説明

摺動部品およびそれを備える装置

【課題】コストを低減した摺動部品およびそれを用いた装置を提供する。
【解決手段】復帰用プランジャ10は、バネ9を収納する有底筒状の樹脂部分15と、回動する操作軸7の扁平カム部7aに摺接する焼結金属からなる金属部分16とが、一体化されて構成されており、また、作動用プランジャ11は、内装バネ等を収納する有底筒状の樹脂部分17と、この樹脂部分17の上端に装着されて、操作軸7の扁平カム部7aに摺接する焼結金属からなる金属部分18とが一体化されて構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摺動部品およびそれを備える各種の装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、リミットスイッチには、操作レバーによって回動される操作軸の回動を作動用プランジャの直線変位に変換して内蔵したスイッチを切換え作動するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図4は、かかるリミットスイッチの前記操作軸を回動可能に支持する操作用ヘッド部分の断面図である。
【0004】
この操作用ヘッドのヘッドケース5は、前記スイッチ(図示せず)を内蔵した本体ケース3上に連結されており、ヘッドケース5には、前記操作軸7が回動可能に装着されており、ヘッドケース5から突出した操作軸7の外端には、図示しない操作レバーが連結されている。
【0005】
ヘッドケース5内の操作軸7には、扁平カム部7aが形成されており、この扁平カム部7aの上面に、バネ9によって下方に付勢された復帰用プランジャ10−1の下端偏平面が押圧当接されて、操作軸7が中立姿勢に保持されるとともに、上方に付勢された作動用プランジャ11−1が偏平カム部7aの下面で受け止め支持されている。
【0006】
そして、操作レバーの先端のローラが検出対象物体に当接して、操作軸7に回転操作力が加えられると、操作軸7の偏平カム部7aが復帰用プランジャ10−1をバネ9の付勢力に抗して押し上げ変位させながら回動し、偏平カム部7aの下面で作動用プランジャ11−1を押し下げ操作して内蔵のスイッチをオン作動し、また、操作レバーへの操作力が解除されると、復帰用プランジャ10−1から偏平カム部7aの上面に加えられる押圧力により操作軸7がもとの中立姿勢にまで復帰回動され、これに伴って作動用プランジャ11−1も復帰上昇してスイッチオフに戻るようになっている。
【特許文献1】特開平8−22743号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記構成のリミットスイッチでは、検出対象物に操作レバー先端のローラが当接して操作軸7が回動すると、図5に示すように、操作軸7の扁平カム部7aの一方の縁部と復帰用プランジャ10−1の下面とが局所的に線接触して摺動することによって、復帰用プランジャ10−1を押し上げ変位させる一方、扁平カム部7aの他方の縁部と作動用プランジャ11−1の上面とが局所的に線接触して摺動することによって、押し下げ操作する。
【0008】
このように復帰用プランジャ10−1や作動用プランジャ11−1は、扁平カム部7aに局所的に接触して摺動するために、耐摩耗性が要求され、このため、プランジャ10−1,11−1の全体が、例えば、焼結合金で構成されており、コストが高くつくという難点がある。
【0009】
本発明は、上述のような課題に鑑みて為されたものであって、コストを低減した摺動部品およびそれを用いた装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明の摺動部品は、少なくとも摺動面が焼結金属または窒化処理した金属からなる金属部分と、樹脂からなる樹脂部分とを一体化している。
【0011】
本発明の摺動部品によると、少なくとも摺動面は、焼結金属または表面を窒化処理した金属で構成するものの、他の部分は樹脂で構成して一体化しているので、摺動部品全体を焼結金属で構成するのに比べて、コストの低減を図ることができる。
【0012】
(2)本発明の摺動部品の一つの実施形態では、前記摺動面は、回動軸に設けられた扁平なカム部に摺接するものである。
【0013】
この実施形態によると、回動軸が回動することによって、その扁平なカム部が、摺動面に局所的に摺接することになるが、かかる摺動面は、焼結金属等の金属部分で構成されているので、十分な硬度および耐摩耗性を有する。
【0014】
(3)上記(2)の実施形態では、前記樹脂部分が、内部に部品を収納する筒状部を有してもよい。
【0015】
筒状部は、有底の筒状部であってもよいし、単なる筒状であってよい。また、筒状部は、円筒状に限らず、三角筒状、 四角筒状あるいは多角筒状であってもよい。
【0016】
筒状部の内部に収納される部品としては、当該摺動部品を、回動軸に付勢するバネ等の部品であるのが好ましい。
【0017】
この実施形態によると、摺動面以外を構成する樹脂部分は、筒状部を有しているので、かかる筒状部の内部の空間を利用して、部品の少なくとも一部を収納することができる。
【0018】
(4)本発明の摺動部品の他の実施形態では、前記金属部分と前記樹脂部分とが、圧入またはインサート成形によって一体化されている。
【0019】
この実施形態によると、比較的低いコストで強固に一体化することができる。
【0020】
