Array ( [harmful] => 0 [next] => Array ( [id] => A,2008-95726 [meishou] => 温度感応型流体式カップリング装置 ) [prev] => Array ( [id] => A,2008-95724 [meishou] => フェースギア及びこれを用いたデファレンシャル装置 ) ) 摺動部材

摺動部材

【課題】Al系及びCu系軸受合金表面に施される固体潤滑コーティング層の特性を十分に発揮させ、摺動部材の特性を高める。
【解決手段】Al系又はCu系軸受合金層に、下記式で定義される相対C軸強度比が85%以上である固体潤滑剤を分散した樹脂系コーティング層を設ける。
相対C軸強度比=X線回折による(002)、(004)、(100)、(101)、(102)、(103)、(105)、(110)、(008)面の積算強度に対する(002)、(004)、(008)面の積算強度の百分率。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摺動部材に関するものであり、さらに詳しく述べるならば、摺動特性改善を目的として固体潤滑剤を含むコーティング層を形成したアルミニウム系又は銅系軸受合金からなる摺動部材に関し、特に内燃機関の軸受などに用いられる摺動部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本出願人の一名が出願した特許文献1:特公平3-20451号公報に示されている、固体潤滑剤コーティング層を施さないアルミニウム系軸受合金は、Al-Sn-Si系を基本成分としており、焼入鋼軸又は鋳鉄軸と摺動されている。このアルミニウム系軸受合金は、Sn3〜20%、Zr0.1〜1%、Si1.5〜8%、Cu及び/又はMg0.2〜2%、V、Nb、Mo、Coの少なくとも1種以上で、Zrとの総量が0.1%を超えて1%まで含有する。
【0003】
大きい負荷が加えられるアルミニウム系軸受合金には、なじみ性確保のためにSn、Pbなどの軟質金属系オーバレイが施される。本出願人の一名は、特許文献2:特開平4-83914号公報において、軟質金属系オーバレイに代わる固体潤滑剤コーティング層を提案した。この技術のその後の改良は「固体潤滑オーバレイ付きアルミニウム軸受」との名称でトライボロジ学会で第4報まで発表されている。この軸受のコーティング層は、CrO2などの摩擦調整剤で1〜20質量%置換されることがある、MoS2、 BN、WS2、黒鉛などの固体潤滑剤90〜55質量%と、ポリイミド系バインダ10〜45質量%とからなるものである。実験成績では、鉛合金系オーバレイを施したアルミニウム系軸受合金と比較して、固体潤滑剤オーバレイの耐疲労性と耐摩耗性はほぼ同等、耐焼付性は格段に改良されている。
固体潤滑剤のコーティング層は、固体潤滑剤、希釈剤及びポリイミド系樹脂をスプレーでアルミニウム系軸受合金に塗布し、乾燥・焼成することによりが下地のアルミニウム合金に被着されている。
【0004】
さらに、本出願人の一名が、特許文献3:特許第3733539号公報において提案した固体潤滑オーバレイ付きアルミニウム軸受は、表面粗さが1.0μm以上〜4.3μmRz以下のアルミニウム系軸受合金の表面に、固体潤滑剤98〜55質量%及び熱硬化性樹脂2〜45質量%からなり、膜厚が3〜8μmであり、かつ表面粗さが5μmRz以下であるコーティング層を設けたものである。このすべり軸受材料の製法では、アルミニウム系合金軸受をアルカリ脱脂、水洗、湯洗することにより表面を浄化するとともに、表面粗さを調整し、その後特許文献2と同様にスプレーなどで成膜するものである。また、コーティング層の特性について次のように考察している:(イ)なじみ性はコーティング層中の固体潤滑剤が多いほど良好になる;(ロ)コーティング層の厚さが10μmを超えると耐焼付性が劣化する;(ハ)コーティング層が薄くなると、摺動特性は下地のアルミニウム合金の表面粗さの影響を受けるので、耐焼付性が劣化する。
【0005】
