説明

撥ね上げ式眼鏡

【課題】前掛眼鏡を眼鏡に簡易に着脱できると共に、前掛眼鏡をスムーズに撥ね上げることができ、然も、その撥ね上げ角度を無段階の任意の角度に設定できる撥ね上げ式眼鏡を提供する。
【解決手段】眼鏡5に対して前掛眼鏡6を、着脱可能且つ撥ね上げ可能に磁気吸着状態で取り付けてなる。眼鏡5aは、左右のレンズ部2a,2a相互を連結する連結部3の中央部分に丸軸状の軸状磁性部10が設けられている。前掛眼鏡6の、左右の補助レンズ部12,12相互を連結する連結杆13には、軸状磁性部10を嵌め入れることができてこれを磁気吸着し得る円形凹面を有する凹状磁性部19が設けられている。軸状磁性部10を凹状磁性部19に磁気吸着状態で嵌め入れることにより、前掛眼鏡6が、磁気吸着状態を維持しつつ、撥ね上げられた状態と下ろされた状態との角度範囲でスムーズに回動できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は撥ね上げ式眼鏡に関するものであり、より詳しくは、本体となる眼鏡体に対して前掛眼鏡を、着脱可能且つ撥ね上げ可能に磁気吸着状態で取り付けることのできる撥ね上げ式眼鏡に関するものである。
【背景技術】
【0002】
眼鏡使用者の必要に応じ、サングラスや偏光眼鏡等を掛けた状態を得る目的で或いは着用眼鏡の視力矯正を図る等の目的で、各種タイプの撥ね上げ式眼鏡が実用に供されている。これらの内、前掛眼鏡を眼鏡に対して着脱可能且つ撥ね上げ可能に磁気吸着状態で取り付けてなる撥ね上げ式眼鏡の一例として、特表2007−505280号公報が開示するものが提案されている。
【0003】
該撥ね上げ式眼鏡は、図34(A)に示すように、左右のレンズ部相互を連結部aで連結してなる眼鏡の該連結部aに対して、左右の補助レンズ部相互を連結杆cで連結してなる前掛眼鏡bの該連結杆cを、連結装置dにより磁気吸着状態で取り付ける構成を有している。
【0004】
該連結装置dは図34(A)に示すように、前記眼鏡を構成する前記連結部aの長さ方向の中央部分に、断面が多角形状例えば正六角形状を呈する六角形軸状磁性部eを具えており、正六角形の対向する稜線組のうちの一組は上下に配置されている。今、各稜線を、下端から時計回りに、第1稜線f1、第2稜線f2、第3稜線f3、第4稜線f4、第5稜線f5、第6稜線f6とし、該六角形軸状磁性部eの側面は、前側の下の面から時計回りに、第1側面g1、第2側面g2、第3側面g3、第4側面g4、第5側面g5、第6側面g6とする。又、前記前掛眼鏡を構成する前記連結杆cは台形凹状磁性部hを具えている。該台形凹状磁性部hは、前記六角形軸状磁性部eの周方向で連なる3つの側面と磁気吸着状態で当接し得る第1磁性内面j1と第2磁性内面j2と第3磁性内面j3が、凹部kを有する台形状凹面mを形成する如く設けられている。
【0005】
図34(A)は、前記六角形軸状磁性部eの眼鏡前面側の半分nが前記台形凹状磁性部hの該凹部kに嵌め入れられた状態を示している。第1側面g1、第2側面g2、第3側面g3の夫々が第1磁性内面j1、第2磁性内面j2、第3磁性内面j3に磁気吸着しており、これによって、前記前掛眼鏡の前記連結杆cが、前記眼鏡の前記連結部aに磁気吸着状態で取り付けられ、前記補助レンズ部が前記左右のレンズ部の前面をその前側で覆った状態となっている。
【0006】
図34(A)〜図34(E)は、該覆った状態にある前掛眼鏡を所要角度に撥ね上げるまでの間における、前記台形凹状磁性部hの前記六角形軸状磁性部eの軸線回りの回動動作(時計回りの回動動作)を示すものである。図34(B)は、前掛眼鏡が前記覆った状態(図34(A))から稍回動した状態を示すものであり、台形状凹面mの対向する第1磁性内面j1と第3磁性内面j3に六角形の第2稜線f2と第4稜線f4が接した状態となっている。更に回転することにより、図34(C)に示すように、第2側面g2、第3側面g3、第4側面g4の夫々が第1磁性内面j1、第2磁性内面j2、第3磁性内面j3に磁気吸着状態となる。六角形軸状磁性部eと台形凹状磁性部hは互いに磁気吸着し得るため、前掛眼鏡の回動によって図34(B)に示す線接触状態から図34(C)に示す面接触状態に移行する際、その回動は急激に行なわれ、前記第2稜線f2と前記第4稜線f4が台形状凹面mに強く急激に擦られながら図34(C)に示す面接触状態となり、前掛眼鏡は衝撃的に急停止する。
