説明

撚糸合糸機

【課題】
撚りが付与された糸を合糸して巻き取る撚糸合糸機において、合糸本数を変更可能にする。
【解決手段】
それぞれがスピンドルと該スピンドルを駆動するスピンドル駆動装置とを備えるとともに、当該スピンドルが個別に駆動制御可能に構成された複数の撚糸ユニットと、複数の撚糸ユニットのうち選択された2以上の撚糸ユニットである撚糸ユニット組で加撚された糸を合糸する合糸装置と、を備え、合糸された糸を巻き取るスピンドル単錘駆動形式の撚糸合糸機において、前記複数の撚糸ユニットを制御する制御装置と、合糸される糸の本数を前記制御装置に入力するための合糸本数入力手段と、を備え、前記制御装置は、前記合糸本数入力手段を介して入力された合糸本数に基づいて、前記撚糸ユニット組に属する撚糸ユニットの組み合わせを選択し、前記撚糸ユニットのスピンドルを当該組み合わせ毎にまとめて駆動制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撚りが付与された複数本の糸を合糸する撚糸合糸機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、2本の加撚された糸を合糸して、1つのパッケージとして巻き取る合糸巻取用多重撚糸機を備える構成を開示する。
この合糸巻取用多重撚糸機では、各糸の糸切れを個別に検出する糸切れ検出手段と、撚糸されバルーンガイドに至るバルーン糸の下部にそれぞれ位置したカッターと、いずれかの糸切れ検出手段が糸切れを検出したとき、それに対応する巻取パッケージに対して合糸する撚糸ユニットの全てのカッターを作動させる制御手段とを備える構成を開示している。なお、各撚糸ユニットが備える前記糸切れ検出手段と前記カッターは、前記制御手段へそれぞれ接続されている。
【特許文献1】特開2000−96363号公報(制御手段の動作に関して、0020、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ユーザーの多様なニーズのもと、合糸される糸の本数(合糸本数)を自由に変更できる、より汎用性の高い撚糸合糸機が望まれている。
しかし、特許文献1に示される構成では、上記のような合糸本数の変更ができなかった。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0005】
それぞれがスピンドルと該スピンドルを駆動するスピンドル駆動装置とを備えるとともに、当該スピンドルが個別に駆動制御可能に構成された複数の撚糸ユニットと、複数の撚糸ユニットのうち選択された2以上の撚糸ユニットである撚糸ユニット組で加撚された糸を合糸する合糸装置と、を備え、合糸された糸を巻き取るスピンドル単錘駆動形式の撚糸合糸機において、前記複数の撚糸ユニットを制御するための制御装置と、合糸される糸の本数を前記制御装置に入力するための合糸本数入力手段と、を備え、前記制御装置は、前記合糸本数入力手段を介して入力された合糸本数に基づいて、前記撚糸ユニット組に属する撚糸ユニットの組み合わせを選択し、前記撚糸ユニットのスピンドルを当該組み合わせ毎にまとめて駆動制御する。
【0006】
以上の構成により、合糸本数に基づいて同時に駆動制御されるべきスピンドルの組み合わせを、合糸本数入力手段を介してその本数を入力するだけで変更できるので、合糸本数を変更する際の作業性が良い。
【0007】
前記撚糸ユニットのそれぞれに、前記制御装置と電気的に接続された糸切れ検出手段が設けられ、前記制御装置と電気的に接続されると共に、合糸されて巻き取られる糸を切断する糸切断手段が複数設けられ、前記制御装置は、入力された前記合糸本数に基づいて、前記糸切断手段を撚糸ユニット組に関連付け、また、前記制御装置は、いずれかの糸切れ検出手段が糸切れを検出した場合に、当該糸切れが検出された撚糸ユニットが属する撚糸ユニット組に関連付けられた前記糸切断手段が作動するように制御することが好ましい。。
【0008】
以上の構成により、合糸本数を合糸本数入力手段を介して入力するだけで、単糸巻きを防止するための工程が、糸切れが発生した撚糸ユニット組においてのみ行われる。従来は、合糸本数を変更する場合、撚糸ユニット組の他の撚糸ユニットのバルーンと干渉する部材を付けたドロップワイヤー(糸切れ用フィーラ)を合糸本数に応じて交換する必要があった。しかし、以上の構成によって、その必要がなくなり、合糸本数の変更が容易になる。
【0009】
前記制御装置へ電気的に接続されると共に、前記撚糸ユニットのスピンドルの回転を始動させるために操作されるスピンドル始動操作手段が複数設けられ、前記制御装置は、入力された合糸本数に基づいて、前記スピンドル始動操作手段を前記撚糸ユニット組に関連付け、また、前記制御装置は、いずれかのスピンドル始動操作手段の操作が検知された場合に、当該スピンドル始動操作手段に関連付けられた撚糸ユニット組に属する撚糸ユニットのスピンドルをいずれも始動させるように制御することが好ましい。
【0010】
以上の構成により、合糸本数を変更しても、作業者は、スピンドル始動操作手段を変更前と同じように操作することで、撚糸ユニット組に属する撚糸ユニットを始動することができる。
また、例えば、前記撚糸ユニット組に対応する位置に、当該撚糸ユニット組に属することとなるスピンドル始動操作手段を配置することもできるので、糸通し・糸掛け作業を終えた作業員がその場で上記の巻取を直ちに開始または再開させることができる。これにより、作業員の作業性が向上する。
従って、巻取パッケージの生産効率を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る撚糸合糸機の実施の形態に関して説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る撚糸合糸機の正面図である。
図2は、本発明の一実施形態に係る撚糸合糸機の平面図である。
図3は、本発明の一実施形態に係る撚糸合糸機のA−A矢視図である。
図4は、本発明の一実施形態に係る撚糸合糸機の備える第1糸ガイドの側面断面図である。
図5は、本発明の一実施形態に係る撚糸合糸機が備える制御装置の構成図である。
図6は、本発明の一実施形態に係る撚糸合糸機の制御装置に記録されている撚糸ユニット組の組み合わせを示す図である。
【0013】
まず、図1〜3に基づいて本実施形態における撚糸合糸機100のおおまかな構成を説明する。
【0014】
