説明

撒液システム用の濾過装置

【課題】撒液用の液体中に含まれる砂や泥等の異物を確実に捕捉できると共に、これらの異物によるフィルター詰まりが殆ど発生しない撒液システム用の濾過装置、並びに、当該濾過装置を備えた撒液システムの提供を目的とする。
【解決手段】撒液システムは、給水流路の中途に濾過装置10を配した構成とされている。濾過装置10は、井戸や河川から汲み上げられた農業用水が流入する入水室12を有し、この上端側にフィルター30が装着された構成とされている。フィルター30は、単繊維からなる経糸と緯糸とを編み込んだ布を袋状に縫製したものであり、入水室12の上端側の開口に被さっている。フィルター30は、単繊維を編み込んだ布により構成されているため、農業用水中に含まれている砂や泥等の異物による目詰まりが起こりにくい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は撒液システムに採用される濾過装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、野菜や果実等の作物の栽培において、下記特許文献1や特許文献2に開示されているような撒液用チューブやスプリンクラーなどの散液体を農地に敷設し、河川や井戸から汲み上げた水等を撒液する撒液システムが採用されている。下記特許文献1,2のような撒液用チューブは、長尺状の管状体であって、その周囲に多数の小孔が穿孔されたものである。
【0003】
【特許文献1】特開平9−252670号公報
【特許文献2】特開2000−176319号公報
【0004】
上記したように、特許文献1,2に開示されているような撒液用チューブは、小孔を設けたものである。また、スプリンクラーなどのような撒液体についても、液を散布するための小孔が設けられた構成となったものが多い。そのため、撒液用チューブ等の撒液体に供給される液体中に砂や泥等の異物が混じっていると、これらの異物が撒液用の小孔に詰まってしまい、うまく撒液できなくなってしまう。従って、撒液用チューブに供給される液体は、砂や泥といったような撒液用の小孔を閉塞するような異物が混じっていないことが望ましい。
【0005】
しかし、灌水のために掘削された井戸や河川から汲み上げた水は、多くの場合砂や泥等の異物が混じっている。そのため、従来の撒液システムでは、液体を圧送するためのポンプと撒液用チューブ等の撒液体との間に砂等の異物を捕捉可能なフィルターを備えた濾過装置を配している。
【0006】
従来技術において採用されている濾過装置の多くは、撒液用チューブのような撒液体の小孔を閉塞する程度の微細な砂等を液体から除去するために、多数の繊維を束ねて形成されたマルチフィラメントと称されるものを織り込んだフィルターを採用している。そのため、従来の撒液システムでは、液体中に含まれる砂等の異物による撒液体の小孔の閉塞が起こりにくく、農地に好適に撒液できる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記したように、従来技術の撒液システムでは、多数の繊維を束ねたマルチフィラメントを用いたフィルターを備えた濾過装置により異物を捕捉する構成とされている。そのため、従来技術において採用されている濾過装置では、異物を的確に捕捉することができる反面、フィルターを構成するマルチフィラメントの繊維同士の間に砂や泥等の異物が入り込んでしまい、目詰まりを起こしやすいという問題があった。
【0008】
また、この種のフィルターは、多数の繊維をよりあわせたものをさらに編み込んだものであるため、ひとたび異物が繊維同士の間に入り込むと、異物を除去するのが困難であった。そのため、従来技術では、フィルターの掃除や交換等のメンテナンスを頻繁に行わねばならないという問題があった。
【0009】
上記した問題に鑑み、本発明では、撒液用の液体中に含まれる砂や泥等の異物を確実に捕捉できると共に、これらの異物によるフィルター詰まりが殆ど発生しない撒液システム用の濾過装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、上記した課題を解決すべく提供される請求項1に記載の発明は、撒液に用いられる散液体に供給するための液体を濾過する撒液システム用の濾過装置であって、外部から液体が流入する処理液流入部と、当該処理液流入部に流入した液体中に含まれる異物の通過を阻止する濾過手段と、当該濾過手段を通過した液体を撒液体に向けて送液する送液部とを有し、前記濾過手段が、単繊維によって構成されていることを特徴とする撒液システム用の濾過装置である。
【0011】
本発明の撒液システム用濾過装置において採用されている濾過手段は、単繊維によって構成されている。そのため、本発明の濾過装置では、異物が繊維同士の間に入り込むことがない。さらに具体的には、従来技術の濾過装置のように多数の繊維を束ねた、いわゆるマルチフィラメントと称されるものによって構成される濾過手段を採用した場合は、異物がマルチフィラメントを構成する繊維同士の間に入り込んで抜けなくなり、目詰まりの原因となる。一方、本発明の濾過装置において採用している濾過手段は、単繊維によって構成されているため、繊維に異物が侵入する余地がない。そのため、本発明の濾過装置では、繊維中に異物が蓄積せず、濾過手段の目詰まりが発生しにくい。従って、本発明によれば、撒液システム用濾過装置のメンテナンス頻度を格段に低減することができる。
【0012】
また、上記したように、本発明の撒液システム用濾過装置では、濾過手段として単繊維によって構成されるものが採用されるため、濾過手段が砂等の異物によって目詰まりしても容易に目詰まりを解消することができる。従って、本発明の撒液システム用濾過装置は、メンテナンスが容易である。
【0013】
本発明の撒液システム用濾過装置は、濾過手段の目詰まりを容易に解消できるため、メンテナンスを行えば濾過手段を何度も再使用することができる。そのため、本発明の撒液システム用濾過装置によれば、濾過手段の交換頻度を低減し、ランニングコストを抑制することができる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、処理液流入部が外部から液体を導入可能な筒体により構成されており、当該筒体に流入する液体の流れ方向下流側に液体を流出するための流出口を有し、濾過手段が前記流出口から流出する液体を濾過するものであり、前記流出口よりも筒体に流入する液体の流れ方向上流側に濾過手段によって通過を阻止された異物が集積される集積部が設けられており、当該集積部に異物を排出するための異物排出口が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の撒液システム用の濾過装置である。
【0015】
かかる構成によれば、濾過手段によって液体中から分離された異物を処理液流入部から容易に除去できる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、処理液流入部が外部から液体を導入可能な筒体により構成されており、上端側に筒体内に導入された液体を流出する流出口を有するものであり、濾過手段が処理液流入部の上端側の流出口に覆い被さるように装着され、流出口から流出する液体を濾過するものであり、処理液流入部の下端側に濾過手段によって通過を阻止された異物が集積される集積部が設けられており、当該集積部に異物を排出するための異物排出口が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の撒液システム用の濾過装置である。
【0017】
上記したように、本発明の撒液システム用濾過装置では、異物が濾過手段の網目に殆ど入り込まない。本発明の撒液システム用濾過装置は、濾過手段を処理液流入部の上端側に形成された流出口に覆い被さるように装着したものであるため、処理液流入部への入水が停止すると、濾過手段によって液中から分離された異物は、処理液流入部の下端側に設けられた集積部に沈降して集積される。そのため、本発明の撒液システム用濾過装置は、異物排出口を介して濾過手段によって分離された異物を取り出すことができ、従来技術の濾過装置よりも濾過手段のメンテナンスを遙かに容易に行える。
【0018】
請求項4に記載の発明は、筒体の内部を流れる液体の流れ方向下流側には、骨格構造部が設けられており、当該骨格構造部に濾過手段が装着されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の撒液システム用の濾過装置である。
【0019】
本発明の撒液システム用濾過装置は、濾過手段を装着するための骨格構造部を有するため、濾過作業の完了後に通液が停止した状態になっても濾過手段が突っ張った状態に維持される。従って、本発明の濾過装置は、濾過完了時に通水が停止すると、濾過手段によって捕捉された砂や泥等の異物が濾過手段からスムーズに剥がれ落ちる。そのため、本発明の濾過装置は、濾過手段の目詰まりが起こりにくい。
【0020】
また、上記請求項1乃至4のいずれかに記載の撒液システム用の濾過装置は、濾過手段の外側に保護部材が設けられており、濾過手段に対して処理液流入部の内側から外側に向かう方向に液体が流出することにより、濾過手段の一部又は全部が保護部材の内壁面に張り付く構成であることが望ましい(請求項5)。
【0021】
かかる構成によれば、液体が通過する際に濾過手段に作用する圧力を緩和でき、濾過手段の劣化を最小限に抑制できる。
【0022】
請求項6に記載の発明は、濾過手段に対して処理液流入部の外側から内側に向かう方向に液体を噴霧可能な噴霧手段が設けられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の撒液システム用の濾過装置である。
【0023】
