説明

摩擦帯電用の高輝度粉体塗料組成物

【課題】 摩擦帯電式塗装ガン4によって、被塗装物2にメタリック顔料が十分に付着する性能を備えた、摩擦帯電用の高輝度粉体塗料組成物を提供する。
【解決手段】 粉体塗料とメタリック顔料をドライブレンドする前に、金属粉の表面に金属酸化物を被覆したメタリック顔料に、超微粒子状酸化アルミニウムを混合しておくことによって、摩擦帯電式塗装ガン4による摩擦帯電効果が得られようにして、粉体塗料組成物中のメタリック顔料が被塗装物2に十分に付着し、高輝度の平滑性のある塗膜を得るようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金色、銀色あるいはパールなど高い輝きを有する高輝度塗装を、摩擦帯電式塗装ガンを使用して行うことができる粉体塗料組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
粉体塗装は、有機溶剤を含まず、被塗装物に付着しなかったオーバースプレー粉を回収して再使用することができるので、環境にやさしい塗装として、近年多くの製品に採用されている。
【0003】
当初はガードレール、フェンスなどの道路資材から始まり、最近は、自動車のボディ塗装にも広く使用されるようになっている。
【0004】
ところで、従来は、金色、銀色あるいはパールなど高い輝きを有する高輝度塗装を粉体塗装で行うと、溶剤塗装のような高輝度性が出しにくいとされていたが、最近では、特許文献1に示すような、メタリック顔料と粉体塗料をドライブレンドした粉体塗料組成物を使用して、溶剤塗装のような高輝度性に近づいたメタリック塗装も行われつつある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−286626号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
粉体塗装によってメタリック塗装を行う場合には、例えば、アルミニウム等の表面に、シリカやアクリル樹脂またはその両方を被覆したメタリック顔料が用いられる。
【0007】
このメタリック顔料と粉体塗料との混合方法には、従来、次の2通りの方法がある。
【0008】
その1つは、ドライブレンド方式と呼ばれる方法で、粉体塗料にメタリック顔料をミキシングするという方法である。
【0009】
もう一つは、ボンディング方式と呼ばれる方法で、例えば、50℃付近で、粉体塗料を加熱しながら、メタリック顔料を混ぜ、熱によって、粉体塗料にメタリック顔料を固定させたり、あるいは、メタリック顔料を水性又は溶剤エマルジョンに分散させて、粉体塗料に固定させたりする方法である。
【0010】
塗装数量の少ない少ロットの塗装を行う場合には、製造が容易なドライブレンド方式を採用することが多い。
【0011】
また、高輝度性を重視する場合には、ボンディング方式は、粉体塗料にメタリック顔料を強制的に固着するので、濁りが発生しやすいため、前者のドライブレンド方式を採用することが多い。
【0012】
ところで、ドライブレンド方式でメタリック顔料と粉体塗料とを混合して静電塗装を行う場合、コロナ帯電式塗装ガンによる塗装が主流である。
【0013】
コロナ帯電式塗装ガンによって塗装を行なうと、高輝度性は良好であるが、コロナ帯電式塗装ガンの電場により、被塗装物のエッジ部や凸部に、メタリック顔料が集中し、黒ずんだ塗膜肌になるという問題がある。
【0014】
また、塗装後に焼付けを行うと、塗膜の一部に、メタリック顔料の飛んだ、即ち、メタリック顔料が欠落した箇所が生じる。これは、メタリック顔料に静電気が溜まり、塗着時に被塗装物上で静電反発現象が起こるためであると考えられている。
【0015】
また、コロナ帯電式塗装ガンを使用した場合、電極部分にメタリック顔料が付着して溜まり易く、塗装中に、その一部または全てがブツ(スピット)として吐出され、このブツによる塗装不良を起こすという問題もある。
【0016】
また、電極にメタリック顔料が付着すると、コロナ電極からの静電気がリークして、塗膜肌や高輝度感が変わるという問題もある。
【0017】
このようなコロナ帯電式塗装ガンによる問題点を解決するために、摩擦帯電式塗装ガンを使用することが考えられる。
【0018】
これは、摩擦帯電式塗装ガンは、コロナ帯電式塗装ガンと異なり、粉体塗料と非導電性樹脂が摩擦することにより粉体塗料に電荷を与えるので、コロナ帯電式塗装ガンのようなフリーイオンがなく、被塗装物の端面や凸部へのメタリック顔料の集中を抑えることができることによる。
【0019】
ところが、摩擦帯電式塗装ガンによって、粉体塗料とメタリック顔料とをドライブレンドした粉体塗料組成物を使用して塗装を行った場合、粉体塗料組成物中のメタリック顔料が被塗装物に付着しにくいという問題がある。
【0020】
特に、アクリル系樹脂などでコーティングされたメタリック顔料の場合には、その一部が被塗装物に付着する可能性があるが、シリカ等の金属酸化物を被覆したメタリック顔料は、被塗装物に付着しにくい。
【0021】
また、表面がステアリン酸処理されたリーフィングタイプのメタリック顔料の場合は、塗膜表面上部に浮くように設計されているが、摩擦はしないので、被塗装物に付着しにくい。
【0022】
また、表面に酸化チタン等の金属酸化物が被覆されたパール顔料を使用する場合も、被塗装物に付着しにくい。
【0023】
そこで、この発明は、摩擦帯電式塗装ガンによって、被塗装物に十分に付着する性能を備えた、摩擦帯電用の高輝度粉体塗料組成物を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
前記の課題を解決するために、この発明は、金属粉の表面に金属酸化物を被覆したメタリック顔料に、超微粒子状酸化アルミニウムを混合し、この混合物に粉体塗料をドライブレンドすることにより、摩擦帯電用の高輝度粉体塗料組成物を得たものである。
【0025】
