説明

撥水および撥油性帯電防止組成物

【課題】絶縁材または基材に良好な帯電防止特性並びに十分な撥性の特性を付与する組成物を提供する。
【解決手段】撥水および撥油性帯電防止組成物が、(a)(i)カチオン窒素中心に結合した少なくとも1つのポリオキシアルキレン部分を有する少なくとも1つのカチオンと、(ii)アニオンの共役酸が炭化水素スルホン酸の酸度以上の酸度を有する、少なくとも1つの弱配位アニオンと、からなる少なくとも1つのポリマー塩と、(b)少なくとも1つのフルオロケミカル撥剤と、(c)少なくとも1つの絶縁材と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は帯電防止および撥性の両方の特性を示す組成物に関する。この発明は更に、これらの組成物を含む繊維、フィルム、布、コーティング、または成形またはブローン物品に関する。他の態様において、この発明は、局所処理剤組成物に関し、および絶縁材に帯電防止および撥性の両方の特性を付与する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々なフルオロケミカルが、いろいろな基材(例えば、織物、カーペット、革、紙、および不織ウェブ)に撥水および撥油性を付与するために使用されている。これらのフルオロケミカルは非常にしばしば局所的に(例えば、噴霧、パジング、または仕上槽液浸によって)適用されるが、又、フルオロケミカルには、撥水および撥油性ポリマー繊維、フィルム、布などを作製するためのポリマー溶融添加剤として有用であるものもある。得られた撥性基材は、水および/または撥油性の特性が重視されている多数の適用において使用されている。
【0003】
しかしながら、いくつかの適用については、帯電防止性質もまた、特に撥性と共に、必要であるかまたは望ましい。
【0004】
静電防止剤(antistats)または帯電防止剤(antistatic agents)が、静電荷(electrostatic or static charge)を散逸させるために用いられる。静電荷(electrostatic charge)の発生は、多くの工業製品および材料の加工および使用におけるいろいろな問題の原因である。静電帯電により、材料同士をくっつけたり、または互いに反発させることがある。これは、繊維および織物の加工における問題である。更に、静電荷(static charge)の発生により、物体が夾雑物および粉塵を引き付け、それによってフルオロケミカル撥剤(repellent)の有効性を減少させることがある。
【0005】
絶縁物体からの突然の静電放電もまた、大きな問題である場合がある。写真のフィルムに対して、これらの放電は曇りや汚点の外観をもたらすことがある。可燃性材料が存在しているとき、静電気の放電が発火源となり、火災および/または爆発をもたらすことがある。最新の電子デバイスは静電放電によって永久損傷を非常に受けやすいので、静電荷(electrostatic charge)は電子機器産業において特に問題である。絶縁物体の静電荷の発生はきわめて普通のことであり、低湿度条件下で、および液体または固体が互いに接触して移動するとき(摩擦帯電(tribocharging))、問題がある。
【0006】
従来の静電防止剤(その多くが、電荷散逸について水の吸収および導電率に依存する湿潤剤である)は概して、フルオロケミカル撥剤と併用してあまり有効ではなかった。この組合せの結果はしばしば、いずれかの添加剤だけの使用に比べて帯電防止および/または撥水性の特性を実質的に低下または消失させることもあった。
【0007】
更に、例えば、湿潤性静電防止剤に混在された水が溶融加工温度で急速に蒸発するので、ポリマー溶融加工の適用において従来の静電防止剤とフルオロケミカル撥剤とを組み合わせることは特に難しかった。これは、ポリマー中に気泡の望ましくない形成をもたらし、押出装置のスクリュー滑りを引き起こした。又、多くの静電防止剤が、必要な熱安定性がなく、(例えば、高い押出温度が必要とされる溶融ブロー適用において)嫌な臭気の発生につながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第01/049925号
【特許文献2】特開平04−366433号公報
【特許文献3】特開平01−306678号公報
【特許文献4】特開平02−184843号公報
【特許文献5】特表2001−509532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、有効に組み合わせて、費用効果が高い方法で基材に十分な帯電防止特性および十分な撥性の特性の両方を付与することができると共に、熱分解せずに、または加工問題もしくは溶融欠陥を引き起こさずに、特に、内部溶融添加剤として利用できる帯電防止剤および撥剤が、本技術分野において必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
簡潔にいうと、1つの態様において、本発明は、少なくとも1つのポリマー塩と少なくとも1つのフルオロケミカル撥剤とを含む少なくとも1つの帯電防止剤を含む組成物を提供する。前記ポリマー塩は、少なくとも1つのカチオン窒素中心に結合した少なくとも1つのポリオキシアルキレン部分を有する少なくとも1つのカチオンと、少なくとも1つのアニオンと、からなる。
【0011】
この少なくとも1つのカチオンは好ましくは、以下の式:
【化1】

の1つによって表されたポリオキシアルキレンアンモニウム化合物であり、上式中、nが3〜50の整数であり、bが5〜150の整数であり、aおよびcが同一または異なっており、各々が0〜5の整数であり、a+cが2〜5の整数であり、Aが
【化2】

であり、x、yおよびzが、同一または異なっており、1〜30の整数であり、x+y+zの合計が≧5である。
【0012】
POAがホモポリマーか、または、ランダム、ブロック、または交互コポリマーであり、式((CH2mCH(R3)O)によって表される2〜50の単位を含み、式中、各単位が独立してm(1〜4の整数である)、およびR3を有する。R3が独立して、水素または低級アルキル基(すなわち、1〜4個の炭素原子を含有する)である。R1が独立して、アルキル、脂環式、アリール、アルカリ環式、アリール脂環式、または任意に1個以上のヘテロ原子を含有する脂環式アリール基(例えば、硫黄、窒素、酸素、塩素、臭素、またはフッ素)である。R2が独立して、水素、アルキル、脂環式、アリール、アルカリ環式、アリール脂環式、または任意に1個以上のヘテロ原子(例えば、硫黄、窒素、酸素、塩素、臭素、またはフッ素)を含有する脂環式アリール基である。そして、dが1〜4の整数である。
【0013】
ブレンド組成物または適用については、アニオンは弱配位アニオンであり、アニオンの共役酸が、炭化水素スルホン酸の酸度以上の酸度を有する。
【0014】
局所処理剤または適用については、アニオンは弱配位フルオロ有機アニオンである。
【0015】
更に、本発明の組成物は絶縁材を更に含んでもよい。
【0016】
本発明は、(a)(i)カチオン窒素中心に結合した少なくとも1つのポリオキシアルキレン部分を有する少なくとも1つのカチオンと、(ii)アニオンの共役酸が炭化水素スルホン酸の酸度以上の酸度を有する、少なくとも1つの弱配位アニオンと、からなる少なくとも1つのポリマー塩と、(b)少なくとも1つのフルオロケミカル撥剤と、のブレンドを含み、少なくとも1つの絶縁材をブレンドされる、撥水および撥油性帯電防止組成物を提供する。
【0017】
この帯電防止剤にフルオロケミカル撥剤を有効に配合して、いろいろな絶縁材に良好な帯電防止特性および良好な撥性の特性の両方を付与することができる。帯電防止剤および撥剤を局所処理剤(外部添加剤)中にだけではなく、更に(そして好ましくは)溶融添加剤(内部添加剤)として、熱分解をするかまたは加工問題もしくは溶融欠陥を引き起こすことなく配合することができる。本発明の組成物中で使用される静電防止剤/撥剤の配合剤は、撥水および撥油性(および防汚性)をも与えつつ、ポリマーフィルムまたは布など、他の場合なら絶縁性であるはずの基材中に(またはその上に)蓄積することがある静電荷を散逸させるのに驚くほど有効である。更に驚くべきことに、局所処理剤中でまたはポリプロピレンメルトブローン不織布中でポリマー溶融添加剤として用いるとき、特定の好ましい静電防止剤は、静電防止剤が単独で用いるときよりも良い静電散逸率が得られるという点で、撥剤を配合する時に相乗的な性質を示す。
【0018】
本発明の組成物中で用いられた静電防止剤とフルオロケミカル撥剤との配合剤はいろいろなポリマーと共存できる。更に、静電防止剤の多くが高温(例えば、少なくとも180℃)において安定しているので、これらの静電防止剤と熱安定性フルオロケミカル撥剤との配合剤は、高温ポリマー溶融添加剤の適用および使用温度が非常に高い適用に使用するのに特に適している。
【0019】
このため、本発明の組成物中で用いられた静電防止剤とフルオロケミカル撥剤との配合剤は、有効に組み合わせて、基材に十分な帯電防止特性および十分な撥性の特性の両方を付与することができると共に、加工問題または溶融欠陥を引き起こさずに、特に、溶融添加剤として利用できる帯電防止剤および撥剤の、本技術分野における需要を満たす。
【0020】
他の態様において、この発明は、本発明の組成物を含む繊維、布、フィルム、コーティング、または成形またはブローン物品を提供する他、例えば、ブレンディング(例えば、溶融ブレンディング)によってまたは局所処理によって、絶縁材に撥性および帯電防止特性の両方を付与する方法、および(a)(i)カチオン窒素中心に結合した少なくとも1つのポリオキシアルキレン部分を有する少なくとも1つのカチオンと、(ii)少なくとも1つの弱配位フルオロ有機アニオンと、からなる少なくとも1つのポリマー塩と、(b)少なくとも1つのフルオロケミカル撥性付与添加剤または撥剤と、を含む局所処理剤組成物、を提供する。
【0021】
更に他の態様において、この発明は、少なくとも1つの静電防止剤、少なくとも1つのフルオロケミカル撥剤および少なくとも1つの絶縁材または絶縁材の反応性前駆物質のブレンドを提供し、絶縁材料の反応性前駆物質は、モノマー、硬化性オリゴマー、または硬化性ポリマーである。
【発明の効果】
【0022】
有利には、本発明は、絶縁材または基材に良好な帯電防止特性並びに十分な撥性の特性を付与する組成物を提供する。更に、これらの発明の組成物は溶融加工可能であるのが好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、良好な帯電防止および良好な撥性の性質を有する組成物を提供する。これらの組成物は、1つ以上の帯電防止剤および1つ以上の撥剤を含む。帯電防止剤および静電防止剤が本明細書中で交換可能に用いられる。帯電防止剤および撥剤を、例えば、熱可塑性または熱硬化性ポリマーなどの絶縁材と共に用いることができる。特に、本発明は、カチオン窒素中心に結合した少なくとも1つのポリオキシアルキレン部分を有する少なくとも1つのカチオンと1つ以上の弱配位アニオンと、からなるポリマー塩と、少なくとも1つのフルオロケミカル撥剤と、を含むブレンド組成物、および窒素中心に結合した少なくとも1つのポリオキシアルキレン部分を有する少なくとも1つのカチオンと少なくとも1つの弱配位フルオロ有機アニオンと、からなるポリマー塩と、少なくとも1つのフルオロケミカル撥剤と、を含む局所処理剤組成物、を目的とする。
【0024】
「ブレンド(blend)」は、本明細書中、少なくとも1つの静電防止剤と、少なくとも1つのフルオロケミカル撥剤と、少なくとも1つの絶縁材またはモノマー、硬化性オリゴマー、または硬化性ポリマーなど、絶縁材の反応性前駆物質との混合物と定義される。
【0025】
「局所処理剤(topical treatment)」は、本明細書中、典型的には溶剤または分散剤に溶かした、予備成形絶縁材または基材の表面に適用された少なくとも1つの静電防止剤と少なくとも1つのフルオロケミカル撥剤との配合剤として定義される。
【0026】
帯電防止剤
本発明の帯電防止剤として使用するのに適したポリマー塩は、少なくとも1つのカチオン窒素中心に結合した少なくとも1つのポリオキシアルキレン部分を有する少なくとも1つのカチオンを有する。ブレンド適用におけるポリマー塩は、弱配位している少なくとも1つのアニオンを有する。局所処理剤の適用におけるポリマー塩は、少なくとも1つの弱配位フルオロ有機アニオンを有する。
【0027】
ポリオキシアルキレンカチオン
本発明の帯電防止剤は、少なくとも1つのアンモニウム中心に結合した少なくとも1つのポリオキシアルキレン部分を有する少なくとも1つのカチオンからなるポリマー塩を含む。これらのポリオキシアルキレンアンモニウム化合物は、一官能性または多官能性カチオンであってもよい。更に、これらのポリオキシアルキレンアンモニウム化合物は、ポリオキシアルキレン鎖の末端に結合したアンモニウム基を含有する。ポリオキシアルキレン鎖は典型的には、プロピレンオキシド、エチレンオキシドか、または混合エチレン/プロピレンオキシドをベースとしている。ポリオキシアルキレンアンモニウム化合物は、約200〜約10,000の範囲の分子量を有する一アンモニウム、二アンモニウム、および三アンモニウム化合物を含む。
【0028】
特に代表的なポリオキシアルキレンアンモニウム化合物が、以下の一般式(I)〜(VI)によって表される化合物(ポリオキシアルキレン部分の反復単位の数が近似的である)であり、
【化3】

