説明

摩耗検知装置および摩耗検知方法

【課題】対移動する摩耗側部品と対向側部品を配線等で接続することなく、対向側部品に設置された制御装置により摩耗側部品の摩耗状態を適切に検知する。
【解決手段】本発明の摩耗検知装置は、摩耗側部品2に設けられ、摩耗側部品2の摺動面21に沿って配置された先端部41に摩耗検知用ライン43が設けられた摩耗ゲージ4と、摩耗側部品2に設けられ、摩耗検知用ライン43に接続される摩耗側発光素子6と、対向側部品3において、摩耗側部品2の摺動中に摩耗側発光素子6と対向可能な位置に設けられた受光素子8と、対向側部品3に設けられ、受光素子8による受光状態に基づいて摩耗ゲージ4の摩耗状態を検知する制御装置9とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩耗検知装置および摩耗検知方法に関し、特に、産業機械の摺動部の摩耗を検知する摩耗検知装置および摩耗検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
産業機械の摺動部の摩耗を検知するための摩耗ゲージとして、例えば特許文献1記載の摩耗ゲージが提案されている。この特許文献1記載の摩耗ゲージは、複数の摩耗検知用ラインを含む摩耗検知回路を絶縁板上に設けたものであり、摺動部の摩耗に伴い摩耗検知用ラインが段階的に摩滅することを利用して、摺動部の摩耗状態を検知する。つまり、摩耗ゲージ先端部の摩耗検知用ラインが摩滅して断線すれば、摩耗ゲージから測定部に電気信号が流れなくなるので、当該断線した摩耗検知用ラインの位置まで摺動部の摩耗が進行したことを把握することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−164377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、各種の産業機械の摺動部を構成する摩耗側部品と、それに対向する対向側部品のうち、摩耗側部品の摩耗状態を検知する場合、上記特許文献1記載のような摩耗ゲージを、摩耗検知対象である摩耗側部品に設置する必要がある。一方、摩耗ゲージにより得られる摩耗状態の情報を処理する制御装置(特許文献1の測定部)等については、設置スペースや、動作の安定性、装置保護等の観点から、対向側部品に設置することが望ましい。
【0005】
しかしながら、上記のように摩耗側部品に摩耗ゲージを設置し、対向側部品に制御装置等を設置する場合、特許文献1記載のように摩耗ゲージと制御装置の間を電気的に接続することが困難であるという問題があった。例えば、レシプロコンプレッサにおいてシリンダ(対向側部品に相当する。)に対して高速で摺動するピストン(摩耗側部品に相当する。)の摩耗を検知したい場合を考える。この場合、ピストンに設けられた摩耗ゲージと、シリンダに設けられた制御装置とを、配線や接触端子等を用いて電気的に接続することは、非常に困難である。したがって、産業機械の稼働中(摩耗側部品の摺動中)に、摩耗側部品の摩耗ゲージで得られる情報を対向側部品の制御装置に対して好適に伝達し、摩耗側部品の摩耗状態を適切に検知可能な方法が希求されていた。
【0006】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、相対移動する摩耗側部品と対向側部品を配線等で接続することなく、対向側部品に設置された制御装置により摩耗側部品の摩耗状態を適切に検知することが可能な摩耗検知装置および摩耗検知方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、対向側部品との摺動に伴う摩耗側部品の摩耗を検知する本発明の摩耗検知装置は、摩耗側部品に設けられ、摩耗側部品の摺動面に沿って配置された先端部に摩耗検知用ラインが設けられた摩耗ゲージと、摩耗側部品に設けられ、摩耗検知用ラインに接続される摩耗側発光素子と、対向側部品において、摩耗側部品の摺動中に摩耗側発光素子と対向可能な位置に設けられた受光素子と、対向側部品に設けられ、受光素子による受光状態に基づいて摩耗ゲージの摩耗状態を検知する制御装置と、を備えることを特徴とする。
【0008】
摩耗検知装置は、摩耗側部品に設けられ、摩耗検知用ラインおよび摩耗側発光素子に接続される光起電力素子と、対向側部品において、摩耗側部品の摺動中に光起電力素子と対向可能な位置に設けられた対向側発光素子と、をさらに備え、光起電力素子は、対向側発光素子から光を受光することにより電力を発生させ、摩耗側発光素子は、光起電力素子が発生させた電力により発光するようにしてもよい。
【0009】
上記課題を解決するために、対向側部品との摺動に伴って摩耗する摩耗側部品に設けられ、摩耗側部品の摺動面に沿って配置された先端部に摩耗検知用ラインが設けられた摩耗ゲージと、摩耗側部品に設けられ、摩耗検知用ラインに接続される摩耗側発光素子と、対向側部品において、摩耗側部品の摺動中に摩耗側発光素子と対向可能な位置に設けられた受光素子と、により摩耗側部品の摩耗を検知する、本発明の摩耗検知方法は、摩耗側部品の摺動中に、受光素子が摩耗側発光素子から光を受光し、摩耗側発光素子からの受光状態に基づいて摩耗ゲージの摩耗状態を検知することを特徴とする。
【0010】
上記摩耗検知装置や摩擦検知方法によれば、摩耗側部品の摺動面とともに、摩耗ゲージの先端部が摩耗するので、当該摩耗が進行すれば、摩耗検知用ラインが摩滅して断線する。摩耗検知用ラインが断線していないときには、摩耗側部品の摩耗側発光素子が発光した光を、対向側部品の受光素子が受光するので、対向側部品の制御装置は、摩耗検知用ラインが断線しておらず、摩耗ゲージの摩耗量が摩耗検知用ラインにまで達していないことを検知する。一方、摩耗検知用ラインが断線したときには、摩耗側部品の摩耗側発光素子が発光せず、対向側部品の受光素子が受光しないので、対向側部品の制御装置は、摩耗検知用ラインが断線し、摩耗ゲージの摩耗量が摩耗検知用ラインを超えたことを検知する。これにより、摩耗側部品と対向側部品の間で発光素子および受光素子による投受光を利用して、摩耗ゲージの摩耗量を伝達できるので、対向側部品側から摩耗側部品の摺動面の摩耗状態を適切に検知可能である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、相対移動する摩耗側部品と対向側部品を配線等で接続することなく、対向側部品に設置された制御装置により摩耗側部品の摩耗状態を適切に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る摩耗検知装置が適用されるレシプロコンプレッサのシリンダ機構を示す縦断面図である。
【図2】同実施形態に係る摩耗検知装置の回路構成を示す図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る摩耗ゲージを示す平面図である。
【図4】同実施形態に係る摩耗検知装置の第1の回路構成例を示す図である。
【図5】当該第1の回路構成例に係る対向側部品の制御装置に入力される信号を示す波形図である。
【図6】同実施形態に係る摩耗検知装置の第2の回路構成例を示す図である。
【図7】当該第2の回路構成例に係る対向側部品の制御装置に入力される信号を示す波形図である。
【図8】同実施形態に係る摩耗検知装置の第3の回路構成例を示す図である。
【図9】当該第3の回路構成例に係る対向側部品の制御装置に入力される信号を示す波形図である。
【図10】同実施形態に係る摩耗検知装置の第4の回路構成例を示す図である。
【図11】当該第4の回路構成例に係る対向側部品の制御装置に入力される信号を示す波形図である。
【図12】本発明の第3の実施形態に係る摩耗検知装置の回路構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
[1.第1の実施形態]
【0014】
[1.1.摩耗検知対象の産業機械]
まず、本発明の第1の実施形態に係る摩耗検知装置が適用される産業機械の具体例について説明する。
【0015】
一般に、産業機械は、複数の部材を相対移動させる各種の機構を具備している。このうち、一方の部材を他方の部材に対して接触させながら摺動させる摺動機構では、その摺動部における摩擦により、双方の部材が摩耗する。本実施形態に係る摩耗検知装置は、かかる産業機械の摺動部の摩耗状態、特に、当該摺動部を構成する摩耗側部品と対向側部品のうち摩耗側部品(摺動部材)の摩耗状態を検知するためのものである。以下では、対向側部品に対して摩耗側部品が摺動する例を挙げて説明するが、例えば、レール上を走行体(自動走行台車、気動車等)が移動するシステムにおいて、レールに摩耗側部品を構成し、走行体に対向側部品を構成し、レールの摩耗側部品の構成部位を通過する際に摩耗を検知するといったように、対向側部品が摩耗側部品に対して摺動する場合も本実施形態に含まれる。
【0016】
ここで、産業機械の摺動機構とは、ある部材と他の部材が相対的に摺動するものであれば、任意の機構であってよいが、例えば、往復運動機構や回転機構などが含まれる。ここで、往復運動機構は、レシプロコンプレッサ、レシプロエンジン等におけるシリンダ機構、工作機械等におけるガイドレールを用いたスライド機構などである。回転機構は、コンプレッサ、ガスタービン等に用いられる各種の軸受(例えばスラストベアリング)、工作機械の切削工具、自動車のタイヤやブレーキパッド、工作機械のクラッチやブレーキパッド、圧延機のロールなどが含まれる。
【0017】
以下の説明では主に、産業機械の摺動機構として、レシプロコンプレッサのピストンとシリンダの例を挙げ、摩耗検知対象の摩耗側部品がピストンリングであり、対向側部品がシリンダである場合について説明するが、本発明の摩耗検知対象はかかる例に限定されるものではない。
【0018】