本発明の撒液システム用濾過装置は、濾過手段に対して処理液流入部の外側から内側に向かう方向、すなわち液体の濾過動作時に発生する液体の流れ方向とは反対方向に液体を噴霧可能な噴霧手段を有する。そのため、本発明の濾過装置は、万一濾過動作によって濾過手段が目詰まり等を起こしていても、噴霧手段を作動させることによって発生する噴流によって濾過手段に付着している砂や泥を落とし、濾過手段の目詰まりを解消できる。
【0024】
請求項7に記載の発明は、処理液流入部の内側に浄化液流入部を有し、当該浄化液流入部の外側に濾過手段が装着されており、処理液流入部に流入した液体を処理液流入部側から濾過手段を通過させ、浄化液流入部側へ流入させることにより液体を濾過可能なものであり、処理液流入部に流入する液体を前記浄化液流入部の外側に配された濾過手段に沿って流れる旋回流とすることが可能な旋回流発生手段を有することを特徴とする請求項1に記載の撒液システム用の濾過装置である。
【0025】
本発明の濾過装置は、旋回流発生装置を有し、外部から処理液流入部に流入する液体を濾過手段に沿って流れる旋回流とすることができ、液体を濾過手段全体において略均一に濾過することができる。そのため、本発明の濾過装置では、外部から流入した液体が濾過手段の一部に集中的に流れたり、濾過手段の一部に砂や泥等の異物が集中する可能性が低い。従って、本発明の濾過装置によれば、濾過手段全体で略均一に農業用水を濾過することができ、濾過手段全体を液体の濾過のために有効利用することができる。また、本発明の濾過装置によれば、砂や泥等の異物が一部に集中しないため、濾過手段の清掃や交換等のメンテナンスの頻度を最小限に抑制することができる。
【0026】
また、上記請求項7に記載の撒液システム用の濾過装置は、浄化液流入部が筒状であり、外周に多数の開口を有するものであり、当該開口の大きさが液体に含まれている異物の通過を阻止可能な大きさであることを特徴とするものであってもよい(請求項8)。
【0027】
本発明の濾過装置において、浄化液流入部は、外周に異物の通過を阻止可能な大きさの開口が多数設けられたものであるため、浄化液流入部自身が異物を除去するためのフィルターとしての機能を発揮できる。すなわち、本発明の濾過装置は、浄化液流入部の外側に配された濾過手段に加えて浄化液流入部までもがフィルターとして機能する。そのため、本発明によれば、液体中に含まれている異物をより一層確実に捕捉でき、濾過能力に優れた濾過装置を提供できる。
【0028】
また、本発明の濾過装置では、浄化液流入部の外側に濾過手段を装着したものであるため、濾過手段を通過して浄化液流入部において捕捉される異物はごく少量であると想定される。すなわち、本発明の濾過装置は、比較的容易に捕捉した異物を除去可能な濾過手段によって液体中に含まれる異物の大部分が捕捉されるため、浄化液流入部に設けられた開口に異物が噛み込む等して浄化液流入部が目詰まりを起こす可能性が低い。従って、本発明によれば、浄化液流入部の洗浄や交換等、浄化液流入部に関するメンテナンスの実施頻度を最小限に抑制できる。
【0029】
請求項9に記載の発明は、濾過手段が単繊維によって構成される経糸と緯糸とが互いに摺動可能なように編み込まれたものであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の撒液システム用の濾過装置である。
【0030】
本発明の撒液システム用濾過装置では、濾過手段が単繊維によって構成される経糸と緯糸とが編み込まれたものを採用しているが、経糸と緯糸とが互いに摺動可能であるため、仮に経糸と緯糸とで形成される網目に砂や泥等の異物が挟まっても簡単に脱落する。そのため、本発明の濾過装置は、濾過手段の目詰まりや、目詰まりに伴う濾過能力の低下が起こりにくい。
【0031】
上記請求項1乃至9のいずれかに記載の撒液システム用の濾過装置において、濾過手段は単繊維によって構成される経糸と緯糸とが交差した網目状のものであり、目開きが50μm以上100μmであることが望ましい。(請求項10)
【0032】
上記請求項1乃至10のいずれかに記載の濾過装置は、液体を撒液用小孔から撒液可能な撒液体とを備え、当該濾過装置が前記撒液体よりも液体の流れ方向上流側に配されていることを特徴とする撒液システムに採用できる。
【0033】
かかる構成の撒液システムでは、上記各請求項のいずれかに記載の濾過装置によって砂や泥等の異物が除去された液体が撒液用チューブ等の撒液体に供給されるため、異物による撒液用小孔の目詰まりが起こらない。従って、前記したような構成の撒液システムによれば、撒液体が設置された農地に均一に撒液できる。
【0034】
また、請求項1乃至10のいずれかに記載の濾過装置を撒液システムに採用する場合、濾過手段は、単繊維によって構成される経糸と緯糸とが交差した網目状のものであり、当該濾過手段の目開きの大きさが、撒液用小孔の開口径よりも小さいことが望ましい。かかる構成によれば、撒液用チューブやスプリンクラー等の撒液体に撒液用小孔を詰まらせる原因となる砂や泥といったような異物が流入するのを確実に防止できる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、濾過手段の目詰まりを最小限に抑制でき、メンテナンスが容易な撒液システム用の濾過装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
続いて、本発明の一実施形態である撒液システムおよび濾過装置について図面を参照しながら詳細に説明する。図1において、1は本実施形態の撒液システムである。撒液システム1は、大別して農地Fに灌水するための灌水流路2と、河川や農業用の井戸のような水源から水を汲み上げて灌水流路2に水を供給する給水流路3とから構成されている。
【0037】
灌水流路2は、図1に示すように農地Fに配された複数の撒液用チューブ5によって構成されている。撒液用チューブ5は、例えば、住化農業資材株式会社製の商品名「スミサンスイR 露地ワイド」に代表されるようなチューブが採用される。撒液用チューブ5は、長手方向に所定の間隔毎に小孔8が設けられた構成となっている。撒液用チューブ5の内部を流れる農業用水は小孔8から農地Fに吐出される。
【0038】
給水流路3は、農地Fに隣接する位置に掘削された農業用の井戸から汲み上げた農業用水を分配管6を介して各撒液用チューブ5に供給する流路である。給水流路3の中途には、ポンプ9と濾過装置10とが設けられている。
【0039】
濾過装置10は、給水流路3中を流れる農業用水中に含まれる砂や泥等の異物を捕捉するトラップとして機能するものである。濾過装置10は、図3,図4に示すようにカプセル状の本体部11の内側に配された筒体23によって入水室(処理液流入部)12が形成され、入水室12の上方側の開口部分にフィルター30を装着したものである。本体部11は、図2や図3に示すように、下方本体部13と上方本体部15とによって構成されており、上下に分割可能である。入水室12を構成する筒体23は、下方本体部13の略中央部を上下に貫通している。
【0040】
下方本体部13は、図2や図3に示すように上端側が開口した桶状の部材である。下方本体部13は、上端側に径方向外側に延出したフランジ16を有し、側方に出水口17が設けられている。出水口17は、下方本体部13の内部空間と連通しており、後述する浄化水流入室36内の農業用水を撒液用チューブ5に向けて送液するためのものであり、給水流路3に接続されている。また、下方本体部13は、外周に設けられた脚部材14によって上端側を上方に向けた姿勢で地上に設置可能とされている。
【0041】
入水室12を構成する筒体23は、下方本体部13の底面の略中央部から下方に向けて突出し、下方本体部13に対して水密となるように固定されている。筒体23は、上端側が開口しており、下端側が閉塞された筒体である。筒体23のうち、下方本体部13の底面よりも下方に突出した部位の側方には、外部の水源から農業用水を導入するための入水口18が設けられている。すなわち、濾過装置10は、入水口18を介して給水流路3に接続されている。また、筒体23の下端側の閉塞部分近傍の部位は、後述するフィルター30を通過しなかった砂や泥等の異物が溜まる集積部19として機能する。筒体23の下端側の略中央部には、集積部19に溜まった砂や泥等を排出するための排出部20が設けられている。排出部20は、常時は蓋20aにより閉塞されているが、必要に応じて蓋20aを取り外し、集積部19に溜まった砂や泥等の異物を排出することができる。
【0042】
入水室12を構成する筒体23の上端側の開口部分には、フィルター30の形状に合わせてフィルター支持体(骨格構造部)21が固定されている。本実施形態では、フィルター支持体21は、図2や図3に示すように、略「コ」字形に折り曲げた鉄筋やパイプ等の支持部材22を2本組み合わせて構成される骨格構造体とされている。支持部材22は、筒体23の軸方向に向けて延伸する延伸部22a,22aと、筒体23の開口部分を横断する横断部22bとから構成されている。支持部材22,22は、それぞれ延伸部22a,22aの端部が入水室12を構成する筒体23の上端部に固定されており、横断部22b,22bがそれぞれ略直交している。
【0043】
フィルター支持体21には、図2や図3のように入水室12の上端側の開口部分に覆い被さるようにフィルター30が装着されている。フィルター30は、図5(b)のように単繊維によって構成される経糸31aと緯糸31bとを編んで構成される布31を図5(c)に示すように二重に重ね、袋状に縫製したものである。
【0044】
さらに具体的に説明すると、フィルター30は、単繊維状の合成繊維を編んで構成される布31を二重に重ねたものを袋状に縫製したものである。フィルター30を構成する布31の繊維は、例えば、ナイロン等のポリアミド系高分子化合物、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびビニロン等のポリビニルアルコール系合成繊維等によって構成することができる。布31は、前記した合成繊維から1種類を選択して編んだものであってもよく、2種類以上の合成繊維を選択して編んだものであってもよい。布31は、縫製の容易さや引っ張り強度の高さを考慮するとポリエチレン製の単繊維を編み込んだものとすることが望ましい。