上記のように、粉体塗料とメタリック顔料をドライブレンドする前に、金属粉の表面に金属酸化物を被覆したメタリック顔料に、超微粒子状酸化アルミニウムを混合しておくことによって、摩擦帯電式塗装ガンによる摩擦帯電効果が得られる。これにより、粉体塗料組成物中のメタリック顔料を被塗装物に十分に付着させることができ、高輝度の平滑性のある塗膜が得られる。
【0026】
この発明で使用する超微粒子状酸化アルミニウムとは、具体的には、デグサ社製の商品名「アルミニウムオキサイドC」である。
【0027】
上記メタリック顔料の金属粉の表面に被覆されている金属酸化物としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化鉄等があり、金属酸化物の種類により色調を変化させることができる。
【0028】
また、この発明で使用することができるメタリック顔料としては、上記金属粉の表面に金属酸化物を被覆したもの以外に、金属粉の表面にステアリン酸ソーダを被覆したもの等がある。
【0029】
上記メタリック顔料の材料である金属粉としては、アルミニウム、銅、ステンレス、ニッケルなどがある。
【0030】
また、マイカからなるパール顔料を使用する場合も、粉体塗料とパール顔料をドライブレンドする前に、パール顔料に予め超微粒子状酸化アルミニウムを混合しておくことにより、摩擦帯電式静電塗装ガンによる摩擦帯電効果が得られる。これにより、粉体塗料組成物中のパール顔料を被塗装物に十分に付着させることができ、高輝度の平滑性のある塗膜が得られる。
【0031】
上記パール顔料としては、マイカの表面に金属酸化物が被覆されているものも使用することができる。
【0032】
また、上記パール顔料と、上記メタリック顔料とをそれぞれ混合して使用してもよい。
【0033】
また、上記粉体塗料としては、クリア粉体塗料又は着色粉体塗料のいずれか、又はクリア粉体塗料と着色粉体塗料の混合塗料のいずれでも使用することができる。
【発明の効果】
【0034】
この発明の高輝度粉体塗料組成物は、以上のように、摩擦帯電式塗装ガンを使用して、メタリック感、あるいはパール感に優れた高輝度の平滑性のある塗膜を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】摩擦帯電式塗装ガンを使用した塗装装置の概略側面図である。
【図2】粉体塗料が吹き付けられる塗装板の概略正面図である。
【図3】(a)はノンリーフィングタイプのメタリック顔料の塗膜の状態を示す概略断面図、(b)はリーフィングタイプのメタリック顔料の塗膜の状態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、この発明の実施例と比較例について説明する。
メタリック顔料として、アルミニウム金属粉の表面に、二酸化ケイ素(シリカSiO)被膜を施したノンリーフィングタイプの4種類(RCR212、RCR501、RCS3500、RCS1000:ECKART社製)を使用した例について説明する。
【0037】
また、粉体塗料としては、A:久保孝ペイント製のポリエステル系クリアと、B:デュポン製のアクリル系クリアの2種類を使用した。
【0038】
超微粒子状酸化アルミニウムは、デグサ社製の商品名「アルミニウムオキサイドC」を使用した。
【0039】
塗装機としては、この発明の実施例では、摩擦帯電式塗装ガンを使用し、比較例では、コロナ帯電式塗装ガンと摩擦帯電式塗装ガンを使用した。
【0040】
塗装条件は、次の通りである。
図2に示すように、幅800mm、高さ600mmのスクリーン板1に、高さ300mm、幅450mm、厚み0.8mmの電着板2を設置し、1.0m/minのスピードのコンベア3で水平移動させながら、図1に示すように、塗装ガン4を200mmの距離を離し、塗装ガン4をレシプロケータ5で600mmのストロークで上下に往復動させながら電着板2に向けて粉体塗料組成物を噴霧して塗装を行った。
【0041】
塗装後、電着板2に付着した粉体を回収し、回収した粉体の1gを秤量し、粉体塗料組成物中の樹脂分をTHF(テトラヒドロフラン)によって溶解し、その溶液をろ過して、アルミニウム分、又はマイカ分を回収して、その重量を計測した。
【0042】
そして、電着板2に付着した粉体塗料組成物1g中のアルミニウム分、又はマイカ分が、塗装前の粉体塗料組成物1g当たりのアルミニウム分、又はマイカ分の何%であるかを、導入率(%)として計算した。
【0043】
導入率が高いほど、付着するアルミニウム分、又はマイカ分が多く、高輝度である。
【0044】
下記の実施例、比較例とも、粉体塗料に対する超微粒子状酸化アルミニウムの混入量は、重量比で、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.8%、1.0%にして実験を行った。
【0045】
また、粉体塗料に対するアルミニウム顔料の比率は、重量比で、2%、3%、5%、6%、8%、10%にして実験を行った。
【0046】
(比較例1)
アルミニウム顔料と超微粒子状酸化アルミニウムを予め混合し、その後に、粉体塗料A、Bとドライブレンドしたこの発明の粉体塗料組成物を使用し、比較例1として、電圧80kVのコロナ帯電式塗装ガンを使用して塗装を行った。
【0047】
その結果、コロナ帯電式塗装ガンを使用しての塗装は可能であったが、アルミニウム顔料が多くなるにつれて、塗膜表面上にざらつき感が出る。特に、アルミニウム顔料の含有量が5%以上になると、表面肌はアルミニウム顔料が突き出したようにざらざらとなり、不適格の評価となった。また、塗膜の一部にアルミニウム顔料が飛んだ箇所が見られた。このアルミニウム顔料の飛びは、アルミニウム顔料に帯電した静電気が被塗装物との間で、静電反発による現象と考えられる。また、テストピースのエッジ部には黒ずみ現象が現れた。この現象も、アルミニウム顔料が多くなるに伴って、顕著に現れた。なお、表1の通り、コロナ帯電式塗装ガンでのアルミニウム顔料の導入率は66〜74%と安定していた。
【0048】
【表1】