ここで、図1を参照して、本実施形態に係る摩耗検知装置が適用されるレシプロコンプレッサの概略構成について説明する。図1は本実施形態に係る摩耗検知装置が適用されるレシプロコンプレッサ100のシリンダ機構を示す縦断面図である。
【0019】
図1に示すように、レシプロコンプレッサ100は、シリンダ101と、ピストン102と、ピストンロッド103と、ピストンリング104と、プルリング105と、吸入弁106と、排出弁107とを備える。レシプロコンプレッサ100は、無給油式でも給油式であってもよいが、本実施形態では、無給油式のコンプレッサの例について説明する。
【0020】
シリンダ101は、例えば円筒形状を有し、その内部にピストン102が往復運動可能に設置される。シリンダ101やピストン102は、例えば鋳鉄、アルミニウム合金などで形成される。シリンダ101の内周面は、ハードクロームメッキまたは金属溶射を施した後、ホーニング仕上げが施されている。
【0021】
ピストン102は、ピストンロッド103に支持されており、当該ピストンロッド103の下端に連結された不図示のクランク機構により、シリンダ101内を上下に往復する。ピストン102の外周面には、例えば、上下2つのピストンリング104と、中央部に1つのプルリング105が設けられている。ピストンリング104およびプルリング105は、素材自体に潤滑性のあるカーボンまたはポリテトラフルオロエチレン等で形成されている。ピストンリング104は、例えば4または6分割のギャップレスタイプであり、その内側にエキスパンダースプリング(図示せず。)が設けられている。これにより、ピストンリング104の摩耗が進行しても、ギャップができず、スプリングの作用により最低限必要な面圧を維持することができるので、許容摩耗代を大きくとることができ、長寿命化が図れる。また、プルリング105は、ピストン102とシリンダ101とが直接接触することを防止する機能を有する。
【0022】
吸入弁106および排出弁107は、シリンダ101内の空間で気体を圧縮するようにピストン102の往復動作に合わせて開閉する。
【0023】
上記構成のレシプロコンプレッサ100の稼働時には、吸入弁106および排出弁107が適宜開閉しながら、シリンダ101内でピストン102が上下に摺動(往復運運)する。これにより、シリンダ101内に吸入された気体(例えば空気)を圧縮して、高圧の気体を製造することができる。
【0024】
ところで、上記ピストン102の摺動動作中には、ピストン102外周のピストンリング104およびプルリング105がシリンダ101の内周面と接触して摩擦する。したがってピストン102の摺動動作が繰り返されると、ピストンリング104およびプルリング105の外周部が徐々に摩耗していく。このため、ピストンリング104およびプルリング105の摩耗量が許容摩耗代に達したときには、これらリングを交換する必要があり、そのためには、当該摩耗量を検知するための装置を設ける必要がある。以下の説明では、本実施形態に係る摩耗検知装置により、上記レシプロコンプレッサ100のピストンリング104の摩耗量を検知する例について説明する。
【0025】
[1.2.摩耗検知装置の構成]
次に、図2を参照して、本実施形態に係る摩耗検知装置の全体構成について説明する。図2は、本実施形態に係る摩耗検知装置の回路構成を示す図である。
【0026】
図2に示すように、本実施形態に係る摩耗検知装置は、産業機械の摺動部1付近に設置される。この産業機械の摺動部1は、摩耗側部品2と対向側部品3とからなり、摩耗側部品2は、対向側部品3に対して少なくとも一部を接触させながら周期的に摺動する。図示の例では、摩耗側部品2は、対向側部品3に対して所定の摺動方向(例えば図の上下方向)に所定の摺動ストロークで往復運動する。このとき、摩耗側部品2の摺動面21と、対向側部品3の摺動面31とは接触しており(図2では説明の便宜のため非接触で表している。)、上記摺動動作が繰り返されると、摺動面21と摺動面31が擦り合わされて摩耗する。例えば、産業機械がレシプロコンプレッサ100であり、摩耗側部品2が、当該レシプロコンプレッサ100のピストン102外周に設けられたピストンリング104であり、対向側部品3が、当該レシプロコンプレッサ100のシリンダ101である場合を考える。この場合、シリンダ101内でピストン102が往復運動すると、ピストンリング104の外周面(即ち、摺動面21)がシリンダ101の内周面(即ち、摺動面31)と摩擦して、徐々に摩耗する。
【0027】
本実施形態に係る摩耗検知装置は、上記のような摺動動作に伴って摩耗する摩耗側部品2の摺動面21の摩耗状態を検知するためのものである。図2に示すように、摩耗検知装置は、摩耗ゲージ4と、光起電力素子5と、摩耗側発光素子6(以下、単に発光素子6と称する。)と、対向側発光素子7(以下、単に発光素子7と称する。)と、受光素子8と、制御装置9とを主に備える。これら摩耗検知装置の各構成要素は、産業機械の摩耗側部品2と対向側部品3に分散して配置される。
【0028】
摩耗側部品2には、摩耗ゲージ4と、当該摩耗ゲージ4に接続された光起電力素子5および発光素子6とが設置される。摩耗ゲージ4は、摩耗側部品2の摺動面21の摩耗を検知する機能を有する。摩耗ゲージ4は、摩耗側部品2の摺動部1付近に設けられ、当該摩耗ゲージ4の先端部41の先端面41aは、摩耗側部品2の摩耗面(即ち、摺動面21)に沿って配置される。この摩耗ゲージ4の先端部には、後述する摩耗検知用ライン43が設置されている。摩耗ゲージ4の先端部41が摩耗して摩耗検知用ライン43が断線すると、光起電力素子5からの電力が発光素子6に供給されず、発光素子6が発光しなくなるが、その詳細については後述する。
【0029】
光起電力素子5は、光を受光することで電力を発生させる機能を有し、例えば、フォトダイオードまたは太陽電池などで構成される。この光起電力素子5は、対向側部品3の発光素子7が発した光を受光することで電力を発生させ、摩耗検知用ライン43を通じて発光素子6に給電する。また、発光素子6は、光起電力素子5が発生させた電力を用いて発光する機能を有し、例えば、LED(Light Emitting Diode)または電球などで構成される。発光素子6は、光起電力素子5からの電力供給があるときには対向側部品3に向けて発光するが、電力供給がないときには発光しない。
【0030】
かかる光起電力素子5と発光素子6は、摩耗ゲージ4に接続されて、閉回路10を構成する。この閉回路10は、光起電力素子5が受光したときに、その電力が摩耗ゲージ4を介して発光素子6に供給されるように構成されている。また、光起電力素子5と発光素子6は、対向側部品3に対する摩耗側部品2の対向面22に沿って配置されている。対向面22と摺動面21は平行であり、図示のように摩耗側部品2の対向面22と摺動面21の間に段差があってもよいし、或いは面一であってもよい。
【0031】
一方、対向側部品3には、発光素子7と、受光素子8と、制御装置9が設置される。発光素子7は、電源11からの電力を用いて発光する機能を有し、例えば、LEDまたは電球などで構成される。この発光素子7は、電源11および抵抗12に接続されて、閉回路13を構成する。また、受光素子8は、外部からの光を受光する機能と、受光時に電気的に導通する機能を有し、例えば、フォトダイオードなどで構成される。この受光素子8は、電源14および抵抗15に接続されて、閉回路16を構成する。なお、抵抗15は、受光素子8が導通したときに閉回路16に流れる電流を電圧換算値として計測するための抵抗である。
【0032】
上記発光素子7および受光素子8は、摩耗側部品2に対する対向側部品3の対向面32に沿って配置されている。対向面32と摺動面31は平行であり、図示のように対向側部品3の対向面32と摺動面31とが面一であってもよいし、或いは対向面32と摺動面31の間に段差があってもよい。なお、対向面22と対向面32の間には所定の隙間が設けられるが、摺動部1の構造的制約から対向面22と対向面32が接触していてもよい。発光素子7は、摩耗側部品2の光起電力素子5と対をなし、受光素子8は、摩耗側部品2の発光素子6と対をなしている。そして、摩耗側部品2が摺動して所定位置に移動したときに、一対の発光素子7と光起電力素子5とが対向し、一対の受光素子8と発光素子6とが対向するように、これら4つの素子の配置が調整されている。
【0033】
かかる配置により、発光素子7と光起電力素子5とが相互に投受光可能となり、発光素子6と受光素子8とが相互に投受光可能となる。これにより、発光素子7が発した光を光起電力素子5が受光して、起電力を発生させる。さらに、摩耗ゲージ4の断線が無い場合には、発光素子6は光起電力素子5からの電力を用いて発光し、その光を受光素子8が受光する。このように、受光素子8が受光可能であるのは、摩耗ゲージ4が断線しておらず、発光素子6が発光しているときである。
【0034】
以上のように、発光素子7と光起電力素子5は、対となって光を投受光することで、対向側部品3から摩耗側部品2に非接触方式で給電する手段として機能する。また、発光素子6と受光素子8は、対となって光を投受光することで、摩耗ゲージ4で検知される摩耗に関する情報を摩耗側部品2から対向側部品3に非接触方式で伝達する手段として機能する。
【0035】
また、上記の投受光を確実に行うためには、摩耗側部品2が摺動ストロークのうちの所定位置に移動したときに、発光素子7と光起電力素子5とが正対し、かつ、発光素子6と受光素子8とが正対するように、配置することが好ましい。さらに、発光素子6の発光面および受光素子8の受光面が、摩耗側部品2の摺動方向に対して垂直な方向に向けて配置され、発光素子7の発光面および光起電力素子5の受光面も、摩耗側部品2の摺動方向に対して垂直な方向に向けて配置されることが好ましい。このような配置により、これら素子間の光の伝達を正確かつ効率的に実行できるので、各素子の低コスト化や節電を図ることができる。