【0045】
布31は、不織布または織物のシートにより構成することができる。布31が織物によって構成される場合は、経糸31aと緯糸31bとの交差部31cが接着等の手法で固定されていてもよいが、交差部31cは固定されていないことがより好ましい。交差部31cにおいて経糸31aと緯糸31bとを固定しない構成とすれば、仮に経糸31aと緯糸31bとで形成される網目に砂や泥等の異物が挟まっても異物は簡単に脱落する。また、布31は、農業用水が通過することによって揺れ動くため、布31の表面に捕捉された異物は簡単に振り落とされる。そのため、フィルター30は、目詰まりや、これによる濾過能力の低下が起こりにくい。
【0046】
フィルター30を構成する布31は、目開きは、50[μm]以上200[μm]以下の範囲内であることが好ましく、50[μm]以上100[μm]以下であることがより一層好ましい。布31の目開きは、井戸等の給水源から供給される農業用水の水質や、農業用水に紛れて流れてくる砂や泥等に代表される異物の粒径に応じて適宜調整することができる。
【0047】
フィルター30は、フィルター支持体21に被さる大きさの袋状に縫製されている。フィルター30の開口端は、図3等に示すように筒体23の上端部にベルト状の固定具32によってしっかりと固定されている。これにより、フィルター30は、フィルター支持体21の支持部材22に沿って広がり、突っ張った状態となる。
【0048】
上方本体部15は、図2や図3等に示すように上端側が閉塞され下端側が開口した略円筒形の部材である。上方本体部15は、下端側にフランジ35を有する。上方本体部15は、図3に示すように、フランジ35を下方本体部13のフランジ16に突き合わせて両者をネジ止めすることにより下方本体部13の上方に覆い被さるように装着され、内部に浄化水流入室36を形成する。浄化水流入室36は、下方本体部13の側方に設けられた出水口17を介して外部と連通している。また、上方本体部15の頂部には、浄化水流入室36内の内圧を緩衝するための緩衝装置37(調圧弁)が取り付けられている。
【0049】
続いて、本実施形態の撒液システム1の動作について、濾過装置10の動作を中心に説明する。撒液システム1は、給水流路3の中途に設けられたポンプ9を起動することにより動作を開始する。ポンプ9が起動すると、図示しない農業用の井戸や河川に存在する農業用水が給水流路3に汲み上げられる。農業用水は、給水流路3の上流側に設けられている濾過装置10の入水室12内に入水口18から流入する。
【0050】
入水室12内に流入した農業用水は、筒体23の上端側、すなわち入水室12内に流入した農業用水の流れ方向下流側に装着されているフィルター30を通過し、浄化水流入室36に流入する。この際、農業用水中に混入している砂や泥等の異物がフィルター30によって捕捉される。そのため、浄化水流入室36内に流入した農業用水には、砂や泥等の異物が殆ど混入していない。
【0051】
浄化水流入室36に流入した清浄な農業用水は、出水口17に接続された給水流路3を介してさらに下流側に送られ、分配管6に接続された各撒液用チューブ5に流入する。撒液用チューブ5に農業用水が流入すると、図2(a)のように扁平であった撒液用チューブ5が図2(b)のように膨張し、内部が高圧となる。そのため、撒液用チューブ5内を流れる農業用水は小孔8から噴出する。
【0052】
上記したようにして農地Fへの撒液が完了すると、ポンプ9が停止され、濾過装置10の内圧が低下する。ここで、上記したように、フィルター30は、単繊維によって構成される経糸31aと緯糸31bとを編み込んだ布31によって形成されており、経糸31aと緯糸31bとが自由に摺動できる。そのため、異物は、布31の網目に砂や泥等の異物が挟まっても布31から簡単に脱落する。さらに、本実施形態の濾過装置10では、農業用水がフィルター30を通過すると、フィルター30が揺動し、これにより異物が振り落とされる。従って、ポンプ9が停止すると、農地Fへの撒液中に水圧によりフィルター30に付着していた砂や泥等の異物が筒体23の下端側、すなわち入水室12における農業用水の流れ方向上流側に位置する集積部19に沈降する。ポンプ9の停止後、排出部20の蓋20aを開けると、集積部19に沈降した異物が筒体23内に残存している農業用水と共に排出される。
【0053】
上記したように、本実施形態の撒液システム1では、給水流路3の中途に設けられた濾過装置10によって給水源から汲み上げた農業用水を濾過して撒液用チューブ5に供給する構成であるため、砂や泥といったような異物が撒液用チューブ5の小孔8を塞ぐことによる撒液不良が殆ど起こらない。
【0054】
また、上記実施形態において採用されている濾過装置10は、単繊維からなる布31を素材として構成されるフィルター30を採用しているため、さほど頻繁に清掃等のメンテナンスを行わなくても砂や泥がフィルター30に蓄積しにくい。さらに、フィルター30は、単繊維からなる経糸31aと緯糸31bとを編み込んだものであるため、万一目詰まりを起こしたとしても、多数の繊維を束ねて形成されたいわゆるマルチフィラメントと称されるものによって構成されるフィルターを採用した場合に比べて容易に異物を取り除くことができる。これに加えて、濾過装置10では、農業用水がフィルター30を通過すると、フィルター30が揺動し、異物が振り落とされる。さらに、フィルター30を構成する布31は、経糸31aと緯糸31bとが自由に摺動できるため、仮に布31の網目に異物が挟まったとしても布31から簡単に脱落する。そのため、フィルター30は、目詰まりが起こりにくい。従って、濾過装置10は、フィルター30のメンテナンスに手間がかからない。
【0055】
上記したように、フィルター30は、砂や泥等の異物を簡単に取り除くことができるため、長年にわたって繰り返し使用できる。そのため、濾過装置10およびこれを採用した撒液システム1は、フィルター30の交換頻度が少なくて済み、その分だけランニングコストを抑制することができる。
【0056】
また、濾過装置10は、入水室12を構成する筒体23の上端側に農業用水を浄化水流入室36側に流出可能な開口(流出口)が形成されており、フィルター30が入水室12の上端側の開口に覆い被さるように装着されている。そのため、ポンプ9が停止して農業用水の濾過動作が完了すると、入水室12の下端側に設けられた集積部19に砂や泥等の異物が沈降し、排出部20の蓋20aを開けることにより異物を濾過装置10の外部に排出できる。従って、濾過装置10は、本体部11を分解しなくてもフィルター30によって捕捉された異物を取り出すことができ、メンテナンスを遙かに容易に行える。
【0057】
濾過装置10は、筒状の入水室12の上端側に設けられたフィルター支持体21にフィルター30を装着する構成とされており、フィルター30を構成する布31が突っ張った状態となっている。そのため、濾過装置10は、濾過作業の完了後に通水が停止してもフィルター30が突っ張った状態に維持し、フィルター30同士が重なりあったりしない。従って、濾過装置10は、濾過完了時に通水が停止すると、フィルター30によって捕捉された砂や泥等の異物がフィルター30からスムーズに剥がれ落ち、沈降する。
【0058】
上記したように、濾過装置10に採用されているフィルター30は、農業用水中に含まれている砂や泥による目詰まりが起こりにくいものである。しかし、農業用水中には、砂や泥等のような異物の他に、農業用水中に溶存している鉄分や、水垢、有機微生物等が含まれている可能性がある。このような農業用水を用いて長期にわたって撒液を行うと、農業用水中に溶存している鉄分や水垢等がフィルターに析出したり、農業用水中の鉄分が酸化してできる酸化鉄や、有機微生物によって発生するスライム等が被膜を形成してフィルター30の目を詰まらせる可能性がある。
【0059】
かかる事態が想定される場合は、上方本体部15にフィルター30に対して噴霧可能なシャワー等の噴霧手段を設けた構成とすることが望ましい。かかる構成とする場合は、例えば図6や図7に示すような噴霧手段41を採用することができる。さらに具体的に説明すると、濾過装置10に噴霧手段41を設ける場合は、上方本体部15の頂部に噴霧用入水口45が設けられる。噴霧用入水口45には、入水室12に対して農業用水を導入するための入水配管43aの中途において分岐された分岐配管43bが接続される。
【0060】
分岐配管43bの末端部分(下流端側)には、シャワーヘッド50が接続されている。分岐配管43bの中途には、濾過装置47と噴霧バルブ48とが設けられている。濾過装置47は、シャワーヘッド50に向かう農業用水を濾過するためのものである。シャワーヘッド50は、上方本体部15の内側に設置されており、フィルター30に向けて水を噴出するためのものである。
【0061】
入水配管43aの中途であって、分岐配管43bとの分岐部分よりも農業用水の流れ方向下流側(本体部11側)の位置には、入水バルブ49が設けられている。そのため、入水バルブ49を閉じ、噴霧バルブ48を開いた状態でポンプ9を起動して井戸等の給水源から農業用水を汲み上げると、農業用水が分岐配管43bを流れてシャワーヘッド50に至り、本体部11内に設置されたフィルター30に吹き付けられる。これによりフィルター30に付着していた砂や泥等の異物や、鉄分や水垢、酸化鉄や、有機微生物によって発生するスライム等の異物が洗い流され、フィルター30が次第に清浄な状態になる。
【0062】