【0049】
(比較例2)
粉体塗料A、Bに超微粒子状酸化アルミニウムを、重量比で、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.8%、1.0%を混入させた後に、アルミニウム顔料を各2%、3%、5%、6%、8%、10%混入してドライブレンドを行なった比較粉体塗料組成物を使用し、摩擦帯電式塗装ガンによって塗装を行った。
【0050】
比較粉体塗料組成物を使用した塗装結果は、表2〜表9の通りであり、アルミニウム顔料導入率が5〜22%と大幅にダウンした。
【0051】
その原因としては、アルミニウム顔料への帯電性がないために、粉体塗料に付着しながら、摩擦帯電式塗装ガン内での摩擦帯電効果が未熟と考えられる。つまり、粉体塗料と超微粒子状酸化アルミニウムとを混合した後に、アルミニウム顔料を混ぜても、超微粒子状酸化アルミニウムとアルミニウム顔料との接触が見られない。その理由としては、粉体塗料と超微粒子状酸化アルミニウムとは、非常に接触(密着)しやすく、粉体塗料の隙間に超微粒子状酸化アルミニウムがもぐり込み、時には、粉体塗料との架橋性が良好であるために、粉体塗料と超微粒子状酸化アルミニウムとを混合した後に、アルミニウム顔料を混合しても、粉体塗料と結びついた超微粒子状酸化アルミニウムは、アルミニウム顔料と結びつこうとしない。そのために、摩擦電流値は、1.5〜2.0μAとなり、アルミニウム顔料には摩擦帯電効果がなく、付着しない。このことは、アルミニウム顔料の種類、混入比率を変えても同様の結果になった。その結果を表2〜表9に示す。
【0052】
【表2】

