説明

摩耗検知型コンベヤチェーンとその摩耗度合い判別方法

【課題】コンベヤチェーンのローラ点検保守時にローラ転動面の摩耗度合いを目視もしくは触覚で簡便に判別して保守メンテナンス作業を大幅に軽減することができる摩耗検知型コンベヤチェーンを提供すること。
【解決手段】コンベヤラインを転動走行するローラ110が、所定規格のローラ外径を備えたローラ転動面111とこのローラ転動面111に隣接して同軸に配置されたローラ外径より小径の摩耗限界面112とで構成されている摩耗検知型コンベヤチェーン100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンベヤラインを転動走行するローラの摩耗度合いが判別可能な摩耗検知型コンベヤチェーンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、搬送物を遠隔配置した搬送位置に搬送するために、コンベヤラインを転動走行するローラを備えたコンベヤチェーンが用いられている。
そして、このような従来のコンベヤチェーンの摩耗検出手段として、ローラ、ブシュ、ピンの摩耗を検出するローラチェーンの摩耗検出装置が知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
【特許文献1】特開平10−300426号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、前述したようなローラチェーンの摩耗検出装置は、ローラチェーンのピンの一端側を撮像してピンの像の中心位置およびローラの像の中心位置を算定し、算定した両中心位置の偏位を求め、求めた偏位に基づいてローラなどの摩耗を検出するものであるため、高度な検出器とCPUを駆使した高度な画像処理を必要とするため、試験室などにおいて活用することができるものの、実際の搬送作業現場に設置されたコンベヤチェーンに適用するには大掛かりな摩耗検出設備の設置が必要であり、画像処理などの高度な知識と操作を要するなど点検保守上の厄介な問題があった。
【0004】
そこで、本発明は、従来技術の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、コンベヤチェーンのローラ点検保守時にローラ転動面の摩耗度合いを目視もしくは触覚で簡便に判別して保守メンテナンス作業を大幅に軽減することができる摩耗検知型コンベヤチェーンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、コンベヤラインを転動走行するローラの摩耗度合いが判別可能な摩耗検知型コンベヤチェーンにおいて、前記ローラが、所定規格のローラ外径を備えたローラ転動面と該ローラ転動面に隣接して同軸に配置された前記ローラ外径より小径の摩耗限界面とで構成されていることにより、前述した課題を解決したものである。
【0006】
請求項2に係る発明の摩耗検知型コンベヤチェーンは、請求項1記載の構成に加えて、前記摩耗限界面が、前記ローラ転動面の摩耗限界位置に設定されていることにより、前述した課題を解決したものである。
【0007】
請求項3に係る発明の摩耗検知型コンベヤチェーンは、請求項1または請求項2記載の構成に加えて、前記摩耗限界面が、前記ローラ転動面を左右に二分する位置に配置されていることにより、前述した課題を解決したものである。
【0008】
請求項4に係る発明の摩耗検知型コンベヤチェーンの摩耗度合い判別方法は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の摩耗検知型コンベヤチェーンにおいて、前記ローラ転動面と摩耗限界面との段差の有無でローラ転動面の摩耗度合いを判別することにより、前述した課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る本発明は、コンベヤラインを転動走行するローラの摩耗度合いが判別可能な摩耗検知型コンベヤチェーンにおいて、前記ローラが所定規格のローラ外径を備えたローラ転動面とこのローラ転動面に隣接して同軸に配置されてローラ外径より小径の摩耗限界面とで構成されていることにより、ローラの摩耗点検時に、従来のようなノギス等の計測器を用いることなく、コンベヤラインを転動走行するローラ転動面とローラの摩耗許容限界が表示された摩耗限界面との段差の有無でローラ転動面の摩耗度合いを目視もしくは触覚で簡便に判別して保守メンテナンス作業を大幅に軽減することができる。
【0010】
そして、請求項2に係る本発明の摩耗検知型コンベヤチェーンによれば、請求項1記載の摩耗検知型コンベヤチェーンが奏する効果に加えて、前記摩耗限界面がローラ転動面の摩耗限界位置に設定されていることにより、ローラの摩耗点検時に、従来のようなノギス等の計測器を用いることなく、摩耗しているローラを交換する際の客観的な基準、目安としてローラ交換時期を的確に判別することができる。