上式中、nが3〜50の整数であり、bが5〜150の整数であり、aおよびcが同一または異なっており、各々が0〜5の整数であり、a+cが2〜5の整数であり、Aが
【化4】

であり、x、yおよびzが、同一または異なっており、かつ1〜30の整数であり、x+y+zの合計が≧5であり、POAがホモポリマーまたは、ランダム、ブロック、または交互コポリマーであり、式((CH2mCH(R3)O)によって表される2〜50の単位を含み、式中、各単位が独立して、m(1〜4の整数である)、およびR3を有する。R3が独立して、水素または低級アルキル基(すなわち、1〜4個の炭素原子を含有する)である。R1が独立して、アルキル、脂環式、アリール、アルカリ環式、アリール脂環式、または任意に1個以上のヘテロ原子(例えば、硫黄、窒素、酸素、塩素、臭素、またはフッ素)を含有する脂環式アリール基である。R2が独立して、水素、アルキル、脂環式、アリール、アルカリ環式、アリール脂環式、または任意に1個以上のヘテロ原子(例えば、硫黄、窒素、酸素、塩素、臭素、またはフッ素)を含有する脂環式アリール基である。そしてdが1〜4の整数である。
【0029】
本発明の帯電防止剤の前駆物質として有用なポリオキシアルキレンアミン化合物の例を以下に示す。ポリオキシアルキレン部分の反復単位の数は近似的である。
【化5】

[上式中、bが〜8.5であり、a+cが〜2.5である]、
【化6】

[上式中、bが〜15.5であり、a+cが〜2.5である]、
【化7】

[上式中、x+y+z〜5−6である]、
【化8】

[上式中、x+y+z〜30である]、
および
【化9】

【0030】
本発明の帯電防止剤としてまたは本発明の帯電防止剤の前駆物質として有用であるポリオキシアルキレンアンモニウム化合物の例を以下に示す。ポリオキシアルキレン部分の反復単位の数は近似的である。
【0031】
[C1225+(CH3)(CH2CH2O)mH(CH2CH2O)nH]Cl-;(m+n=15)
[C65CH2+(CH3)(CH2CH2O)mH(CH2CH2O)nH]Cl-;(m+n=15)、式中、C65CH2=ベンジル
[C1837+(CH3)(CH2CH2O)mH (CH2CH2O)nH][-3SO(CH211CH3];(m+n=15)
[C1837+(CH3)(CH2CH2O)mH(CH2CHCH3O)nH][-3SOCH3];(m+n=15)
[C1225+(CH3)(CH2CH2O)mH(CH2CH2O)nH][-3SC641225];(m+n=5)
[C1225+(CH32(CH2CHCH3O)mH][-3SCH3];(m=15)
[C1225+(CH32(CH2CH2CH2CH2O)mH]Cl-;(m=15)
[C1225+(CH32(CH2CH2O)mH][-3SOCH3];(m=15)
[C817+(CH32(CH2CH2O)mH][-3SO(CH211CH3];(m=8)
[C1225+(CH2CH2O)mH(CH2CH2O)nH(CH2CH2O)oH][-3SOCH3];(m+n+o=15)、および
[N+(CH2CH2O)mH(CH2CH2O)nH(CH2CH2O)oH(CH2CH2O)pH]Cl-;(m+n+o+p=20)
【0032】
本発明の静電防止剤の前駆物質として有用な二官能性または三官能性アミン末端ポリエチレンオキシドには、ユタ州、ソルトレークシティーのハンツマンコーポレーション(Huntsman Corporation(Salt Lake City,UT))から入手できる、ジェフアミン(JEFFAMINETM)ポリアルキレンアミンなどがあるがそれらに制限されない。ジェフアミンポリアルキレンアミンは概して、ポリエーテル主鎖の末端に結合した第一アミノ基を含有すると記載されている。ポリエーテル主鎖は、プロピレンオキシド、エチレンオキシド、または混合プロピレンオキシド/エチレンオキシドのいずれかをベースとしている。
【0033】
本発明の静電防止剤としてまたは本発明の静電防止剤の前駆物質として有用な第四ポリオキシアルキレンアンモニウム塩の例には、C1225+(CH3)[(CH2CH2O)mH][(CH2CH2O)nH]-Cl;(m+n=15)、すなわち、エトクアドTM(ETHOQUADTM)C/25、およびC1837+(CH3)[(CH2CH2O)mH][(CH2CH2O)nH]-Cl(m+n=15)、すなわち、エトクアドTM18/25、(両方とも、イリノイ州、シカゴのアクゾノーベルサーフェスケミストリーLLC(Akzo Nobel Surface Chemistry LLC(Chicago,IL))から入手できる)。
【0034】
ジメチルサルフェートとのその反応によってエトメーン(ETHOMEENTM)C/15(イリノイ州、シカゴのアクゾノーベルサーフェスケミストリーLLCから入手できる)から誘導される、C1225+(CH3)[(CH2CH2O)mH][(CH2CH2O)nH]-OSO3CH3(m+n=5)が、本発明の有用な静電防止剤であり、又、本発明の他の静電防止剤の前駆物質として用いられてもよい。
【0035】
本発明のポリオキシアルキレンアンモニウム化合物を、本技術分野に周知の方法を用いて製造することができる。
【0036】
アニオン
本発明の帯電防止剤は、少なくとも1つのアニオンからなるポリマー塩を含む。
【0037】
局所処理剤組成物または適用については、アニオンが弱配位フルオロ有機アニオンである。
【0038】
ブレンド組成物または適用については、アニオンが弱配位アニオンである。
【0039】
適した弱配位アニオンが、炭化水素スルホン酸(好ましくは、1〜約20個の炭素原子を有する炭化水素スルホン酸、より好ましくは、1〜約8個の炭素原子を有するアルカン、アリール、またはアルカリールスルホン酸、更により好ましくは、メタンまたはp−トルエンスルホン酸、最も好ましくは、p−トルエンスルホン酸)と少なくとも同程度の酸性である共役酸を有する。好ましくは、共役酸は強酸である。より好ましくは、アニオンのニート共役酸のハメットの酸度関数H0は約−7未満である(最も好ましくは、約−10未満)。
【0040】
適した弱配位アニオンの代表例には、BF4-、PF6-、SbF6-、AsF6-、ClO4-、NO3-、Cl-、Br-、F-、HSO4-、H2PO4-の他、アルカン、アリール、およびアルカリールスルホネートなどの有機アニオン、アルカン、アリール、アルカリールサルフェート、フッ素化および非フッ素化テトラアリールボレート、メタロカルボランアニオンを含めてカルボランアニオンおよびハロゲン−、アルキル−、またはハロアルキル置換カルボランアニオン、テフレート(teflates)(例えば、-OTeF5-B(OTeF54、およびPd(OTeF54)、フッ素化アリールスルホネート、ペルフルオロアルカンスルホネート、シアノペルフルオロアルカンスルホニルアミド、ビス(シアノ)ペルフルオロアルカンスルホニルメチド、ビス(ペルフルオロアルカンスルホニル)イミド、シアノ−ビス−(ペルフルオロアルカンスルホニル)メチド、ビス(ペルフルオロアルカンスルホニル)メチド、およびトリス(ペルフルオロアルカンスルホニル)メチドなどのフルオロ有機アニオンなどがある。
【0041】
適した弱配位フルオロ有機アニオンの例には、構造A、B、およびCがあり、
【化10】

