説明

摩砕こんにゃく食品の製造方法

【課題】摩砕こんにゃくを利用した加工食品の製造。
【解決手段】磨砕こんにゃくに、該磨砕こんにゃくとは異なるなめらかな舌触りを有する、摩砕こんにゃくのアルカリ分を少なくとも中和できる量の酸性素材を混合してペースト状食品材料とし、そのペースト状食品材料を加熱処理することを特徴とする摩砕こんにゃくを含有する加工食品の製造方法。
【効果】機能性食品としてのこんにゃくの利用を拡大・促進する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩砕こんにゃくを使用した加工食品の製造に関し、こんにゃくの摩砕体を使用することによりこんにゃくの応用範囲を拡大するものであり、様々な食品にこんにゃくに基づく健康増進機能を付与することができる。例えば、本発明は、摩砕こんにゃくを、ジャム、スムージー、すし用の素材、ソース、ドレッシングなどに応用することによりヘルシーでカロリーの少ない新しい加工食品を製造し提供するものである。
【背景技術】
【0002】
こんにゃくの主成分は多糖類のグルコマンナンであり、難消化性で食物繊維からなることからダイエットや便秘に効果があるといわれている。また体内では、コレステロールや血糖値の低下、体脂肪の減少にも役立つとされている。特に、腸での難消化性は、俗にいう腹もちがよく、食事の摂取量の減少につながる。これらの効用は、消費の減少が続いているこんにゃくの用途を拡大するとともに、より多くの人にヘルシーな食品を提供することになり、食生活の健全化にも寄与している。また、こんにゃくの需要が、冬期に「おでん」、「すきやき」、「鍋もの」などに偏るため、寒い時期に集中する傾向がある。こうした需要の集中を緩和するには様々な食品に応用できるこんにゃく素材の開発が必要であった。しかしながら、その形状はブロック状、板状、球状、紐状などに限られ、形状を自由に変化させることは困難であることから、こんにゃくの特性を多様な食品の中で広範囲に利用できるようにすることは容易ではなかった。
【0003】
こうした状況の中で、こんにゃくを他の食品素材と組み合わせて使用できるようにするために、その形状を乾燥して紛体または粒状になすことが試みられている。こんにゃく食品をハンバーグ、ソーセージはどの加工食品中に、食物繊維量の増大やカロリー低下を目的として混入できるようにするにはチップ状または粒状とすることが好ましいが、こんにゃくは多量の水分を含むものであり常温では腐敗し易く、貯蔵には冷蔵庫を要し、また他の食品材料と混ぜ合わせたときに、チップや粒体が含有する水分により影響を受けることがあった。
【0004】
そこで、乾燥した粒状またはチップ状のこんにゃくの製造がいくつか提案されている。例えば、吸水性が良好で軟化し易く他の食品素材との馴染みがよいこんにゃくを製造するにあたり、ゲル状のこんにゃくに石灰水などのアルカリ水を混練し、その混練こんにゃくを太さ2〜4mm、60〜15本の線状体に押出形成し、養生したのちに粉砕機により細かく砕いて砕片となし、その砕片を加熱して再凝固させて独立した粒状のこんにゃくとなした後、洗浄脱水して40〜65℃の温度範囲の熱風により、含水率4〜10%になるまで乾燥する粒状または粉状の乾燥こんにゃくの製造方法(特許文献1)や、長さ0.5mm、幅3mmに粉砕し、元の水分の10〜60%に乾燥したこんにゃく食品(特許文献2)などが提案されている。また、乾燥こんにゃくの製造には、破砕したこんにゃくの組織内の水分を除去するために、−10℃以下の冷却と200℃以上の乾燥とを併用して製造する長さ6mm以下粒状物に成形したファイバー状こんにゃく(特許文献3)が提案されている。
【0005】
その他の粒状こんにゃくを利用した食品としては、例えば、多価アルコール、糖アルコール、単糖類、二糖類、オリゴ糖などとグルコマンナンなどから選ばれた天然糖類からなる高強度ゲル状ブロックを混入した食品であって、ブロックの強度が食品素材よりも大きいゲル状ブロックを混入したヨーグルト、ジュース、ジャム、ゼリーなどに混入して好ましい食感を付与した食品(特許文献4)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3395966号公報
【特許文献2】特開平2−231045号公報
【特許文献3】特開平8−89184号公報
【特許文献4】特開昭63-3767号公報
【特許文献5】特許第3829211号
