説明

撚糸パッケージを製造するための繊維機械

【課題】人間工学的に形成され、かつ単純化されたコスト節約型の構造によりすぐれている繊維機械を提供する。
【解決手段】繊維機械1が、当該繊維機械の両側で機械長手方向に配置された多数の作業部2を装備しており、該作業部2が、それぞれ1つのスピンドル3と、各スピンドル3の上方で当該繊維機械に配置された巻取りユニット6と、パッケージクリール4とを有しており、各作業部2のスピンドル3とパッケージクリール4とが相並んで配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撚糸ボビンもしくは撚糸パッケージを製造するための繊維機械であって、当該繊維機械が、当該繊維機械の両側で機械長手方向に配置された多数の作業部を装備しており、該作業部が、それぞれ1つのスピンドルと、各スピンドルの上方で当該繊維機械に配置された巻取りユニットと、ボビンクリールもしくはパッケージクリールとを有している形式のものに関する。
【背景技術】
【0002】
このような形式の繊維機械は、欧州特許出願公開第1528128号明細書に基づき公知である。同欧州特許出願公開明細書には、機械長手方向で両側に複数の作業部を備えた繊維機械が記載されている。これらの作業部はそれぞれスピンドルとパッケージクリールとを有している。繊維機械のできるだけ大きな生産力を得るためには、各作業部のスピンドルが繊維機械の下側の区分において機械フレームの両側に、相並んでかつ互いに背中合わせに位置して配置されている。各作業部の所属のパッケージクリールは各スピンドルの上方で繊維機械の上側において機械フレームに配置されている。パッケージクリールは給糸パッケージを装備するために、水平方向の軸線を中心にして操作側へ向かって旋回させられる。
【0003】
さらに、欧州特許出願公開第1528128号明細書からは、互いに背中合わせに位置する作業部の間で繊維機械の内部に、機械長手方向に延びる搬送ベルトの形の搬送装置が設けられていることが判る。形成された撚糸パッケージは各作業部の巻取りユニットによってこの搬送ベルトに供給されて、繊維機械の端面側に配置された取出し部へ向かって移動させられ、そしてこの取出し部において取り出される。
【0004】
さらに公知先行技術に基づき、機械フレームに固く配置されたパッケージクリールを使用することが知られている。このパッケージクリールは各作業部のスピンドルの上方で繊維機械に取り付けられている。繊維機械の上側におけるパッケージクリールの固定配置の結果、約2m〜2.80mの操作高さが生ぜしめられる。
【0005】
公知先行技術による繊維機械においては、給糸パッケージ等の装備を行うために、固定のパッケージクリールの使用時ではリフトが必要となるか、あるいは降下装置、つまり「高低クリール(Hoch-Tief-Gatter)」が必要となることが不都合であることが判った。機械長手方向に固定配置されたパッケージクリールの場合、オペレータはリフトによって比較的操作に便利な操作高さへもたらされるが、しかし機械の幅に基づき、給糸パッケージを交換するためには機械内部へ向かってさらに身をかがめることが必要となる。それに対して、欧州特許出願公開第1528128号明細書に基づき公知であるような高低クリールは操作に便利な操作低さを提供するが、しかしたいていは、両給糸パッケージがオペレータのために人間工学的に有利な高さに位置し、ひいては容易に交換され得るようになるほどには降下され得ない。
【0006】
さらに、両パッケージクリール構成に関しては、比較的小さな身長のオペレータにとってはクリールを操作するのが極めて困難となるか、または全く操作することができなくなるという不都合がある。このことは第1には、固定のパッケージクリールの場合には操作低さおよび操作高さに帰因し、高低クリールの場合には操作高さに帰因し、第2には給糸パッケージの比較的高い重量に帰因し得る。これにより給糸パッケージの装備時におけるハンドリングは付加的に困難にされる。別の欠点としては、リフトもしくは降下装置を準備するためにかかる高い製造コストが上げられる。また、機械長手方向に延びる搬送ベルトも同じく不都合である。この搬送ベルトの組込みおよび保守はかなりのコストを生む原因となる。さらに、機械内部での作業部の間における搬送ベルトの配置に基づき、搬送ベルトへのアクセスは極めて制限された範囲でしか可能でない。このことの背景には、特に搬送ベルトが連続的に作動するのではなく、繊維機械の内部に配置された搬送ベルトに供給された形成済みの撚糸パッケージを取出しのために外部へ向かって搬送するためのドッフィング過程の間しか搬送ベルトが作動しないことがある。
【特許文献1】欧州特許出願公開第1528128号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の課題は、冒頭で述べた形式の繊維機械を改良して、人間工学的に形成されていて、かつ単純化されたコスト節約型の構造によりすぐれているような繊維機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題を解決するために本発明の構成では、各作業部のスピンドルとパッケージクリールとが相並んで配置されているようにした。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、各作業部のスピンドルとパッケージクリールとが相並んで配置されている。このことには、給糸パッケージをパッケ―ジクリールに装備するための繊維機械における操作高さが著しく減じられるという利点がある。スピンドルとパッケージクリールとが相並んで配置されることにより、給糸パッケージの交換はオペレータにとって人間工学的に有利な操作高さで実施可能となる。給糸パッケージの装備のために公知先行技術において必要とされるような、パッケージクリールとしての繊維機械における固定のクリールの使用時におけるリフトの形の付加的な操作補助手段またはパッケージクリールとしての高低クリールの形の手間のかかる降下装置の形の付加的な操作補助手段は不要となる。こうして、繊維機械の人間工学的な操作が可能となると同時に、操作補助手段または構造的に手間のかかる高低クリールを不要にすることにより、製造コストも低減される。さらに、たとえば公知先行技術による付加的な操作補助手段により必要となる保守手間も本発明による繊維機械では低減される。
