説明

撤去シールド及びこれを用いたトンネル撤去方法

【課題】裏込め材に硬化しないゲル状材を用いて構築したトンネルを容易、かつ、安価に撤去できる撤去シールドと撤去方法を提供する。
【解決手段】セグメント8と地山との間の間隙に貫入される筒状のスキンプレート47と、スキンプレートと既設セグメントの間を止水するシール21、23と、スキンプレートに支持フレーム34を介して設けられ既設セグメントの前端に当接される切羽保持ジャッキ35と、スキンプレートの貫入方向とは反対側の中央開口を塞ぐ隔壁16と、隔壁に設けられ隔壁より前方の埋め戻し空間部43に埋め戻し材を充填するためのノズル44と、充填された埋め戻し材の圧力を検出するための土圧計45と、埋め戻し空間部に埋め戻し材を充填すると共に土圧計で検出される圧力が予め設定した所定圧力となるように切羽保持ジャッキを縮退させる制御装置と、既設セグメントを解体するためのエレクタ17とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セグメントと地山との間の間隙に固化しないゲル状の裏込め材が裏込めされたトンネルを撤去する撤去シールドと、これを用いたトンネル撤去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネルを埋め戻す撤去シールドとしては、特許文献1〜6記載のものが知られている。特許文献1〜5記載の撤去シールドは、既設セグメントの外周を筒状の外周フレームで囲むと共に、外周フレームを前胴と後胴とに分割し、これら前胴と後胴を推進ジャッキで近接離間自在に連結し、後胴後端に隔壁を設け、前胴前端に既設セグメント外周の地山を掘削するカッタ等の掘削装置を設けてなるものである。特許文献6記載の撤去シールドは、既設セグメントの内周面にグリップして推進力を得るように構成されている。また、これら撤去シールドは、隔壁後方の埋め戻し空間部に埋め戻し材を充填しつつ推進ジャッキを縮退させて後胴を前方に引き寄せたのち、推進ジャッキを伸長させて前胴を掘進させるという動作を繰り返して掘進するように構成されている。
【0003】
【特許文献1】特許第3087229号公報
【特許文献2】特許第3721488号公報
【特許文献3】特許第3581619号公報
【特許文献4】特開2001−227300号公報
【特許文献5】特開2001−107680号公報
【特許文献6】特開2001−107698号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、これらの撤去シールドは、いずれも既設セグメントと地山の間にモルタル等の硬化する裏込め材を充填して構築したトンネルの撤去を目的とするため、掘削装置及び排土設備が必要であると共に、埋め戻し空間部の外径が既設セグメントより大径となり、埋め戻し材を大量に充填しなければならないという課題があった。また、上述の撤去シールドは、前胴と後胴とを近接離間させて尺取り虫状に掘進するものであるため、構造が複雑となって高価なものになるという課題があった。
【0005】
一方、本発明者らは、硬化する裏込め材が撤去シールドを複雑なものとし、トンネルの撤去を困難にしている点に着目し、未公開ながら、裏込め材に硬化しないゲル状材を用いる新規なトンネルの構築方法を研究・開発中である。
【0006】
そこで、本発明の目的は、この新規な方法で構築したトンネルを容易、かつ、安価に撤去できる撤去シールドとこの撤去シールドを用いたトンネル撤去方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、シールド掘進機内でセグメントを組み立てながらシールド掘進機を掘進させると共に組み立てたセグメントと地山との間の間隙に固化しないゲル状の裏込め材を裏込めして構築したトンネルを撤去する撤去シールドであって、上記間隙に貫入される筒状のスキンプレートと、該スキンプレートと既設セグメントの間を止水するシールと、上記スキンプレートに支持フレームを介して設けられ既設セグメントの前端に当接される切羽保持ジャッキと、上記スキンプレートの貫入方向とは反対側の中央開口を塞ぐ隔壁と、該隔壁に設けられ、隔壁より前方の埋め戻し空間部に埋め戻し材を充填するためのノズルと、該ノズルから上記埋め戻し空間部に充填された埋め戻し材の圧力を検出するための土圧計と、上記ノズルから上記埋め戻し空間部に埋め戻し材を充填すると共に上記土圧計で検出される圧力が予め設定した所定圧力となるように上記切羽保持ジャッキを縮退させる制御装置と、上記スキンプレート内に設けられ既設セグメントを解体するためのエレクタとを備えたものである。