【特許文献6】特許第3905830号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、こんにゃく製品は、水分を除く主たる成分がグルコマンナンからなり、石灰(水酸化カルシウム)との混練によりカルシウムを含むものであり、難消化性でノンカロリーの食品として知られているが、グルコマンナンが食物繊維の一種であることと、食品としてカルシウム含有が多いことから、健康食品としての展開がなされている。しかしながら、石灰と混練して凝固したこんにゃくを、適当な大きさや形状に調理して食用するこれまでの食べ方では、こんにゃく独特の食感を味わうには宜しいが、こんにゃくから食物繊維としてのグルコマンナン、さらにはカルシウムなどを摂取するには不適当であった。このようなことから、こんにゃくを加工食品あるいは健康食品として採用し易い状態に加工することが従来試みられている。こうした現状の中で、本発明者らは、食品添加物として利用が便利な摩砕して製造した粉粒状または細長い形状の含水こんにゃくを製造すること、および乾燥などの処理をすることなくしても取り扱いが簡便で、食品との組み合わせを容易となしたこんにゃく加工食品の製造技術を見出し、その利用技術を開発することを目的として研究を積み重ねた結果本発明に到達したものである。
【0008】
こんにゃく加工品は、従来、糸や板状のアルカリこんにゃくが調理されていたが、本発明はこのアルカリこんにゃくを磨砕して、これを素材にした加工食品を開発したものであり、ジャム、スムージー、すし用素材、ソースなど食品全般に利用できる摩砕こんにゃくの利用技術に関するものである。これらの食品は、(1)磨砕こんにゃくを素材としていること、(2) 分散性の良いペースト状態であり、飲食した際に口内あるいは喉で粒状物の存在を感じないなめらかなものからつぶつぶを感じるものまでの種々の態様を包含すること、(3)酸を加えてpHを酸性側に調整していること、(4)袋詰めにした加熱殺菌で供給できること、(5)袋詰めにした状態でこんにゃくの中和および加熱殺菌が一度にできること、などの特徴を有している(特許文献5参照)。また他の面でもこんにゃく内から水及び調味液に溶出しない天然色素をこんにゃくに練りこんで、様々に着色する技術や、アルカリこんにゃくに所定のpHに必要な計算量の酸味料を加え、酸性域に設定する技術が利用される(特許文献6参照)。
本発明は、こんにゃくを摩砕した粉粒体を使用することによりこんにゃくの応用範囲を拡大すること、様々な食品にこんにゃくに基づく健康増進機能を付与すること、摩砕こんにゃくを使用した種々の加工食品を提供することを目的としている。より具体的には、本発明は、摩砕こんにゃくを、ジャム、スムージー、すし用の素材、ソース、ドレッシングなどに応用することによりヘルシーでカロリーの少ない新しい加工食品を製造し提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)磨砕こんにゃくに、該磨砕こんにゃくとは異なるなめらかな舌触りを有する、摩砕こんにゃくのアルカリ分を少なくとも中和できる量の酸性素材を混合してペースト状食品材料とし、そのペースト状食品材料を加熱処理することを特徴とする摩砕こんにゃくを含有する加工食品の製造方法。
(2)摩砕こんにゃくのpH値を2.5〜7.0に調整する上記(1)に記載の摩砕こんにゃくを含有する加工食品の製造方法。
(3)磨砕こんにゃくが、こんにゃく粉に水を混合して糊化しアルカリでゲル化させたこんにゃくを磨砕したものである上記(1)または(2)に記載の摩砕こんにゃくを含有する加工食品の製造方法。
(4)こんにゃくが糸こんにゃくである上記(3)に記載の摩砕こんにゃくを含有する加工食品の製造方法。
(5)摩砕こんにゃくの平均の長さまたは粒径が0.1〜10mmである上記(1)から(4)のいずれかに記載の摩砕こんにゃくを含有する加工食品の製造方法。
(6)上記酸性素材が、調味料、増粘物質、果汁、果実および/または野菜を破砕して裏ごししたピューレ、果実ペースト、野菜ペーストから選ばれた1種以上を含み、摩砕こんにゃくのアルカリ分を少なくとも中和できるようにpH値を調整したものである上記(1)から(5)のいずれかに記載の摩砕こんにゃくを含有する加工食品の製造方法。
(7)増粘物質が低メトキシルペクチン、コーンスターチ、およびキサンタンガムから選ばれた1種以上である上記(6)に記載の摩砕こんにゃくを含有する加工食品の製造方法。
(8)上記酸性素材が、アルカリの中和にグルコン酸、クエン酸、および乳酸から選ばれた1種以上の酸味料を含む上記(1)から(7)のいずれかに記載の摩砕こんにゃくを含有する加工食品の製造方法。