本出願人らが出願した特許文献4:特許第3133209号公報で提案された固体潤滑オーバレイは、MoS2、WS2、BN、グラファイト及び炭素繊維から選ばれる固体潤滑剤70〜97質量%とバインダー3〜30質量%とからなる潤滑膜形成用組成物であって、多量の固体潤滑剤を保持するべくバインダーはポリイミド系樹脂とエポキシ基を持つ化合物よりなる膜形成補助剤とから構成されている。この、潤滑膜形成用組成物はスプレーにより軸受合金表面に成膜されている。
【0006】
特許文献5:特開2002-53883号公報で提案された固体潤滑オーバレイは、ポリアミドイミド樹脂と該ポリアミドイミド樹脂に分散された固体潤滑剤及び耐摩耗剤とを含む摺動部材用組成物であって、ポリアミドイミド樹脂は、引張強度が78.4〜98MPaであり、縦弾性係数が1960〜2940MPaであり、伸び率が10〜20%であることを特徴とするものである。
この樹脂組成物は、特にピストンスカート部のように油中潤滑で摺動される部材に適している。また樹脂組成物はスプレーにより成膜される。
【0007】
本出願人の一名らが出願した特許文献6:特開2002-61652号公報で提案されている固体潤滑オーバレイの特徴は、樹脂コーティング層が、25℃での引張の強さが70〜110MPa、伸びが7〜20%であり、しかも200℃での引張強さが15MPa以上、伸びが20%以上である軟質かつ高温で伸びの良い熱硬化性樹脂を70〜30vol%と固体潤滑剤を30〜70vol%(ここで、両者の合計を100vol%とする)の割合で含有しており、樹脂コーティング層のビッカース硬さHvが20以下であるところにある。この提案では、軟質でかつ高温での伸びがよい熱硬化性ポリアミドイミド樹脂を使用することにより、高速での初期なじみ性を良好なものにしている。コーティング層の調製法は特許文献3と同様の方法が行われており、さらに、スプレー法の他にロール転写法、タンブリング法、浸漬法、はけ塗り法、印刷法なども挙げられている。
【0008】
本出願人の一名らが出願した特許文献7:特開2004-263727号公報で提案されている固体潤滑オーバレイ付きアルミニウム軸受は、特許文献6と同様のものであるが、樹脂のガラス転移点が150℃以上であることを特徴としている。
【0009】
銅系すべり軸受合金としては、従来Cu-Pb系が主に使用されていたが、Pbは環境汚染をもたらすので、PbをBiに置換したCu-Bi系すべり軸受合金が提案されており、例えば特許文献8: 特開昭56−142839号公報、特許文献9:特開平11−293368号公報、非特許文献1:トライボロジスト,Vol.51/No.6/2006「Biを添加した銅系焼結合金の通電摩擦特性」第456〜462頁に具体的材料が示されている。
【特許文献1】特公平3−20451号公報
【特許文献2】特開平4−83914号公報
【特許文献3】特許第3733539号公報
【特許文献4】特許第3133209号公報
【特許文献5】特開2002−53883号公報
【特許文献6】特開2002−61652号公報
【特許文献7】特開2004−263727号公報
【特許文献8】特開昭56−142839号公報
【特許文献9】特開平11−293368号公報
【非特許文献1】トライボロジストVol.51/No.6/2006「Biを添加した銅系焼結合金の通電摩擦特性」第456〜462頁
【非特許文献2】トライボロジストVol.50/No.9/2005, 「エンジンベアリング-通称:メタル−の50年を振り返る」第664頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
非特許文献2:トライボロジストVol.50/No.9/2005,「エンジンベアリング-通称:メタル−の50年を振り返る」第664頁に1500ccエンジンが1960年から2000年までの40年間においてどのように変化したかが示されており、これによるとエンジン重量が約170kgから約 100kgに軽くなる一方で、出力は約50PSから約100PSに増え、これに伴い軸受負荷が約1〜約5PS/cm2に増大している。このような傾向は、当然に、1500cc以外の排気量のエンジンでも、2000年以降も続いている。また、40年間に多数の技術改良がなされ、これにより、高周速・高面圧条件での摺動性能が改善されている。近年の自動車用エンジンではさらなる高周速化・高面圧化がなされている。さらに、近年では、燃費向上のために5W-20、0W-20改質油などの低粘度エンジン油が一般乗用車にも実用化されており、これによる油膜厚さの減少が起こっている。