撚糸合糸機100は、図1に示すように、フレーム10上に並設された6錘の撚糸ユニットUを備え、図3に示すように、この撚糸ユニットUの列は背中合わせに配置されている。
また、撚糸合糸機100の一端(図1において、紙面左端)から数えて2,4,5番目の撚糸ユニットUに対応する位置には、糸Yを巻き取るための巻取装置Rが設けられており(図2も併せて参照)、図3に示すように、互いに対応する撚糸ユニットUと巻取装置Rとの間には合糸装置Gが設けられている。
また、図1及び図2に示すように、前記複数の撚糸ユニットUのうち選択された2又は3の撚糸ユニットUである撚糸ユニット組Vで加撚された糸は、この撚糸ユニット組Vに対応する合糸装置Gで合糸され、この合糸装置Gに対応する位置の巻取装置Rで巻き取られるよう構成されている。
なお、撚糸合糸機100は、複数の撚糸ユニットUと、少なくとも一つの巻取装置Rと合糸装置Gを備えるよう構成されている。
【0015】
ここで、前記撚糸ユニット組Vに属する撚糸ユニットUの組み合わせ例と、この撚糸ユニット組Vにいずれの巻取装置Rおよび合糸装置Gが対応するのかを、図1及び図2に基づいて説明する。
即ち、本実施形態の撚糸合糸機100は、場合に応じて合糸本数を2本と3本との間で選択可能になっており、選択された合糸本数に基づいて、前記撚糸ユニット組Vに属する撚糸ユニットUの組み合わせ、及び、当該撚糸ユニット組Vに対応する巻取装置Rと合糸装置Gとが以下のように決定される。
【0016】
例えば、3本の糸を合糸する場合は、撚糸合糸機100の前記一端から数えて1・2・3番目の撚糸ユニットUが同一の撚糸ユニット組Vに属することとなり、この撚糸ユニット組Vで加撚された糸は、一端から数えて1番目の(一端から数えて2番目の撚糸ユニットUに対応する位置に配置される)合糸装置Gと巻取装置Rで合糸され巻き取られることとなる。
同じように、一端から数えて4・5・6番目の撚糸ユニットUが同一の撚糸ユニット組Vに属し、この撚糸ユニット組Vからの糸は、一端から数えて3番目の合糸装置Gと巻取装置Rで合糸され巻き取られる。
即ち、連続的に選択される三つの撚糸ユニットUで加撚される糸は、その中央の撚糸ユニットUに対応する位置に設けられている合糸装置Gと巻取装置Rで合糸され巻き取られることとなる。
【0017】
一方、2本の糸を合糸する場合は、一端から数えて1・2番目の撚糸ユニットUが同一の撚糸ユニット組Vに属することとなり、この撚糸ユニット組Vで加撚された糸は、一端から数えて1番目の合糸装置Gと巻取装置Rで合糸され巻き取られることとなる。
同じように、一端から数えて3・4番目の撚糸ユニットUが同一の撚糸ユニット組Vに属し、この撚糸ユニット組Vからの糸は、一端から数えて2番目の合糸装置Gと巻取装置Rで合糸され巻き取られる。
また、一端から数えて5・6番目の撚糸ユニットUが同一の撚糸ユニット組Vに属し、この撚糸ユニット組Vからの糸は、一端から数えて3番目の合糸装置Gと巻取装置Rで合糸され巻き取られる。
【0018】
撚糸合糸機100は、さらに、上記複数の撚糸ユニットUを制御するための制御装置Cと、合糸される糸の本数を当該制御装置Cに入力するための合糸本数入力手段としての合糸本数入力装置Iを備えている。
【0019】
次に、図3に基づいて、撚糸ユニットUの構成をより詳細に説明する。
【0020】
撚糸ユニットUのそれぞれは、フレーム10上に設けられた電気モータ(スピンドル駆動装置)11と、略垂直に設けられ、前記電気モータ11によって駆動されるスピンドル12と、このスピンドル12に一体的に設けられる回転ディスク13と、から主として構成されており、回転ディスク13上には、パーン形状の糸パッケージPsが固定して装着されている。
言い換えれば、前記スピンドル12は、撚糸ユニットU毎に個別に設けられた上記の電気モータ11によって個別に駆動制御可能に構成されており、いわゆるスピンドル単錘駆動形式に構成されている。このスピンドル単錘駆動形式によれば、多くのスピンドルをベルト等を用いてまとめて回転させる形式であるタンジェンシャルベルト駆動形式と比べて、電力消費量や騒音を抑制できる。
なお、前記電気モータ11のそれぞれは、適宜の信号線C1を介して上記の制御装置C(図5も併せて参照)へ電気的に接続されており、これら電気モータ11は制御装置Cにより駆動制御可能に構成されている。
【0021】
糸パッケージPsから解舒された糸Yは、糸パッケージPsに装着されるテンサ14より、スピンドル12の軸心を通り、回転ディスク13から出て糸パッケージPs回りにバルーン糸15を形成し、バルーンガイド16にて収束され、糸ガイド17・18・19よりフィードローラ20に巻き掛けられ、合糸装置Gで他の糸Yと合糸され、巻取装置Rに巻き取られることとなる。なお、糸パッケージPsから解舒された糸Yには、バルーンガイド16に至るまでの間に2回の撚り(例えば、S撚り)が付与されている。
【0022】
また、バルーンガイド16から糸ガイド18に至る途中には、糸切れ検出手段としてのヤーンフィーラ21が設けられており、このヤーンフィーラ21は、適宜の信号線C1を介して前記制御装置C(図5も併せて参照)に電気的に接続されている。
このヤーンフィーラ21は、センサーアーム21aとリミットスイッチ21bから構成されている。センサーアーム21aの先端は、糸ガイド17と糸ガイド18との間で送られている糸Yにより常時支持されており、センサーアーム21aの中間部は、糸ガイド17の軸心と同軸である適宜の軸まわりに回動自在に支持されており、センサーアーム21aの基端は、リミットスイッチ21bに接続されている。
【0023】
センサーアーム21aを支持している糸Yが切れると、センサーアーム21aが自重により下方へ回動することでリミットスイッチ21bが作動し、もって糸Yの糸切れが検出されることとなる。
なお、前述の通り、このヤーンフィーラ21は制御装置Cへ接続されているので、制御装置Cは、すべての撚糸ユニットUにおける糸Yの状態、即ち、糸切れを監視できる。
これにより、例えば一の撚糸ユニット組Vに属するいずれか一の撚糸ユニットUに糸切れが発生した場合、言い換えれば、いずれかのヤーンフィーラ21が糸切れを検出した場合に、前記制御装置Cが適宜の処理を行うことができるようになっている。
【0024】
ところで、上記のフィードローラ20は、糸パッケージPsから送り出される糸Yの張力を低減させる機能を備える。より具体的には、フィードローラ20へ送られてくる糸Yの送り速度よりも速い周速度でフィードローラ20を回転させることによって、糸Yの張力を低減できるものである。