【0053】
結果は、アルミニウム顔料の導入率が低く、メタリック感が少なかった。
【0054】
【表3】

【0055】
結果は、アルミニウム顔料の導入率が低く、メタリック感が少なかった。
【0056】
【表4】

【0057】
結果は、アルミニウム顔料の導入率が低く、メタリック感が少なかった。
【0058】
【表5】

【0059】
結果は、アルミニウム顔料の導入率が低く、メタリック感が少なかった。
【0060】
【表6】

【0061】
結果は、アルミニウム顔料の導入率が低く、メタリック感が少なかった。
【0062】
【表7】

【0063】
結果は、アルミニウム顔料の導入率が低く、メタリック感が少なかった。
【0064】
【表8】

【0065】
結果は、アルミニウム顔料の導入率が低く、メタリック感が少なかった。
【0066】
【表9】

【0067】
結果は、アルミニウム顔料の導入率が低く、メタリック感が少なかった。
【0068】
(実施例1)
アルミニウム顔料に超微粒子状酸化アルミニウムを混入させた後に、粉体塗料A、Bをドライブレンドしたこの発明の粉体塗料組成物を使用し、摩擦帯電式塗装ガンによる塗装を行った。
【0069】
アルミニウム顔料の混入率は、粉体塗料A、Bに対して重量比で、各2%、3%、5%、6%、8%、10%とした。
【0070】
また、超微粒子状酸化アルミニウムの混入率は、粉体塗料A、Bに対して重量比で、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.8%、1.0%とした。
【0071】
その結果は、表10〜17の通りであり、摩擦帯電式塗装ガンの電流値は、粉体塗料A、B単独で塗装を行った場合と大きな差は見られず、3.7〜4.1μAであった。なお、粉体塗料A、B単独で塗装を行った場合の電流値は、3.8〜4.3μAであった。
【0072】
この発明の実施例の場合、塗着効率もコロナ帯電式塗装ガンとほぼ同様な近似値となった。塗膜肌は平滑で、アルミニウム顔料の比率が増しても、その差は見られない。特に、アルミニウム顔料が5%以上になると、コロナ帯電式ガンに比べて平滑性に大きな差が見られた。摩擦帯電式塗装ガンの場合、粉体塗料の塗膜の下にアルミニウム顔料が沈んでいるためと考えられる。
【0073】
また、塗膜内にアルミニウム顔料の飛び現象も見られなかった。
【0074】
また、テストピースのエッジ部での黒ずみも見られなかった。その理由としては、コロナ帯電式塗装ガンと摩擦帯電式塗装ガンは、一口に静電気を使用する塗装と言われるが、帯電方式の違いから、静電気の状態が異なると考えられる。現在、この静電気に関しては、未知な点が多いのは事実である。また、摩擦帯電式塗装ガンは、非導電性樹脂との接触により、アルミニウム顔料を含んだ粉体塗料組成物自体が帯電するのであって、コロナ帯電式塗装ガンのようなフリーイオンがない。そのために、フリーイオンによるエッジや凸部への静電気集中によるアルミニウム顔料の集中(黒ずみ)は見られない。