【0007】
前掛眼鏡を更に回動させると、図34(D)に示すように、台形状凹面mの対向する第1磁性内面j1と第3磁性内面j3に六角形の第3稜線f3と第5稜線f5が接した状態となる。更に回動させると、図34(E)に示すように、第3側面g3、第4側面g4、第5側面g5の夫々が第1磁性内面j1、第2磁性内面j2、第3磁性内面j3に磁気吸着状態となる。前掛眼鏡の回動によって図34(D)に示す線接触状態から図34(E)に示す面接触状態に移行する際、前記と同様に、その回動は急激に行なわれ、前記第3稜線f3と前記第5稜線f5が台形状凹面mに強く急激に擦られながら図34(E)に示す面接触状態となり、前掛眼鏡は衝撃的に急停止する。図34(E)は、前掛眼鏡が所要角度に撥ね上げられた状態である。
【0008】
このように従来の撥ね上げ式眼鏡にあっては、前掛眼鏡の撥ね上げの際に、磁気吸着作用による衝撃的な急停止動作が生じて撥ね上げがスムーズでない問題があったばかりか、かかる急激な停止動作の際に、前記六角形軸状磁性部の特定された稜線のみが強く擦られることになり、その表面に施されている塗装やメッキが剥げやすく眼鏡の美観を損なう問題があった。又、前掛眼鏡の撥ね上げ角度が六角形軸状磁性部等の断面形態に特定されてしまい、自由な角度での撥ね上げができない問題もあった。更に、前掛眼鏡が衝撃的に急停止するため、その衝撃によって前掛眼鏡が眼鏡から脱落する恐れもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2007−505280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みて開発されたものであり、前掛眼鏡を眼鏡体に簡易に着脱自在に装着できると共に、眼鏡体に装着された前掛眼鏡をスムーズに撥ね上げることができ、しかも、撥ね上げ角度を無段階の任意の角度に設定できる撥ね上げ式眼鏡の提供を課題とするものである。又本発明は、前掛眼鏡を撥ね上げ操作する際に、軸状磁性部の表面に施されている塗装やメッキが剥げにくく、又、撥ね上げ操作の際に前掛眼鏡が脱落するのを防止し得る撥ね上げ式眼鏡の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため本発明は以下の手段を採用する。
即ち、本発明に係る撥ね上げ式眼鏡は、目と相対する左右の枠部相互を連結部で連結してなる眼鏡体の該連結部に対して前掛眼鏡を着脱可能且つ撥ね上げ可能に磁気吸着状態で取り付けてなる撥ね上げ式眼鏡であって、該前掛眼鏡は、前記左右の枠部の前面をその前側で覆い得る左右の補助レンズ部相互を連結杆で連結してなり、該連結部は、丸軸状の軸状磁性部を具える一方、前記連結杆には、該軸状磁性部を嵌め入れることができて該軸状磁性部を磁気吸着し得る凹部を有する凹状磁性部が設けられている。そして、該凹状磁性部の内面に前記軸状磁性部の外周面が接する状態で該軸状磁性部が該凹状磁性部に磁気吸着状態で嵌め入れられることにより、前記前掛眼鏡が、該磁気吸着状態を維持しつつ、前記左右の補助レンズ部が前記眼鏡体の前記左右の枠部の前面をその前側で覆った状態と、該左右の補助レンズ部が撥ね上げられた状態との角度範囲で回動可能となされており、又、該前掛眼鏡の所要の撥ね上げ状態を前記磁気吸着で保持できることを特徴とするものである。
【0012】