【0008】
上記切羽保持ジャッキは、上記スキンプレートの周方向に少なくとも4本以上等間隔に配置されるとよい。
【0009】
また、シールド掘進機内でセグメントを組み立てながらシールド掘進機を掘進させると共に組み立てたセグメントと地山との間の間隙に固化しないゲル状の裏込め材を裏込めして構築したトンネルを撤去するトンネル撤去方法であって、上記間隙に筒状のスキンプレートを貫入すると共に、該スキンプレートと既設セグメントの間を止水するシールを設け、上記スキンプレートに既設セグメントの前端に当接される切羽保持ジャッキを支持フレームを介して設け、上記スキンプレートの貫入方向とは反対側の中央開口を隔壁で塞ぐと共に、該隔壁に隔壁より前方の埋め戻し空間部に埋め戻し材を充填するためのノズルを設け、該ノズルから上記埋め戻し空間部に充填された埋め戻し材の圧力を検出するための土圧計を設け、上記スキンプレート内に既設セグメントを解体するためのエレクタを設けて撤去シールドを構成し、上記ノズルから上記埋め戻し空間部に埋め戻し材を充填すると共に上記土圧計で埋め戻し空間部内の埋め戻し材の圧力を検出し、この圧力が予め設定した所定の圧力になったときその圧力を維持するように上記切羽保持ジャッキを縮退させて上記撤去シールドを推進させ、上記切羽保持ジャッキで隔壁に作用する圧力を保持しつつ上記エレクタで既設セグメントを順次解体するものである。
【0010】
上記切羽保持ジャッキは、上記スキンプレートの周方向に少なくとも4本以上等間隔に配置され、解体するセグメントに当接される切羽保持ジャッキをセグメントから離間させたとき、他の3本以上の切羽保持ジャッキで埋め戻し空間部内の埋め戻し材の圧力を保持できるようにするとよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、裏込め材に硬化しないゲル状材を用いて構築したトンネルを容易、かつ、安価に撤去できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の好適実施の形態を添付図面を用いて説明する。まず、裏込め材に硬化しないゲル状材を用いてトンネルを構築する際に用いる装置及び部品について述べる。
【0013】
図1(a)及び図3(f)に示すように、シールド掘進機1は、筒状に形成されるシールドフレーム2と、シールドフレーム2の前端を塞ぐバルクヘッド3と、バルクヘッド3に回転自在に設けられたカッタ4と、カッタ4の後方に形成されるカッタ室5内の土砂を排出するための送排泥式の排土装置6と、シールドフレーム2に支持部材7を介して設けられシールドフレーム2内でセグメント8、9を組み立てるためのエレクタ10と、支持部材7に設けられセグメント8、9から推進反力を取るためのシールドジャッキ11とを備えて構成されている。シールドジャッキ11は周方向に複数等間隔に配置されており、セグメント8、9を組み立てるとき、その組立位置のシールドジャッキ11を縮退させ、他のシールドジャッキ11で切羽の圧力を保持するようになっている。
【0014】
また、シールド掘進機1内には、後述する撤去シールド13の部品であるシール部14が内蔵されており、シールド掘進機1で構築したトンネルの中間位置でシール部14を用い撤去シールド13を組み立てるようになっている。
【0015】
図4(g)に示すように、撤去シールド13は、既設セグメント8の端部外周を液密に覆う筒状の外周フレーム15に、その前端の中央開口を塞ぐ隔壁16を設けると共にセグメント解体用のエレクタ17を設けて構成される。外周フレーム15は、予め前後に分割されており、後部を構成するシール部14と、前部を構成する分割ブロック29、30、31、32とからなる。
【0016】
シール部14は、シールドフレーム2の内周面に沿う筒状に形成されており、シールドフレーム2の内周面に着脱自在に設けられている。図1(a)及び図7に示すように、シール部14は、筒状に形成されると共に後部の内径を前部の内径より小さく形成され撤去シールド13が推進されるとき既設セグメント8と地山18との間隙19に貫入される後部スキンプレート20と、後部スキンプレート20の後部内周側に設けられ後部スキンプレート20と既設セグメント8との間をシールするための停止シール21と、後部スキンプレート20の前部内周に沿って軸方向スライド自在に設けられ後部スキンプレート20の前部内周面に沿う筒状に形成されたスライドフレーム22と、スライドフレーム22の内周側に設けられスライドフレーム22と既設セグメント8との間をシールするための推進シール23と、スライドフレーム22の外周側に設けられスライドフレーム22と後部スキンプレート20との間をシールするためのスライドシール24とを備えて構成されている。シールド掘進機1内にシール部14を予め内蔵しておくことで一般に精度が要求されるシール21、23を分解することなく撤去シールド組立位置まで搬送することができる。