上記したようにしてフィルター30を洗浄すると、フィルター30に付着していた砂や泥をはじめとする異物が入水室12の下端部側の集積部19に集まる。すなわち、フィルター30に付着している付着物や、フィルター30の目に詰まっている異物が、フィルター30の外側(浄化水流入室36側)から筒体23の内側(入水室12側)に向かう噴流によって入水室12の上端側から下端側に押し流される。そのため、ある程度の時間に渡って噴霧手段41を作動させると、フィルター30が清浄な状態となり、フィルター30の目詰まりを解消できる。また、噴霧手段41を動作させてフィルター30を洗浄している間、あるいは洗浄後に図6に示すように排出部20の蓋20aを取り外し集積部19に集まった水を排出することにより、前記した異物等を濾過装置10の外部に完全に排出することができる。
【0063】
なお、上記した噴霧手段41を設ける場合に配管46の中途に設けられる濾過装置47は、従来公知の濾過装置と同様の構成のものであってもよいが、濾過装置10に用いられているフィルター30と同様のフィルターを内蔵した構成とすれば、濾過装置47のメンテナンスについても簡略化できる。
【0064】
上記した濾過装置10は、入水室12の下方から井戸や河川から汲み上げた農業用水を導入し、入水室12の上端側に設けられたフィルター30を通過させることにより農業用水の浄化を行うものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、濾過装置10における上下関係が逆転したものであってもよい。すなわち、図8に示すように入水口18を入水室12の上端側に設け、フィルター30を入水室12の下端側に設けた構成としてもよい。かかる構成とした場合は、フィルター30によって捕捉された異物がフィルター30上に残るため、この異物を除去するために本体部11を分解する必要があるが、フィルター30の目詰まりが起こりにくく、従来公知の濾過装置に比べてフィルター30の清掃等のメンテナンスに要する手間が少なくて済む。
【0065】
また、上記したように濾過装置10は、入水室12内において農業用水を上下方向に通水させる構造とされていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば図9に示すように横置き状態あるいは傾斜した状態となるように設置し、水平方向に農業用水を通水させる構成としてもよい。濾過装置10を傾斜した状態で設置する場合は、上記したように濾過装置10を立設した場合と同様に濾過動作に伴う入水室12への通水が完了すると、フィルター30によって捕捉された異物が入水室12内で沈降するため、異物の沈降位置に併せて排出部20を設けることにより、農業用水から除去された異物を容易に外部に排出できる。また、濾過装置10を横置き状態とした場合は、濾過動作が完了するとフィルター30によって捕捉された異物はフィルター30の近傍に沈降するものと想定される。そのため、濾過装置10を横置きとする場合は、濾過動作の完了時にフィルター30によって捕捉された異物が集まると想定される部分を集積部19とし、この近傍に別途排出部を設けた構成とすることが望ましい。
【0066】
上記実施形態において、フィルター30は、布31を袋状に縫製したものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばいわゆるシームレス加工を採用するなどして、縫い目のない形状のものとすることも可能である。このようにフィルター30を縫い目部分が全くない、あるいは殆どないものとすれば、縫い目部分に砂や泥が溜まるのを防止でき、フィルター30の濾過能力の経年劣化を防止できる。
【0067】
また、上記したフィルター30は、布31を二重に重ねたものを袋状に縫製したものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、さらに多層に重ね合わせたものであっても、単層のものであってもよい。また、濾過装置10は、フィルター30を突っ張った状態で装着するために支持部材22を設けたものであったが、例えば支持部材22を設けずに袋状のフィルター30を装着した構成としたり、支持部材22を設けずに入水室12の上端側の開口を閉塞するように布31を張ったものであってもよい。
【0068】
フィルター30を構成する布31は、合成繊維によって構成される単繊維状の経糸31aと緯糸31bとを編み込んだものであったが、布31として編み込む前の経糸31aや緯糸31bの時点、あるいは、布31として編み込まれた時点でポリテトラフロロエチレン樹脂(PTFE)等の砂や泥等の異物や水垢、酸化鉄や、有機微生物によって発生するスライム等が付着しにくい物質を付着させて表面処理を施したものであってもよい。かかる構成によれば、フィルター30の目詰まりをより一層確実に防止できる。
【0069】
ここで、上記実施形態において例示した濾過装置10は、図3等に示すように支持部材22の外側からフィルター30を被せ、固定具32によって筒体23に対して固定した構造である。そのため、濾過作業中にフィルター30に対して水圧がかかるとフィルター30が引っ張られて固定具32による固定部分等に応力が集中した状態となり、フィルター30の寿命が縮まる可能性がある。
【0070】
そこで、かかる知見に基づき、濾過装置10は、図10や図11に示すように、保護筒55と押さえ部材56とを備えた保護部材53をフィルター30の外周に配することにより、フィルター30を保護した構成としてもよい。さらに具体的に説明すると、濾過装置10は、通液性を有する筒状の保護筒55をフィルター30の外周にほぼ密着するように装着し、押さえ部材56によって保護筒55を上方から押さえ込んで固定した構成としてもよい。
【0071】
さらに詳細に説明すると、保護筒55は、パンチングメタル(多孔板)や金網等によって構成され、その外径が下方本体部13側の筒体23と略同一であり、上端側および下端側が開口した肉薄の筒体である。保護筒55は、図10に示すように、フィルター支持体21に対して装着されたフィルター30の外周に沿い、下端部が下方本体部13の底面に突き当たるように装着される。
【0072】
図10や図11に示すように、保護筒55の上端側の開口部分には、押さえ部材56が装着される。押さえ部材56は、図11に示すように保護筒55の上端側の開口部分を閉塞する閉塞部57と、支持片58とに大別される。閉塞部57は、円盤形であり、保護筒55の内側に嵌り込み、保護筒55の開口部分を閉塞する蓋部57aと、蓋部57aから外側に張り出したフランジ部57bとに大別される。蓋部57aは、支持片58に対して反対側に突出している。また、フランジ部57bは、外径が保護筒55の外径よりも僅かに大きい。そのため、蓋部57aを保護筒55の上端側の開口部分に嵌め込むと、図10に示すようにフランジ部57bが保護筒55の縁に突き当たった状態となる。
【0073】
支持片58は、図10や図11に示すように、蓋部57aとは反対方向に突出した薄い板状の部材である。本実施形態では、4枚の支持片58が閉塞部57に対して一体化されている。支持片58は、それぞれ閉塞部57の略中心に放射状に配されており、閉塞部57の周方向に等間隔に配されている。支持片58は、保護筒55の上端部に蓋部57aを嵌め込んだ状態で、上方から上方本体部15を被せて下方本体部13と一体化することによって上方本体部15の上端側の内壁面に突き当たる形状とされている。そのため、フィルター30の外側に保護筒55を装着し、その上端部に押さえ部材56を装着した状態で下方本体部13と上方本体部15とを一体化すると、保護筒55が下方本体部13と押さえ部材56とによって挟まれ、図10や図11に示す姿勢で上下方向に移動不可能な状態となり、しっかりと支持される。
【0074】
濾過装置10を図10や図11に示すような構成とした場合は、保護筒55や押さえ部材56がフィルター30に沿うように配されている。そのため、保護筒55等を設けた構成とすれば、濾過作業中にフィルター30に対して水圧がかかってもフィルター30が保護筒55や押さえ部材56の蓋部57aの内壁面に張り付いた状態となり、フィルター30に対して引っ張り力が殆ど作用しない。また、上記したような構成とした場合は、保護筒55がパンチングメタルや金網のような多孔性の構造で作成されているため、フィルター30が保護筒55に張り付いても濾過能力が低下しない。そのため、濾過装置10は、図10や図11に示すような構成とすることにより、フィルター30に無理な応力が作用するのを防止でき、フィルター30の損傷を最小限に抑制することができる。なお、保護筒55は、必ずしも金属製である必要はなく、樹脂等により形成されたものであってもよい。
【0075】
上記したように、図10や図11に示すような構成とした場合は、フィルター30に対して水圧がかかった際に、フィルター30が保護筒55に加えて蓋部57aにも張り付いた状態になる可能性がある。そのため、蓋部57aについても保護筒55と同様にパンチングメタルや金網等で作成することが望ましい。
【0076】
上記した撒液システム1において採用されている撒液用チューブ5は、従来公知のチューブを採用することができるが、屈曲自在であり、繰り返して屈曲させたり、荷重がかかってもひび割れ等を生じないような機械的強度に優れたものや、耐候性や耐薬品性、耐膨潤性、耐熱性、耐寒性、耐引裂性、耐衝撃性等に優れたものであることが好ましい。さらに具体的には、撒液用チューブ5は、例えばポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド、ポリエステル等の熱可塑性樹脂、天然ゴム、合成ゴム、或いは、エラストマー等から選択されたものを素材としたり、これらの素材を適宜組み合わせて作製されたものとすることが可能である。また、撒液用チューブ5は、前記したような素材に加えて、必要に応じて紫外線防止剤や抗酸化剤、着色剤、その他の添加剤を含有させてもよい。また、撒液用チューブ5は、収納、運搬等する際に取り扱いが容易になるように巻き取り可能な程度に屈曲自在であることが望ましい。