前記撥ね上げ式眼鏡において、前記眼鏡体を構成する左右の枠部は左右のレンズ部であることの他、該枠部は、レンズを具えないこともある。
【0013】
前記前掛眼鏡をその撥ね上げられた状態から下方向に回動させた際に、前記左右の補助レンズ部が前記眼鏡体の前記左右の枠部の前面をその前側で所要に覆った状態となるように前記連結部や前記連結杆に角度規制のストッパ部を設けるのがよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明は以下の如き優れた効果を奏する。
(1) 本発明に係る撥ね上げ式眼鏡は、前掛眼鏡に設けた凹状磁性部の内面に眼鏡体の丸軸状の軸状磁性部の外周面が接する状態で該軸状磁性部を該凹状磁性部に磁気吸着状態で嵌め入れる構成を採用している。
従って本発明によるときは、該磁気吸着状態を維持しつつ、前記前掛眼鏡を、円弧を描くようにスムーズに撥ね上げることができる一方、下方向に回動させて下ろした状態とすることができ、その撥ね上げ状態を無段階の任意の角度に設定できる。そして、このようにスムーズな回動(従来のような衝撃的な急停止を伴わない滑らかな回動)を達成できるために、軸状磁性部の表面に施されている塗装やメッキが剥げにくい。又、前掛眼鏡の撥ね上げを、振動を伴わないでスムーズに行うことができるため、前掛眼鏡が眼鏡から脱落する恐れがない。加えて、例えば撥ね上げられた状態にある前掛眼鏡に、不用意に手が強く当たった場合においても、該前掛眼鏡の上方向又は下方向への回動の余裕によって且つその回動がスムーズであることによって、該前掛眼鏡が外れにくい利点もある。
【0015】
(2) 又、本発明は前記構成を有するため、前掛眼鏡を眼鏡体に着脱可能且つ撥ね上げ可能にワンタッチ操作で容易に取り付けることができると共に、前掛眼鏡を眼鏡体から分離するのも容易である。
かかることから使用者は、遮光機能や偏光機能、視力矯正機能などを有する所望の前掛眼鏡を選択してこれを眼鏡体に取り付けることにより、その必要に応じた撥ね上げ式眼鏡を簡易に構成でき、該前掛眼鏡を前記下ろした状態とすることにより、遮光眼鏡や偏光眼鏡、矯正眼鏡等を装着したのと同様の効果が得られることになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る撥ね上げ式眼鏡を、前掛眼鏡が下ろされた状態で示す斜視図である。
【図2】撥ね上げ式眼鏡を構成する眼鏡と前掛眼鏡を示す斜視図である。
【図3】撥ね上げ式眼鏡を構成する眼鏡と前掛眼鏡を示す斜視図である。
【図4】撥ね上げ式眼鏡を、前掛眼鏡が下ろされた状態で示す側面図と断面図である。
【図5】撥ね上げ式眼鏡を、前掛眼鏡が撥ね上げられた状態で示す側面図と断面図である。
【図6】撥ね上げ式眼鏡の他の実施例を示す斜視図である。
【図7】その撥ね上げ式眼鏡において、前掛眼鏡が下ろされた状態を示す側面図と断面図である。
【図8】その撥ね上げ式眼鏡において、前掛眼鏡が撥ね上げられた状態を示す側面図と断面図である。
【図9】撥ね上げ式眼鏡のその他の実施例を示す斜視図である。
【図10】その撥ね上げ式眼鏡を構成する眼鏡体と前掛眼鏡を示す斜視図である。
【図11】その撥ね上げ式眼鏡において、前掛眼鏡が下ろされた状態を示す側面図と断面図である。
【図12】その撥ね上げ式眼鏡において、前掛眼鏡が撥ね上げられた状態を示す側面図と断面図である。
【図13】撥ね上げ式眼鏡のその他の実施例を示す斜視図である。
【図14】その撥ね上げ式眼鏡において、前掛眼鏡が下ろされた状態を示す側面図と断面図である。
【図15】その撥ね上げ式眼鏡において、前掛眼鏡が撥ね上げられた状態を示す側面図と断面図である。
【図16】撥ね上げ式眼鏡のその他の実施例を示す斜視図である。
【図17】その撥ね上げ式眼鏡において、前掛眼鏡が下ろされた状態を示す側面図と断面図である。