【0011】
請求項3に係る本発明の摩耗検知型コンベヤチェーンによれば、請求項1または請求項2記載の摩耗検知型コンベヤチェーンが奏する効果に加えて、前記摩耗限界面がローラ転動面を左右に二分する位置に配置されていることにより、コンベヤラインと摩耗限界面との非接触部位がコンベヤラインと左右に二分されたローラ転動面との転動接触部位よりも潤滑油をより多く包含するため、コンベヤライン上に潤滑油の充満度合いが異なる潤滑油ラインが形成され、このような充満度合いが異なる潤滑油ラインの有無によっても、ローラの摩耗点検時に摩耗しているローラを交換する際のより確実な目安となることができ、しかも、ローラの摩耗限界面により多く包含された潤滑油を円滑なコンベヤ動作を促進させてコンベヤ寿命の長期化に寄与させることができる。
【0012】
請求項4に係る発明の摩耗検知型コンベヤチェーンの摩耗度合い判別方法は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の摩耗検知型コンベヤチェーンにおいて、前記ローラ転動面と摩耗限界面との段差の有無でローラ転動面の摩耗度合いを判別することにより、ローラの摩耗点検時に摩耗しているローラを交換する際の確実な目安となるため、従来のコンベヤチェーンに必要とされていたような熟練者の点検ノウハウと経験などに依存することなく容易かつ簡便に点検保守でき、コンベヤチェーンの安全性を万全に確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、コンベヤラインを転動走行するローラの摩耗度合いが判別可能な摩耗検知型コンベヤチェーンにおいて、ローラが所定規格のローラ外径を備えたローラ転動面とこのローラ転動面に隣接して同軸に配置されてローラ外径より小径の摩耗限界面とで構成されていることにより、コンベヤチェーンのローラ点検保守時にローラ転動面の摩耗度合いを目視もしくは触覚で簡便に判別して保守メンテナンス作業を大幅に軽減するものであれば、その具体的な実施の態様は如何なるものであっても何ら構わない。
【0014】
すなわち、本発明の摩耗検知型コンベヤチェーンに組み込まれるローラの具体的な態様については、鋼材製ローラ、ゴム製ローラ、エンプラと称するエンジニアリングプラスチック製ローラなどのいずれであっても良く、特に、ゴム製ローラ、エンジニアリングプラスチック製ローラの場合には、低騒音搬送を実現するので、より好ましい。
また、ローラ転動面の摩耗限界位置については、単に、ローラの摩耗限界を示す限界位置、または、ローラ母材とこのローラ母材上に塗装、メッキ、化成処理などを施して被膜形成されたローラ転動面との境界位置であっても良い。
【0015】
さらに、本発明におけるローラ転動面と摩耗限界面との具体的な配置形態については、摩耗限界面がローラ転動面を左右に二分する中央位置に同軸に配置されるか、あるいは、摩耗限界面がローラ転動面の両側に隣接して同軸に配置されても良く、前者の場合には、コンベヤラインと摩耗限界面との非接触部位がコンベヤラインと左右に二分されたローラ転動面との転動接触部位よりも潤滑油をより多く包含するため、コンベヤライン上に潤滑油の充満度合いが異なる潤滑油ラインが形成され、このような充満度合いが異なる潤滑油ラインの有無によっても、ローラの摩耗点検時に摩耗しているローラを交換する際のより確実な目安となるので、より好ましい。
【実施例】
【0016】
本発明の一実施例である摩耗検知型コンベヤチェーンを図面に基づいて説明する。
ここで、図1は、本発明の第1実施例である摩耗検知型コンベヤチェーン100の概略図であり、図2は、本発明の第2実施例である摩耗検知型コンベヤチェーン200の概略図である。
【0017】
まず、図1に示すように、本発明の第1実施例である摩耗検知型コンベヤチェーン100は、ローラ110がブシュ120に回転自在に外嵌され、これらのローラ110とブシュ120が内プレート130と外プレート140とを介して連結ピン150でチェーン長手方向に多数連結されている。
なお、上記ローラ110、ブシュ120、内プレート130、外プレート140、連結ピン150は、いずれも鋼材からなっている。
【0018】
そこで、本実施例の摩耗検知型コンベヤチェーン100が最も特徴とするローラ110の具体的な形態について詳しく説明する。
まず、図1に示すように、前述したローラ110が、所定規格のローラ外径を備えたローラ転動面111とこのローラ転動面111に隣接して同軸に配置されてローラ外径より小径の摩耗限界面112とで構成され、ローラ点検保守時にローラ転動面111の摩耗度合いを目視もしくは触覚で簡便に判別して保守メンテナンス作業を大幅に軽減するようになっている。
【0019】
また、本実施例で用いたローラ110は、摩耗限界面112がローラ転動面111の摩耗限界位置Xに設定され、ローラ110の摩耗点検時に、従来のようなノギス等の計測器を用いることなく、摩耗しているローラ110を交換する際の客観的かつ簡便な基準、目安としてローラ交換時期を的確に判別できるようになっている。