【0036】
また、対向側部品3の受光素子8を含む閉回路16には、コンパレータ17を介して制御装置9が接続されている。コンパレータ17は、受光素子8の受光時に閉回路16に流れる電流を電圧換算して測定し、測定した電流値を表す信号を制御装置9に出力する。例えば、コンパレータ17は、閉回路16に流れる電流値が所定の閾値以上であればHigh信号を、当該閾値未満であればLow信号を出力する。
【0037】
制御装置9は、受光素子8による受光状態に基づいて、摩耗ゲージ4の摩耗状態(即ち、摩耗側部品2の摩耗状態)を検知する機能を有し、例えば、マイクロコンピュータなどの演算装置で構成される。ここで、受光素子8による受光状態とは、受光の有無、受光量、受光タイミングなどを含む。詳細は後述するが、受光素子8による受光状態は、摩耗ゲージ4の断線状態(即ち、摩耗ゲージ4の摩耗状態)と相関がある。摩耗ゲージ4が摩滅して断線し、閉回路10が導通していない場合には、発光素子6が発光しないので、受光素子8は発光素子6からの光を受光することがない。
【0038】
したがって、制御装置9は、摩耗側部品2の1回の摺動ストローク中に、受光素子8が発光素子6の光を受光したか否かを検知することで、摩耗ゲージ4の摩耗状態を判断することができる。例えば、1回の摺動ストローク中にコンパレータ17からHigh信号(パルス信号)が出力された場合には、制御装置9は、受光素子8による受光が有り、摩耗ゲージ4が摩耗していないと判断する。一方、1回の摺動ストローク中にコンパレータ17の出力信号が常にLow信号である場合には、制御装置9は、受光素子8による受光が無く、摩耗ゲージ4が摩耗していると判断する。
【0039】
[1.3.摩耗ゲージの構成]
次に、図2を参照して、本実施形態に係る摩耗ゲージ4の構成について説明する。
【0040】
図2に示したように、摩耗ゲージ4は、摩耗検知対象である摩耗側部品2に設置され、その先端部41の摩耗を計測する。摩耗ゲージ4の先端部41が摩耗検知対象部位(即ち、摩耗側部品2の摺動面21)に露出していれば、摩耗ゲージ4は、摩耗側部品2に埋設されてもよいし、摩耗側部品2の側面に貼り付けられてもよい。摩耗ゲージ4の先端部41は、摩耗ゲージ4の長手方向の一側端部であって、摩耗検知対象部位とともに摩耗する部分である。本実施形態では、摩耗ゲージ4の先端部41は、摩耗側部品2の摺動面21に沿って配置され、摩耗ゲージ4の先端面41a(先端部41の端面)が摩耗側部品2の摺動面21と面一となっている。
【0041】
摩耗ゲージ4の本体は、例えば、矩形板状のプリント基板からなり、一般的なプリント基板製造技術を用いて製造可能である。プリント基板の材質は、絶縁材料であれば、ガラスエポキシ等、摩耗検知対象である摩耗側部品2の材質に応じて適宜選択することができる。かかるプリント基板は、リジッド基板またはフレキシブル基板のいずれであってもよい。リジッド基板を用いた場合には、摩耗ゲージ4自体がある程度の剛性を有することとなるので、特殊な保持部材を別途使用することなく、摩耗ゲージ4を摩耗側部品2の検知対象部位に固定可能となる。一方、フィルム状のフレキシブル基板を用いた場合には、摩耗ゲージ4が変形自在となるので、摩耗側部品2の検知対象部位に自由に取り付け可能となる。また、フィルム状であるため、摩耗ゲージ4から発生する摩耗粉は微小であり、摩耗側部品2より柔らかい素材で構成することが可能であるため、摩耗側部品2や対向側部品3の摩耗に及ぼす影響は極めて小さい。
【0042】
かかる摩耗ゲージ4の基板面にはプリントライン42が形成されている。プリントライン42は、電気信号を伝達する配線の一例であり、摩耗ゲージ4の基板外縁部を周回するように延設される。このプリントライン42のうち、摩耗ゲージ4の先端部41に配置される部分が、摩耗検知用ライン43を構成する。この摩耗検知用ライン43は、摩耗ゲージ4の先端部41において摩耗側部品2の摺動面21と平行に延びている。摩耗検知用ライン43は、摩耗ゲージ4の先端面41aに露出して配置されてもよいし、所望する摩耗量に応じた所定距離Lだけ当該先端面41aよりも内側に配置されてもよい。この摩耗検知用ライン43と摩耗ゲージ4の先端面41aとの距離Lが、摩耗ゲージ4で検知可能な摩耗量(基準摩耗量)となる。
【0043】
なお、本実施形態に係る摩耗検知用ライン43は直線状であるが、かかる例に限定されない。摩耗検知用ラインの少なくとも一部が摩耗ゲージ4の先端面41aに沿って配置されていれば、摩耗検知用ラインの形状は、摩耗検知対象部位の形状や範囲に合わせて、曲線状、波状、V字状、コの字型など、任意の形状であってよい。
【0044】
摩耗ゲージ4のプリントライン42の両端部は、一対の端子44、44を介して上記光起電力素子5および発光素子6を含む閉回路10に接続されている。したがって、摩耗検知用ライン43が断線していなければ、光起電力素子5の起電力により閉回路10およびプリントライン42に電流を流して、発光素子6を発光させることが可能である。
【0045】
また、上記光起電力素子5および発光素子6を含む閉回路10が搭載される基板と、摩耗ゲージ4が搭載される基板を分離し、できるだけ両者を離隔配置してもよい。これにより、摩耗側部品2の摺動面21や摩耗ゲージ4の摩耗粉が、光起電力素子5および発光素子6の近傍に到達しにくくなるので、当該摩耗粉が光の投受光を妨害することを抑制して、安定的に投受光を実現できる。さらに、摩耗ゲージ4や閉回路10が搭載される基板を個々にメンテナンス(交換)することができるので、便利である。
【0046】
以上、摩耗ゲージ4の構成および配置について説明した。上記の摩耗ゲージ4を摩耗側部品2に設置することにより、摩耗側部品2の摺動時に、摩耗側部品2の摺動面21の摩耗に伴って、摩耗ゲージ4の先端部41も同様に摩耗する。したがって、当該摩耗が進行すれば、摩耗ゲージ4の先端部41の摩耗検知用ライン43が摩滅して断線し、閉回路10およびプリントライン42に電流が流れなくなる。このように、本実施形態に係る摩耗ゲージ4は、摩耗検知用ライン43の断線の有無を利用して、先端部41の摩耗状態、即ち、摩耗検知対象部位である摩耗側部品2の摺動面21の摩耗状態を検知する。さらに、摩耗ゲージ4は、その内部回路に電流が流れるか否かによって、摩耗状態を表す情報を伝達する。
【0047】
[1.4.摩耗検知装置による摩耗検知方法]
次に、本実施形態に係る摩耗検知装置を用いて、摩耗側部品2の摺動面21の摩耗状態を検知する方法について説明する。
【0048】
産業機械、例えば図1に示したレシプロコンプレッサ100が稼働して、シリンダ101内をピストン102が繰り返し摺動すると、当該摺動動作により、ピストンリング104の外周面(摩耗側部品2の摺動面21)がシリンダ101の内周面(対向側部品3の摺動面31)と摩擦して、当該摺動面21の摩耗が徐々に進行する。
【0049】
この際、摩耗側部品2の摺動面21の摩耗量が基準摩耗量未満である場合には、上記摩耗ゲージ4の摩耗検知用ライン43が断線していない。したがって、摩耗側部品2においては、光起電力素子5から電力が供給されれば、摩耗側部品2の発光素子6は発光できる状態である。一方、対向側部品3においては、発光素子7は、電源11からの電力供給により常時、発光し続け、摩耗側部品2の対向面22に向けて投光している。
【0050】
上記摺動動作中は、摩耗側部品2は対向側部品3に対して摺動方向(例えば図2の上下方向)に所定の摺動ストロークで往復運動しており、両者の対向面22、32は相互に平行でありつつも、摺動方向に相対移動する。このため、摩耗側部品2の光起電力素子5および発光素子6は、対向側部品3の発光素子7および受光素子8に対して対向する位置に配置されたり、図中の上方または下方にずれた位置に配置されたりすることを繰り返す。
【0051】
そして、上記摺動動作途中に、摩耗側部品2が摺動ストロークのうちの所定位置に移動したとき、摩耗側部品2の光起電力素子5と対向側部品3の発光素子7とが正対し、かつ、摩耗側部品2の発光素子6と対向側部品3の受光素子8とが正対する。このとき、光起電力素子5は、発光素子7からの光を受光して起電力を発生させ、この起電力により閉回路10およびプリントライン42に電流が流れる。これにより、発光素子6は、光起電力素子5の起電力により一時的に発光し、対向側部品3の対向面32に向けて投光する。
【0052】
すると、対向側部品3の受光素子8は、当該発光素子6からの光を受光して、導通するので、閉回路16に電流が流れる。この結果、コンパレータ17により検知された電流値が制御装置9に伝達され、制御装置9は、受光素子8により受光したことを検知することで、摩耗ゲージ4の摩耗検知用ライン43の断線が為されていないことを検知する。
【0053】
上記のように摩耗側部品2の摺動動作中は、摩耗側部品2の摺動ストロークのうちの1点のみで、摩耗側部品2と対向側部品3の間で投受光がなされる。このとき、摩耗ゲージ4の摩耗検知用ライン43が断線していなければ、摩耗側部品2の発光素子6が投光した光を、対向側部品3の受光素子8が受光する。そして、制御装置9は、その受光を検知することで、摩耗検知用ライン43が断線していないこと、即ち、摩耗ゲージ4の先端部41および摩耗側部品2の摺動面21の摩耗量が基準摩耗量に達していないことを検知できる。
【0054】
一方、摩耗側部品2の摺動により、摩耗側部品2の摺動面21の摩耗が進行して、その摩耗量が基準摩耗量以上となった場合には、上記摩耗ゲージ4の摩耗検知用ライン43が摩滅して断線する。このように摩耗検知用ライン43が断線すると、プリントライン42の電気抵抗が無限大(絶縁状態)となり、閉回路10が導通しなくなる。したがって、たとえ光起電力素子5が電力を発生させても、摩耗側部品2の発光素子6が発光することはなく、対向側部品3の受光素子8も光を受光しない。
【0055】