【図18】その撥ね上げ式眼鏡において、前掛眼鏡が撥ね上げられた状態を示す側面図と断面図である。
【図19】撥ね上げ式眼鏡のその他の実施例を示す斜視図である。
【図20】その撥ね上げ式眼鏡において、前掛眼鏡が下ろされた状態を示す側面図と断面図である。
【図21】その撥ね上げ式眼鏡において、前掛眼鏡が撥ね上げられた状態を示す側面図と断面図である。
【図22】凹状磁性部に軸状磁性部を嵌め入れた他の態様を示す断面図である。
【図23】2個の磁石を組み合わせて構成された凹状磁性部を示す断面図である。
【図24】2個の磁石を組み合わせて構成された凹状磁性部を示す斜視図と断面図である。
【図25】3個の磁石を組み合わせて構成された凹状磁性部を示す断面図である。
【図26】2個の磁石を組み合わせて構成された凹状磁性部を示す断面図である。
【図27】2個の磁石を組み合わせて構成された凹状磁性部を示す断面図である。
【図28】2個の磁石を組み合わせて構成された凹状磁性部を示す断面図である。
【図29】2個の磁石を組み合わせて構成された凹状磁性部を示す断面図である。
【図30】凹状磁性部に軸状磁性部を嵌め入れたその他の態様を示す断面図である。
【図31】軸状磁性部のその他の態様を、該軸状磁性部が凹状磁性部に嵌め入れられた状態で示す断面図である。
【図32】撥ね上げ式眼鏡を構成する眼鏡の他の態様を前掛眼鏡と共に示す斜視図である。
【図33】角度規制のストッパ部の一例を示す斜視図と断面図である。
【図34】従来の磁気吸着方式の撥ね上げ式眼鏡の問題点を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0017】
図1〜2、図4〜5において本発明に係る撥ね上げ式眼鏡1は、目と相対する左右の枠部2,2相互を連結部3で連結してなる眼鏡体5に対して前掛眼鏡6を、着脱可能且つ撥ね上げ可能に磁気吸着状態で取り付けてなるものである。
【0018】
該眼鏡体5は本実施例においては図2〜3に示すように、レンズ4をリム8で包持してなる左右のレンズ部2a,2aとしての前記左右の枠部2,2相互を連結部3で連結してなる眼鏡5aとして構成されている。そして該連結部3は、該左右のレンズ部2a,2aの上縁部の内方部位9,9相互を連結する左右方向に延びる軸状に構成されており、該連結部3の中央部分は、図2〜3に示すように、断面円形の丸軸状の軸状磁性部10として構成されている。
【0019】
前記前掛眼鏡6は、図1〜5に示すように、前記眼鏡5aの前記左右のレンズ部2a,2aの前面11,11をその前側で覆い得る左右の補助レンズ部(例えば遮光レンズ)12,12の上縁部相互を連結杆13で連結してなり、該連結杆13の中央部分には保持部15が設けられている。該保持部15の前記眼鏡5aに面する側には、前記軸状磁性部10の半分弱の部分を略密接した状態で嵌め入れることのできる、凹部16が半円弧状の円形凹面17を有する凹状磁性部19が設けられている。本実施例においては、前記左右の補助レンズ部12,12が前記眼鏡5aの左右のレンズ部2a,2aの前面11,11をその前側で覆ってなる下ろされた状態(図1、図4)において、前記凹部16が後方に向けて開放状態にあり、前記軸状磁性部10の略前半分が該凹部16に、磁気吸着状態で嵌め入れられるようになされている。
【0020】
本実施例においては、前記軸状磁性部10は鉄製(磁力に反応する鉄合金製)であり前記凹状磁性部19は磁石(例えば、強力なネオジウム磁石)で構成されている。該凹状磁性部19の円形凹面17に前記軸状磁性部10の外周面20が接する状態で該軸状磁性部10を該凹状磁性部19に嵌め入れると、該軸状磁性部10と該凹状磁性部19とが磁気吸着状態となり、図4、図1に示すように、前掛眼鏡6が眼鏡5aに取り付けられることになる。
【0021】