なお、このフィードローラ20によって適宜調整された糸Yの張力は巻取張力と呼ばれており、糸Yはこの巻取張力で巻取装置Rに巻き取られることとなる。一方、フィードローラ20に至る前の糸Yの張力は、一般的にバルーンテンションと呼ばれている。
【0025】
また、糸ガイド19も、糸Yの張力を調節するためのものであり、フィードローラ20の外側において、フィードローラ20の周方向にスライド自在に設けられている。
これにより、フィードローラ20への糸Yの巻き付き角度を調整でき、フィードローラ20と糸Yの接触距離を調整できる。
即ち、前記フィードローラ20において糸Yの張力は、前記フィードローラ20の周速度のみならず、前記接触距離の大小によっても調節できるようになっている。
【0026】
次に、合糸装置Gの構成をより詳細に説明する。
【0027】
図2に示すように、巻取装置Rに対応する位置に設けられる合糸装置Gのそれぞれは、撚糸合糸機100の長手方向に延在する合糸フレーム37上に、第1糸ガイド(糸ガイド)31と第2糸ガイド32とを備えている。
【0028】
以下、説明の都合上、前記一端から数えて1,2,3番目の撚糸ユニットUから送り出される糸Yが、前記一端から数えて1番目の合糸装置Gと巻取装置Rで合糸され巻き取られる場合について説明する。また、説明の都合上、撚糸ユニットUが備えるフィードローラ20と、このフィードローラ20から送り出される糸Yを、前記一端から順にそれぞれ、フィードローラ20a・20b・20c・20d・20e・20f、糸Ya・Yb・Yc・Yd・Ye・Yfとする。
【0029】
前記第1糸ガイド31は、前記巻取装置Rに対応する位置に設けられるフィードローラ(第1フィードローラ)20bから送り出される糸Ybの糸道に近接する位置に設けられ、かつ、他の位置に設けられるフィードローラ(第2フィードローラ)20aから送り出される糸Yaの糸道を、前記フィードローラ20bから送り出される糸Ybの糸道に沿うようにガイドする機能を備えている。
【0030】
前記第2糸ガイド32は、前記フィードローラ20bから送り出される糸Ybの糸道に近接する位置に設けられ、かつ、前記フィードローラ20bを挟んでフィードローラ20aと反対側に設けられるフィードローラ(第3フィードローラ)20cから送り出される糸Ycの糸道を、前記フィードローラ20bから送り出される糸Ybの糸道に沿うようにガイドする機能を備えている。
【0031】
また、上記2つの第1糸ガイド31・32の配設位置に関しては、前記フィードローラ20bから送り出される糸Ybの糸道の上流側から、第1糸ガイド31、第2糸ガイド32の順に設けられている。
【0032】
なお、上記のフィードローラ20aから送り出される糸Yaは、合糸フレーム37上に適宜に設けられた第3糸ガイド33を介して第1糸ガイド31へ送られている。
同様に、上記のフィードローラ20cから送り出される糸Ycは、別の第3糸ガイド33を介して第2糸ガイド32へ送られている。
【0033】
以上のように構成することで、フィードローラ20a・20b・20cから送り出される3本の糸Ya・Yb・Ycが合糸装置Gで好適に合糸され、合糸後の糸Yである合糸Zが形成されることとなる。
【0034】
なお、以上のように3本の糸Yからなる合糸Zを製作する場合は、フィードローラ20d・20e・20f、及び、糸Yd・Ye・Yfは、フィードローラ20a・20b・20c、及び、糸Ya・Yb・Ycと同様に動作し、前記糸Yd・Ye・Yfは、前述の通り、前記一端から数えて3番目の合糸装置Gで合糸されることとなる。
ただし、上記のフィードローラ20dから送り出される糸Ydは、前記一端から数えて2番目の合糸装置Gが備える第2糸ガイド32を介して当該合糸装置Gが備える第1糸ガイド31へ送られるようになっている。また、上記の如く3本の糸Yを合糸する場合には、前記一端から数えて2番目の巻取装置Rは使用されない。
【0035】
以上は、3本の糸Yを合糸する場合における合糸装置Gに関して説明したが、次に、2本の糸Yを合糸する場合における合糸装置Gに関して説明する。
【0036】
ここでは、前記一端から数えて1番目の合糸装置Gに関して説明する。
この合糸装置Gが備える第1糸ガイド31は、前述の3本の場合と同じように、前記糸Yaの糸道を、前記糸Ybの糸道に沿うようにガイドする。
一方、第2糸ガイド32は、糸Yaと糸Ybからなる合糸Zに若干当接することで、この合糸Zを後述するヤーンカッタYCへ好適に導く機能のみを発揮することとなる。
【0037】
次に、前記一端から数えて2番目の合糸装置Gに関して説明する。
この合糸装置Gが備える第1糸ガイド31は、フィードローラ(第1フィードローラ)20dからの糸Ydの糸道に近接する位置に設けられ、かつ、フィードローラ20c(第2フィードローラ)からの糸Ycの糸道を、前記糸Ydの糸道に沿うようにガイドする。
第2糸ガイド32は、前述同様の機能のみを発揮することとなる。
【0038】
次に、前記一端から数えて3番目の合糸装置Gに関して説明する。
この合糸装置Gが備える第2糸ガイド32は、フィードローラ20eからの糸Yeの糸道に近接する位置に設けられ、かつ、フィードローラ20fからの糸Yfの糸道を、前記糸Yeの糸道に沿うようにガイドする。
一方、第1糸ガイド31は使用されず、糸Yeから離れる方向へ予め離隔させておく。なお、この第1糸ガイド31が離隔可能(スライド可能)である点に関しては、後述する。
【0039】
以上のように、合糸本数によって用途および機能が若干異なる場合があっても、前述のように合糸装置Gのそれぞれを同じ構成とすることで、合糸装置Gを構成する部品や製造ラインを共通化でき、合糸装置Gの製造コストを低減できる。
【0040】
ところで、前記合糸Zが巻取装置Rで好適に巻き取られるためには、合糸前の糸Yのそれぞれの巻取張力を単独で測定し管理する必要がある。
ここでいう管理とは、糸Y毎の巻取張力の測定結果に基づいて、例えば各糸Yを送り出すフィードローラ20の周速度を変更したり、糸ガイド19の取付位置を変更したりして、上記の合糸される糸Yのそれぞれの巻取張力が一様となるよう調整することである。
【0041】
以下、再び、前記一端から数えて1,2,3番目の撚糸ユニットUから送り出される糸Yが、前記一端から数えて1番目の合糸装置Gと巻取装置Rで合糸され巻き取られる場合について説明する。