したがって、この場合には、摩耗側部品2が1ストローク以上摺動しても、対向側部品3の受光素子8は、摩耗側部品2の発光素子6から光を受光することが無く、閉回路16が導通しない。よって、制御装置9は、受光素子8による受光が所定時間以上継続してないことを検知することで、摩耗検知用ライン43が断線したこと、即ち、摩耗ゲージ4の先端部41および摩耗側部品2の摺動面21の摩耗量が基準摩耗量を超えたことを検知することができる。
【0056】
[1.5.効果]
以上説明したように、第1の実施形態に係る摩耗検知装置によれば、摩耗検知用ライン43が摩耗したときの回路の断線を検出することにより、摩耗側部品2の摺動面21の摩耗量が基準摩耗量以上であることを検知することができる。摩耗検知方式としては、摩耗検知用ライン43の断線を利用する単純な方式であるため、振動や水分付着等の外乱に強く摩耗判定が容易である。また、摩耗ゲージ4を用いて摩耗検知対象の実際の摩耗量を測定するため、誤差のない正確な測定が可能となる。
【0057】
さらに、本実施形態によれば、相対移動する摩耗側部品2と対向側部品3の間において、上記光の投受光を利用して、摩耗ゲージ4で得た摩耗状態に関する情報を非接触で伝達することが可能である。このため、対向側部品3に設置された制御装置9は、摩耗側部品2の摺動ストローク中に、摩耗側部品2からの光を検知したか否かを観測することにより、摩耗ゲージ4の断線有無、即ち、摩耗側部品2の摩耗有無を検知することができる。したがって、摩耗側部品2と対向側部品3を配線や端子等を用いて電気的に接続することなく、対向側部品3の制御装置9により、摩耗側部品2の摩耗状態を適切に検知することが可能となる。
【0058】
また、摩耗側部品2に光起電力素子5を設置し、対向側部品3に発光素子7および電源11を設置することで、対向側部品3から摩耗側部品2に対して、発光素子6が発光するための電力を非接触で給電することができる。したがって、摩耗側部品2と対向側部品3を、給電ラインを用いて電気的に接続しなくてもよいので、摺動部材である摩耗側部品2に対する給電構造を簡素化および安定化できる。さらに、摩耗側部品2に電池等の電源を設置しなくてもよいので、摩耗側部品2における電池の交換等といったメンテナンス作業を省略でき、電池の寿命を気にすることなく、摩耗側部品2に安定的に給電することができる。
【0059】
また、本実施形態に係る摩耗検知方法は、産業機械の稼働中、即ち摩耗側部品2の摺動動作中に、摩耗側部品2の摺動面21の摩耗状態を検知することができる。したがって、摩耗側部品2の摺動動作を停止することなく、当該摩耗側部品2の摩耗状態をリアルタイムで検知できるので、産業機械の稼働率を向上でき、摩耗検知のための時間と費用を削減できる。
【0060】
[2.第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態に係る摩耗検知装置について説明する。第2の実施形態に係る摩耗検知装置は、上記第1の実施形態と比べて、摩耗ゲージに複数の摩耗検知用ラインを設け、摩耗側部品の摩耗量を段階的に検知する点で相違し、その他の機能構成は上記第1の実施形態と同様であるので、その詳細説明は省略する。
【0061】
[2.1.摩耗ゲージの構成]
まず、図3を参照して、本発明の第2の実施形態に係る摩耗ゲージ40について説明する。図3は、本実施形態に係る摩耗ゲージ40を示す平面図である。
【0062】
図3(a)に示すように、第2の実施形態に係る摩耗ゲージ40の本体は、例えば、矩形板状のプリント基板からなり、一般的なプリント基板製造技術を用いて製造可能である。このプリント基板の種類や材質は、第1の実施形態に係る摩耗ゲージ4と同様のものを使用できる。
【0063】
かかる摩耗ゲージ40の基板面には、複数のプリントライン42A〜42E(以下、「プリントライン42」と総称する場合がある。)が形成されている。これらのプリントライン42A〜42Eのうち、摩耗ゲージ40の先端部41に配置される部分がそれぞれ、摩耗検知用ライン43A〜43Eを構成する。また、上記各プリントライン42の一端部(即ち、各摩耗検知用ライン43A〜43Eの端部)はそれぞれ、外部接続用の端子47A〜47Eに接続されている。当該各プリントライン42の他端部はともに、1本の共通プリントライン45に接続されており、当該共通プリントライン45の端部は、外部接続用の共通端子46に接続されている。
【0064】
このように、第2の実施形態に係る摩耗ゲージ40の先端部41には、複数の摩耗検知用ライン43A〜43E(以下、「摩耗検知用ライン43」と総称する場合がある。)が相互に間隔を空けて配置されている。これら複数の摩耗検知用ライン43はいずれも、摩耗側部品2の摺動方向および先端面41aに対して平行に配置されている。
【0065】
摩耗検知用ライン43Aは、摩耗ゲージ40の先端面41aに最も近い位置(距離L1)に形成されている。図示の例では、摩耗検知用ライン43Aと先端面41aの距離L1はゼロ超であるが、L1=0として、摩耗検知用ライン43Aを先端面41aに露出させてもよい。摩耗検知用ライン43Bは、先端面41aから距離L2の位置に形成されている。同様に、他の摩耗検知用ライン43C、43D、43Eは、先端面41aから距離L3、L4、L5の位置にそれぞれ形成されている。距離L1〜L5はそれぞれ、序数が大きいほど距離が長くなっている。これら摩耗検知用ライン43A〜43Eと摩耗ゲージ40の先端面41aとの距離L1〜L5が、摩耗ゲージ40で検知可能な摩耗量となる。
【0066】
なお、図示の例では、5本の摩耗検知用ライン43が設けられているが、かかる例に限定されず、任意の複数本の摩耗検知用ライン43を設けてもよい。また、摩耗検知用ライン43の形状も、図示のような直線状に限られず、摩耗検知対象部位の形状や範囲に合わせて、曲線状、波状、V字状、コの字型など、任意の形状であってよい。さらに、摩耗検知用ライン43の相互間隔も、検知したい摩耗量に合わせて任意に設定可能である。
【0067】
かかる摩耗ゲージ40は、第1の実施形態と同様に、摩耗検知対象である摩耗側部品2に設置される。この際、摩耗ゲージ40の先端部41は、摩耗側部品2の摺動面21に沿って配置され、摩耗ゲージ40の先端面41aは、摩耗検知対象部位である摩耗側部品2の摺動面21と面一となる。かかる摩耗ゲージ40の先端部41は、摩耗検知対象部位とともに摩耗し、複数の摩耗検知用ライン43が段階的に摩滅することで、摩耗検知対象部位の摩耗量を段階的に計測する。
【0068】
図3(b)は、摩耗ゲージ40の先端部41が、先端面41aから距離L6(L1<L6<L2)だけ摩耗した状態を示す。この場合、最も外側の摩耗検知用ライン43Aは摩滅しているので、プリントライン42Aは断線するが、その内側の摩耗検知用ライン43B〜43Eはいずれも摩耗しておらず、プリントライン42B〜42Eは導通している。このように、摩耗ゲージ40は、複数の摩耗検知用ライン43の断線の有無によって、摩耗検知対象部位(摩耗側部品2の摺動面21)の摩耗量を段階的に計測することができる。
【0069】
産業機械の稼働時には、摩耗側部品2と対向側部品3との摺動により、摩耗側部品2の摺動面21の摩耗が進行し、それに伴い、摩耗ゲージ40の先端部41も摩耗する。そして、摩耗量がL1を超えたときに、摺動面21に最も近い摩耗検知用ライン43Aが摩滅して断線し、プリントライン42Aの導通が遮断される。さらに、摩耗側部品2の摩耗とともに、摩耗ゲージ40がさらに摩耗し、摩耗量がL2を超えたときに、次の摩耗検知用ライン43Bも摩滅して断線する。同様に、摩耗ゲージ40の摩耗がさらに進行するにつれ、摩耗検知用ライン43C、43D、43Eが順次摩滅して、断線することにより、摩耗量がL3〜L5を超えたことを計測できる。
【0070】
この摩耗ゲージ40の先端部41の摩耗量L1〜L5は、摩耗側部品2の摺動面21の摩耗量と同一であるため、摩耗ゲージ40の先端部41の摩耗量を段階的に計測することにより、摩耗側部品2の摩耗量を段階的に検知することができる。以上のように、本実施形態に係る摩耗ゲージ40は、複数の摩耗検知用ライン43の断線を利用して、摩耗側部品2の摩耗量を連続的に多段階で計測できることを特徴としている。以下に、かかる摩耗ゲージ40による計測情報を制御装置9に伝達するための回路構成について説明する。
【0071】
[2.2.摩耗検知装置の第1の回路構成例および動作]
次に、図4を参照して、上記摩耗ゲージ40に対応した摩耗検知装置の第1の回路構成例について説明する。図4は、本実施形態に係る摩耗検知装置の第1の回路構成例を示す図である。
【0072】
図4に示すように、第1の回路構成例では、摩耗ゲージ40の複数の摩耗検知用ライン43A〜43Eにそれぞれ対応するように、複数対の給電用の発光および受光回路と、複数対の摩耗検知用の発光および受光回路が設置されている。即ち、第1の回路構成例の摩耗検知装置は、複数対の光起電力素子5A〜5Eおよび発光素子7A〜7Eと、複数対の発光素子6A〜6Eおよび受光素子8A〜8Eとを備えている。
【0073】
摩耗側部品2においては、5本の摩耗検知用ライン43A〜43Eに対応して、5つの閉回路10A〜10Eが設けられている。発光および受光回路である各閉回路10A〜10Eには、一対の光起電力素子5A〜5Eおよび発光素子6A〜6Eがそれぞれ設置される。例えば、閉回路10Aは、光起電力素子5Aと発光素子6Aを含み、当該閉回路10Aの両端は、摩耗ゲージ40の共通端子46と端子47Aを介して、摩耗検知用ライン43Aに接続されている。摩耗検知用ライン43Aの導通時には、発光素子6Aは、光起電力素子5Aからの電力により発光可能であるが、摩耗検知用ライン43Aの断線時には、発光素子6Aは、発光不能である。他の摩耗検知用ライン43B〜43Eおよび発光素子6B〜6Eについても同様である。
【0074】