前記前掛眼鏡6は、該磁気吸着状態を維持しつつ、前記左右の補助レンズ部12,12が前記眼鏡5aの左右のレンズ部2a,2aの前面11,11をその前側で覆った状態(図4、図1)と、該左右の補助レンズ部12,12が所要に撥ね上げられた状態との角度範囲で回動可能となされている。そして前記磁石による磁気吸着力の大きさは、撥ね上げられた前掛眼鏡6を、これが不用意に下方向に回動しないように磁気吸着で保持できる程度に設定されている。
【0022】
かかる構成の撥ね上げ式眼鏡1によるときは、前掛眼鏡6を、円弧を描くようにスムーズに撥ね上げることができると共に、円弧を描くようにスムーズに下方向に回動させて、前記左右の補助レンズ部12,12が前記左右のレンズ部2a,2aの前面11,11をその前側で覆った状態となすことができる。又、その撥ね上げを無段階の任意の角度に設定できる。そして、このようにスムーズな回動を達成できるために、軸状磁性部10の外周面20に施されている塗装やメッキが剥げにくい。更に、前掛眼鏡6の撥ね上げがスムーズであるために、前掛眼鏡6が眼鏡5aから脱落する恐れがない。
【0023】
そして、前記凹状磁性部19に前記軸状磁性部10を磁気吸着状態で嵌め入れることにより、前掛眼鏡6を眼鏡5aに着脱可能且つ撥ね上げ可能にワンタッチ操作で容易に取り付けることができると共に、該凹状磁性部19から該軸状磁性部10を取り外すのも容易であり前掛眼鏡6を眼鏡5aから容易に分離させ得る。
【0024】
かかることから使用者は、遮光機能や偏光機能、視力矯正機能などを有する所要の前掛眼鏡を選択してこれを眼鏡5aに取り付けることにより、その必要に応じた撥ね上げ式眼鏡1を構成できることとなる。使用者の必要に応じて、該前掛眼鏡6を前記下ろされた状態で使用するときは、撥ね上げ式眼鏡1を遮光眼鏡や偏光眼鏡、或いは視力矯正眼鏡等として使用することができる一方、該前掛眼鏡6を撥ね上げた状態においては、眼鏡5aのレンズを通して見ることができる。該前掛眼鏡6は、撥ね上げられた前掛眼鏡が視野に殆ど入らない状態となるように例えば100〜120度程度の比較的大きな角度に撥ね上げることができるが、例えば、顔を下に向けた姿勢で小さな文字を読む際等においては、多少の撥ね上げ状態とされることもある。このように、使用者の必要に応じて前掛眼鏡の撥ね上げ角度を自由に設定できるのである。そして、遮光眼鏡や偏光眼鏡等を必要としない場合は、前掛眼鏡6を眼鏡5aから取り外して該眼鏡5aを単独で使用できる。
【実施例2】
【0025】
図6〜8は、本発明に係る撥ね上げ式眼鏡1の他の実施例を示すものであり、前記軸状磁性部10は断面円形の丸軸状に構成される一方、前記凹状磁性部19は、該軸状磁性部10を嵌め入れることのできる凹部16が台形状凹面21を有している。該凹状磁性部19は、例えば図6〜7に示すように、磁石面として形成された3つの磁性内面(両傾斜側面22,23と底面25)を有しており、該両傾斜側面22,23としての磁性内面に前記軸状磁性部10の外周面20が線接触状態で当接して軸状磁性部10が前記凹部16に嵌め入れられ、該軸状磁性部10と該凹状磁性部19とが磁気吸着状態となるように構成されている。軸状磁性部10がこのように底面としての磁性内面25から若干浮いた状態となっても、該磁性内面25と軸状磁性部10との間でも磁気吸着作用が得られる。
【0026】
本実施例においては、前記左右の補助レンズ部12,12が前記眼鏡5aの左右のレンズ部2a,2aの前面11,11をその前側で覆った下ろされた状態において、前記凹部16が後方に向けて開放状態にあり、前記軸状磁性部10の略前半分が該凹部16に磁気吸着状態で嵌め入れられるようになされている。そして、前記磁石面による磁気吸着力の大きさは、撥ね上げられた前掛眼鏡6を、これが不用意に下方向に回動しないように磁気吸着で保持できる程度に設定されている。
【0027】