(9)上記食品材料を容器内に封入した後、加熱処理する上記(1)から(8)のいずれかに記載の摩砕こんにゃくを含有する加工食品の製造方法。
(10)加熱処理が、50℃〜120℃で60分間以内に品温を保持することよりなる上記(1)から(9)のいずれかに記載の摩砕こんにゃくを含有する加工食品の製造方法。
(11)加工食品が、ジャム、スムージー、すし用素材、ソース、またはドレッシングである上記(1)から(10)のいずれかに記載の摩砕こんにゃくを含有する加工食品の製造方法。
(12)加熱処理の後、凍結し、解凍することを特徴とする上記(1)から(11)のいずれかに記載の摩砕こんにゃくを含有する加工食品の製造方法。
【0010】
(13)上記(1)から(12)のいずれかに記載の方法により製造された摩砕こんにゃくを含有する加工食品。
【発明の効果】
【0011】
本発明は次のような効果を奏するものである。
磨砕こんにゃくを素材とするペースト状食品であって、飲食した際に口内あるいは喉で粒状物の存在を感じないなめらかなものからつぶつぶを感じるものまでの種々の食感のこんにゃく加工食品、を提供することができる。
磨砕こんにゃくは、季節によらず年中かつ継続的に食することができる食品に応用することができ、こんにゃくの機能性効果をより引き出すことができる。
こんにゃく独特の臭みや感触がなく、あらゆる加工食品の素材あるいは健康食品として採用でき、素材としての取り扱いも容易で吸水性もよく、既存の加工食品なりの風味や食感を保持しまたは新しい食感を与えることができる新たな粉粒状のこんにゃくと、それを利用した加工食品を提供することができる。
多量の水分を含む状態で摩砕したこんにゃくを包装容器内に密封した状態で加熱殺菌と中和処理を行うことにより、常温での保存を問題とする必要がなく、腐敗防止に冷蔵庫での貯蔵を必要としない。
また、種々の色に着色した磨砕こんにゃくとすることにより、カラフルで遊び心のあるヘルシー食品が製造でき、さらに、磨砕こんにゃくを素材として利用した食品は低カロリーでヘルシー感覚を発揮する新製品を開発できる。例えば、和洋菓子、飲料、タレ類など新市場への展開も可能であり、そのことはこんにゃく企業にとっては周年、平準な稼働ができる利点を有する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、磨砕こんにゃくと、該磨砕こんにゃくとは異なるなめらかな舌触りを有する、摩砕こんにゃくのアルカリ分を少なくとも中和できる量の酸性素材を含有する食品素材を加熱処理する摩砕こんにゃくを含有する加工食品の製造方法に関するものであり、摩砕こんにゃくと酸性素材との混合物を流通用の容器内に個別に封入した後、中和処理と加熱殺菌処理を同時に実施することができる。
本発明で「摩砕こんにゃく」とは、含水こんにゃくを平均の長さまたは粒径が分散性の良い状態である好ましくは0.1mm〜10mmの範囲内、食品によっては0.1mm〜1mmに加工したものであって、その形状や加工手段には特に限定されない。
また、酸性素材の磨砕こんにゃくとは異なる「なめらかな舌触り」とは、磨砕こんにゃくそれ自体に対する酸性素材そのものの性質を言う。磨砕こんにゃくに比べて、酸性素材が磨砕こんにゃくとは異なるなめらかな舌触りを有するという、相対的な性質である。加工食品を飲食した際に口内で噛んで食味すると磨砕こんにゃくが粒の大きさに応じたつぶつぶ感を感じる場合、それに対して、酸性素材は口内あるいは喉で粒状物の存在を感じない。しかし、磨砕こんにゃくを酸性素材と混合した際に粒状物としての存在を感じない粒径0.1mm程度である場合、加工食品を飲食した際に口内あるいは喉で粒状物の存在を感じないなめらかなものである。つまり、両者が混じったペースト状態の加工食品は、分散性の良い状態であり、飲食した際に口内あるいは喉で粒状物の存在を感じないなめらかなものからつぶつぶを感じるものまでの種々の態様を包含する。
【0013】
[磨砕こんにゃくの製造]
摩砕こんにゃくを製造するには通常の方法により製造された成形体が使用できる。例えば、こんにゃく粉を水または温湯で混合、撹拌し糊化物とした後、アルカリ(水酸化カルシウム)でゲル化させた通常の糸状または板状のアルカリこんにゃく(pH12.0)を磨砕または破砕することにより製造される。こんにゃく粉の濃度は2〜4%程度であるが、このとき、特に物性の改善を目的としてタピオカ澱粉などを加えるか、成形体を着色するために黄、赤、緑などの着色剤を添加してもよいし、脱アルカリされたこんにゃくを使用してもよい。