【0017】
後部スキンプレート20は、撤去シールド13のスキンプレート47の後部、すなわち、外周フレーム15の外周壁部分の後部を構成する部品であり、後端部外周に裏込め材を逃がすための外テーパ25を有すると共に後端部内周にセグメント8間の段差49を乗り越えるための内テーパ26を有する。
【0018】
停止シール21と推進シール23は、後部スキンプレート20又はスライドフレーム22からなる基材20、22の内周面に取り付けられる筒状のシールシート27と、シールシート27の内周面に沿う筒状に形成されると共に軸方向の中央を径方向内側に拡縮自在に形成され軸方向の両端をシールシート27を介して基材20、22に液密に固定されるシールプレート28とを備えた加圧シールからなる。停止シール21と推進シール23には、それぞれシールプレート28とシールシート27の間に水、空気又は油等の流体を充填して加圧するため加圧装置(図示せず)が接続されており、停止シール21と推進シール23は、加圧装置で加圧されることで径方向内側に膨らみ、減圧されることで径方向外方に縮退されるようになっている。停止シール21と推進シール23は、それぞれ加圧されて径方向内側に膨らんだとき既設セグメント8に圧接されて既設セグメント8と基材20、22との間をシールすると共に、減圧されたとき径方向外方に縮退して既設セグメント8から完全に離間されるようになっている。停止シール21と推進シール23をこのような加圧シールで構成するため、シール部14を径方向に十分薄く形成でき、スキンプレート47を薄いものにでき、既設セグメント8と地山18との間隙19に容易にスキンプレート47を貫入できる。
【0019】
図4(g)及び図9に示すように、分割ブロック29、30、31、32は、外周フレーム15の前部を周方向に分割してなるものであり、外周フレーム15を組み立てるときにセグメント8と共にシールド掘進機1内に搬入される。具体的には、分割ブロック29、30、31、32は外周フレーム15の前部を上下左右に4分割して形成され、それぞれシールド掘進機1のエレクタ10で組み立てられるようになっている。上部に位置される上部分割ブロック32は左右分割ブロック30、31の間に径方向内側から挿入できるキー形状に形成されており、他の三つの分割ブロック29、30、31を組み立てたのち、最後に組み立てられるようになっている。
【0020】
また、分割ブロック29、30、31、32は、それぞれ弧状に形成され後部スキンプレート20に突き合わされる前部分割プレート33と、前部分割プレート33の内周側に設けられる支持フレーム34と、支持フレーム34に設けられ既設セグメント8の前端に当接して切羽を保持するための切羽保持ジャッキ35とを備える。前部分割プレート33は、撤去シールド13のスキンプレート47の前部を構成する部品であり、シール部14の前端部に分割ブロック29、30、31、32を組み付けるとき、後部スキンプレート20に液密に溶接される。すなわち、後部スキンプレート20に、それぞれの分割ブロック29、30、31、32の前部分割プレート33をそれぞれ溶接することで、後部スキンプレート20と各前部分割プレート33とからなる筒状のスキンプレート47が完成される。支持フレーム34は、前端に隔壁16を液密に取り付けるための取付面48を有する。取付面48は、分割ブロック29、30、31、32が環状に組み立てられたとき全て面一となるように形成されており、前方から圧力を受ける隔壁16を圧着させるようになっている。図10に示すように、切羽保持ジャッキ35は、分割ブロック29、30、31、32を環状に組み立てたとき周方向に複数等間隔に配置されるようにそれぞれの分割ブロック29、30、31、32に2本ずつ配設されている。これにより、解体するセグメント8に当接される切羽保持ジャッキ35をセグメント8から離間させたとき、他の切羽保持ジャッキ35で埋め戻し空間部43内の埋め戻し材の圧力を保持できるようになっている。それぞれの切羽保持ジャッキ35には、既設セグメント8の前端に当接されるシュー12が設けられており、既設セグメント8に広い面積で均等に当接されるようになっている。