【0042】
図2に示すように、フィードローラ20aおよびフィードローラ20cから送り出される糸Yaおよび糸Ycのそれぞれの糸道には、個別に巻取張力を測定するための十分なスペースが確保されている。
一方、フィードローラ20bからの糸Ybの糸道は、そのフィードローラ20bから送り出された直後に第1糸ガイド31や糸Yaの糸道と近接している。従って、合糸される前の糸Ybの巻取張力を単独で測定しようとしても、フィードローラ20bや前記第1糸ガイド31や糸Yaの糸道が邪魔になって、測定のための十分なスペースが確保できない。
【0043】
そこで、上記の第1糸ガイド31は、前記のフィードローラ20bから離れる方向に離隔可能に設けられている。この離隔する方向とは、より具体的には、このフィードローラ20bから送り出される糸Ybの糸道から退避する方向である。
【0044】
図2に示すように、この第1糸ガイド31の前記退避方向に沿って、第1糸ガイド31をガイドするためのガイド孔31aが延在している。
以下、図4に基づいて、この第1糸ガイド31の構成について説明する。
【0045】
前記第1糸ガイド31は、糸Yをガイドするガイド部31bと、このガイド部31bと合糸フレーム37を挟んで反対側に設けられ、一部が前記ガイド孔31aに緩挿される中空円筒状のバネ収容部31cと、このバネ収容部31cに共に収容されるコイルバネ31d及びねじ31eと、から構成されている。
【0046】
このねじ31eがコイルバネ31dを挟みつつガイド部31bにねじ込まれることで、ガイド部31bが合糸フレーム37に向かって付勢されることとなる。
また、ねじ31eがガイド部31bへ深くねじ込まれることで、第1糸ガイド31はガイド孔31aの一点で固定可能となり、一方、ねじ31eがガイド部31bから緩められると、第1糸ガイド31はガイド孔31aに沿ってスライド可能となる。
【0047】
図2の紙面左側には、前記一端から数えて1番目の合糸装置Gにおいて、前記ガイド孔31aに沿ってフィードローラ20bから離れる方向へ離隔された第1糸ガイド31と、それに伴って変化した糸Yaの糸道と、が破線で示されている。
また、同図の紙面右側には、前記一端から数えて3番目の合糸装置Gにおいて、この第1糸ガイド31の離隔により形成されるスペースSが示されている。
なお、糸Yの巻取張力を測定する場合は、この3番目の合糸装置Gの部分で示されるように、第1糸ガイド31が退避する方向とは反対側から測定機器を上記スペースSへ差し込むこととすればよい。
【0048】
以上のように、前記第1糸ガイド31を、フィードローラ20bに対して離れる方向に離隔することで、糸Ybの糸道に、糸Ybの巻取張力を単独で測定するために必要とする前記スペースSを確保できるようになっている。
【0049】
また、この第1糸ガイド31の離隔する方向が糸Ybの糸道から退避する方向なので、糸Ybの糸道と糸Yaの糸道とを離隔でき、より好適に前記スペースSが形成されるようになっている。
【0050】
以上説明したように、上記の3本の糸Ya・Yb・Ycのそれぞれの巻取張力を単独で容易に測定し把握できるので、例えば対応するフィードローラ20の周速度を変更したり、糸ガイド19の取付位置を変更するなどして、上記の3本の糸Yのそれぞれの巻取張力が一様となるよう調整できる。これにより、巻取装置Rで生成される巻取パッケージの品質を向上できることとなる。
【0051】
また、糸Ybの巻取張力を単独で測定する測定スペースの確保のために、第1糸ガイド31をフィードローラ20bから離して配置する必要もないから、機台の幅のコンパクト性が失われることがない。
【0052】
また、3本の糸を合糸する際に使用される前記第2糸ガイド32は、予め前記フィードローラ20bから離隔して設けられているので、前記フィードローラ20bから送り出される糸Ybの巻取張力を単独で測定するために必要とする前記スペースSを狭めることがない。
また、これにより、前記第2糸ガイド32は、前記フィードローラ20bから離れる方向へ離隔可能となるように構成する必要がなく、簡素な構成とできる。
【0053】
なお、第1糸ガイド31のフィードローラ20bから離隔する方向が、前記の糸Ybの糸道から退避する方向でもあるので、第1糸ガイド31は第2糸ガイド32と干渉することなくフィードローラ20bから離隔可能にできる。
【0054】
なお、以上は、合糸される糸Yの本数(以下、合糸本数ともいう。)が3本の場合における糸Ybの合糸前の巻取張力測定方法に関して説明したが、これに限らず、合糸本数が2本の場合においても、上記のような有用な効果は発揮されることとなる。
ただし、この場合、前記一端から数えて3番目の合糸装置Gでは、第1糸ガイド31が使用されずに予め退避されており、代わりに第2糸ガイド32が糸Yfの糸道を糸Yeの糸道に沿うようにガイドしているので、糸Yeの巻取張力は随時測定できるようになっている。
【0055】
ところで、前記の合糸装置Gから送り出される合糸Zの糸道のそれぞれには、合糸されて巻き取られる糸Yを切断する糸切断手段としてのヤーンカッタYC(YC1〜YC3)と、適宜の糸ガイド手段である一対の第4糸ガイド35及びスリット付糸ガイド板36と、がこの順で合糸フレーム37上に設けられている。
【0056】
複数設けられる前記のヤーンカッタYCのそれぞれは、適宜の信号線C1により制御装置Cへ電気的に接続されている(図3及び図5参照)。これにより、制御装置Cは必要に応じてヤーンカッタYCを介して、合糸装置Gから送り出される合糸Zを構成する糸Yを切断できるようになっている。
【0057】
また、一対の第4糸ガイド35とスリット付糸ガイド板36は、巻取装置Rの後述するトラバース装置40で綾振られることで合糸Zの糸道が不安定となるのを抑制するものである。
【0058】
次に、巻取装置Rに関して説明する。
図3に示すように、糸Yは合糸装置Gで合糸された後、ヤーンカッタYCに通され、一対の第4糸ガイド35とスリット付糸ガイド板36を介して、巻取装置Rへ導かれる。
【0059】
巻取装置Rへ導かれた合糸Zは、トラバース装置40で綾振られながら、巻取ドラム41上で回転している巻取ボビン42に巻取パッケージとして巻き取られることとなる。この巻取ボビン42は、回動中心43aまわりで回動自在な一対のクレードルアーム43にボビンホルダ43bを介して回転自在に支持されており、巻取パッケージの巻取径の増加と共に一対の前記クレードルアーム43が自由に回動できるよう構成されている。