【0014】
このゲル状成形体をハンマーミル、フラッシュミルなどの破砕機を用いて微細化し、さらに高圧ホモジナイザーを用いて小さくするのが良い。また、多数の成形孔を穿設した目皿を用いて、白滝または糸こんにゃくなどを成形する場合と同様に、混練装置の吐出口に設けた目皿から同時に15〜60本の線状体として湯槽に押し出して成形され、養生により凝固してから粉砕機にかけて細かく砕いてもよい。摩砕こんにゃくの製造方式に応じて生成物の表面状態などが変化する。
【0015】
[摩砕こんにゃくの長さまたは粒径]
摩砕こんにゃくの長さまたは粒径に関してはその用途に応じて適宜選択でき、20mm以下、好ましくは0.1mm〜10mm、加工食品の種類によっては0.1mm〜1mm範囲のものが使用されるが、円柱状、角柱状、板状、粒状、外面に凹凸を有する粒状などがあげられる。例えば、食品と混合した際に粒状物としての存在を感じない程度とするならば、摩砕物の粒径は約90μm以下、好ましくは70μmを通過する程度であることが好ましい。磨砕処理の程度により大小の磨砕粒子ができるが、磨砕機の運転時間によって粒径を決めることができる。
摩砕こんにゃくは食品中に0.05〜90重量%の範囲で存在するのか好ましいが、食品の種類あるいは達成するべき機能に応じて選択される。例えば、摩砕こんにゃく含有ジャムであれば40〜90重量%、摩砕こんにゃく含有飲料であれば、0.05〜70重量%の範囲が好ましく、固形分の多い製品を製造し、これを希釈して飲食することができる。
【0016】
酸性素材は、調味料、増粘物質、果汁、果実および/または野菜を破砕して裏ごししたピューレ、果実ペースト、野菜ペーストから選ばれた1種以上を含み、摩砕こんにゃくのアルカリ分を少なくとも中和できるようにpH値を調整したものである。酸性素材は、食感があり、すりおろしとは違う食感を楽しめる特徴があるフレッシュミックスに、野菜本来のうまみ、色、食感、香りを残したままに、食材を仕上げることができる。また、果実および/または野菜を破砕して裏ごししたピューレ、果実ペースト、野菜ペーストなどオリジナルの. 食感を作りだすことができる。
増粘物質は食品用粘性物質であれば制限がなく、澱粉、海藻成分など天然多糖類をはじめ公知の食品添加物としての天然ガム質成分、増粘多糖類などである。ジャム、ゼリーなどの低pH食品には、広くペクチンが利用されている。ペクチンの種類は大きく分けて、高メトキシルペクチンと低メトキシルペクチンがあり、粘度、ゲル化特性により使い分けられている。摩砕こんにゃくを使用したジャムの増粘物質としては、高メトキシルペクチンではなく、低メトキシルペクチンを用いることが好ましい。その他具体的にはキサンタンガム、タマリンドガム、グアガム、タラガム、タラビーンガム、ローカストビーンズガム、カラギーナン等を使用し得る。
摩砕こんにゃくの長さ、粒形や粒径を変化されることにより果実の果肉、果皮の食感を表現することもできるので、ジャム、スムージー、すし用素材、ソース、ドレッシングなど加工食品を構成する天然原料素材の一部分または全部を摩砕こんやくで置き換えることができる。また、使用する添加剤の種類によっても食感が変化する。例えば、磨砕こんにゃく、濃縮果汁の使用量や濃縮果汁の種類と品質、さらに増粘剤の種類と量などについて検討するにあたり、最適な粘りの質を決定することができる。粘りの質は、粘弾性が中心となる複雑な物性の組み合わせからなることからそれを数値化することは難しく、粘度計、レオメーター、テクスチュロメーターなど専門機器による測定値をもってしても最適値を求めること困難である。最適な粘りの質を決定するに当たっては、結局、人間の五感による官能検査から最良と思われる結果を決定せざるを得なかった。濃縮果汁についてはイチゴ、ブルーベリー、メロンなどの利用が例示される。
調味液としては、酢酸、砂糖、ソルビトール、食塩、グルタミン酸ソーダ、乳酸カルシウム、ビーフエキス、濃口醤油、などを使用しているが、煮物、炒め物、和え物などに使用するもので、洋風、和風、中華風の調味料であればいずれのものも用いることができる。果実風味を出すためには、ブルーベリーやイチゴなどの濃縮果汁、フレーバー、果肉などが利用される。
【0017】
多様な色に着色した磨砕こんにゃくを使用すれば、カラフルで遊び心のあるヘルシー食品が期待でき、磨砕こんにゃくを素材として利用した食品は低カロリーでヘルシー感覚を発揮する新製品を開発できる。例えば、ジャム、スムージー、すし用素材、ソース、ドレッシングをはじめとして和洋菓子、飲料、タレ類など新市場への新たな展開も可能である。