一方、対向側部品3においては、5本の摩耗検知用ライン43A〜43Eに対応して、5対の閉回路13A〜13Eおよび閉回路16A〜16Eが設けられている。発光回路である各閉回路13A〜13Eには、発光素子7A〜7E、電源11A〜11Eおよび抵抗12A〜12Eがそれぞれ設置される。また、受光回路である各閉回路16A〜16Eには、受光素子8A〜8E、電源14A〜14Eおよび抵抗15A〜15Eがそれぞれ設置される。発光素子7A〜7Eは摩耗側部品2の光起電力素子5A〜5Eに対向可能に配置され、受光素子8A〜8Eは摩耗側部品2の発光素子6A〜6Eに対向可能に配置される。
【0075】
摩耗側部品2の摺動中に、対向側部品3の発光素子7A〜7Eは、摩耗側部品2の光起電力素子5A〜5Eに順次投光し、対向側部品3の受光素子8A〜8Eは、摩耗側部品2の発光素子6A〜6Eからの光を順次受光する。また、各閉回路16A〜16Eはそれぞれ、コンパレータ17A〜17Eを介して1つの制御装置9に接続されている。これにより、各受光素子8A〜8Eの受光状態を表す信号が、制御装置9の入力端子D1〜D5にそれぞれ入力される。
【0076】
以上のような回路構成により、摩耗ゲージ40の各摩耗検知用ライン43A〜43Eの断線の有無を、摩耗側部品2から対向側部品3に伝達することができる。例えば、対向側部品3の発光素子7A〜7Eが発した光を、摩耗側部品2の光起電力素子5Aが受光することにより、発光素子6Aに電力を供給する。そして、摩耗検知用ライン43Aが断線していない場合には、摩耗側部品2の発光素子6Aが発した光を、対向側部品3の受光素子8Aが受光する。また、受光素子8Aは、他の摩耗検知用ライン43B〜43Eに対応する発光素子6B〜6Eからの光も同様に受光する。一方、摩耗検知用ライン43Aが断線している場合には、発光素子6Aが発光しないので、受光素子8A〜8Eは発光素子6Aからの光のみを受光しない。他の摩耗検知用ライン43B〜43Eが断線している場合も同様である。
【0077】
したがって、制御装置9は、1回の摺動ストローク中における受光素子8A〜8Eによる受光回数に基づいて、摩耗検知用ライン43A〜43Eの断線の有無を検知して、摩耗側部品2の摩耗量が、0〜L5の範囲のどの程度であるかを段階的に検知できる。
【0078】
次に、図5を参照して、上記図4に示した第1の回路構成例の摩耗検知装置による摩耗検知方法について説明する。図5は、第1の回路構成例に係る対向側部品3の制御装置9に入力される信号を示す波形図である。図5(a)および図5(b)は、摩耗検知用ライン43A〜43Eがいずれも断線していないときの入力信号を示し、図5(c)および図5(d)は、第1の摩耗検知用ライン(図5中では単に第1ラインとする。)43Aのみが断線したときの入力信号を示す。
【0079】
産業機械の稼働時に、摩耗側部品2が対向側部品3に対して所定の摺動ストロークで摺動すると、摩耗側部品2の発光素子6A〜6Eと、対向側部品3の受光素子8A〜8Eとが摺動方向に相対移動する。この摺動動作中に、受光素子8A〜8Eは、発光素子6A〜6Eのいずれかと対向したときに光を受光し、この結果、当該受光素子8A〜8Eによる受光状態を表す信号(以下、「受光信号」という。)が、制御装置9の入力端子D1〜D5にそれぞれ入力される。この受光信号は、受光時にHigh信号となるパルス信号であり、コンパレータ17A〜17Eにより生成される。
【0080】
図5(a)および図5(b)に示すように、摩耗検知用ライン43A〜43Eがいずれも断線していない場合には、制御装置9の全ての入力端子D1〜D5には、5つのパルスを含む受光信号が入力される。当該5つのパルスはそれぞれ、上記第1〜第5の摩耗検知用ライン43A〜43Eに対応しており、各受光素子8A〜8Eが、各摩耗検知用ライン43A〜43Eに接続された全ての発光素子6A〜6Eからの光を受光したことを表す。
【0081】
制御装置9は、受光信号のパルス数(1回の摺動ストローク中における受光素子8の受光回数を表す。)をカウントすることで、5本の摩耗検知用ライン43の断線の有無を判定できる。図5(a)および図5(b)に示すように受光信号のパルス数が5である場合には、制御装置9は、全ての摩耗検知用ライン43A〜43Eが断線しておらず、摩耗側部品2の摩耗量がL1未満であると判定する。
【0082】
一方、図5(c)および図5(d)に示すように、摩耗側部品2の摩耗により、最も摺動面21に近い第1の摩耗検知用ライン43Aが断線した場合には、制御装置9の全ての入力端子D1〜D5には、4つのパルスを含む受光信号が入力される。この4つのパルスは、断線していない4本の摩耗検知用ライン43B〜43Eに対応しており、4つの受光素子8B〜8Eが、当該摩耗検知用ライン43B〜43Eに接続された4つの発光素子6B〜6Eからの光を順次受光したことを表す。
【0083】
このように受光信号のパルス数が4である場合には、制御装置9は、摩耗検知用ライン43Aのみが断線し、その他の摩耗検知用ライン43B〜43Eが断線しておらず、摩耗側部品2の摩耗量がL1以上、L2未満であると判定する(図3参照。)。なお、図示はしないが、受光信号のパルス数が3、2、1、0である場合も同様にして、制御装置9は、摩耗検知用ライン43B〜43Eの断線の有無と、摩耗量を判定することができる。
【0084】
このように、制御装置9が、パルス数をカウントして摩耗を検知する方法としては、例えば、複数の入力信号を同時パラレルに検出する方法(第1の方法)と、1つの入力信号を時分割してシリアルに検出する方法(第2の方法)が考えられる。
【0085】
第1の方法では、5つの入力端子D1〜D5の受光信号が同時にONとなっている個数をカウントし、そのうちの最大値をラッチする。ディレイタイマを用いて、かかるカウントおよびラッチ処理を、繰り返す。そして、今回ラッチしたON個数の最大値が、前回ラッチしたON個数の最大値よりも減少していれば(即ち、パルス数が減少していれば)、摩耗検知用ライン43の断線が生じていると判定する。
【0086】
また、第2の方法では、基準時刻を設定し、その基準時刻から所定時間ごとに、1つの入力端子D1の受光信号のON個数(パルス数)をカウントする。そして、今回カウントしたON個数が、前回カウントしたON個数よりも減少していれば(即ち、パルス数が減少していれば)、摩耗検知用ライン43の断線が生じていると判定する。
【0087】
以上のように、制御装置9は、1回の摺動ストローク中における受光素子8の受光回数に基づいて、摩耗検知用ライン43A〜43Eの断線の有無を検知することができる。このような対向側部品3の制御装置9によって、摩耗側部品2の摩耗状態を多段階で検知することができる。
【0088】
[2.3.摩耗検知装置の第2の回路構成例および動作]
次に、図6を参照して、上記摩耗ゲージ40に対応した摩耗検知装置の第2の回路構成例について説明する。図6は、本実施形態に係る摩耗検知装置の第2の回路構成例を示す図である。
【0089】
図6に示すように、第2の回路構成例では、摩耗ゲージ40の複数の摩耗検知用ライン43A〜43Eにそれぞれ対応するように、複数対の摩耗検知用の発光および受光回路が設置されているが、給電用の発光および受光回路は一対のみ設けられて、共通化されている。即ち、第2の回路構成例の摩耗検知装置は、1対の光起電力素子5および発光素子7と、複数対の発光素子6A〜6Eおよび受光素子8A〜8Eとを備えている。
【0090】
摩耗側部品2においては、5本の摩耗検知用ライン43A〜43Eに対応して、5つの閉回路50A〜50Eが設けられている。発光回路である各閉回路50A〜50Eには、発光素子6A〜6Eがそれぞれ設置されている。例えば、閉回路50Aは、発光素子6Aを含み、当該閉回路50Aの両端は、摩耗ゲージ40の共通端子46と端子47Aを介して、摩耗検知用ライン43Aに接続されている。これに対し、光起電力素子5は、共通回路50Fに1つだけ設置されており、全ての発光素子6A〜6Eに電力を給電するように回路が構成されている。摩耗検知用ライン43Aの導通時には、発光素子6Aは、光起電力素子5からの電力により発光可能であるが、摩耗検知用ライン43Aの断線時には、発光素子6Aは、発光不能である。他の摩耗検知用ライン43B〜43Eおよび発光素子6B〜6Eについても同様である。
【0091】
一方、対向側部品3においては、5本の摩耗検知用ライン43A〜43Eに対応して、5つの閉回路16A〜16Eが設けられている。受光回路である各閉回路16A〜16Eには、受光素子8A〜8E、電源14A〜14Eおよび抵抗15A〜15Eがそれぞれ設置される。これに対し、発光回路である閉回路13は、1つだけ設置され、この閉回路13に発光素子7、電源11および抵抗12が1つずつ設置される。発光素子7は摩耗側部品2の光起電力素子5に対向可能に配置され、受光素子8A〜8Eは摩耗側部品2の発光素子6A〜6Eにそれぞれ対向可能に配置される。
【0092】
摩耗側部品2の摺動中に、対向側部品3の発光素子7は、摩耗側部品2の光起電力素子5に投光し、対向側部品3の受光素子8A〜8Eは、摩耗側部品2の発光素子6A〜6Eからの光を同時に受光する。また、各閉回路16A〜16Eはそれぞれ、コンパレータ17A〜17Eを介して1つの制御装置9に接続されている。これにより、各受光素子8A〜8Eの受光状態を表す信号が、制御装置9の入力端子D1〜D5にそれぞれ入力される。
【0093】
以上のような回路構成により、摩耗側部品2の光起電力素子5と、対向側部品3の発光素子7とが対向したときに、対向側部品3から摩耗側部品2に電力が供給される。そして、このときに、摩耗ゲージ40の各摩耗検知用ライン43A〜43Eの断線の有無を、摩耗側部品2から対向側部品3に伝達することができる。
【0094】