かかる構成の撥ね上げ式眼鏡1によるときも前記と同様にして、前掛眼鏡6を、円弧を描くようにスムーズに撥ね上げることができると共に、円弧を描くようにスムーズに下方向に回動させて、前記左右の補助レンズ部12,12が前記左右のレンズ部2a,2aの前面11,11をその前側で覆った状態となすことができる。又、その撥ね上げを無段階の任意の角度に設定できる。そして、このようにスムーズな回動を達成できるために、軸状磁性部10の外周面20に施されている塗装やメッキが剥げにくい。更に、前掛眼鏡6の撥ね上げがスムーズであるために、前掛眼鏡6が眼鏡5aから脱落する恐れがない。そして該撥ね上げ式眼鏡1は、前記と同様にして、使用者の必要に応じて、該前掛眼鏡6を前記下ろした状態や撥ね上げた状態で使用でき、或いは、該前掛眼鏡6を眼鏡5aから取り外して該眼鏡5aを単独で使用できる。
【実施例3】
【0028】
図9〜12は本発明に係る撥ね上げ式眼鏡1のその他の実施例を示すものであり、眼鏡体5がレンズを具えない枠体5bである場合の一例を示している。
【0029】
即ち、該撥ね上げ式眼鏡1は、目と相対する左右の枠部(左右方向に稍湾曲した縁部として構成されており、レンズを具えていない)2,2相互を連結部3で連結してなる枠体5bとしての眼鏡体5の該連結部3に対して前掛眼鏡6を着脱可能且つ撥ね上げ可能に磁気吸着状態で取り付ける構成を有している。かかる撥ね上げ式眼鏡1は、左右の枠部2,2がレンズを具えない点において前記実施例1、前記実施例2に係る撥ね上げ式眼鏡1と相違するだけであり、軸状磁性部10と凹状磁性部19の構成及び、該軸状磁性部10が該凹状磁性部19に磁気吸着状態で嵌め入れられた状態となる構成、前掛眼鏡6が、該磁気吸着状態を維持しつつ、前記左右の補助レンズ部12,12が前記左右の枠部2,2の前面27,27をその前側で覆った状態と、該左右の補助レンズ部12,12が所要に撥ね上げられた状態との角度範囲で回動可能となされている構成、前記磁石による磁気吸着力の大きさが、撥ね上げられた前掛眼鏡6を、これが不用意に下方向に回動しないように磁気吸着で保持できる程度に設定されている点については、前記実施例におけると同様であるため、その具体的な説明を省略する。
【0030】
かかる構成を要する撥ね上げ式眼鏡1によるときは、使用者が、遮光眼鏡や偏光眼鏡等としての前掛眼鏡6を磁気吸着状態で眼鏡体5に取り付けることにより、該前掛眼鏡6を下ろされた状態で使用する際はこれを遮光眼鏡や偏光眼鏡、或いは近眼鏡や老眼鏡等の視力矯正眼鏡等として使用することができる一方、該前掛眼鏡6を撥ね上げた状態にあっては、手元を見る際やトンネルを走行中において裸眼視できる。
【実施例4】
【0031】
本発明は、前記実施例で示したものに限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内で種々の設計変更が可能であることはいうまでもない。その一例を挙げれば次のようである。
【0032】
(1) 図13〜15、図16〜18、図19〜21は、前記前掛眼鏡6の保持部15の凹状磁性部19の他の態様を示すものである。
図13〜15に示す凹状磁性部19は、前記左右の補助レンズ部12,12が前記眼鏡5aの左右のレンズ部2a,2aの前面11,11をその前側で覆った下ろされた状態において、その凹部16が下方に開放した状態にある。該凹部16は、例えば、前記軸状磁性部10の半分弱を略密接した状態で嵌め入れることのできる半円弧状の円形凹面17を有する如く構成されている。このように構成したときも前記実施例におけると同様にして、前掛眼鏡6は、磁気吸着状態を維持しつつ、該下ろされた状態と所要に撥ね上げられた状態との角度範囲で、円弧を描くようにスムーズに回動可能であり、所要の撥ね上げ状態が磁気吸着で保持される。
【0033】