【0018】
[こんにゃくの中和工程]
本発明で使用するこんにゃくはこんにゃくイモまたはこんにゃく精粉を原料として水酸化カルシウム、カン水などのアルカリで凝固させたものであり、通常製造されたこんにゃくのpHは10〜12である。凝固させたものは通常整形した蒟蒻であり、形状が角状、糸状、丸状、粒状、板状のものである。それらは無着色のものあるいは着色したものである。無着色のものは、海藻粉を使用しない白いコンニャク、海藻粉で着色した黒色系コンニャクに大別される。着色した蒟蒻は調味液中には溶出しにくい油性の天然色素を練り込んだものである(特許文献6参照)。例えば、コンニャク内から水及び調味液に溶出しない天然色素として黄色(カロチン)、赤色(パプリカ)、黒色(イカスミ)、青色(クチナシ)および/または緑色(マリーゴールド、クチナシ)を練り込んで種々に着色したコンニャクである。
こんにゃく中のアルカリを中和するのに必要な酸量は所定重量のこんにゃくをホモジナイザーで磨砕し、これに摩砕こんにゃくのアルカリ分を少なくとも中和できる量の酸性素材を混合して、その場合、有機酸を添加して、pH2.6〜7.0になるまでに要する酸量を測定して決めることができる。有機酸としては酢酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、グルコン酸などの食品添加物が主に使用されるが、調味料、果汁その他に含まれている酸性成分をも考慮することが好ましい。
【0019】
摩砕こんにゃくの所定量の酸性分による中和工程は、容器内で行い、次いで個別の包装容器内に中和物を収納することにより行うことができるが、個別の包装用の容器内に摩砕こんにゃく、有機酸、調味料、果汁などを封入した後に中和させてもよい(特許文献5参照)。また、摩砕こんにゃくを含む食品材料の全てを流通用の個別包装容器内に収納した後、加熱殺菌工程において中和させてもよい。充填する包装用の容器の素材は、ガラス製よりも耐熱性のプラスチック製で、硬質容器やフレキシブルなラミネート袋、さらにレトルトパウチが作業性において効率が良い。包装後の加熱処理はこんにゃくのアルカリを迅速に中和・除去することと、こんにゃく内への調味成分の浸透を早めることを目的としているが、有害菌の殺菌が同時に行われる。
【0020】
[加熱条件]
加熱処理条件においては、こんにゃくが軟化したり、ゴム質化を起こすことがあるが、この現象は調味こんにゃくのpHと関連している。食感と保存性を考慮した最適加熱条件は、pH3.5〜6.0の範囲では50〜95℃、pH6.0〜9.0の範囲では100〜120℃の関係にあり、通常の処理時間は60分間以内である。この加熱処理においては、こんにゃくの形状にもよるが終了時には調味液成分がこんにゃくへ充分に浸透し調味され、加熱工程の終了時には摩砕こんにゃくは所定のpHに中和されている。
【0021】
次に具体的な製品の製造について説明する。
[ヘルシー・ジャムの製造]
ジャムの製造には、例えば、イチゴなどの天然に産するジャム原料を使用したジャムの粘性を再現することが重要となる。摩砕こんにゃくを使用したジャムの増粘物質としては、高メトキシルペクチンではなく、低メトキシルペクチンを用いることが好ましい。一般に、良好なゼリー形成条件は高メトキシルペクチン1%の場合、糖類60〜65%、クエン酸0.25〜0.5%を必要とするが、低メトキシルペクチンによるゲル化はカルシウムなどの多価金属イオンによるものなので、糖は必ずしも必要ではない。製品のpHも2.6〜6.5の範囲でよい。こうした低メトキシルペクチンの特徴を生かして、糖類の使用量を減らすことができるとともに、磨砕こんにゃくを素材としてゲル化したジャムは、非常に低カロリーの食品が製造できる。
本発明のジャムの製法は、磨砕こんにゃく、濃縮果汁、低メトキシルペクチン、その他調味料を混合したものを加熱濃縮してゲル化することにより達成される。
【0022】
[ニュー・スムージーの製造]
若年層に人気があるスムージーは、新鮮な果物を丸ごとつぶした濃厚なフルーツ飲料である。すなわち、スムージとは、ピューレにされるかあるいはアイスクリーム、シャーベットまたはヨーグルトと混合されたフルーツ片、および/または牛乳やジュースを一般に含んでいる濃厚でかつ(質感が)滑らかな飲物である。非果物スムージーは、チョコレート、コーヒー、アルコールなど、果物の代わりの風味材料を含んでいる。エネルギー増強サプリメント、ミューズリー、プロテイン、生卵などのような他の具材が加えられることもある。