【0021】
次に、撤去シールド13を用いてトンネルを撤去する方法について述べる。
【0022】
シールド掘進機1の発進位置が構築すべきトンネルの起点から離間されている場合であって、上記発進位置から所定の到達位置までシールド掘進機1を掘進させてトンネルを完成させたのち、発進位置から上記起点までの区間のトンネルを撤去したい場合、まず、上記発進位置から上記起点までシールド掘進機1を掘進させる。このとき、シールド掘進機1は、シール部14の径方向内方の位置でシール部14より小径の仮設用セグメント8を組み立てつつ組み立てた仮設用セグメント8から推進反力をとって掘進する。また、掘進中は、既設セグメント8と地山18との間に形成される間隙19に裏込め材を注入して間隙19を埋める。裏込め材には、固化せず地山18に吸収されないゲル状材を用い、撤去シールド13で既設セグメント8を解体するとき、撤去シールド13の進行を阻害しないようにする。ゲル状材としては例えば吸水性ポリマーを用いることができる。
【0023】
図1(b)に示すように、シールド掘進機1が上記起点に到達したらシール部14の停止シール21に加圧して停止シール21を既設セグメント8に圧接する共に、シールドフレーム2からシール部14を離脱させ、シールド掘進機1を更に掘進させる。これにより、シール部14が仮設用セグメント8の外周側に残置される。シールド掘進機1のエレクタ10がシール部14より前方に移動されたらシールド掘進機1の掘進を止め、シール部14の後端部内周に沿って組み立てられた仮設用セグメント8を取り外し、シール部14をシールド掘進機1内に露出させる。
【0024】
図2(c)に示すように、シールド掘進機1内に分割ブロック29、30、31、32を搬入すると共にシール部14のスライドフレーム22を駆動するためのシール用ジャッキ36を搬入し、シールド掘進機1のエレクタ10を用いてシール部14の前端部に分割ブロック29、30、31、32を順次環状に組み付ける。これにより、分割ブロック29、30、31、32の切羽保持ジャッキ35は既設セグメント8の前端に臨んで配置される。また、分割ブロック29、30、31、32にシール用ジャッキ36の一端を取り付けると共にスライドフレーム22にシール用ジャッキ36の他端を取り付け、シール用ジャッキ36の伸縮によりスライドフレーム22を軸方向に駆動できるようにする。シール用ジャッキ36と切羽保持ジャッキ35には、それぞれジャッキ35、36の長さを検出するストロークセンサ37、38を設ける。また、図9に示すように、シール用ジャッキ36は、環状に組み立てられた分割ブロック29、30、31、32に周方向に複数等間隔となるように設けると共に、それぞれ同一の油圧供給配管(図示せず)に接続し、スライドフレーム22の周方向の複数位置を均等に押圧又は引張できるようにする。
【0025】
この後、図2(d)に示すように、切羽保持ジャッキ35を既設セグメント8に当たる位置まで伸長させて長さを固定すると共に、シールドジャッキ11を径方向外方に移設し、分割ブロック29、30、31、32の前方に仮設用セグメント8より半径が大きなセグメント9、39を順次組み立ててシールド掘進機1を掘進させる。このとき、分割ブロック29、30、31、32の前方には、撤去シールド13と後述する本セグメント9とを接続するための接続セグメント39を組み立て、接続セグメント39の前方にリング板状の取付板40を取り付ける。図4(g)に示すように、取付板40は、これより前方に構築する本トンネル41の後端を仕切板42で塞ぐとき仕切板42を支持するためのものであり、シールド掘進機1を掘進させて本トンネル41を構築している最中はレール等のセグメント搬送設備(図示せず)を挿通させるようになっている。
【0026】
図3(e)、(f)に示すように、取付板40の前方には、恒久的に使用する本トンネル41を構築するための本セグメント9を順次組み立ててシールド掘進機1を掘進させ、本トンネル41を完成させる。本セグメント9は、仮設用セグメント8より大きな半径に形成されているため、本セグメント9の外周側に形成される間隙19を最小にでき、裏込め材の使用量を必要最小限に抑えることができる。
【0027】
