため、一旦使用した摩擦低減金属シート21を回収することが可能であり、部材の有効利用を通じて材料コストの削減が図れ、摩擦低減材層の地盤中への残留の防止を通じて自然環境等に及ぼす悪影響を防止することができる。
【0126】
(8)底版コンクリート打設工程(図6(d)参照)
そして、圧入沈降したケーソン躯体1の内部に水中コンクリート12と底版コンクリート11を打設することによって所定深さのケーソン立坑5が完成する。そして当該ケーソン立坑5をシールドトンネル15の発進立坑や到達立坑として利用する。
【0127】
なお、以上の説明では、ボックス230内に一種類の止水剤28が充填される場合を示したが、該止水剤28は複数種類の組み合わせで用いることも可能である。たとえば、ボックス230内の底部側からロール状態部Xが埋まる程度の高さまでベントナイト等の粉末を充填し、その上に上記吸水性樹脂(a)を繰り出し開口部27まで一杯に充填した2層構造にしてもよい。ボックス内の底部側は水の浸入が通常はほとんどないので、その膨潤量が繰り出し開口部27側のものより少ない材料を用いて低コスト化を測ることが望ましい。勿論3層以上に構成してもよい。3層以上の場合も前記膨潤量の傾向はボックス230の奥側ほど前記膨潤量の少ない材料を用いることが材料の低コスト化を図る上で望ましい。
【0128】
以上が、図11(A)に示した摩擦低減ユニット29を使用した際における、本発明に係る実施例1の説明であるが、以下に、図11(B)、図14から図18に示す摩擦低減ユニット29の他の態様について説明する。なお、図11(A)と構成が同じ部分については同じ符号を付してその説明は省略する。
【0129】
図11(B)に記載された摩擦低減ユニット29において、ボックス230は内ボックス25と外ボックス23の二重構造に形成され、ロール状態部Xおよび折り畳まれ状態部Yを有する摩擦低減シート21が、内ボックス25に設けられたスリット26から繰り出し開口部27へ導かれるように内ボックス25内に収容され、前記止水剤28は内ボックス25と外ボックス23の間の空間に充填されている。よって、使用に供されて摩擦低減シート21の折り畳まれ状態部Yがなくなって、さらにロール状態部Xのロールが小さくなっても、該摩擦低減シート21は内ボックス25の中に収容されており、一方止水剤28は、内ボックス25と外ボックス23の間の空間に充填されているのでその影響を受けない。従って、止水剤28は摩擦低減シート21の繰り出された量に影響されること無くボックス230内に存在することができるので、繰り出し開口部27の封止を確実に行うことができる。
【0130】
図14(A)、(B)に記載された摩擦低減ユニット29においては、摩擦低減シート21のボックス230内あるいは内ボックス23に収容される状態が図11(A)、(B)の態様とは異なっている。
図14(A)、(B)では、摩擦低減シート21がケーソン躯体1が圧入沈降する方向すなわち摩擦低減ユニットの高さ(H)方向に折り畳まれた状態でボックス230内あるいは内ボックス25内に収容されている。
さらに、摩擦低減シート21が折り畳まれた部分が重なって繰り出されるのを防止し滑らかに繰り出されるために、ローラーSがボックス230あるいは内ボックス25の底部側であってガイド234と対応する位置に設けられている。
【0131】
上述したように摩擦低減シート21を折り畳むことにより、その折畳んだ厚さはロール状にした時の直径よりも小さくすることが可能であるので、摩擦低減シートユニット29のケーソン躯体1の内側に向かう方向の寸法(L)を小さくすることが可能となる。その結果、ケーソン刃口2の強度を高く維持することが可能となる。
【0132】
一方で、ボックス230内または内ボックス25に摩擦低減シート21を折り畳んで収納すると、ロール状にして収納した時よりも、摩擦低減シートユニット21のケーソンを圧入沈降する方向の寸法(H)が大きくなるが、この場合、摩擦低減シートユニットのケーソンの内側に向かう方向の寸法が大きくなるよりは、ケーソン刃口の強度は低下しない。つまり、ケーソンを圧入沈降させるのに支障をきたす程のケーソン刃口の強度の低下は起こらない。よって、摩擦低減シートユニット21のケーソン躯体1を圧入沈降する方向の寸法(H)は大きくなってもそれ程問題にはならない。