(5)本発明の装置は、本発明の係る摺動部品を備えている。
【0021】
本発明の装置によると、摺動面が焼結金属または表面を窒化処理した金属で構成され、他の部分が樹脂で構成された摺動部品を用いているので、全体が焼結金属で構成された摺動部品を用いる装置に比べてコストを低減することができる。
【0022】
(6)本発明の装置の一つの実施形態では、操作軸の突出端部に取り付けた操作レバーを揺動操作することで、前記操作軸を復帰付勢力に抗して回動させて、内蔵したスイッチを作動させる装置であって、前記摺動部品が、前記操作軸の扁平カム部に摺接する摺動面を有して、該操作軸の回動に応じて変位するとともに、前記操作軸を復帰付勢する復帰用プランジャであり、前記復帰用プランジャは、少なくとも前記摺動面が焼結金属または窒化処理した金属からなる金属部分と、前記復帰付勢する付勢部材を収納する筒状部が樹脂からなる樹脂部分とを、一体化している。
【0023】
この実施形態によると、操作レバーを取り付けた操作軸の回動によって、該操作軸の扁平カム部に摺接する復帰用プランジャを、焼結金属または窒化処理した金属で構成した金属部分と樹脂部分とを一体化した構成としているので、全体が焼結金属で構成された復帰用プランジャに比べてコストを低減することができる。
【0024】
(7)上記(6)の実施形態では、前記摺動部品が、前記操作軸の扁平カム部に摺接する摺動面を有して、該操作軸の回動に応じて変位して前記スイッチを作動させる作動用プランジャであり、前記作動用プランジャは、少なくとも前記摺動面が焼結金属または窒化処理した金属からなる金属部分と、該作動用プランジャの過剰な変位を吸収するための弾性部材を収納する筒状部が樹脂からなる樹脂部分とを一体化している。
【0025】
この実施形態では、操作レバーを取り付けた操作軸の回動によって、該操作軸の扁平カム部に摺接する操作用プランジャを、焼結金属または窒化処理した金属で構成した金属部分と樹脂部分とを一体化した構成としているので、全体が焼結金属で構成された作動用プランジャに比べてコストを低減することができる。
【発明の効果】
【0026】
以上のように、本発明によれば、少なくとも摺動面は、焼結金属または表面を窒化処理した金属で構成するものの、他の部分は樹脂で構成して一体化しているので、摺動部品全体を焼結金属で構成するのに比べて、コストの低減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面によって、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0028】
この実施形態では、摺動部品を備えた装置としてリミットスイッチに適用して説明する。
【0029】
図1に、本発明に係るリミットスイッチの縦断した側面図が、図2にその要部の拡大した縦断面図が、図3にその分解斜視図がそれぞれ示されている。
【0030】
この実施形態のリミットスイッチ1は、図1に示すように、スイッチ本体2を内装して連結固定したスイッチケース3の上端に、操作レバー4を揺動操作可能に備えたヘッドケース5を連結して構成されている。
【0031】
前記スイッチケース3は、前面が開放されるとともに、下端からコード引出し可能に構成された箱形に形成され、前面開口6から組み込んだスイッチ本体2をケース内面にネジ止め固定するよう構成されるとともに、前面開口6が脱着可能な前カバー(図示せず)で閉塞されるようになっている。
【0032】
前記ヘッドケース5には、スイッチ操作用の操作軸7が回動可能に支承され、この操作軸7の突出端に前記操作レバー4が連結固定されている。この操作レバー4の先端部には、機械装置に備えられたドグやカムなどに当接するローラ8が装備されている。
【0033】
操作軸7のヘッドケース5内の部分は、扁平に切欠かれた扁平カム部7aとなっており、その上面にバネ9で圧接される摺動部品としての復帰用プランジャ10が上下スライド可能にヘッドケース5に装備されている。
【0034】
また、偏平カム部7aの下面に、上下にスライド変位可能な摺動部品としての作動用プランジャ11が当接している。この作動用プランジャ11には、一定範囲内で上下変位自在かつ内装バネ12で下限までスライド付勢された可動部材13が装備され、この可動部材113の下端にねじ込み装着した当接ボルト14がスイッチ本体2の操作突起2aに直接作用するようになっており、操作突起2aのストロークと作動用プランジャ11のストロークとの差を可動部材13の後退変位で吸収するよう構成されている。なお、操作軸7の操作レバー4寄りにはOリング19が装着されており、また、ヘッドケース5と本体ケース3との間には、Oリング20が装着されている。
【0035】
操作レバー4に外力が作用しない自由状態では、図1および図2に示すように、復帰用プランジャ10の偏平な下端面が偏平カム部7aの上面に付勢押圧されることで、操作軸7が中立位置に安定保持されるとともに、作動用プランジャ11が偏平カム部7aの下面に当接される。この中立状態から操作軸7が回転作用を受けると、付勢部材としてのバネ9による復帰作用に抗して操作軸7が回動することで作動用プランジャ11が偏平カム部7aの下面によって、付勢力に抗して下方にスライド変位され、操作突起2aを押し込み操作してスイッチ本体2の内蔵スイッチング機構を切り換え作動させ、また、操作軸7へ加えていた回転操作力を解除すると、復帰用プランジャ10の偏平カム部7aへの押圧作用によって、操作軸7が元の中立位置まで付勢回動されるとともに、作動用プランジャ11も元の位置にスライド復帰するようになっている。
