説明

摺動部材

【課題】製造コストを抑え、耐摩耗性、耐スカッフ性及び耐剥離性に優れたCr−B−Si−N合金皮膜が形成された摺動部材の提供。
【解決手段】ピストンリング1は、母材2と、窒化層3と、Cr−B−Si−N合金皮膜4とから構成されている。母材1は、Fe系又はAl系の合金、又はTi系合金である。窒化層3は、公知の窒化処理によって母材1の表面層に窒素を拡散させることにより形成されている。Cr−B−Si−N合金皮膜4は、PVD(物理的蒸着)法によって窒化層3の外周摺動面(摺動面相当部)に被覆されている。Cr−B−Si−N合金皮膜4は、Bを0.05〜10.0質量%、Siを0.05〜10.0質量%、Nを10.0〜30.0質量%含有し、残部がCrである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摺動部材に関し、特に摺動面相当部にCr−B−Si−N合金皮膜が形成された摺動部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エンジン部品、各種機械部品の摺動部には、摺動特性に優れた皮膜を施した摺動材料が使用されている。ピストンリング等の摺動部材の摺動面には、耐久性を改善するため耐摩耗性等の摺動特性の向上を目的とした硬質クロムめっき、窒化処理、PVD(物理蒸着)法で形成された窒化クロム(CrN)及び窒化チタン(TiN)等の表面処理が施されている。耐剥離性(靭性)、耐摩耗性及び耐スカッフ性を向上させることを目的としてPVD法の1つであるイオンプレーティング法によるCr−B−N合金皮膜(B含有量が0.05〜20.0質量%)が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、耐摩耗性及び耐スカッフ性を向上させるCr−N系合金皮膜としてイオンプレーティング法によるCr−Si−N合金皮膜(Cr:Si:N=1:0.05〜1.2:0.1〜1.2(原子比))が提案されている(例えば、特許文献2参照)。これらの合金皮膜は、ピストンリング以外の機械部品やエンジン部品等にも利用されている。
【0003】
【特許文献1】特開2000−1766号公報
【特許文献2】特開平5−195196号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、近年の環境対策等の観点から内燃機関の高出力化の要求が高まってきている。これに伴いピストンリング等の摺動部品が使用される環境が更に苛酷になってきている。このため、従来の合金皮膜であっても摺動特性が十分とはいえない状況となっており、さらに摺動特性の優れた合金皮膜が形成された摺動部材の開発が要求されている。
【0005】
また、従来のCr−B−N合金皮膜では、20.0質量%のBを含有する場合がある。このような合金皮膜をイオンプレーティング法により形成する場合には、ターゲット合金にB量を多く含有させることが必要である。しかしB量を多く含有するターゲット合金は脆く割れ易い。更に、B量を多く含有するターゲット合金を用いると、製造コストが高くなるという問題がある。また、従来のCr−Si−N合金皮膜においては多量のSiを含有する場合があり、ターゲット合金にSi量を多く含有させることが必要である。しかし、Bを多く含有する場合と同様にイオンプレーティング法においてSi量を多く含有するターゲット合金は脆く割れ易い。更に、Si量を多く含有するターゲット合金を用いると、製造コストが高くなるという問題がある。
【0006】
そこで本発明は、製造コストを抑え、耐摩耗性、耐スカッフ性及び耐剥離性に優れたCr−B−Si−N合金皮膜が形成された摺動部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、母材の摺動面相当部に物理蒸着法によって形成されるCr−B−Si−N合金皮膜が被覆された摺動部材であって、該Cr−B−Si−N合金皮膜は、Bを0.05〜10.0質量%、Siを0.05〜10.0質量%、Nを10.0〜30.0質量%含有し、残部がCrからなる摺動部材を提供している。
【0008】
ここで、該母材の少なくとも摺動面相当部に窒化層が形成され、該窒化層上にCr−B−Si−N合金皮膜が被覆されていることが好ましい。
【0009】