例えば、対向側部品3の発光素子7が発した光を、摩耗側部品2の光起電力素子5が受光することにより、閉回路50A〜50Eを通じて発光素子6A〜6Eに電力を供給する。そして、摩耗検知用ライン43Aが断線していない場合には、摩耗側部品2の発光素子6Aが発した光を、対向側部品3の受光素子8Aが受光する。一方、摩耗検知用ライン43Aが断線している場合には、発光素子6Aが発光しないので、受光素子8Aは発光素子6Aからの光を受光しない。他の摩耗検知用ライン43B〜43Eや、発光素子6B〜6E、受光素子8B〜8Eについても同様である。
【0095】
したがって、制御装置9は、受光素子8A〜8Eによる受光の有無に基づいて、摩耗検知用ライン43A〜43Eの断線の有無を検知して、摩耗側部品2の摩耗量が、0〜L5の範囲内のどの程度であるかを段階的に検知できる。
【0096】
次に、図7を参照して、上記図6に示した第2の回路構成例の摩耗検知装置による摩耗検知方法について説明する。図7は、第2の回路構成例に係る対向側部品3の制御装置9に入力される信号を示す波形図である。図7(a)および図7(b)は、摩耗検知用ライン43A〜43Eがいずれも断線していないときの入力信号を示し、図7(c)および図7(d)は、第1の摩耗検知用ライン43Aのみが断線したときの入力信号を示す。
【0097】
摩耗側部品2の摺動動作中に、摩耗側部品2が摺動ストロークの所定位置に移動したときに、摩耗側部品2の光起電力素子5と対向側部品3の発光素子7とが対向し、摩耗側部品2の各発光素子6A〜6Eと対向側部品3の各受光素子8A〜8Eとが対向する。このとき、各受光素子8A〜8Eは、対向する発光素子6A〜6Eが発した光を受光し、この結果、当該各受光素子8A〜8Eによる受光状態を表す受光信号が制御装置9に入力される。
【0098】
図7(a)および図7(b)に示すように、摩耗検知用ライン43A〜43Eがいずれも断線していない場合には、制御装置9の入力端子D1〜D5には、1つのパルスを含む受光信号が入力される。例えば、入力端子D1に入力される受光信号は、受光素子8Aの受光状態を示しており、1ストローク中に1つのパルスを含んでおり、1ストローク中に1回の受光があったことが分かる。入力端子D1〜D5の5つの受光信号において、同一のタイミングでパルスが入力されており、5つの受光素子8A〜8Eが同時に、発光素子6A〜6Eからの光を受光していることが分かる。
【0099】
制御装置9は、各々の受光信号にパルスが含まれるか否かによって、各摩耗検知用ライン43A〜43Eの断線の有無を判定できる。図5(a)および図5(b)に示すように全ての受光信号にパルスが含まれている場合には、制御装置9は、全ての摩耗検知用ライン43A〜43Eが断線しておらず、摩耗側部品2の摩耗量がL1未満であると判定する。
【0100】
一方、図7(c)および図7(d)に示すように、摩耗側部品2の摩耗により、最も摺動面21に近い第1の摩耗検知用ライン43Aが断線した場合には、受光素子8Aが受光しないので、入力端子D1に入力される受光信号はパルスを含まないが、入力端子D2〜D5に入力される受光信号はいずれも、同一タイミングで1つのパルスを含む。この4つの受光信号のパルスは、断線していない4本の摩耗検知用ライン43に対応しており、4つの受光素子8B〜8Eが、摩耗検知用ライン43B〜43Eに接続された4つの発光素子6B〜6Eからの光を受光したことを表す。
【0101】
このように入力端子D1の受光信号のみにパルスが含まれない場合には、制御装置9は、摩耗検知用ライン43Aのみが断線し、その他の摩耗検知用ライン43B〜43Eが断線しておらず、摩耗側部品2の摩耗量がL1以上、L2未満であると判定する。この際、制御装置9は、オフディレイタイマを用いて、1回の摺動ストロークに対応する一定時間に渡って、受光信号にパルスが無いことを検知したときに、摩耗検知用ライン43Aが断線していると判定する。なお、図示はしないが、入力端子D2〜D5の受光信号にパルスが含まれない場合も同様にして、制御装置9は、摩耗検知用ライン43B〜43Eの断線の有無と、摩耗量を判定することができる。
【0102】
以上のように、制御装置9は、1回の摺動ストローク中における受光信号のパルスの有無によって、各受光素子8A〜8Eが受光したか否かを検知する。そして、制御装置9は、各受光素子8A〜8Eの受光の有無に基づいて、摩耗検知用ライン43A〜43Eの断線の有無をそれぞれ検知する。このような対向側部品3の制御装置9によって、摩耗側部品2の摩耗状態を多段階で検知することができる。
【0103】
また、第2の回路構成例によれば、対向側部品3の発光回路(発光素子7、電源11等)が共通化されており、摩耗側部品2側の光起電力素子5も共通化されている。このように給電用の発光および受光回路を一対のみ設けることによって、第1の回路構成例よりも、電子部品数を削減して低コスト化を実現できる。
【0104】
[2.4.摩耗検知装置の第3の回路構成例および動作]
次に、図8を参照して、上記摩耗ゲージに対応した摩耗検知装置の第3の回路構成例について説明する。図8は、本実施形態に係る摩耗検知装置の第3の回路構成例を示す図である。
【0105】
図8に示すように、第3の回路構成例では、摩耗ゲージ40の複数の摩耗検知用ライン43A〜43Eにそれぞれ対応するように、摩耗側部品2に複数の発光回路が設置されているが、給電用の受光回路は1つだけ設けられて、共通化されている。また、対向側部品3においては、複数の発光回路が設置されているが、摩耗検知用の受光回路は1つだけ設けられて、共通化されている。即ち、第3の回路構成例の摩耗検知装置は、1つの光起電力素子5と、複数の発光素子6A〜6Eと、複数の発光素子7A〜7Eと、1つの受光素子8とを備えている。
【0106】
摩耗側部品2においては、5本の摩耗検知用ライン43A〜43Eに対応して、5つの閉回路50A〜50Eが設けられ、各閉回路50A〜50Eには、発光素子6A〜6Eがそれぞれ設置されている。また、光起電力素子5は、共通回路50Fに1つだけ設置されており、全ての発光素子6A〜6Eに電力を給電するように回路が構成されている。このように、第3の回路構成例における摩耗側部品2の回路構成は、上記第2の回路構成例における摩耗側部品2の回路構成と実質的に同一である。
【0107】
一方、対向側部品3においては、5本の摩耗検知用ライン43A〜43Eに対応して、5つの閉回路13A〜13Eが設けられている。発光回路である各閉回路13A〜13Eには、発光素子7A〜7E、電源11A〜11Eおよび抵抗12A〜12Eがそれぞれ設置される。これに対し、受光回路である閉回路16は、1つだけ設置され、この閉回路16に受光素子8、電源14および抵抗15が1つずつ設置される。受光素子8は摩耗側部品2の5つの発光素子6A〜6Eに対向可能に配置され、発光素子7A〜7Eは摩耗側部品2の光起電力素子5に対向可能に配置される。
【0108】
摩耗側部品2の摺動中に、対向側部品3の発光素子7A〜7Eは、摩耗側部品2の光起電力素子5に順次投光し、対向側部品3の受光素子8は、摩耗側部品2の発光素子6A〜6Eからの光を順次受光する。また、閉回路16は、コンパレータ17を介して制御装置9に接続されている。これにより、受光素子8の受光状態を表す信号が、制御装置9の入力端子D0に入力される。
【0109】
以上のような回路構成により、摩耗側部品2の光起電力素子5と、対向側部品3の発光素子7A〜7Eのいずれか1つとが対向したときに、対向側部品3から摩耗側部品2に電力が供給される。そして、このときに、受光素子8と対向する発光素子6A〜6Eのいずれか1つにより、摩耗ゲージ40の摩耗検知用ライン43A〜43Eのいずれか1つの断線の有無を、摩耗側部品2から対向側部品3に伝達することができる。
【0110】
例えば、図8に示すように、光起電力素子5と発光素子7Eとが正対し、かつ、発光素子6Aと受光素子8とが正対したときには、発光素子7Eが発した光を、光起電力素子5が受光することにより、閉回路50A〜50Eを通じて発光素子6A〜6Eに電力を供給する。そして、摩耗検知用ライン43Aが断線していない場合には、発光素子6Aが発した光を、受光素子8が受光する。一方、摩耗検知用ライン43Aが断線している場合には、発光素子6Aが発光しないので、受光素子8は発光素子6Aからの光を受光しない。他の摩耗検知用ライン43B〜43Eや発光素子6B〜6Eについても同様である。
【0111】
したがって、制御装置9は、1回の摺動ストローク中における受光素子8による受光回数に基づいて、摩耗検知用ライン43A〜43Eの断線の有無を検知して、摩耗側部品2の摩耗量が、0〜L5の範囲内のどの程度であるかを段階的に検知できる。
【0112】
次に、図9を参照して、上記図8に示した第3の回路構成例の摩耗検知装置による摩耗検知方法について説明する。図9は、第3の回路構成例に係る対向側部品3の制御装置9に入力される信号を示す波形図である。図9(a)および図9(b)は、摩耗検知用ライン43A〜43Eがいずれも断線していないときの入力信号を示し、図9(c)および図9(d)は、第1の摩耗検知用ライン43Aのみが断線したときの入力信号を示す。
【0113】
摩耗側部品2が対向側部品3に対して所定の摺動ストロークで摺動すると、摩耗側部品2の発光素子6A〜6Eと、対向側部品3の受光素子8とが摺動方向に相対移動する。この摺動動作中に、受光素子8は、発光素子6A〜6Eのいずれかと対向したときに光を受光して導通する。この結果、当該受光素子8による受光状態を表す受光信号が、制御装置9の入力端子D0に入力される。この受光信号は、受光時にHigh信号となるパルス信号であり、コンパレータ17により生成される。
【0114】
図9(a)および図9(b)に示すように、摩耗検知用ライン43A〜43Eがいずれも断線していない場合には、制御装置9の入力端子D0には、5つのパルスを含む受光信号が入力される。当該5つのパルスはそれぞれ、上記第1〜第5の摩耗検知用ライン43A〜43Eに対応しており、1つの受光素子8が、各摩耗検知用ライン43A〜43Eに接続された全ての発光素子6A〜6Eからの光を受光したことを表す。