【0036】
操作軸7が回動する際には、上述の図5に示すように、扁平カム部7aの一方の縁部と復帰用プランジャ10の下面とが局所的に線接触して摺動する一方、扁平カム部7aの他方の縁部と作動用プランジャ11の上面とが局所的に線接触して摺動する。
【0037】
この実施形態では、リミットスイッチのコストの削減を図るために、復帰用プランジャ10および作動用プランジャ11を次のように構成している。
【0038】
すなわち、復帰用プランジャ10は、バネ9を収納する有底筒状の樹脂部分15と、扁平カム部7aに摺接する大略円盤状の焼結金属からなる金属部分16とが、一体化されて構成されている。この復帰用プランジャ10では、樹脂部分15の底部の中央の穴15aに、金属部分16の軸部16aを圧入することによって一体化している。樹脂部分15は、例えば、ナイロン樹脂からなる。
【0039】
一方、作動用プランジャ11は、弾性部材としての内装バネ12等を収納する有底筒状の樹脂部分17と、この樹脂部分17の上端に装着されて、扁平カム部7aに摺接する焼結金属からなる金属部分18とが一体化されて構成されている。金属部分18は、細長い板状体の両端が略直角に対向するように屈曲された屈曲部18a,18aを有しており、この間に、樹脂部分17の上端の両側に形成された溝部17a,17aを嵌め込んで一体化している。樹脂部分17は、例えば、ナイロン樹脂からなる。
【0040】
このように復帰用プランジャ10および作動用プランジャ11は、扁平カム部7aに摺接する摺動面となる部分が、焼結金属からなる金属部分16,18で構成される一方、残余の部分は、ナイロン樹脂等の樹脂で構成されるので、全体を焼結金属で構成する従来例に比べて、コストを削減することができる。
【0041】
なお、金属部分16,18は、焼結金属に代えて、例えば、ステンレスなどの金属の表面を窒化処理した金属であってもよい。
【0042】
また、金属部分16,18と樹脂部分15,17とは、インサート成形して一体化してもよい。
【0043】
上述の実施形態では、リミットスイッチに適用して説明したけれども、本発明は、リミットスイッチに限らず、摺動部品を備える他の装置に適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、リミットスイッチなどに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係るリミットスイッチの縦断した側面図である。
【図2】図1の要部を拡大した縦断面図である。
【図3】図1の要部の分解斜視図である。
【図4】従来例のリミットスイッチの要部の断面図である。
【図5】動作説明に供する図である。
【符号の説明】
【0046】
1 リットスイッチ
2 スイッチ本体
4 操作レバー
5 ヘッドケース
7 操作軸
10 復帰用プランジャ
11 作動用プランジャ
15,17 樹脂部分
16,18 金属部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも摺動面が焼結金属または窒化処理した金属からなる金属部分と、樹脂からなる樹脂部分とを一体化したことを特徴とする摺動部品。
【請求項2】
前記摺動面は、回動軸に設けられた扁平なカム部に摺接する請求項1に記載の摺動部品。
【請求項3】
前記樹脂部分が、内部に部品を収納する筒状部を有する請求項1または2に記載の摺動部品。
【請求項4】
前記金属部分と前記樹脂部分とが、圧入またはインサート成形によって一体化される請求項1ないし3のいずれか一項に記載の摺動部品。
【請求項5】
前記請求項1ないし4のいずれか一項に記載の摺動部品を備えることを特徴とする装置。
【請求項6】
操作軸の突出端部に取り付けた操作レバーを揺動操作することで、前記操作軸を復帰付勢力に抗して回動させて、内蔵したスイッチを作動させる装置であって、
前記摺動部品が、前記操作軸の扁平カム部に摺接する摺動面を有して、該操作軸の回動に応じて変位するとともに、前記操作軸を復帰付勢する復帰用プランジャであり、
前記復帰用プランジャは、少なくとも前記摺動面が焼結金属または窒化処理した金属からなる金属部分と、前記復帰付勢する付勢部材を収納する筒状部が樹脂からなる樹脂部分とを、一体化した請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記摺動部品が、前記操作軸の扁平カム部に摺接する摺動面を有して、該操作軸の回動に応じて変位して前記スイッチを作動させる作動用プランジャであり、
前記作動用プランジャは、少なくとも前記摺動面が焼結金属または窒化処理した金属からなる金属部分と、該作動用プランジャの過剰な変位を吸収するための弾性部材を収納する筒状部が樹脂からなる樹脂部分とを、一体化した請求項6に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−103025(P2010−103025A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−275066(P2008−275066)
【出願日】平成20年10月27日(2008.10.27)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】