説明

摺動部材およびその製造方法

【課題】基材表面に、非晶質炭素被膜を被覆し、これを高面圧下でかつ摺動頻度の高い摺動部材として使用したとしても、その表面の非晶質炭素被膜の摩耗を抑制することができる摺動部材の製造方法を提供することにある。
【解決手段】基材10の表面に、非晶質炭素被膜20が形成された摺動部材1であって、非晶質炭素被膜20には、Biからなるクラスター21が分散している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非晶質炭素被膜を被覆した摺動部材に係り、特に、耐摩耗性に優れた摺動部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車において、エンジン、トランスミッションなど様々な機器に摺動部材が用いられている。そこでは、摺動部材の摺動抵抗を低減してエネルギ損失を減らし、地球環境の保護のための今後の燃費規制に対応すべく、様々な研究開発が進められている。
【0003】
例えば、このような研究開発の1つに、構造用鋼または高合金鋼からなる摺動部材の耐摩耗性を向上させると共に低摩擦特性を得るために、その摺動面にコーティングを行う技術がある。近年、このコーティング材料として、ナノダイヤモンド粒子ライクカーボン(DLC)などの非晶質炭素材料が注目されている。この非晶質炭素材料が形成された被膜(非晶質炭素被膜)は、炭素を主成分とする硬質の被膜であり、該硬質の被膜の炭素は固体潤滑剤としても作用するので、低い摺動抵抗と高い耐摩耗性とを両立できる被膜である。
【0004】
たとえば、このような技術として、非晶質炭素被膜に、Ag,Mg,In,Sn等の金属を含有させた摺動部材が提案されている(例えば特許文献1参照)。また、別の技術として、非晶質炭素被膜を被覆した第1摺動部材と、鉄系金属からなる第2摺動部材とを組み合わせたものが提案されている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−177313号公報
【特許文献2】特開2004−176848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の摺動部材を、潤滑油中で相手部材に対して、繰り返し摺動した場合、その摺動面において著しい摩耗が生じることがあった。特に、内燃機関用のシリンダボアとピストンリング、燃料噴射弁を構成するシリンダとピストンなどに適用した場合、これらの部材は他の部材に比べて小型化、高面圧化となっており、さらには各種燃料の使用等により、摺動部材と相手部材との間に油膜切れが起こり易く、その結果、双方に著しい摩耗が生じることがあった。
【0007】
そして、近年、自動車エンジン部品の高出力化および高回転化による高性能化が著しくなり、上述したエンジンで使用される摺動部材においては、例えば特許文献2の如く、摺動部材の基材表面に、単に非晶質炭素被膜を被覆しただけでは、充分な摺動特性を得ることができないことがあった。
【0008】
本発明は、このような点を鑑みて、その目的とすることころは、基材表面に、非晶質炭素被膜を被覆し、これを高面圧下でかつ摺動頻度の高い摺動部材として使用したとしても、その表面の非晶質炭素被膜の摩耗を抑制することができる、摺動部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者らは鋭意検討を重ねた結果、以下の知見を得た。具体的には、特許文献1に記載の技術では、非晶質炭素被膜に、Ag,Mg,In,Sn等の金属を添加しているが、この技術は、これらの金属が摺動部材に一般的に用いられる金属材料と相溶しにくい特性を考慮したものである。この結果、これらの金属元素を含む非晶質炭素被膜と相手部材とが摺動する場合に、凝着が生じにくくなる。すなわち、これらの金属を用いた場合には、相手部材との凝着摩耗を抑制することができる。
【0010】