【0115】
制御装置9は、受光信号のパルス数(1回の摺動ストローク中における受光素子8の受光回数を表す。)をカウントすることで、5本の摩耗検知用ライン43の断線の有無を判定できる。例えば、制御装置9は、カウンタ回路により受光信号のパルス数をカウントし、最初のパルス信号からt秒後(摩耗側部品2の1ストロークに対応する時間)に、カウント値をラッチするとともに、その都度カウンタをクリアする。そして、パルスが検知されなくなったらカウントを完了する。このときラッチしたカウント値が、摩耗検知用ライン43の断線の有無、即ち摩耗側部品2の摩耗の程度を表す。例えば、図9(a)および図9(b)に示すように受光信号のパルス数が5である場合には、制御装置9は、全ての摩耗検知用ライン43A〜43Eが断線しておらず、摩耗側部品2の摩耗量がL1未満であると判定する。
【0116】
一方、図9(c)および図9(d)に示すように、摩耗側部品2の摩耗により、第1の摩耗検知用ライン43Aが断線した場合には、制御装置9の入力端子D0には、4つのパルスを含む受光信号が入力される。この4つのパルスは、断線していない4本の摩耗検知用ライン43B〜43Eに対応しており、受光素子8が、当該摩耗検知用ライン43B〜43Eに接続された4つの発光素子6B〜6Eからの光を順次受光したことを表す。
【0117】
このように受光信号のパルス数が4である場合には、制御装置9は、摩耗検知用ライン43Aのみが断線し、その他の摩耗検知用ライン43B〜43Eが断線しておらず、摩耗側部品2の摩耗量がL1以上、L2未満であると判定する(図3参照。)。なお、図示はしないが、受光信号のパルス数が3、2、1、0である場合も同様にして、制御装置9は、摩耗検知用ライン43B〜43Eの断線の有無と、摩耗量を判定することができる。
【0118】
以上のように、制御装置9は、1回の摺動ストローク中における受光素子8の受光回数に基づいて、摩耗検知用ライン43A〜43Eの断線の有無を検知することができる。このような対向側部品3の制御装置9によって、摩耗側部品2の摩耗状態を多段階で検知することができる。
【0119】
また、第3の回路構成例によれば、対向側部品3の受光回路(受光素子8、電源14等)が共通化されており、摩耗側部品2側の光起電力素子5も共通化されている。このように給電用の受光回路と摩耗検知用の受光回路を1つだけ設けることによって、第1の回路構成例よりも、電子部品数を削減して低コスト化を実現できる。さらに、制御装置9に対する入力が1つで済むので、安価な制御装置を適用でき、適用幅が広がる。
【0120】
[2.5.摩耗検知装置の第4の回路構成例および動作]
次に、図10を参照して、上記摩耗ゲージに対応した摩耗検知装置の第4の回路構成例について説明する。図10は、本実施形態に係る摩耗検知装置の第4の回路構成例を示す図である。
【0121】
図10に示すように、第4の回路構成例では、摩耗ゲージ40の複数の摩耗検知用ライン43A〜43Eにそれぞれ対応するように、摩耗側部品2に複数の発光および受光回路が設置されているが、対向側部品3においては、発光および受光回路が1つだけ設けられて、共通化されている。即ち、第4の回路構成例の摩耗検知装置は、複数対の光起電力素子5A〜5Eおよび発光素子6A〜6Eと、一対の発光素子7および受光素子8とを備えている。
【0122】
摩耗側部品2においては、5本の摩耗検知用ライン43A〜43Eに対応して、5つの閉回路10A〜10Eが設けられ、各閉回路10A〜10Eには、一対の光起電力素子5A〜5Eおよび発光素子6A〜6Eがそれぞれ設置される。このように、第4の回路構成例における対向側部品3の回路構成は、上記第1の回路構成例における対向側部品3の回路構成と実質的に同一である。
【0123】
一方、対向側部品3においては、1つの閉回路13と1つの閉回路16が設けられている。発光回路である閉回路13には、発光素子7、電源11および抵抗12が1つずつ設置され、受光回路である閉回路16には、受光素子8、電源14および抵抗15が1つずつ設置される。受光素子8は摩耗側部品2の5つの発光素子6A〜6Eに対向可能に配置され、発光素子7は摩耗側部品2の5つの光起電力素子5A〜5Eに対向可能に配置される。
【0124】
摩耗側部品2の摺動中に、対向側部品3の発光素子7は、摩耗側部品2の光起電力素子5A〜5Eに順次投光するとともに、対向側部品3の受光素子8は、摩耗側部品2の発光素子6A〜6Eからの光を順次受光する。また、閉回路16は、コンパレータ17を介して制御装置9に接続されている。これにより、受光素子8の受光状態を表す信号が、制御装置9の入力端子D0に入力される。
【0125】
以上のような回路構成により、摩耗側部品2の光起電力素子5A〜5Eのいずれか1つと、対向側部品3の発光素子7とが対向したときに、対向側部品3から摩耗側部品2の1つの閉回路10A〜10Eのいずれか1つに電力が供給される。そして、このときに、当該閉回路10A〜10Eのいずれか1つの発光素子6A〜6Eにより、摩耗ゲージ40の摩耗検知用ライン43A〜43Eのいずれか1つの断線の有無を、摩耗側部品2から対向側部品3に伝達することができる。
【0126】
例えば、図10に示すように、光起電力素子5Eと発光素子7とが正対し、かつ、発光素子6Eと受光素子8とが正対したときには、発光素子7が発した光を、光起電力素子5Eが受光することにより、閉回路10Eを通じて発光素子6Eに電力を供給する。そして、摩耗検知用ライン43Eが断線していない場合には、発光素子6Eが発した光を、受光素子8が受光する。一方、摩耗検知用ライン43Eが断線している場合には、発光素子6Eが発光しないので、受光素子8は発光素子6Eからの光を受光しない。他の摩耗検知用ライン43A〜43Dや、光起電力素子5A〜5Dおよび発光素子6A〜6Dについても同様である。
【0127】
したがって、制御装置9は、1回の摺動ストローク中における受光素子8による受光回数に基づいて、摩耗検知用ライン43A〜43Eの断線の有無を検知して、摩耗側部品2の摩耗量が、0〜L5の範囲内のどの程度であるかを段階的に検知できる。
【0128】
次に、図11を参照して、上記図10に示した第4の回路構成例の摩耗検知装置による摩耗検知方法について説明する。図11は、第4の回路構成例に係る対向側部品3の制御装置9に入力される信号を示す波形図である。図11(a)および図11(b)は、摩耗検知用ライン43A〜43Eがいずれも断線していないときの入力信号を示し、図11(c)および図11(d)は、第1の摩耗検知用ライン43Aのみが断線したときの入力信号を示す。
【0129】
図11に示すように、第4の回路構成例において制御装置9に入力される受光信号は、第3の回路構成例と同様である(図9参照。)。図11(a)および図11(b)に示すように、摩耗検知用ライン43A〜43Eがいずれも断線していない場合には、制御装置9の入力端子D0には、5つのパルスを含む受光信号が入力される。一方、図11(c)および図11(d)に示すように、摩耗側部品2の摩耗により、第1の摩耗検知用ライン43Aが断線した場合には、制御装置9の入力端子D0には、4つのパルスを含む受光信号が入力される。
【0130】
制御装置9は、受光信号のパルス数(1回の摺動ストローク中における受光素子8の受光回数を表す。)をカウントすることで、5本の摩耗検知用ライン43の断線の有無を判定できる。このときのカウント方法および判定方法は、第3の回路構成例と同様である。
【0131】
以上のように、制御装置9は、1回の摺動ストローク中における受光素子8の受光回数に基づいて、摩耗検知用ライン43A〜43Eの断線の有無を検知することができる。このような対向側部品3の制御装置9によって、摩耗側部品2の摩耗状態を多段階で検知することができる。
【0132】
また、第4の回路構成例によれば、対向側部品3の発光回路(発光素子7、電源11等)および受光回路(受光素子8、電源14等)が共通化されている。このように給電用の発光回路と摩耗検知用の受光回路を1つだけ設けることによって、第1の回路構成例よりも、電子部品数を削減して低コスト化を実現できる。
【0133】
[2.6.効果]
以上説明したように、第2の実施形態の摩耗検知装置によれば、第1の実施形態に係る効果に加えて、以下の効果がある。
【0134】
即ち、本実施形態によれば、摩耗ゲージ40に複数の摩耗検知用ライン43A〜43Eを設置するとともに、摩耗側部品2に、各摩耗検知用ライン43A〜43Eに接続される複数の発光素子6A〜6Eを設ける。また、対向側部品3には、発光素子6A〜6Eからの光を順次または同時に受光可能な1つまたは複数の受光素子8を設ける。そして、摩耗側部品2の摩耗に伴って摩耗ゲージ40が摩耗し、摩耗検知用ライン43A〜43Eが順次断線したときに、複数の発光素子6A〜6Eの発光の有無を利用して、当該断線を表す情報を、摩耗側部品2から対向側部品3に伝達する。これにより、制御装置9は、受光素子8による受光回数、或いは各受光素子8A〜8Eの受光の有無に基づいて、摩耗検知用ライン43A〜43Eの断線の有無を検知することができる。
【0135】
したがって、摩耗側部品2と対向側部品3を複数の配線等で電気的に接続しなくても、対向側部品3の制御装置9は、摩耗側部品2の摩耗量を多段階で適切に検知することができる。よって、摩耗側部品2の摩耗量の変化を段階的に把握できるため、摩耗量の変化の傾向を把握でき、摩耗側部品2の余寿命と最適なメンテナンスの時期を予測することが可能となる。
【0136】
[3.第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態に係る摩耗検知装置について説明する。第3の実施形態に係る摩耗検知装置は、上記第1の実施形態と比べて、発光回路および受光回路の配置が相違し、その他の機能構成は上記第1の実施形態と同様であるので、その詳細説明は省略する。