なお、図1に示すように、複数の前記巻取装置Rが備える前記巻取ドラム41のそれぞれは、その複数の巻取装置に跨るように延在して配置された駆動軸41aに連結されて、共通の駆動装置により同時に一斉に駆動されている。また、一対のクレードルアーム43は、前述の通り自由に回動できるだけでなく、前記制御装置Cにより図示しない信号線を介して、適宜回動することもできるように構成されている。
【0060】
また、図1、図3及び図5に示すように、本実施形態において、前記制御装置Cに信号線C1を介して電気的に接続されると共に、前記撚糸ユニットUのスピンドル12の回転を始動させるために操作されるスピンドル始動スイッチ(スピンドル始動操作手段)SS(SS1〜SS3)が複数設けられている。
より具体的には、スピンドル始動スイッチSS1〜SS3は、図3に示すように、電気的な短絡・非短絡状態(即ちON状態・OFF状態)を保持可能なオルタネート式スイッチとなっており、図1に示すように、巻取装置Rに対応する位置にそれぞれ1つずつ設けられている。即ち、撚糸合糸機100の前記一端から数えて1,2,3番目の巻取装置Rのそれぞれに対応する位置関係となるよう、スピンドル始動スイッチSS1,SS2,SS3が配置されている。
【0061】
次に、図1、図5及び図6に基づいて、撚糸合糸機100が備える前記制御装置Cと前記合糸本数入力装置Iに関して説明する。
【0062】
この制御装置Cは、前述の通り、撚糸合糸機100が備える複数の撚糸ユニットUを制御可能であって、図5に示すように、演算処理部70と、読み書き可能なメモリ部71と、を備えている。
また、この制御装置Cには、図1に示すように、合糸される糸の本数を制御装置Cに入力可能な合糸本数入力装置Iと、文字や数字などを表示可能な表示パネル装置Dと、合糸本数の設定を確定するためのボタンである変更ボタン(変更設定ボタン)Bと、が取り付けられている。
【0063】
図5に示すように、演算処理部70は、メモリ部71と双方向にデータを送受信可能であり、また、合糸本数入力装置Iからの入力データを合糸本数入力部72を介して受信できるよう構成されている。
また、演算処理部70は、表示パネル装置Dへ表示させたい内容を表示パネル部73を介して送信でき、モータ制御部74を介して前記電気モータ11のそれぞれを個別に駆動制御でき、糸切れ検出部75を介して前記ヤーンフィーラ21のそれぞれに対応する糸Yの状態(糸切れの発生)を信号として受信できるよう構成されている。
さらに、演算処理部70は、ヤーンカッタ部76を介してヤーンカッタYCを作動させることで糸Yを切断でき、始動スイッチ部77を介してスピンドル始動スイッチSSが操作された(切り替えられた)ことを検出でき、また、変更ボタン入力部78を介して変更ボタンBが押下されたことを検出できるよう構成されている。
【0064】
なお、メモリ部71には、図6に示すように、合糸本数毎に、撚糸ユニット組Vに属する撚糸ユニットUの組み合わせと、当該撚糸ユニット組Vに属する(関連付けられる)ヤーンカッタYC及びスピンドル始動スイッチSSが合糸モード配列80として、予め記憶されている。
当該合糸モード配列80は、合糸本数が2本と入力された場合に読み込まれる2本合糸モード配列80a(2PLYMODE)と、3本の場合に読み込まれる3本合糸モード配列80b(3PLYMODE)と、からなる。
【0065】
上記2本合糸モード配列80aでは、前記複数の撚糸ユニットU(1番から6番)から、2ユニットで1組とする撚糸ユニット組Vが組番号1〜3の3組形成されるよう、かつ、同じ撚糸ユニット組Vに属する撚糸ユニットUのそれぞれが隣り合うよう(連続するよう)、撚糸ユニットUの組み合わせが選択されている(図1及び図2も併せて参照)。
また、この2本合糸モード配列80aでは、ヤーンカッタYC1〜YC3(図2参照)及びスピンドル始動スイッチSS1〜SS3(図1参照)が、前記撚糸ユニット組V(組番号1・2・3)のそれぞれに1対1で対応するように関連付けて記憶されている。
【0066】
同様に、3本合糸モード配列80bでは、前記複数の撚糸ユニットUから、3ユニットで1組とする撚糸ユニット組Vが組番号1,2の2組形成されるよう、かつ、同じ撚糸ユニット組Vに属する撚糸ユニットUのそれぞれが連続するよう、撚糸ユニットUの組み合わせが選択されている(図1及び図2も併せて参照)。
また、この3本合糸モード配列80bでは、ヤーンカッタYC1・YC3及びスピンドル始動スイッチSS1・SS3が、前記撚糸ユニット組V(組番号1・2)のそれぞれに1対1で対応するように関連付けて記憶されている。
【0067】
そして、制御装置Cは、合糸本数入力装置Iで入力された合糸本数に基づいて、変更ボタンBの押下があったときに、予めメモリ部71に記憶されている上記の2本合糸モード配列80a、あるいは、3本合糸モード配列80bを演算処理部70へ読み込ませる。
【0068】
これは、撚糸ユニット組Vに属する撚糸ユニットUの組み合わせを、前記複数の撚糸ユニットUから好適に選択したことに相当する。
同様に、前記制御装置Cが、入力された前記合糸本数に基づいて、前記ヤーンカッタYCとスピンドル始動スイッチSSを撚糸ユニット組Vに関連付けたことに相当する。
【0069】
これにより、演算処理部70は、読み込まれた合糸モード配列80に基づいて、任意の撚糸ユニットUがどの撚糸ユニット組Vに属しているか、また、任意の撚糸ユニットUと同一の撚糸ユニット組Vに属している他の撚糸ユニットUがどれか、を認識できるようになっている。そして、制御装置Cは、複数の前記撚糸ユニットUを、前記組み合わせ毎にまとめて制御する。より具体的に言えば、複数の前記撚糸ユニットUのスピンドル12を当該組み合わせ毎にまとめて駆動制御するのである。
【0070】
また、制御装置Cは、いずれかのヤーンフィーラ21が糸切れを検出した場合に、当該糸切れが検出された撚糸ユニットUが属する撚糸ユニット組Vに関連付けられたヤーンカッタYCが作動するように制御する。
さらに、制御装置Cは、いずれかのスピンドル始動スイッチSSの操作が検知された場合に、当該スピンドル始動スイッチSSに関連付けられた撚糸ユニット組Vに属する撚糸ユニットUのスピンドル12をいずれも始動させるように制御する。言い換えれば、いずれかのスピンドル始動スイッチSSを後述の如く適宜に操作することで、例えばどの撚糸ユニット組Vにおいて巻取を開始する準備が完了したのかを前記制御装置Cが認識し、当該撚糸ユニット組Vに属する撚糸ユニットUを一斉に始動させるように制御するのである。