本発明は摩砕こんにゃくを用いた新しい形態のスムージーを製造するべく、磨砕こんにゃく、濃縮果汁、増粘剤、その他調味料でスムージー様の粘りのある、フルーティーな調味ペーストとした。ダイエット食品として等量の水または牛乳をミックスしてスプーンで食べるか、または薄めてストローで飲むことができる。このニュー・スムージーは、おいしく、きれいで、フルーティーな感覚を持ち、特に腹もちがよく効果は抜群で、ダイエットに役立つ飲料用のこんにゃく加工品として製造される。 スムージーの製造は、磨砕こんにゃくに糖類、濃縮果汁、増粘剤、その他調味料を混合し加熱することによる。ブルーベリー風味、イチゴ風味、リンゴ風味など濃縮果汁や各種のフレーバーを使用することにより変化にとんだスムージーが製造できる。
【0023】
[すし用材料の製造]
磨砕こんにゃくの物性と調味のベースをいろいろに変えることにより粘りのあるペースト状のものとして、すし用のトッピング材を作成することができる。調味ベースには、例えば、キムチ味の調味料、すき焼き風調味料、マグロのトロ風調味料とか肉類、魚介類、果実類の濃縮品やエキスを使用することにより従来にない風味、味、食感を有するすし用のトッピング類を製造することができる。さらに、すしのネタやタレ類、和え物に展開していくことにより、いずれの場合も磨砕こんにゃくのもつヘルシーとダイエット効果を生かした食品となる。例えば、キムチ風味のものは、軍艦すしの材料やササミの和えなどに用いると好評であった。その製法は、磨砕こんにゃくに調味ベース、増粘剤、その他調味料を混合、加熱することによる。プラスチック製袋、チューブなどに詰め加熱殺菌処理は、品温を80℃〜120℃で1時間以内とすることが好ましい。また、赤み色に着色した磨砕こんにゃくを用い、調味液、増粘類を加えたものを凍結し、解凍すると磨砕こんにゃくが離水し、カニフレーク状の食味を呈する加工食品が製造される。
【0024】
次に本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によってなんら限定されるものではない。
以下の実施例1ないし5で使用した、低メトキシルペクチン、ステビア、イチゴ濃縮果汁、イチゴフレーバー、ブルーベリー濃縮果汁、ブルーベリーフレーバー、スクラロース、キムチ味、白だし醤油、および還元水あめは表1に記載の素材を使用した。
【0025】
【表1】

【0026】
以下の実施例6ないし9で使用した、還元水飴、砂糖、スクラロース、ヨーグルトフレーバー、ブルーベリーフレーバー、ストロベリーフレーバー、オレンジフレーバー、マンゴーフレーバー、粉末果汁(ブルーベリー)、粉末果汁(いちご)、粉末果汁(オレンジ)、粉末果汁(マンゴー)、および粉末果汁(バナナ)は表2に記載の素材を使用した。
【0027】
【表2】

【実施例1】
【0028】
[ヘルシー・ジャムの製造]
粒径0.1mm〜5mmの摩砕こんにゃくに、還元水あめなどの甘味料、低メトキシルペクチン、乳酸などを混合して粘性のある混合物とした後、20分間95℃に加熱、濃縮して粘性を増加させ、次いで、イチゴの濃縮果汁とイチゴフレーバーを混合し、さらに増粘剤を混合して、イチゴジャム風の粘性を有する加工食品を製造した。各原料素材の成分、種類、配合割合の詳細は表3に示した。製造したイチゴ風ジャムには摩砕こんにゃくが約70%含まれ、pHは3.9であり、糖度は29%であった。このイチゴ風ジャムの食感を10人のパネラーによりテストした結果、食感のバランス、風味が良くイチゴジャムとして代替することが可能なものであることが判明した。
【0029】
【表3】

【実施例2】
【0030】
[摩砕こんにゃくを用いた濃縮果汁(ブルーベリー)スムージーの製造]
ブルーベリーの濃縮果汁と還元水あめ、砂糖などの甘味剤料、リンゴ酸などの酸味料、キサンタンガムなどの増粘剤と水を混合した調味料を作成し、粒径0.1mm〜1mmの摩砕こんにゃく1kgに、pHが3.0の調味料を300g混合し、高速かくはん装置に入れ5秒間混合した。これを、ポリプロピレン製の容器に入れ120℃で15分間加熱した。製造したスムージー風の加工食品のpHは3.7であり糖度は11.4%であった。各原料素材の成分、種類、配合割合の詳細は表4に示した。この製品を10人のパネラーによりテストした結果、スムージーとしての食感を有することが確認された。
【0031】
【表4】

【実施例3】
【0032】
[すし用素材の製造]