【0077】
上記実施形態の撒液システム1は、井戸や河川から汲み上げた農業用水を濾過装置10で濾過して撒液用チューブ5から農地Fに散布するものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば給水流路3の中途で液体肥料等を農業用水に混入する構成としてもよい。すなわち、撒液システム1および濾過装置10を通過する液体は、農業用水(水)に限定されるものではなく、他の物質を混合あるいは溶解した液体等であってもよい。
【0078】
上記した濾過装置10は、図2や図6、図11等に示すように、集積部19の下端部分が平坦であったが、本発明はこれに限定されるものではなく、排出部20に向けて下り勾配を付けたスロープ状の形状としてもよい。かかる構成によれば、集積部19に残存している砂や泥等の異物や農業用水等の残留物を排出部20からスムーズに排出することができる。
【0079】
また、上記実施形態の濾過装置10は、出水口17および入水口18が設けられた高さ(上下方向の位置)が異なるものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば図12や図13に示すように本体部11の側方から入水口18が貫通し、本体部11の内側に設けられた入水室12と連通した構造とすることも可能である。かかる構成とすれば、濾過装置10に対して接続される給水流路3の高さを揃えることができ、濾過装置10と給水流路3との接続を簡便に行える。
【0080】
濾過装置10は、本発明の一実施形態を示したものに過ぎず、本発明の濾過装置は、例えば図14に示す濾過装置70のようなものであってもよい。以下、濾過装置70の構造について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、濾過装置70において、濾過装置10と同様の構造を有する部分については同一の符号を付し、詳細の説明については省略する。
【0081】
濾過装置70は、主要部が本体部71によって構成されるものであり、本体部71が架台95によって支持されている。濾過装置70は、図15に示すように、本体部71を構成する上方本体部73の内部に円筒型のフィルター筒72が取り付けられており、このフィルター筒72の外側から上記実施形態において説明したフィルター30を装着した構造となっている。すなわち、濾過装置70は、上記した濾過装置10と大部分の構成が共通しているが、本体部11に設けられていたフィルター支持部材22に代わってフィルター筒72を設け、このフィルター筒72に対してフィルター30を装着した構成とされている。
【0082】
さらに具体的に説明すると、本体部71は、図15や図16に示すように、外観が略カプセル型の形状となっており、上方本体部73と下方本体部75とに分割可能な構造となっている。上方本体部73の中央には、フィルター筒72が差し込まれる筒状部76が設けられている。上方本体部73の側面には、出水口77および入水口78として機能する筒状の部分が存在する。出水口77は、上方本体部73の側面を貫通し、筒状部76の内部空間と連通している。また、入水口78は、上方本体部73の内側であって、筒状部76の外側の空間80と連通している。
【0083】
下方本体部75の底部には、図15や図16に示すように、筒状部76の外側に形成された空間80と連通する排出口81が設けられている。排出口81には、必要に応じて取り外し可能な蓋が取り付けられており、常時は閉塞されている。
【0084】
フィルター筒72は、円筒形で籠状のフィルター筒本体85に対して多数のフィルターリング86を積み重ねた状態で装着し、フィルター筒本体85のフランジ87,88によって挟み込んだ構造となっている。フィルターリング86は、樹脂製であり、図18に示すようにドーナツ状で平たい部材である。フィルターリング86は、多数の溝86aが放射状に設けられている。そのため、図15や図16のように多数のフィルターリング86を積み重ねて密着させた状態にすると、図18(b)に示すように溝86aによって形成された小さな開口90がフィルター筒72の全周にわたって形成される。開口90の大きさは、撒液用チューブ5の目詰まりの原因となる砂や泥等のような異物が通過できない程度の大きさになる。
【0085】
フィルター筒72は、上方本体部73の筒状部76に対して差し込まれて連結されている。これにより、フィルター筒72と筒状部76の内部に形成された空間とが連通し、浄化水流入室91が形成される。浄化水流入室91は、フィルター筒72の内部空間と、筒状部76の内部空間とが連通して形成される空間であり、出水口77と連通している。
【0086】
フィルター筒72には、図15や図17に示すように、フィルター30が被せられ、固定されている。そのため、濾過装置70は、フィルター30とフィルター筒72の2つのフィルターを農業用水が通過する構成とされている。また、濾過装置70は、浄化水流入室91側にフィルター筒72が存在し、後述する入水室92側にフィルター30が存在する。
【0087】
濾過装置70は、上記したようにして上方本体部73に対してフィルター筒72を装着し、フィルター筒72に対してフィルター30を装着した状態とされた後、上方本体部73の下方に下方本体部75が取り付けられる。上方本体部73と下方本体部75とが一体化されると、フィルター筒72や筒状部76の外側に入水室92が形成される。入水室92は、筒状部76の外側に形成された空間80と下方本体部75の内部空間とが一体化して形成される空間であり、入水口78と連通している。
【0088】
濾過装置70は、上記した濾過装置10と同様に給水流路3の中途に接続される。すなわち、給水流路3のうち上流側(給水源側)の配管が入水口78に接続され、下流側の配管が出水口77に接続される。そのため、給水流路3の中途に設けられたポンプ9が作動し、井戸等の給水源から汲み上げられた農業用水は、図17に矢印で示すように入水口78から入水室92に流入する。
【0089】
入水室92に流入した農業用水は、フィルター筒72に被せられたフィルター30を通過し、フィルター筒72側に流れ込む。この際、農業用水中に含まれている砂や泥等のような異物の大部分が、フィルター30の表面に捕捉される。フィルター30によって捕捉された異物は、フィルター30の表面から下方に設けられた入水室92内に沈降する。
【0090】
一方、フィルター30を通過した農業用水は、フィルター筒72の外周に多数設けられた開口90を通過して浄化水流入室91に流入する。この際、フィルター30を通過した農業用水中に、フィルター30において捕捉しきれなかった異物が残存している場合であっても、この異物は開口90を通過できず、浄化水流入室91内に流入できない。従って、浄化水流入室91内に流入した農業用水には、砂や泥等のような撒液用チューブ5の目詰まりの原因となるような異物は殆ど含まれていない。浄化水流入室91内に流入した清浄な農業用水は、出水口77を介して撒液用チューブ5に向けて送り出される。
【0091】
フィルター30によって捕捉された異物は、下方本体部75の底部に設けられた排出口81に装着された蓋を外すことにより排出することができる。また、フィルター筒72によって捕捉された異物は、下方本体部75とフィルター30とを取り外すことにより取り除くことができる。
【0092】
上記したように、上記した濾過装置70は、フィルター30に加えてフィルターリング86を積層して構成されるフィルター筒72とを備えた構成であり、2つのフィルターを備えた構成とされている。そのため、濾過装置70によれば、農業用水をより一層清浄な状態として撒液用チューブ5に供給することができ、撒液用チューブ5の目詰まりを確実に防止できる。
【0093】
上記した濾過装置10,70は、いずれも本発明の一実施形態を示したものに過ぎず、例えば図19に示す濾過装置100のようなものであってもよい。以下、濾過装置100の構造について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、濾過装置100は、上記した濾過装置70と大部分の構成が共通するため、共通する部分については同一の符号を付し、詳細の説明については省略する。
【0094】
図19に示すように、濾過装置100は、上記した本体部71と同様にカプセル状の形状を有する本体部101を有し、この内部に接続部材103および旋回流発生部材105を配すると共に、接続部材103にフィルター筒72を接続した構成とされている。本体部101は、本体構成部材106と本体構成部材107とに分割可能な構成とされている。
【0095】
さらに具体的には、本体構成部材106は、有底で円筒状の部材であり、その外周部分に接続管108,109とが設けられた構成とされている。接続管108,109は、いずれも本体構成部材106の内部空間と連通している。接続管108,109は、それぞれ本体構成部材106の外側に向けて突出しており、給水流路3を配管接続可能な構成とされている。
【0096】
本体構成部材106の内側には、後述する接続部材103を配置するための段部106aが設けられている。段部106aは、本体構成部106の径方向内側に向けて突出している。
【0097】
本体構成部106の底部106bは、図19に示すように、濾過装置100の設置状態において略中央部に向けて下り勾配が付くように傾斜した形状とされている。底部106bの略中央部分には、排出口106cが設けられている。排出口106cには、ボールバルブなどのバルブ106dが取り付けられている。
【0098】
本体構成部材107は、筒状で頂部が半球状の部材である。本体構成部材107は、本体構成部材106に対して水密に接続可能な構成とされている。本体構成部材107を本体構成部材106に接続すると、接続管108を介して外部から農業用水を導入可能な入水室110(処理液流入部)が形成される。