【0010】
スピンドルとパッケージクリールとが、当該繊維機械の機械フレームで同一の平面もしくは同一のレベルに配置されていると有利である。こうして、操作に便利な操作低さならびにパッケージクリールおよび給糸パッケージの人間工学的に好都合な位置が達成され、このような便利な操作低さならびに人間工学的に好都合な位置は、小柄な身長のオペレータにとっては本発明による繊維機械の操作の際に極めて好都合となる。
【0011】
特に、各作業部のスピンドルとパッケージクリールとが、互いに背中合わせに位置する機械外側で互いに対して逆鏡像的(spiegelverkehrt)に配置されていてよい。さらに、作業部は巻取りユニットから除去された、形成された撚糸パッケージを収容するための収容装置を有していてよい。この場合、収容装置は所属の作業部の巻取りユニットの背後に配置されていて、当該繊維機械の互いに背中合わせに位置する機械外側の方向に向かって延びていてよい。
【0012】
公知先行技術に基づき知られているような、形成済みの撚糸パッケージを繊維機械の端部に位置する取出し部へ移動させるための、ドッフィングの時点でしか使用されない、コストのかかる付加的な搬送ベルトは必要とならない。形成された撚糸パッケージはその製作直後に巻取りユニットから収容装置に供給され、したがっていつでも直接に取り出すことができる状態に準備される。
【0013】
さらに、収容装置が、当該繊維機械の長手方向軸線に対してほぼ直交する横方向に延びていてよい。このことには、各作業部のスピンドルおよびパッケージクリールの上方で機械フレームに提供されている空間が最適に利用されるという利点がある。各作業部は個々に操作され得る。
【0014】
収容装置が、巻取りユニットに向かい合って位置する機械外側の方向に傾斜を有していると有利である。これにより、形成済みの撚糸パッケージはその重力に基づいて巻取りユニットの範囲から導出され、この場合、撚糸パッケージは収容装置の傾斜の方向に転がる。収容装置は形成された複数の撚糸パッケージを収容するために形成されていてよい。これにより、複数の形成済みの撚糸パッケージは、これらの撚糸パッケージが取り出されなければならなくなる前に、収容装置によって収容され得る。
【0015】
特に収容装置はほぼパン形のトレイとして形成されていてよい。択一的に収容装置は形成された撚糸パッケージの形状に適合されたマガジンとして形成されていてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を図面につき詳しく説明する。
【0017】
図1には、撚糸パッケージ8を製造するための本発明による繊維機械1が図示されている。この繊維機械1は多数の作業部2を有しており、これらの作業部2は繊維機械1の両側で機械長手方向に配置されている。作業部2はそれぞれ1つのスピンドル3とパッケージクリール4とを有している。パッケージクリール4は少なくとも2つの挿嵌心棒5を有しており、これらの挿嵌心棒5は給糸パッケージ7を収容するために働く。
【0018】
さらに、繊維機械1の各作業部2は、巻き管を収容しかつ製造したい撚糸パッケージ8を形成するために働く巻取りユニット6と、収容装置9とを有している。この収容装置9は本実施例ではほぼパン形のトレイ9として形成されている。このトレイ9は各作業部2で形成された撚糸パッケージ8を収容するために働く。収容装置9は図3に示したように、撚糸パッケージ8の寸法に適合されたマガジン10として形成されていてもよい。
【0019】
図2には、本発明による繊維機械1を上方から見た部分図が示されている。図2から判るように、本発明によればそれぞれ所属のスピンドル3とパッケージクリール4とを備えた作業部2は繊維機械1の両側に配置されていることが判る。符号「V」で、前側の機械外側が示されており、符号「H」で後側の機械外側が示されている。
【0020】
前側の機械外側Vでは、第1の作業部2が、左側から右側へ向かって見てスピンドル3と、このスピンドル3に並んで配置された所属のパッケージクリール4との順序で始まる配置形態を有しており、それに対して、反対の側に位置する後側の機械外側Hでは、第1の作業部2の配置が、左側から右側へ向かって見てパッケージクリール4と、このパッケージクリール4に並んで配置された所属のスピンドル3との順序で始まる。
【0021】
このような交互の配置形態には、各作業部2のスピンドル3およびパッケージクリール4の上方に配置された所属の巻取りユニット6ならびに所属の収容装置9の配置形態が対応している。前側の機械外側Vでは、スピンドル3の上方に所属の作業部2の巻取りユニット6が配置されている。後側の機械外側Hでは、前記作業部2のスピンドル3に背中合わせに位置するパッケージクリール4の上方にこの作業部2の収容装置9が配置されている。収容装置9は、この収容装置9が、所属の作業部2の巻取りユニット6を起点として繊維機械1の長手方向軸線に対して直交する横方向に延びるように配置されている。