【0071】
また、巻取装置Rおよび合糸装置Gも、対応する位置に設けられている撚糸ユニットUを介することにより、対応する前記撚糸ユニット組Vと関連付けられる。
【0072】
次に、図面を参照しつつ、本実施形態に係る撚糸合糸機100の作動について説明する。
【0073】
図7は、本発明の一実施形態に係る撚糸合糸機の運転開始時のフローチャート図である。
図8は、本発明の一実施形態に係る撚糸合糸機の糸切れ発生時のフローチャート図である。
図9は、本発明の一実施形態に係る撚糸合糸機の運転再開時のフローチャート図である。
図10は、本発明の一実施形態に係る撚糸合糸機の合糸本数変更時のフローチャート図である。
【0074】
まず、図7に基づいて、本実施形態の撚糸合糸機100の運転開始時に関して説明する。
【0075】
前記の表示パネル装置Dには、予め、合糸本数の入力を促すメッセージが表示されている。
まず、作業員が、合糸本数入力装置Iを介して制御装置Cに合糸本数を入力し、変更ボタンBを押し下げる(S301)。すると、この入力された合糸本数に基づいて、対応する合糸モード配列80(図6に示される2本合糸モード配列80aまたは3本合糸モード配列80b)が、メモリ部71から演算処理部70へ自動的に読み込まれる。
これは、前述した通り、制御装置Cが、撚糸ユニット組Vに属する撚糸ユニットUの組み合わせを、複数の前記撚糸ユニットUから選択したことに相当する。これにより、制御装置Cは、複数の前記撚糸ユニットUのスピンドル12を当該組み合わせ毎にまとめて駆動制御できるようになる。
【0076】
次に、作業員が、撚糸ユニットUのそれぞれが備える回転ディスク13に糸パッケージPsを装着し、また、一対のクレードルアーム43に空の巻取ボビン42を装着する(S302)(図1及び図3も併せて参照)。
このとき、図3において二点鎖線で示すように、空の前記巻取ボビン42が、常に回転している巻取ドラム41から離隔されて(浮いて)その回転が静止している状態となるよう、一対のクレードルアーム43は若干上方へ回動された状態に保持されている(このように、巻取ボビン42や後述する巻取パッケージ・満巻パッケージが巻取ドラム41から離隔されている状態を、巻取装置Rのクレードルアップ状態ともいう。)
【0077】
以下、3本の糸Yを合糸する場合、即ち、3本合糸モード配列80bが演算処理部70へ読み込まれた場合に関して説明する。
【0078】
まず、作業員が、入力した合糸本数(3本)に基づいて、同一の撚糸ユニット組Vに属する撚糸ユニットUのそれぞれより糸Y(例えば、糸Ya〜Yc、図2参照)を引き出して、これら糸Yを、当該撚糸ユニット組Vに対応する合糸装置G(例えば、前記一端から数えて1番目、図2参照)に通し、同じく対応する巻取装置Rが備える巻取ボビン42に装着する(S303)(図2も併せて参照)。
【0079】
ただし、本実施形態の撚糸合糸機100の運転開始時において、合糸本数を入力する作業(S301)と、糸パッケージPs・巻取ボビン42を装着する作業(S302)および糸通し・糸掛けの作業(S303)と、は順不同である。
【0080】
なお、前記の、糸Yを引き出して巻取ボビン42に装着させる作業は、各撚糸ユニット組V毎に行ってもよいし、すべての撚糸ユニット組Vにおいて同時に行ってもよい。言い換えれば、上記作業を終えた撚糸ユニット組Vから順次巻取を開始してもよいし、すべての撚糸ユニット組Vにおいて上記作業を終えたあとに、一斉に巻取を開始するようにしてもよい。
【0081】
そして、作業員が、巻取装置Rに対応する位置に設けられていて、かつ、予めOFF状態となっているスピンドル始動スイッチSSをON状態に切り替えると(S304)、いずれのスピンドル始動スイッチSSがON状態へ切り替わったのかが制御装置Cに検知される。言い換えれば、任意の撚糸ユニット組Vに関連付けられたスピンドル始動スイッチSSをON状態に切り替えることによって、当該撚糸ユニット組Vにおいて巻取を開始する準備が完了したことを制御装置Cが検知できるようになっている。
なお、これ以降の作動は、合糸本数を変更する場合を除いて、各撚糸ユニット組V毎に実施されるようになっている。
【0082】
演算処理部70は、読み込まれた3本合糸モード配列80bに基づいて、ON状態に切り替えられたスピンドル始動スイッチSSに関連付けられた撚糸ユニット組Vを認識し、また、当該撚糸ユニット組Vに属する撚糸ユニットUを認識することにより、各撚糸ユニットUが備えるスピンドル12の回転をいずれも同時に始動させる。
【0083】
それと同時に、当該撚糸ユニット組Vに対応する巻取装置Rにおいて、常に回転している巻取ドラム41へ巻取ボビン42が当接するよう、前記制御装置Cは、クレードルアーム43を降下させ、図3に示す矢印の方向へ当該巻取ボビン42が回転し始める(このように、巻取ドラム41や巻取パッケージ・満巻パッケージが巻取ドラム41に当接し回転している状態を、巻取装置Rのクレードルダウン状態ともいう。)。
【0084】
これにより、当該撚糸ユニット組Vに属する各撚糸ユニットUにおいて糸Yが撚糸され、また、同一撚糸ユニット組Vに属する他の撚糸ユニットUから引き出される糸Yと合糸装置Gにおいて合糸され、さらに、巻取装置Rにおいて巻取ボビン42に巻取パッケージとして巻き取られ始めることとなる(S305)。
【0085】
本実施形態の撚糸合糸機100の運転開始時に関する説明は以上である。
巻取ボビン42が合糸Zを巻き取ることで形成される満巻パッケージは、作業員により適宜回収される。
【0086】
なお、上述した巻取を開始する前に、図2に示すように、予めそれぞれの糸Yの巻取張力を調整しておくことが好ましい。
糸Yb(又は糸Ye)の巻取張力を単独で測定したい場合には、フィードローラ20bから離れる方向へ第1糸ガイド31を離隔させてやればよい。
また、第1糸ガイド31を上記の如く離隔させるときは、図4に示すねじ31eを若干緩めるだけでよい。これにより、第1糸ガイド31はガイド孔31aに沿ってスライド可能となる。
【0087】
これにより、図2の紙面右に示すような好適なスペースSが前記糸Ybの糸道に形成され、糸Ybの巻取張力を単独で測定できることとなる。
【0088】
次に、図8に基づいて、本実施形態の撚糸合糸機100の糸切れ発生時の動作に関して説明する。