上式中、各Rfが独立して、環状または非環状、飽和または不飽和であるフッ素化アルキルまたはアリール基であり、任意に、N、O、およびSなどの連鎖(“鎖状”)または末端ヘテロ原子を含有してもよい(例えば、−SF4または−SF5)。Qが独立してSO2またはCO結合基であり、XがQRf、CN、ハロゲン、H、アルキル、アリール、Q−アルキル、およびQ−アリールからなる群から選択される。任意の2個の連続したRf基が結合して環を形成してもよい。好ましくは、Rfがペルフルオロアルキル基であり、QがSO2であり、各XがQRfである。
【0042】
フルオロ有機アニオンが完全フッ素化されていてもよく、過フッ素化されるか、または(それらの有機部分中で)部分的にフッ素化されていてもよい。好ましいフルオロ有機アニオンには、少なくとも1つの高フッ素化アルカンスルホニル基、すなわち、ペルフルオロアルカンスルホニル基または、すべての非フッ素炭素結合置換基が、スルホニル基に直接に結合している炭素原子以外の炭素原子に結合している(好ましくは、すべての非フッ素炭素結合置換基が、スルホニル基から炭素原子2個よりも離れている)部分的にフッ素化されたアルカンスルホニル基、を含むフルオロ有機アニオンがある。
【0043】
好ましくは、フルオロ有機アニオンが少なくとも約80パーセントフッ素化されており(すなわち、前記アニオンの炭素結合置換基の少なくとも約80パーセントがフッ素原子である)。より好ましくは、前記アニオンが過フッ素化されている(すなわち、完全にフッ素化されており、炭素結合置換基のすべてがフッ素原子である)。好ましい過フッ素化アニオンを含めてアニオンが、1個以上の連鎖(すなわち、鎖状)または末端ヘテロ原子、例えば、窒素、酸素、または硫黄を含有することができる(例えば、−SF5または−SF4−)。
【0044】
ブレンド組成物および適用のための好ましいアニオンには、有機およびフルオロ有機アニオン(より好ましくは、ペルフルオロアルカンスルホネート、2個または3個のスルホネート基を有するフルオロ有機アニオン、ビス(ペルフルオロアルカンスルホニル)イミド、およびトリス(ペルフルオロアルカンスルホニル)メチド、最も好ましくは、ペルフルオロアルカンスルホネートおよびビス(ペルフルオロアルカンスルホニル)イミド)などがある。局所処理剤組成物および適用のためのアニオンは過フッ素化され、そこにおいて、すべてのXがQRfであり、すべてのQがSO2であり、より好ましくはアニオンがペルフルオロアルカンスルホネートまたはビス(ペルフルオロアルカンスルホニル)イミドであり、最も好ましくはアニオンがビス(ペルフルオロアルカンスルホニル)イミドである。
【0045】
静電防止剤は周囲条件下で固体または液体であってもよい。
【0046】
ポリマー溶融添加剤として使用するために、静電防止剤は好ましくは、約240℃以上(より好ましくは、約280℃以上)の温度で安定している。(換言すれば、静電防止剤の熱分解温度(すなわち、試験方法1に記載された熱重量分析(TGA)を用いて5%以上の減量がある温度)は好ましくはこれらの温度より高い。)更に、静電防止剤は好ましくは、溶融加工温度において絶縁材と混和性である。
【0047】
本発明の帯電防止剤を製造するために用いることができる2つの一般的な方法がある。第一に、(好ましくは水、イソプロピルエーテル、メチルt−ブチルエーテル、ジエチルエーテルなどのヒドロキシルまたはエーテル含有溶剤の存在下で)弱配位アニオンの共役酸でポリオキシアルキレンアミンのアミン基をプロトン化し、次いで本技術分野に周知の技術を用いて帯電防止剤を単離する。第二に、ハリド、サルフェート、ニトレート、メシレート、またはアセテートなどの単純なアニオンのポリオキシアルキレンアンモニウム塩が前駆物質として利用できる場合、本技術分野において周知のイオン交換、または複分解反応を用いることができる。例えば、前駆物質のアンモニウム塩を水溶液で弱配位アニオンの酸または塩と配合することができる。配合した時に、所望の生成物(弱配位アニオンのアンモニウム塩)が(液体または固体として)分離するか、または有機溶剤(例えば、メチレンクロリド)中に優先的に抽出され得る。生成物を濾過によってまたは液体/液相分離によって単離することができ、水で洗浄して副生成物の酸または塩(存在する場合)を完全に除去することができ、次に、真空下で十分に乾燥させ、すべての揮発物(存在する場合、水および有機溶剤を含めて)を除去することができる。似た複分解反応を、水中ではなく有機溶剤(例えば、アセトニトリル)中で行うことができ、この場合、塩の副生成物は概して優先的に沈殿し、他方、所望の生成塩が有機溶剤中に溶解したままである(そこから標準的な実験技術を用いて単離することができる)。
【0048】
本発明の帯電防止剤の例には、ポリオキシアルキレン部分の反復単位の数が近似的である、以下の帯電防止剤があるがそれらに制限されない。
【化11】

上式中、m+n=15であり、
【化12】

上式中、m+n=15であり、
【化13】

上式中、a+c〜2.5であり、
【化14】

上式中、a+c〜2.5であり、
【化15】

上式中、a+c〜2.5であり、
【化16】

上式中、x+y+z〜5−6であり、
【化17】

上式中、x+y+z〜5−6であり、
【化18】

上式中、x+y+z〜5−6であり、
【化19】

上式中、x+y+z〜5−6であり、
1225+[CH3][(CH2CH2O)mH][(CH2CH2O)nH]-N(SO2492;(m+n=15)、
1837+[CH3][(CH2CH2O)mH][(CH2CH2O)nH]-N(SO2492;(m+n=15)、
1225+[CH3][(CH2CH2O)mH][(CH2CH2O)nH]-N(SO2492;(m+n=5)、
【化20】

上式中、a+c〜2.5であり、
【化21】

上式中、x+y+z〜5.3であり、
【化22】

上式中、a+c〜2.5であり、
【化23】

上式中、x+y+z〜5−6であり、
[C1225+(CH3)(CH2CH2O)mH(CH2CH2O)nH][-3SCF3];(m+n=15)
[C1225+(CH3)(CH2CH2O)mH(CH2CH2O)nH][-N(SO2CF32];(m+n=15)
[C65CH2+(CH3)(CH2CH2O)mH(CH2CH2O)nH][-3SC49];(m+n=15)、
式中、
65CH2=ベンジル
[C1225+(CH3)(CH2CH2O)mH(CH2CH2O)nH][-3SC49];(m+n=15)
[C1837+(CH3)(CH2CH2O)mH(CH2CH2O)nH][-3SCF3];(m+n=15)
[C1837+(CH3)(CH2CH2O)mH(CH2CH2O)nH[-N(SO2CF32];(m+n=15)
[C1837+(CH3)(CH2CH2O)mH(CH2CH2O)nH][-3SC49];(m+n=15)
[C1837+(CH3)(CH2CH2O)mH(CH2CHCH3O)nH][-3SC49];(m+n=15)
[C1225+(CH3)(CH2CH2O)mH(CH2CH2O)nH][-3SCF3]、(m+n=5)
[C817+(CH32(CH2CH2O)mH][-3SCF3];(m=15)
[C817+(CH32(CH2CH2O)mH][-3SC49];(m=15)
[C817+(CH32(CH2CH2O)mH][-N(SO2CF32];(m=15)
[C1225+(CH32(CH2CH2O)mH][-3SCF3];(m=15)
[C1225+(CH32(CH2CHCH3O)mH][-3SCF3];(m=15)
[C1225+(CH32(CH2CH2CH2CH2O)mH][-3SCF3];(m=15)
[C1837+(CH32(CH2CH2O)mH][-N(SO2CF32];(m=15)
[C817+(CH32(CH2CH2O)mH][-3SCF3];(m=8)
[C1837+(CH32(CH2CH2O)mH][-N(SO2CF32];(m=8)
[C1225+(CH2CH2O)mH(CH2CH2O)nH(CH2CH2O)oH][-3SCF3];(m+n+o=15)、
[C1225+(CH2CH2O)mH(CH2CH2O)nH(CH2CH2O)oH][-N(SO2CF32];(m+n+o=15)
[C1225+(CH2CH2O)mH(CH2CH2O)nH(CH2CH2O)oH][-3SC49];(m+n+o=15)
[N+(CH2CH2O)mH(CH2CH2O)nH)(CH2CH2O)oH(CH2CH2O)pH][-3SCF3];(m+n+o+p=20)
[N+(CH2CH2O)mH(CH2CH2O)nH(CH2CH2O)oH(CH2CH2O)pH][-N(SO2CF32];(m+n+o+p=20)
[C1225+(CH3)(CH2CH2O)mH(CH2CH2O)nH]2-3SCF2CF2CF2SO3−];(m+n=15)
[C1225+(CH3)(CH2CH2O)mH(CH2CH2O)nH]2-3S−CF2CF2−N(CF2CF22N−CF2CF2SO3-];(m+n=15)
[C1225+(CH3)(CH2CH2O)mH(CH2CH2O)nH][-N(SO2CF3)CN];(m+n=15)
[C1225+(CH3)(CH2CH2O)mH(CH2CH2O)nH][-C(SO2CF33];(m+n=15)
[C1225+(CH3)(CH2CH2O)mH(CH2CH2O)nH][-C(SO2CF32CN];(m+n=15)
[C1225+(CH3)(CH2CH2O)mH(CH2CH2O)nH][-C(SO2CF32H];(m+n=15)
[C1225+(CH3)(CH2CH2O)mH(CH2CH2O)nH][-C(SO2CF3)(CN)2];(m+n=15)
[CH3(OCH2CH219(OCH2CHCH32NH3+][-N(SO2CF32
[C1225+(CH3)(CH2CH2O)mH(CH2CH2O)nH][-3SC64CF3];(m+n=15)
[C1225+(CH3)(CH2CH2O)mH(CH2CH2O)nH][-3SC65];(m+n=15)
[C1225+(CH3)(CH2CH2O)mH(CH2CH2O)nH]2-3SC64SO3-]、(m+n=15)
【0049】
ポリマー溶融添加剤の適用のための好ましい帯電防止剤は第四アンモニウム塩であり、
1225+(CH3)[(CH2CH2O)mH][(CH2CH2O)nH];(m+n=15)、
1837+(CH3)[(CH2CH2O)mH][(CH2CH2O)nH];(m+n=15)、
1225+(CH3)[(CH2CH2O)mH][(CH2CH2O)nH];(m+n=5)、および
1225+(CH32(CH2CH2O)mH];m=15
からなる群から選択されたカチオンを有すると共に、有機またはフルオロ有機アニオン(好ましくは、アルカンスルホネート、アリールスルホネート、アルカリールスルホネート、ペルフルオロアルカンスルホネート、ビス(ペルフルオロアルカンスルホニル)イミド、およびトリス(ペルフルオロアルカンスルホニル)メチド、より好ましくは、アルカンスルホネート、ペルフルオロアルカンスルホネート、およびビス(ペルフルオロアルカンスルホニル)イミド)、最も好ましくは、ペルフルオロアルカンスルホネートおよびビス(ペルフルオロアルカンスルホニル)イミドからなる群から選択されたアニオンであるが、イミドが特に好ましい)を有する帯電防止剤がある。
【0050】
フルオロケミカル撥剤
本発明の組成物中で使用するのに適したフルオロケミカル撥性付与添加剤または撥剤は、少なくとも1つのフルオロケミカル基、好ましくは、少なくとも1つのフルオロ脂肪族またはフルオロ脂環式基を含むフルオロケミカル撥性付与添加剤または撥剤である。これらのフルオロケミカルには、撥水および撥油性を基材に付与するための本技術分野に周知のフルオロケミカル基を含有するポリマーおよびオリゴマー化合物の何れをも挙げられる。これらのポリマーおよびオリゴマーフルオロケミカルは典型的には、3〜約20個の炭素原子、より好ましくは約4〜約12個の炭素原子を有する過フッ素化炭素鎖を含有する1つ以上のフルオロケミカル基を含む。これらのフルオロケミカル基は、直鎖、枝分れ鎖、または環状フッ素化アルキレン基またはそれらの何れかの組合せを含有することができる。フルオロケミカル基は任意に、酸素、二価または六価の硫黄、または窒素などの連鎖(すなわち、鎖状)ヘテロ原子を含有することができる。完全にフッ素化された基が好ましく、水素または塩素原子もまた置換基として存在することができるが、ただし、どちらかの1個以下の原子が2個の炭素原子ごとに存在している。任意のフルオロケミカル基が少なくとも約40重量%のフッ素、より好ましくは少なくとも約50重量%のフッ素を含有することが更に好ましい。前記基の末端部分は概して完全にフッ素化され、好ましくは少なくとも7個のフッ素原子を含有し、例えば、CF3CF2CF2−、(CF32CF−、SF5CF2−である。過フッ素化アルキル基(すなわち、式Cn2n+1−の基)が最も好ましいフルオロケミカル基である。
【0051】
適したフルオロケミカルの代表例には、フルオロケミカルウレタン、ユリアおよび置換ユリア、エステル、エーテル、アルコール、エポキシド、アロファネート、アミド、アミン(およびそれらの塩)、酸(およびそれらの塩)、カルボジイミド、グアニジン、オキサゾリジノン、イソシアヌレート、ピペラジン、アミノアルコール、スルホン、イミド、ビウレット、アクリレートとメタクリレートホモポリマーとコポリマー、シロキサン、アルコキシシラン、クロロシラン、およびそれらの混合物などがある。
【0052】
本発明に有用な代表的なフルオロケミカル基含有ポリマーには、フルオロケミカルアクリレートおよびメタクリレートホモポリマーまたは、メチルメタクリレート、ブチルアクリレート、オクタデシルメタクリレート、オキシアルキレンおよびポリオキシアルキレンポリオールオリゴマーのアクリレートおよびメタクリレートエステル(例えば、オキシエチレングリコールジメタクリレート、ポリオキシエチレングリコールジメタクリレート、メトキシアクリレート、およびポリオキシエチレンアクリレート)、グリシジルメタクリレート、エチレン、ブタジエン、スチレン、イソプレン、クロロプレン、ビニルアセテート、ビニルクロリド、ビニリデンクロリド、ビニリデンフルオリド、アクリロニトリル、ビニルクロロアセテート、ビニルピリジン、ビニルアルキルエーテル、ビニルアルキルケトン、アクリル酸、メタクリル酸、2−ヒドロキシエチルアクリレート、N−メチロールアクリルアミド、2−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)エチルメタクリレート、および2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)などのモノマーと共重合したフルオロケミカルアクリレートモノマーを含有するコポリマーなどがある。用いた様々なコモノマーの相対的な量は概して、処理される基材、望ましい性質、および基材への適用の方式に依存して、実験的に選択されてもよい。有用なフルオロケミカルにはまた、上に記載した様々なフルオロケミカルのブレンドがある。
【0053】
シロキサン、(メタ)アクリレートおよび置換アクリレートポリマーおよびコポリマー、N−メチロールアクリルアミド含有アクリレートポリマー、ウレタン、ブロックトイソシアネート含有ポリマーおよびオリゴマー、ユリアまたはメラミンとホルムアルデヒトとの縮合物または予備縮合物、グリオキサール樹脂、脂肪酸とメラミンまたはユリア誘導体との縮合物、脂肪酸とポリアミドおよびそれらのエピクロロヒドリン付加物との縮合物、ワックス、ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、アルキルケテン二量体、エステル、およびアミドなど、フッ素を含まないエクステンダ化合物とフルオロケミカルとのブレンドもまた、本発明において有用である。これらのフッ素を含まないエクステンダ化合物のブレンドもまた、用いることができる。
【0054】
上に記載したようなフッ素を含まないエクステンダ分子を含有するブレンドなど、多くのフルオロケミカルは、既製の調合物として市販されている。これらの製品は、例えば、スコッチガード(SCOTCHGUARDTM)カーペットプロテクター(ミネソタ州、セントポールのミネソタマイニングアンドマニュファクチュアリングカンパニー(Minnesota Mining and Manufacturing Company(Saint Paul,Minnesota))によって製造された)としておよびゾニル(ZONYLTM)カーペット処理剤(デラウェア州、ウィルミントンのイー・アイ・デュ・ポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(E.I.du Pont de Nemours and Company(Wilmington,Delaware))によって製造された)として販売されている。
【0055】
いくつかの有用なフルオロケミカルが、欧州特許第0613 462号明細書(ミネソタマイニングアンドマニュファクチュアリングカンパニー)および米国特許第3,728,151号明細書(シャーマン(Sherman)ら)、同3,816,229号明細書(ビアブラウア(Bierbrauer))、同3,896,035号明細書(シュルツ(Schultz)ら)、同3,901,727号明細書(ラウダス(Loudas))、同3,916,053号明細書(シャーマンら)、同4,043,923号明細書(ラウダス)、同4,043,964号明細書(シャーマンら)、同4,264,484号明細書(パーテル(Patel))、同4,624,889号明細書(ブリース(Bries))、同5,274,159号明細書(ペルライト(Pellerite)ら)、同5,380,778号明細書(バッカニン(Buckanin))、および同5,451,622号明細書(ボードマン(Boardman)ら)(それらの内容を本願明細書に引用したものとする)に記載されている。
【0056】
ポリマー溶融添加剤として使用するのに適したフルオロケミカル撥剤は好ましくは、240℃以上(より好ましくは、280℃以上)の温度において安定性があり、好ましくは、溶融加工温度において絶縁材と混和性であり、好ましくは、絶縁材の表面に移行することができる。従って、局所処理剤においておよびポリマー溶融(または他のバルクポリマー)添加剤として共に有用なフルオロケミカル撥剤の好ましいクラスには、通常固体の、水不溶性のフルオロ脂肪族基含有2−オキサゾリジノン化合物を含むフルオロケミカルオキサゾリジノン組成物またはフルオロケミカルオキサゾリジノンがあり、前記化合物が、1つ以上の2−オキサゾリジノン部分
【化24】