しかしながら、上述したように、これまでよりも高い負荷が摺動面に作用した場合には、このような特性だけでは十分とはいえず、発明者は、非晶質炭素被膜と相手部材との表面の滑動性および非晶質炭素被膜の強度をより高めることが望ましいと考えた。そこで、発明者は、上述した金属よりも、より延性・展性があり、非晶質炭素被膜に含有してもこの被膜の強度低下が抑制される元素として、Bi(ビスマス)に着眼した。そして、このBiをクラスターにして、非晶質炭素被膜に含有させることにより、これまで同程度の非晶質炭素被膜の強度を確保しつつ、摺動時には、このBiが非晶質炭素被膜の表面に延在し、これにより、摺動部材の耐摩耗性を画期的に向上させることができるとの新たな知見を得た。
【0011】
本発明は、発明者の新たな知見に基づくものであり、本発明に係る摺動部材は、基材の表面に、非晶質炭素被膜が形成された摺動部材であって、前記非晶質炭素被膜には、Biからなるクラスターが分散していることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、非晶質炭素被膜には、Biからなるクラスター(すなわち粒子)が分散しているので、非晶質炭素被膜が形成された面を摺動面として、相対的に相手部材を摺動させると、非晶質炭素被膜の表面に、低せん断性を有したBi薄膜が形成される。このBi薄膜により、摺動部材と相手部材とのせん断抵抗を低減し、摺動部材の耐摩耗性を向上させ、摩擦係数を下げることができる。
【0013】
そして、このように、摺動時に、耐摩耗性を向上させ、さらには、摩擦係数を下げるように、Biからなる被膜が非晶質炭素被膜の表面に形成されるのであれば、特に、Biの含有量は、限定されるものではない。しかしながら、前記非晶質炭素被膜に対して、Biは0.5〜20at%(原子%)含有していることがより好ましい。
【0014】
本発明によれば、このような範囲となるようにBiを含有されることにより、摺動時に非晶質炭素被膜の表面にBiの薄膜が形成され、より確実に、摺動部材の耐摩耗性を向上させ、摩擦係数を下げることができる。
【0015】
すなわち、Biの含有量が20at%を超えた場合には、非晶質炭素被膜の硬度が低下するおそれがあり、これにより、摺動部材の摺動特性が低下する。一方、Biの含有量が0.5at%未満である場合には、Biによる摺動特性の向上は、十分でないことがある。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、基材表面に、非晶質炭素被膜を被覆し、これを高面圧下でかつ摺動頻度の高い摺動部材として使用したとしても、その表面の非晶質炭素被膜の摩耗を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る摺動部材の模式的概念図。
【図2】実施例1、比較例1、および比較例2に係る摺動部材の摩耗試験の結果を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の本発明の実施形態を説明する。図1は、本発明の実施形態に係る摺動部材の模式的概念図である。
【0019】
まず、図1に示すように、摺動部材の基材10を準備する。基材10としては、例えば、炭素鋼(JIS:S45C、S30Cなど)、クロム鋼、クロムモリブデン鋼などの合金鋼(JIS規格:SCr、SCMなど)、合金工具鋼(JIS規格:SKS,SKDなど)、ステンレス鋼、軸受鋼、バネ鋼などの特殊用途鋼(JIS規格:SUS、SUJ、SUPなど)、または鋳鉄の鉄系基材を挙げることができる。しかしながら、後述する非晶質炭素被膜20との密着性を確保することができるのであれば、これらの金属材料に限定されるものではなく、例えば、アルミニウム、Cu,Mg,Zn等を含むアルミニウム合金、銅、または、Zn,Al,Sn等を含む銅合金などの金属材料を挙げることができる。
【0020】
次に、基材10の表面に非晶質炭素被膜20を被覆する。具体的には、基材10を、スパッタリング、真空蒸着、イオン化蒸着、イオンプレーティング、などを利用した物理的蒸着法(PVD)により成膜する。
【0021】