また、本発明は、上述のCr−B−Si−N合金皮膜を被覆したピストンリングを提供している。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の摺動部材又は請求項3記載のピストンリングによれば、Cr−B−Si−N合金皮膜は、Bを0.05〜10.0質量%、Siを0.05〜10.0質量%、Nを10.0〜30.0質量%含有している。かかる構成によれば、B及びSiの含有量が多くとも10.0質量%であるので、B及びSiを含有するターゲット合金を使用する必要がない。従って、摺動部材又はピストンリングの製造コストが高くなるのを抑えることができる。また耐摩耗性、耐スカッフ性及び耐剥離性に優れたCr−B−Si−N合金皮膜が形成された摺動部材又はピストンリングを提供することができる。
【0011】
請求項2記載の摺動部材によれば、母材の少なくとも摺動面相当部に窒化層が形成され、窒化層上に該Cr−B−Si−N合金皮膜が被覆されているので、摺動部材又はピストンリング全体の強度を向上させることができ、耐折損性が良好となる。またピストンリングの外周摺動面に直交する上下面に窒化層を形成すれば、ピストンリング自体の摩耗を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の摺動部材をピストンリングに適用した実施の形態ついて図1を参照して説明する。図1は、ピストンリング1のその円周方向に直交する断面図を示している。ピストンリング1は、母材2と、窒化層3と、Cr−B−Si−N合金皮膜4とから構成されている。母材2は、Fe系又はAl系の合金、又はTi系合金である。窒化層3は、公知の窒化処理によって母材2の表面層に窒素を拡散させることにより形成され、硬質である。窒化層3を形成することにより、ピストンリング1全体の強度を向上させることができ、耐折損性が良好となる。またピストンリング1の外周摺動面に直交する上面5及び下面6に窒化層3を形成することにより、ピストンリング1自体の摩耗を防止することができる。
【0013】
Cr−B−Si−N合金皮膜4は、PVD(物理的蒸着)法によって窒化層3の外周摺動面(摺動面相当部)に被覆されている。PVD法としては、イオンプレーティング法、真空蒸着法、スパッタリング法等があり、本実施の形態においては、イオンプレーティング法の一つであるアークイオンプレーティング法を用いている。アークイオンプレーティング法は蒸気のイオン化率が高く、ち密で密着性に優れた皮膜を得ることができる。Cr−B−Si−N合金皮膜4は、Cr−B合金ターゲットとCr−Si合金ターゲットとを互いに対向するようにセットし、窒素ガス雰囲気中で、アーク電流を流しCr、B及びSiをイオン化させ、窒化層3を備えた母材2を回転させることにより、窒化層3の外周摺動面に形成される。このときCr−B−Si−N合金皮膜4の膜厚は、1〜70μmである。また、Cr−B−Si−N合金皮膜4のビッカース硬さは1300HV0.05〜1900HV0.05であり、より好ましくは1400HV0.05〜1800HV0.05である。
【0014】
Cr−B−Si−N合金皮膜4は、Bを0.05〜10.0質量%、Siを0.05〜10.0質量%、Nを10.0〜30.0質量%含有し、残部がCrである。Bが0.05質量%未満の場合には、Cr−B−Si−N合金皮膜4の耐剥離性、耐摩耗性、耐スカッフ性が向上せず、10.0質量%を超えるとCr−B−Si−N合金皮膜4の耐剥離性が低下し、ピストンリング1の製造コストが高くなる。
【0015】
Siが0.05質量%未満の場合には、従来の皮膜よりも優れたCr−B−Si−N合金皮膜4の耐摩耗性が得られず、10.0質量%を超えると脆化し欠け等が発生する恐れがあり、かつピストンリング1の製造コストが高くなる。Nが10.0質量%未満の場合には、従来の皮膜よりも優れたCr−B−Si−N合金皮膜の耐摩耗性が得られず、30.0質量%を超えると耐摩耗性が悪くなる。よって、B、Si及びNを上述の質量%で含有することにより、耐摩耗性、耐スカッフ性、耐剥離性を向上させた合金皮膜を得ることができる。
【0016】
本実施の形態によるCr−B−Si−N合金皮膜4の効果を試す性能試験を行った。表1に示す実施例1−30、従来例1−7、及び比較例1−68の組成を有するCr−N系合金について、耐摩耗性、耐スカッフ性及び耐剥離性の試験を行った。実施例1−30は、本実施の形態の範囲内の量のB、Si及びNを含有するCr−B−Si−N合金である。従来例1−3はCr−B−N合金、従来例4−7はCr−Si−N合金である。更に比較例1−68は本実施の形態の範囲外の量のB、Si又はNの少なくとも一つを含有するCr−B−Si−N合金である。