を含み、
その少なくとも1つが、有機結合基によってその5位置の炭素原子に結合した、一価のフルオロ脂肪族基Rfを有する。
【0057】
これらのフルオロ脂肪族基含有オキサゾリジノン化合物の好ましいサブクラスは以下:
【化25】

に示され、上式中、各R3が独立して、水素または有機基であり、有機基が−Q−Rfを含有することができ、Qが結合基であり、Rfが、酸素などの1個以上の連鎖(鎖状)ヘテロ原子を任意に含有することができるフルオロ脂肪族基であり、各R4が独立して有機基であり、有機基が−Q−Rfを含有することができ、QおよびRfが上に定義した通りであるが、ただし、R3およびR4の1つに少なくとも1個のRf基があり、各Aが独立して有機基であり、aがゼロまたは1であり、bが0〜約6の数であり、cが0、1、または2であり、a+b+cの合計が少なくとも1である。好ましくは、R3が、−QRfを含有する有機基であり、Rfが約3〜約20個の炭素原子(好ましくは、約4〜約12個の炭素原子)を有するペルフルオロアルキル基であり、Qが、ヘテロ原子含有基、有機基、またはそれらの組合せを含み(好ましくは、Qが、−SO2N(R’)(CH2k−、−(CH2k−、−CON(R’)(CH2k−、または−(CH2kSO2N(R’)(CH2k−である)、R’が水素、フェニル、または短鎖(約6個までの炭素原子)アルキル基(好ましくは、メチルまたはエチル)であり、各kが独立して1〜約20の整数である)、aが1であり、bが0であり、cが0であり、Aが、約12〜約22個の炭素原子を有するアルキル基である。この好ましいサブクラスは単一の化合物または化合物の混合物を表し、例えば、それらは、それらの製造に用いた反応から生成物として得られる。
【0058】
これらのフルオロケミカルオキサゾリジノン組成物は、周知の有機反応を用いて、例えば、エポキシドまたはハロヒドリン(例えば、クロロヒドリンまたはブロモヒドリン)を有機イソシアネートと反応させることによって製造されてもよく、その各反応においてその反応体の少なくとも1つがRf基を含有する。ウレタン結合形成条件下で、例えば、約1〜24時間、20℃〜100℃で、ハロヒドリンをイソシアネートと反応させてウレタン中間体を形成し、その後に、約1〜24時間、20℃〜100℃で基剤および反応物を添加してオキサゾリジノン組成物を形成することにより、反応を段階的に実施する。または、エポキシドを、ジエチル亜鉛などの触媒の存在下でイソシアネートと反応させ、オキサゾリジノンを直接に形成することができる。
【0059】
適したフルオロケミカルオキサゾリジノンおよびそれらの製造方法は、米国特許第5,025,052号明細書および同5,099,026号明細書(クレータ(Crater)ら)(その内容を本願明細書に引用したものとする)に更に記載される。
【0060】
局所処理剤中でおよびポリマー溶融(または他の溶融ブレンド)添加剤として共に有用な他のフルオロケミカル撥剤には、米国特許第3,899,563号明細書(オキセンライダー(Oxenrider)ら)、同4,219,625号明細書(メアズ(Mares)ら)、同5,560,992号明細書(サーゲント(Sargent)ら)、および同5,681,963号明細書(リス(Liss))、国際公開第97/22576号パンフレット、国際公開第97/22659号パンフレット、および国際公開第97/22660号パンフレット(イー・アイ・デュ・ポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー);日本特許公開第3−041160号明細書(花王コーポレーション)および9−323956号明細書(ワコージュンヤクコーギョウカンパニー(Wako Junyaku Kogyo Co.))、および国際公開第99/05345号パンフレット(ミネソタマイニングアンドマニュファクチュアリングカンパニー)(それらの内容を本願明細書に引用したものとする)に記載されたフルオロケミカル撥剤がある。
【0061】
これらのうち、特に好ましいのは、長鎖(好ましくは、少なくとも約30個の炭素原子を有する、より好ましくは、以下に記載したように、二量体および三量体)を有するフルオロケミカル基含有誘導体は、酸、アルコール、およびアミンである。これらの誘導体の好ましいクラスには、以下の式:
{(Rfn−Q−O−C(O)}p−A
{(Rfn−Q−C(O)−O}p−A’
{(Rfn−Q−N(R)−C(O)}p−A
{(Rfn−Q−C(O)−N(R)}p−A’
によって表される化合物または化合物の混合物があり、上式中、Rfが、炭素を介して結合したフッ素化アルキル基(酸素などの1個以上の連鎖(鎖状)ヘテロ原子を任意に含有することができる)であり、nが1または2であり、Qが二価または三価の結合基または共有結合であり、pが2以上、AまたはA’の原子価まで、であり、Rが水素原子であるか、または置換もしくは非置換アルキル基であり、Aが二量体または三量体酸の残基であり、A’が二量体ジオール、二量体ジアミン、三量体トリオール、または三量体トリアミンの残基である。好ましくは、Rfが約3〜約20個の炭素原子(好ましくは、約4〜約12個の炭素原子)を有するペルフルオロアルキル基であり、Rが1〜約6個の炭素原子を有するアルキル基であり、Qが、−SO2N(R’)(CH2k−、−(CH2k−、−CON(R’)(CH2k−、または−(CH2kSO2N(R’)(CH2k−であり、R’が水素、フェニル、または短鎖(約6個までの炭素原子)アルキル基(好ましくは、メチルまたはエチル)であり、各kが独立して1〜約20の整数であり、Aが二量体酸の残基であり、A’が二量体ジオールまたは二量体ジアミンの残基である。エステルおよび「逆」エステルがアミドおよび「逆」アミドより好ましい。
【0062】
フルオロケミカルアルコールを、標準酸触媒の存在下で二量体酸または三量体酸の何れかと共に加熱することによって、または最初に二量体/三量体酸の酸塩化物をつくり、次いで、やや高温(例えば、50−60℃)において酸掃去剤の存在下で酸塩化物をフルオロケミカルアルコールと反応させることによって、これらのフルオロケミカル基含有二量体および三量体酸エステルを製造することができる。エステルを製造するために記載した同じ合成方法を用いて、フルオロケミカルカルボン酸を二量体ジオールと反応させることによって、フルオロケミカル基含有「逆」エステルを製造することができる。高温で(少なくとも約220℃)成分同士をそのまま加熱することによってフルオロケミカルアミンを二量体酸または三量体酸と反応させることによって、または最初に二量体/三量体酸の酸塩化物をつくり、次いで、やや高温において酸塩化物をフルオロケミカルアミンと反応させることによって、フルオロケミカル基含有アミドを製造することができる。エステルを製造するために記載した同じ合成方法を用いて、フルオロケミカルカルボン酸を二量体アミンと反応させることによって、フルオロケミカル基含有「逆」エステルを製造することができる。
【0063】
用語「二量体酸(dimer acid)」および「三量体酸(trimer acid)」は、相対的に高分子量のオリゴマー化不飽和脂肪酸生成物を指す。前記生成物は、いろいろな大きい、または相対的に高分子量の置換シクロヘキセンカルボン酸、主に36の炭素の二塩基酸(二量体酸)および54の炭素の三塩基酸(三量体酸)の様々な比を含む混合物であるが、各々の特性決定をするのに十分な単一の構造を有さない。成分構造は非環式、環式(一環式、または二環式)、または芳香族であってもよい。
【0064】
酸性粘土などの触媒の存在下で、オレイン酸、リノール酸、大豆、またはトール油酸などの不飽和一官能性カルボン酸を、それらのオレフィン不飽和基を介して縮合させることによって(上に記載されたフルオロケミカル撥剤の製造に使用するための)二量体および三量体酸を製造することができる。二量体/三量体酸は、ヘンケルコーポレーション/エメリーグループ(Henkel Corporation/Emery Group)(エムポール(EMPOLTM)1008、1061、1040および1043)およびユニケマノースアメリカ(Unichema North America)(プリポール(PRIPOLTM)1004および1009)など、いろいろな供給元から市販されている。二量体ジオールおよびジアミンを、本技術分野に周知の方法によって相応する二量体酸から製造することができる。二量体ジオールは、エムポール1070および1075ジオールとしてヘンケルコーポレーション/エメリーグループから市販されている。二量体アミンは、たとえば、ケマミン(KEMAMINETM)DP−3695アミンとしてウィトココーポレーション(Witco Corp.)から市販されている。
【0065】
絶縁材
本発明の組成物は、これらの組成物が絶縁材と相溶性である限り、様々な絶縁材と共に用いることができる。従って、本発明の組成物は好ましくは、静電防止剤および撥剤として十分に機能し、絶縁材の他の性質に悪影響を及ぼさない。
【0066】
写真またはX線フィルム、X線スクリーン、布、繊維、電子部品、電子パッケージング、コンパクトディスク、成形またはブローン物体などのいろいろな絶縁材に水性または有機溶剤(またはバインダ)から本発明の組成物を局所的に適用することができる。溶剤の選択は絶縁材によって変化する。
【0067】
局所処理のために適している絶縁材には、相対的に低い表面およびバルク導電率を有すると共に静電荷を発生する傾向がある材料がある。これらの材料には、事実上、有機または無機の何れであってもよい合成および天然ポリマーの両方(またはそれらの反応性前駆物質、一または多官能性モノマーまたはオリゴマー)並びに、セラミックス、ガラス、およびセラミック/ポリマー複合材、セラマー、またはそれらの反応性前駆物質がある。
【0068】
本発明の帯電防止剤およびフルオロケミカル撥剤とブレンドするのに適している絶縁材には、熱可塑性樹脂、熱硬化性物質、セラマー、または反応性前駆物質がある。そのブレンドされた組成物を、フィルム、布、繊維、電子部品、電子パッケージング、コンパクトディスク、成形またはブローン物体中で用いてもよい。
【0069】
適した合成ポリマー(熱可塑性樹脂または熱硬化性物質の何れであってもよい)には、汎用プラスチック、例えば、ポリ(塩化ビニル)、ポリエチレン(高密度、低密度、非常に低密度)、ポリプロピレン、ポリブチレン、およびポリスチレン、エンジニアリングプラスチック、例えば、ポリエステル(例えば、ポリ(エチレンテレフタレート)およびポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリアミド(脂肪族、非晶質、芳香族)、ポリカーボネート(例えば、ビスフェノールAから誘導されるような芳香族ポリカーボネート)、ポリオキシメチレン、ポリアクリレートおよびポリメタクリレート(例えば、ポリ(メチルメタクリレート))、特定の改質ポリスチレン(例えば、スチレン−アクリロニトリル(SAN)およびアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)コポリマー)、高衝撃ポリスチレン(SB)、フッ素樹脂、およびポリ(フェニレンオキシド)−ポリスチレンおよびポリカーボネート−ABSなどのブレンド、高性能プラスチック、例えば、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリスルホン、ポリイミド、およびポリエーテルイミド、熱硬化性物質、例えば、アルキド樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂(例えば、メラミンおよびユリア樹脂)、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル(いわゆるビニルエステルなど)、ポリウレタン、アリリックス(allylics)(例えば、アリルジグリコールカーボネートから誘導されたポリマー)、フルオロエラストマー、およびポリアクリレート、およびそれらのブレンド、などがある。適した天然ポリマーには、シルク、ウール、および革などのタンパク質性材料、およびセルロース系材料などがある。
【0070】