より具体的に、スパッタリング法による成膜を例示すると、カーボンターゲットと、Biターゲットを準備し、これらのターゲットに対して、同時にアルゴン等の不活性ガスを電界で加速し照射する。
【0022】
これにより、カーボンターゲットおよびBiターゲットの表面の原子または分子を放電させ、これらを物理的作用により蒸気化することにより、基材10の表面に非晶質炭素被膜20を成膜する。このようにして、Biからなるクラスター21すなわちBi粒子を内部に分散した非晶質炭素被膜20が、基材10の表面に被覆された摺動部材1を得ることができる。
【0023】
摺動部材1の非晶質炭素被膜20には、Biからなるクラスター(Bi粒子)21が分散しているので、非晶質炭素被膜20が形成された面を摺動面として、相対的に相手部材を摺動させると、非晶質炭素被膜20の表面に、低せん断性を有したBi薄膜が形成される。このBi薄膜により、摺動部材1と相手部材とのせん断抵抗を低減し、摺動部材1の耐摩耗性を向上させ、摩擦係数を下げることができる。
【0024】
本実施形態では、非晶質炭素被膜20に対して、Biをクラスターの状態で0.5〜20at%(原子%)含有させる。スパッタリング法で成膜する場合には、Biターゲットに対するターゲット電力(電圧×電流)を調整することにより、このような範囲でBiを含有させることができる。
【0025】
そして、0.5〜20at%の範囲となるように、非晶質炭素被膜20に対してBiを含有させることにより、摺動時に非晶質炭素被膜20の表面にBi薄膜が形成され、より確実に、摺動部材の耐摩耗性を向上させ、摩擦係数を下げることができる。
【0026】
すなわち、Biの含有量が20at%を超えた場合には、非晶質炭素被膜20の硬度が低下するおそれがあり、これにより、摺動部材1の摺動特性が低下する。一方、Biの含有量が、0.5at%未満である場合には、Biによる摺動部材1の摺動特性の向上が十分でないことがある。非晶質炭素被膜20に対して、Biをクラスターの状態で1.0at%以上であることがより好ましい。
【0027】
また、Biからなるクラスターの大きさは、200nm以下であることが好ましい。200nmを超えた場合には、非晶質炭素被膜20の硬度が低下し、この結果、この強度が低下する。
【0028】
また、非晶質炭素被膜20の成膜する際に、上述した不活性ガスと共に、例えば、メタンガス、アセチレンガスなどの炭化水素ガスを導入し、放電により炭化水素ガスを分解し、水素を含有する非晶質炭素被膜20を成膜してもよい。
【0029】
これにより、非晶質炭素被膜20には、Biからなるクラスター21に加えて、水素原子を含むので、得られた摺動部材は、さらなる低摩擦特性を発現することができる。ここで、非晶質炭素被膜20に対する水素の含有量としては、0at%を超え、35at%以下であることが好ましく、水素の含有量が、35at%を超えた場合には、非晶質炭素被膜20の強度が低下するおそれがある。
【0030】
したがって、このような効果をより効率的に発現するためには、非晶質炭素被膜20に対する水素の含有量は、5〜25at%であることがより好ましい。このような範囲の水素を含有することにより、摺動部材のさらなる低摩擦特性を発現すると共に、非晶質炭素被膜の強度を確保することができる。
【実施例】
【0031】
以下に本発明を実施例により説明する。
【0032】
(実施例1)
摺動部材の基材として、ステンレス鋼(JIS規格:SUS440C、焼き入れ品、表面硬さHv500)の棒材より、16mm×6mm×10mmのサイコロ試験片(表面粗さRa0.1μm)を準備した。次に、アンバランスドマグネトロンスパッタリング法により、このサイコロ試験片の16mm×6mmを構成する表面に、Biからなるクラスターが分散した非晶質炭素被膜を成膜した。
【0033】
具体的には、グラファイトターゲットとBiターゲットを用い、処理室内に基材(サイコロ試験片)を配置し、基材温度を100℃にした。次に、反応ガスとしてArにCH(メタン)5体積%含有したガスを処理室内に流すと共に、グラファイトターゲット側のバイアス電圧を100V印加し、Biターゲット側のバイアス電圧を80V印加した。