【表1】



【0017】
次に、耐摩耗性試験及び耐スカッフ性試験に用いたテストピースの作製方法について説明する。まず、7mm×8mm×5mmの鋼板平板(母材2に相当)の片面をラッピングし、1μm以下の表面粗さに仕上げた。次に平板を有機溶剤液中で超音波洗浄を行い、ガス窒化(550℃で2時間保持)で窒化層(窒化層3に相当)を拡散層を含め80μm形成させ、白層を除去した。次に以下に説明する方法で、実施例1−30のCr−B−Si−N合金皮膜、従来例1−7のCr−B−N合金皮膜及びCr−Si−N合金皮膜、比較例1−68のCr−B−Si−N合金皮膜を窒化層上にそれぞれ20μm形成した。
【0018】
実施例1−30のCr−B−Si−N合金皮膜の形成方法について説明する。まず、上記の窒化層が形成された試料をアークイオンプレーティング装置のチャンバ内に取り付け、その後チャンバ内を5×10−3Torrまで減圧した。次にチャンバ内に内蔵されたヒータにより、試料表面に付着あるいは吸着しているガスを放出させた。次に試料を挟んで互いに対向するように配置されたCr−B合金ターゲットとCr−Si合金ターゲットとの表面にアーク放電を発生させ、Cr、B及びSiのイオンを放出させた。
【0019】
次に、試料に−800Vを印加して試料表面をスパッタクリーニング(イオンボンバード)した。その後、アーク放電が発生しているチャンバ中に窒素ガスを導入し、試料を回転させかつ試料に−10Vのバイアスを印加して試料表面にCr−B−Si−N合金皮膜を形成した。Cr−B合金ターゲットとCr−Si合金ターゲットは、組成を変えることにより、Cr−B−Si−N合金皮膜中のB及びSiの含有量を変化させることができる。これにより表1の実施例1−30に示す量のB、Si及びNを含有するCr−B−Si−N合金皮膜を形成し、テストピース(図2に示すテストピース11に相当する)を作製した。
【0020】
次に従来例1−3のCr−B−N合金皮膜の形成方法について説明する。まず、上記の窒化層が形成された試料をアークイオンプレーティング装置のチャンバ内に取り付け、その後チャンバ内を5×10−3Torrまで減圧した。次にチャンバ内に内蔵されたヒータにより、試料表面に付着あるいは吸着しているガスを放出させた。次にCr−B合金ターゲットとの表面にアーク放電を発生させ、Cr及びBのイオンを放出させた。
【0021】
次に、試料に−800Vを印加して試料表面をスパッタクリーニング(イオンボンバード)した。その後、アーク放電が発生しているチャンバ中に窒素ガスを導入し、試料を回転させかつ試料に−10Vのバイアスを印加して試料表面にCr−B−N合金皮膜を形成した。Cr−B合金ターゲットの組成を変えることにより、Cr−B−N合金皮膜中のBの含有量を変化させることができる。これにより、表1の従来例1−3に示す量のB及びNを含有するCr−B−N合金皮膜を形成し、テストピース(図2に示すテストピース11に相当する)を作製した。
【0022】
次に従来例4−7のCr−Si−N合金皮膜の形成方法について説明する。まず、上記の窒化層が形成された試料をアークイオンプレーティング装置のチャンバ内に取り付け、その後チャンバ内を5×10−3Torrまで減圧した。次にチャンバ内に内蔵されたヒータにより、試料表面に付着あるいは吸着しているガスを放出させた。次にCr−Si合金ターゲットとの表面にアーク放電を発生させ、Cr及びSiのイオンを放出させた。
【0023】
次に、試料に−800Vを印加して試料表面をスパッタクリーニング(イオンボンバード)した。その後、アーク放電が発生しているチャンバ中に窒素ガスを導入し、試料を回転させかつ試料に−10Vのバイアスを印加して試料表面にCr−Si−N合金皮膜を形成した。Cr−Si合金ターゲットの組成を変えることにより、Cr−Si−N合金皮膜中のSiの含有量を変化させることができる。これにより、表1の従来例4−7に示す量のB及びNを含有するCr−Si−N合金皮膜を形成し、テストピース(図2に示すテストピース11に相当する)を作製した。
【0024】
表1の比較例1−68に示す量のB、Si及びNを含有するCr−B−Si−N合金皮膜は、実施例1−30のCr−B−Si−N合金皮膜の形成方法において、組成の異なるCr−B合金ターゲット及びCr−Si合金ターゲットとを用いて形成し、テストピース(図2に示すテストピース11に相当する)を作製した。