上に記載したような熱可塑性および熱硬化性ポリマーが好ましい絶縁材であり、これらのポリマーを静電防止剤/撥剤の配合剤で局所的に処理するか、またはそれを(バルクで)配合してブレンドを形成することができる。その組成物を熱可塑性ポリマーに溶融加工することが、危険な溶剤およびVOCの使用を除くので好ましい。好ましくは、熱可塑性ポリマーは高温において、例えば、約150℃より高い温度で(より好ましくは約240℃より高い温度、更により好ましくは、約280℃より高い温度)で溶融加工可能である。好ましい熱可塑性ポリマーには、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、エチレンと1つ以上のアルファ−オレフィン(例えば、ポリ(エチレン−ブテン)とポリ(エチレン−オクテン))のコポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリエーテルケトン、ポリスルホン、ポリスチレン、ABSコポリマー、ポリアミド、フルオロエラストマー、およびそれらのブレンドがある。より好ましいのは、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリエステル、ポリ(エチレン−オクテン)、ポリ(エチレン−ブテン)、ポリウレタン、ポリカーボネート、およびそれらのブレンドであるが、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ(エチレン−オクテン)、ポリウレタン、およびそれらのブレンドが最も好ましい。
【0071】
又、本発明の組成物をモノマー、硬化性オリゴマー、またはポリマーと配合し、その後に、重合または硬化させ、前記組成物を含有する架橋熱硬化性ポリマーを形成することができる。好ましい熱硬化性ポリマーには、ポリウレタン、エポキシ樹脂、および不飽和ポリエステルなどがある。
【0072】
浸漬コーティング、噴霧コーティング、かき混ぜコーティング、スピンコーティング、押出し、ホッパコーティング、カーテンコーティング、グラビアコーティング、エアナイフコーティングなどがあるがそれらに制限されない本技術分野に周知の技術を用いて、本発明の組成物を更に絶縁材に適用することができる。コーティング厚さは、絶縁材の関数として変化する。
【0073】
組成物の製造および使用
好ましくは、(a)少なくとも1つの静電防止剤、少なくとも1つのフルオロケミカル撥剤、および少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを(任意に、他の添加剤とともに)配合し、次いで得られた配合剤を溶融加工するか、または(b)少なくとも1つの静電防止剤、少なくとも1つのフルオロケミカル撥剤、および少なくとも1つの熱硬化性ポリマーまたはセラマーまたはそれらの反応性前駆物質を(任意に、他の添加剤とともに)配合し、次いで得られた配合剤を、任意に加熱または化学線の適用によって硬化させることによって、本発明の組成物を製造することができる。前記組成物を製造するための別の方法は、例えば、(c)少なくとも1つの静電防止剤および少なくとも1つのフルオロケミカル撥剤を含む局所処理剤組成物を少なくとも1つの絶縁材の少なくとも1つの表面の少なくとも一部分に適用する工程と、(d)少なくとも1つの静電防止剤、少なくとも1つのフルオロケミカル撥剤、および少なくとも1つの絶縁材を少なくとも1つの溶剤中に溶解し、次いで得られた溶液または局所処理剤をキャスチングまたはコーティングし、任意に熱を適用して、溶剤を蒸発させる工程と、(e)少なくとも1つの静電防止剤、少なくとも1つのフルオロケミカル撥剤、および少なくとも1つのモノマーまたは硬化性オリゴマーを(任意に、他の添加剤とともに)配合し、次いでモノマーまたは硬化性オリゴマーの重合を起こさせ、任意に熱または化学線を適用する工程と、を有する。必要ならば、静電防止剤および撥剤を、別々に適用することができ、例えば、一方を、溶融加工前に添加することができ、次いで、他方を、得られた溶融加工配合剤に局所的に適用することができる。別個の局所処理剤もまた、可能である。
【0074】
溶融加工によって溶融ブレンドを形成するために、静電防止剤およびフルオロケミカル撥剤を、例えば、ペレット化または粉末ポリマーと十分に混合し、次に周知の方法、例えば、成形、メルトブローイング、メルトスピニング、または溶融押出によって溶融加工することができる。静電防止剤および撥剤添加剤をポリマーと直接に混合することができ、またはそれらをポリマー中の添加剤の「マスターバッチ」(濃縮物)の形でポリマーと混合することができる。必要ならば、添加剤の有機溶液を粉末またはペレット化ポリマーと混合し、その後に、乾燥させて(溶剤を除去し)、次いで溶融加工することができる。または、添加剤を溶融ポリマーストリームに注入し、例えば、繊維またはフィルムに押出すかまたは物品に成形する直前にブレンドを形成することができる。
【0075】
溶融加工した後に、アニール工程を実施し、帯電防止および撥性の特性の成果を増強することができる。このアニール工程の他にまたは代わりに、(例えば、フィルムまたは繊維の形の)溶融加工した配合剤はまた、その一方または両方をパターン化することができる、2つの加熱ロール間でエンボス加工することができる。アニール工程は典型的には、ポリマーの溶融温度より低い温度(例えば、ポリアミドの場合、約30秒〜約5分間、約100〜220℃)で行われる。ある場合には、湿分の存在は、帯電防止の特性を得るために必要ではないが、湿分の存在が静電防止剤の有効性を改善することができる。
【0076】
静電防止剤およびフルオロケミカル撥剤を、望ましい帯電防止および撥性の性質を特定の適用のために達成するのに十分な量で熱可塑性または熱硬化性ポリマーに(または、代わりに、他の絶縁材に)添加することができる。その量を実験的に確認することができ、必要に応じてまたは所望の通りに調節し、ポリマー(または他の絶縁材)の性質を損なわずに帯電防止および撥性の性質を達成することができる。概して、静電防止剤およびフルオロケミカル撥剤をそれぞれ、ポリマー(または他の絶縁材)の重量に対して約0.1〜約10重量パーセント(好ましくは、約0.5〜約2重量パーセント、好ましくは約0.75〜約1.5重量パーセント)の範囲の量で添加することができる。
【0077】
絶縁材の局所処理において、静電防止剤およびフルオロケミカル撥剤の配合剤を単独で、または水性懸濁液、エマルジョン、または溶液の形で、または有機溶剤(または有機溶剤/水)溶液、懸濁液、またはエマルジョンとして使用することができる。有用な有機溶剤には、塩素化炭化水素、アルコール(例えば、イソプロピルアルコール)、エステル、ケトン(例えば、メチルイソブチルケトン)、およびそれらの混合物がある。概して、溶剤溶液は、(成分の全重量に対して)約0.1〜約50重量パーセント、または更に約90重量パーセントまでの不揮発性の固形分を含有することができる。水性懸濁液、エマルジョン、または溶液が概して好ましく、概して(成分の全重量に対して)約0.1〜約50パーセント、好ましくは1〜約10重量パーセントの不揮発性の固体含量を含有することができる。しかしながら、代わりに、使用温度または処理温度において液体である少なくとも1つの静電防止剤を含む局所処理剤組成物を(少なくとも1つの絶縁材の少なくとも1つの表面の少なくとも一部分に)適用することによって、局所処理を実施することができる。この局所処理剤方法は、付加的な溶剤を用いずに、ニート液体静電防止剤の使用を必要とすることがあり、従って、静電防止剤/撥剤の配合剤の有機溶剤溶液の使用よりも環境上の見地から好ましい。
【0078】
静電防止剤/撥剤の配合剤を含む局所処理剤組成物を、例えば、噴霧、パッディング、浸漬、ロールコーティング、ブラッシング、または排出(exhaustion)(任意にその後に、処理された材料を乾燥させて何れの残存している水または溶剤をも除去する)などの標準方法によって絶縁材に適用することができる。その材料は、成形またはブローン物品、シート、繊維(そのままで、または集合した形、例えば、ヤーン、トー、ウェブ、またはロービング、もしくはカーペットなどの加工織物(fabricated textiles)の形で)、織および不織布、フィルムなどの形であってもよい。必要ならば、静電防止剤/撥剤の配合剤を、従来の繊維処理剤、例えば、スピン仕上剤または繊維潤滑剤と共に同時に適用することができる。
【0079】
局所処理剤組成物を、特定の適用のために帯電防止および撥性の性質を達成するのに十分な量で適用することができる。その量を実験的に確認することができ、必要に応じてまたは所望の通りに調節し、ポリマー(または他の絶縁材)の性質を損なわずに帯電防止および撥性の性質を達成することができる。
【0080】
多種多様な構造の何れをも、本発明の組成物から製造することができ、これらの構造は、帯電防止および撥性の特性の或るレベルが必要とされる何れの適用においても有用である。例えば、本発明の組成物を使用して、フィルムおよび成形またはブローン物品、並びに織および不織布を作製するために用いることができる繊維(例えば、ミクロ繊維を含めて、メルトブローンまたは溶融紡糸繊維)を作製することができる。これらのフィルム、成形またはブローン物品、繊維、および布は、いろいろな環境状態下で帯電防止および撥水および撥油性(および防汚性)を示し、いろいろな適用において用いることができる。
【0081】
例えば、本発明の組成物を含む成形物品を標準方法(例えば、高温射出成形によって)作製することができ、例えば、自動車用のヘッドライトカバー、レンズ(眼鏡レンズなど)、電子デバイス(例えば、コンピュータ)のケーシングまたは回路ボード、ディスプレイデバイス用のスクリーン、ウインドー(例えば、航空機のウインドー)などに特に有用である。本発明の組成物を含むフィルムは、本技術分野において一般に使用されるフィルム作製方法の何れによっても作製することができる。これらのフィルムは、非孔質または多孔質であってもよく(後者は機械的に穿孔されたフィルムを含める)、多孔性の存在および度合は、望ましい性能特性によって選択される。前記フィルムは、例えば、写真フィルム、オーバーヘッドプロジェクタと一緒に使用する透明フィルム、テープ裏材、コーティング用の基材として使用されてもよい。
【0082】
本発明の組成物を含む繊維を使用して、例えば、医用布、医用および工業衣類、衣類の作製に使用するための布、ラッグまたはカーペットなどの家具類、化学プロセスフィルターまたは呼吸マスクなどのフィルター媒体を作製するのに使用することができる織布または不織布を作製することができる。不織ウェブまたは布を、メルトブローンまたはスパンボンドウェブのどちらかの製造に用いられる方法によって作製することができる。例えば、ウェンテ(Wente)著、「超微細熱可塑性繊維(“Superfine Thermoplastic Fibers”)」、Indus.Eng’g Chem.48,1342(1956年)、またはウェンテ著、「超微細有機繊維の製造(“Manufacture of Superfine Organic Fibers,”)」、Naval Research Laboratories Report No.4364(1954年)に記載された方法に似た方法を使用することができる。不織布から作製された多層構造は、例えば、医用布として、広く工業および商用に有用である。これらの多層構造の成分層の組成を、所望の最終用途の特性に従って変えることができ、前記構造は、米国特許第5,145,727号明細書(ポッツ(Potts)ら)および同5,149,576号明細書(ポッツら)に記載されたような多くの有用な組合せにおいてメルトブローンおよびスパンボンドウェブの2つ以上の層を含むことができる。多層構造において、静電防止剤およびフルオロケミカル撥剤を1つ以上の層に配合して用いることができ、または各々を1つ以上の層において独立して分離することができる。例えば、スパンボンド/メルトブローン/スパンボンド(「SMS」)の3層構造において、静電防止剤を1つまたは両方の層のスパンボンド層において用いることができ、フルオロケミカル撥剤をメルトブローン層において使用し、帯電防止および撥水性の特性を全構造に付与することができる。
【0083】
本発明の組成物において用いた静電防止剤およびフルオロケミカル撥剤はまた、コーティング(例えば、ポリマーまたはセラマーコーティング)に対する添加剤として有用である場合がある。これらのコーティングは、帯電防止、撥水および撥油性、および耐引っ掻き性(並びに防汚性)である場合があり、写真産業においてまたは光学または磁気記録媒体の保護コーティングとして用いられてもよい。
【0084】
必要ならば、本発明の組成物は更に、本技術分野において一般に用いられる1つ以上の従来の添加剤、染料、顔料、酸化防止剤、紫外線安定剤、難燃剤、界面活性剤、可塑剤、粘着付与剤、充填剤、およびそれらの混合物を含有することができる。特に、性能増強剤(例えば、ポリブチレンなどのポリマー)を利用して、例えば、溶融添加剤ポリオレフィンの適用において帯電防止および/または撥性特性を改善することができる。
【実施例】
【0085】
本発明は、以下の非制限的な実施例および試験方法に対して更に記載される。特に指示しない限り、すべての部、パーセンテージ、および比は重量に基づいている。
【0086】
【表1】