【0137】
上述した第1の実施形態では、図2に示すように、光起電力素子5および発光素子6は、摩耗側部品2の摺動方向と平行な対向面22(摺動面21)に沿って配置され、発光素子7および受光素子8も、当該摺動方向と平行な対向面32(摺動面31)に沿って配置されている。ところが、摩耗側部品2の摺動中は、対向面22と対向面32が摺動方向に相対移動するため、光起電力素子5および発光素子6と、発光素子7および受光素子8も摺動方向に相対移動する。したがって、摩耗側部品2が高速で摺動する場合には、素子間の投受光を瞬時に行うことが要求されるので、計測のタイミングを取ることが困難であるとともに、計測時間を短時間で行わなければならず、計測精度を向上し難いという問題があった。
【0138】
そこで、第3の実施形態では、かかる問題を解決するために、摩耗側部品2における光起電力素子5および発光素子6の配置と、対向側部品3における発光素子7および受光素子8の配置を変更したことを特徴とする。以下に、第3の実施形態に係る摩耗検知装置の構成について詳述する。
【0139】
[3.2.摩耗検知装置の構成]
まず、図12を参照して、本発明の第3の実施形態に係る摩耗検知装置の全体構成について説明する。図12は、本実施形態に係る摩耗検知装置の回路構成を示す図である。なお、図12(a)は、摩耗側部品2が摺動ストロークの端部に移動して、一時停止した状態を示し、図12(b)は、摩耗側部品2が摺動ストロークの中央付近で移動中の状態を示す。
【0140】
図12に示すように、第3の実施形態に係る摩耗検知装置では、投光回路および受光回路で光を投受光する箇所を、摩耗側部品2の摺動方向(図12の上下方向)と平行な対向面22、32(摩耗側部品2の摺動ストロークの途中)ではなく、当該摺動方向と垂直な対向面23、33(即ち、摩耗側部品2の摺動ストロークの端部)に配置する。
【0141】
このために、摩耗側部品2の摺動方向の一側端部と対向する対向部34が、対向側部品3に設けられている。この対向側部品3の対向部34は、対向側部品3の本体部から摩耗側部品2側に向けて突出形成された部分である。対向部34は、摺動する摩耗側部品2と衝突せず、かつ、摺動ストロークの端部に移動した摩耗側部品2と近接する位置に設置される。この対向側部品3の対向部34の対向面33は、摺動方向に対して垂直であり、摩耗側部品2の摺動方向の一側端部の対向面23と対向する。そして、かかる対向部34の対向面33に沿って発光素子7および受光素子8が配置される。
【0142】
一方、摩耗側部品2には、摺動方向の一側端部の対向面23に沿って光起電力素子5および発光素子6が配置される。このとき、光起電力素子5と発光素子7とが摺動方向に対向し、かつ、発光素子6と受光素子8とが摺動方向に対向するように配置される。かかる光起電力素子5および発光素子6は、閉回路10により摩耗ゲージ4に接続されている。
【0143】
かかる配置により、摩耗側部品2の摺動中に、当該摩耗側部品2が摺動ストロークの端部に移動して一次停止したときに(図12(a)参照。)、摩耗側部品2の一側端部の対向面23と対向側部品3の対向部34の対向面33とが、最も接近した状態で相互に対向する。このとき、光起電力素子5は発光素子7からの光を受光し、摩耗検知用ライン43が断線していない場合には、受光素子8は発光素子6からの光を受光する。
【0144】
したがって、摺動ストロークの端部において摩耗側部品2の移動速度が最も遅くなるときに、これら素子を最も近接させた状態で対向させることができるので、これら素子間での投受光を的確に実現することができる。よって、計測タイミングが取りやすくなり、比較的長い計測時間を確保できるので、対向側部品3から摩耗側部品2の摩耗量状態の計測を容易かつ正確に行うことが可能となる。さらに、摩耗側部品2の摺動面21や摩耗ゲージ4の摩耗粉が、光起電力素子5および発光素子6の近傍に到達しにくくなるので、当該摩耗粉が光の投受光を妨害することを抑制して、安定的に投受光を実現できる。
【0145】
なお、図12の例では、対向面23、33が摺動方向に対して垂直であったが、かかる例に限定されない。例えば、対向面23、33が摺動方向に対して傾斜していても、上記と同様に投受光することが可能である。
【0146】
また、図12の例では、摩耗側部品2の一側端部の対向面23に光起電力素子5および発光素子6を配置したが、かかる例に限定されない。例えば、摩耗側部品2の一側端部の近傍の対向面22に光起電力素子5および発光素子6を配置し、これらに対向するようにして対向側部品3の対向面32に発光素子7および受光素子8を配置してもよい。これによっても、摩耗側部品2の移動速度が遅くなる箇所で、これら素子を対向させることができるので、計測タイミングや計測時間に関して、ほぼ同様の効果が得られる。
【0147】
また、図12の例では、摩耗ゲージ4には摩耗検知用ライン43を1本だけ設けたが、かかる例に限定されない。第2の実施形態の摩耗ゲージ40のように複数本の摩耗検知用ライン43A〜43Eを設け、各摩耗検知用ライン43A〜43Eに接続される複数の発光回路や受光回路を、摩耗側部品2の一側端部に設けてもよい。これにより、摩耗側部品2の摩耗量を多段階で検知可能となる。
【0148】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0149】
例えば、上記実施形態では、発光素子7および光起電力素子5を利用して、対向側部品3から摩耗側部品2に、発光素子6が使用する電力を供給したが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、上記光起電力素子5の代わりに摩耗側部品2内に電池を設け、当該電池から発光素子6に電力を供給してもよい。これにより、摩耗側部品2の光起電力素子5や、対向側部品3の発光素子7、電源11および抵抗12等を省略することができるので、回路構造をより簡易にし、低コスト化が図れる。
【0150】
例えば、上述した実施形態では、摩耗検知装置の具体的構成について説明したが、摩耗検知装置を用い、摩耗側部品の摺動中に、受光素子が摩耗側発光素子から光を受光し、摩耗側発光素子からの受光状態に基づいて摩耗ゲージの摩耗状態を検知する摩耗検知方法も提供される。また、摩耗検知装置の各構成要素に基づく処理や動作は当該摩耗検知方法にも適用される。
【産業上の利用可能性】
【0151】
本発明は、産業機械の摺動部の摩耗を検知する摩耗検知装置および摩耗検知方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0152】
1 …摺動部
2 …摩耗側部品
3 …対向側部品
4、40 …摩耗ゲージ
5 …光起電力素子
6 …発光素子
7 …発光素子
8 …受光素子
9 …制御装置
10、 …閉回路
11、14 …電源
12、15 …抵抗
13、16、50 …閉回路
17 …コンパレータ
21、31 …摺動面
22、32 …対向面
23、33 …対向面
34 …対向部
41 …先端部
41a …先端面
42 …プリントライン
43 …摩耗検知用ライン
44 …端子
45 …共通プリントライン
46 …共通端子
47 …端子
100 …レシプロコンプレッサ
101 …シリンダ
102 …ピストン
103 …ピストンロッド
104 …ピストンリング
105 …プルリング
106 …吸入弁
107 …排出弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向側部品との摺動に伴う摩耗側部品の摩耗を検知する摩耗検知装置において、
前記摩耗側部品に設けられ、前記摩耗側部品の摺動面に沿って配置された先端部に摩耗検知用ラインが設けられた摩耗ゲージと、
前記摩耗側部品に設けられ、前記摩耗検知用ラインに接続される摩耗側発光素子と、
前記対向側部品において、前記摩耗側部品の摺動中に前記摩耗側発光素子と対向可能な位置に設けられた受光素子と、
前記対向側部品に設けられ、前記受光素子による受光状態に基づいて前記摩耗ゲージの摩耗状態を検知する制御装置と、
を備えることを特徴とする摩耗検知装置。
【請求項2】
前記摩耗側部品に設けられ、前記摩耗検知用ラインおよび前記摩耗側発光素子に接続される光起電力素子と、
前記対向側部品において、前記摩耗側部品の摺動中に前記光起電力素子と対向可能な位置に設けられた対向側発光素子と、
をさらに備え、
前記光起電力素子は、前記対向側発光素子から光を受光することにより電力を発生させ、
前記摩耗側発光素子は、前記光起電力素子が発生させた電力により発光することを特徴とする請求項1に記載の摩耗検知装置。
【請求項3】
対向側部品との摺動に伴って摩耗する摩耗側部品に設けられ、該摩耗側部品の摺動面に沿って配置された先端部に摩耗検知用ラインが設けられた摩耗ゲージと、該摩耗側部品に設けられ、該摩耗検知用ラインに接続される摩耗側発光素子と、該対向側部品において、該摩耗側部品の摺動中に該摩耗側発光素子と対向可能な位置に設けられた受光素子と、により該摩耗側部品の摩耗を検知する摩耗検知方法であって、
前記摩耗側部品の摺動中に、前記受光素子が前記摩耗側発光素子から光を受光し、
前記摩耗側発光素子からの受光状態に基づいて前記摩耗ゲージの摩耗状態を検知することを特徴とする摩耗検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−88196(P2013−88196A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227220(P2011−227220)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】