このようにして本トンネル41が完成されたらセグメント搬送設備を撤去し、図4(g)に示すように、取付板40に仕切板42を取り付けて本トンネル41の後端を塞ぎ、環状に組み立てられた分割ブロック29、30、31、32にその中央開口を塞ぐ隔壁16を設け、隔壁16と仕切板42との間に形成される埋め戻し空間部43にモルタル又は土砂等からなる埋め戻し材を充填するためのノズル44を隔壁16に設けると共に隔壁16に埋め戻し材の圧力を検出する土圧計45を設け、分割ブロック29、30、31、32にセグメント解体用のエレクタ17を設けて撤去シールド13を完成させる。また、撤去シールド13と接続セグメント39の固定も解除する。またさらに、それぞれのストロークセンサ37、38と土圧計45を制御装置46に接続する。制御装置46は、ストロークセンサ37、38及び土圧計45から入力される信号に応じて切羽保持ジャッキ35とシール用ジャッキ36を制御すると共に、推進シール23と停止シール21に所定のタイミングで加圧又は減圧するようにプログラムされている。なお、所定のタイミングとは撤去シールド13を推進させる際に停止シール21と推進シール23を切り替えるタイミングであり、詳細は後述する。
【0028】
この後、図4(h)に示すように、セグメント解体用のエレクタ17で順次既設セグメント8を解体しつつ既設セグメント8が解体された位置の切羽保持ジャッキ35を順次伸長させる。全ての切羽保持ジャッキ35がセグメント1リング分以上伸長されたら、図5(i)に示すように、ノズル44から埋め戻し空間部43に埋め戻し材を充填し、加圧する。埋め戻し材の圧力は隔壁16に背圧となって作用し、撤去シールド13の推進力となる。また、推進シール23に加圧して既設セグメント8に圧接させたのち、停止シール21を減圧して既設セグメント8から離間させ、撤去シールド13が推進したとき停止シール21が既設セグメント8に擦られないようする。
【0029】
図5(j)に示すように、制御装置46は、埋め戻し空間部43に埋め戻し材を充填しつつその圧力を土圧計45で検出し、撤去シールド13が推進できる所定の圧力になったらその圧力を維持するように切羽保持ジャッキ35を縮退させ、撤去シールド13を後方に推進させる。また、このとき制御装置46は切羽保持ジャッキ35の縮退に応じてシール用ジャッキ36を縮退させ、既設セグメント8に対して推進シール23が移動しないようにする。具体的には、切羽保持ジャッキ35とシール用ジャッキ36の長さをストロークセンサ37、38で連続的に検出し、シール用ジャッキ36が切羽保持ジャッキ35と同じ速さで縮退するようにシール用ジャッキ36に供給する油圧を制御する。切羽保持ジャッキ35が既設セグメント1リング分以上の長さ縮退されたら、制御装置46は、撤去シールド13の推進を停止させ、使用するシールを推進シール23から停止シール21に切り替え、既設セグメント8の解体を開始する。撤去シールド13の推進停止は、埋め戻し材の充填を止めることで行う。また、シールの切り替えは、停止シール21を加圧して既設セグメント8に圧接したのち、推進シール23を減圧して既設セグメント8から離間させることで行う。これにより、推進シール23に臨む既設セグメント8を解体しても停止シール21でシールを維持できる。既設セグメント8の解体作業は、まず、キーセグメントである既設セグメント8に当接する切羽保持ジャッキ35を退避させ、キーセグメントをエレクタ17で把持して解体する。この後、キーセグメントから退避させた切羽保持ジャッキ35を伸長させて後段側の既設セグメント8に当接させ、以降、解体したセグメント8に隣接する他のセグメント8を順次上述と同様の手順で解体する。このとき、既設セグメント8から順次2本の切羽保持ジャッキ35が退避されることとなるが、他の6本の切羽保持ジャッキ35で埋め戻し空間部43内の埋め戻し材の圧力を保持することができる。なお、切羽保持ジャッキ35の本数は8本に限るものではない。切羽保持ジャッキ35は、スキンプレート47の周方向に少なくとも4本以上等間隔に配置されるものとすればよい。既設セグメント8から1本の切羽保持ジャッキ35を離間させても他の3本以上の切羽保持ジャッキ35で埋め戻し材の圧力を保持することが可能である。
【0030】
図6(k)に示すように、1リング分の既設セグメント8が解体されたら、再び使用するシールを停止シール21から推進シール23に切り替え、図6(l)に示すように、上述と同様の手順、すなわち、撤去シールド13を所定距離推進させたのち、シールを切り替え、セグメントを1リング分解体すると共に切羽保持ジャッキ35を伸長させ、シールを切り替え、撤去シールド13を推進させるという手順を繰り返して既設セグメント8を撤去する。
【0031】