【0099】
接続部材103は、図22に示すように座部111と、フィルター筒接続部112と、出水口113とを有する。座部111は、外径が本体構成部材106の内径と略同一の円盤状とされており、その外周部分に複数の連通孔111aを有する。
【0100】
フィルター筒接続部112は、座部111の略中央部分から、座部111に対して略垂直に立ち上がった円筒状の部分であり、底部が座部111によって閉塞されている。フィルター筒接続部112の開口部分には、上記したフィルター筒72を構成するフィルター筒本体85の端部が差し込まれ、水密状態となるように接続されている。これにより、フィルター筒85の内側に浄化水流入室114が形成されている。
【0101】
フィルター筒72の上端側および下端側には、図21に示すように外周に溝を有するリング状の濾材締結部材102aが取り付けられている。フィルター筒72には、図20に示すような筒状のフィルター104がフィルター筒72の外周を囲むように被せられている。フィルター104は、図19に示すように、上端側および下端側の部位を濾材締結部材102aの溝に嵌るように取り付けられたバンド状あるいはリング状の固定具102bによって挟み込むことにより固定されている。
【0102】
フィルター104は、上記したフィルター30と同様の素材で作成されており、同様の濾過性能を有する。そのため、濾過装置100は、フィルター筒72の外側に形成された入水室110側から浄化水流入室114側に向かう方向に農業用水を流すことにより、この農業用水中に含まれている砂や泥等の異物を捕捉することができる構成となっている。
【0103】
出水口113は、フィルター筒接続部112の外周面に連通した筒状の部分である。出水口113の端面113aは、座部111の外周に沿うように湾曲している。
【0104】
図19に示すように、接続部材103は、本体構成部材106の内側に、フィルター接続部112が上方(底部106bとは反対方向)に向けて突出するように配される。接続部材103を本体構成部材106の内側に配すると、座部111が段部106aに引っかかり、空間が形成される。座部111の下方に形成される空間は、上記した濾過装置10の集積部19と同様に、農業用水を濾過することにより捕捉された砂や泥が集まる集積部115として機能する。集積部115は、座部111に設けられた連通孔111aを介して座部111よりも上方の空間119と連通している。
【0105】
また、接続部材103は、出水口113の開口が本体構成部材106に設けられた接続管109と連通するように配置される。そのため、濾過装置100は、接続管109が接続部材103のフィルター筒接続部112の内側と連通している。
【0106】
旋回流発生部材105は、図23に示すように平面視が略円形の内輪部116と、これよりも大径の外輪部117とを有し、これらの間に複数の羽根118を取り付けた構成とされている。内輪部116は、内径が上記した接続部材103のフィルター筒112の外径と略同一であり、外輪部117と中心が略合致するように配されている。また、外輪部117は、外径が本体構成部材106の内径と略同一とされている。
【0107】
羽根118は、板状の部材であり、内輪部116および外輪部117に対して螺旋状に取り付けられている。内輪部116と外輪部117との間に形成された空間に、内輪部116の周方向に複数、周方向に略等間隔に並べて取り付けられている。旋回流発生部材105は、図19や図24に示すように、接続部材103のフィルター筒接続部112を内輪部116に挿通した状態で取り付けられる。そのため、羽根118は、接続部材103にフィルター筒72を接続した状態においてフィルター筒72の延長方向に延びる軸Lを想定すると、この軸Lに対して傾斜した螺旋状の面を形成している。
【0108】
旋回流発生部材105を接続部材103に取り付けた状態において、上記した接続管108は、接続部材103の座部111と旋回流発生部材105との間に形成される空間119に開口した状態になる。そのため、図25に矢印で示すように、接続管108を介して外部から空間119に農業用水を導入すると、農業用水は旋回流発生部材105の下方から上方に向かい、羽根118に沿って流れる旋回流として入水室110内に流入させることができる。
【0109】
本実施形態の濾過装置100は、上記した濾過装置10,70と同様に給水流路3の中途に接続して使用される。さらに具体的には、給水流路3のうち上流側(給水源側)の部分の配管が接続管108に接続されると共に、下流側の配管が接続管109に接続される。
【0110】
濾過装置100を給水流路3に接続した状態でポンプ9を作動させると、井戸等の給水源から汲み上げられた農業用水は、図25に矢印で示すように接続管108を介して旋回流発生部材105と接続部材103の座部111との間に形成された空間119に流入する。空間119に流入した農業用水は、旋回流発生部材105に設けられた各羽根118に沿って流れて入水室110内に流入する。この際、入水室110に流入する農業用水は、フィルター筒72およびこの外側に装着されたフィルター104に沿って流れる旋回流となる。
【0111】
入水室110に農業用水が流入すると、フィルター筒72に被せられたフィルター104を通過してフィルター筒72の内側に形成された浄化水流入室114内に流れ込む。この際、農業用水中に含まれている砂や泥等のような異物の大部分は、フィルター104の表面に捕捉される。フィルター104によって捕捉された異物は、旋回流となって入水室110に流れ込む農業用水の水流によりフィルター104の回りを循環するため、フィルター104の網目に噛み込んだり付着する可能性が低い。すなわち、本実施形態では、入水室110に流入し旋回流となってフィルター筒72やフィルター104の外側を流れる農業用水の流れにより、異物がフィルター104の網目に噛み込んだり付着することによるフィルター104の目詰まりを緩和することができる。
【0112】
フィルター104を通過した農業用水は、フィルター筒72の外周に多数設けられた開口90を通過して浄化水流入室114内に流入する際にさらに濾過され、浄化される。そのため、農業用水は、浄化水流入室114に流入した時点で砂や泥等の異物を殆ど含まない清浄な状態になっている。浄化水流入室114に流入した農業用水は、接続管109を介して濾過装置100の外部に取り出される。そして、この農業用水は、給水流路3やこれに接続された分配管6を通って各撒液用チューブ5に供給される。
【0113】
一方、ポンプ9を停止させ、濾過装置100への農業用水の供給を停止すると、入水室110における農業用水の流れが停止し、農業用水の濾過中にフィルター104によって浄化水流入室114側への流入が阻止されていた異物が、入水室110に残存していた農業用水と共に下方に落下する。これにより、異物を含む農業用水は、座部111に設けられている連通孔111aを介して集積部115に流入する。
【0114】
集積部115に流入した異物や農業用水は、ポンプ9の作動中、停止中にかかわらず本体構成部材106の底部106bに設けられたバルブ106dを開くことにより外部に排出することができる。なお、本実施形態では、底部の排出口106cにバルブ106dを設けた構成を例示したが、バルブ106dに代わって蓋部材等を設け、これを開くことにより農業用水や異物を排出できる構成としてもよい。
【0115】
上記したように、濾過装置100は、浄化水流入室114を構成する筒状のフィルター筒72の外側にフィルター104を被せたものであり、農業用水を入水室110に流入させると、この農業用水がフィルター104やフィルター筒72に沿って流れる旋回流となり、フィルター104の全面に行き渡ることとなる。そのため、濾過装置100のように農業用水が旋回流となる場合は、農業用水の水流がフィルター104の一部に集中してフィルターの一部だけが目詰まりすることによる濾過性能の低下といったような不具合が発生しにくく、フィルター104全体で略均一に農業用水を濾過することができる。すなわち、濾過装置100では、フィルター104全体を農業用水の濾過のために有効利用することができる。
【0116】
濾過装置100は、上記した濾過装置70と同様に外周に多数の開口90を持つフィルター筒72にフィルター104を被せて使用される。そのため、本実施形態の濾過装置100は、フィルター104に加えて、フィルター筒72についても農業用水の濾過用のフィルターとして機能する。従って、濾過装置100についても、濾過装置70と同様に液体中に含まれている異物を確実に捕捉できる。
【0117】
濾過装置100は、濾過装置70と同様に、農業用水の濾過時にフィルター104側からフィルター筒72側に向けて農業用水が流れる構成とされている。そのため、農業用水に含まれている異物は、先ずフィルター104によって捕捉されることとなり、フィルター筒72側に流れ込む異物はごく少量であったり、フィルター筒72に設けられた開口90や撒液用チューブ5の小孔8の目詰まりの原因とならない程度の極微小な粒径のものであると想定される。従って、濾過装置100は、フィルター筒72の開口90や撒液用チューブ5の小孔8が目詰まりする可能性が極めて低く、フィルター筒72の洗浄や交換等のメンテナンスの実施頻度を最小限に抑制できる。
【0118】
上記した濾過装置100は、濾過装置70と同様にフィルター筒72を有し、これに対してフィルター104を被せると共に、旋回流発生部材105を設けることによってフィルター104やフィルター筒72に沿って流れる農業用水の旋回流を発生させる構成のものであったが、本発明はこれに限定されるものではない。さらに具体的には、フィルター筒72に代えて、例えば上記した濾過装置10に示したフィルター支持体21のように支持部材22を組み合わせて骨格構造を構成したものに対してフィルター30やフィルター104を被せた構成としてもよい。