【0034】
これにより、基材表面に1.5μmの膜厚の非晶質炭素被膜を被覆し、本発明に相当する摺動部材を得た。なお、得られた非晶質炭素被膜の表面粗さは、Ra0.12μm、表面硬さは、Hv2000、Bi含有量は、5at%、Biからなるクラスターの大きさは、50nm、水素含有量は、10at%であった。
【0035】
(比較例1)
実施例1と同様に摺動部材を作製した。実施例1と相違する点は、Biターゲットを用いていない点である。すなわち、比較例1の場合、16mm×6mm×10mmのサイコロ試験片(JIS規格:SUS440C、焼き入れ品、表面硬さHv500、表面粗さRa0.1μm)の16mm×6mmを構成する表面に、実施例1と同じ条件で、アンバランスドマグネトロンスパッタリング法により、カーボンターゲットのみを用いて、Biを含有しない非晶質炭素被膜を被覆した。
【0036】
これにより、基材表面に1.5μmの膜厚の非晶質炭素被膜を被覆した摺動部材を得た。なお、得られた非晶質炭素被膜の表面粗さは、Ra0.12μm、表面硬さは、Hv2100、水素含有量は、10at%であった。
【0037】
(比較例2)
実施例1と同様に摺動部材を作製した。実施例1と相違する点は、Biターゲットの代わりに、Auターゲットを用いた点である。すなわち、比較例2の場合、16mm×6mm×10mmのサイコロ試験片(JIS規格:SUS440C、焼き入れ品、表面硬さHv500、表面粗さRa0.1μm)の16mm×6mmを構成する表面に、実施例1と同じ条件で、アンバランスドマグネトロンスパッタリング法により、カーボンターゲットおよびAuターゲットを用いて、Auをクラスターの形態で含有した非晶質炭素被膜を被覆した。
【0038】
これにより、基材表面に1.5μmの膜厚の非晶質炭素被膜を被覆した摺動部材を得た。なお、得られた非晶質炭素被膜の表面粗さは、Ra0.12μm、Au含有量は、5at%、Auからなるクラスターの大きさは、80nm、水素含有量は、15at%であった。
【0039】
<摩耗試験>
実施例1、比較例1、および比較例1の摺動部材の相手部材として、ステンレス鋼(JIS規格:SUS440C)を用いて、外径35mm、内径30mm、幅10mmの円筒試験片を作製した。得られた円筒試験片の周面の表面粗さは、Ra0.20μm、表面硬さは、Hv380であった。
【0040】
そして、それぞれの実施例、比較例1、および比較例2の摺動部材(サイコロ試験片)の16mm×6mmの表面(すなわち、非晶質炭素被膜が被覆された表面)と、円筒試験片の外周面を接触させ、潤滑油(SAE5W−30)を供給しながら、荷重60kgf、回転数160rpmの条件で、円筒試験片を30分間回転させる摩耗試験を行った。この結果を図2に示す。図2に示す、摺動部材に相当するサイコロ試験片の摩耗量は、摩耗痕深さであり、円筒試験片の摩耗量は摩耗重量である。
【0041】
〔結果1および考察〕
図2に示すように、実施例1の場合、サイコロ試験片(摺動部材)および円筒試験片(相手部材)のいずれの摩耗量も、比較例1のものに比べて少なかった。このような結果となったのは、実施例1の摺動部材は、非晶質炭素被膜にBiからなるクラスターが分散して含まれていたからであると考えられる。すなわち、実施例1の場合には、非晶質炭素被膜に、Biからなるクラスター(Bi粒子)が分散しているので、摺動時に、非晶質炭素被膜の表面に、極薄い低せん断性を有したBi薄膜が形成されていた。これにより、摺動部材と相手部材とのせん断抵抗を低減し、比較例1に比べての耐摩耗性を向上させ、摩擦係数を下げることができたと考えられる。
【0042】
また、実施例1のサイコロ試験片(摺動部材)の摩耗量は、比較例2のものよりも少なかった。このような結果となったのは、比較例2の摺動部材には、非晶質炭素被膜にAuからなるクラスターが分散して含まれているが、Auを用いた場合には、Biを用いた場合に比べて、非晶質炭素被膜の表面硬さが低くなる。この結果、比較例2の摺動部材は、実施例1のものに比べて、摩耗量が多くなったと考えられる。以上のことから、摺動部材の摺動特性を向上させるべく非晶質炭素被膜に、クラスターとして含有させる元素は、Biが最適であると考えられる。