【0133】
次に、図15(A)、(B)に記載された摩擦低減ユニット29の態様について説明する。本態様は、ボックス230内あるいは内ボックス25に収容されている摩擦低減シート21の折り畳まれている方向が、図14(A)、(B)の態様と異なっている。
すなわち、摩擦低減シートユニット29は摩擦低減シートユニット29のケーソン躯体1の内側に向かう方向に折り畳まれている。
効果としては、図14(A)、(B)の態様と同様の効果が得られるが、さらに、図14(A)、(B)の態様より、摩擦低減シートが繰り出し易く、ローラーSなどの設置も不要のため摩擦低減シートユニット29の製造コストを抑えることができる。
【0134】
図16から図18には、図11、図14および図15に記載された摩擦低減ユニット29のボックス230または外ボックス23に該当する部分の形状に変更を加えた摩擦低減ユニット29’の態様が記載されている。以下では、図11、図14および図15に記載された摩擦低減ユニット29と異なる点について説明し、構成が同じ部分については同じ符号を付してその説明は省略する。図16から図18に記載された摩擦低減ユニット29’のボックス230’または外ボックス23’の構成は同じであるため、代表として図16(A)、(B)を取り上げて説明する。
【0135】
図16(A)、(B)に記載された摩擦低減ユニット29’において、ボックス230’または外ボックス23’は金属製薄板を適宜折り曲げて加工される略角箱状の部材であり、
繰り出し開口部27にはシール部材の一態様であるゴム板233’が設けられ、ボックス230’または外ボックス23’のシール性が高められている。
さらに、ボックス230’または外ボックス23’にはその内壁面に耐圧強化部として補強リブ231が一体的に設けられている。
【0136】
地盤G中ではボックス230’または外ボックス23’の外部から土水圧を受けるが、ボックス230’または外ボックス23’内には止水剤28によって封止部280が形成され水は浸入しないので、ボックス230’または外ボックス23’内の圧力は外部の土水圧より小さくなり、圧力バランスが崩れる。そのため、ボックス230’または外ボックス23’が土水圧で押し潰れる虞があるが、本態様の摩擦低減シートユニット29’によれば、前記ボックス230’または外ボックス23’に補強リブ231が設けられているので、押し潰されることを防止することができる。
なお、図16(B)における内ボックス25’の形状は、図11(B)における内ボックス25の形状と異なるが、これは、外ボックス23’の形状に合わせたためであり、構成としては、図11(B)における内ボックス25となんら変わりはない。
【0137】
上述した以外の効果については、図11、図14および図15に記載された摩擦低減ユニット29の効果と同様である。
【0138】
[他の実施例]
本願発明に係る摩擦低減シートユニット29、ケーソン躯体1及び該ケーソン躯体1を使用した圧入ケーソン工法は、以上述べたような構成を一例とするものであるが、本願発明の要旨を逸脱しない範囲内の部分的な構成の変更や省略等を行うことも勿論可能である。例えば、ケーソン躯体1の形状は、円筒形に限らず、角筒形でもよく、角筒形のケーソン躯体1を使用すれば、図8(a)、(c)に示すような角筒形のケーソン立坑5を構築することが可能である。また、本発明のケーソン躯体1によって構築できるケーソン立坑5は、当初から筒状に形成された後続の躯体4を打ち足して行く図8(a)、(b)に示すような構造に限らず、板状のピース19をボルトジョイント42を利用して接合して行く図8(c)、(d)に示すような構造も含まれる。
【0139】
また、ケーソン躯体1の上に打ち足されて行く後続の躯体4は、コンクリート製の躯体に限らずスチール製等、他の材料によって形成された躯体であっても構わない。また、メインシート35とジョイントシート37の幅寸法は、必ずしも同一寸法である必要はなく、ジョイントシート37の幅寸法を間隙部36を閉塞できる範囲で短くすることも可能である。
【0140】