【0089】
本実施形態の撚糸合糸機100が備える撚糸ユニットUのいずれかにおいて糸切れが発生した場合(S401)、該糸切れは、当該撚糸ユニットUが備えるヤーンフィーラ21により検出される。そして、このヤーンフィーラ21を介して、制御装置Cが当該撚糸ユニットUの例えば図6に示すユニット番号を検知する。
【0090】
すると、演算処理部70(制御装置C)は、当該撚糸ユニットUがどの撚糸ユニット組Vに属しているかを3本合糸モード配列80bに基づいて認識し(S402)、当該撚糸ユニット組Vに対応するヤーンカッタYCを作動させて、同一の撚糸ユニット組Vに属する他の撚糸ユニットUの糸Yをすべて切断する(S403)。
また、当該撚糸ユニット組Vに属する撚糸ユニットUのそれぞれが備えるスピンドル12をすべて停止させる(S404)。
さらに、当該撚糸ユニット組Vに対応する巻取装置Rをクレードルアップ状態にすることで、巻取パッケージの回転が停止する(S405)。
【0091】
以上により、単糸巻き、即ち、意図しない本数で糸Yが巻取装置Rに巻き取られることを防止できる。
また、合糸本数を合糸本数入力装置Iを介して入力するだけで、この単糸巻きを防止するための工程が、糸切れが発生した撚糸ユニット組Vにおいてのみ行われる。従来は、合糸本数を変更する場合、撚糸ユニット組の他の撚糸ユニットのバルーンと干渉する部材を付けたドロップワイヤー(糸切れ用フィーラ)を合糸本数に応じて交換する必要があった。しかし、以上の構成によって、その必要がなくなり、合糸本数の変更が容易になる。
また、上記単糸巻きを防止するための工程が、糸切れが発生した撚糸ユニット組Vにおいてのみ行われるものであるので、他の撚糸ユニット組Vにおいては合糸Zの巻取を継続することができるようになっている。これにより、糸切れの発生による巻取パッケージの生産効率の低下を抑制できる。
さらに、巻取装置Rのクレードルアーム43は、各巻取装置R毎に巻取開始時や巻取停止時に適宜上下方向に回動するよう、即ち、適宜クレードルアップ状態とクレードルダウン状態との間で切り換え可能となるよう構成されているので、巻取ドラム41を駆動する共通の駆動軸41aの回転は一切停止させる必要がなく、この意味でも、他の撚糸ユニット組Vにおいて合糸Zの巻取を継続することができるようになっている。
【0092】
また、該当するスピンドル12が停止することで、切断された糸Yが他の撚糸ユニットUにからまったり、糸Yを供給する糸パッケージPsが緩んだりするのを防止できる。さらに、巻取ボビン42の回転を停止させることで、切断された糸Yを容易につなぎ合わせることができる。
【0093】
前記糸切れ発生時の動作に関する説明は以上である。
なお、表示パネル装置Dには、停止状態にある前記の撚糸ユニット組Vと、この撚糸ユニット組Vに属する撚糸ユニットUなどを表示させておくことが好ましい。より具体的には、例えば図6に示す撚糸ユニット組Vの組番号や、撚糸ユニットUのユニット番号などを表示パネル装置Dに表示させておくとよい。
なお、糸切れが発生した撚糸ユニット組Vにおける巻取は、以下に説明するように、他の撚糸ユニット組Vと何ら干渉することなく、個別に再開することができる。
【0094】
以下、図9に基づいて、本実施形態の撚糸合糸機100の運転再開時の動作に関して説明する。
【0095】
まず、作業員が、糸切れが発生した(運転を再開する)撚糸ユニット組Vに属する撚糸ユニットUのそれぞれから糸Yを引き出し、当該撚糸ユニット組Vに対応する合糸装置Gに当該糸Yを通し(糸通し作業)、当該合糸Zを、同じく対応する巻取装置Rの巻取パッケージの合糸Zとつなぎ合わせる(S501)(図2も併せて参照)。
【0096】
次に、作業員が、当該撚糸ユニット組Vに対応するスピンドル始動スイッチSSを一度OFF状態にしてからON状態へと切り替える(S502)。すると、前述した運転開始時の動作と同様に、制御装置Cが、3本合糸モード配列80bに基づいて対応する撚糸ユニットUを認識し、各撚糸ユニットUが備えるスピンドル12の回転を始動させ、当該撚糸ユニット組Vに対応する巻取装置Rをクレードルダウン状態にする。
【0097】
これにより、当該撚糸ユニット組Vにおいて、糸Yの撚糸・合糸と、巻取装置Rにおける巻取が再開される(S503)。
【0098】
運転再開に関する作動は、上述の如くである。
ここで、前述した通り、本実施形態における撚糸合糸機100では、撚糸ユニット組V毎に個別に制御することができるようになっている。即ち、前記撚糸ユニット組V毎に、合糸される糸Yの巻取を、準備が整い次第すぐに開始または再開させることができる。言い換えれば、巻取の準備が整った撚糸ユニット組Vから順に巻取を開始または再開できる。
従って、巻取パッケージの生産効率の低下を最小限に抑えることができる。言い換えれば、当該生産効率を向上できる。
【0099】
また、合糸本数を変更しても、作業者は、スピンドル始動スイッチSSを変更前と同じように操作することで、撚糸ユニット組Vに属する撚糸ユニットUを始動することができる。
さらに、前記撚糸ユニット組Vに対応する位置に、当該撚糸ユニット組Vに関連付けられるスピンドル始動スイッチSSが配置されているので、糸通し・糸掛け作業を終えた作業員がその場で上記の巻取を直ちに開始または再開させることができる。
これにより、作業員の作業性も向上するので、この意味でも、巻取パッケージの生産効率を向上できる。
なお、以上で説明した本実施形態の撚糸合糸機100の運転再開動作は、糸切れが発生した場合に限らず、例えば、撚糸ユニットUのメンテナンス後の運転再開時にも適用可能である。
【0100】
ところで、合糸本数を変更したい場合は、図10に示すように、まず、作業員が、合糸本数を改めて入力する(S601)。次に、作業員が、制御装置Cに取り付けられている前記変更ボタンBを押下する。これにより、当該合糸本数に基づいて合糸モード配列80が読み込まれ、撚糸ユニット組Vに属する撚糸ユニットUの組み合わせが適宜選択される。糸通し・糸掛け作業(S602)や、スピンドル始動スイッチSSを操作する作業(S603)等は、上述した運転開始時の動作と同様である。そして、撚糸・合糸・巻取が再開される(S604)。
【0101】
このように、合糸本数に基づいて同時に駆動制御されるべきスピンドル12の組み合わせを、合糸本数入力装置Iを介してその本数を入力するだけで変更できるので、合糸本数を変更する際の作業性が良い。従って、巻取パッケージの生産効率を向上できる。