【0020】
さらには、本実施例で用いたローラ110は、摩耗限界面112がローラ転動面111を左右に二分する位置に配置され、コンベヤラインと摩耗限界面112との非接触部位がコンベヤラインと左右に二分されたローラ転動面111との転動接触部位よりも潤滑油をより多く包含するため、コンベヤライン上に潤滑油の充満度合いが異なる潤滑油ラインが形成され、このような充満度合いが異なる潤滑油ラインの有無によっても、ローラ110の摩耗点検時に摩耗しているローラ110を交換する際のより確実な目安とすることができるようになっている。
【0021】
つぎに、本発明の第2実施例である摩耗検知型コンベヤチェーン200について、図2に基づいて説明する。
図2に示すように、本発明の第2実施例である摩耗検知型コンベヤチェーン200は、ローラ210がブシュ220に回転自在に外嵌され、これらのローラ210とブシュ220が内プレート230と外プレート240とを介して連結ピン250でチェーン長手方向に多数連結されている。
なお、上記ローラ210、ブシュ220、内プレート230、外プレート240、連結ピン250は、いずれも鋼材からなっている。
【0022】
そこで、本実施例の摩耗検知型コンベヤチェーン200が最も特徴とするローラ210の具体的な形態について詳しく説明する。
すなわち、図2に示すように、前述したローラ210は、摩耗限界面212がローラ転動面211の両側に隣接して同軸状に配置されているとともにローラ転動面211の摩耗限界位置に設定されていることにより、コンベヤチェーンのローラ点検保守時に、従来のようなノギス等の計測器を用いることなく、摩耗しているローラ210を交換する際の客観的な基準、目安としてローラ交換時期を目視もしくは触覚で簡便かつ的確に判別して保守メンテナンス作業を大幅に軽減するようになっている。
【0023】
このようにして得られた本実施例1及び本実施例2である摩耗検知型コンベヤチェーンは、ローラが、所定規格のローラ外径を備えたローラ転動面とローラ転動面に隣接して同軸に配置されたローラ外径より小径の摩耗限界面とで構成されているとともに、摩耗限界面がローラ転動面の摩耗限界位置に設定されていることにより、ローラの摩耗点検時に、ローラ限界面を摩耗しているローラを交換する際の客観的な基準、目安としてローラ交換時期を目視もしくは触覚で簡便かつ的確に判別して保守メンテナンス作業を大幅に軽減することができるなど、その効果は甚大である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施例である摩耗検知型コンベヤチェーンの概要図。
【図2】本発明の第2実施例である摩耗検知型コンベヤチェーンの概要図。
【符号の説明】
【0025】
100,200 ・・・ 摩耗検知型コンベヤチェーン
110,210 ・・・ ローラ
111,211 ・・・ ローラ転動面
112,212 ・・・ 摩耗限界面
120,220 ・・・ ブシュ
130,230 ・・・ 内プレート
140,240 ・・・ 外プレート
150,250 ・・・ 連結ピン
X ・・・ 摩耗限界位置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンベヤラインを転動走行するローラの摩耗度合いが判別可能な摩耗検知型コンベヤチェーンにおいて、
前記ローラが、所定規格のローラ外径を備えたローラ転動面と該ローラ転動面に隣接して同軸に配置された前記ローラ外径より小径の摩耗限界面とで構成されていることを特徴とする摩耗検知型コンベヤチェーン。
【請求項2】
前記摩耗限界面が、前記ローラ転動面の摩耗限界位置に設定されていることを特徴とする請求項1記載の摩耗検知型コンベヤチェーン。
【請求項3】
前記摩耗限界面が、前記ローラ転動面を左右に二分する位置に配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の摩耗検知型コンベヤチェーン。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の摩耗検知型コンベヤチェーンにおいて、前記ローラ転動面と摩耗限界面との段差の有無でローラ転動面の摩耗度合いを判別することを特徴とする摩耗検知型コンベヤチェーンの摩耗度合い判別方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−308281(P2007−308281A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−140872(P2006−140872)
【出願日】平成18年5月19日(2006.5.19)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)
【Fターム(参考)】