【0011】
固体潤滑オーバレイの改善については特許文献3〜7に示されるように多くの提案がされているが、高周速、高面圧条件下で用いた場合しばしば期待した特性が得られず、焼付などの故障が発生した。
【0012】
そもそも、固体潤滑剤一般がもっている低摩擦性やなじみ性は、固体潤滑剤が特定の結晶面で非常にすべり易い性質を利用している。すなわち,コーティング層中に分散している固体潤滑剤粒子が、相手軸からの荷重を受けると、その特定結晶面で滑りを起し、変形・破壊され、これに伴いコーティング層全体が流動する結果、低摩擦性やなじみ性が実現される。したがって、固体潤滑剤の上記特定結晶面がコーティング層内でどのような方向を向いていたとしても、特定結晶面でのすべりが起こるが、上述のように高周速・高面圧下の摺動では、予期した摺動性能が得られないことが起こった。
本出願人らは固体潤滑オーバレイ付き軸受の改良を鋭意続けており、その過程で耐焼付性は高面圧及び高周速の摺動条件では固体潤滑剤の結晶方位依存性をもつことを見出した。
したがって、本発明は、アルミニウム系及び銅系軸受合金表面に施される固体潤滑コーティング層の特性を十分に発揮させ、以って摺動部材の特性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る、摺動部材は、アルミニウム系又は銅系軸受合金層に、下記式で定義される相対C軸強度比が85%以上である固体潤滑剤が分散した樹脂系コーティング層を設けたことを特徴とする。
相対C軸強度比=X線回折による(002)、(004)、(100)、(101)、(102)、(103)、(105)、(110)、(008)面の積算強度に対する(002)、(004)、(008)面の積算強度の百分率比率。
以下、本発明を詳しく説明する。
【0014】
本発明において、アルミニウム系軸受合金、銅系軸受合金、固体潤滑剤及び樹脂は、種類、厚さ、組成、層の厚さなどに関して、公知のものである。これら公知の構造において、固体潤滑剤は基本的結晶構造のため外力により容易にへき開して低摩擦性を示すので、そのへき開面がコーティング層内でどのような方位を向いていてもへき開は起こるが、高周速及び高面圧の摺動条件では、その方位が摺動性能に影響を及ぼすので、本発明は固体潤滑剤を上記式で定義される相対C軸強度比を高く定めることにより、摺動性能を高めたことを特徴とする。
【0015】
より詳しく述べると、本摺動部材に用いられる固体潤滑剤は、網目状結晶が積層し原子間力によって隔てられている層状構造をもっている。MoS2の結晶構造を図1に示す。これらの固体潤滑剤では層間での滑りにおいては非常に低摩擦係数を示す。
【0016】
図1に示すMoS2において、6角形の網目状Mo(B)と6角形の網目状S(A)が交互に積層した構造をとっている。したがって、2つの網目状S(A)の間に1つのMo(B)が挟まれた状態でMoS2の1単位(A-B-A)が構成されている。この6角形の一つの間隔をa軸、A-A間をc軸と規定する。c軸の面方位は(001)であり、これは上記A-B-A構造に相当し、X線回折ではこれを2の整数倍した(002)、(004)、(008)が検出される。
また、JCPDSSカードによる標準試料 β-MoS2 No.37-1492では上記相対C軸強度比は45.8%となる。
【0017】
一方、図2に示す黒鉛においては、a=1.42Å、c=3.35Åであり、上記したA-B-A構造のBが欠落した構造である。MoS2と同様に標準試料 黒鉛 No.23-0064では、相対C軸強度比は63.3%である。
また、h−BNの場合は、図3に示したように、3個のB原子と3個のN原子が交互に配列されて6角形配列を作り、この1辺(長さa=1.47Å)を共通とする6角形配列が2次元的に網目状に繰返されている。またc軸方向では間隔c=3.33Åを隔てて網目状構造が繰返されている。標準試料 h-BN No.34-0421は、相対C軸強度比は74.3%である。黒鉛,h-BNとも標準試料においてMoS2に比べ高い相対
強度比であり、相対C軸強度比を上げることによる摺動特性向上効果は少ないと考えられる.