【0075】
【表10】

【0076】
【表11】

【0077】
【表12】

【0078】
【表13】

【0079】
【表14】

【0080】
【表15】

【0081】
【表16】

【0082】
【表17】

【0083】
次に、アルミニウム顔料として、ステアリン酸ソーダによって表面処理されたリーフィングタイプのものを使用した実施例と比較例について説明する。
【0084】
ノンリーフィングタイプのアルミニウム顔料は、図3(a)に示すように、顔料が塗膜の中層部に配置されるが、リーフィングタイプのアルミニウム顔料は、図3(b)に示すように、塗膜の表面に、顔料がほぼ水平に浮くように配置される。図3において、符号6はアルミニウム顔料、7は塗膜、8は被塗装物を示す。
【0085】
上記ノンリーフィングタイプのアルミニウム顔料は、高輝度性を目的として使用されるのに対し、リーフィングタイプのアルミニウム顔料は、メタル感を目的として使用される。
【0086】
リーフィングタイプのアルミニウム顔料は、ノンリーフィングタイプに比べて、粉体塗料に対するアルミニウム顔料の投入量が少なく、一般に0.4〜2.0%である。その理由は、上記のように、リーフィングタイプのアルミニウム顔料は、塗膜にほぼ水平に浮くように配置されるからである。
【0087】
リーフィングタイプのアルミニウム顔料としては、ECKART社製のPC20、PC100、PC200の3種類を使用した。
【0088】
粉体塗料は、久保孝ペイント製のポリエステル系クリアの樹脂粉体塗料Aと、デュポン製のアクリル系クリアの樹脂粉体塗料Bを使用した。
【0089】
まず、比較例3として、コロナ帯電式塗装ガンと摩擦帯電式塗装ガンを使用し、粉体塗料に、超微粒子状酸化アルミニウムを、重量比で0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.8%、1.0%を混入させ、その後、リーフィングタイプのアルミニウム顔料を各0.4%、0.8%、1.0%、1.5%、2.0%を混入してドライブレンドした比較粉体塗料組成物を使用して塗装を行った。その結果は、表18の通りである。
【0090】
(比較例3)
比較粉体塗料組成物を、電圧80KVのコロナ帯電式塗装ガンを使用して塗装を行った。その結果は、表18に示す通りである。
【0091】
【表18】

【0092】
表18の通り、コロナ帯電式塗装ガンによる塗装の場合、アルミニウム顔料の導入率は70〜73%であったが、被塗装物のエッジ部には、アルミニウム顔料の黒ずみが見られた。また、塗膜表面は、アルミニウム顔料が浮くためにざらざら感が見られた。
【0093】
(比較例4)
粉体塗料A、Bに超微粒子状酸化アルミニウムを混入後に、アルミニウム顔料をドライブレンドした比較粉体塗料組成物を使用し、摩擦帯電式塗装ガンをによる塗装を行った。その結果は、表19、表20、表21の通りである。
【0094】
粉体塗料A、Bに超微粒子状酸化アルミニウムを混入後に、アルミニウム顔料をドライブレンドした比較粉体塗料組成物を、摩擦帯電式塗装ガンを使用して塗装を行った場合、粉体塗料A、B単独で塗装を行った場合に比し、摩擦帯電によって得られる電流値が1.0〜1.2μAと少なく、表19〜21の通り、塗膜には、メタリック感が全く見られなかった。また、アルミニウム顔料の導入率も、16〜20%と非常に少なく、高輝度性はなかった。
【0095】
【表19】