このように、間隙19に貫入される筒状のスキンプレート47と、スキンプレート47と既設セグメント8の間を止水するシール21、23と、スキンプレート49に支持フレーム34を介して設けられ既設セグメント8の前端に当接される切羽保持ジャッキ35と、スキンプレート47の貫入方向とは反対側の中央開口を塞ぐ隔壁16と、隔壁16に設けられ、隔壁16より前方の埋め戻し空間部43に埋め戻し材を充填するためのノズル44と、ノズル44から埋め戻し空間部43に充填された埋め戻し材の圧力を検出するための土圧計45と、ノズル44から埋め戻し空間部43に埋め戻し材を充填すると共に土圧計45で検出される圧力が予め設定した所定圧力となるように切羽保持ジャッキ35を縮退させる制御装置46と、スキンプレート47内に設けられ既設セグメント8を解体するためのエレクタ17とを備えて撤去シールド13を構成したため、埋め戻し空間部43が拡径されるのを防ぐことができると共に、カッタ及び排土設備を不要にでき、裏込め材に硬化しないゲル状材を用いて構築したトンネルを容易、かつ、安価に撤去できる。また、撤去シールド13の機長を短く抑えることができ、カーブにも容易に対応できる。
【0032】
また、切羽保持ジャッキ35は、スキンプレート47の周方向に少なくとも4本以上等間隔に配置されるものとしたため、3本以上の切羽保持ジャッキ35で埋め戻し空間部43内の埋め戻し材の圧力を安定して保持でき、既設セグメント8を安定して解体できる。
【0033】
既設セグメント8を解体するとき、ノズル44から埋め戻し空間部43内に埋め戻し材を充填すると共に土圧計45で埋め戻し空間部43内の埋め戻し材の圧力を検出し、この圧力が予め設定した所定の圧力になったときその圧力を維持するように切羽保持ジャッキ35を縮退させて撤去シールド13を推進させ、切羽保持ジャッキ35で隔壁16に作用する圧力を保持しつつエレクタ17で既設セグメント8を順次解体するため、簡易な構造の撤去シールド13で容易にトンネルを埋め戻すことができる。
【0034】
なお、シールド掘進機1とシール部14は断面円形の筒状に形成されるものについて説明したが、これに限るものではない。断面矩形状の筒状であっても良く他の断面形状の筒状であってもよい。すなわち、本実施の形態でいう筒状とは断面形状を円形に限らず、他の断面形状を含む。
【0035】
また、分割ブロック29、30、31、32は外周フレーム15の前部を上下左右に4分割して形成されるものとしたが、4分割に限るものではない。シールド掘進機1内に搬入でき、エレクタ10で組み立て可能であれば、2分割でも良くそれ以上の複数分割でもよい。
【0036】
またさらに、分割ブロック29、30、31、32は、シールド掘進機1を発進させたのち、セグメント8と共にシールド掘進機1内に搬送するものとしたが、シール部14と共に予めシールド掘進機1内に内蔵しておくものとしてもよい。この場合、分割ブロック29、30、31、32とシール部14は予め一体に形成されるものとしてもよい。ただし、シールド掘進機1の機長が長くなるため、発進立坑が十分大きく、かつ、カーブ施工の容易さを要求されない工事に用いるとよい。
【0037】
また、シールド掘進機1を掘進させてトンネルを完成させたのち、このトンネルの一部区間を撤去シールド13で撤去する場合について述べたが、撤去シールド13は、裏込め材に硬化しないゲル状材を用いたトンネルであれば全区間撤去することも可能である。この場合、構築したトンネルの端部外周に撤去シールド13のスキンプレート47を貫入して設置すると共に、隔壁16の貫入方向とは反対側の空間を密閉して埋め戻し材を充填するための埋め戻し空間部43を形成するとよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】(a)は本発明の好適実施の形態を示すシールド掘進機の側面図であり、(b)は撤去シールドのシール部を既設セグメントの外周側に残置して掘進するシールド掘進機の要部側面図である。
【図2】(c)はシール部に分割ブロックを組み立てて既設セグメントの前方位置に撤去シールドの外周フレームを形成した状態の側面図であり、(d)は外周フレームの前方位置にセグメントを組み立てて更に掘進するシールド掘進機の要部側面図である。
【図3】(e)は図2(d)の状態から掘進したシールド掘進機の要部側面図であり、(f)は(e)の状態から更に掘進したシールド掘進機の要部側面図である。