また、摩擦低減シート21の表面に設けられる摩擦低減材層30、300は溶融状態の摩擦低減材層の原料を塗工し、その後乾燥させて硬化させた上記実施例に係るものに限定されないのは勿論であり、更に当初から固形状態のシート状の摩擦低減材層30を接着剤等を使用して貼設したものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明は、橋脚の建設現場やシールド工事の施工現場等においてケーソン躯体を使用してケーソン立坑を構築する場合に利用でき、特にケーソン躯体を圧入沈降する際の摩擦抵抗が大きい時、摩擦抵抗を低減して効率良くケーソン工法を実行したい場合に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】本発明のケーソン躯体を使用した圧入ケーソン工法の実行に使用する機械設備の一例を示す側断面図である。
【図2】本発明のケーソン躯体を使用した圧入ケーソン工法の実行に使用する機械設備の一例を示す平面図である。
【図3】本発明のケーソン躯体の一例を示す側断面図である。
【図4】本発明のケーソン躯体の一例を示す横断面図である。
【図5】本発明の圧入ケーソン工法の一例を工程別に示す前半部分(a)〜(d)の側断面図である。
【図6】本発明の圧入ケーソン工法の一例を工程別に示す後半部分(a)〜(d)の側断面図である。
【図7】ケーソン躯体の圧入沈降に伴って繰り出される摩擦低減金属シートの伸展状態を示す側断面図である。
【図8】本発明のケーソン躯体によって構築されるケーソン立坑の種々の態様を示す斜視図である。
【図9】摩擦低減金属シートの巻取り基端部の係止状態を段階的に示す斜視図である。
【図10】円環状に配設されたシートユニットの一部を拡大して示す斜視図である。
【図11】本発明に係る摩擦低減シートユニットの一例を示す側断面図である。
【図12】同摩擦低減シートユニットの垂直断面図である。
【図13】折り畳まれ状態部形成具の斜視図、正面図および折り畳まれ状態部を形成した際の正面図である。
【図14】摩擦低減ユニットの一例を示す側断面図である。
【図15】摩擦低減ユニットの一例を示す側断面図である。
【図16】摩擦低減ユニットの一例を示す側断面図である。
【図17】摩擦低減ユニットの一例を示す側断面図である。
【図18】摩擦低減ユニットの一例を示す側断面図である。
【符号の説明】
【0143】
1 ケーソン躯体 2 ケーソン刃口 3 鋼矢板 4 後続の躯体 5 ケーソン立坑 6 機械設備 7 クレーン 8 足場 9 加圧桁 10 型枠11 底版コンクリート 12 水中コンクリート 13 油圧ジャッキ(圧入装置) 14 グラブバケット 15 シールドトンネル 16 吊下げフック 17 アースアンカー 18 アンカーチャック 19 ピース 20 躯体部 21 摩擦低減金属シート 22 シート設置部 23、23’ 外ボックス 24 巻取り軸 25、25’ 内ボックス 26 スリット 27 繰出し開口部 28 止水剤 29 摩擦低減シートユニット 29A シートユニット(メインシート用の) 29B シートユニット(ジョイントシート用の) 30 摩擦低減材層 31 内面 32 係止スリット 33 巻取り基端部34 繰出し先端部 35 メインシート 36 間隙部 37 ジョイントシート 38 仕切板 39 密着手段 40 凹凸係合部 41 シール部材 42 ボルトジョイント 230 ボックス 231 補強リブ 233 ゴム板 234 ガイド 235 止水剤注入用配管 280 封止部 300 摩擦低減材層 A エア G 地盤 R 泥土(土砂)、M マウンド(置換砂)、W 地下水、a 吸水性樹脂、b 親水性バインダー樹脂、c 溶剤、h 添加剤、X ロール状態部 Y 折り畳まれ状態部 Z 折り畳まれ状態部形成具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り畳み可能な摩擦低減シートがボックスに繰り出し可能に収容されて成る摩擦低減シートユニットであって、
前記摩擦低減シートは折り畳まれた状態で前記ボックスに収容されていることを特徴とする摩擦低減シートユニット。
【請求項2】