【0096】
【表20】

【0097】
【表21】

【0098】
次に、アルミニウム顔料として、ステアリン酸ソーダによって表面処理されたリーフィングタイプのものを使用した実施例2について説明する。
【0099】
実施例2は、リーフィングタイプのアルミニウム顔料に、超微粒子状酸化アルミニウムを混入した後に、粉体塗料とドライブレンドしたこの発明に係る粉体塗料組成物を使用する例である。使用する粉体塗料、顔料比率は、比較例4と同様にした。
【0100】
その結果を、表22〜24に示す。
この発明の実施例2の場合、アルミニウム顔料の導入率は、70〜73%であり、表22〜24に示すコロナ帯電式塗装ガンを使用する比較例とほぼ同等の導入率であった。また、電流値は、2.7〜3.0μAとなった。電流値の差は、実施例1の場合と同様に、粉体塗料とドライブレンドする前に、アルミニウム顔料に超微粒子状酸化アルミニウムが付着しているためと考えられる。
【0101】
この実施例2では、被塗装物のエッジ部に黒ずみは全く見られなかった。
【0102】
また、塗膜表面のざらざら感も見られなかった。
【0103】
塗膜面をカットしてみると、リーフィングタイプのアルミニウム顔料は、塗膜の表面近くに水平に並んでいるが、アルミニウム顔料の上面部には、粉体塗料のクリア塗膜がコロナ帯電式塗装ガンの塗膜よりも厚く覆われて、塗膜表面からの顔料の突き出しがほとんど見られない。つまり、塗膜表面が粉体塗料による塗膜で覆われて、平滑性になっている。
【0104】
このことは、この発明の場合、アルミニウム顔料の粒度分布に関係なく同じ傾向が出ている。なぜ、コロナ帯電式塗装ガンと摩擦帯電式塗装ガンとによってアルミニウム顔料の樹脂粉体塗料の塗膜内の表面での位置に差があるのかは不明であるが、考えられる理由としては、コロナ帯電式塗装ガンの場合、コロナ放電によりアルミニウム顔料に偏り(傾斜)ができるのに対し、摩擦帯電式塗装ガンは電場がないために、アルミニウム顔料に偏り(傾斜)が出にくく表面上部に水平に並ぶためであると考えられる。一般にリーフィングタイプは、アルミニウム顔料が塗膜表面上に浮くために、塗膜性能の面からクリアコーティングを行なうのが一般的である。
【0105】
【表22】