軍艦すしにおいて、すし飯の上部に載せられる高粘性の練り物状の加工食品を製造した。粒径1mm〜5mmの摩砕こんにゃくと、キムチ味、砂糖、グルコン酸、醤油、増粘剤などを有するpH値が3.6の調味料とを高速回転の攪拌機で5秒間混合した。調味液300gに対し破砕こんにゃく1kgの割合で混合した。調味液の組成は表5に示す。この混合物をレトルト用容器中に収納し密閉するとともに110℃で40分間加熱した。出来上がった製品は、pH4、糖度9.0%の加工食品であった。この製品を軍艦すしのトッピングとして用いて、10人のパネラーによりその食感、味などをテストしたところパネラー全員が珍しいキムチ味の軍艦すしとして好評な結果を得た。
【0033】
【表5】

【実施例4】
【0034】
粒径1mm、長さ5mmの摩砕こんにゃくを食用の着色剤で赤みを有するように着色し、これに調味料、増粘剤を加えて粘性のある状態とした後に凍結し、これを解凍した後、凝集体に成形したところ摩砕こんにゃくが離水したカニフレーク状の食感を呈する加工食品となった。
【実施例5】
【0035】
[容器内での中和と加熱殺菌]
粒径0.1mm〜1mmの摩砕こんにゃく(pH10.5)200g中に残存するアルカリをpH5.0
に中和・除去するのに必要な酢酸量0.5mlであることをあらかじめ測定した。中和用の酢酸2.5mlとサラダタイプ調味液(酢酸0.2%、食塩3%、グルタミン酸ソーダ0.3%、ソルビトール17%、乳酸カルシウム0.3%)300mlと摩砕こんにゃく1kg、低メトキシルペクチン40gを耐熱性プラスチック袋に充填しシールした後、85℃、50分の加熱処理を行った。加熱処理後の内容物はpHが4.5であった。この製品を野菜サラダ用のドレッシングとして使用したところ好評であった。

【実施例6】
【0036】
[磨砕こんにゃくを利用したブルーベリースムージーの製造]
表6に示した各原料素材の成分、種類、配合割合で、実施例2と同様にして、調味液を作成し、粒径0.1mm〜1mmの摩砕こんにゃく1kgに、pHが3.2の調味液を300g混合し、高速かくはん装置に入れ高速回転10秒×3回で混合した。これを、ポリプロピレン製の容器に入れ120℃で15分間加熱した。製造したスムージー風の加工食品のpHは3.9であり糖度は6.4%であった。この製品を10人のパネラーによりテストした結果、ブルーベリースムージーとして良好と判定された。
【0037】
【表6】

【実施例7】
【0038】
[磨砕こんにゃくを利用したストロベリースムージーの製造]
表7に示した各原料素材の成分、種類、配合割合で、実施例2と同様にして、調味液を作成し、粒径0.1mm〜1mmの摩砕こんにゃく1kgに、pHが3.3の調味液を300g混合し、高速かくはん装置に入れ高速回転10秒×3回で混合した。これを、ポリプロピレン製の容器に入れ120℃で15分間加熱した。製造したスムージー風の加工食品のpHは3.9であり糖度は6.2%であった。この製品を10人のパネラーによりテストした結果、ストロベリースムージーとして良好と判定された。
【0039】
【表7】

【実施例8】
【0040】
[磨砕こんにゃくを利用したオレンジスムージーの製造]
表8に示した各原料素材の成分、種類、配合割合で、実施例2と同様にして、調味液を作成し、粒径0.1mm〜1mmの摩砕こんにゃく1kgに、pHが3.3の調味液を300g混合し、高速かくはん装置に入れ高速回転10秒×3回で混合した。これを、ポリプロピレン製の容器に入れ120℃で15分間加熱した。製造したスムージー風の加工食品のpHは3.9であり糖度は5.8%であった。この製品を10人のパネラーによりテストした結果、オレンジスムージーとして良好と判定された。
【0041】
【表8】

【実施例9】
【0042】
[磨砕こんにゃくを利用したマンゴースムージーの製造]
表9に示した各原料素材の成分、種類、配合割合で、実施例2と同様にして、調味液を作成し、粒径0.1mm〜1mmの摩砕こんにゃく1kgに、pHが3.4の調味液を300g混合し、高速かくはん装置に入れ高速回転10秒×3回で混合した。これを、ポリプロピレン製の容器に入れ120℃で15分間加熱した。製造したスムージー風の加工食品のpHは3.8であり糖度は6.0%であった。この製品を10人のパネラーによりテストした結果、マンゴースムージーとして良好と判定された。
【0043】
【表9】



【実施例10】
【0044】
[磨砕こんにゃくを利用したバナナスムージーの製造]