【0025】
次に、耐摩耗性試験、耐スカッフ性試験及び耐剥離性試験について説明する。耐摩耗性試験には、図2に示すアムスラー型試験機10を用いた。ピストンリング1に相当する上記の方法により作製した実施例1−30、従来例1−7及び比較例1−68の合金皮膜を形成したテストピース11(寸法7mm×8mm×5mm)を固定片とし、シリンダライナに相当する相手材12(回転片)にはドーナツ状の(外径40mm、内径16mm、軸方向の厚さ10mm)のものを用いた。
【0026】
試験機10の図示せぬ容器には潤滑油13を溜め、潤滑油13に相手材12を部分的に浸して一定速度で回転させ、相手材12の外周面にテストピース11を接触させかつ荷重Pを負荷した。そして、一定時間経過後にテストピース11の摩耗量を測定した。摩耗量の測定は、粗さ計による段差プロフィールで摩耗量(μm)を測定した。耐摩耗性試験の試験条件は以下に示すとおりである。
試験条件
試験機:アムスラー型試験機 相手材:ボロン鋳鉄
潤滑油:1号スピンドル油相当品 油温:80℃
周速:1.0m/s 荷重:150kgf
時間:7時間
【0027】
耐摩耗性試験の結果を表1に示している。表1の摩耗指数は、従来例1のテストピース11の摩耗量を100とし、従来例1のテストピース11の摩耗量に対する各テストピース11の摩耗量を相対比として算出することにより求めた。従って、各テストピース11の摩耗指数が100より小さいほど摩耗量が少なく、耐摩耗性に優れていることを表している。
【0028】
次に、耐スカッフ性試験について説明する。耐スカッフ性試験は、耐摩耗性試験と同様のアムスラー試験機10を用いて行った。耐スカッフ性試験の試験方法は、耐摩耗性試験とほぼ同様であり、テストピース11に負荷する荷重をスカッフが発生するまで順次増加させていく点において異なる。そして、テストピース11がスカッフを発生する限界荷重を測定した。耐スカッフ性試験の試験条件は以下に示すとおりである。
試験条件
試験機:アムスラー型試験機 相手材:ボロン鋳鉄
潤滑油:1号スピンドル油相当品を塗布 周速:1.0m/s
【0029】
耐スカッフ性試験の結果を表1に示している。表1の耐スカッフ指数は、従来例1のテストピース11のスカッフ限界荷重を100とし、従来例1に対する各テストピース11のスカッフ限界荷重を相対比として算出することにより求めた。従って、各テストピース11の耐スカッフ指数が100より大きいほどスカッフ限界荷重が大きくなり、耐スカッフ性に優れていることを表している。
【0030】
次に、耐剥離性試験について説明する。耐剥離性試験には、図3(a)、図3(b)に示すNPR式衝撃試験機20(特公昭36−19046号)の改良試験機を用いた。本実施の形態によるピストンリング1を当て金21上に置いて、突子22の下端に設けられた圧子23をピストンリング1の外周摺動面に衝突させた(図3(b))。一回当たりの圧子23のストロークは1.5mmとし、衝突エネルギーは43.1mJ(4.4kgf・mm)とした。そして、ピストンリング1のCr−B−Si−N合金皮膜4(図1)が剥離するまで圧子23を衝突させ、衝突の回数を測定した。剥離の有無は、ピストンリング1の外周面を1.5倍に拡大して観察し評価した。また、本実施の形態によるピストンリング1以外に、従来例1−7及び比較例1−68の合金皮膜を形成したピストンリングについても同様に耐剥離性試験を行った。
【0031】
耐剥離性試験の結果を表1に示している。表1の耐剥離指数は、従来例1の合金皮膜を形成したピストンリングに剥離が生じるまでの圧子23の衝突回数を100とし、従来例1に対する実施例1−30、従来例2−7及び比較例1−68の合金皮膜を形成したピストンリングに剥離が生じるまで圧子23の衝突回数を相対比として算出することにより求めた。従って、各ピストンリングの耐剥離指数が100より大きいほど圧子23の衝突回数が多くなり、耐剥離性に優れていることを表している。
【0032】
表1から明らかなように、従来例2−7及び比較例1−68の摩耗指数、耐スカッフ指数及び耐剥離指数の少なくとも一つは、従来例1よりも劣っており、実施例1−30は摩耗指数、耐スカッフ指数及び耐剥離指数の全てにおいて、従来例1よりも優れていることが分かる。よって、図1の窒化層3の外周摺動面に、Cr−B−Si−N合金皮膜4を形成することによって、耐摩耗性、耐スカッフ性および耐剥離性に優れたピストンリング1を提供することができる。