折り畳み可能な摩擦低減シートがボックスに繰り出し可能に収容されて成る摩擦低減シートユニットであって、
前記摩擦低減シートはロール状に巻き取られた状態のロール状態部と折り畳まれた状態の折り畳まれ状態部とを有していることを特徴とする摩擦低減シートユニット。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載された摩擦低減シートユニットにおいて、
前記摩擦低減シートは、少なくとも片面にテープが長手方向に貼設されていることを特徴とする摩擦低減シートユニット。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載された摩擦低減シートユニットにおいて、
前記摩擦低減シートは少なくとも片面に摩擦低減材層が設けられていることを特徴とする摩擦低減シートユニット。
【請求項5】
請求項4に記載の摩擦低減シートユニットにおいて、
前記摩擦低減シートの前記摩擦低減材層は水と接触すると膨潤し、この膨潤によって摩擦低減機能を発現する材料で形成されていることを特徴とする摩擦低減シートユニット。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載された摩擦低減シートユニットにおいて、
前記摩擦低減材層が前記摩擦低減シートの片面に設けられている場合に、該面と反対の面にテープが前記摩擦低減シートの長手方向に貼設されていることを特徴とする摩擦低減シートユニット。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載された摩擦低減シートユニットにおいて、
前記摩擦低減シートは前記繰り出し方向における上流側に位置するロール状に巻き取られた状態のロール状態部と下流側に位置する折り畳まれた状態の折り畳まれ状態部とを有することを特徴とする摩擦低減シートユニット。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載された摩擦低減シートユニットにおいて、
前記ボックス内に水と接触すると膨潤して止水性を発現できる粉粒状の止水剤が充填されていることを特徴とする摩擦低減シートユニット。
【請求項9】
先端に内刃状をしたケーソン刃口が形成されたケーソン躯体を地中に所定ストロークずつ沈降させ、該ケーソン躯体内部の泥土を掘削しながら外部に排出して、所定深さのケーソン立坑を構築するケーソン工法において使用されるケーソン躯体であって、
前記ケーソン躯体には、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載された摩擦低減シートユニットが該ケーソン躯体の外周面に沿うように複数個所に亘ってほぼ連接した状態で配されており、ケーソン躯体の沈降に伴って上記摩擦低減シートが徐々に繰り出されるように構成されていることを特徴とするケーソン躯体。
【請求項10】
先端に内刃状をしたケーソン刃口が形成されたケーソン躯体を地中に所定ストロークずつ沈降させ、該ケーソン躯体内部の泥土を掘削しながら外部に排出して、所定深さのケーソン立坑を構築するケーソン工法であって、
前記ケーソン躯体として前記請求項9に記載のケーソン躯体が使用され、上記摩擦低減シートは、その繰出し先端部を保持した状態でケーソン躯体を沈降させることによって徐々に下方に繰り出されて行き、該ケーソン躯体あるいはその上方に打ち足される後続の躯体は前記摩擦低減シートに対して摺接することを特徴とするケーソン躯体を使用したケーソン工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−252306(P2011−252306A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126170(P2010−126170)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(000148346)株式会社錢高組 (67)
【出願人】(594019149)株式会社ヤマハ化工東京 (5)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)