【0018】
続いて、図4及び図5に固体潤滑オーバレイにおける固体潤滑剤の配向を模式的に示す。 1個の六角形薄片状固体潤滑剤10は上記したA-B-A構造の積層構造を有している。図4に示す配向では、(002)軸は膜面直交方向に対して数°から30°程度傾いている。一方図5ではすべての固体潤滑剤粒子の(002)軸がコーティング層12の表面と直交している。図5のようにすべての固体潤滑剤粒子を直交配列させることはできないので、図5は配向を説明するための模式図である。
【0019】
ところで、MoS2の(002)面間隔は12.3Åであり、X線回折に一般的に使用されるCuKα線の波長(λ)は1.54Åである。よって、これをブラッグの回折式(nλ=2dsinθ)に当てはめるとX線の回折角度2θは14.4°となる。(002)面からの回折ピークは、図5の配向の場合は、14.4°を中心して、シャープで強いピークが得られ、一方図4の配向の場合は14.4°からの分散が大きくなり、またピーク強度が低くなる。
【0020】
その他の(004)、(100)、(101)、(102)、(103)、(105)、(110)、(008)面についても同様にして回折角度2θを求めることができる。図6にはMoS2を分散したコーティング層のX線回折図(相対C軸強度比=88%)であり、これらの結晶面からの回折ピーク強度を示す。上記した9個の面以外からの回折ピークが得られることがあるが、ピーク強度が極めて低いために、相対C軸強度比の計算においては、無視することができる。
上記9個の面のうち(002)、(004)、(008)面はへき開面に相当するので、これらの面の相対強度が高いと固体潤滑剤粒子の配向は図5に近づいているということができる。また、仮に、図5のように「垂直」配向が達成されたとしても、へき開面以外の6個の面からの回折は必ず存在するために、配向性能指数が100%に達することはない。「垂直」配向に近づけるためには後述の成膜方法の条件調整が必要であるが、現在のところ90%強が上限であると考えられる。
【0021】
摺動部材のコーティング層は下地が露出するまで摩滅することがあるので、厚さ全体における固体潤滑剤の配向が摺動特性に影響する。CuKα線を使用する通常のX線回折装置の出力は 40kV-100mA程度であり、この程度の出力において、基材のアルミ合金,Cu合金までX線が到達するので、そのピークを除けば、摺動特性に影響する固体潤滑剤の配向を測定することができる。
【0022】
エンジン軸受について相対C軸強度比を測定するためには、半割り円形軸受を適当な大きさに切断し、切断片を平坦に再変形してX線回折検査することになる。これは破壊検査であるが、エンジン軸受と同じ条件で製造された板状素材をX線回折すれば、製品を破壊しないで、製品と全く同一の測定値を得ることができる。即ち、板状素材を半割り形状に曲げる過程では、固体潤滑剤はバインダー樹脂により強固に接合されており、曲げ加工により固体潤滑剤の配向は全く変化しないので、板状素材の測定で代用することができる。
【0023】
本発明により定義された配向性能の相違による摺動特性の影響を図7及び図8を参照して説明する。
図7に示すように、MoS2粒子14がコーティング層12の膜面12aに対して傾いていると、相手軸の回転力FによりMoS2粒子14のへき開片14aが形成される。これによりコーティング層の膜面12aは12a’として盛り上がる。一方、図8に示すように、MoS2粒子14がコーティング層12内で外力Fと平行に配向していると、相手軸の回転力FによるMoS2粒子14のへき開片14aは、コーティング層の膜面12aは盛り上がらないので、高周速及び高面圧条件で潤滑油膜が薄くなる場合でも流体潤滑が維持され、この結果として耐焼付性の向上をもたらすことができる。
コーティング層の膜厚は2〜10μm、好ましくは4 〜8μmである時に良好な特性を示す。これは、固体潤滑剤粒子の配向以外に、母材との接着強度/層内強度や熱伝導性などに起因すると考えられる。
【0024】
続いて、コーティング層の成膜方法を説明する。
一般に、固体潤滑剤原料はアスペクト比(薄片面積の平方根を厚さで割った値)は10以上のものを用いることが好ましい。続いて、薄片状固体潤滑剤30〜70体積%を残部樹脂と混合し、希釈剤を加えて塗料を調製する。この塗料において、固形分は従来より少なめとすることが必要である。すなわち、固形分は少ない方が固体潤滑剤粒子の相互接触が避けられ、図5に示すように「垂直」配向する傾向が強くなる。但し、膜厚が不足するときは重ね塗りを行う。
次に、塗料を軸受合金表面に成膜する際には、パッド印刷、スクリーン印刷、エアスプレー、エアレススプレー、静電塗装、タンブリング、スクイズ法、ロール法などの何れかを行うが、高い相対C軸強度比が得られるような条件設定が必要である。このような条件としては、全ての方法に共通するものとして、塗料の粘度を低くして多回数塗りを行うなどの手段がある。
また、乾燥においては、低粘度塗料中の多量の溶剤成分が蒸発し、また樹脂が収縮するに伴って固体潤滑剤粒子が僅かに傾きながら移動する。この移動は配向をランダム方向にずらすので、溶剤が蒸発する乾燥工程における速度はできるだけ遅くすることが必要である。例えば、塗装半製品を室温乾燥し、その後徐々に樹脂の焼成温度まで昇温することが好ましい。コーティング層の表面粗さは5μmRz以下であることが好ましい。
【0025】
すべり軸受に使用される軸受合金は、上記したコーティング層のなじみが進み、露出した際に相手軸と摺動するために軸受特性が要求される。