【0033】
次に、実施例10、22、28とほぼ同様の組成を有し、ピストンリング1の変形例である図4のピストンリング101のように、窒化層を形成せずに母材2の外周摺動面に直接Cr−B−Si−N合金皮膜4を形成させた実施例31、32、33についても上記と同様の耐剥離性試験を行った。その結果を表2に示す。
【表2】

【0034】
表2から明らかなように、剥離性に関して、窒化層を形成していない(図4)実施例31、32、33においても、従来例1よりも優れていることが分かる。また、ピストンリング外周摺動面に窒化層を形成している(図1)実施例10、22、28の方が、窒化層を形成していない(図4)実施例31、32、33よりも優れていることが分かる。よって、図1の窒化層の外周摺動面にCr−B−Si−N合金皮膜4を形成することによって、耐剥離性に優れたピストンリングを提供することができる。
【0035】
本発明による摺動部材は、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。例えば、図1のピストンリング1は、窒化層3の外周摺動面にCr−B−Si−N合金皮膜4を形成したが、窒化層3を形成した後にピストンリング1の外周摺動面側の窒化層3を研削して、図5のピストンリング201に示すような窒化層203にして、母材2に直接Cr−B−Si−N合金皮膜4を形成しても良い。
【0036】
また、本実施の形態において摺動部材をピストンリングに適用したが、これに限られずカムシャフト、シリンダライナ、自動車部品及びコンプレッサ部品であっても良い。またCr−B−Si−N合金皮膜4は、イオンプレーティング法により形成したが、真空蒸着法、スパッタリング法であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施の形態によるピストンリングの円周方向に直交する要部断面図。
【図2】本発明の実施の形態によるCr−B−Si−N合金皮膜の効果を試す試験を行うためのアムスラー型試験機を示す概略図。
【図3(a)】本発明の実施の形態によるCr−B−Si−N合金皮膜の耐剥離性試験を行うためのNPR式衝撃試験機の改良試験機を示す概略図。
【図3(b)】図3(a)における圧子をピストンリングに衝突させた状態を示す図。
【図4】本発明の実施の形態によるピストンリングの変形例を示す要部断面図。
【図5】本発明の実施の形態によるピストンリングの他の変形例を示す要部断面図。
【符号の説明】
【0038】
1 ピストンリング
2 母材
3 窒化層
4 Cr−B−Si−N合金皮膜
5 上面
6 下面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
母材の摺動面相当部に物理蒸着法によって形成されるCr−B−Si−N合金皮膜が被覆された摺動部材であって、
該Cr−B−Si−N合金皮膜は、Bを0.05〜10.0質量%、Siを0.05〜10.0質量%、Nを10.0〜30.0質量%含有し、残部がCrからなることを特徴とする摺動部材。
【請求項2】
該母材の少なくとも摺動面相当部に窒化層が形成され、該窒化層上にCr−B−Si−N合金皮膜が被覆されていることを特徴とする請求項1に記載の摺動部材。
【請求項3】
該Cr−B−Si−N合金皮膜が被覆された摺動部材は、ピストンリングであることを特徴とする請求項1乃至2に記載の摺動部材。

【図1】
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【図2】
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【図3(a)】
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【図3(b)】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−206978(P2006−206978A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−22296(P2005−22296)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【出願人】(390022806)日本ピストンリング株式会社 (137)
【Fターム(参考)】