【0022】
本発明によれば、各作業部2のスピンドル3とパッケージクリール4とが相並んで配置されている。この場合、スピンドル3とパッケージクリール4とは機械フレームにおける同一のレベルもしくは同一の階層に位置していると有利である。このような配置形態は、給糸パッケージ7の交換が必要となった場合に、特にパッケージクリール4に対するアクセスを容易にする。巻取りユニット6に続いた収容装置9により、形成された撚糸パッケージ8の搬出が可能となり、この場合、形成された撚糸パッケージ8は作業部2に向かい合って位置する、自由にアクセス可能な機械外側V,Hへ向かって転がり出て、取り出される。この場合、各作業部2の収容装置9は作業部2の所属の巻取りユニット6を起点として繊維機械1の長手方向軸線に対してほぼ水平方向で、向かい合って位置する機械外側V,Hに配置されたパッケージクリール4の方向に延びている。各作業部2の巻取りユニット6およびこの巻取りユニット6に続いた収容装置9は、作業部2の所属のスピンドル3と所属のパッケージクリール4との配置形態に相応して、同じく、互いに背中合わせに位置する機械外側V,Hに互いに対して逆鏡像的に配置されている。
【0023】
形成された撚糸パッケージ8の転がり出しを容易にするためには、収容装置9が、作業部2に向かい合って位置する機械外側V,Hの方向に向けられた傾斜を有している。さらに、収容装置9は、少なくとも2つの形成済みの撚糸パッケージ8がこの収容装置9によって収容されるように形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明による繊維機械の斜視図である。
【図2】図1に示した繊維機械を上方から見た部分的斜視図である。
【図3】形成された撚糸パッケージのための収容装置の概略図である。
【符号の説明】
【0025】
1 繊維機械
2 作業部
3 スピンドル
4 パッケージクリール
5 挿嵌心棒
6 巻取りユニット
7 給糸パッケージ
8 撚糸パッケージ
9 収容装置
10 マガジン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撚糸パッケージ(8)を製造するための繊維機械(1)であって、当該繊維機械(1)が、当該繊維機械(1)の両側で機械長手方向に配置された多数の作業部(2)を装備しており、該作業部(2)が、それぞれ1つのスピンドル(3)と、各スピンドル(3)の上方で当該繊維機械(1)に配置された巻取りユニット(6)と、パッケージクリール(4)とを有している形式のものにおいて、各作業部(2)のスピンドル(3)とパッケージクリール(4)とが相並んで配置されていることを特徴とする、撚糸パッケージを製造するための繊維機械。
【請求項2】
スピンドル(3)とパッケージクリール(4)とが、当該繊維機械(1)の機械フレームで同一のレベルに配置されている、請求項1記載の繊維機械。
【請求項3】
各作業部(2)のスピンドル(3)とパッケージクリール(4)とが、互いに背中合わせに位置する機械外側(V,H)で互いに対して逆鏡像的に配置されている、請求項1または2記載の繊維機械。
【請求項4】
作業部(2)が、巻取りユニット(6)から除去された、形成された撚糸パッケージ(8)を収容するための各1つの収容装置(9)を有している、請求項1から3までのいずれか1項記載の繊維機械。
【請求項5】
収容装置(9)が、所属の作業部(2)の巻取りユニット(6)の背後に配置されていて、当該繊維機械(1)の互いに背中合わせに位置する機械外側(V,H)の方向に向かって延びている、請求項4記載の繊維機械。
【請求項6】
収容装置(9)が、当該繊維機械(1)の長手方向軸線に対してほぼ直交する横方向に延びている、請求項4または5記載の繊維機械。
【請求項7】
収容装置(9)が、巻取りユニット(6)を起点として、互いに背中合わせに位置する機械外側(V,H)の方向に向かって傾けられている、請求項4から6までのいずれか1項記載の繊維機械。
【請求項8】
収容装置(9)が、形成された複数の撚糸パッケージ(8)を収容するために形成されている、請求項4から7までのいずれか1項記載の繊維機械。
【請求項9】
収容装置(9)が、ほぼパン形のトレイ(9)として形成されている、請求項4から8までのいずれか1項記載の繊維機械。
【請求項10】
収容装置(9)が、形成された撚糸パッケージ(8)の形状に適合されたマガジン(10)として形成されている、請求項4から8までのいずれか1項記載の繊維機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−51409(P2007−51409A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−223538(P2006−223538)
【出願日】平成18年8月18日(2006.8.18)
【出願人】(503420235)ザウラー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (51)
【氏名又は名称原語表記】Saurer GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Landgrafen Str. 45, D−41069 Moenchengladbach, Germany
【Fターム(参考)】