表10に示した各原料素材の成分、種類、配合割合で、実施例2と同様にして、調味液を作成し、粒径0.1mm〜1mmの摩砕こんにゃく1kgに、pHが3.4の調味液を300g混合し、高速かくはん装置に入れ高速回転10秒×3回で混合した。これを、ポリプロピレン製の容器に入れ120℃で15分間加熱した。製造したスムージー風の加工食品のpHは4.0であり糖度は6.0%であった。この製品を10人のパネラーによりテストした結果、バナナスムージーとして良好と判定された。
【0045】
【表10】

【産業上の利用可能性】
【0046】
従来家庭において、こんにゃくは特に冬季に需要が多いものであったが、磨砕こんにゃくを使用した本発明の加工食品は多種にわたるため、年中かつ継続的に食することができるばかりか、健康に好ましい効果を有する加工食品を長期間にわたって供給することが可能となる。このことによって、こんにゃくの需要を増加させると共に国民の健康増進に役立つことができることとなる。また、着色した磨砕こんにゃくを使用することによりカラフルで遊び心のある新しいヘルシー食品が期待できるばかりか、和洋菓子、飲料、タレ類など新市場への展開も可能であり食生活の多様性にも寄与することとなる。さらに、そのことはこんにゃく企業にとっては周年、平準な稼働ができることに通じ、食品産業発展に寄与することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
磨砕こんにゃくに、該磨砕こんにゃくとは異なるなめらかな舌触りを有する、摩砕こんにゃくのアルカリ分を少なくとも中和できる量の酸性素材を混合してペースト状食品材料とし、そのペースト状食品材料を加熱処理することを特徴とする摩砕こんにゃくを含有する加工食品の製造方法。
【請求項2】
摩砕こんにゃくのpH値を2.5〜7.0に調整する請求項1に記載の摩砕こんにゃくを含有する加工食品の製造方法。
【請求項3】
磨砕こんにゃくが、こんにゃく粉に水を混合して糊化し、アルカリでゲル化させたこんにゃくを磨砕したものである請求項1または2に記載の摩砕こんにゃくを含有する加工食品の製造方法。
【請求項4】
こんにゃくが糸こんにゃくである請求項3に記載の摩砕こんにゃくを含有する加工食品の製造方法。
【請求項5】
摩砕こんにゃくの平均の長さまたは粒径が0.1mm〜10mmである請求項1から4のいずれかに記載の摩砕こんにゃくを含有する加工食品の製造方法。
【請求項6】
上記酸性素材が、調味料、増粘物質、果汁、果実および/または野菜を破砕して裏ごししたピューレ、果実ペースト、野菜ペーストから選ばれた1種以上を含み、摩砕こんにゃくのアルカリ分を少なくとも中和できるようにpH値を調整したものである請求項1から5のいずれかに記載の摩砕こんにゃくを含有する加工食品の製造方法。
【請求項7】
増粘物質が低メトキシルペクチン、コーンスターチ、およびキサンタンガムから選ばれた1種以上である請求項6に記載の摩砕こんにゃくを含有する加工食品の製造方法。
【請求項8】
上記酸性素材が、アルカリの中和にグルコン酸、クエン酸、および乳酸から選ばれた1種以上の酸味料を含む請求項1から7のいずれかに記載の摩砕こんにゃくを含有する加工食品の製造方法。
【請求項9】
上記食品材料を容器内に封入した後、加熱処理する請求項1から8のいずれかに記載の摩砕こんにゃくを含有する加工食品の製造方法。
【請求項10】
加熱処理が、50℃〜120℃で60分間以内に品温を保持することよりなる請求項1から9のいずれかに記載の摩砕こんにゃくを含有する加工食品の製造方法。
【請求項11】
加工食品が、ジャム、スムージー、すし用素材、ソース、またはドレッシングである請求項1から10のいずれかに記載の摩砕こんにゃくを含有する加工食品の製造方法。
【請求項12】
加熱処理の後、凍結し、解凍することを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の摩砕こんにゃくを含有する加工食品の製造方法。
【請求項13】
請求項1から12のいずれかに記載の方法により製造された摩砕こんにゃくを含有する加工食品。

【公開番号】特開2012−147770(P2012−147770A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133110(P2011−133110)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(501426736)ハイスキー食品工業株式会社 (9)
【Fターム(参考)】