【表2】

【0087】
試験方法
試験方法I−熱重量分析(TGA)
各塩の熱分解を、コネチカット州、ノーウォーク(Norwalk,CT)のパーキンエルマー(PerkinElmer)インストルメンツによって製造された、パーキンエルマー熱天秤分析器TGA 7を用い、毎分10℃の温度傾斜を用いて不活性窒素雰囲気下で熱重量分析(TGA)によって確認した。
【0088】
試験方法II−静電荷散逸試験
不織布、フィルム、および成形シートの静電荷散逸特性をこの方法を用いて確認した。試験材料を9cm×12cmの試料に切り分け、少なくとも12時間、約10パーセント、25パーセント、および50パーセントの相対湿度(RH)で状態調節した。材料を、22〜25℃の範囲の温度で試験した。静電荷散逸時間を、ETSモデル406C帯電減衰試験装置(ペンシルベニア州、グレンサイドのエレクトロテックシステムズ社(Electro−Tech Systems,Inc.(Glenside,PA))製)を用いて連邦試験方法標準10113、方法4046(Federal Test Method Standard 10113,Method 4046)、「材料の帯電防止性質」によって測定した。この装置は、高電圧(5000ボルト)を用いることによって平らな試験材料の表面に初期静電荷(平均誘導静電荷)を誘導し、フィールドメーターが5000ボルト(または誘導静電荷と同量)から初期誘導電荷の10パーセントまで表面電圧の減衰時間の観察を可能にする。これは、静電荷散逸時間である。静電荷散逸時間が短くなると、試験材料の帯電防止性質がより良くなる。この発明において静電荷散逸時間の全ての記録した値が、少なくとも3つの別の測定値についての平均(平均帯電減衰率)である。>60秒として記録した値は、試験した試料が表面伝導によって除去できない初期静電荷を有し、帯電防止性ではないことを示す。試験された試料が約3000ボルト以上の電荷を受容しなかったとき、それは、十分に帯電して帯電防止性であると考えられなかった。相対湿度を減少させるために試料を試験した。平均帯電減衰率の値が>60の記録値を有した場合、より低い相対湿度に状態調節した試料の試験を中止した。
【0089】
試験方法III−撥水性試験
3M製の、床仕上げ材のための3M撥水性試験V(1994年2月)を用いて不織ウェブ試料を撥水性について測定した。この試験において、脱イオン水とイソプロピルアルコールとのブレンド(IPA)によって試料の浸透を試す。以下に示すように、各ブレンドに等級番号を与える。
【0090】
【表3】

【0091】
撥水性試験を実施する時に、不織ウェブまたはフィルム試料を平らな、水平な表面の上に置く。水、IPA、または水/IPA混合物の5つの小滴を試料上に少なくとも2インチ離した位置にそっと置く。45°の角度で10秒間、観察した後、5滴のうち4滴が球体または半球として目に見え、不織ウェブまたはフィルム試料が試験に合格とみなされる。記録した撥水性の等級は、不織試料が、記載した試験に合格する最も大きい番号の水、IPA、または水/IPA混合物に対応する。
【0092】
少なくとも4、好ましくは少なくとも6の撥水性の等級を有することが望ましい。
【0093】
試験方法IV−撥油性試験
3Mから入手できる3M撥油性試験III(1994年2月)を用いて撥油性について不織ウェブまたはフィルム試料について測定した。この試験において、さまざまな表面張力の油または油混合物による浸透または液滴の広がりを試す。油および油混合物に、以下に対応する等級を与える。
【0094】
【表4】

