説明

撚りロープ及び漁網

【課題】従来のわら縄の代替品として使用可能であり、さらにはわら縄以上に柔軟性及び耐久性に優れた撚りロープの提供を目的とする。
【解決手段】天然繊維からなる芯糸に、帯状の表層紙を一部が重なるように順次ずらしながら巻き付けた子紐を、複数本撚り合せたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は天然素材を用いた撚りロープ、撚り紐、縄(以下撚りロープと総称する)に関し、樹木等の雪吊りや添え木の結び等の農林業の分野、あるいは漁網等の水産業の分野等に適用するのに好適である。
【背景技術】
【0002】
現在例えば、底曳き網等にはポリエチレン糸、刺網や定置網等にはポリアミド糸等、それぞれの漁法に応じて各種合成繊維糸が使用されている。
富山湾等では、古くから定置網による漁法が行われ、漁網の網糸として古くから稲わらからなるわら縄が使用されてきたが、多くの定置網では耐久性に優れた合成繊維糸に置き換えられている。
しかし、合成繊維糸からなる漁網は耐久性に優れるものの、使用後の廃材処理が大変であり、近年においては環境への負荷も大きな問題になっている。
特に富山湾で、ホタルイカ漁に用いられる定置網は、ホタルイカの漁獲時期が4〜6月と短期間に限られていることもあり、現在も稲わらからなるわら縄を網糸に用いられている。
これは、わら縄が天然素材であり、ホタルイカの漁獲に使用後にそのまま、海に沈めることができるからである。
わら縄は、海中で菌により分解され、栄養源ともなる。
しかし、近年稲作の機械化が進展し、はさ掛け等による天日干しも殆ど消滅したために稲わらを確保するのが困難になりつつある。
そこで本発明者らは、わら縄に替わるロープ材を検討した結果、本発明に至った。
【0003】
例えば特許文献1には、紙製の園芸用ロープを開示するが、これは樹木を移植先に根付かせるのが目的であり、強度も弱く、わら縄の代替になるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−308131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来のわら縄の代替品として使用可能であり、さらにはわら縄以上に柔軟性及び耐久性に優れた撚りロープの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る撚りロープは、天然繊維からなる芯糸に、帯状の表層紙を一部が重なるように順次ずらしながら巻き付けた子紐を、複数本撚り合せたことを特徴とする。
ここで、前記芯糸と表層紙との中に、表層紙よりも軟質の帯状の中間紙を一部が重なるように順次ずらしながら巻き付けた子紐を用いてもよい。
【0007】
芯糸は、天然素材であれば麻糸、綿糸、絹糸等各種材質を用いることができるが、強度及び入手のしやすさからすれば麻糸がよい。
麻糸は、繊維を単に束ねたものでも撚糸にしたものでもよく、ロープの太さ、強度に応じて本数を増す。
本発明において、中間紙は撚りロープの取扱い時のソフト感と結び等における柔軟性が必要な場合に巻き付けるものであり、比較的細い撚りロープの場合には中間紙がなくてもよい。
中間紙は、このような目的で用いるものであり、古新聞等古紙を再生したパルプ素材でよく、ソフト感の高い軟質のものでよい。
また、強度的にも表層紙よりも弱いものでよい。
表層紙はパルプ等の天然素材を用いたものであれば、耐水処理、撥水処理したものがよい。
ホタルイカ漁の漁網等として使用する場合には、3〜4ヶ月の使用期間であり、使用後には海中に沈めることを考慮し、表層紙の強度設計を行う。
なお、表層紙はパルプを主に使用したものであれば、古紙とバージンパルプを混合したものでもよく、耐水剤、撥水剤の添加のみでは、耐久性が不充分の場合には表面に樹脂フィルムを積層したものを用いても良い。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、麻糸等の天然素材からなる芯糸にパルプを原料にした紙からなる中間紙及び表層紙を巻き付けたものを子紐とした撚りロープにしたので、強度と柔軟性を兼ね備えることができ、従来のわら縄の代替品として使用できるのみならず、わら縄以上の強度、耐久性、及び結び等の取扱性に優れる。
よって、林業における樹木の雪吊り、結び、漁業における定置漁等多くの分野にて使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る撚りロープの構造例を示す。
【図2】撚りロープの断面図を示す。
【図3】麻糸の本数を9本にした例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る撚りロープは、わら縄の代替、撚り紐、網糸等と各種ロープ材として使用できる。
図1に基本的な構造例を示す。
撚りロープ10は麻糸11を複数本束ね芯糸とする。
本実施例では、麻糸11を2本にした例で麻糸11を9本にした例を図3に示す。
麻糸11からなる芯糸の周囲に古新聞紙から得られた軟質の再生紙を中間紙として、帯状にしたものを一部重ねながら、渦巻状に巻き付ける。
その上から、表層紙13を中間紙12と同じ方向に巻き付ける。
このようにして得られた子紐14を複数本、本実施例では2本の子紐を子紐の巻き方向とは逆方向に撚り合せて撚りロープ10を製作した。
このときのA−A線断面図を図2に示す。
本実施例に用いた表層紙は、古紙とバージンのパルプを使用し、紙厚70〜100μm、引張り強度縦方向6kgf以上、横方向1kgf以上、引裂き強度縦方向35kgf以上、横方向70kgf以上、伸度4%以下のものを用いた。
これを網糸としてホタルイカの漁網を網み、海中で使用したところ、従来のわら縄以上の耐久性があった。
【符号の説明】
【0011】
10 撚りロープ
11 麻糸
12 中間紙
13 表層紙
14 子紐

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然繊維からなる芯糸に、帯状の表層紙を一部が重なるように順次ずらしながら巻き付けた子紐を、複数本撚り合せたことを特徴とする撚りロープ。
【請求項2】
前記芯糸と表層紙との中に、表層紙よりも軟質の帯状の中間紙を一部が重なるように順次ずらしながら巻き付けた子紐を用いたことを特徴とする請求項1記載の撚りロープ。
【請求項3】
芯糸は麻糸で、表層紙は耐水紙であることを特徴とする請求項1記載の撚りロープ。
【請求項4】
芯糸は麻糸で、中間紙は再生紙であり、表層紙は耐水紙であることを特徴とする請求項2記載の撚りロープ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の撚りロープを網糸として用いたことを特徴とする漁網。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−94254(P2011−94254A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−248421(P2009−248421)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(309033116)
【出願人】(509228385)
【Fターム(参考)】