【0119】
上記した濾過装置100は、本体構成部材106の内部に接続部材103を配し、これに旋回流発生部材105を装着した構成であったが、本発明はこれに限定されるものではなく、図26や図27に示す濾過装置130のような構成とすることも可能である。以下、濾過装置130の構成について説明する。なお、濾過装置130は、上記した濾過装置100と大部分が類似した構成であるため、共通する部分については詳細の説明を省略する。
【0120】
濾過装置130は、上記した濾過装置100の本体構成部材107に相当する部分を図28に示すような本体構成部材131で構成しているが、本体構成部材106に相当する部分を本体構成部材132,133により構成し、必要に応じて本体構成部材132,133を上下に分割できる構成としている点等で上記した濾過装置100と構成が異なる。
【0121】
さらに具体的には、本体構成部材132は、上記した本体構成部106を構成する円筒状の胴体部分に相当し、図29に示すように上端側および下端側にネジ溝132a,132bが設けられており、本体構成部材131の下端部および本体構成部材132の上端部とネジ嵌合可能な構成とされている。本体構成部材132の外周部には、接続管135,136が設けられており、これを介して給水流路3に対して配管接続可能な構成とされている。
【0122】
本体構成部材132は、内部に濾過装置100における接続部材103に相当する部分を一体化して設けた構成とされている点に特徴を有する。すなわち、本体構成部材132の内部には、座部137およびフィルター筒接続部138が設けられている。座部137は、上記した接続部材103の座部111に相当するものであり、フィルター筒接続部138は、フィルター筒接続部112に相当するものである。フィルター筒接続部138は、上記した接続管136と連通している。また、座部137には、多数の開口139が設けられいる。
【0123】
本体構成部材133は、上記した本体構成部106の底部側の部位に相当するものであり、図30に示すように鉢状の形状とされている。本体構成部材133の上端側には、ネジ溝133aが設けられており、これを介して上記した本体構成部材132に対して着脱可能な構成とされている。本体構成部材132の底部には排出口133bが設けられており、常時は蓋部材133cによって閉鎖されている。
【0124】
濾過装置130は、図27に示すように本体構成部材131〜133を一体化することにより内部に構成される入水室140(処理液流入部)内にフィルター筒72および旋回流発生手段105を取り付け、フィルター筒72にフィルター104を装着した構成とされている。さらに具体的には、フィルター筒72は、本体構成部材132のフィルター筒接続部138に差し込まれ、固定されている。これにより、フィルター筒72の内部に浄化液流入室141が形成されている。また、旋回流発生手段105は、図27に示すように本体構成部材132の座部137とフィルター筒72の底側とで挟まれるように配されている。フィルター104は、上記した濾過装置100の場合と同様に、フィルター筒72に覆い被さるように装着され、フィルター筒72の上端側および下端側の部位を濾材締結部材102aおよび固定具102bによって挟み込むことにより固定されている。
【0125】
濾過装置130についても、上記した濾過装置100と同様にして使用される。すなわち、濾過装置130は、給水流路3のうち上流側の部分の配管が接続管135に接続されると共に、給水流路3の下流側の部分の配管が接続管136に接続される。このように配管接続した状態でポンプ9を作動させると、図27に矢印で示すように井戸等から汲み上げられた農業用水が旋回流発生手段105の下方から入水室140内にフィルター筒72およびフィルター104に沿って流れる旋回流となって流入する。
【0126】
入水室140に流入した農業用水は、フィルター104およびフィルター筒72を通過して、浄化水流入室114内に流れ込む。この際、農業用水中に含まれている砂や泥等のような異物の大部分は、フィルター104の表面にいったん捕捉されるが、フィルター104の表面を旋回流となって流れる農業用水によって大部分が取り去られるため、フィルター104の網目に噛み込んだり、付着した状態とならない。フィルター104およびフィルター筒72の外周に多数設けられた開口90を通過して浄化水流入室114内に流入し、浄化された農業用水は、接続管136を介して濾過装置130の外部に取り出され、各撒液用チューブ5に供給される。
【0127】
濾過装置130は、ポンプ9を停止させ農業用水の供給を停止すると、入水室140における農業用水の流れが停止、入水室140内を落下する。これに伴い、入水室140内やフィルター104に付着している異物が入水室140を落下する農業用水と共に落下し、本体構成部材132の底部に設けられた開口139を介して本体構成部材133側に落下する。これにより、異物を含む農業用水は、本体構成部材133内に集まる。そのため、ポンプ9を停止させた後、本体構成部材133を本体構成部材132から取り外せば、濾過によって除去された異物を外部に排出することができる。
【0128】
また、濾過装置130についても、上記した濾過装置100と同様に本体構成部材133の底部に排出口を設け、これにボールバルブなどのバルブを取り付けた構成とすることも可能である。かかる構成とした場合は、ポンプ9が動作中であるか否かにかかわらず前記したバルブを開くことにより本体構成部材133内に集まった異物や農業用水を外部に排出することができる。
【0129】
濾過装置130は、濾過装置100と同様に農業用水を流入させると、この農業用水がフィルター104やフィルター筒72に沿って流れる旋回流となる構成となっている。そのため、濾過装置130は、濾過装置100と同様に濾過対象である異物を含む農業用水がフィルター104全体に略均等に行き渡ることとなり、フィルター104が一部だけで異物で目詰まりするのを防止でき、フィルター104の交換や清掃等のメンテナンスの頻度を最小限に抑制することができる。
【0130】
また、濾過装置130は、本体構成部材131内に上記した濾過装置100の接続部材103に相当する部分を組み込んで一体化した構成であるため、部品点数が少なく製造コストを安価とすることができるばかりか、水流の影響を受けても接続部材103に相当する部分やこれに装着されたフィルター筒72、旋回流発生部材105の位置決め精度が高い。そのため、濾過装置130のような構成とすれば、水流の大小にかかわらず安定した濾過性能を発揮することができる。
【0131】
濾過装置130は、本体構成部材132,133がネジ嵌合しており、両者を分解することにより濾過を終了した際に内部に残存している農業用水や補足された異物を一気に排出することができる。そのため、濾過装置130は、濾過完了後のメンテナンスも容易である。
【実施例】
【0132】
以下、本発明の実施例について説明する。
図31は、本発明の一実施形態である撒液システム1について、濾過装置10に用いるフィルター30の材質と濾過能力との関係についての試験方法を模式的に示した概念図である。また、表1は、上記実施形態に示した撒液システム1において濾過装置10のフィルターの材質を変更して撒液試験を行った結果を示すものである。
【0133】
撒液システム1は、図31に示すように農地Fに灌水するための灌水流路2と、河川や農業用の井戸から汲み上げられる農業用水に相当する水を給水源Wから汲み上げて灌水流路2に水を供給する給水流路3とから構成されている。灌水流路2は、農地Fに対して4本の撒液用チューブ5を30[m]に渡って略平行に並べることによって構成した。撒液用チューブ5には、住化農業資材株式会社製の商品名「スミサンスイR−ハウスワイド」(チューブ折径62[mm],相当径34[mm])を採用した。4本の撒液用チューブ5は、それぞれ分配管6を介して給水流路3に接続した。
【0134】
本実施例では、上記したような撒液システム1において、給水源Wから汲み上げられる水は、粒度分布が50〜200[μm]の粘土鉱物を0.05[重量%]含む水であった。本実施例では、濾過装置10のフィルター30として、上記実施形態において例示した単繊維の経糸31aと緯糸31bとを編んだ単繊維性の布(サンプルA)を採用した場合と、不織布(サンプルB)および金網(サンプルC)を採用した。サンプルA〜Cの目開きは、それぞれ100[μm]に統一した。
【0135】
本実施例では、上記した装置構成の下、総給水量が164[リットル/分]、すなわち各撒液用チューブ5に対する給水量が41[リットル/分・本]となるように給水量を調整し、1日に15分間の散水を4回行う実験を2週間に渡って行った。また、2日おきに非通水の状態で濾過装置10の排出部20の蓋20aを開き、集積部19に溜まった泥や砂等の捕集物を排出した。
【0136】
【表1】

【0137】
以下、上記した条件下で撒液試験を行った結果について表1を参照しながら説明する。表1に示すように、本実施例では、サンプルA〜Cをフィルター30として採用し、上記したような撒液試験を行う前後におけるフィルター30の重量差を算出すると共に、撒液試験後のフィルター30の清浄度を目視で確認した。また、撒液試験中における撒液状態の変化について、撒液用チューブ5における水の吐出状態や撒液後における農地Fの湿潤状態を目視で確認した。
【0138】
上記した撒液試験の結果、表1に示すように、フィルター30としてナイロン製の単繊維を編み込んだ布(サンプルA)を採用した場合は、フィルター30の重量が3.0[g]増加しただけであり、撒液試験後のフィルター30を目視しても泥や砂等の異物は殆ど噛み込んでいなかった。また、撒液用チューブ5は、撒液試験の試験期間中に渡って全く目詰まりを起こさず、散水分布や散水量が適正であり、撒液状況が極めて良好であった。
【0139】