【0095】
撥油性試験を撥水性試験と同様に実施し、記録した撥油性の等級は、不織ウェブまたはフィルム試料が試験に合格する最も大きい番号の油または油混合物に相当する。
【0096】
少なくとも1、好ましくは少なくとも3の撥油性の等級を有することが望ましい。
【0097】
静電荷散逸試験のための静電防止剤の製造と特性解析
静電防止剤1
[C1225+(CH3)(CH2CH2O)mH(CH2CH2O)nH][-OSO2CF3];(m+n=15)の製造
機械撹拌機を備えた1リットルのフラスコに、リチウムトリフレートの72%水溶液(45.18グラム)および120.0mLの水を入れた。この撹拌された溶液に、エトクアドTM(ETHOQUADTM)C/25を200.0グラム、7分にわたって滴下漏斗によって添加した。得られた混合物を1.5時間、室温で撹拌し、分液漏斗に移し、メチレンクロリド(400mL)を添加して所望の生成物を抽出した。メチレンクロリド有機相を水(150mL)で洗浄した。前記有機相を1Lの丸底フラスコ中に集め、1時間、アスピレータによる減圧下、60℃で濃縮させ、次いで、1時間、アスピレータによる減圧下、110℃で濃縮し、褐色の粘性生成物205.2g(96%の収量)をもたらした。この生成物を1Hおよび13C NMRによっておよび熱重量分析(10℃/分の温度傾斜率において室温から分解まで)によって特性決定した。
【0098】
静電防止剤2
[C1225+(CH3)(CH2CH2O)mH(CH2CH2O)nH][-N(SO2CF32];(m+n=15)の製造
機械攪拌機を備えた1リットルのフラスコに、28.7グラムのHQ−115TMおよび125.0グラムの水を入れた。この撹拌された溶液に、エトクアドTMC/25を95.89グラム、16分にわたって滴下漏斗によって添加した。得られた混合物を分液漏斗に移し、200グラムのメチレンクロリドで抽出した。メチレンクロリドの有機相を水性相から分離し、125mLの水で洗浄した。洗った後に、有機相をシリコーン油槽内に置き、150℃で蒸留し、108.92グラムの収量(94%の収量)を得た。得られた生成物を1Hおよび13C NMRによっておよび熱重量分析によって特性決定した。
【0099】
静電防止剤3
[C1225+(CH3)(CH2CH2O)mH(CH2CH2O)nH][-3SC49]の製造;(m+n=15)
静電防止剤3を静電防止剤1の製造と同様にして製造したが、ただし、1リットルのフラスコに、リチウムノナフレート30.6グラムおよび水125.0グラム、エトクアドTMC/25を95.89グラム、15分にわたって添加し、200グラムのメチレンクロリドで抽出した。有機相を生成物109.96グラム(93%の収量)の収量をもたらし、1Hおよび13C NMRによっておよび熱重量分析によって特性決定した。
【0100】
静電防止剤4
[C1837+(CH3)(CH2CH2O)mH(CH2CH2O)nH][-3SCF3];(m+n=15)の製造
静電防止剤4を静電防止剤1の製造と同様にして製造したが、ただし、1リットルのフラスコに、リチウムトリフレートの固形分72%水溶液13.43グラムおよび水125グラム、およびエトクアドTM18/25を65グラム、15分にわたって添加し、その後に、200グラムのメチレンクロリドで抽出した。有機相が生成物63.77グラム(92.8%の収量)の収量をもたらし、1Hおよび13C NMRによっておよび熱重量分析によって特性決定した。
【0101】
静電防止剤5
[C1837+(CH3)(CH2CH2O)mH(CH2CH2O)nH][-N(SO2CF32];(m+n=15)の製造
静電防止剤5を静電防止剤1の製造と同様にして製造したが、ただし、1リットルのフラスコに、HQ−115TMを17.79グラム、水125.0グラムおよびエトクアドTM18/25を65グラムを15分にわたって添加し、その後に、200グラムのメチレンクロリドで抽出した。有機相が生成物74.44グラム(96.9%の収量)の収量をもたらし、それを1Hおよび13C NMRによっておよび熱重量分析によって特性決定した。
【0102】
静電防止剤6
[C1837+(CH3)(CH2CH2O)mH(CH2CH2O)nH][-3SC49];(m+n=15)の製造
静電防止剤6を静電防止剤1の製造と同様にして製造したが、ただし、1リットルのフラスコに、リチウムノナフレート18.97グラムおよび水125.0グラムおよびエトクアドTM18/25を65グラム、17分にわたって添加し、その後に、200グラムのメチレンクロリドで抽出した。有機相は、生成物72.61グラムの収量(93.1%の収量)をもたらし、それを1Hおよび13C NMRによっておよび熱重量分析によって特性決定した。
【0103】
静電防止剤7
[C1225+(CH3)(CH2CH2O)mH(CH2CH2O)nH][-3SCF3];(m+n=5)の製造
エトメーン(ETHOMEENTM)C/15(100グラム)を、NaHCO3(3グラム)と共に、機械攪拌機を備えた250mLの3首丸底フラスコに入れた。フラスコを数分間、窒素でパージし、シリコーン油槽中に置き、110℃まで加熱した。ジメチルサルフェート(30.76グラム)を、110℃(+/−3℃)に温度を保持した速度で滴下漏斗によって丸底フラスコに添加した。反応物を一晩、撹拌し、最後に[C1225N(CH3)(CH2CH2O)mH(CH2CH2O)n+][-3SOCH3];(m+n=5)を生じた。
【0104】
静電防止剤7を静電防止剤1の製造と同様にして製造したが、ただし、500mLのフラスコに、[C1225N(CH3)(CH2CH2O)mH(CH2CH2O)n+][-3SOCH3];(m+n=5)65グラム、イソプロピルアルコール18.88グラムおよび水60.9グラムおよびリチウムトリフレート(MW216.67)26.22グラムを添加した。次に、混合物をメチレンクロリド100グラムで抽出し、水60.9mLで洗浄した。有機相が59.95グラムの生成物の収量をもたらし、それを1Hおよび13C NMRによっておよび熱重量分析によって特性決定した。
【0105】
静電防止剤8
[CH3(OCH2CH219(OCH2CHCH32NH3+][-N(SO2CF32]の製造
(i)ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド:HN(SO2CF32の製造
HQ−115TMの50%水溶液をガラス皿に置き、120℃のオーブン内で一晩、乾燥させた。この乾燥した材料(2276.6g)を、磁気撹拌バーと暖かい水が中を流れる蒸留ヘッドとを備えた5リットルの3首丸底フラスコ内に置いた。次いで硫酸(98%;4482.2g)を丸底フラスコにゆっくりと添加した。丸底フラスコを加熱した時に、留出物を収容フラスコ内に採取した。約105℃の温度および約75mmHgの圧力(10kPa)において、第1の画分を採取した(84.4g)。次に、収容フラスコを変え、第2の画分を同じ温度および圧力下で採取した。この画分は透明な液体であり、HN(SO2CF32を室温で固化した(1981g;88.9%の収量;融点約40℃)。
【0106】
(ii)[CH3(OCH2CH219(OCH2CHCH32NH3+][-N(SO2CF32
窒素入口アダプターおよび磁気撹拌バーを備えた250mLの2首丸底フラスコに、ハンツマンXJT−506(25.5g)を入れた。次に、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(7.03g)を滴下漏斗から添加した。10分撹拌した後に、[CH3(OCH2CH219(OCH2CHCH32NH3+][-N(SO2CF32](pH6)の明るい褐色のシロップ29.96g(91.7%の収量)を単離した。
【0107】
【表5】