【図4】(g)は既設セグメントの前方位置で完成された撤去シールドの側面図であり、(h)は1リング分の既設セグメントを解体した撤去シールドの側面図である。
【図5】(i)は隔壁前方の埋め戻し空間部に埋め戻し材を充填している撤去シールドの側面図であり、(j)は埋め戻し材の充填圧で推進した撤去シールドの側面図である。
【図6】(k)は図5(j)の状態から1リング分の既設セグメントを解体した撤去シールドの側面図であり、(l)は(k)の状態から推進シールを後方に移動させた撤去シールドの側面図である。
【図7】図4の要部拡大図である。
【図8】図4のA−A線矢視断面図である。
【図9】図4のB−B線矢視断面図である。
【図10】図4のC−C線矢視断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 シールド掘進機
8 セグメント
9 セグメント
13 撤去シールド
16 隔壁
17 エレクタ
18 地山
19 間隙
21 停止シール(シール)
23 推進シール(シール)
34 支持フレーム
35 切羽保持ジャッキ
43 埋め戻し空間部
44 ノズル
45 土圧計
46 制御装置
47 スキンプレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド掘進機内でセグメントを組み立てながらシールド掘進機を掘進させると共に組み立てたセグメントと地山との間の間隙に固化しないゲル状の裏込め材を裏込めして構築したトンネルを撤去する撤去シールドであって、上記間隙に貫入される筒状のスキンプレートと、該スキンプレートと既設セグメントの間を止水するシールと、上記スキンプレートに支持フレームを介して設けられ既設セグメントの前端に当接される切羽保持ジャッキと、上記スキンプレートの貫入方向とは反対側の中央開口を塞ぐ隔壁と、該隔壁に設けられ、隔壁より前方の埋め戻し空間部に埋め戻し材を充填するためのノズルと、該ノズルから上記埋め戻し空間部に充填された埋め戻し材の圧力を検出するための土圧計と、上記ノズルから上記埋め戻し空間部に埋め戻し材を充填すると共に上記土圧計で検出される圧力が予め設定した所定圧力となるように上記切羽保持ジャッキを縮退させる制御装置と、上記スキンプレート内に設けられ既設セグメントを解体するためのエレクタとを備えたことを特徴とする撤去シールド。
【請求項2】
上記切羽保持ジャッキは、上記スキンプレートの周方向に少なくとも4本以上等間隔に配置された請求項1記載の撤去シールド。
【請求項3】
シールド掘進機内でセグメントを組み立てながらシールド掘進機を掘進させると共に組み立てたセグメントと地山との間の間隙に固化しないゲル状の裏込め材を裏込めして構築したトンネルを撤去するトンネル撤去方法であって、
上記間隙に筒状のスキンプレートを貫入すると共に、該スキンプレートと既設セグメントの間を止水するシールを設け、上記スキンプレートに既設セグメントの前端に当接される切羽保持ジャッキを支持フレームを介して設け、上記スキンプレートの貫入方向とは反対側の中央開口を隔壁で塞ぐと共に、該隔壁に隔壁より前方の埋め戻し空間部に埋め戻し材を充填するためのノズルを設け、該ノズルから上記埋め戻し空間部に充填された埋め戻し材の圧力を検出するための土圧計を設け、上記スキンプレート内に既設セグメントを解体するためのエレクタを設けて撤去シールドを構成し、
上記ノズルから上記埋め戻し空間部に埋め戻し材を充填すると共に上記土圧計で埋め戻し空間部内の埋め戻し材の圧力を検出し、この圧力が予め設定した所定の圧力になったときその圧力を維持するように上記切羽保持ジャッキを縮退させて上記撤去シールドを推進させ、上記切羽保持ジャッキで隔壁に作用する圧力を保持しつつ上記エレクタで既設セグメントを順次解体することを特徴とするトンネル撤去方法。
【請求項4】
上記切羽保持ジャッキは、上記スキンプレートの周方向に少なくとも4本以上等間隔に配置され、解体するセグメントに当接される切羽保持ジャッキをセグメントから離間させたとき、他の3本以上の切羽保持ジャッキで埋め戻し空間部内の埋め戻し材の圧力を保持できるようにした請求項3記載のトンネル撤去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−13586(P2009−13586A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−172991(P2007−172991)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】