【0102】
また、上述の如く、本実施形態においてスピンドル始動スイッチSS(スピンドル始動操作手段)として、オルタネート式スイッチが用いられている。
これにより、作業員が、当該スピンドル始動スイッチSSの状態(ON状態またはOFF状態)を視覚的に判断できるので、モーメンタリ式スイッチが用いられている場合と比べて、人為的なミスを抑制することができる。
また、任意の撚糸ユニット組Vにおいて糸Yの撚糸・合糸と、巻取装置Rにおける巻取を再開させるために、当該スピンドル始動スイッチSSを一度OFF状態にしてから再度ON状態にする、という二段階操作が作業員に課されることとなり、この意味でも、前述と同様に、人為的な誤操作を抑制することができる。
さらには、当該スピンドル始動スイッチSSをOFF状態に切り替える操作に対して、制御装置Cの任意の動作を割り当てることもできる。
例えば、いずれかのスピンドル始動スイッチSSをOFF状態に切り替えると、上記制御装置Cが、3本合糸モード配列80bに基づいて対応する撚糸ユニットUを認識し、各撚糸ユニットUが備えるスピンドル12の回転を停止させ、当該撚糸ユニット組Vに対応する巻取装置Rをクレードルアップ状態にするように制御させることもできる。
これにより、電気モータ11やスピンドル12、或いは各糸ガイド等のメンテナンスが必要になった場合でも、撚糸合糸機100全体の運転を停止させる必要がなく、単にメンテナンスを要する機器を含む撚糸ユニット組Vのみを停止させるだけでよいので、巻取パッケージの生産効率が低下するのを抑制できる。
【0103】
本発明は、上記の好ましい実施形態に記載されているが、本発明はそれだけに制限されない。本発明の精神と範囲から逸脱することのない様々な実施形態が他に成されることは理解されよう。さらに、本実施形態において、本発明の構成による作用効果を述べているが、これら作用効果は一例であり、本発明を限定するものではない。
【0104】
本実施形態において、ヤーンカッタYCは、合糸装置Gよりも糸Yの下流側へ設けられているが、これに限らず、例えば、各撚糸ユニットUが個別に糸切断手段を備えることで、合糸される前の糸Yを切断できるようにしてもよい。
【0105】
また、本実施形態において撚糸合糸機100は、糸切れ検出手段としてヤーンフィーラ21を、また、糸切断手段としてヤーンカッタYCを備えるものとしたが、これに代えて、機械的な動作のみで単糸巻きを防止する従来のドロップワイヤー方式を採用した単糸巻き防止機構を備える構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明の一実施形態に係る撚糸合糸機の正面図。
【図2】本発明の一実施形態に係る撚糸合糸機の平面図。
【図3】本発明の一実施形態に係る撚糸合糸機のA−A矢視図。
【図4】本発明の一実施形態に係る撚糸合糸機の備える第1糸ガイドの側面断面図。
【図5】本発明の一実施形態に係る撚糸合糸機が備える制御装置の構成図。
【図6】本発明の一実施形態に係る撚糸合糸機の制御装置に記録されている撚糸ユニット組の組み合わせを示す図。
【図7】本発明の一実施形態に係る撚糸合糸機の運転開始時のフローチャート図。
【図8】本発明の一実施形態に係る撚糸合糸機の糸切れ発生時のフローチャート図。
【図9】本発明の一実施形態に係る撚糸合糸機の運転再開時のフローチャート図。
【図10】本発明の一実施形態に係る撚糸合糸機の合糸本数変更時のフローチャート図。
【符号の説明】
【0107】
11 電気モータ
12 スピンドル
21 ヤーンフィーラ
U 撚糸ユニット
V 撚糸ユニット組
C 制御装置
R 巻取装置
YC1〜YC3 ヤーンカッタ
SS1〜SS3 スピンドル始動スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれがスピンドルと該スピンドルを駆動するスピンドル駆動装置とを備えるとともに、当該スピンドルが個別に駆動制御可能に構成された複数の撚糸ユニットと、
複数の撚糸ユニットのうち選択された2以上の撚糸ユニットである撚糸ユニット組で加撚された糸を合糸する合糸装置と、
を備え、合糸された糸を巻き取るスピンドル単錘駆動形式の撚糸合糸機において、
前記複数の撚糸ユニットを制御するための制御装置と、
合糸される糸の本数を前記制御装置に入力するための合糸本数入力手段と、
を備え、
前記制御装置は、前記合糸本数入力手段を介して入力された合糸本数に基づいて、前記撚糸ユニット組に属する撚糸ユニットの組み合わせを選択し、前記撚糸ユニットのスピンドルを当該組み合わせ毎にまとめて駆動制御する、ことを特徴とする撚糸合糸機。
【請求項2】
前記撚糸ユニットのそれぞれに、前記制御装置と電気的に接続された糸切れ検出手段が設けられ、
前記制御装置と電気的に接続されると共に、合糸されて巻き取られる糸を切断する糸切断手段が複数設けられ、
前記制御装置は、入力された前記合糸本数に基づいて、前記糸切断手段を撚糸ユニット組に関連付け、
また、前記制御装置は、いずれかの糸切れ検出手段が糸切れを検出した場合に、当該糸切れが検出された撚糸ユニットが属する撚糸ユニット組に関連付けられた前記糸切断手段が作動するように制御する、ことを特徴とする請求項1に記載の撚糸合糸機。
【請求項3】
前記制御装置へ電気的に接続されると共に、前記撚糸ユニットのスピンドルの回転を始動させるために操作されるスピンドル始動操作手段が複数設けられ、
前記制御装置は、入力された合糸本数に基づいて、前記スピンドル始動操作手段を前記撚糸ユニット組に関連付け、
また、前記制御装置は、いずれかのスピンドル始動操作手段の操作が検知された場合に、当該スピンドル始動操作手段に関連付けられた撚糸ユニット組に属する撚糸ユニットのスピンドルをいずれも始動させるように制御する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の撚糸合糸機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−328611(P2006−328611A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−157110(P2005−157110)
【出願日】平成17年5月30日(2005.5.30)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】