図16〜18に示す凹状磁性部19は、前記左右の補助レンズ部12,12が前記眼鏡5aの左右のレンズ部2a,2aの前面11,11をその前側で覆った下ろされた状態において、その凹部16が上方に開放した状態にある。該凹部16は、例えば、前記軸状磁性部10の略半分を略密接した状態で嵌め入れることのできる半円弧状の円形凹面17を有する如く構成されている。このように構成したときも前記実施例におけると同様にして、前掛眼鏡6は、磁気吸着状態を維持しつつ、該下ろされた状態と所要に撥ね上げられた状態との角度範囲で、円弧を描くようにスムーズに回動可能であり、所要の撥ね上げ状態が磁気吸着で保持される。
【0034】
図19〜21に示す凹状磁性部19は、前記左右の補助レンズ部12,12が前記眼鏡5aの左右のレンズ部2a,2aの前面11,11をその前側で覆った下ろされた状態において、その凹部16が前方に開放した状態にある。該凹部16は、例えば、前記軸状磁性部10の略半分を略密接した状態で嵌め入れることのできる半円弧状の円形凹面17を有する如く構成されている。このように構成したときも前記実施例におけると同様にして、前掛眼鏡6は、磁気吸着状態を維持しつつ、該下ろされた状態と所要に撥ね上げられた状態との角度範囲で、円弧を描くようにスムーズに回動可能であり、所要の撥ね上げ状態が磁気吸着で保持される。
【0035】
凹状磁性部19をこれらのように構成する場合も、前記眼鏡体5が、前記左右の枠部2,2がレンズを具えない枠体5bとして構成されることがある他、前記凹部16が前記と同様構成の台形状凹面21を有する如く構成されることもある。
【0036】
(2) 本発明に係る撥ね上げ式眼鏡において、前記実施例における場合とは逆に、前記軸状磁性部10を磁石とし、前記凹状磁性部19を、該磁石と吸着し得る鉄製とすることもある。或いは、軸状磁性部10と凹状磁性部19の双方を磁石で構成することもある。
【0037】
(3) 前記凹状磁性部19が、その凹部16が台形状凹面21を有する如く構成される場合、図22に示すように、磁石面として形成された三つの磁性内面(両傾斜側面22,23と底面25)に前記軸状磁性部10の外周面20が線接触状態で当接することもある。
【0038】
(4) 図23〜28は、凹状磁性部19のその他の態様を示すものであり、複数個の磁石を組み合わせて構成されている。
図23に示す凹状磁性部19は、円形凹面17を呈する凹部16を有する如く構成されており、2個の磁石29,29,29の端面30,30相互を磁気吸着や接着等の手段で一体化してなるものである。図24に示す凹状磁性部19は、台形状凹面21を呈する凹部16を有する如く構成されており、2個の磁石を両傾斜面部に配置して該台形状凹面21の両傾斜側面22,23のみが磁性内面として形成されている。又図25に示す凹状磁性部19は、台形状凹面21を呈する凹部16を有する如く形成されており、3分割された磁石29,29,29の端面相互を磁気吸着や接着等の手段で一体化して磁性内面(両傾斜側面22,23と底面25)が形成されている。図24〜25においては、前記軸状磁性部10の外周面20が前記凹部16の両傾斜側面22,23に線接触状態で当接した場合が示されている。
又、図26〜29に示す凹状磁性部19は、2個の磁石29,29を組み合わせてV字状凹面31を呈する凹部16を有する如く構成されており、該V字状凹面31は、前記軸状磁性部10の外周面20と2箇所で線接触し得る。
【0039】
(5) 図30は、凹状磁性部19が円形凹面17を呈する凹部16を有する如く構成されており、前記軸状磁性部10の外周面20が該凹部16の両縁32,32に線接触状態で当接した場合を示している。
【0040】
(6) 本発明において丸軸状の軸状磁性部10には、断面が完全な円形を呈するものの他、例えば図31に示すように、前記前掛眼鏡6の回動角度範囲において前記凹状磁性部19と接触しない部分30が平坦面や凹面等の非円形面に形成されたものも含まれる。
【0041】