一方、フィルター30として不織布(サンプルB)を採用した場合は、撒液試験の前後でフィルター30の重量が420[g]増加した。また、撒液試験後のフィルター30を目視すると、複雑に入り組んだ繊維同士の間に泥や砂等の異物が噛み込んでおり、サンプルA〜Cのうちで最も清浄度が低かった。また、撒液用チューブ5は、撒液試験開始から8日目に完全に目詰まりし、撒液不可能な状態となった。
【0140】
また、フィルター30として金網(サンプルC)を採用した場合は、撒液試験の前後でフィルター30の重量が60[g]増加した。また、撒液試験後のフィルター30を目視すると、一部の網目に泥や砂等の異物が噛み込んでおり、単繊維製の布をフィルター30としたサンプルAよりも清浄度が低かった。また、撒液用チューブ5における撒液量は、撒液試験開始から徐々に減少した。そのため、撒液試験開始日から2週間経過すると、15分に渡る撒液試験の終了時から1時間経過した時点で農地Fが乾燥する撒液不良箇所が発生した。
【0141】
上記した撒液試験により、単繊維を編み込んだ布(サンプルA)をフィルター30として採用することにより、不織布(サンプルB)や金網(サンプルC)をフィルター30として採用する場合に比べてフィルター30の目詰まりを確実に防止できた。従って、上記した撒液試験により単繊維を編み込んだ布(サンプルA)がフィルター30として最適であることが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】本発明の一実施形態である撒液システムを概念的に示す斜視図である。
【図2】図1に示す撒液システムにおいて採用される濾過装置を示す分解斜視図である。
【図3】図2に示す濾過装置を示す断面図である。
【図4】(a)は図3のA方向矢視図であり、(b)は図3のB方向矢視図である。
【図5】(a)は図2に示す濾過装置において採用されているフィルターを示す斜視図であり、(b)は(a)のA部拡大図、(c)は(a)のB方向矢視図である。
【図6】図2に示す濾過装置の変形例を示す断面図である。
【図7】図6に示す濾過装置を示す断面図である。
【図8】図2に示す濾過装置の別の変形例を示す断面図である。
【図9】図2に示す濾過装置のさらに別の変形例を示す断面図である。
【図10】図2に示す濾過装置の変形例を示す断面図である。
【図11】図10に示す濾過装置の分解図である。
【図12】図2に示す濾過装置のさらに別の変形例を示す図であり、(a)は当該濾過装置の天面図、(b)は当該濾過装置の正面図である。
【図13】図12に示す濾過装置の断面図である。
【図14】図12に示す濾過装置のさらに別の変形例を示す正面図である。
【図15】図14に示す濾過装置の分解図である。
【図16】図14に示す濾過装置を構成する本体部を示す断面図である。
【図17】図14に示す濾過装置の断面図である。
【図18】(a)は図14に示す濾過装置において採用されているフィルターリングを示す正面図であり、(b)は図15のA部拡大図である。
【図19】本発明の一実施形態にかかる濾過装置を示す断面図である。
【図20】図19に示す濾過装置で採用されているフィルターを示す斜視図である。
【図21】(a)は図19に示す濾過装置で採用されている濾材締結部材を示す正面図であり、(b)は(a)のA−A断面図、(c)は(a)の側面図、(d)は(a)に示す濾材締結装部材と固定具とによるフィルターの取り付け状態を示す断面図である。
【図22】図19に示す濾過装置で採用されている接続部材を示す斜視図である。
【図23】(a)は図19に示す濾過装置で採用されている旋回流発生部材を示す正面図であり、(b),(c)は(a)の側面図、(d)は(a)のA−A断面図、(e)は(a)の斜視図、(f)は(a)の裏面図である。
【図24】図19に示す濾過装置で採用されている本体構成部材に対して接続部材と旋回流発生部材を組み付けた状態を示す斜視図である。
【図25】図19に示す濾過装置において発生する水流の流れを示す斜視図である。
【図26】図19に示す実施形態の変形例にかかる濾過装置を示す斜視図である。
【図27】図26に示す濾過装置の内部構造を示す断面図である。
【図28】(a)は図26に採用されている本体部構成部材の平面図であり、(b)は(a)のA−A断面図である。
【図29】(a)は図26に採用されている本体部構成部材の斜視図であり、(b)は(a)の側面図、(c)は(a)の断面図、(d)は(a)の天面図である。
【図30】(a)は図26に採用されている本体部構成部材の平面図であり、(b)は(a)の天面図、(c)は(b)のA−A断面図、(d)は(b)のB−B断面図である。
【図31】本発明の実施例にかかる濾過装置の試験方法の概略を示す概念図である。
【符号の説明】
【0143】
1 撒液システム
5 撒液用チューブ
10,70,100,130 濾過装置
11,71,101 本体部
12,92,110,140 入水室(処理液流入室)
13,73 下方本体部
15,75 上方本体部
19,115 集積部
20 排出部
21 フィルター支持体(骨格構造部)
30,104 フィルター
31 布
31a 経糸
31b 緯糸
31c 交差部
36,114,140 浄化液流入室
41 噴霧手段
50 シャワーヘッド
53 保護部材
55 保護筒
56 押さえ部材
106,107,131,132,133 本体構成部材
105 旋回流発生部材
118 羽根

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撒液に用いられる散液体に供給するための液体を濾過する撒液システム用の濾過装置であって、
外部から液体が流入する処理液流入部と、
当該処理液流入部に流入した液体中に含まれる異物の通過を阻止する濾過手段と、
当該濾過手段を通過した液体を撒液体に向けて送液する送液部とを有し、
前記濾過手段は、単繊維によって構成されていることを特徴とする撒液システム用の濾過装置。
【請求項2】
処理液流入部が外部から液体を導入可能な筒体により構成されており、
当該筒体に流入する液体の流れ方向下流側に、液体を流出するための流出口を有し、
濾過手段は、前記流出口から流出する液体を濾過するものであり、
前記流出口よりも筒体に流入する液体の流れ方向上流側には、濾過手段によって通過を阻止された異物が集積される集積部が設けられており、当該集積部には、異物を排出するための異物排出口が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の撒液システム用の濾過装置。
【請求項3】
処理液流入部は、外部から液体を導入可能な筒体により構成されており、上端側に筒体内に導入された液体を流出する流出口を有するものであり、
濾過手段は、処理液流入部の上端側の流出口に覆い被さるように装着され、流出口から流出する液体を濾過するものであり、
処理液流入部の下端側には、濾過手段によって通過を阻止された異物が集積される集積部が設けられており、当該集積部には、異物を排出するための異物排出口が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の撒液システム用の濾過装置。
【請求項4】
筒体の内部を流れる液体の流れ方向下流側には、骨格構造部が設けられており、当該骨格構造部に濾過手段が装着されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の撒液システム用の濾過装置。
【請求項5】
濾過手段の外側に保護部材が設けられており、濾過手段に対して処理液流入部の内側から外側に向かう方向に液体が流出することにより、濾過手段の一部又は全部が保護部材の内壁面に張り付くことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の撒液システム用の濾過装置。
【請求項6】
濾過手段に対して処理液流入部の外側から内側に向かう方向に液体を噴霧可能な噴霧手段が設けられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の撒液システム用の濾過装置。
【請求項7】
処理液流入部の内側に浄化液流入部を有し、
当該浄化液流入部の外側に濾過手段が装着されており、
処理液流入部に流入した液体を処理液流入部側から濾過手段を通過させ、浄化液流入部側へ流入させることにより液体を濾過可能なものであり、
処理液流入部に流入する液体を前記浄化液流入部の外側に配された濾過手段に沿って流れる旋回流とすることが可能な旋回流発生手段を有することを特徴とする請求項1に記載の撒液システム用の濾過装置。
【請求項8】
浄化液流入部が筒状であり、外周に多数の開口を有するものであり、
当該開口の大きさが液体に含まれている異物の通過を阻止可能な大きさであることを特徴とする請求項7に記載の撒液システム用の濾過装置。
【請求項9】
濾過手段は、単繊維によって構成される経糸と緯糸とが互いに摺動可能なように編み込まれたものであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の撒液システム用の濾過装置。
【請求項10】
濾過手段は、単繊維によって構成される経糸と緯糸とが交差した網目状のものであり、目開きが50μm以上100μm以下であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の撒液システム用の濾過装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2006−320317(P2006−320317A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−115786(P2006−115786)
【出願日】平成18年4月19日(2006.4.19)
【出願人】(596005964)住化農業資材株式会社 (29)
【Fターム(参考)】