【0043】
(実施例2)
実施例1と同様に摺動部材を作製した。実施例1と相違する点は、非晶質炭素被膜に対してBiを含有する量を、以下の表1に示すように変化させた点である。具体的には、非晶質炭素被膜を成膜する際に、Biターゲットに印加する電圧を変化させることにより、Biの含有量を変化させた。そして、実施例1と同様に摩耗試験を行った。この結果を表1に示す。なお、表1に示す摩擦係数の値は、摩耗試験開始30分直後の摩擦係数の値である。また、表1には、Biクラスターを含有していない(Bi含有量:0at%)摺動部材(比較例1相当の摺動部材)の摩擦試験の結果も合わせて示した。
【0044】
(比較例3)
実施例2と同様に摺動部材を作製した。実施例2と相違する点は、比較例2と同様にAuターゲットを用いた点と、非晶質炭素被膜に対してAuを含有する量を、以下の表1に示すように変化させた点である。具体的には、非晶質炭素被膜を成膜する際に、Auターゲットに印加する電圧を変化させることにより、Auの含有量を変化させた。そして、実施例2と同様に摩耗試験を行った。この結果を表1に示す。なお、表1には、Auクラスターを含有していない(Au含有量:0at%)摺動部材(比較例1相当の摺動部材)の摩擦試験の結果も合わせて示した。
【0045】
【表1】

【0046】
〔結果2および考察〕
表1に示すように、実施例2のサイコロ試験片(摺動部材)は、比較例3のものに比べて、摩耗量が少なく、摩擦係数も低いことがわかった。これは、結果1の考察で示した理由と同じ理由であると考えられる。さらに、Biをクラスターの状態で、非晶質炭素被膜に含有することにより、サイコロ試験片の摩耗量および円筒試験片の摩耗量が低減され、摩擦係数も低くなっていることがわかる。
【0047】
そして、表1からも明らかなように、非晶質炭素被膜に対して、Biをクラスターの状態で0.5〜20at%含有させた場合には、サイコロ試験片の摩耗量および円筒試験片の摩耗量がさらに低減され、摩擦係数もさらに低くなると考えられる。
【0048】
これは、Biの含有量が20at%を超えた場合には、非晶質炭素被膜の硬度が低下してしまい、これにより、サイコロ試験片の摩耗量の摩耗量が増加したと考えられる。この結果、相手部材である円筒試験片の摩耗量も増加し、この結果、摩擦係数が増加したと考えられる。
【0049】
一方、含有量が、Biの含有量が、0.5at%未満である場合には、Biのクラスターにより、Bi被膜の形成が十分でない場合もあり、これにより、サイコロ試験片の摩耗量および円筒試験片の摩耗量が増加したと考えられる。この結果、摩擦係数が増加したと考えられる。
【0050】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
【符号の説明】
【0051】
1:摺動部材、10:基材、20:非晶質炭素被膜、21:クラスター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面に、非晶質炭素被膜が形成された摺動部材であって、
前記非晶質炭素被膜には、Biからなるクラスターが分散していることを特徴とする摺動部材。
【請求項2】
前記非晶質炭素被膜に対して、Biが0.5〜20at%含有していることを特徴とする請求項1に記載の摺動部材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−82957(P2013−82957A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222170(P2011−222170)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】