【0108】
静電防止剤1、2、および3((塩化物対イオンを有する)エトクアドTMC/25と同じアンモニウムカチオンを有するが、フルオロケミカル対イオンを有する)が、200〜320℃の加工範囲にわたってエトクアドTMC/25より少ない減量を有する。同じく、静電防止剤4、5、および6((塩化物対イオンを有する)エトクアドTM18/25と同じアンモニウムカチオンを有するが、フルオロケミカル対イオンを有する)が、200〜320℃の加工範囲にわたってエトクアドTM18/25より少ない減量を有する。本発明の組成物の比較的大きな熱安定性が、それらの加工性を増強し、揮発性分解生成物の発生を最小にする。
【0109】
撥性添加剤の製造
フルオロケミカル撥剤FR−1
フルオロケミカル撥剤FR−1(フルオロケミカルオキサゾリジノン)を製造するために、N−メチルペルフルオロオクチルスルホンアミドをエピクロロヒドリンと反応させてフルオロケミカルクロロヒドリン、C817SO2N(Me)CH(OH)CH2Clを形成し、それを更にオクタデシルイソシアネートと1:1のモル比で反応させ、閉環させた。以下の方法は、米国特許第5,025,052号明細書(クレータら)、5欄、11−50行目のスキームIに記載されている。
【0110】
フルオロケミカルの撥剤FR−2
フルオロケミカル撥剤FR−2(フルオロケミカルエステル)を製造するために、以下の方法を用いてMeFOSEアルコールをエムポール(EMPOLTM)1008酸で2:1のモル比においてエステル化した。オーバーヘッド撹拌機、冷却器、温度計、および加熱テープを巻き付けたディーン−スタークトラップを備えた500mLの2首丸底フラスコに、エムポールTM1008酸(57.8グラム;0.190当量)、MEFOSEアルコール(100グラム、0.185当量)、p‐トルエンスルホン酸(1.0グラム)およびトルエン(50グラム)を入れた。フラスコを、150℃まで加熱した油槽内に置いた。エステル化度をモニタするために、ディーン−スタークトラップ中に採取した水の量を測定し、又、ガスクロマトグラフィーを用いて未反応のフルオロケミカルアルコール、MeFOSEの量を確認した。18時間の反応後に、水約2.8mLを採取し、ごくわずかな量のフルオロケミカルアルコールが残留し、完全な反応を示した。次に、反応混合物を100℃まで冷却し、脱イオン水120mLのアリコットで2度洗浄し、最終の水洗浄物が3のpHを有した。最終洗浄物を吸引によってフラスコから除去し、反応混合物を約90トルの絶対圧力で120℃まで加熱し、揮発物を除去した。得られた生成物、褐色の固体は、1H、13C NMR分光分析法および熱重量分析によって所望のフルオロケミカルエステルを含有すると特性決定された。
【0111】
不織試料の一般的な作製
以下に記載した不織熱可塑性試料を、25.4cmのダイを有する1.9センチメートル(cm)ブラベンダー押出機(ニュージャージー州、ハッケンサック(Hackensack,NJ)のC.W.ブラベンダー)で約20ミクロン未満の直径を有するブローンミクロ繊維に作製した(ウェンテ(Wente)、ヴァン(Van).A著、「超微細熱可塑性繊維(“Superfine Thermoplastic Fibers”)」、Industrial および Eng.Chemistry,Vol.48,No.8,1956,pp.1342−1345,and Naval Research Laboratory Report 111437,1954年4月15日、に記載されている)。PP3960試料については、第1の押出機領域を160℃に設定し、すべての他の領域を270℃に設定した。ダイ空気温度を275℃に設定し、溶融温度を279℃に記録した。PS440−200試料については、第1の押出機領域を162℃に設定し、すべての他の領域を232℃に設定した。ダイ空気温度を230℃に設定し、溶融温度を230℃で記録した。PE6806試料については、第1の押出機領域を145℃に設定し、すべての他の領域を230℃に設定した。ダイ空気温度を230℃に設定し、溶融温度を230℃に記録した。計量ギヤポンプ速度を70rpmに設定した。0.763ミリメートル(mm)の空隙調整および0.69mmのセットバックを有するようにダイを構成した。30.5cmのコレクタ距離で、50グラム/m2の基本重量を有するミクロ繊維から形成されたメルトブローン不織布を供給するように設定した。不織試料を、試験方法IIIおよびIVに従って撥水および撥油性について試験した。又、不織試料を50%相対湿度(23℃)で状態調節し、試験方法IIに従って静電荷散逸について試験した。
【0112】
有効な繊維直径(EFD)は、デイビーズ(Davies)、C.N.「浮遊塵埃および粒子の分離(The Separation of Airborne Dust and Particles)」、英国機械学会、ロンドン、会報1B、1952年、に記載された方法に従って計算した。
【0113】
実施例C1(比較用)
静電防止剤または撥剤を含有しないPS440−200ポリウレタンを用いて不織試料の一般的な作製によって試料を作製した。撥油および撥水性および静電荷散逸のデータを表3に示す。
【0114】
実施例C2(比較用)
2%のFR−1を有するPS440−200ウレタンを用いて、不織試料の一般的な作製によって試料を作製した。撥油および撥水性および静電荷散逸のデータが表3に記載する。
【0115】
実施例C3(比較用)
静電防止剤または撥剤添加剤のないPE6806ポリエチレンを用いて、不織試料の一般的な作製によって試料を作製した。撥油および撥水性および静電荷散逸のデータを表4に記載する。
【0116】
実施例C4(比較用)
1%のFR−1を有するPE6806ポリエチレンを用いて、不織試料の一般的な作製によって試料を作製した。撥油および撥水性および静電荷散逸のデータを表4に記載する。
【0117】
実施例C5(比較用)
添加剤のないPP3960ポリプロピレンを用いて、不織試料の一般的な作製によって試料を作製した。撥油および撥水性および静電荷散逸のデータを表5に記載する。
【0118】
実施例C6(比較用)
1%のエトクアドTMC/25を有するPP3960ポリプロピレンを用いて、不織試料の一般的な作製によって試料を作製した。撥油および撥水性および静電荷散逸のデータを表5に記載する。
【0119】
実施例C7(比較用)
1%のエトクアドTM18/25を有するPP3960ポリプロピレンを用いて、不織試料の一般的な作製によって試料を作製した。撥油および撥水性および静電荷散逸のデータを表5に記載する。
【0120】
実施例C8(比較用)
1.0%のFR−1を有するPP3960ポリプロピレンを用いて、不織試料の一般的な作製によって試料を作製した。撥油および撥水性および静電荷散逸のデータを表5に記載する。
【0121】
実施例C9(比較用)
1.5%のFR−2を有するPP3960ポリプロピレンを用いて、不織試料の一般的な作製によって試料を作製した。撥油および撥水性および静電荷散逸のデータを表5に記載する。
【0122】
実施例C10(比較用)
PS440−200ポリウレタンおよび2%の静電防止剤1を用いて、不織試料の一般的な作製によって試料を作製した。撥油および撥水性および静電荷散逸のデータを表3に記載する。
【0123】
実施例C11(比較用)
PE6806ポリエチレンおよび1%の静電防止剤1を用いて、不織試料の一般的な作製によって試料を作製した。撥油および撥水性および静電荷散逸のデータを表4に記載する。
【0124】
実施例C12(比較用)
PP3960ポリプロピレンおよび1%の静電防止剤1を用いて、不織試料の一般的な作製によって試料を作製した。撥油および撥水性および静電荷散逸のデータが表5に記載する。
【0125】
実施例C13(比較用)
PP3960ポリプロピレンおよび0.75%の静電防止剤1を用いて、不織試料の一般的な作製によって試料を作製した。撥油および撥水性および静電荷散逸のデータを表5に記載する。
【0126】
実施例C14(比較用)
PP3960ポリプロピレンおよび0.50%の静電防止剤1を用いて、不織試料の一般的な作製によって試料を作製した。撥油および撥水性および静電荷散逸のデータを表5に記載する。
【0127】
実施例C15(比較用)
PP3960ポリプロピレンおよび1%の静電防止剤3を用いて、不織試料の一般的な作製によって試料を作製した。撥油および撥水性および静電荷散逸のデータを表5に記載する。
【0128】
実施例C16(比較用)
PP3960ポリプロピレンおよび1%の静電防止剤5を用いて、不織試料の一般的な作製によって試料を作製した。撥油および撥水性および静電荷散逸のデータを表5に記載する。
【0129】
実施例C17(比較用)
PP3960ポリプロピレンおよび1%の静電防止剤6を用いて、不織試料の一般的な作製によって試料を作製した。撥油および撥水性および静電荷散逸のデータを表5に記載する。
【0130】
実施例C18(比較用)
PP3960ポリプロピレンおよび1%の静電防止剤7を用いて、不織試料の一般的な作製によって試料を作製した。撥油および撥水性および静電荷散逸のデータを表5に記載する。
【0131】
実施例C19(比較用)
PP3960ポリプロピレンおよび1%の静電防止剤2を用いて、不織試料の一般的な作製によって試料を作製した。撥油および撥水性および静電荷散逸のデータを表5に記載する。
【0132】
実施例C20(比較用)
PP3960ポリプロピレンおよび1%の静電防止剤4を用いて、不織試料の一般的な作製によって試料を作製した。撥油および撥水性および静電荷散逸のデータを表5に記載する。
【0133】
実施例C21(比較用)
PP3960ポリプロピレンおよび1%の静電防止剤8を用いて、不織試料の一般的な作製によって試料を作製した。撥油および撥水性および静電荷散逸のデータを表5に記載する。
【0134】
実施例1
PS440−200ポリウレタン、2%の静電防止剤1および2%のFR−1を用いて、不織試料の一般的な作製によって試料を作製した。撥油および撥水性および静電荷散逸のデータを表3に記載する。
【0135】
実施例2
PE6806ポリエチレン、1%の静電防止剤1および1%のFR−1を用いて、不織試料の一般的な作製によって試料を作製した。撥油および撥水性および静電荷散逸のデータを表4に記載する。
【0136】
実施例3
PP3960ポリプロピレン、1%の静電防止剤1および1%のFR−1を用いて、不織試料の一般的な作製によって試料を作製した。撥油および撥水性および静電荷散逸のデータを表5に記載する。
【0137】
実施例4
PP3960ポリプロピレン、1%の静電防止剤3および1%のFR−1を用いて、不織試料の一般的な作製によって試料を作製した。撥油および撥水性および静電荷散逸のデータを表5に記載する。
【0138】
実施例5
PP3960ポリプロピレン、1%の静電防止剤4および1%のFR−1を用いて、不織試料の一般的な作製によって試料を作製した。撥油および撥水性および静電荷散逸のデータを表5に記載する。
【0139】
実施例6
PP3960ポリプロピレン、1%の静電防止剤1および1.5%のFR−2を用いて、不織試料の一般的な作製によって試料を作製した。撥油および撥水性および静電荷散逸のデータを表5に記載する。
【0140】
実施例7
PP3960ポリプロピレン、1%の静電防止剤2および1.5%のFR−1を用いて、不織試料の一般的な作製によって試料を作製した。撥油および撥水性および静電荷散逸のデータを表5に記載する。
【0141】
【表6】

【0142】
【表7】

【0143】
【表8】

【0144】
1つの場合、静電防止剤および撥剤(実施例8、表5)をPP3960に添加することは、静電防止剤だけを含有するPP3960(比較例21、表5)と比較して著しく増大した帯電防止特性を示した。
【0145】
この発明の様々な改良および変更が、この発明の範囲および精神から外れることなく実施できることは、当業者には明らかであろう。この発明は、本明細書に示した具体的な実施態様および実施例によって不当に制限することを意図するものではなく、これらの実施例および実施態様は例としてだけ示され、本発明の範囲は、本明細書に記載した請求項によってのみ制限されることを意図することが理解されなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(i)カチオン窒素中心に結合した少なくとも1つのポリオキシアルキレン部分を有する少なくとも1つのカチオンと、(ii)少なくとも1つの弱配位フルオロ有機アニオンと、からなる少なくとも1つのポリマー塩と、
(b)フルオロケミカルウレタン、ユリアおよび置換ユリア、エステル、エーテル、アルコール、エポキシド、アロファネート、アミド、アミン(およびそれらの塩)、酸(およびそれらの塩)、カルボジイミド、グアニジン、オキサゾリジノン、イソシアヌレート、ピペラジン、アミノアルコール、スルホン、イミド、ビウレット、アクリレートおよびメタクリレートホモポリマーおよびコポリマー、シロキサン、アルコキシシラン、クロロシラン、ならびにそれらの混合物からなる群から選択された少なくとも1つのフルオロケミカル撥剤と、を含み、
前記カチオンが、
[C1225+(CH3)(CH2CH2O)mH(CH2CH2O)nH];(m+n=15)、
[C65CH2+(CH3)(CH2CH2O)mH(CH2CH2O)nH];(m+n=15)、式中、C65CH2=ベンジル、
[C1837+(CH3)(CH2CH2O)mH(CH2CH2O)nH];(m+n=15)、
[C1837+(CH3)(CH2CH2O)mH(CH2CHCH3O)nH];(m+n=15)、
[C1225+(CH3)(CH2CH2O)mH(CH2CH2O)nH];(m+n=5)、
[C1225+(CH32(CH2CHCH3O)mH];(m=15)、
[C1225+(CH32(CH2CH2CH2CH2O)mH];(m=15)、
[C1225+(CH32(CH2CH2O)mH];(m=15)、
[C817+(CH32(CH2CH2O)mH];(m=8)、
[C1225+(CH2CH2O)mH(CH2CH2O)nH(CH2CH2O)oH];(m+n+o=15)、および
[N+(CH2CH2O)mH(CH2CH2O)nH(CH2CH2O)oH(CH2CH2O)pH];(m+n+o+p=20)、
からなる群から選択され、
前記弱配位フルオロ有機アニオンは、ペルフルオロ化アニオンであるかまたは、
【化1】

からなる群から選択され、上式中、各Rfが独立して、ペルフルオロアルキル基であり、
前記フルオロケミカル撥剤が、3〜20の炭素原子を有するペルフルオロ化炭素鎖を含有する少なくとも1つのフルオロケミカル基を含む、撥水および撥油性帯電防止組成物。
【請求項2】
(a)請求項1に記載の帯電防止組成物と、
(b)少なくとも1つの絶縁材と、のブレンドを含む、撥水および撥油性帯電防止組成物。
【請求項3】
(a)請求項1に記載の少なくとも1つのポリマー塩と、
(b)請求項1に記載の少なくとも1つのフルオロケミカル撥剤と、
(c)少なくとも1つの熱可塑性ポリマーと、を含み、
成分(a)、(b)および(c)のブレンドを形成することによって製造される、撥水および撥油性帯電防止組成物。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の組成物を含む繊維、布帛、フィルム、成形物品およびブローン物品の群より選ばれる物品。
【請求項5】
撥水および撥油性帯電防止組成物の製造方法であって、
(a)(i)請求項1に記載の少なくとも1つのポリマー塩と、(ii)請求項1に記載の少なくとも1つのフルオロケミカル撥剤と、(iii)少なくとも1つの熱可塑性ポリマーと、を配合する工程と、
(b)得られた配合剤を溶融して加工する工程と、を含む、撥水および撥油性帯電防止組成物の製造方法。
【請求項6】
前記ポリマー塩が、
1225+(CH3)[(CH2CH2O)mH][(CH2CH2O)nH];(m+n=15)、
1837+(CH3)[(CH2CH2O)mH][(CH2CH2O)nH];(m+n=15)、
1225+(CH3)[(CH2CH2O)mH][(CH2CH2O)nH];(m+n=5)、および
1225+(CH32(CH2CH2O)mH];(m=15)、からなる群から選択された少なくとも1つのカチオンと、
少なくとも1つの弱配位フルオロ有機アニオンと、からなる、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1または2のいずれかに記載の組成物が適用されている、熱可塑性ポリマーからなる群から選択された絶縁材を含む組成物。

【公開番号】特開2010−285629(P2010−285629A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−178397(P2010−178397)
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【分割の表示】特願2003−543361(P2003−543361)の分割
【原出願日】平成14年10月3日(2002.10.3)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】