【0106】
【表23】

【0107】
【表24】

【0108】
次に、パール顔料を使用する実施例と比較例について説明する。
使用するパール顔料は、天然雲母を原料とする極薄フレークを、酸化金属コーティング(酸化チタン)したものである。なお、パール顔料は、クロム、シリカ、酸化鉄、錫など又はその合金を使用することによって色調整することができる。
【0109】
使用するパール顔料は、ECKART社製の6種類(XT1001、XT2001、XT3001、CFE1001、CFE2001、CFE3001)である。
【0110】
パール顔料を使用する場合、ソリッド系の樹脂粉体塗料にミキシングを行なうのが一般的であるが、粉体塗料の塗膜内の分散、その傾向を見るために、クリアの粉体塗料を使用した。
【0111】
顔料の比率を2%、3%、5%、6%とし、粉体塗料A(久保孝ペイント製のポリエステル系クリア)及び粉体塗料B(デュポン製のアクリル系クリア)を使用した。
【0112】
まず、粉体塗料に超微粒子状酸化アルミニウムを、重量比で0.2%、0.3%、0.4%。0.5%、0.6%、0.8%、1.0%を混入させた後に、パール顔料を各2%、3%、5%、6%ドライブレンドした比較粉体塗料組成物を使用し、コロナ帯電式塗装ガンによる塗装と、摩擦帯電式塗装ガンによる塗装とを行った。
【0113】
コロナ帯電式塗装ガンによる塗装の結果は、表25の通りであり、導入率は65〜68%であった。
【0114】
これに対し、摩擦帯電式塗装ガンによる塗装の結果は、表26〜表31の通りであり、導入率は19〜24%で、電流値が1.3〜1.5μAであり、パール色は見られない。
【0115】
一方、パール顔料に超微粒子状酸化アルミニウムを混入した後に、パール顔料をドライブレンドしたこの発明に係る粉体塗料組成物を使用して摩擦帯電式塗装ガンによる塗装を行った結果は、表32〜表37の通りであり、導入率が66〜71%で、電流値は3.5〜4.0μAとなり、コロナ帯電式塗装ガンでの塗装とパール色(感)は全く変わらなかった。
【0116】
上記の各実施例で使用する粉体塗料自体は、摩擦効果が少ない粉体塗料であるが、粉体塗料自体が摩擦帯電効果を十分持った粉体塗料でもなんら問題はない。また、上記の各実施例や比較例では、粉体塗料としてクリア色を使用したが、ソリッド色でも良い。また、上記の実施例では、各高輝度の単体顔料(アルミニウム顔料)を使用したが、アルミニウム顔料とパール顔料をミキシングした顔料を使用してもよい。
【0117】
【表25】

【0118】
【表26】

【0119】
【表27】

【0120】
【表28】

【0121】
【表29】

【0122】
【表30】

【0123】
【表31】

【0124】
【表32】

【0125】
【表33】

【0126】
【表34】

【0127】
【表35】

【0128】
【表36】

【0129】
【表37】

【符号の説明】
【0130】
1 スクリーン板
2 電着板
3 コンベア
4 塗装ガン
5 レシプロケータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粉の表面に金属酸化物を被覆したメタリック顔料に、超微粒子状酸化アルミニウムを混合し、この混合物に粉体塗料をドライブレンドしたことを特徴とする摩擦帯電用の高輝度粉体塗料組成物。
【請求項2】
上記金属酸化物が、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化鉄の少なくとも一つである請求項1記載の摩擦帯電用の高輝度粉体塗料組成物。
【請求項3】
金属粉の表面にステアリン酸ソーダを被覆したメタリック顔料に、超微粒子状酸化アルミニウムを混合し、この混合物に粉体塗料をドライブレンドしたことを特徴とする摩擦帯電用の高輝度粉体塗料組成物。
【請求項4】
上記金属粉が、アルミニウム、銅、ステンレス、ニッケルのいずれかである請求項1〜3のいずれかに記載の摩擦帯電用の高輝度粉体塗料組成物。
【請求項5】
マイカからなるパール顔料に、超微粒子状酸化アルミニウムを混合し、この混合物に粉体塗料をドライブレンドしたことを特徴とする摩擦帯電用の高輝度粉体塗料組成物。
【請求項6】
上記パール顔料が、マイカの表面に金属酸化物が被覆されている請求項7記載の摩擦帯電用の高輝度粉体塗料組成物。
【請求項7】
上記請求項1〜4のいずれかに記載のメタリック顔料と、請求項5又は6記載のパール顔料と、超微粒子状酸化アルミニウムとをそれぞれ混合し、この混合物に樹脂粉体塗料をドライブレンドしたことを特徴とする摩擦帯電用の高輝度粉体塗料組成物。
【請求項8】
上記請求項1〜7のいずれかに記載の粉体塗料が、クリア粉体塗料又は着色粉体塗料のいずれか、又はクリア粉体塗料と着色粉体塗料の混合塗料からなることを特徴とする摩擦帯電用の高輝度粉体塗料組成物。
【請求項9】
上記請求項1〜8のいずれかの高輝度粉体塗料組成物を、摩擦帯電式塗装ガンを使用して粉体塗装を行う静電塗装方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−92206(P2012−92206A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239936(P2010−239936)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(000117009)旭サナック株式会社 (194)
【Fターム(参考)】