(7) 前記前掛眼鏡6が回動を繰り返す内に、軸状磁性部10の外周面20に施されている塗装やメッキが徐々に摩耗することは予想される。これに対処するために、例えば軸状磁性部10を比較的硬質の樹脂で被覆する一方、前記凹状磁性部19の内面を比較的柔らかい樹脂で被覆する等、軸状磁性部を保護する手段を採用することもある。
【0042】
(8) 前記眼鏡5aは、例えば図32に示すような、レンズの上縁部分に取り付く縁枠31の両端33,33に、前記レンズ4の下縁部分に取り付けられたコード35の端部分を止着してなる縁無眼鏡として構成されることもある。
【0043】
(9) 前掛眼鏡6は、左右の補助レンズ部12,12が一連に連なったものとして、例えばプラスチック製サングラスとして構成されることもある。
【0044】
(10)前記眼鏡体5が前記枠体5bである場合において前掛眼鏡6が近眼鏡や老眼鏡であるときは、視力矯正をより確実とするために、該前掛眼鏡6をその撥ね上げられた状態から下方向に回動させた際に左右の補助レンズ部12,12が目に対してより正しい位置関係となるように、例えば図33に示す如く、前記連結部3や前記連結杆13等に、角度規制のストッパ部35を設けるのが好ましい。なお、かかるストッパ部を設ける構成は、眼鏡5aに対して前掛眼鏡6を取り付ける場合にも応用できる。
【符号の説明】
【0045】
1 撥ね上げ式眼鏡
2 枠部
2a レンズ部
3 連結部
5 眼鏡体
5a 眼鏡
5b 眼鏡枠
6 前掛眼鏡
10 軸状磁性部
11 枠部の前面
12 補助レンズ部
13 連結杆
15 保持部
16 凹部
19 凹状磁性部
20 軸状磁性部の外周面
21 台形状凹面
22 磁性内面
23 磁性内面
25 磁性内面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目と相対する左右の枠部相互を連結部で連結してなる眼鏡体の該連結部に対して前掛眼鏡を着脱可能且つ撥ね上げ可能に磁気吸着状態で取り付けてなる撥ね上げ式眼鏡であって、該前掛眼鏡は、前記左右の枠部の前面をその前側で覆い得る左右の補助レンズ部相互を連結杆で連結してなり、該連結部は、丸軸状の軸状磁性部を具える一方、前記連結杆には、該軸状磁性部を嵌め入れることができて該軸状磁性部を磁気吸着し得る凹部を有する凹状磁性部が設けられており、
該凹状磁性部の内面に前記軸状磁性部の外周面が接する状態で該軸状磁性部が該凹状磁性部に磁気吸着状態で嵌め入れられることにより、前記前掛眼鏡が、該磁気吸着状態を維持しつつ、前記左右の補助レンズ部が前記眼鏡体の前記左右の枠部の前面をその前側で覆った状態と、該左右の補助レンズ部が撥ね上げられた状態との角度範囲で回動可能となされており、又、該前掛眼鏡の所要の撥ね上げ状態を前記磁気吸着で保持できることを特徴とする撥ね上げ式眼鏡。
【請求項2】
前記眼鏡体を構成する左右の枠部は左右のレンズ部であることを特徴とする請求項1記載の撥ね上げ式眼鏡。
【請求項3】
前記眼鏡体を構成する左右の枠部はレンズを具えないことを特徴とする請求項1記載の撥ね上げ式眼鏡。
【請求項4】
前記前掛眼鏡をその撥ね上げられた状態から下方向に回動させた際に、前記左右の補助レンズ部が前記眼鏡体の前記左右の枠部の前面をその前側で覆った状態となるように前記連結部や前記連結杆に角度規制のストッパ部を設けたことを特徴とする請求項1、2又は3記載の撥ね上げ式眼鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【公開番号】特開2011−53627(P2011−53627A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−205074(P2009−205074)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【出願人】(509250467)
【Fターム(参考)】