軸受合金の組成は、特に限定されないが、アルミニウム合金については、10質量%以下のCr、Si、Mn、Sb、Sr、Fe、Ni、Mo、Ti、W、Zr、V、Cu、Mg、Znなどの1種以上と、20質量%以下のSn、Pb、In、Tl、Biなどの1種以上とを含有する合金を好ましく使用することができる。前者の群の元素は主として強度及び耐摩耗性を付与し、後者の群の元素は主としてなじみ性を付与し、それぞれの添加元素の種類と量により、軸受特性を発揮する。以上、軸受合金の例を説明したが、AC8A、AC9Bなどの高Si-Al合金からなるピストンのスカート部を下地としてその耐摩耗性を向上するために、本発明のコーティング層を使用することもできる。
【0026】
銅合金の組成は、特に限定されないが、25質量%以下のPb、Biの1種又は2種以上と、10質量%以下のSnと、2質量%以下のP、Ag、In、Ni、Al、などを含有する合金を、好ましく使用することができる。これらの元素において、Pb、Biは軟質金属であり、なじみ性を発揮し、Snは青銅の基本成分であり、強度と耐摩耗性を発揮し、その他の成分は補助的に特性を向上する。これらのうちPは、脱酸素、焼結促進、強化などに有効であり、Agは摺動特性向上に有効な化合物を潤滑油もしくは銅の不純物であるSとの反応で形成し、Inは耐食性と潤滑油の濡れ性を向上し、Ni、Alは銅を強化するなどの作用がある。
軸受合金は一般に厚さが約0.3mmである。これを補強する裏金は一般に厚さが約1.2mmである。
【0027】
樹脂バインダーとしては、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミドベンダゾール樹脂を使用することができ、また例えば特許文献5〜7で本出願人らが提案した樹脂も使用することができる。
続いて、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
実施例1
供試した摺動部材の構成要素は次のとおりである。
裏金鋼(SPCC)に圧接されたアルミニウム系軸受合金(Al-11.5%Sn-1.8%Pb-1.0%Cu-3.0%Si-0.3%Cr)にコーティング層をエアスプレー法により厚さ6μmに塗布し、180℃で1時間の焼成を行った。固体潤滑剤としてはMoS2を使用し、35質量%MoS2、50質量%の有機希釈剤(NMP)、残部ポリアミドイミド樹脂の組成とした。
【0029】
自動車内燃機関のコンロッドに組み付けられるすべり軸受を想定して次の方法で耐焼付性を測定した。
【0030】
耐焼付性試験方法
試験機:静荷重軸受評価試験機
相手軸:鍛造軸
摺動速度(相手軸の回転周速):20m/s
潤滑油:エンジンオイル0W-20
潤滑方法:強制給油
油温:60℃
荷重負荷方法:4.3MPa/3分、の割合で段階的に増加
試験の結果を示す図9から、明らかなように相対C軸強度比が高いと、高い耐焼付性が得られる。また、図6は実施例の相対C軸強度比が88%のX線回折チャートである。
【産業上の利用可能性】
【0031】
以上説明したとおり、本発明により提供される摺動部材は、高速及び高面圧下での耐焼付性に優れているので、摺動部品の性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】MoSの結晶構造を示す図面である。
【図2】黒鉛の結晶構造を示す図面である。
【図3】h-BNの結晶構造を示す図面である。
【図4】固体潤滑オーバレイにおける固体潤滑剤の配向を示す模式図である。
【図5】固体潤滑オーバレイにおける固体潤滑剤の配向を示す模式図である。
【図6】相対C軸強度比が88%のX線回折チャートである。
【図7】固体潤滑剤の配向が図4に相当する場合の摺動状況を説明する模式図である。
【図8】固体潤滑剤の配向が図5に相当する場合の摺動状況を説明する模式図である。
【図9】相対C軸強度比と耐焼付性の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0033】
10−六角形薄片状固体潤滑剤
12−コーティング層
14−MoS2粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム系又は銅系軸受合金層に、下記式で定義される相対C軸強度比が85%以上である固体潤滑剤を分散した樹脂系コーティング層を設けたことを特徴とする摺動部材。
相対C軸強度比=X線回折による(002)、(004)、(100)、(101)、(102)、(103)、(105)、(110)、(008)面の積算強度に対する(002)、(004)、(008)面の積算強度の百分率。
【請求項2】
前記固体潤滑剤がMoS2である請求項1記載の摺動部材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−95725(P2008−95725A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−275033(P2006−275033)
【出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【出願人】(000207791)大豊工業株式会社 (150)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,727)
【Fターム(参考)】